広報・ホームページ部

会長年頭所感/2022年1月1日

2017年6月の総会の日に会長を拝命し、5回目の年頭所感として、新年のご挨拶をさせていただきます。日頃、会員の先生方には本会会務に対してご理解とご協力をいただき、心から感謝申し上げます。

4年前の年頭所感で本会会員数5277名とご報告し、その後2018年度診療報酬改定での施設基準の要件などを背景として、3年前は前年比431名増の会員数5708名、一昨年は5815名、昨年は5900名、今年は5937名(12月1日付)と、本会会員数は順調に増加しております。この会員増の一因には、既会員の先生方からの多くのご紹介があり、この場をお借りしまして先生方のご協力に厚く御礼申し上げます。

2021年は、2020年初頭から続いた新型コロナウイルス感染症への対応に追われた年といえます。この約2年間、多くの歯科医療機関は新型コロナウイルス感染症に対応しながら、歯科医療に従事されたと存じます。第5波は、9月上旬に新規感染者数の減少があり、その後ピークアウトしたとされました。しかし、本稿執筆時(2021年1219日)には、海外から入国された方から新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者が複数確認され、水際対策として濃厚接触者とみなされる人が増加し、待機宿泊施設が足りないとのニュースさえ流れています。

日本では、冬場、年末年始の人の移動などを理由に、第6波の発生が心配されています。その対策のため、希望される方への3回目のワクチン接種が進められ、すでに2021年4月に優先接種した医療従事者の3回目のワクチン接種が12月から始まっています。今後、新型コロナウイルスの感染が早期に収束へと向かい、人類にとって脅威とならない感染症になることを心から願っています。

協会の大きな事業の一つとして、2年ごとに実施される診療報酬改定に対する「新点数説明会」があります。2020年度診療報酬改定時には急遽、集合型を中止し、動画配信に切り替え、改定内容の周知に努めました。この対応は、簡単なことではなかったですが、結果的に大きな混乱とならず、会員の先生方に感謝しております。

現在、本年4月の診療報酬改定に向けて、「新点数説明会」の準備を鋭意進めています。可能であれば、4年前のように集合型で「新点数説明会」を開催したいところですが、コロナ禍の状況が読めないため、ハイブリッド開催、動画配信など、全方向で検討を行っています。会員の先生方には、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会の目的は、「歯科保険医の経営・生活ならびに権利を守り、国民の歯科医療と健康の充実および向上を図ること」です。その目的を達成するために、会員の先生方とともに役員、部員、事務局員は会務を行っています。コロナ禍により、理事会や部会をWEB開催、研究会などもハイブリッド形式などで対応して、ネット環境やデジタル化が急速に進みました。今後も様々な情報を適時、詳細に、デンタルブックメールニュース、協会ホームページ、FAX、機関紙などで発信していきます。特に、スピードが必要な情報発信では、デンタルブック登録者へのメール配信が大変有効なツールです。今後、さらに多くの会員にデンタルブックの登録を済ませ、様々な情報を入手していただくことを望んでいます。

今年も会員の先生方の訴えや要望などを各方面に届け、改善を図ることを協会活動の大きな柱と考えて積極的に行っていきます。会員の皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、何卒、よろしくお願い申し上げまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

 

 2022年1月1日

東京歯科保険医協会会長

坪田 有史

診療報酬改定本体は0.43%引き上げに/2022年度診療報酬改定率が決まる

12月22日、後藤茂之厚生労働大臣、鈴木俊一財務大臣の折衝により、2022年度診療報酬改定について、診療報酬本体をプラス0.43%(国費300億円程度)、薬価をマイナス1.35%(同マイナス1600億円程度)、材料価格をマイナス0.02%(同20億円程度)とすることが決定された。この数値は1224日の中医協総会にも報告されている。

また、一定所得がある75歳以上の患者窓口負担の2割引き上げを2022101日から施行することも決めている。

改定率についての詳細は、以下の通り。

1.診療報酬 +0.43%

 ※1 うち、2~5を除く改定分 +0.23%

 各科改定率 医科 +0.26%

       歯科 +0.29%

       調剤 +0.08%

※2 うち、看護の処遇改善のための特例的な対応 +0.20%

※3 うち、リフィル処方箋(反復利用できる処方箋)の導入・活用促進による効率化

  ▲0.10%(症状が安定している患者について、医師の処方により、医療機関に行かずとも、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる、分割調剤とは異なる実効的な方策を導入することにより、再診の効率化につなげ、その効果について検証を行う)

※4 うち、不妊治療の保険適用のための特例的な対応+0.20%

※5 うち、小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来0.10%

なお、歯科・調剤分については、感染防止等の必要な対応に充てるものとする。

 

2.薬価等

① 薬価1.35%

1 うち、実勢価等改定1.44%

2 うち、不妊治療の保険適用のための特例的な対応+0.09%

② 材料価格0.02%

なお、上記のほか、新型コロナ感染拡大により明らかになった課題等に対応するため、良質な医療を効率的に提供する体制の整備等の観点から、次の項目について、中央社会保険医療協議会での議論も踏まえて、改革を着実に進める。

・医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、提供されている医療機能や患者像の実態に即し       た、看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化・ 在院日数を含めた医療の標準化に向けた、DPC制度の算定方法の見直し等の更なる包括払いの推進・ 医師の働き方改革に係る診療報酬上の措置について実効的な仕組みとなるよう見直し

・外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能に係る診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し

・費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制に係る評価の見直し

・薬局の収益状況、経営の効率性等も踏まえた多店舗を有する薬局等の評価の適正化

・OTC類似医薬品等の既収載の医薬品の保険給付範囲の見直しなど、薬剤給付の適正化の観点からの湿布薬の処方の適正化

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)12月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)12月1日 第621号

1面】

    1.プラス改定は不可欠 医業収益減

    2.次期診療報酬改定/周術期、重症化予防などの改善を要望

    3.国民医療費44兆円 2019年度

    4.医療情報ネットワーク/基盤の在り方を検討

    5.ニュースビュー

    6.「探針」

2面】

    7.マイナンバーカードの保険証利用 本格運用が開始

    8.医療広告ガイドラインで最初に気をつけるべきポイント No.2

    9.ワクチン3回目接種/死亡・入院リスク低減に高い有効性

    10.情勢に合わせた感染対策を詳説/院内感染防止対策講習会

    11.地域の医療システム構築・まちづくり/地域医療研究会

    12.「注意すれば普通の生活ができる」ことがウィズコロナ/医療安全管理講習会

    13.パーシャルデンチャー/第3回学術研究会

    14.超音波スケーラー編開催/少人数で丁寧な指導に好評

3面】

    15.オンライン資格確認システムに関する学習会

    16.中医協総会/訪問診療の評価と在宅移行時の連携

    17.歯科用金属の代替材料/5技術が評価対象に

4面】

    18.経営&税務相談QA No.388

    19.補助金8万円 1月末申請期限

    20.法律相談、経営&税務相談

5面】

    21.研究会・行事案内

    22.年末年始休診案内ポスター

    23.電子書籍デンタルブック

67面】

    24.インタビュー 武蔵野市長・松下玲子さん

8面】

    25.PEEKによる大臼歯歯冠修復物/教えて!会長!!Vol.53

    26.歯科保険医協会にぜひご入会ください/組織部

    27.保険医休業保障共済保険 申込み締め切り間近!

