広報・ホームページ部

2019年度 第5回メディア懇談会を開催

 協会は1月10日、2019年度第5回(通算第78回)メディア懇談会を協会会議室で開催した。馬場安彦副会長が説明に当たり、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務めた。
 メディアの参加は九名。今回の主なテーマは①経営管理部長談話「医療経済実態調査を基礎資料とした診療報酬改定に抗議し、現場に即した診療報酬のさらなる引き上げを求める」、②政策委員長談話「歯科の改定率0.59%は不十分」、③金銀パラジウム合金調査結果、④「会員の意識と実態調査」の集計結果について、⑤2020診療報酬改定関連、⑥春の運動―などとし、それぞれの内容、意図、経緯などを紹介した。
 

医科歯科健康まつり、会員数5700名超などを話題に第71回メディア懇談会を開催

医科歯科健康まつり、会員数5700名超などを話題に第71回メディア懇談会を開催

協会は11月9日、第71回メディア懇談会を開催した。参加メディアは3社3名。協会からは、話題提供を松島良次副会長が務め、司会・運営は広報・ホームページ部長の早坂美都理事が行った。

今回の話題は、①10月28日(日)開催の「東京医科歯科健康まつり2018」の終了と取材へのお礼、②当協会会員数が5700名を超えたことの報告、③秋の活動、署名の状況、今後の予定、④2018年診療報酬改定後、9月以降の当協会の対応―など。

それらの中で、特に注目されたのが医科歯科健康まつり当日の状況と会員数。医科歯科健康まつりでは、受付数が1047名で総来場者数が1500名を超えていることを報告。多くの方が来場した理由として、①新宿駅西口広場という会場の場所がよく、さらにスタッフのオレンジ色のビブスで目立った、②参加者の健康への関心が高かく、簡単なチェックで健康状態を調べられる様々なブースが設けられている、などを挙げた。さらに、「外に向けて医科歯科で一緒に取り組んでいることをPRできたのは、非常に良かったのではないか。今後も継続することは大事だ」と意見があった。

また、参加各氏からは、会員数増加については、その維持のために役員だけでなく、事務局の働きに強い関心を示した。

「歯科会員アンケート」や医科歯科健康まつりなどを話題に第70回メディア懇談会を開催/メディア側も強い関心

 

「歯科会員アンケート」や医科歯科健康まつりなどを話題に第70回メディア懇談会を開催/メディア側も強い関心

協会は9月14日、第70回メディア懇談会を開催した。参加メディアは4社4名のほか、フリーランスのベテラン医療ジャーナリスト2名の合わせて6名。協会からは、話題提供を山本鐵雄副会長が務め、司会・運営は広報・ホームページ部長の早坂美都理事が行った。また、今回は特に、医科歯科健康まつりの医科サイドの参加趣旨や各ブースの特色などの紹介とPRのため、東京保険医協会の事務局長も特別参加し、参加メディアにアプローチした。

今回の話題は、①10月28日(日)開催の「TOKYO医科歯科健康まつり2018」の紹介と取材案内、②当協会会員数が5600名を超えたことの報告と分析、③8月23日の理事会で確認された広報ホームページ部長談話、医事相談部長談話について、④秋の患者署名とクイズチラシの紹介、⑤10月11日開催の「憲法・いのち・社会保障まもる10.11国民集会」など秋の行事の紹介と取材案内―などとした。

それらの中で、特に注目されたのが最近の会員の新規入会の状況。本年1月1日時点の5227名が9月1日時点で5663名となり、436名(8.3%)も増加していることを報告。増加理由として、①会員の要望に対応した各種事業の実施、②社会の趨勢としてのIT活用への理解進行、などを挙げた。さらに、「かつては入会動機が講習会や研究会受講だった場合、その終了直後、退会者が続出したが、最近は退会せず、会員としてとどまっている」ことを特徴点として説明した。参加各氏は他の歯科医療関係団体等の現況も熟知していることから、新規入会者増加とその維持をめぐり、協会への強い関心が続きそうだ。

10月から本格実施する患者署名とクイズチラシについても説明。クイズチラシにはメディアも関心が高かった

 

