成年後見制度とは/機関紙2016年11月1日号(№560号)より
質問① 高齢の父の認知症が進み、判断能力が不十分な状態。成年後見制度を使うとよいと、診療所のスタッフに勧められたのだが、そもそもどのような制度なのか。
回答① 成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方々を介護などのサービス契約や遺産分割協議をする際に支援したり、悪徳商法などの不利益な契約から保護したりする制度です。成年後見制度は、①法定後見制度、②任意後見制度―の2つに分かれています。まず、①の法定後見制度は、家庭裁判所によって選任された成年後見人が被成年後見人の利益を考えながら裁判所と協議し、被成年後見人を保護・支援する制度です。後者②の任意後見制度は、被成年後見人に十分な判断能力があるうちに、あらかじめ成年後見人を指定し、公正証書で任意後見契約を結ぶというものです。任意後見契約を結んだ成年後見人が、任意後見契約で決められた事務を、家庭裁判所が指定した任意後見監督人の監督の下で行います。そのため、被成年後見人の代理として契約することや、遺産分割協議は、家庭裁判所や任意後見監督人の監督の下で行われるため、被成年後見人の利益を一番に考えた支援が可能です(参考:>法務省http://www.moj.go.jp/)。
質問② 実際に、成年後見制度を利用する場合の手続きをご教示願いたい。
回答② 成年後見制度を利用する場合、家庭裁判所に申し立てすることになります。成年後見制度の申し立てをするには、医師の鑑定書、戸籍謄本、登記事項証明書などが必要になります。審理期間は個々の事案によりさまざまですが、多くの場合、申し立てから法定後見の開始まで4カ月となっています。鑑定手続きや成年後見人などの候補者の適格性の調査、被成年後見人の陳述聴取などのために、一定の審理期間を要することになります(参考:法務省民事局『成年後見制度成年後見登記』より)。また、一度、成年後見制度を利用し始めると、被成年後見人の判断能力が回復したと認められない限り、制度の利用を途中でやめることはできませんのでご注意ください。
質問③ 成年後見制度については理解ができたが、成年後見登記制度について、よく理解できない。かみ砕いてご教示願いたい。
回答③ 家庭裁判所で後見人の審理が終わると、後見人が後見人であることを証明するための登記が法務局に委託されます。登記された(成年後見人であるという)内容を登記事項証明書という書類で証明することにより、被成年後見人に代わって銀行、その他の契約の場で、正式な成年後見人であるという証明ができることになります。この制度を成年後見登記制度といいます。なお、取引相手であることを理由に、登記事項証明書を請求することはできず、登記事項証明書の交付を請求したい場合は、登記されている本人、その配偶者、四親等内の親族、成年後見人など、特定の人物が請求する必要があります。