    28.歯科情報をお知らせします/Facebook

    29.共済部だより

9面】

    30.症例研究/外傷時の歯の再植術と口腔内の縫合

10面】

    31.連載/私の目に映る歯科医療界(東洋経済新報社・大西富士男)

    32.理事会だより

    33.協会活動日誌 202111

11面】

    34.電子帳簿保存法の改定について

    35.金パラ合金/原価割れ解消署名 1064筆を提出

    36.健康保険でより良い歯科医療の実現を/イイ歯デー宣伝行動in巣鴨

    37.反核医師のつどいin千葉が開催

    38.年末年始 協会事務局休務のお知らせ

12面】

    39.金パラ署名、都立・公社病院独法化が課題/第4回メディア懇談会

    40.神田川界隈/「健康」こそが国民の不安解消への第1歩(福島崇)

    41.通信員便り No.116

    42.2021年度 第2回臨床セミナー・専門医認定研修会/日本接着歯学会

 

次期診療報酬 本体プラス0・43%で最終調整

 政府は2022年度診療報酬改定について、医師らの技術料や人件費にあたる「本体部分」の改定率を0・3%台前半に引き上げる方向で最終調整に入った。

 看護師の処遇改善と不妊治療の保険適用を合わせ最大0・5%程度のプラス要因を見込んでいたが、急性期病床再編などの入院・外来医療効率化でマイナス0・2%の減額調整を行った。

 2022年度予算案の今月24日の閣議決定に向け、引き続き、厚労省と財務省では一進一退の駆け引きが行われる。

中川・日医会長「プラス改定」を求める 自民党厚労部会「大幅なプラス改定」を決議

 1215日、日本医師会の中川会長は、「プラス改定にしなければ医療が壊れる」と訴えた。また16日に自民党厚生労働部会(牧原秀樹部会長)・社会保障制度調査会・雇用問題調査会合同会議が開催され、「診療報酬の大幅なプラス改定を行うこと」を決議に盛り込みむなど、最後までプラス改定に向けて働きかけを強めている。

 

【教えて!会長!! Vol.53】PEEKによる大臼歯歯冠修復物

<東京歯科保険医新聞2021年12月号8面掲載>

▼他、PEEKに関する記事はコチラからチェック
【教えて!会長!! Vol.77】「PEEK」について 

― 医療技術評価提案書の最初の段階の結果が出されたそうですが。

坪田有史会長:11月4日に医療技術評価分科会が開催され、来年4月の診療報酬改定に向けて今年の6月に日本歯科医学会から厚生労働省に提出された日本歯科医学会所属の専門分科会、認定分科会が作成した医療技術評価提案書の第一段階の結果が出されました。この結果で、歯科関係全体では76項目が「評価の対象となるもの」とされ、来年の改定に向けて、学会が作成した医療技術評価提案書を初めて確認できました。なお、通常、最終結果は来年1月に発表されます。したがって、今回の「評価の対象となるもの」とされたすべての項目が、診療報酬で評価される訳ではありません。最大の障害は改定財源といえます。しかし、今回の結果により、各学会が保険治療で評価を望んでいる項目・内容の詳細が判明することと、行政側が考えている方向性を知ることができ、注目すべき結果といえます。
また、前回の最終結果で「評価の対象となるもの」の中には、4月の診療報酬改定時ではなく、その後に期中収載された「チタン冠」「前歯CAD/CAM冠」「磁性アタッチメント」がありました。これらは、材料自体が保険適用材料でないため、企業から各材料を保険適用材料として認可するように要望がなされ、中医協総会で審議・承認を得る必要がありました。そのため、4月の診療報酬改定から月日が経過して、保険収載されています。

― 今回、「評価の対象となるもの」の中で「PEEKによる大臼歯歯冠修復物」がありますが。

坪田:今回の結果、(公社)日本補綴歯科学会から提出された医療技術評価提案書「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)による大臼歯歯冠修復物」が「評価の対象となるもの」とされました。この結果をみた複数の会員から「PEEK」とは?との質問を受けたので、ここで解説します。

PEEK材は、高機能プラスチックと称されています。まず、医療技術評価提案書に記載された内容の一部を紹介します。
医療技術の概要の項には、「大臼歯歯冠の歯質を大きく喪失した患者に対し、生体安全性が高く、高強度で破折リスクがない非金属性のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を材料として、CAD/CAMシステムを用いて歯冠修復物を製作し、治療する医療技術である(一部省略)」と示されています。
有効性・効率性の項では、「既存のハイブリッドレジンによる大臼歯CAD/CAM冠は、適用条件があるが、PEEKはハイブリッドレジンに比較して高い靭性値があり、支台歯形成においてCAD/CAM冠に比べて、歯質削除が少なくてもよく、咬合面やマージン部の厚みが小さくても使用できる。大臼歯CAD/CAM冠が使用できない最後臼歯においても、また第2大臼歯が欠損している場合にも、第1大臼歯に使用可能である。物性値としての硬度(ビッカース)はハイブリッドレジンより小さいが、摩耗性は同等であるというデータもあり、対合歯に対しては摩耗させにくく、過度の咬合力に対して緩衝作用もあるという特徴を有し、歯根に過度の負担がなく生理的で歯の寿命に有利であることが期待できる。さらに、吸水性が低く、変着色のリスクも少ない。PEEKは生体親和性が高く、成分の溶出量が少なく、医科分野では医療機器やカテーテル、体内インプラントなど生体埋入の実績もある(一部省略)」として、期待できることが記載されています。

― 実際にはどうですか?

坪田:実際に研究が進み、学会で様々な報告がありますが、臨床研究では、最後臼歯を含む大臼歯にPEEKによる冠を20症例に装着し、6カ月間の観察の結果、問題は生じなかったとの広島大学病院での報告があります。20症例、6カ月間の臨床研究の結果が、国民に広く臨床応用することを認めるエビデンスとして十分かどうかは賛否両論があるでしょう。現在、さらに複数の機関で臨床研究が進んでいると聞いています。
国内では、2019年にULTI-Medicalが薬事認証を取得し2021年から松風が販売を開始しています(商品名:松風PEEK)。現在は保険適用外ですが、PEEK材によるインプラントのアバットメント、あるいはインプラントの上部構造、クラウンのコーピング、ブリッジのフレームなどで、すでに臨床応用されています。しかし、現時点でPEEK材自体が保険適用材料でないため、来年4月の改定時での保険収載は時間的制約があり、難しいと思いますし、財源的視点から期中収載が望ましいと考えています。高機能プラスチックであるPEEK材の保険収載によって、金パラ原価割れの問題への一助、歯科用金属アレルギー患者への歯冠修復など、間接法歯冠修復の選択肢が増えることに期待します。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2021年12月号8面掲載)

医療広告ガイドラインで最初に 気をつけるべきポイント No.2

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルティングを手掛ける専門家が解説する本連載。
2回目は、医療広告の注意点について―。

 厚生労働省(以下、「厚労省」)が公表している2021年3月31日時点の違反事例を見ますと、自費の治療内容ページに違反があった場合が圧倒的に多いようです。
 厚労省は業者に業務委託し、ネットパトロールと称して違反しているページがないか、常に監視をしています。
 さらに、匿名で違反サイトを密告できる委託窓口を設けているうえに、「競合する診療所からの告発では?」という事例もありますので、対岸の火事ではないことを最初に認識すべきでしょう。
 厚労省が発表している違反事例を見ますと、まずインプラント、審美、矯正といった高額になりがちな自費の解説ページで、症例の写真を掲載(詳しい治療内容も併記しなければ不可)、料金表がない(料金表の公表は必須)…。これらの違反がチェックされていることがわかります。
 加えて、「年間○○本のインプラント実績」や「地域で最も安全安心」「芸能人の○○さんも通っている」などの誇大広告的な文言や写真などもよくチェックされています。
 まとめますと、歯科診療所のWEBサイト内容の見直しを行う際には、歯科広告ガイドラインの内容を考慮するほか、ネットパトロールによる監視や密告の可能性にも留意することが必要です。
 そして、特に自費の治療内容や、主にトップページにありがちな誇大広告や誘導的な言い回しに違反がないか今一度、自院のホームページをチェックし、もし上記の例に該当する場合はガイドラインに沿ってできるだけ早く訂正すべきです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2021年12月号2面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑨ 岸田政権が公的価格引き上げに動く好機/歯科からも歯科衛生士と歯科技工士の処遇改善訴えよ

