テナントのトラブル~水漏れと家賃値上げ
質問1 ビルの3階で開業した。下の階にも複数のテナントが入っているので、水漏れ発生などの時が心配である。どのような備えをすべきか。
回答1 診療所には水を使う設備が多く、水漏れ事故や配管トラブル等が発生することが多いです。ご相談のように、ビル内での水漏れは、診療所以外のテナントにも被害が出ることが考えられます。例えば、水漏れや配管トラブルが業者のミスであれば、瑕疵担保責任に伴い当該業者に賠償を求めることができますが、民法上の時効は10(法改正により2020年からは民法上の時効は20年)です。瑕疵によるものだと証明する義務は訴えた側にあるので、証拠となる写真などが必要となります。しかし、年数が経過すると、老朽化によって生じた可能性もあり、業者ミスが原因なのか証明が難しくなります。その場合は診療所内、階下のテナントに対する損害賠償なども含めて、業者側に請求することが難しくなる可能性があります。ビルのテナント内でのトラブルに関しては、契約の中に修繕費の負担について盛り込まれていることが多いため、テナント契約時にはどのような場合に診療所側が費用を負担するのか、十分確認をする必要があります。また、水漏れなどのトラブルで診療所側が負担する契約内容になっている場合は、施設賠償責任保険や店舗総合保険などに加入し、備えることが一般的です。まずはご自身の診療所の契約内容を確認し、どのような備えが必要なのか、見極をしめましょう。
質問2 借りているビルの施工ミスなどにより、休診を余儀なくされた場合、損害賠償請求を行うことはできるか。
回答2 施工ミスであれば、オーナー側に補償などを求めることができます。ただし、この場合でも契約締結時に、修繕は借主負担とするなどの文言が含まれている場合は、補償がされない可能性もあります。交わされている契約があまりにも不利な内容であれば、変更することが可能な場合もありますが、オーナー側が変更に応じない場合は、裁判を起こす必要が出てくることがあります。
質問3 テナントのオーナーから、近隣の家賃も上昇しているので、次回の契約更新時に賃料を値上げすると通告してきた。この場合、応じなければならないのか。
回答3 賃貸契約更新時の賃料の改定については、借地借家法第32条により、理由なく改定することができないことになっています。近隣の家賃相場などの上昇は、賃料改定の正当な根拠となり得ますが、事実と異なるのであれば応じる必要はありません。オーナーの言い分の根拠となる資料を求めるなど、話し合いの場を設け、こちらには賃上げに応じない意思があることを伝えましょう。それでも賃料の値上げを実施しようとするなど、オーナーとのトラブルに発展しそうであれば、早い段階で弁護士などに相談することをお勧めします。協会では、毎月第3木曜日に法律・税務に関して、専門家による無料相談を実施しておりますので、お困りの際はぜひお問い合わせください。