きき酒 いい酒 いい酒肴⑱ / 白酒と桃花酒
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きき酒 いい酒 いい酒肴⑱ / 白酒と桃花酒
3月3日は桃の節句です。待合室に雛人形を飾っている先生もいらっしゃると思います。桃の節句とは、中国から伝来した五節句のひとつで、「上巳(じょうみ)の節句」とも呼ばれています。上巳とは、3月の最初の巳の日という意味で、邪気に見舞われやすい日とされており、水辺で穢れを払う中国の風習が、平安時代に日本に伝わりました。その風習が、本人の身代わりとして穢れを紙の人形に背負わせ、川に流す「流し雛」になり、「雛(ひいな)遊び」という紙製の人形を使ったままごと遊びが貴族の女の子たちの間で盛んになりました。 やがて男女一対の紙製立雛が誕生し、時代とともに変遷しながら、江戸時代には豪華な雛人形を雛壇に飾るようになりました。
「あかりをつけましょ~」で始めるひな祭りの歌。その一節に
少し白酒めされたか
赤いお顔の右大臣
という歌詞があります。
◆白酒と甘酒
「白酒」と「甘酒」を同じものと思っている方が多いようですが、白酒は甘酒とは違って、蒸したもち米に味醂、米麹、焼酎などを混ぜて仕込み、一カ月近く熟成させて、すりつぶしたもので、アルコール度は一〇度前後、酒税法ではリキュールになります。
【白酒】には読み方が三通りあり、それぞれで意味が異なります。「しろざけ」はひな祭りに用いられる甘味の強い酒のこと。「しろき」は神事に供される酒。「はくしゅ」とはどぶろくなどのことです。
中国酒にも「白酒(バイチュウ)」という種類があるのですが、こちらは透明な蒸留酒です(アルコール度数は本来五〇度以上ですが、現在は三八度程度)。
甘酒は見た目が白酒のようですが、作り方が違います。ご飯やお粥に米麹を混ぜて保温し、糖分をひきだした飲み物でアルコールはほとんど含まれていません。酒粕に砂糖、水、生姜を加えて作ったものも甘酒を呼ばれていますが、こちらはアルコールを含んでいます。
◆ももとせ
また、「桃花酒(とうかしゅ)」というものもあります。桃の花をひたしたお酒のことをいい、平安時代にはじまりました。桃は「百歳(ももとせ)」に通じることより、病気や痛みを取り払い、顔色をよくするといわれていました。中国に桃の花が流れる川の水を飲んだら、三百歳の長寿を得られたという故事があるそうで、平安の貴族たちは曲水の宴を催して桃花酒を飲んでいたそうです。白酒は江戸時代に始まったのですが、それまでは桃の節句には桃花酒がつきものでした。
◆大切にしたい風情
白酒ではないのですが、特別純米無濾過生原酒の一つに「博多練酒(はかたねりざけ)」というお酒があります。太閤秀吉が三大美酒に数えたという博多名産の自伝酒を、今に復刻させたお酒です。
戦国時代には出陣の景気づけに飲まれ、その後も博多では祝いの席や諸節句などに用いられていたものを、室町時代の文献『御酒之日記』より復刻。七〇%にまで精白した米ともち米を乳酸発酵させ、この乳酸液に米麹と蒸した米、水を入れて再び発酵させたものです。乳白色でアルコール度は四度ほど。
このようなにごり酒や、ワインに桃のはなびらを浮かべた現代版桃花酒で風情を楽しむひとときを大切にしたいですね。
(広報・ホームページ部/ 早坂美都/世田谷区)