エナメル質初期う蝕と根面う蝕の管理
Q 今次改定でエナメル質初期う蝕と根面う蝕の管理料が新設されました。
A エナメル質初期う蝕ですが、口管強(改定前:か強診)以外の歯科医療機関において、改定前は、歯管または特疾管の算定があってCe病名で3月ごとに1回、フッ化物歯面塗布処置(F局130点)の評価でした。6月の今次改定の施行後は、同じ条件でCe病名で3月ごとに1回、F局100点の評価と減算されました。その30点の減算分は、エナメル質初期う蝕管理料(Ce管)の新設(30点)で補填されています。このCe管は、月1回算定できることになり、う蝕に対する重症化予防の位置付けとなっています。なお、口管強の歯科医療機関は、この30点に48点の加算(口腔管理体制強化加算)があり、さらにF局を月1回算定することが可能です。F局には当該部位の口腔内カラー写真撮影が必要です。
Q Ce管の具体的な臨床の対応とカルテ記載は?
A 具体的な対応などは、通知文に「エナメル質初期う蝕に関する基本的な考え方」(平成28年3月:日本歯科医学会)を参考にすることと明記されていますので、詳細はそちらで確認する必要があります(全文は下記参照)。抜粋すると、Ceの病態はエナメル質表面に限局したう窩を形成しない脱灰病変(エナメル質形成不全症は除く)で患者に疼痛などの自覚症状はなく、視診にて、エナメル質表面に粗造感のある白斑が認められた場合で、年齢は問いません。
全文は「エナメル質初期う蝕に関する基本的な考え方」(平成28年3月:日本歯科医学会)全文はここをクリック
Ce管は、当該部位にフッ化物を応用することにより、その進行を停止させ、さらには再石灰化により病変を改善させることが目的です。う蝕を再石灰化させるためには、できるだけ早期にCeを検出することが重要です。また、患者個人のう蝕リスクをコントロールするためには、歯科側と患者が互いに協働することが重要です。
したがって、カルテ記載は、Ceの病態、ならびにフッ化物による効果を患者に説明し、ホームケアの重要性の理解を促し、Ceの管理を行うなど、具体的な記載が必要となります。
Q 根面う蝕の管理料(根C管)は?
A 根C管は、口管強(改定前:か強診)以外の歯科医療機関において、改定前は、歯管または特疾管を算定している65歳以上の患者や歯科訪問診療料を算定した患者に対して、根C病名で1月に1回、F局(110点)の評価でした。6月の今次改定の施行後は、同じ条件で根C病名で3月に1回F局80点と減算され、30点の減算分は、根C管の新設(30
点)で補填されています。この根C管は、月1回算定できることになり、Ceと同じくう蝕に対する重症化予防の位置付けとなっています。なお、口管強の歯科医療機関は、この30点に48点の加算(口腔管理体制強化加算)がありますが、Ceとは違いF局は3月ごとに1回の算定です。根CのF局には写真撮影が不要です。
Q 根C管の具体的な臨床の対応とカルテ記載は?
A 具体的な対応などは、通知文に「初期根面う蝕の管理に関する基本的な考え方」(令和6年3月/日本歯科医学会)を参考にすることと明記されていますので、詳細はそちらで確認する必要があります。抜粋すると、診断は視診と触診で行い、実質欠損深さ0.5㎜未満の歯根に生じた色調が淡黄色、淡褐色、暗褐色、黒色のう蝕を根Cと診断します。なお、実質欠損の深さが0.5㎜以上のケースは、修復治療の適応となるため、切削の適否の判断基準となり、また活動性か、非活動性かにより診断します。根Cと鑑別しなければならない病態は、くさび状欠損、アブフラクションによる実質欠損、酸蝕症です。
根C管の目標は、初期根面う蝕の再石灰化を促してその進行を抑制することにより、非活動性で周囲健全歯質と同程度の硬さを呈する状態を維持し、非切削で管理することです。したがって、根C管は、個人のう蝕リスクに応じた管理計画を策定する必要があり、う蝕リスクとして、生活状況・飲食習慣、口腔衛生習慣などを聴き取り、根面う蝕のリスク因子(歯肉退縮、部分床義歯の使用、プラークの蓄積。唾液分泌量の減少など)から総合的に判定します。
したがって、カルテ記載は根Cの病態、ならびにフッ化物による効果を患者に説明し、ホームケアの重要性の理解を促し、根Cの管理を行うことなど、具体的な記載が必要となります。
【東京歯科保険医協会】診療報酬改定 特設ページ
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2024年7月号掲載)