医科系メディアから見た歯科医療界⑨ 普段からの付き合いが物を言う外部を巻き込んだ活動/政治的解決が必要な問題が多いが故に

普段からの付き合いが物を言う外部を巻き込んだ活動/政治的解決が必要な問題が多いが故に

医療界をリードしている人物は誰か。政府、厚生労働省が医療政策におけるカウンターパート(対応相手)と見ている人物は誰か。それは日本医師会(日医)の横倉義武会長というのが衆目の一致するところだろう。日医と病院団体は、以前は関係が疎遠な時期もあったが、現在は緊密な関係を築いている。

◆安倍首相や他業界とも親密な横倉日医会長

日医の横倉会長は日本歯科医師会(日歯)、日本薬剤師会(日薬)とともに称される「三師会」をもリードし、記者会見を主導したり、学術大会で積極的に発言したりしている。

また、安倍晋三首相とメールのやり取りができる個人的な関係を築いていることでも知られる。2018年度診療報酬改定についても、安倍首相と面会し、医師らの技術料に当たる本体部分のプラス改定を求めている。

一方、歯科界を牽引している人物は誰か。政府、厚労省が歯科医療政策におけるカウンターパートと見ている人物、歯科医師であれば誰もが思い浮かべる人物は誰か。それは、日歯の堀憲郎会長か。

堀会長は日医の横倉会長のように安倍首相と面会したことがあるのだろうか。横倉会長の後塵を拝することなく、歯科診療報酬のプラス改定に向け、首相に働きかけなければいけない立場のはずだが、ここ数年、歯科界を駆けめぐった状況では、それは難しいと思われる。

◆貴会の対外活動もより一層の奮闘を

安倍首相は2014年、当時の大久保満男日歯会長らと会食しているが、その際、高齢社会における歯科医療の役割を力説していた高木幹正・日歯連会長(当時)は、翌2015年に政治資金規正法違反で逮捕され、現在、公判中の身である。逮捕の数カ月前には、日歯会長にも就いていた。

このような状況では、日歯側から首相側にコンタクトをとることは、かなり難しいものと考える。まして、2004年に続く2度目の日歯連事件だ。

次期診療報酬改定をめぐる議論が大詰めを迎えている。貴会でもホームページで「診療報酬の引き上げと患者窓口の軽減を求める要請署名」の協力を求めている。しかし、会員の署名は一割ほどしか集まっていないと聞く。会員の危機意識、関心はどうなっているのか。坪田有史会長に求心力が求められる時である。国会議員や厚生労働省などとの日常的な付き合いや駆け引き。会員や市民との接触は、これまでにも増して、強くすることが必要なのではないか。

会長以下、自院を経営しながらの協会活動であることは承知している。各種の活動には自ずと限界があるものと察する。しかし、それでもあえて、今後のより一層の奮闘を求めたいところだ。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」2017121日号6面掲載