広報・ホームページ部長談話「入試制度の公正、平等、透明化を望む」/機関紙2018年9月1日号(№582)6面掲載

広報・ホームページ部長談話「入試制度の公正、平等、透明化を望む」

文部科学省の私立大学支援事業をめぐり、前局長の息子を今年の入試で不正合格させたとされる東京医科大学が、事件を受けてまとめた調査報告書で、不正は前理事長の指示だったと指摘していることがわかった。現役男子学生に不正に加点していた一方、女子学生や三浪以上の男子学生を不利にする一律減点の得点操作が行われていたことも明らかになった。

これは、医師を志す女性を性別により不当に差別するだけではなく、長い年月医師を志してきた男性に対しても、その努力を踏みにじるものである。人生の重要な選択肢が、性別や受験回数で狭められることは許されることではない。また、優秀な医師になり得る人材からその機会を奪うことは、社会的損失ともいえる。

同大関係者は「女性が結婚や出産を機に離職することを懸念した措置」、「大学病院関連の医師を確保するため、暗黙の了解だった」と語った。

法の下の平等を定める憲法第14条は「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と明記し、不合理な差別的取り扱いを禁じている。

受験は平等に行われなければならない。「人の命を救いたい」という純粋な思いから医師を目指してもハンディを背負わされる。その結果、本来なら合格していたはずの受験生が不合格となり、不合格だったはずの受験生が合格する。このような理不尽が許されていいわけがない。

東京医科大学の校是は「正義・友愛・奉仕」だ。水面下での得点操作は正義ではない。差別は友愛とは正反対の行為だ。

医師だけではなく、女性医療従事者が出産や育児で離職する現実があるならば、仕事と両立できる環境の整備や、女性に負担が偏っている現状の改善こそが必要なのである。人数を抑えて対処しようとするのは筋違いである。離職せざるをえない原因は、長時間労働など全般の過酷な働き方にあり、これを解決することは、男性の働き方にも大きくかかわってくる。

受験における差別が行われることに抗議するとともに、政府が他大学の実態を含めた調査を行うことが求められる。さらに、人員数増、働き方など根本的な解決策をもって、男女とも人間らしく働き続けられる環境整備を進めることが望ましい。

2018年8月23日

東京歯科保険医協会

広報・ホームページ部長

早坂美都

学校歯科治療懇談会と関連し「多摩地区での中学生まで窓口負担200円は公平の観点から問題」と指摘/第69回メディア懇談会で意見多数

学校歯科治療懇談会と関連し「多摩地区での中学生まで窓口負担200円は公平の観点から問題」と指摘/第69回メディア懇談会で意見多数

協会は7月13、第69回メディア懇談会を開催した。メディア側は7社・7名が参加し、協会からは司会は広報部長の早坂美都理事、話題提供は加藤開副会長が行った。

今回は、2018年診療報酬改定後、3カ月を経過したことから、この間に会員から寄せられた新たな問題点、それらをもとに5月31日に行った厚生労働省への18項目要請、さらに同日13日に開催した学校歯科治療調査懇談会での模様、10月29日開催予定の「医科歯科健康まつり」の紹介などを取り上げた。

このうち、学校歯科治療調査懇談会をめぐり、メディア側は窓口負担問題への強い関心を示し、「学校歯科検診で要受診とされた患者が、実際には診療機関に行くと負担があるのは、政策として疑問がある」、「23区は中学校まで窓口負担がゼロなのに、多摩地区は200円負担。これは、公平という観点から東京都と議論してもいいのではないか」、「自治体の財政力が大きな要素になっている」、「財政的に潤っている地区は負担ゼロ。一方、厳しい自治体はできない。ということが現実にある」、「自治体として経済的な負担が増加すれば、財政上、その影響が他の分野に出てくることが懸念され、やはり慎重論になるのではないか」、「児童・生徒健康状態が将来に影響を与えることは事実。であれば、政策に健康を担保する意味で受診しやすい環境の整備は必要不可欠」といった行政への意見が相次いだ。