岸田政権が公的価格引き上げに動く好機/歯科からも歯科衛生士と歯科技工士の処遇改善訴えよ

衆議院選挙が終わった。メディアの大方の事前予測と違って自公が絶対安定多数を維持し、野党内では維新が躍進した。立憲民主党と日本共産党を軸にした選挙協力は不発となり、比例区では立憲民主党は惨敗した。

今回の選挙結果と、今後の岸田内閣の政策は、これからの歯科を含めた医療分野に対し、どのような影響を及ぼすのであろうか。

Ⅰ.2025年まではさらに医療費抑制政策に加速が…

国民からの支持を理由にして、従来の医療費抑制政策を踏襲、場合によっては「2025年問題」、つまり800万人の〝団塊の世代〟全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年度までは、さらに抑制に加速がかかる可能性も高い。

分配重視ではなく経費節減・財政圧縮を強調する維新の勢力増強は、その政策に対し国民の中に相当割合の支持があることを意味する。これも、国の医療費抑制政策を側面から支える役割を果たすかもしれない。

自助、具体的にはすでに医療機関窓口での患者2割負担法案も可決された後期高齢者などについて、一層の窓口負担増の論議などにつながらないとも限らない。

その一方で、岸田文雄首相は、自民党総裁選挙や衆議院選挙で「新しい資本主義」を標榜。成長一辺倒から分配への一定シフトの考えを示している。安倍・菅政権の成長・自助重視路線からの部分的な修正にも見えるが、その内実がどうなのか、キャッチフレーズ通りに政策を実現できるかどうかは、歯科を含む医療界としても十分に注視する必要があるだろう。

Ⅱ.田政権が看護・介護・保育の処遇改善の動き

分配にも目くばせする看板政策「新しい資本主義」の柱の一本として岸田政権が打ち出しているのが、看護・介護・保育を担うエッセンシャルワーカーの処遇改善だ。

岸田首相自身が、その働きぶりや業務の重要性、ほかの職種の給与と比べると処遇が低いという問題意識を示し、看護・介護・保育の公的サービスを担う職種の公的価格を引き上げようという試みは、大いに注目に値する。

11月を挟んで「新しい資本主義実現会議」や「全世代型社会保障会議」、さらにはその傘下でこの重要任務の議論を担う「公的価格評価委員会」を立ち上げ、早々に議論入りしているのは周知のとおりだ。

長時間残業など、過重な勤務実態や環境の割に給与は相対的に低い看護師、介護職員、保育士の処遇改善に乗り出すことは良い方向だ。厚生労働省の最新の統計「賃金構造基本統計」によれば、保育士(女性)は月収換算で30.2万円、介護職員は29.3万円となっていて、全産業の平均給与の35.2万円を下回っている。看護師は39.4万円と、全産業平均を上回ってはいるが、夜勤を含む残業代の要素、割合が大きいことから、働き方の割に高いとは言い難いのが実態だろう。日本看護協会の福井トシ子会長も、今回の政府の処遇改善の構想に絡めて「夜勤・残業代を除く基本給での看護師の給与アップを望む」と発言している。

確かに、そうでなければ看護師資格を持ちながら、看護師の職から多くの人が離れている現実もないはずだ。

もちろん、懐疑的な見方も出ている。第1に、岸田政権が示すような公的価格の引き上げによって、民間分野の給与の引き上げを含む経済成長と分配の好循環につながるのか、という疑問だ。

2に、給与引き上げの原資がどうなるのか。岸田首相が言う消費税引き上げに頼らないとなると、利用者の自己負担アップや保険料引き上げ、国などの公的補助拡大になるが、国民的なコンセンサスが得られるのかという大問題が残る。財源を国債に頼る場合は、後の経済成長の果実で賄うという考え方ではあるが、これまた経済成長が好循環にならなければ、次世代への付け回しになりかねない。

具体的な公的価格引き上げの程度や、どういう形で実現するのかという、制度設定の問題もある。そのまま診療報酬や介護報酬をアップする場合でも、病院や福祉・介護施設の経営者が、従業員に果実をそのまま回すのかという疑念もある。かつて、実際に保育士や介護士などの処遇改善をするために行った公的加算が、当の職員の給与には回っていなかったという、看過し難い現実の声も現場からは出ている。

Ⅲ.今こそ歯科衛生士や歯科技工士の処遇改善の声を上げよ

不思議なのは、歯科医療界にもその土台を下支えするエッセンシャルワーカーたる歯科衛生士や歯科技工士がいるのに、ほとんどその処遇改善議論の対象に上がってこないことだ。

以前、この連載でも取り上げたが、歯科技工士の処遇がひどい惨状にあることは言うまでもない。歯科衛生士にしても、看護職員や介護職員などと比べ、処遇はましか、と言えばさにあらずだ。

Ⅳ.歯科衛生士と歯科技工士は処遇改善の有資格者

先に挙げた厚生労働省のデータを借りれば、いみじくも「プレジデント」2021123日号の特集「歯と眼の大問題一挙解決ノート」でも取り上げられているように、歯科衛生士の時給は1521円、歯科技工士に至っては1168円となっていて、看護師の1776円を大きく下回る。歯科技工士の場合、東京歯科保険医協会のアンケートでも明らかなように、多くが長時間労働を余儀なくされた上で、平均年収は392万円となっていて、看護師の494万円を相当程度下回るのが現実だ。

看護師も保育士も歯科衛生士や歯科技工士も、みな国家資格が必要で、健康・生命や保育など、社会的にも不可欠な公的サービスの重責を担う点では、遜色はない。歯科衛生士や歯科技工士の処遇の問題についても、若くして職場離脱する人が多いことは大きな問題だから、岸田政権の公的価格引き上げの対象にならないのは理不尽といえるだろう。

2年に1度の診療報酬の改定作業が最重要課題であるのは当然であるとしても、同じ歯科医療の土台をともに担う仲間の処遇改善に声を上げることは、歯科医師の共助団体としても大事なことと思うが、どうだろうか。

少なくとも、歯科衛生士や歯科技工士の処遇改善の必要性を政治ならず国民に訴える絶好の機会である。これを逃してはいけないはずだ。

 東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」2021121日号10面掲載

田原総一朗氏が歯科の大切さを指摘/自身の自律神経失調症改善をもとに

ジャーナリスト、評論家、ニュースキャスターとして活動している田原総一朗氏が、初めて“老い”をテーマとする著書「堂々と老いる」(毎日新聞出版20211127日発行/新書サイズ/240ページ)が、筆者自身の経験をベースにした健康問題について触れた一節で、歯科医療と健康の関係について触れており、歯科関係者から注目されている。

元々は東京テレビ(現・テレビ東京)の開局準備段階から入社して活躍し、1977年に独立しフリーランスのジャーナリストとなったが、「思いもよらない体の異常」に見舞われたという。

著書の中では、その当時の状況について、「ある朝、目が覚めたら、突然新聞の記事が読めなくなったのだ。一文字ずつは読めるのだが、単語になるとわからない…」症状を呈し、ジャーナリスト引退も考えたという。やっと、大学病院での検査により、自律神経失調症と診断され治療を受けたものの、症状は一向に改善せず、鬱状態にまで陥ってしまう。

そのような時、知り合いの医師の紹介で受診した東洋医学の治療院で、筆者は、「歯の噛み合わせの悪さが体の不調に影響している」のではないかとの指摘を受ける。そこで歯科を受診し、治療を開始したところ、「症状は徐々に快方に向かっていった」という。

さらに、改めて『高齢者ほど歯が大事』との章を設け、以下のような詩論を展開している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

✔自律神経失調症のひとつとした歯の噛み合わせを指摘されて以来、定期的に歯科医に通いメンテナンスを続けている。医師によれば、人間が丈夫でいる秘訣は歯にあるという。

✔噛み合わせの悪さがストレスを増大させ、精神的に不安定になると自律神経失調症を引き起こしてしまうことがあるというのだ。

✔噛む力が低下すると脳への刺激が失われてしまい認知症のリスクも高くなってしまうのだ。

✔食べ物を噛む際、歯には60キロくらいの圧力がかかるといわれる。噛み合わせがよければ、その力はすべての歯に分散するが、噛み合わせが悪いと圧力が偏ることになり、顎関節症を引き起こすおそれがあるというのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、それらを総じて、「噛み合わせが人間の体にとっていかに大事かがわかるだろう」と締め括っている。1934年(昭和9年)生まれ87歳の筆者が、現在もなお活動し続ける秘訣として、歯の大切さと歯科受診を掲げていることは注目に値する。

