きき酒 いい酒 いい酒肴 No.39『秋の味覚 香り高いトリュフ』(機関紙2019年11月1日号/No.596号)

きき酒 いい酒 いい酒肴 No.39『秋の味覚 香り高いトリュフ』(機関紙2019年11月1日号/No.596号)

少しずつ秋が深まってきました。この季節になると、茸類が美味しくなります。良い香りの代表として、世界三大珍味の1つであるトリュフがあげられるでしょう。トリュフには、黒トリュフと白トリュフがあり、特に有名なのが黒トリュフで、流通量が多いのも黒トリュフです。

黒トリュフの旬は6月から11月と12月から翌年2月の年2回あります。それぞれ、サマートリュフ、ウインタートリュフと呼ばれ、年間を通じて産出されますが、旬は秋から冬にかけてのものがもっとも上質とされています。この季節に採れたものは、優雅な香りがいたします。ヨーロッパ産のものがほとんどで、フランスのプロヴァンス地方がその本場です。他にもスペイン、イタリアなどで産出されています。

 「黒いダイヤモンド」と称される黒トリュフは生でも食べますが、主に加熱することが多く、パスタやパン、お肉などと相性が良いので、幅広く利用されています。

トリュフには、消化酵素の一種であるジアスターゼが含まれています。

メインのお肉料理に添えられることが多いですが、でんぷんを分解するため、ご飯やパン、パスタといった主食を食べる時に良い食材です。

また、トリュフには椎茸などにも多く含まれるビタミンDも含まれています。ビタミンDは、腸でカルシウムが吸収される働きを高め、血中のカルシウム濃度を向上させる効果があり、骨を丈夫にすることにつながります。

一食で摂取するトリュフの量は少量ですが、このような効果があることも、頭の片隅に置いておくのも良いかも知れません。

料理だけではなく、ケーキにもトリュフが使われることがあります。今年の帝国ホテルのクリスマスケーキは、「料理人がつくるクリスマスケーキ」というコンセプトで、旬の高級食材であるトリュフをケーキの素材とするそうです。

トリュフの入ったダコワーズ生地に、キルシュ香るホワイトチョコレートを合わせたクリームでダークチェリーをはさみ、チョコレートムースで包んだ「フォレノワール」風のケーキです。ケーキの上部には、トリュフのムースを中に入れたトリュフの形をしたチョコレートを飾り、さらに枝や枯葉、鳥の羽の形をチョコレートで彩ることで森を表現し、さらにスライスした本物のトリュフも添えた豪華なケーキです。

昨年の春、私は、フランスの深い森が広がるランドック地方のワイナリーを訪問しました。ここはトリュフの産地です。トリュフの採れる森の近くにあるブドウ畑から作った美味しいワイン。地元の人たちの誇りでもあることから、「テロワール・ドゥ・トリュフ 」というワインが生まれました。

このワイン、実は、今まで日本に輸入されていなかったのですが、とても美味しかったので、知り合いのワイン輸入業者の方に「ぜひ日本に輸入してください」とお願いしました。現地に足を運んだバイヤーの方が「これなら間違いない」と判断し、昨年の秋より日本に輸入されることが決定されたのです。トリュフの森の近くで作られたワインと、トリュフを挟んだチーズとの相性はとても良いです。秋ならではの贅沢な楽しみです。

(協会理事/早坂美都)