また、「歯科検診としてガイドラインの有無はどうなっているのか」、「学校歯科医も検診だけでなく、児童・生徒の親御さんを含め、歯科検診の必要性などの理解・指導ができているのか」といった学校歯科医への要望的な意見も複数提起された。

好評価受けた「歯科の院内感染防止対策」/第68回メディア懇談会で参加取材陣から指摘

好評価受けた「歯科の院内感染防止対策」/第68回メディア懇談会で参加取材陣から指摘

5月11日、協会会議室で第68回メディア懇談会を開催。メディア側の参加は4社・4名で、協会からは坪田有史会長が説明を行い、司会進行は広報・ホームページ部長の早坂美都理事が行った。

今回の話題は、①2018年歯科診療報酬改定に関する新点数説明会や院内感染防止対策講習会、地区懇談会開催などの協会側の対応、②協会独自作成の改訂版の冊子「絵で見る色でわかる歯科の院内感染防止対策」の紹介、③マイナンバー関連、④6月10日開催の第46回定期総会の取材案内―などを説明、報告した。

これらのうち①に関し、メディア側から「初・再診料の減産につながる感染防止対策講習受講樹交渉の届出をめぐり、現場が混乱していると聞いているが、実際はどうか」との質問があり、坪田会長が「診療所の歯科医師、それも外来だけの歯科医師は、日常の診療業務などの中で厚生局や保健所への届出を行う機会が非常に少ない。しかも、今回の改定に伴う届出は、提出期限が込み入っている。また、摘要欄記載が非常に増えており、それへの対応も手間がかかる」などの状況を説明した。

また、改訂版冊子については、他団体でも類似内容の冊子を作成しているものの、文字ばかりで内容が非常難しいことなどを指摘する声があがったほか、「感染防止対策の講習会を受講するのは歯科医療機関の長である歯科医師。しかし、日常業務の中で実際に感染防止対策を実施するのはスタッフ。つまりテキストは、実施する機会の多いスタッフが理解し、実践できる内容でなければ意味がない。協会の冊子はその点で非常に分かりやすく、イラストも良いのではないか」「日本の歯科診療所の実情に沿った内容」「昨年のハンドピース関連報道にも配慮した内容」などの好評価を受けた。

歯科診療報酬改定や学校歯科治療調査結果報告めぐり意見交換/第67回メディア懇談会を開催

 

歯科診療報酬改定や学校歯科治療調査結果報告めぐり意見交換/第67回メディア懇談会を開催

協会は本日3月9日、協会会議室で第67回メディア懇談会を開催した。参加者は5社5名。話題提供と説明は、社保・学術部長の加藤開副会長、司会は早坂美都広報部長が務めた。

話題は、今次歯科診療報酬改定をめぐる内容で、特に院内感染防止対策と施設基準、およびそれに伴う初診・再診料について。また、診療不報酬改定に関する中医協の「答申」内容と、これを受けての協会の政策委員長「談話」についてを中心に、3月4日に発表し、日本歯科新聞3月6日号1面に掲載された協会地域医療部の「学校歯科治療調査報告書」も取り上げ、加藤副会長が説明を加えるとともに、参加者からの意見を伺った。

社会的にも問題になった、経済格差による受診との関係については、「ほとんど子どもの受診には、窓口負担で受診率の相違が出ており、子ども口腔環境に影響が関係があると想定でき、改めて“窓口負担”の問題を考える、子どもに対する窓口負担の全額助成を行い、懸念することなく子どもが歯科受診できるようにすることが必要」と説明した。

出席したマスコミ側からは、「自分の小学校時代は、学校で歯科の健康については『歯磨きが大事』程度の指導しかなかった。学校歯科の問題もあるのではないか」「成人になってからは健康意識を培うのは難しく、幼少時代に適正な歯科口腔保健の指導・教育が必要」「歯科と健康、医療保険制度、年金保険制度などについて、中学校や高校の『保健』の授業では、ほとんど教えていないのではないか。そこをきちんと教える時間を設けるよう、行政に要請してはどうか」などの意見が出された。

加藤開副会長

 

