保険財源カバーは「保険対象者・サービスの範囲・負担の範囲」から/定期総会記念講演で森田朗前中医協会長が指摘

保険財源カバーは「保険対象者・サービスの範囲・負担の範囲」から/定期総会記念講演で森田朗前中医協会長が指摘

 

6月21日、東京歯科保険医協会の第43回定期総会が開催され、第1部の記念講演では、前・中医協会長で国立社会保障・人口問題研究所長の森田朗氏による記念講演『医療を取巻く環境の変化と改革の方向』が行われました。

森田氏は、講演の柱として、わが国の財政の現状と国民皆保険、診療報酬改定の動向と中医協、歯科医療の課題と展望、2016年診療報酬改定の課題―の4本を掲げ、まず社会保障給付費に触れ、2014年ベースとして全体で約120兆円。内訳は年金60兆円、医療40兆円、福祉20兆円で、今後もこの比率で推移すると指摘した上で、限りある保険財源でどこまで保険でカバーするのかを問題提起し、具体的には、①保険対象者、②サービスの範囲、③負担の範囲―の3方向からの検討の必要性があると指摘しました。

総会記念講演会場風景IMG_0682

◆消費税問題は中医協の外で議論を

また、消費税と診療報酬の関連については、「消費税を診療報酬に盛り込むことは原理的に間違っている。議論自体も中医協の外で議論すべきではないか」との考えを紹介しています。

◆14年改定での積み残し課題

次に、14年改定での歯科の特徴として、①消費税の8%引き上げへの対応、②在宅歯科医療の推進、③周術期口腔管理の充実、④医科医療機関との連携、⑤生活の質に配慮した歯科医療の充実―などを提起しています。

しかし、積み残された課題として、「在宅療養患者への訪問歯科診療、医科歯科連携強化、口腔機能維持・向上、歯の喪失リスク増加への対応」などを指摘し、次期2016年改定では、これらが取り上げられる可能性が強いことを示唆しました。

◆中医協のあり方自体を議論する必要性が

また、中医協の議論にはなじまない問題を議論するケースが出てきており、二〇一四改定の際に新たに作られた「地域医療介護総合確保基金」をその事例として紹介しています。

さらに、経済財政諮問会議など政府の諮問機関の答申をめぐり、医療関連部分は中医協で議論しているものの、「そのような状況は、診療報酬の中身を議論してきたこれまでの中医協のあり方について、論議する必要があるかもしれない」との考えを示した。

◆歯科医師需給問題にも言及

そのほか、歯科医師需給調整との関連で、森田氏が座長を務める厚労省の「歯科医師の需給問題に関するワーキンググループ」での議論を参考に報告し、人口減少を前提とした議論が必要であり、この問題の議論は必ず経営問題に直結するため、一般的な見解と異なるのは当然であると指摘。ただ、「政府が私学に介入することは難しい面がある」とし、その原因の1つは、大学教育は文科省、歯科医師国家試験以降の歯科医師は厚労省と所轄行政がわかれていること」ではないかとしました。