全国保険医団体連合会関東ブロック協議会は11月6日、下記の決議を採択した。
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地域医療に重大な支障をもたらす保険証の廃止と「マイナンバーカードによる資格確認システムの導入義務化」の撤回を求める決議
河野太郎デジタル大臣は10月13日に記者会見し、「2024年度秋に、現在の健康保険証の廃止を目指す」と表明し、保険証はマイナンバーカード(以下、マイナカード)と一体化する方針を突如として発表しました。医療法に定められた健康保険証を国会審議なしに廃止する通告です。
またこれに先立つ9月5日、保険診療における責務を通知した「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(以下、療担規則)が改訂され、2023年4月から、マイナカードを使ったオンライン資格確認を、保険医療機関に対して原則として義務づけると発表されました。これまで任意とされてきたマイナカード取得の原則義務化であって、国会によるマイナンバー法の変更が必要です。今回の大臣表明、療担規則改訂の脱法性に強く抗議するとともに、撤回を求めます。
マイナカードの取得率は2022年9月末時点で49.0%(6,165万7,397人)であり、そのうち保険証として利用できる登録をした人は約41.6%(2,567万1,857人*10月10日時点)です。また、オンライン資格確認システムの運用開始施設は31.5%に留まっています(病院・医科歯科診療所・薬局の合計。*10月9日時点)。医科診療所・歯科診療所に限って見ると、それぞれ21.4%、22.6%に過ぎません。来年の4月までに対応できない医療機関は保険医療機関指定の取り消しもあり得るという発表が、大きな混乱を招いています。
全国の保険医協会・医会の連合組織である全国保険医団体連合会が実施した「保険証廃止・オンライン資格確認義務化 意識・実態調査」の結果(速報値:51保険医協会の会員からの回答数842件)によると、約8割が2024年秋に保険証廃止を目指す政府方針に反対と回答しており、賛成はわずか8%のみです。
医療情報という機微な情報をマイナンバーに紐づけして利活用する仕組みは、情報漏洩やプライバシー侵害のリスクを孕んでいます。普及が進まないのは国民と医療機関がマイナンバー制度とオンライン資格確認システムに疑念を持ち、必要性を感じていないからです。加えて、「このまま義務化されれば閉院せざるを得ない」という悲痛な声もあり、地域医療にも重大な影響を及ぼします。
またオンライン資格確認システムの運用を開始した施設では、資格があるにもかかわらず「該当なし」とされる事例が続発して、トラブル・不具合を経験した医療機関が4割に達しており、導入義務化に関する疑念や懸念の声が多数寄せられています。
医療機関窓口で保険証を提示して行う目視による資格確認は、国民皆保険制度の基盤であり広く国民に定着しています。それにもかかわらずオンラインで行う「マイナカードによる資格確認」を義務化すれば、在宅医療の現場や、高齢・障害・多忙などで役所に行けずマイナカードを持ちにくい人たちから医療を奪ってしまう恐れがあります。
またマイナカードは5年ごとに役所に出向く書き換えや更新手続きが必要で、事務処理には数日から1週間もかかります。カードがない期間に受診すれば、保険が適用されないためのトラブルが多発します。患者情報紐づけのために電子カルテをインターネットに長時間接続すれば、情報漏洩や電子的攻撃のトラブルが増加します。
当事者である国民と医療機関の声に耳を傾けない強引な政策は医療現場に混乱をもたらし、国民皆保険制度の歴史に汚点を残します。私たちは健康保険法の「国民の生活の安定と福祉の向上に寄与する」という目的を妨げる保険証の廃止と、マイナカード取得を義務化する資格確認システムの導入に強く抗議して撤回を求め、以下について特別に決議します。
記
一、保険医療機関等への「マイナンバーカードによる資格確認システムの導入義務化」を速やかに撤回すること。
一、保険証はこれまで通り交付し、廃止しないこと。
以 上
2022年11月6日
【全国保険医団体連合会関東ブロック協議会】
茨城県保険医協会 会長 高橋 秀夫 栃木県保険医協会 会長 長尾 月夫
群馬県保険医協会 会長 小澤 聖史 埼玉県保険医協会 理事長 山崎 利彦
千葉県保険医協会 会長 岡野 久 東京保険医協会 会長 須田 昭夫
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史 神奈川県保険医協会 理事長 田辺 由紀夫
山梨県保険医協会 会長 長田 高典