「税務調査について最近の動向」/機関紙2014年8月1日(533号)より

「税務調査について最近の動向」/機関紙2014年8月1日(533号)より

 

質問 税務調査は、いきなり税務署職員が医院にやってくるようなイメージがあるが、どうか。

回答 税務調査は大きく分けて2つあります。1つは国税局査察部が行うもので、突然やって来ます。目的は証拠物件や書類を押収することであり、裁判所から捜査令状を取っているため断れません。しかしこれは悪質な脱税の疑いがあるケースに限られます。もう1つは税務署職員等に付与された質問検査権(国税通則法第74条の2)によるものです。こちらは原則として納税者等に事前に調査の日時を通知し医院等で行われ、「任意調査」とも呼ばれます。なお、先生方には診療や家庭の事情もあり、税務署が指定した日時では都合がつかない場合もありえます。その際は調査日の変更を申し出ることは可能です。

質問 税務調査(任意調査)の通知を受ける際に注意することはないか。

回答 国税通則法第74条の9では、税務調査(任意調査)を行う際に税務職員は一定事項について予め納税者等に通知することが定められています。具体的には、「調査を行う場所」「調査の目的」「調査の対象となる税目」「調査の対象となる期間」「調査の対処となる帳簿書類その他の物件」などがあり、これらをすべて通告しないといけません。そもそも「任意調査」は、「される」のではなく「させる」のが基本です。「なぜ調査をするのか」「何を調べたいのか」その説明を求め、調査の範囲を限定させることが大事です。つまり、予め通知した事項に反する調査はできません。例えば、「過去3年分の調査」と通知を受けたのであれば、調査中に税務署が「過去五年分について調査したい」ということは原則的にできません。したがって、先生方におかれては、通知内容についてきちんと把握する必要があります。協会では事前通知チェックシートも用意していますので、お気軽にご相談ください。

質問 つい最近、「顧問税理士に通知すれば税務署は納税者に税務調査ができるようになった」という話を聞いた。どういうことか。

回答 今年、国税通則法と税理士法の一部改正があり、今年7月1日以降の税務調査については、納税者があらかじめ税務代理人(顧問税理士)に同意すれば税務署がその顧問税理士に対して通知すれば税務調査ができるようになりました(改正前は納税者と税務代理人の双方に通知するものとされていました)。具体的には、確定申告の際に税理士に出す「税務代理権限証書」に同意するかどうかを記載することになります。なおその際に、事前通知に関して顧問税理士に同意をした場合、万が一税務署の通知で調査対象の期間を特定しなかった等の不備があった場合においても、納税者である先生がその通知内容で同意したことになり、調査対象の期間が際限なく広がる、といった可能性もあります。したがって、事前通知への同意をしないという対応をとるか、あるいは同意する場合でも、回答2でお伝えした、事前通知するべき内容や協会作成のチェックシートについて、顧問税理士と共有して普段から税務調査に関し相談しておくことをお勧めします。