№266:2011.7.1:493号
質問1 労基署の「来署依頼」と「助言・指導」通知書など
従業員を解雇したら労働基準監督署(以下、「労基署」と略)から「来署依頼」という書面が届いた。どう対応したらよいか。
労基署は労働基準法をはじめとする労働法に関わる監督・指導を行う行政機関です。今回のケースは解雇された従業員が労基署に申告し、先生側から解雇の事情を聞くためのものとみられます。先生側からの聴取内容から、法律違反があるとみなされた場合は「是正勧告書」が、違反はないが改善の必要があるとみなされた場合は「指導票」が交付されます。いずれも後日どのように改善したかを確かめる報告書の提出が求められます。
労基署から来署依頼の通知が届いたら、まず協会に相談するようお勧めします。その中で労働者側や労基署がどの点を問題としているかを具体的にし、労基署への対応を考えたほうがよいと思われます。なお、実際には解雇の手続き(解雇予告手当の不払いや解雇予告期間の不足)や解雇理由の妥当性が問題となることが多いようです。
一方、労基署ではなくその上部機関である都の労働局から「助言・指導」や「あっせん」の通知書が届く場合もあります。これらは解雇や配置転換、いじめといった紛争の当事者双方から事情を聞き、解決を促進するためのものです。特にあっせんでは弁護士などの専門家が間に入り、具体的な解決案を提示します。なお、これらの決定には強制力はありません。また、指導・助言やあっせんに参加しないという選択も可能です(罰則もありません)。助言・指導やあっせんに参加したほうがよいか、決定に従ったほうがよいかなどはケースバイケースなので、あらかじめ協会でご相談することをお勧めします。
質問2 裁判所の「労働審判」とは
労働者との紛争の解決法として裁判所で行う「労働審判」というものがあると聞いたが、どのようなものか。
労働審判は労使の紛争を通常の裁判よりも早期に解決するために行われるものです。通常の裁判と違い、①原則3回(おおむね3ヶ月)以内に結論を出す、②裁判官のほか、労使の団体それぞれから選出された労働裁判員が審理に参加し、労働現場の実情に即した解決を図る―といった特徴があります。また、労働審判での結論は通常の裁判の判決と同様、強制力を持ち、相手方が従わない場合は強制執行を行うこともできます。
なお、当事者本人が労働審判に臨むことも可能ですが、通常は双方が弁護士を代理人として行うことが多いようです。
いずれにせよ、従業員を解雇すると労基署とのやりとりや労働基準局での助言・指導やあっせん、労働審判といった、先生方には手間のかかる事態に巻き込まれる可能性が高くなります。そうなる前に、従業員の採用の段階できちんとした人材を選ぶことをお勧めします。