財政部長談話「10月の消費税率の引き上げの中止を求める」(機関紙2019年5月1日号(№590)2面掲載)
政府は、2019年10月に消費税率を8%から10%へ引き上げることを予定している。非課税の会費が収入の中心となっている協会にとって、消費税増税は支出のみの増加となり、協会財政を圧迫する。
そこで、改めて10月に予定している消費税率の引き上げについて考えてみたい。
そもそも消費税は、増加する社会保障の財源とする目的で導入された。しかし、その反面、法人税や所得税の減税を行っており、結果的に消費税増税分は相殺され、社会保障財源とはなっていない。消費税率を引き上げる前に、法人税や所得税などの抜本的な見直しを行うべきである。
諸外国と比べて消費税率は低いと言われているが、国税に占める割合は既に20%を超えており、諸外国と同水準となっている。社会保障財源に占める消費税(付加価値税)の割合は14.9%で、福祉国家と言われるスウェーデンの13.8%を超えている(※)。
また、消費税は国内の消費に対する税であるため、消費税率の引き上げは、必ず国内の消費を冷え込ませる。過去の税率引き上げ時には、個人消費が大幅に減少し、国内経済に大きな悪影響を与えた。国内経済が悪化すれば国の税収にも大きな影響を与える。このことから2015年10月、2017年4月に予定していた消費税率の引き上げを2度にわたり延期している。
では、日本経済の現状はどうなっているのか。大企業を中心に内部留保は400兆円を超え増加を続けているが、その反面、多くの中小企業は景況調査などの結果が示すように厳しい状況が続いている。さらに国民の実質賃金が押し下げられたままとなっていることが、不正統計問題における国会での議論を通じて、明らかになっている。バブル崩壊後の「デフレ・スパイラル」から未だに抜け出せていない状況であり、消費税を引き上げる状況とはとても言えない。
海外への輸出の割合が多い日本は世界経済の影響も大きく受ける。アメリカと中国の関税問題、英国のEU離脱などによる経済的な影響が懸念されており、1月に発表された世界通貨基金(IMF)の世界経済見通しでも下振れリスクの懸念が指摘されている。世界経済的な面においても消費税率を引き上げる状況下ではない。
以上、様々な面から2019年10月に行う予定の消費税率の引き上げの中止を求める。
2019年4月12日
東京歯科保険医協会
財政部長 半田紀穂子
※「全世代型社会保障への転換の真の狙いは、消費税増税にある」(芝田英昭、ニュースナビ2019年3月号)より引用