きき酒 いい酒 いい酒肴 No.34『新年の乾杯はバカラとともに』(機関紙2019年1月1日号/No.586号)

きき酒 いい酒 いい酒肴 No.34『新年の乾杯はバカラとともに』(機関紙2019年1月1日号/No.586号)

新年おめでとうございます。2019年を迎えました。年末年始はいかがお過ごしでしたか。

新しい年をお祝いするのに、ぴったりなチーズ「バラカ」をご紹介いたします。馬蹄型を意味するフランスのチーズです。バラカとは、もともとアラビア語に起源を持つ言葉でしたが、ヨーロッパでは馬の蹄鉄は幸運をもたらすと言い伝えられています。個性的で目立つ形をしているので、デパートのチーズ売り場でご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

外見は、厚みのある綿毛のような白カビに包まれており、脂肪分が60%ほどで、クリーミーでバターのような風味があり、クセが少ないので、とても食べやすいです。

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チーズの原料となるミルクに生クリームを添加して、よりクリーミーなチーズを作ることがあります。こうした乳脂肪分が60%以上のものをダブルクリーム、70%以上のものをトリプルクリームといいます。バラカは、ダブルクリーム製法で作られています。

温めたミルクに乳酸菌を加えた後にレンネット(凝乳酵素。牛の胃や微生物から抽出されるミルクを固めるための酵素。これをチーズの原料乳に加えると、ミルクが凝固し、水分が分離されます。レンネットは熟成中にも、蛋白質の分解に大切な働きをします)を加えて、カゼイン(乳蛋白質)が凝固したもの(凝乳)からホエイ乳清(チーズを作るときに出る水分のこと。チーズには不要。90%以上が水分ですが、ミルクに含まれる乳糖はほとんどこちらに出てしまうので、牛乳でおなかがゴロゴロする乳糖不耐症の人もチーズなら安心しです)を除去したヨーグルト状のものをカードといいます。このカードを専用のおたま(ルーシュ)ですくい、型に入れて水切りし、そのあと型から出して塩漬けにします。

白カビは、後からスプレーで吹きかける方法と、ミルクの段階で入れる方法があります。その後、温度・湿度が調整された熟成庫で、白カビを表面に繁殖させます。

バラカに合わせるワインは、シャンパンがお奨めですが、日本酒もとても合います。特にお正月には金箔が入ったお酒も出回るので、気分を盛り上げるのにぴったりです。また、軽めの赤ワインも合いますし、濃厚なミルクの風味があるため、濃く淹れた紅茶やコーヒーとも相性が良いです。

バラカを使った簡単なお祝いケーキもよろしいかと思います。馬蹄形のバラカの上面に、苺やブルーベリー、林檎などのフレッシュフルーツや、無花果や干し葡萄といったドライフルーツを彩りよく盛り付けるだけです。のせるフルーツ類は、リキュールに漬け込んでも香りよく仕上がります。濃厚な味わいなので、酸味のあるフルーツと一緒にいただくと、さらに味が引き立ちます。

また、乳成分が多いため、常温に置いておくとすぐに柔らかくなってしまいます。バターと同じように考えて、できれば冷蔵庫から出してすぐにいただくか、あるいは食卓ではクラッシュアイスの上に置いたほうが、最後まで形を楽しむことができます。ぜひ、縁起の良い馬蹄形のチーズで、美味しいひとときをお過ごしください。

(協会理事/早坂美都)