シリーズ「お金の心配をせず歯科治療が受けられるように」②
◆かつて健保本人負担はゼロだった
今では、受診時に1割~3割の窓口負担金を支払うのが常識であるかのようになってしまったが、かつて日本でも健保本人の「窓口負担ゼロ」が当たり前の時代があった。1927年1月に健康保険法が全面施行され、84年8月に「健保本人1割負担」が導入されるまで、実に57年間にわたり健保本人は自己負担なしで医療を受けることができた。
◆田中内閣で福祉元年老人医療費無料化
また、老人医療費についても、岩手県の沢内村(当時)が1957年から始めた老人医療費無料化制度が大きな成果をあげ、これが全国の自治体で次々と導入されていくという運動の高まりを背景として、73年10月の老人福祉法改正により、七十歳以上の高齢者の窓口負担を無料とする老人医療費無料化が実現した。田中角栄内閣(当時)はこの年を「福祉元年」として大いにアピールしたものだ。
◆中曽根内閣が老人・健保本人負担導入
ところが、「戦後政治の総決算」を掲げて1982年に登場した中曽根康弘内閣(当時)は、「たくましい文化と福祉の国」を実現するとして、「政経費の節減と予算の効率化、補助金や人員の削減、公債依存度の引き下げ、電電、専売、国鉄の民営化、医療や年金の改革等の諸改革」(Wikipediaより)について、国民の願いに逆行する政策を実行し、83年に老人医療費の有料化、84年8月に健保本人1割負担を導入。医療と福祉切り捨てに大きく舵を切っていった。2007年の第1次安倍政権が掲げた「戦後レジームからの脱却」の原点は、ここにあるといえよう。
◆健保本人3割負担への経緯
その後、1997年6月に健保本人2割負担、2002年10月に老人定率1割、2割負担、03年4月に3~69歳まで3割負担となり、現在に至っている。
◆進む受診抑制/昨年調査でも明白
その結果、患者・国民の受診抑制が進み、症状が重篤化してから受診する傾向が強まっていることが、2012年9月に行った保団連の会員アンケートでも明らかになっている。この中で、この半年間に患者さんの経済的理由で治療を中断した事例が「あった」との回答が歯科64.0%、医科19.6%も寄せられている。重篤化してから受診するため医療費は増大する一方である。
◆窓口負担の軽減を
2012年の自殺者が97年以来、15年ぶりに3万人を切ったとはいえ、生きづらい日本になってしまったことに変わりない。せめて窓口負担を軽減して安心して医療を受けられる制度にしてほしいもの。その正否は私たちの運動にかかっている。