歯科医師国試は2022年1月29、30日に実施/合格発表は3月16日の予定

115回歯科医師国家試験まで2カ月を切った。今回の試験日は、2022年1月29日(土)および30日(日)の実施となっている。

現在27校ある歯科大学のうち、国公立が12校、私立が15校となっている。また、22校は1969年以降に新設されたもの。その後、行政サイドから歯科医師需給問題が注視され始め、歯科医師の新規参入数削減政策が実施され、1987年に20%削減、さらに1998年には10%削減が求められた。

さらに、特に最近の歯科医師国家試験では、合格者数が約2000人、合格率では約65%となっており、この点については、歯科医療関係者の間から「歯科医師国家試験を所管する厚生労働省は、政策的に毎年の歯科医師新規参入数を約2000人に設定しているのではないか」との指摘も行われている。

なお、第115回歯科医師国試の合格発表日は、20223月16日(水)の予定だ。

 

 

 

 

 

 

 

写真は、2019年3月18日の第112回歯科医師国家試験合格発表会場の模様。場所は厚生労働省2階の大講堂。翌年からの会場での名簿閲覧方式による合格発表は、コロナ禍対策のため中止されている。

月刊誌「プレジデント」が特集で「歯と眼の大問題」を取り上げる

月刊「PRESIDENT(プレジデント社発行)が123日号の中で、「歯と眼の大問題~一挙解決ノート」と題した特集を組んでいるが、各地の書店で売り切れが続いている模様だ。

その中で、歯科に関する記事は、元読売新聞記者で現在は医療ジャーナリストとして著述活動を行っている塚崎朝子氏が担当している。歯科医師と歯科医療関係者の目から見ると、特別な内容はないものと思われるが、かつてのむし歯治療から今日は予防も視野に入れた診療姿勢へと変化していることなどを紹介している。実際の治療については、歯周病やインプラントの第一線のベテランの専門歯科医師が解説している。また「眼科医VS歯科医師 出身大学と給料、労働時間」として、給与に関しても触れている。

慶応大学と東京歯科大学の統合協議が見直しに

昨年、慶応大学と東京歯科大学が2023年4月を目途に統合することを明らかにし、協議に入っていた。ところが、1125日、両校はこの統合への協議スケジュールの見直しを行う旨を発表した。協議自体はメドを立てず継続して行うこととしており、見直し理由は、「新型コロナウイルスの影響で、協議する時間的余裕がなかった」というものだ。

両校の統合については、昨年116日、東京歯科大が慶大に対して、歯学部の統合と法人の合併について、申し入れを行った。これを受けた慶大側は、昨年1126日の評議会で歯学部統合、法人合併について協議を開始することを決めていた。

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)11月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)11月1日 第620号

【1面】

1.コロナ加算等廃止に抗議/9月末終了の感染症対策実施加算等について

2. 効率的に提供する体制を検討/在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ

3. コロナ感染拡大防止で継続支援補助金実施

4. 金パラ等歯科用貴金属/1月歯科用貴金属価格随時改定Ⅱ見送り

5. 新春号特別企画

6.ニュースビュー

7.「探針」

【2面】

8.コロナ加算廃止に伴い陽性患者への新たな評価を新設

9.十分なのか…コロナ加算廃止と引き換えの支援金

10.支援補助金の振込遅れに対し保団連が個別照会対応を実施

11.11月から新たな補助金(8万円)の申請開始

12.東京歯科保険医協会ホームページ

【3面】

13.中医協総会/2022年1月 歯科用貴金属随時改定は見送り

14.歯科技工士業務のあり方検討に本腰

15.CAD/CAMクラウン装着の要点を解説

16.ドクター・スタッフ講習会/シャープニング・SRP実習

17.象牙質レジンコーティングを巡り講演

18. 医療広告ガイドラインで最初に気をつけるべきポイント

【4面】

19.経営&税務相談Q&A No.387

20.法律相談、経営&税務相談

5面】

21.研究会・行事案内

67面】

22.インタビュー  日本補綴歯科学会 理事長 馬場一美さん

8面】

23.教えて!会長!!Vol.52

24.歯科保険医協会にぜひご入会ください/組織部

25.歯科情報をお知らせします/Facebook

26.改定情報の早い発信を/第11回レセコンメーカー懇談会

27.共済部だより

9面】

28.症例研究/歯肉剥離掻爬手術(FOp)時にリグロスを併用した症例

10面】

29.連載/私の目に映る歯科医療界⑧

30.理事会だより

31.協会活動日誌 202110

11面】

32.都立・公社病院の独法化/撤回・反対の「要望書」提出

33.秋の署名活動/国の予算を増やし次期改定ではプラス改定を

34.渡辺孝一・島村大氏/両歯系議員が政務官に就任

35.参議院比例 比嘉奈津美氏繰り上げ当選決定

12面】

36.年末年始休診案内ポスター

37.神田川界隈/開院20周年を迎えて(早坂美都・理事)

38.通信員便り No.115

財務省「躊躇なくマイナス改定をすべき」と主張

 財務省主計局は1118日に開催した財政制度等審議会財政制度分科会の中で、2022年度診療報酬改定について、診療報酬本体(医療費)が高止まりしているとして「躊躇なくマイナス改定をすべき」と強調した。

 財務省は、診療報酬本体について、2002年度改定、2006年度改定を除き、「プラス改定」が続いてきたとし、2000年を起点として考えた場合の機械的な試算では、診療報酬改定以外の高齢化等の要因により年平均伸び率1・6%で増加してきた計算となるとした。仮に「マイナス改定」が続いてきたとしても、2年に1度の診療報酬(本体)の改定率が平均マイナス3・2%を下回らない限り、理論上は、高齢化等による市場の拡⼤から医療機関等が収⼊増加を享受することが可能であると主張している。そのうえで、診療報酬(本体)改定率について医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきたと言わざるを得ず、診療報酬(本体)の「マイナス改定」を続けることなくして医療費の適正化は到底図れないとした。

 また、薬価部分の引き下げ分に関して財源を診療報酬本体に回すべきだとする意見に対しては、診療報酬本体を適正化する必要がある中で、「フィクションにフィクションを重ねたものというより他はない」とけん制し、薬価差の是正で生み出される薬価引き下げ財源を医療費本体へ回すことを強く否定した。

第4回メディア懇談会 金パラ署名など意見交換

(左から)馬場安彦副会長、早坂美都理事

◆金パラ署名・診療報酬改善要求も議題に

協会は1112日、第4回(通算86回)メディア懇談会をWEBで開催。馬場安彦副会長が説明、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務め、報道各社から参加者が集まった。今回は①秋の運動、②中央社会保険医療協議会、③都立・公社病院独立行政法人化、④診療報酬改善要求、⑤感染症対策実施加算等を議題として扱った。

秋の運動では協会の運動や、署名など諸活動の経過を報告。1000筆の目標に達した金銀パラジウム合金の原価割れ改善を求める署名については、メディアから医療機関が抱える苦労や負担に対する鋭い質問が飛んだ。

◆都立・公社病院独法化の影響を議論

また、③都立・公社病院独立行政法人化に関しては、東京保険医協会と連名で独法化反対と撤回の要望書を提出したことで一石を投じることになったと説明。参加者とともに、東京都が都立・公社病院の独法化を進める背景や医療現場、都民に与える影響などを議論した。

最後には協会の活動に対しメディア側から激励の言葉もあり、闊達な意見交換の場となった。

ワクチン3回目接種 死亡・入院リスク低減に高い有効性

11月現在、国内では新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せる中、3回目以降のワクチン接種の有効性について議論が交わされている。3回目の接種は、2回目完了からおおむね8カ月以上経過していることが条件で、早ければ12月からの実施が想定される。