 

 

 

 

 

 

医科系メディアから見た歯科医療界⑫完 日本医師会を軸に医療界「連携」の時代を/医科歯科連携を推進する環境に

日本医師会を軸に医療界「連携」の時代を/医科歯科連携を推進する環境に

本年2月7日、中央社会保険医療協議会が加藤勝信厚生労働相に2018年度診療報酬改定を答申。これを受け同日、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会の三師会、および日医・四病院団体協議会の合同記者会見が開催された。主要団体のトップが顔をそろえ、今回の改定をおおむね評価したことは、今の医療界の状況を象徴していた。

厚生省と徹底対決して「ケンカ太郎」の異名を取った武見太郎会長時代の日医は、病院団体との関係も悪化していた。しかし、現会長の横倉義武氏は、病院団体はもとより医療関連団体との「連携」を重視してきた。横倉氏が会長になって初めて三師会会長がそろって診療報酬プラス改定を自民党に要望したり、三師会や四病協と合同記者会見を行ったりするようになった。横倉日医を中心にして医療界は調和が取れるようになってきたのだ。「医療界はバラバラのほうがコントロールしやすい」と言っていた政治家や官僚にとって、厄介な事態だろう。まして、横倉氏は安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相とは親しい関係にある。厚労族や霞が関を飛び越え、政権中枢と直接交渉できる。前回を上回る診療報酬プラス改定を主導し、日本人としては3人目の世界医師会会長に就いたことで、6月の日医会長選では四選確実と見られている。9月の自民党総裁選で安倍氏が3選すれば、麻生氏も財務相を留任するだろう。そうなれば、次回改定でも「安倍・麻生・横倉」の3氏が大きな影響力を持つ。医療界はこの流れに乗っているようだ。

合同記者会見の中で日歯の堀憲郎会長は、医科歯科連携に関して、患者の診療情報を共有する診療情報連携共有料の新設などを評価した。横倉会長も口腔の健康と全身の健康が密接に関係していることに理解を示した。さらに、日医と日歯は現在、糖尿病に関する連携を議論しているという。堀会長は、横倉会長の世界医師会会長就任祝賀会にも来賓として招かれ挨拶するなど、横倉会長とは良い関係を築いている。

このような中、日本歯科医師連盟の迂回献金事件で東京地方裁判所は1月、政治資金規正法違反の罪に問われた会計担当の元副理事長に禁錮2年、執行猶予3年の判決を言い渡した。2月には、元日歯連会長2名の論告求刑公判で検察は禁錮16カ月と同2年、団体としての日歯連に罰金50万円をそれぞれ求刑した。医療界が連携する中で足並みを乱すだけでなく、歯科医療界のイメージを大きく損なう事態だ。さすがに3回目はもう起きないだろう。

2019年10月には消費税率10%への引き上げが予定されている。横倉会長は控除対象外消費税問題の解決に向け、他団体の意向を確認した上で、医療界が一つになった提案としてまとめ、早期に政府・与党に要望する方針だ。医療界、歯科医療界が良い方向に向かうことを願ってやまない。

なお、本欄は今回が最終回。1年間ありがとうございました。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」201831日号6面掲載

医科系メディアから見た歯科医療界⑪ 歯科界の存在感を示せなかった診療報酬改定の顛末/「要望」ではなく「提案」が欲しい

歯科界の存在感を示せなかった診療報酬改定の顛末/「要望」ではなく「提案」が欲しい

 次期診療報酬の本体プラス改定のキーマンは安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相、横倉義武日本医師会会長の3人だった。

今年6月の日医会長選で4選を目指す横倉会長にとって、前回改定(本体プラス0.49%)を上回るアップ率の確保はまさに至上命題であり、「最低0.6%増」を要求していた。

昨年秋の総選挙で組織を挙げて自民党を支援した横倉氏を、安倍首相は官邸に招き、「しっかりお礼をさせていただきます」と述べている。 

横倉氏は同じ福岡県出身の麻生氏とも気脈を通じており、麻生氏から電話で伝えられた「0.55%増」という数字の政治的メッセージを汲み取り、矛を収めた。その数字は、保険料の企業負担分増を嫌う財界が主張していた「0.5%増」との間を取ったものである。

