歯科医師への相続税贈与について/機関紙2016年4月1日号(№553号)より
質問① 子どもが2人いる。2人とも歯科医師だが息子は独立している。そこで、小生の歯科診療所を娘(歯科医師)に承継させ、残りの財産を息子と娘に相続させたい。この場合、相続税を娘だけにまとめて負担させることはできるか。
回答① 相続税は相続により財産を取得した者が、その取得に応じた割合で負担する制度となっています。そのため、相続財産と切り離して相続税を一部の相続人に負担させることはできません。なお、死亡後に後日振り込まれる死亡保険金や死亡退職金は相続税の計算に含まれる(一定額非課税)ことになっているのでご注意ください。相続税の納付金については、まず、被相続人から相続される財産・債務の総額を求め、基礎控除を差し引いて、法定相続分により各人の相続税を算定します。その上で、各相続人の実際に引き継ぐ財産・債務金額が相続される財産・債務の総額に占める割合に応じて、相続税の総額を各相続人に振り分けて、税務署に支払う各相続人の相続税が確定します。なお、死亡後10カ月以内にこの相続税の申告と納付を完了する必要があります。相続税は原則、金銭一時納付となっていますが、困難な場合については一定の要件を満たすことにより、分割払いの延納制度や金銭以外の相続財産で納税する物納制度も認められています。
質問② 父親から1500万円の現金を贈与してもらい、歯科診療所を開業することになった。この場合、どのような税がかかるか。
回答② 贈与を受けた者が、1月1日から12月31日の1年間に贈与された現預金、不動産などの贈与財産の合計額から110万円を差し引いた残額に対して贈与税がかかります。年間に受け取った贈与財産の価額の合計額が110万円以下であれば申告の必要はありません。例えば、今回のケースのような歯科診療所の新規開業の場合の資金援助などが贈与税の対象に該当します。将来の相続税のことを考えて、親が生きている間に財産を子に贈与することもあると思いますが、生前の贈与については、相続税よりも高い税率が課され、死亡前3年以内の贈与は相続税の計算に組み戻されるため、贈与税は相続税の補完税とも呼ばれます。なお、贈与を受けた者が、贈与税の申告をする場合、贈与を受けた日の年の翌年2月16日から3月15日までに申告と納付を完了しなければなりません。より詳しい計算方法などを知りたい先生は、当協会で毎月第3木曜日に行われている「会員無料相談デー」にぜひ、お越しください。
※会員無料相談デーのご利用は、事前予約が必要です(経営管理部:03―3205―2999)。