医療従事者の追加接種

 これまでに接種を行った歯科医師会の会員や医療従事者に対しては、東京都福祉保健局が通知を出している。一方、一般の人々については、住民票のある自治体から2回接種した人に対し、接種券一体型予診票等を3回目の接種時期にあわせて送付。居住する地域で接種を受けることが基本だが、東京都が設置する大規模接種会場でも接種が可能となる。(詳細は下記通り)

 そうした中、3回の接種による効果を実証する調査も報告されている。Lancet誌電子版(※)に掲載されたイスラエルのNoam Barda氏らによる研究では、3回目の接種を終えた人と、一定条件下の2回接種済みの人を対象とした調査を実施。その結果、入院を93%、重症化を92%、死亡については81%の予防効果があることを示した。

 現状、韓国やヨーロッパでは感染が再拡大し、ロックダウンを行う国々もある。ワクチン接種率の頭打ちに加え、3回目以降の接種という新たな局面を迎える中、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた最善の策を選択する必要がある。

◆新型コロナワクチン3回目接種方法について(東京都福祉保健局)

1、東京都が設置する大規模接種会場で追加接種を希望する場合

・大規模接種会場のWEBサイトで予約を行ってください。大規模接種会場の場所等については、追ってご案内いたします。

・接種を受ける際には、WEBサイトに記載の注意事項をお読みいただき、接種券・身分証をお持ちの上、予約の日時に接種会場にお越しください。

2、居住する住所地で追加接種を希望する場合

・各自治体の予約方法に従い予約のうえ、接種を受けてください。

【教えて!会長!! Vol.52】あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割

― 厚生労働省で歯科医療の提供体制に関して、定期的に検討会が開かれているそうですね。

坪田有史会長:10月7日、オンラインによる「歯科医療提供体制等に関する検討会」が開催されました。本検討会は、第1回(2月19日)、第2回(6月2日)、第3回(7月29日)に開催されており、今回の検討会は第4回の開催です。主に「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」が議論されました。われわれ歯科医師にとって重要な将来の歯科保健医療の提供のあり方について検討しています。
これらの議論は、社会保障制度のあり方にも通じ、次期診療報酬改定にも影響すると考えられ、当会も同検討会の議論に高い関心を持って注視しています。 

― この検討会の目的を教えてください。

坪田:2017年(平成29年)12月にまとめられた「歯科保健医療ビジョン」において、高齢化の進展や歯科保健医療の需要の変化を踏まえ、これからの歯科保健医療の提供体制について、歯科医療従事者などが目指すべき姿を提言されました。その中身は、地域完結型歯科保健医療の提供のため、「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」「歯科疾患予防策」「具体的な医科歯科連携方策」「地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関などの役割」について検討されました。
その2017年に「歯科保健医療ビジョン」でまとめられた提言は、その後、少子高齢化などのわが国の将来を考慮すると、高齢化による医療の需要拡大への対応、生産年齢人口が減少する中での地域医療の確保、健康寿命の延伸へ向けた取り組みを進めることが重要とされ、歯科保健医療の提供のあり方について、改めて検討することを目的としています。

― 検討会が議論する論点を教えてください。

坪田:歯科医療提供体制等に関する検討にあたっては、以下①~⑦の論点および「歯科医療提供体制等事業」における調査結果をふまえつつ、具体的に議論を行うこととしています。
まず、歯科医療提供体制については、①歯科疾患の予防、重症化予防の推進とかかりつけ歯科医の役割、②歯科医療機関の機能分化と連携、かかりつけ歯科医の機能、③地域包括ケアシステムの構築における歯科の役割(食べる機能の維持・回復への支援)、他の関係職種(医療・介護)との連携、要介護高齢者などへの在宅歯科医療の推進など、④地域における障がい者(障がい児)への歯科医療提供体制、⑤行政の取り組み―等です。
次いで歯科専門職の需給については、⑥今後の歯科医療のニーズを踏まえた歯科医師の需給、⑦今後の歯科衛生士の業務のあり方と需給―です。
今後の歯科医療提供体制の検討スケジュールは、歯科医療提供体制に関する議論に関しては進捗状況により、必要に応じて開催することとしており、2022年(令和4年)3月ごろまでに新たな歯科保健医療ビジョンをとりまとめる見込みです。歯科医師、歯科衛生士の需給に関する議論は、歯科医療提供体制に関する議論の状況をみつつ、2022年3~4月ごろに検討会を開催する方向です。
 歯科技工士の業務のあり方と需給については、別途議論を行う場で検討することとしており、9月30日に第1回歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会が開催され(3面)、歯科技工所の業務形態改善について、「歯科技工所におけるテレワークのあり方」「歯科技工所間の連携のあり方」等を議論することとしています。開催回数を重ね、議論がある程度進んだ段階で、歯科技工士に関する検討会の内容を紹介します。

― 開業医の立場からは、「かかりつけ歯科医」が気になります。

坪田:ここでの「かかりつけ歯科医」は、保険制度上での限定的な「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」を直接的には議論はしていません。通常、「かかりつけ歯科医」は、患者側からみて「定期的に歯科健診を受けるなど、自分の歯や口の状態を管理してくれている歯科医」「困った時に診てくれる歯科医」であるとされています。
しかし、行政側が示している「かかりつけ歯科医」とは、地域包括ケアシステムの推進を前提としていることから、「歯科保健医療サービスを提供する時間帯、場所、年齢が変わっても、切れ目なくサービスを提供できる」「患者が求めるニーズにきめ細やかに、安心、安全な歯科保健医療サービスが提供できる」とされています。このことを背景として、かかりつけ歯科医自体を評価するのではなく機能を評価するとし、歯周病安定期治療(Ⅱ)(SPT(Ⅱ))、エナメル質初期う蝕管理加算などを行政誘導として用い、多数の施設基準を満たす医療機関を「か強診」として評価しています。「か強診」は、その施設基準から、複数回の在宅歯科診療を行い、積極的に地域包括ケアシステムに参画する歯科医療機関に対しての評価といえます。
現在、中医協において、この「か強診」の現状、特に訪問診療の実績の要件が低いことに対して疑問視する発言が見受けられます。
そのため、「か強診」、そして「か強診」以外の「かかりつけ歯科医」が行う長期管理について、次期診療報酬改定で何らかの措置を講じてくる可能性があると考えています。その際、国民側・歯科側の双方にとってより良い改定になることを強く望んでいます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2021年11月号8面掲載)

医療広告ガイドラインで最初に 気をつけるべきポイント No.1

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルティングを手掛ける専門家が解説する連載。
初回は、医療広告について―。

 2018年6月1日に改定された厚生労働省の「医療広告ガイドライン」によって、対象物が「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変更され、WEBサイトによる情報提供も規制の対象となりました(医療法等改正法)。
 変更点のポイントは、今までは閲覧者が自主的に開くWEBサイトは「広告」としての機能を持ち合わせていないという視点でしたが、これが患者の誘導として広告的に使用されているという考えに変更され、テレビCMのように規制を受けるということです。この規制に反した歯科診療所のWEBサイト、SNS、ブログ、ポータルサイトなどは、自治体(主に保健所)から指導が入ります。
 具体的には、文章による通知、もしくは電話連絡があります。そこから、1カ月以内に問題箇所を訂正して、訂正完了の申請を行えばペナルティなどはありません。しかしながら、放置すると「行政指導」「報告命令」「立入検査」「中止命令」「是正命令」と、段階ごとにペナルティを受ける可能性があります。次回No.2ではなぜ広告に気をつけるのか、どこに気をつければ良いのかを解説します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2021年11月号3面掲載)

