解 説 /健康保険証の発行終了後はどうなるのか
健康保険証の発行終了予定まで2カ月。会員からは「顔認証マイナンバーカードとは何か」「訪問診療時の資格確認はどうするのか」「オンライン資格確認システム(以下、オン資)未導入の場合はどうするのか」「子どもが受診する際もマイナンバーカードの持参が必要か」など、さまざまな相談が寄せられている。相談事例を踏まえ、今年12月2日に健康保険証の新規発行が終了したらどうなるのかを整理したい。
なお、紹介する内容は9月中旬時点のものであり、今後、変更があった場合には、本ホームページのほか、機関紙やデンタルブックメールニュースなどでもお知らせする。
◆マイナ保険証は2種類
マイナ保険証は、マイナンバーカードおよび顔認証マイナンバーカードにマイナ保険証の利用登録をすることで利用できるが、通常のマイナンバーカードか、顔認証マイナンバーカードかにより、機能に違いがある(図1)。
顔認証マイナンバーカードには、カード表面に「顔認証」の印字がある。当該カードは暗証番号の入力が必要なサービスは使用できず、医療機関においては暗証番号による資格確認ができない。
また、顔認証マイナンバーカードはマイナポータルも利用できない。そのため、カードリーダーで資格確認できないトラブルが生じた場合は、今後マイナ保険証を有する患者らに交付される「資格情報のお知らせ」を提示してもらうか(様式は図3を参照)、「被保険者資格申立書」を提出してもらうことになる。
オン資導入済の医療機関は、カードの違いやマイナ保険証で資格確認ができないトラブルの対応方法をあらかじめ熟知しておく必要がある。
◆マイナ保険証を持たない患者に資格確認書/切替時期は患者ごとに違う
保険者ごとに対応が異なるが、マイナ保険証がない患者を対象に、健康保険証の有効期限前に「資格確認書」が発行される(図2)。様式は健康保険証と同じである。
健康保険証の有効期限後は資格確認書を提示するが、健康保険証の有効期限は①2025年12月1日まで、または②その前に切れる場合はそれまでであり、患者ごとに切替時期が異なるため注意が必要だ。
◆オン資未導入の場合「資格情報のお知らせ」など提示
マイナ保険証がある患者には、資格情報が記載された「資格情報のお知らせ」が交付される。よって、マイナ保険証がある患者がオン資未導入の医療機関を受診する場合は、マイナ保険証と「資格情報のお知らせ」を提示するか、マイナ保険証とスマホ等でマイナポータルの医療保険被保険者資格情報の画面を提示する(図3)。
なお、オン資未導入のうち義務化対象外の医療機関(紙レセプト請求)などの場合は、医療機関の判断で資格確認限定型のオン資を導入して対応することも可能である。また、モバイル端末および汎用カードリーダーの購入費用等を対象に、事業額4.1万円の3/4(最大3.1万円)を補助する助成金がある(申請締切:2025年1月15日)。詳細は、「医療機関等向け総合ポータルサイト」内の「義務化対象外機関(紙レセプト請求等)におけるオンライン資格確認について (マイナ資格確認アプリ)」をご覧いただきたい。
◆在宅はマイナ保険証と資格確認書の2枚持ちも
訪問診療時、マイナ保険証がある患者においては、①マイナ保険証と「資格情報のお知らせ」を提示する、②マイナ保険証とスマホ等でマイナポータルの医療保険被保険者資格情報の画面を提示する方法に加えて、③本人の申請で保険者から要配慮者と判断され、交付される資格確認書を提示する方法で資格確認を行う(図4)。訪問診療では施設入所者が多く、大部分の施設はマイナ保険証の管理に消極的である。患者との相談が必要になるが、保険者に申請して資格確認書を発行してもらい、資格確認を行う方法が現実的ではないだろうか。
なお、医療機関の判断で居宅同意取得型のオン資を導入し、それで対応することも可能である。また、レセプトコンピューターの改修等およびモバイル端末や汎用カードリーダーの購入費用等を対象に、歯科診療所に対し、事業額17.1万円の3/4(最大12.8万円)を補助する助成金がある(申請締切:2025年1月15日)。詳細は、「医療機関等向け総合ポータルサイト」内の「訪問診療等について (オンライン資格確認)」をご覧いただきたい。
◆児童の取り扱い
児童においても、マイナ保険証がある場合は、原則としてその持参と提示が必要となる。ただし、修学旅行等の学校行事や部活動の合宿・遠征等において本人が持参することが困難な場合は、①マイナポータルに表示される医療保険被保険者資格情報のPDFファイルをあらかじめダウンロードしたものやその印刷物、②資格情報のお知らせ、またはその写しの提示でもよい。原本の紛失リスク等を考慮すれば、①の印刷物や②の写しを持参する場合が多いと思われる。
◆健康保険証の存続求める署名にご協力を
健康保険証の新規発行終了により、さまざまなことが変わる。マイナ保険証がある患者はマイナンバーカードに加え、トラブルが生じた場合等に備えて、「資格情報のお知らせ」も持参するか、スマホ等でマイナポータルの医療保険被保険者資格情報画面を受付に示す作業が必要になる。訪問診療が必要な高齢者や要介護者にそれを求めるのは困難であり、患者らと相談して「資格確認書」を発行してもらう場合も多いと推察される。今年12月2日に発行を終了すべきか、真剣に考えるべきだ。
協会は、健康保険証の存続を求める署名を改めて会員にお送りする(図5)。10月上旬に届く「月刊保団連」10月号に同封しているので、以前署名した方もぜひともご協力いただきたい。