▼首相との形式的な懇談

日本歯科医師会と日本歯科医師連盟も昨年12月中旬、首相官邸を訪れたものの、わずか15分ほどの、まるで供一見さん僑扱いのごとき懇談では、今回の本体プラス改定に貢献したとは思えない。

国会議員に対しては、日歯は昨年11月下旬、国民歯科問題議員連盟総会で「健康寿命の延伸に向けて」と称する要望書を提出した。「歯科医療や口腔健康管理による医療の財政面での効果」を説くのはいいのだが、後半「歯科界の抱える現状の課題」として経営状況の厳しさを縷々挙げており、読む側に経営能力について疑問を持たれかねない。最後に、同時改定に向けた要望事項として、①必要な改定財源の確保、②在宅歯科医療のさらなる推進、③医科歯科連携、多職種連携の推進―の3項目を掲げているが、漠然としている感は否めない。「要望」ではなく、厚労族はもとより現場経験のある厚労省幹部が食い付きたくなるような具体的な「提案」を出すべきではなかったか。

▼主導権握れない検討会

前回改定で導入された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」に関しては、次期改定で「かかりつけ歯科医」、「かかりつけ歯科医機能」という呼称や点数新設が、その定義や法律上の位置付けとは関係なく、点数表に新設され、歯科界内外から疑問の声があがっていた。

 懸案の「かかりつけ歯科医」については、厚労省の「歯科医師の資質向上等に関する検討会」が昨年12月下旬にまとめた「歯科保健医療ビジョン」中間報告で言及されており、「歯科診療所は、歯科医療の前提として医療安全等を担う義務がある」と明記された。それもあって、次期改定で感染防止対策が新たに設けられたのだろう。同ビジョンは歯科保健医療の提供体制の目指すべき姿を描いている。重要なビジョンなのに、構成員14人中、歯科医療機関経営者はわずか3人。主導権を握れず、現場の実状に沿った内容を盛り込めなかったようだ。

改定の前哨戦となった提言の段階で、すでにやり込められていたのではないだろうか。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」201821日号6面掲載

医科系メディアから見た歯科医療界⑩ 開業医にも求められているパラダイムシフト/医科に先行する歯科の「開業」

開業医にも求められているパラダイムシフト/医科に先行する歯科の「開業」

 次期診療報酬改定については、全体の改定率はマイナス、人件費などに充てる本体部分はプラスとすることで決着した。財務省は本体もマイナス改定を求めていたが、安倍政権を支持する日本医師会のプラス改定の主張を政権が受け入れた。

ところで、改定率も重要だろうが、長期的なトレンドに目を向ける必要がある。それは、人口と財政と技術の変化である。

◆長期的なトレンドに注視する必要が

人口は、少子高齢化により税や社会保険料を払う世代が減少する一方、高齢化で急性期より慢性期の疾患が増える傾向にある。対策として、地域包括ケアシステムの構築が進められている。

財政では、法人税収の大幅減収に伴い、社会保障費の安定的財源として消費税に頼らざるを得ない状況だ。201910月に、消費税率を現在の8%から10%へ引き上げることが予定されているが、教育無償化の財源を社会保障費のカットで捻出すれば、社会保障が圧迫されるだろう。

技術では、AI(人工知能)やICT(情報通信技術)を活用し、がんゲノムや再生医療などの基盤を整備、コストなどを最小限に抑制できる体制作りが進められている。

少子高齢化についていえば、高齢化で医療ニーズが増える一方、医療に従事する働き手が減少する。その結果、医療機関では採用難となる。

◆社会の変化踏まえた経営者としての課題

トレンドとしては病院数が減少し、診療所数は微増している。医師数は国家試験により新規参入数はあまり変わらないので、病院に就職できない医師が増え、開業したり大型診療所に就職するケースが増える可能性がある。開業医や大型診療所のトップは社会の変化を見据え、医療マーケティング、ブランディング、採用やマネジメント、自由診療などが重要課題となる。