東京医科歯科大「Voice Retriever」クラウドファンディングのご紹介

(左から)山田大志氏、戸原玄氏

◆「もう一度声を取り戻す!Voice Retrieverの開発」

現在、東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野教授の戸原玄氏、同大学院の山田大志氏が、声帯の機能を失った人々の声を取り戻す機器「Voice Retriever」の改良に向けたクラウドファンディングを実施しています(2021年11月25日23:00まで)。

Voice Retriever

「Voice Retriever」とは、喉頭摘出などで声を失った人に対する新たな人工喉頭です。従来の機器は首にうまく当てられないと共鳴しない、どうしても人工的な音になるなどの特徴があり、それらを改善してより簡便で自然な発声を目的とした口腔内装置を目指しています。
今後さらなる研究に向けてのクラウドファンディングです。

▼詳細はページURLよりご確認ください。

◆「Voice Retriever」クラウドファンディング詳細

・ページURL:https://readyfor.jp/projects/voiceretriever
・目標金額:1800万円
・形式:寄附金控除型/All of Nothing * All of Nothing形式は、期間内に集まった寄付総額が目標金額に達した場合にのみ、実行者が寄付金を受け取れる仕組み。
・公開期間:9月27日(月)~11月25日(木)
・資金使途:Voice Retrieverおよび外部装置の開発、改良、および量産化
・連絡先:yamadent68@gmail.com(山田大志)

私の目に映る歯科医療界⑧ 歯科口腔保健法10年の成果と課題/医科と共同戦線組み歯の健康予防前進を

歯科口腔保健法10年の成果と課題/医科と共同戦線組み歯の健康予防前進を

2021年は、国民皆保険制度始動から60年目、「歯科口腔保健の推進に関する法律」(以下、「歯科口腔保健法)」の制定から10年の節目の年であったが、果たしてこの10年の間に、歯科口腔保健法は十分な成果が上がったのだろうか。新型コロナウイルス禍や政治の激変に紛れて、この検証はすっかり忘れ去られてしまっている。

Ⅰ.検診率のアップなど法律の成果は道半ばの状況

歯科口腔保健法は歯科口腔保健の推進に的を絞った法律としては本邦初で、コンセプトも歯科疾患の事前予防を通じて最終的に国民の健康格差の縮小を目指すという、ある意味、歯科医療界だけでなく、国民にとっても画期的な法律の誕生だった。

この法律は、目標実現のために関連知識等の普及啓発、定期的な歯科検診の推奨、予防措置、調査・研究の推進などの施策を組み込む形になっており、歯科医療界の期待も大きかった。

しかし、現時点では手放しで成功とはいえない。確かにこの法律と同時並行で進む、いわゆる「8020運動」の成果もあって、高齢者における「歯の健康」の改善効果は出ている。8084歳での平均残歯数は2011年の12.2本から16年には15.3本に増えた。しかし、それでも北欧スウエーデンなどの先進国の水準と比べれば、まだ追いついていない。

本紙本年9月号(第618号)本欄でも指摘をしたが、高齢者の歯科治療ニーズは高いが、それに十分に歯科医療界が応え切れていない現実があることも、この法律の成果と関連づけて強調しておきたい。

何よりも、「歯の健康」予防推進に大きな役割を果たすはずの日本の歯科診療受診率は2019年度は16%弱という、厚生労働省のデータを基にした歯科機器メーカーの松風の推計がある。歯の定期的検診を受ける回数では、欧米などの先進国にまだ見劣りする。

乳幼児や児童・生徒世代の歯科健診は義務化されているが、働き盛りの現役世代から74歳までは、40歳、50歳、60歳、70歳の節目に市町村が歯周疾患検診を実施してはいるが、研究者の間からは、2015年度段階のその平均受診率は4%台にとどまっているとの推定が出ている。法律の狙いほどには、日本の歯科検診率は上がっていないのが現実だろう。

Ⅱ.口腔の健康と全身疾患の関係示す研究進む

口腔保健の予防推進によって、健康に過ごすことができる健康寿命を延ばすこと。歯科医療界や厚生労働省などの関係者がこの法律に期待したのは、まさに、このことだったはずだ。死ぬまでの寿命ではなく、いかに長く健康で暮らせるかが、本来、人にとって大事なのは当然のことだ。口腔状態が糖尿病などの様々な疾患と密接な関係があり、人間の身体的健康全般の改善にも影響するという科学的なエビデンスが当時、既に広がっていたことが、歯科口腔保健法制定の背後にあったことは間違いない。

この10年間では医学・歯学両方の研究が進み、この点を裏付ける、あるいは示唆する成果が増えている。

特に、歯周病を引き起こす口腔内の「悪玉」細菌の研究はホットな分野になっている。この細菌は、血管を通じて全身を駆け巡り、人体の各臓器に炎症などの〝悪さ〟を引き起こす。大腸経由で脳血液関門という狭い関所を通過し、脳内の炎症を促し、アルツハイマー型認知症など、中枢神経系の変性疾患に何らかの作用を及ぼしていることを示唆する研究も進んでいる。

米国ではこの仮説に基づき、実用化を目指して人に開発薬を投与し、その有効性や安全性を確認する最終臨床試験(治験)に進んでいるものも出ている。

Ⅲ.歯科健診の組み込みなど医科と予防で共同戦線を

少子高齢化の進展と高額薬剤の増加を背景に、歯科も含めた国民医療費の増加圧力は増す方向にある。

その一方で、国の予算には制約がある。その中で難題ではあるが、先の法律が目指した歯科も含めた予防医療を前進させるためにも、具体的な施策への予算を増やすことは不可避だ。

歯周病と他の疾患との関係を調べる研究や、そこから派生する疾患治療薬の開発などへの国の支援も必要だ。医科と歯科という従来の〝境〟を横断する施策も、この新しい予防分野では増えてくるだろう。

今年度末までに結論を迫られている次期診療報酬改定では、医科と歯科に分かれた従来の予算の枠取りは依然有効だろうが、研究開発や健康予防措置に投じる予防医療への予算では、医科、歯科の両医療界の敷居にこだわるあり方を変える必要があるのではないか。

研究開発もそうだが、予防措置も医科、歯科の境界をまたぐ措置が必要だ。例えば、働き盛り世代の歯周疾患等健診を、会社などで毎年実施する健康診断に組み込むことだ。この構想自体は、既に検討課題に挙がってはいるが、実現はまだ先のことだ。会社の健康診断のメニューには、眼科や耳鼻科領域の項目はあるのに、歯科健診がなくていいという理由は乏しい。人生で働き盛り期間中心の約40年間の国民の健康増進・予防のためにも、先進国として政府が率先して歯科健診受診率の向上を図る必要があるはずだ。

医科と歯科の従来の縄張り・意識の壁が、もしここで邪魔をしているのだとしたら、国民の健康と安全のためにも、大きな損失につながる由々しき問題だ。

歯科医療界から医科と共同戦線を張れるものがないのか、歯科口腔保健法の施行10年の節目の年に当たって、じっくり再考し、積極的に提案してみてはいかがだろうか。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

「東京歯科保険医新聞」2021111日号10面掲載

医薬情報ネットワークの基盤の在り方を検討

 厚生労働省は1110日、「医薬情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」をオンラインで開催した。同ワーキンググループは、健康・医療・介護情報利活用検討会の検討事項のうち、全国的な医療情報ネットワークの基盤に関する議論を行うため設置されたもの。

 データヘルス改革に関する工程表に従って、医療情報ネットワークの基盤の在り方(主体、費用、オンライン資格確認等システムや政府共通基盤との関係、運用開始時期等)や、技術的な要件について、2022年度までに結論を得る。

 同日は医療情報の活用の現状や、電子カルテ情報と交換方式の標準化などをテーマに議論し、医療現場で必要な情報を共有すべきか意見交換が行われた。

 ワーキンググループでは2021年度中に、①電子カルテ情報の標準化と地域医療情報連携ネットワークの現状、②中央に集約して共有する医療情報と施設間などで交換する医療情報の検討、③医療情報の共有・交換に関する手続きと方式の検討、④電子カルテの普及方策と情報化支援基金の要件などの検討―について論点を整理する。

