歯科に関する記述は120提言に見当たらず/塩崎厚生労働大臣が「保険医療2035推進本部」を創設し初会合/「工程表で具体化を」指示

塩崎厚生労働大臣が「保険医療2035推進本部」を創設し初会合/「工程表で具体化を」指示

 塩崎恭久厚生労働大臣は8月6日、20年後を見据えた医療制度改革実行計画を協議・検討するための「保険医療2035推進本部」を創設し、初会合を開催した。

席上、まずあいさつに立った塩崎厚労相は「できるものから工程表をつくって具体化してほしい」と訴えた。今後、この推進本部では、本年9月中を目途に個々の改革案の実現に向けた作業を行う。関連経費の一部は、2016年度予算概算要求案に盛り込まれる。

同本部立ち上げの目的は、本年6月に塩崎厚労相が設けた懇談会がまとめた「保険医療2035提言書」を実現すること。初会合の資料の中では、都道府県ごとの医療費の管理や、軽症患者の自己負担増、治療の成果に応じた医師の報酬、たばこや酒への課税強化など120項目の改革案が示された。塩崎厚労相は推進本部に出席した厚労省の幹部に対して「中長期的な改革として先送りしないようにしてほしい」と実現を急ぐよう求めた。

◆提言集120項目には「歯科」「口腔」などの表記は一切なし

なお、会議資料の中には、6月の提言集から抜粋した「“保険医療2035”の提言集(120項目)」が織り込まれているが、その中で、歯科サイドからも見落とせないものの一部を以下に紹介する。

  • №11 総合的な◇(医療・介護・リハビリ含めた対応が可能な職種)を検討する。
  • №21 将来的には都道府県において医療費をより適正化できる手段を強化する(診療報酬の一部を都道府県が主体的に決定する)
  • №24 保険医の配置・定数の設定や自由開業・自由標榜の見直しを含めた、地域や診療科の偏在是正のための資源の適正配置を行う。
  • №26 すべての地域で総合的な診療を行うかかりつけ医を配置する体制を構築する。
  • №27 総合的な診療を行っている地域のかかりつけ医が行う診療については包括的な評価を行う。
  • №28 総合的な診療を行うかかりつけ医を受診した場合の費用負担について、他の医療機関を受診した場合と比較して差を設けることを検討する。
  • №99 医師一人当たりの生産性を高める

ただ、6月に発表された「保険医療2035提言書」では、「口腔ケアは、口腔機能の維持のみならず、誤嚥性肺炎予防や糖尿病等の改善などにも密接に関連する。ライフコース全般にわたる予防・健康管理の観点からも、今後さらに医科歯科連携を促進する」が明記され、その推進の必要性を強調していたが、今回の本部会議資料には、「歯科」「口腔」といった歯科関連の表記は一切ない。

なお、「かかりつけ医」に関する記述は、「地域のかかりつけ医の“ゲートオープナー”機能を確立する」との視点から、以下のような方向を明記しており、「総合診療医」構想とその評価に関して、今後どのような厚労省内での議論が行われ、政策的手段が取られるのか。あるいは、ここでいう「かかりつけ医」には「かかりつけ歯科医」が含まれているのか否か、などには充分に注意して行く必要がある。

① 高齢化等に伴い個別の臓器や疾患を超えた多様な問題を抱える患者が増加し、医療技術の複雑化、専門化が進む中、身近な医師が、患者の状態や価値観も踏まえて、適切な医療を円滑に受けられるようサポートする「ゲートオープナー」機能を確立する。これにより、患者はかかりつけ医から全人的な医療サービスを受けることができ、また適切な医療機関の選択を可能とする。
② このためには、総合的な診療を行うことができるかかりつけ医のさらなる育成が必須であり、今後10 年間程度ですべての地域でこうした総合的な診療を行う医師を配置する体制を構築する。
③総合的に医学的管理を行っている地域のかかりつけ医が行う診療については、包括的な評価を行う。特に、高齢者と子どもについては、かかりつけ医が重要であり、かかりつけ医をもつことを普及させる。このため、総合的な診療を行うかかりつけ医を受診した場合の費用負担については、他の医療機関を受診した場合と比較して差を設けることを検討する。これにより、過剰受診や過剰投薬の是正等の効果も考えられる。

 2035推進本部②