The China Syndrome
1979年米国/ジェームズ・ブリッジス監督
「ここがベンタナ原子力発電所です」
「カリフォルニア電力発電所」
「後ろのドームが原子炉格納庫です」
この映画は、原子力発電所のトラブルをめぐって、原発特別取材担当の女性テレビレポーター、カメラマンと原子力技術担当者と電力会社経営者の三者のコントラストを際立させて、原発の危険性や安全性を軽くみて、利益を優先して情報を隠そうとする電力会社の体質を浮き彫りにすることに成功しています。
この映画の題名「チャイナ・シンドローム」とは、溶融貫通(メルトスルー)のことを言います。メルト・ダウンによって、核燃料が溶け落ち、その高熱によって鋼鉄製の圧力容器や格納容器の壁や底が溶けて貫通し、放射性物質が外に溢れ出すという最悪の状態を指しています。
「この揺れ、何かしら」
「注水を急げ」
「緊急事態が起きた。全員を安全地帯に退避させろ」
特番取材の担当の二人がコントロール・ルームを見学している最中に原子力発電所に何か異常事態が起きました。
撮影したビデオを原子力専門家に見せると、
「あなたたちが生きていたのは奇跡だ」
「おそらく炉心がむき出しになり、チャイナ・シンドロームになるところだったに違いない」
一方、発電所の直接の担当部長は安全審査資料を調べ直してみた。
「X線検査をごまかしたバカがいた」
「原子炉の溶接部に手抜きがある」
「今すぐ発電を止めねば大惨事につながりかねない」
危機を訴えても、電力会社経営者は多額の費用のかかる検査など不要であるとして男の訴えを一蹴してしまいます。
再び、原発の故障の兆候が現れ、一刻の猶予もないところまできています。
男はもはや説得が通用しないことを悟り、銃を奪ってコントロール・ルームを占拠してしまいます。
「誰かが安全循環装置を止め、発電をフル回転させようとした」
「早く元に戻さんと、非常バブルを開くぞ」
「もう打つ手がない、覚悟しろ」
スリーマイル島のメルト・ダウンの原発事故はこの映画公開後、間もなくして実際に起きました。
福島第一原子力発電所事故でも、地震の2、3日後にはメルトダウンを起こしていたと、後になってから公表されました。
NO NULES!
原発技術者を演じたジャック・レモンはアカデミー賞、カンヌ国際映画祭で男優賞を獲得しました。
映画の前のあなたが思わず「NO NULES!」(反核・脱原発)と叫びたくなる作品です。
(竹田正史/協会理事)