長期維持管理政策の歴史 vol.1

はじめに

2003年6月の第31回定期総会において、大多和彦二会長の辞任に伴い、私が会長に指名された時から26年が経ちました。その私が2011年に会長を退いて以降も協会理事、保団連理事と会務を務めてまいりましたが、2022年6月19日の第50回定期総会をもって会務から退くことといたしました。協会の活動に参加してから42年にわたり、これまで会員の皆様よりのご協力をいただきありがとうございました。今後は協会顧問として、協会の諸活動を見守らせていただきます。(中川勝洋)

 

―今後の論議を注視国民皆歯科健診

6月7日に「骨太の方針2022」が発表され、「歯科専門職による口腔健康管理の充実」「医療機関連携の推進」「オーラルフレイル対策」等が示され、その中に「国民皆歯科健診の具体的な検討」が盛り込まれたことが明らかになりました。これを行うことで、医療費全体の削減に寄与できるとしています。率直なところ、「遂に、長期維持管理政策がここまで来たか」、との思いがします。
まだ詳細は分かりませんが、歯科健診が義務化されると、ドイツのように歯科健診を受けない国民へのペナルティーが導入されるかもしれません。今後の論議を見守りたいと思います。


―改定変遷の振り返り 「か初診」から「か強診」へ

1990年から2020年まで、「歯界展望」(医歯薬出版株式会社刊)誌上に診療報酬改定ごとに書かせていただいた「診療報酬改定の特徴と評価」を読み返して厚生労働省の歯科医療、歯科保健政策の変遷を振り返ってみました。
1996年(平成8年)3月末、それまでのPⅠ型・PⅡ型などの歯周病治療から現在の歯周病治療の体系である「歯周病の診断と治療のガイドライン」に再編されました。基本検査と精密検査に基づく治療の流れが示され、初診月には算定できなかった指導料も65点で導入されました。同時に歯冠修復物に対する補綴物維持管理料、いわゆる「補管」が2年間の縛り付きで導入されています。
日本歯科医師会は改定財源を確保するためだとし、「責任と保証」という言葉遣いでの説明は回避。しかし、2年以内の破損等での再製作に係わる費用が算定できないことは、診療側が責任を取り、維持管理料という名前の保証料で再製作を引き受けるということです。歯冠修復物の再製作での請求が多いことへの対応ではありますが、クラウン150点、ブリッジ 5歯以上500点、6歯以上670点のためか、保団連の一部は反発したものの大きな運動にはならず、結果は歯冠修復物の請求が減少し、保証料を下回りました。


―英独海外視察の原点

この制度もドイツで充填、補綴物の保証というペナルティーとともに導入されており、後日、協会による2006年のイギリス・ドイツへの歯科医療視察団派遣の原点となりました。

 

 

中川勝洋
東京歯科保険医協会 第3代会長、協会顧問

なかがわ・かつひろ:1967年東京歯科大学歯学部卒業、1967年桜田歯科診療所開設、1981年東京歯科保険医協会理事、昭和大学医学部医学博士授与。1993年協会副会長、2003年協会会長、2011年協会会長を辞し理事に。2022年理事を勇退し協会顧問に就任。