きき酒 いい酒 いい酒肴⑭「ロックで飲む吟醸酒 Ice Breaker」
梅雨もそろそろあけるかも、というこんな時期。そんなときに飲みたい日本酒があります。京都府の木下酒造「Ice Breaker(アイスブレーカー)」です。アイスブレーカーを直訳すると、氷を砕く。そこから転じて、人間関係の緊張を溶かすもの、という意味があるそうです。このお酒も、そんな願いを込めて作られています。
酒瓶にはお酒の紹介カードがついているのですが、それによると「お酒が入るとリラックスして、付き合いが楽しくなるもの。そんなふうに緊張感をほぐし、座を和ませるものを『アイスブレイカー』といいます。」と、杜氏さんの性格がにじみでています。
◆氷入れるからこそ美味しい
純米吟醸、香りはフルーティーでさわやかです。お酒自体は、蔵内で半年の低温熟成を経て出荷された無濾過生原酒となります。最初は“てるてる坊主”という名前で発売されましたが、次の年から麹米を日本晴から五百万石に変更し、名前も“アイスブレーカー”に変更されました。このまま飲むのも良いですが、グラスに氷を入れて飲むと、さらに美味しくなります。
お酒自体は、しっかりとした濃い旨みと飲みやすさを見事に両立させた、夏酒です。旨み、甘味によって、氷で割っても味が壊れたりしません。それどころか、氷が溶けるほどに味が微妙に変わり、涼しげな音とともに耳と目も楽しませてくれます。この日本酒はあらかじめロックで飲むことを想定して造られています。
◆仲間とのアイスブレイクをきっかけに
日本酒っぽくないネーミングの「Ice Breaker」ですが、杜氏さんはイギリスの方で、フィリップ・ハーパーさんという明るく楽しい方です。もともとは、教師として来日し、そこで日本酒に惚れ込み、最終的には杜氏になってしまったという方です。
日本に来た当時、まだ日本語を全く話せなかった彼が、最初に職場の仲間とコミュニケーションを取れた場が、銘酒がたくさん置いてある居酒屋だったそうです。そこで、初めて日本酒と出会い、職場の仲間と打ち解けるきっかけを作ってくれた日本酒の世界に興味を持つようになりました。
アイスブレーカーはフィリップさんが日本酒を通じて、仲間を増やしていったのと同様、大勢の仲間と、わいわいがやがやと飲んで楽しんでもらおうという時にぴったりの純米吟醸酒です。夏はビールも良いですが、こんな日本酒が爽やかな気分にさせてくれます。
このような日本酒の開発に到るまでには相当の研究が必要でしょうね。日本人を超えた外国人杜氏さんに感服してしまいます。どの世界でも、お客さんを「まいった!」と言わせる技量が必要ですね。私たちも日々の努力と勉強を続けていこう、と思わせてくれるような日本酒です。
(早坂美都/広報・ホーム ページ部員/世田谷区)