従業員の出産・育児休業について

№272:2012.1.1:第499号

質問1

当診療所の歯科衛生士が妊娠した。 労務管理上、当診療所側として注意すべきことは何か。

労働基準法では、産前六週間(多胎妊娠の場合十四週間)以内の女性従業員から請求があった場合は就業させてはならないと定めています。また、産後八週間は本人の請求の有無に関わらず就業させることはできません(なお、産後六週間を経過した女性から請求があり、医師が支障がないと認めた場合は就業可能)。また、この産前産後の休業期間の解雇も禁じられています。

質問2

産前産後の休業期間の賃金は支払わなくてもよいか。

この休業期間について賃金を支払わなくても法律上は問題ありません。またこうした場合でも、従業員が健康保険(社保)に加入していれば、出産手当金としておおむね賃金の3分の2相当額が休業期間分給付されます。

質問3

出産後も育児のため休業したいという従業員が出た場合、法律上 、どのようなことに注意すべきか。

まず、何よりも、育児・介護休業法では育児休業の申出をしたことや、休業したことを理由として解雇をはじめとした不利益な取扱いを禁止していることに注意してください。一方で育児休業期間については、診療所の負担を軽減しつつ、従業員の生活保障を考えなければなりません。雇用保険に加入している従業員については、育児休業給付金の活用をお勧めします。これは原則的に一歳未満の子どもの育児休業時に給付されるもので、賃金の支払いがない場合、現行では賃金の5割(ただし、ケースにより変わる可能性あり)が給付されます。また、健康保険と厚生年金(社保)に加入している従業員の場合、休業期間の保険料の本人負担分や事業主負担分の免除が可能です(ただし、保険者への申請手続きが必要)。

現段階では、一歳未満の子どもがいる従業員の育児休業について、①一歳以降、保育所に入れないといった状況の場合、一歳六ヵ月まで育児休業が認められる、②従業員の配偶者(おおむね夫)が従業員と一緒に育児休業している場合は、子どもが一歳二ヵ月に達するまで育児休業を取ることが可能と定められています。特に、②は男性の勤務医を雇用する医院にとっては一定の負担になるものと思われます。このほか、子どもが三歳未満、就学前の期間についてそれぞれ法的義務があります。
※就業規則等で育児休業の 規定を定めておくことを お勧めします。