医科系メディアから見た歯科医療界② 見落とせない今後の日歯の対応/問われる堀会長の力量・手腕・底力

見落とせない今後の日歯の対応/問われる堀会長の力量・手腕・底力

団塊の世代全員が後期高齢者になる2025年を目標に地域包括ケアシステムの構築が進められている。2018年度は、医療・介護施策の大きな節目となるだろう。6年に1度の診療報酬・介護報酬同時改定だけでなく、第7次医療計画、第七期介護保険事業(支援)計画、第3期医療費適正化計画がスタートするからだ。

◆施策関与弱い歯科

節目の年を前に、歯科医療界の施策への関与の度合いはどうか。3月に歯科医療関連のメディアが集まる会合の中で、その現状を垣間見る機会があった。肝心な、社会保障審議会介護保険部会に歯科医師委員がいないため、歯科抜きの議論となっていること。そもそも公的な検討会や審議会などに歯科医師の構成員が少なく、歯科の視点から意見を述べる場があまりないこと。さらに、日本歯科医師会(日歯)は2000年の介護保険制度スタート時に介護分野への関与に関心が低かったこと。過去の歯科への厳しい診療報酬改定に対する対応に追われ、将来に向けた布石が後手に回ったことなどだ。地域包括ケアシステムの当初案では、歯科の存在は無視されていた。現在は口腔関連の在宅医療や介護予防において歯科の役割が位置付けられているが、実際は心もとない。貴会が先月開催したメディア懇談会で、政策委員長談話と地域医療部長談話が紹介されたが、前者では「医科歯科連携にインセンティブを与える施策」、後者では「混合介護に反対」という意見が述べられている。現実は、医科や介護との関係構築ができていないのだろう。

日歯の堀憲郎会長は今年1月、「今年の最大の課題は平成30年度の診療報酬と介護報酬の同時改定だ」と発言。その実直な性格は評価され、中央社会保険医療協議会委員を務めた経験から診療報酬に精通している点も期待されているという。

◆なすべきことをなす義務が…

しかし、人柄がいい人が必ずしも成果が出せる人とは限らない。ましてや、これから本格的に動くには、遅きに失した感がある。年内には同時改定の柱が決まってしまうからだ。同時改定が2025年体制に向けて肝になることや、そのために公的な検討会や審議会の構成員にもっと多くの歯科医師を送るため根回しが必要なことは、数年前から分かっていたはずだ。

もちろん、日本歯科医師連盟の相次ぐ不祥事のため、行政が歯科医師を構成員に就けさせなかったり、日歯も遠慮して積極的に動かなかったりした面もあっただろう。しかし、歴代の執行部は少なくとも会員のために「なすべきことをなす」義務があったはずだ。その観点からの批判は、会員からあがってこないのだろうか。

 

筆者:元 月刊「集中」編集長 鈴木 義男

「東京歯科保険医新聞」201741日号5面掲載