政策委員長談話「言葉だけでの推進で、現場の要望が反映されていない」(機関紙2020年3月号<600号>1面掲載)
◆コストを無視した評価で負担を現場に押し付けている
職員研修を要件に、歯初診を届け出した場合の初・再診料が引き上げられる。しかし、消費税増税対応分を除いて、2018年改定時を含めても初診料は13点、再診料は5点しか引きあげられておらず、2007年の中医協で示された院内感染防止対策に必要なコスト分(268.16円)に遠く及ばない。ただでさえ新型コロナウイルスの影響でこれまで以上に高いレベルの院内感染防止対策が求められる中、十分な対策を行うために医療機関の持ち出しとなっている状況は解消されない。
同様に、金銀パラジウムの高騰が現場では問題となっており、パブリックコメントで「市場実勢価格を踏まえた適正な評価に近づけていただきたい」との意見も233も寄せられていたが、何も改善策が示されなかった。
現場では、仕方なく銀合金やCRで対応する歯科医師も増えてきていると聞く。
◆口腔機能管理や歯科衛生士の評価が不十分
口腔機能管理に関する評価は要件緩和にとどまっており、診断に必要な検査をすべて保険収載することや管理料のさらなる評価は見送られた。重点課題であるはずの口腔機能低下への対応の充実には、不十分な評価だ。
また、歯科衛生実地指導料など歯科衛生士に関する診療報酬の引き上げは行われなかった。ここ数年で給与は十数%上昇し、人材紹介会社を利用した場合の金額は1件80円というところもある。人件費の上昇に見合った改定とすべきである。
◆地域での連携がほとんど評価されていない
2018年改定では、診療情報連携共有料など医科歯科連携の評価があったが、今次改定では医科が算定する周術期等口腔機能管理の依頼や予約に対する評価ぐらいで目立ったものがない。
周術期や医科歯科連携は、もう何年も言葉だけが独り歩きして、一向に進まない。
◆課題が残ったままの長期管理の評価
今次改定では、歯周病重症化予防治療や歯管に対する長期管理加算が新設される。歯科医療の将来の需要は、補綴が減り、重症化予防などの管理が増える方向へとシフトする中での評価である。
しかし、一初診一回限りの算定となっている治療が多くある中で、再度その治療が必要になった場合はどうなるのか、再度の初診行為があった場合に初診料が算定できるのかといった課題は残されたままである。これでは実際の治療で多くの問題が起き、それにわれわれが振り回されることになるだろう。
これらは、行政の政策が現場を見ずに、まさに机上の空論で改定を行っていることに根本的な問題がある。このしわ寄せが、最終的に患者さんに行かないことを切に望む。
この談話は、今次改定の問題点を明らかにし、現場で混乱を生じないよう改善を求めるものである。
2020年2月25日
東京歯科保険医協会政策委員長
松島良次