医科で今後起きそうな事態は、歯科ではすでに起きているだろう。元々、総合病院で働く歯科医師はほとんどおらず、開業がキャリアパスのメインとなっている。「予防」や「審美」の観点から、自由診療も進んでいる。医科の開業医にとっては供お手本僑になるだろう。

以前、『集中』で取材した医療法人社団ナイズの白岡亮平理事長は、医科の開業医の成功例だ。32歳で開業。38歳の現在、診療所を都内5カ所に展開、ICTを活用したりして多拠点運営を成功させている。「社会に適応した診療所は、患者さんの納得を得られ、社会保障制度的にも妥当性のある医療を提供でき、かつ継続可能性の高い経営をしている」と話す。開業医にもパラダイムシフトが求められている。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」201811日号5面掲載

医科系メディアから見た歯科医療界⑨ 普段からの付き合いが物を言う外部を巻き込んだ活動/政治的解決が必要な問題が多いが故に

普段からの付き合いが物を言う外部を巻き込んだ活動/政治的解決が必要な問題が多いが故に

医療界をリードしている人物は誰か。政府、厚生労働省が医療政策におけるカウンターパート(対応相手)と見ている人物は誰か。それは日本医師会(日医)の横倉義武会長というのが衆目の一致するところだろう。日医と病院団体は、以前は関係が疎遠な時期もあったが、現在は緊密な関係を築いている。

◆安倍首相や他業界とも親密な横倉日医会長

日医の横倉会長は日本歯科医師会(日歯)、日本薬剤師会(日薬)とともに称される「三師会」をもリードし、記者会見を主導したり、学術大会で積極的に発言したりしている。

また、安倍晋三首相とメールのやり取りができる個人的な関係を築いていることでも知られる。2018年度診療報酬改定についても、安倍首相と面会し、医師らの技術料に当たる本体部分のプラス改定を求めている。

一方、歯科界を牽引している人物は誰か。政府、厚労省が歯科医療政策におけるカウンターパートと見ている人物、歯科医師であれば誰もが思い浮かべる人物は誰か。それは、日歯の堀憲郎会長か。

堀会長は日医の横倉会長のように安倍首相と面会したことがあるのだろうか。横倉会長の後塵を拝することなく、歯科診療報酬のプラス改定に向け、首相に働きかけなければいけない立場のはずだが、ここ数年、歯科界を駆けめぐった状況では、それは難しいと思われる。

◆貴会の対外活動もより一層の奮闘を

安倍首相は2014年、当時の大久保満男日歯会長らと会食しているが、その際、高齢社会における歯科医療の役割を力説していた高木幹正・日歯連会長(当時)は、翌2015年に政治資金規正法違反で逮捕され、現在、公判中の身である。逮捕の数カ月前には、日歯会長にも就いていた。

このような状況では、日歯側から首相側にコンタクトをとることは、かなり難しいものと考える。まして、2004年に続く2度目の日歯連事件だ。

次期診療報酬改定をめぐる議論が大詰めを迎えている。貴会でもホームページで「診療報酬の引き上げと患者窓口の軽減を求める要請署名」の協力を求めている。しかし、会員の署名は一割ほどしか集まっていないと聞く。会員の危機意識、関心はどうなっているのか。坪田有史会長に求心力が求められる時である。国会議員や厚生労働省などとの日常的な付き合いや駆け引き。会員や市民との接触は、これまでにも増して、強くすることが必要なのではないか。

会長以下、自院を経営しながらの協会活動であることは承知している。各種の活動には自ずと限界があるものと察する。しかし、それでもあえて、今後のより一層の奮闘を求めたいところだ。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」2017121日号6面掲載

医科メディアから見た歯科医療界⑧  歯科医療政策をサポートするシンクタンク機能の強化を

歯科医療政策をサポートするシンクタンク機能の強化を

歯科診療所が歯科用ハンドピースを使い回し、院内感染のリスクが生じているとの報道があった。厚生労働省は医政局歯科保健課長名で、各都道府県の医務主管部局長などに対し、使用後の滅菌などを医療機関に指導するよう通知を出した。