過去最高の44兆3895億円/厚生労働省が「2019年度国民医療費」を発表

厚生労働省は9日、「2019年度国民医療費」(確定値)を発表した。国民医療費全体の金額は対前年度比2.3%増の443895億円となり、前年度を上回る過去最高額となっているほか、国民1人当たりでは2.5%増の351800円となり、過去3年で見ると、ともに過去最高額となっている。その背景には、高齢化進展、医療の高度化などがあるものとみられる。また、国民医療費が40兆円を超えるのは7年連続となっている。各メディアの報道によると、厚生労働省は、新型コロナ禍の影響に関しては、「2019年度は、本格的に感染が拡大する前だったため、その影響はない」としている。

◆歯科医療費は構成比6.8%で3150億円に

今回の国民医療費を診療種類別にみると、医科診療医療費は319,583億円(構成割合72.0%)、そのうち入院医療費は168,992億円(同38.1%)、入院外医療費は15591億円(同33.9%)となっている。

また、歯科診療医療費は3150億円(同6.8%)、薬局調剤医療費は78,411億円(同17.7%)、入院時食事・生活医療費は7,901億円(同1.8%)、訪問看護医療費は2,727億円(同0.6%)、療養費等は5,124億円(同1.2%)となっている。

対前年度増減率をみると、医科診療医療費は2.0%の増加、歯科診療医療費は1.9%の増加、薬局調剤医療費は3.6%の増加となっている。

65歳以上の医療費は27629億円に

そのほか、年齢階層別に国民医療費を見ると、65歳以上の高齢者の総額が27629億円で全体の約6割を占めた。1人当たりでは65歳未満が191900円だったのに対し、65歳以上は754200円で4倍近い水準となっている。

渡辺孝一氏が4回目の当選果たす/2021年10月31日の第49回衆議院選挙

昨日、1031日に行われた第49回衆議院選挙で、歯科医師の国会議員、いわゆる歯系議員として立候補していた渡辺孝一氏が4回目の当選を果たした。また、同じく歯系議員として立候補していた長谷川嘉一氏は、惜しくも及ばなかった。

渡辺孝一(わたなべ・こういち)氏は、19571125日生まれ64歳。東日本学園大学卒(現:北海道医療大学)卒。所属政党は自由民主党で、今回の衆議院選挙で当選4回目。選挙区は、比例北海道ブロックとなっている。

◆衆参両院の歯系議員4名はすべて与党自民党議員

なお、現在、歯系議員は衆参両院合わせ、以下の5氏となっているが、すべて自民党議員となっている。

【衆議院議員】

①渡辺孝一(わたなべ・こういち):東日本学園大学卒(現:北海道医療大学)

1957年1125日生まれ56歳/選挙区:比例北海道ブロック/政党:自民党

【参議院議員】

②島村大(しまむら・だい):東京歯科大学卒

1960年811日生まれ53歳/選挙区:神奈川選挙区/政党:自民党

③関口昌一氏(せきぐち・まさかず):城西歯科大学(現・明海大学)歯学部卒

1953年64日生まれ60歳/選挙区:埼玉県/政党:自民党

④比嘉奈津美(ひが・なつみ):福岡歯科大学卒

1958年103日生まれ63歳/選挙区:比例代表/政党:自民党

新春号特別企画<写真作品の募集>

 

◆東京歯科保険医新聞では、2022年新春の紙面を彩る会員読者の写真の募集をしています

 写真のテーマは『希望』です。2020年から新型コロナウイルスが世界的に流行し、私たちは生活様式の変化を余儀なくされました、終息にはまだ時間を要すると思われますが、しかし、その中でも、必ず「希望」はあるはずです。新春の紙面を飾る「希望」を表現した写真作品の投稿を期待しています。皆さまからのご応募をお待ちしております。

▽締め切り 11月30日必着

▽応募方法 

E-mail もしくは郵送でご応募ください。

E-mail:info@tokyo-sk.com

郵送先:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-8

宛先:東京歯科保険医協会 広報・ホームページ部

▽作品

写真データは1MB以上。写真プリントの場合、サイズは2L判(白黒またはカラープリント)。必ず作品名を明記してください。写真とともに「作品名」「氏名」「地区」を掲載いたします。

ご応募いただいた写真データ等はご返却いたしません。なお、掲載する写真は、厳正な審査を経て決定いたします。

【教えて!会長!! Vol.51】2022年度 診療報酬改定に向けて

― 2022年4月の「2022年度診療報酬改定」まで6カ月ですが、改定はどうなりそうですか。

坪田有史会長:現在までに、中央社会保険医療協議会総会(以下、「中医協」)で、「歯科用貴金属価格の随時改定について」「歯科医療(その1)」「在宅(その1) について」が議論され、9月15日に「診療報酬改定に係る議論の中間とりまとめについて」で中医協委員から出された主な意見がとりまとめられています。
8月4日の中医協で厚生労働省側は、「歯科医療に係る歯科診療報酬上の評価について」として、下記のようにまとめています。
これらの論点を受けての中医協委員の発言を踏まえ、私見を述べさせていただくと、以下のようになります。

▼かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)や在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の役割
 や要件が、行政側の目指している地域包括ケアシステムの推進に対して十分でないとの意見があ
 り、現在の施設基準などの見直しが行われる可能性があります。
▼歯科側は、さらなる重症化予防や口腔機能の継続管理について評価を求めていて、一定の成果は
 認識されている。しかし、治療と予防の境界線を明瞭にすべきとの意見があり、将来の歯科医療
 を考えれば、継続管理の重要性をさらに訴える必要があります。
▼歯科矯正治療は、原則保険給付外ですが、小児の口腔機能の改善を含め、必要性が認められ、保
 険での矯正治療の適用範囲拡大が議論される可能性があります。
▼歯科用貴金属の代替材料について、現時点ではその範囲は限定的であるため、さらなる代替技
 術・材料への推進が必要とされています。今回の改定には難しいですが、PEEK材などの研究を産
 学臨の協働により進め、高いレベルでのエビデンスを構築した上で保険適用が望まれます。

 紙面の都合上、そのほか多くを記せませんが、行政側が明確に決めていることは、まだないと考えています。今後、「歯科医療(その2)」などの中医協の議論に注視する必要があります。

― より良い改定になるためにできることはありますか。

坪田:協会は、今月から保団連が全国で行う「疲弊した医療提供体制を立て直す診療報酬改定を求める医師・歯科医師要請署名」に賛同して会員の先生方に署名をお願いします。より良い改定を求めるため、日々歯科医療を提供している先生方のご意見をぜひお寄せください。多くの先生方の声を集め、行政・立法側に要請しますので、よろしくお願い申し上げます。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2021年10月号8面掲載)

第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ

 厚生労働省は10月13日、第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループをオンライン開催した。本ワーキンググループは、今後の高齢化の進展や地域医療構想により、病床の機能分化・連携による受け皿としての医療需要増大に対して、在宅医療を効率的に提供できる体制を構築するために、介護との連携を含めた今後の在宅医療の在り方等について、具体的に検討するために設置されたもの。
 第1回ワーキンググループでは、①第8次医療計画における在宅医療及び医療・介護連携の体制整備の取組について、②その他在宅医療及び医療・介護連携に係る施策の実施に必要な事項―について検討した。
 今後は「在宅医療の基盤整備」「患者の状態に応じた、質の高い在宅医療提供体制の確保」「災害時や新興感染症拡大時における在宅医療の提供体制」について検討していく。
 なお、同ワーキンググループの座長には、田中滋氏(公立大学法人埼玉県立大学理事長)を選出した。
 構成員は以下の通り。(敬称略)
大三千晴(徳島県美波町福祉課長)、荻野構一(日本薬剤師会常務理事)、長内繁樹(大阪府豊中市市長)、角野文彦(滋賀県健康医療福祉部理事)、佐藤保(日本歯科医師会副会長)、島田潔(全国在宅療養支援医協会常任理事)、鈴木邦彦(日本医療法人協会副会長)、髙砂裕子(全国訪問看護事業協会副会長)、田中滋(埼玉県立大学理事長)、田母神裕美(日本看護協会常任理事)、中林弘明(日本介護支援専門員協会常任理事)、増井英紀(全国健康保険協会本部企画部長)、松本吉郎(日本医師会常任理事)、馬屋原健(日本精神科病院協会常務理事)、本見研介(全国介護事業者協議会理事)