滅菌には多額の費用がかかることもあり、歯科医療界からは「歯科医院から院内感染が発生したなど聞いたことがない」「医科でも使用後の内視鏡はアルコールで拭いているのに、おとがめなしか」などの不満や批判の声が聞こえる。

◆厚労省歯系技官を動かす秘策とは

それだけにとどまらず、歯科を医科より低く見ていることによる、いじめや脅しの措置と受け取る向きもある。だが、それは歯科医療界の力のなさだけが招いたのではない。

厚労省の医系技官は301人(本年1月時点)。うち、歯科医師免許保有者は2030人と、医師免許保有者と比べて人数が圧倒的に少ない。ポストに関しても、医師は次官級の「医務技監」にまでなれるが、歯科医師は歯科保健課長止まり。つまり、歯科医療政策に関わる人材の層が極端に薄く、歯科系技官の省内における発言力も弱いのだ。

医療政策は政府や厚労官僚の方針だけでなく、国会議員の活動、審議会における有識者の発言、メディアの報道などによって少しずつ形付けがなされていく。

このような外部の動きには、厚労官僚も新たな情報や知恵を得られる利点がある。歯科医療界も外部の力を通じ、医系技官に知恵や情報を与えたり、揺さぶりをかけたりするといい。

◆日医総研から学ぶ体制と政策企画力

医療政策に関しては、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が注目すべき存在だ。所長には日本医師会(日医)の横倉義武会長自らが就く。研究員は部長以下18人で、この他に客員研究員16人、海外駐在研究員四人の陣容だ。

年間約20本の研究成果を公表しているほか、日医の医療政策案の下地や各種資料を役員向けに作成。これらをもとに、日医は政府やメディア、さらに国民に対して自らの考えを積極的に発信しているのだ。時には日医と利害が対立する病院団体の幹部でさえ「日医総研のシンクタンク機能の凄さにはかなわない」と言う。

一方、日本歯科医師会(日歯)の日本歯科総合研究機構(日歯総研)は研究員が常勤1人、非常勤が数人という。研究報告は年間数本。日医総研に及ぶべくもない。

以前、日歯会長が「政策実現集団のシンクタンクにする」などと発言していたが、このままでは掛け声倒れになってしまうのではないか。

歯科が適切な口腔ケアを行えば、身体の病気を予防し、健康寿命を延ばし、ひいては医療費の節約につながる。厚労省も取り込みたくなるような歯科医療政策案の企画や効果的な情報発信、人脈の構築などのため、この時期だからこそ、日歯は日歯総研の強化に本気で取り組むべきではないか。

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」2017121日号6面掲載

か強診の施設基準等で議論沸騰/2017年度第3回(通算64回)メディア懇談会を開催

か強診の施設基準等で議論沸騰/2017年度第3回(通算64回)メディア懇談会を開催

9月8日、第3回メディア懇談会を開催した。当協会からは山本鐵雄副会長、早坂美都広報・ホームページ部長が出席した。今回は①8月18日に協会が厚生労働省に対して行った「診療報酬にかかわる要望について」の概要と当日の模様、②8月31日に東京都に対して行った「2018年度東京都予算に対する請願」の概要と当日の模様、③協会が独自に6月に実施した「か強診アンケート」の集計結果について、④7月2日の読売新聞朝刊報道を皮切りとした一連のハンドピース関連記事に対し、厚生労働省が9月④日付で出しました通知についてなどを話題に取り上げ、参加したメディア4社との意見交換が行われた。

議論が集中したのは、厚労省への要望関係についてで、メディアから、「口腔外バキュームは、外国では使われていない」「国内外を問わず、実際、これまでに歯科医療機関でハンドピースによる感染事故発生事例は確認されているのか」「か強診の施設基準や訪問診療の三十分要件は、届出が増えすぎないよう、行政が設けたものではないのか」「臨床現場の歯科医師のおよそ八~九割が『おかしい』との意見が出ているのだから、もっと強く厚労省に訴えるべきではないか」といった、厳しい意見が相次いだ。