私の目に映る歯科医療界⑦ アンケートデータは有効な武器になる/中長期課題は国民を説得できる方策の構築を

アンケートデータは有効な武器になる/中長期課題は国民を説得できる方策の構築を

本年8月末、厚生労働省から2020年度の概算医療費が発表された。その金額は42.2兆円で、前年度比で1.4兆円、率で3.2%の減少となった。16年度以来5年ぶりの減少で、減少幅も大きかったことが特徴だ。

その主因は、新型コロナウイルス感染拡大による患者の受診控えだ。 診療分野別に見ると、外来と入院を合わせた医科は31.3兆円(前年度比3.8%減)、調剤7.5兆円(同2.7%減)に対し、歯科は3.0兆円(同0.8%減)となっている。

Ⅰ.概算医療費は歯科微減もコロナの打撃は小さくない

この数字だけを見れば、歯科へのコロナのダメージは浅いように見えるが、そんなことはない。受診した延患者数(受診延日数)は7%近くも減少していて、1日あたりの診察点数・1件当たりの点数の伸びでカバーしているのが実態だ。歯科診療所の経営は楽でないが、報道の仕方次第では、国民の受け止めも違ってくる。

9月1日の日経新聞の1面記事は、「医療費最大の1.4兆円減」と大きく打った大見出しに加え、「コスト抑制の余地映す」との小見出しがついている。記事本文も識者の声を混じえながら、コロナ受診控えとは別に、医療費の助成が大きな小児科などを例に挙げながら、過剰診療の可能性があることなどを指摘している。不要不急の受診を抑え、医療費抑制の取り組みの必要性を強調する内容になっている。うがった見方をすれば、概算医療費の減少からは、過去に無駄な診療があったことが分かったとも読み取れる記事になっている。 これを完全否定する必要はないが、必要な治療を遅らせてしまっていないかなどの受診控えのマイナス面にも目を向けてほしかった、というのが率直な思いだ。

Ⅱ.コロナ感染の影響実態映す東京歯科保険医協会アンケート

そうした中、たまたまコロナ感染症の影響などを尋ねた東京歯科保険医協会の会員アンケートの集計結果が出ているのを知り、ホームページに載っている詳細な内容を拝見した(概要は91日付けの当機関紙にもグラフ付きで報じられている)。

2021年4月の1年前との比較だが、医業総収入が増加したとの回答が43%で、減少したとの34%を少し上回っている。最新の概算医療費のデータは213月までの1年間の動きをまとめていて、対象年月の違いから正確な対比はできないが、増加組と減少組がかなり拮抗するとの貴協会の回答は、歯科の概算医療費微減とほぼ足並みを合わせた動きのように推察できる。

貴協会の今回のデータで興味深かったのは、訪問診療の動きだ。1年前と比べて増加したと回答した会員が21%を占め、減少したとの回答割合30%を下回っている。外来患者数は1年前に比べ増加したとの回答が43%、減少したとの回答34%を上回っていて回復の兆しが見えるのと違って、立ち直りが鈍い傾向が見て取れる。居宅にせよ、介護等施設住まいにせよ、訪問診療の主顧客である高齢者や介護業者などが、コロナ感染を恐れる等の理由から歯科での訪問診療を手控えしている様子が、このデータ結果の背後にうかがえる。

もうひとつ、このアンケート実施がよかったのは、新型コロナ感染拡大の患者への影響を会員の歯科医師などに聞いている点だ。

直接診察している歯科医師の目から見た回答は、コロナ禍を知る上で国民にとっても非常に貴重だ。概算医療費の数字上の動きからは決して分からない患者への影響を知る、つまり先述の日経記事に欠けている視点を補う上でも重要なデータといえるからだ。

回答総数586件のうち、回答が多かった順に挙げると、歯周病の悪化が378件、う蝕の進行が303件、義歯の脱離・不適合168件と続いている。

「感染拡大の影響で検診の自粛や受診控えが見られるため、来院時には悪化しているケースが多くなっている」「高齢者の(来院)中断から再開までの期間が長くなり予後不良になるケースが目につく」など、患者の症状悪化につながる悪影響を指摘する会員歯科医師の声の、まさにオンパレードとなっていて、実に興味深かった。

Ⅲ.国民向けにいかにうまく伝えられるかが課題に

患者治療に携わる歯科医師からの生の声、医療現場に根差した実際の諸データが、年末に向け本格化する中医協の議論にも、政治家や厚労省などへの陳情・要求する上でも、強力な武器になることは間違いない。

歯科技工士、金パラ逆ザヤ、今回のコロナ感染拡大の影響などタイムリーなアンケートを実施し、公開してきた貴協会の努力には敬意を表するが、さらに一歩進んで、これを国民にどううまく伝えられるかも検討されてはどうか。

中長期での医療費増加の解決は、日本の大きな課題だ。国民の中にも歯科を含めて医療費に過剰診療要素があり、診療報酬の引き下げを漠然と支持する空気があることも事実だ。これには正確な情報不足に起因する部分も少なくない。そのためにも、低く抑えられてきた歯科診療報酬のアップが、歯科医師の利益というだけでなく、国民にとっても歯科治療の質向上の観点から必要なことを、厚労省や政治家、中医協の委員など従来のインナーサークルだけでなく、最終的な費用負担者である国民からも納得してもらうこと、さらにはその前門になるメディアにも理解を深めてもらうことが、どうしても必要になる。

◆困難な課題だが歯科医療界を挙げ…

困難な課題だが、歯科医療界を挙げて、真正面からここにぶつかることからしか道は開けないはずだ。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

2021年(令和3年)101日号10面掲載

第4回歯科医療提供体制等に関する検討会

 厚生労働省は107日、第4回 歯科医療提供体制等に関する検討会(座長:須田英明(東京医科歯科大学医歯学総合研究科名誉教授)をオンラインにより開催した。各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等によって評価を行ったうえで不足しているサービスの充実を図れるか、また、かかりつけ歯科医の充実度等についてどのような指標で可視化が図れるかについて、第3回検討会の意見を踏まえ議論した。

 「歯科医療機関の機能分化と連携」と「かかりつけ歯科医の機能」

  前検討会は、構成員から「地域で必要な歯科の診療内容を吟味し、それに対応できる診診連携、病診連携の状況を見る必要がある」「『連携』について、具体的に『いつ』『誰が』『何を』等を検討することが重要。客観的に評価可能な指標や基準があるとよい」「地域によって、今後どのような歯科医療が必要となるかを評価する指標が必要」などの意見が上がっていた。

 今回は、前回の議論等を踏まえ、①各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等によって評価を行ったうえで、当該評価結果に基づき、不足しているサービスの充実を図るべきであると考えるが、病診連携、診診連携、医科歯科連携等に係るニーズに対する過不足等について、どのような指標で見える化を図ることができるか、②かかりつけ歯科医の充実度等について、どのような指標で見える化を図ることができるか―などについて、検討が加えられた。

 地域における障害者(障害児)への歯科医療提供体制

  また、地域における障がい者(障がい児)への歯科医療提供体制も論議し、①通院や受療が困難な地域の障がい児・者等への歯科保健医療サービス、②各地域におけるサービスの過不足について、統計調査やアンケート結果等の評価に基づき、各地域で不足しているサービスの充実を図るべきだが、地域の障がい児・者等への歯科保健医療の充足状況の把握が進まない理由としては何か、③地域の障がい児・者等への歯科保健医療の充実度等は、どのような指標で見える化できるか―などが論点とされ、構成員に意見が求められた。