IT相談室

【IT相談室】「情報セキュリティ10大脅威2024」解説 ③

最終的には「人」の問題/重要なのは情報リテラシー

今回は独立行政法人「情報処理推進機構」(以下、IPA)が発表している「情報セキュリティ10大脅威2024」の解説の最終回です。

◆「人」を間違えさせることが目的

前回にも解説しましたが、「組織」の脅威は用語が難解です。

 ゼロデイ攻撃って何?

 サプライチェーンの弱点ってどこ?

などと感じる方も多いかと思います。しかし、内容を見ると、脅かしたり、正常なビジネスを装ったりして言葉巧みに間違った情報を信じさせて、私たちに間違った操作をさせる手口とわかります。第3位の内部不正、つまり故意による被害も含め、人が正しい行動を取っていれば被害は防げます。問題は、正しい行動をするのが難しいことです。

脅威は日々進歩するのに対し、情報セキュリティ対策の具体的な取り組みについては、目新しいものはありません。これをやれば大丈夫です、という対策はないのです。

◆情報リテラシーを高め続ける

歯科医院の方々、特に経営者・院長先生にお願いしたいのは、ご自身の情報リテラシーを高めること、高め続けることです。わからないからとスタッフに丸投げしたり、迷惑メールは削除すればいいんだよね、などと対策をパターン化してはいけません。

折しも、KADOKAWAグループのニコニコ動画が大きな被害を受けて話題になりました。このようなニュースに興味を持ち、特に原因と今後の対策について理解しようと努めることが、皆さまの情報セキュリティを高める大きな手助けとなるでしょう。

なお、次回は少し趣きを変えて「電動歯ブラシが乗っ取られたら」という記事をご紹介します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2024年9月号8面掲載)

【IT相談室】「情報セキュリティ10大脅威2024」解説 ②

まず「脅威」の内容を理解しましょう

今回は独立行政法人「情報処理推進機構」(以下、IPA)発表の「情報セキュリティ10大脅威2024」の解説の2回目です。「情報セキュリティ10大脅威2024」は「個人」と「組織」の2つに分かれています。本紙は歯科医院向けの媒体ですので、「個人」に触れた後、「組織」を中心に解説します。次回の最終回も引き続き「組織」について解説します。

「個人」の脅威とは「個人」の脅威は、「ネット上の誹謗・中傷・デマ」を除けば、さまざまな手法を使ってID、パスワード、クレジットカード番号などを盗むか、直接的に要求して金銭を騙し取ることから、把握しやすいことが特徴です。いわゆる特殊詐欺の被害が高止まりしていることからも分かる通り大きな脅威であり、ご自身のID、パスワード、出金をこまめにチェックし、問題があれば素早く対処することが必要です。

◆ 「組織」の脅威とは

「組織」の脅威には、前回解説した「ランサムウエア」のように、パッと見ただけでは内容がわからないものがあります。

例えば、「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」は、自院ではなく取引先などを経由して侵入して来る脅威となっています。また、「標的型攻撃による機密情報の窃取」は大きな組織に侵入し、結果的に大きな被害を生むことが脅威となっており、「修正プログラムの公開前を狙う攻撃(ゼロデイ攻撃)」や「脆弱性対策情報の公開に伴う悪用」は、公表されたPCやスマートフォンなどの機器やプログラムの弱点を狙って来ることが脅威となっています。

一読後に順位を見て、分かるものだけ注意するのではなく、分からない内容については検索して調べ、一定の理解をしておくことをお勧めします。 次回は、「情報セキュリティ10大脅威2024」解説の最終回です。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2024年8月号8面掲載

「情報セキュリティ10大脅威2024」解説①は202461日号8面に掲載しています。協会ホームページには2024年6月7日(金)にも掲載しており、ホームページ内「IT相談室」で検索していただくと、すぐにご覧になれます。

【IT相談室】「情報セキュリティ10大脅威2024」解説 ①

【IT相談室】「情報セキュリティ10大脅威2024」解説 ①

情報セキュリティのオールインワンページ

今回から、独立行政法人「情報処理推進機構」(以下、IPA)が発表している「情報セキュリティ10大脅威2024」について、3回にわたり解説していきます。「情報セキュリティ10大脅威」は2014年から毎年発表されており、情報セキュリティの問題点と対策がわかりやすくまとめられています。IPAのホームページにも公開されているので、医療機関従事者の方々にも、ぜひご覧いただきたいです。

◆IPAについて

IPAは、04年に設立された経済産業省所管の独立行政法人です。この独法、身近なところでは、受験者数で自動車運転免許に次ぐIT関連の国家資格「情報処理技術者試験」( 通称「情処」じょうしょ)事業、「未到ソフトウエア」事業、「IPAフォント」公開など、幅広く活動しています。

◆新しい脅威は

「ランサムウエア」「情報セキュリティ10大脅威」は、個人向けと組織向けに分かれており、本連載では組織向けの脅威を解説していきます。

21年から引き続き1位は「ランサムウエア」です。比較的新しい脅威ですので、まずは名前を覚えてください。ランサムウエアはパソコン内や外付けで、ネットワーク上のデータを暗号化してアクセスを不能にし、解除のパスワードと引き換えに金銭を要求します。

対策としては、通常のセキュリティ対策に加え、外部クラウドや通常使用しているパソコンなどと直接接続しないハードディスクなどへのバックアップが有効です。

件数としては多くないと思われますが、いわゆる身代金や調査・復旧の手間など、損害が大きいのが特徴です。ある日突然、院内のパソコンやすべてのデータが使えなくなったら…と想像していただき、対策を急ぎ、万全を期すことをお薦めします。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞20246月号8面掲載

【IT相談室】「Googleビジネスプロフィール」の大きなリスク③ 完

【IT相談室】「Googleビジネスプロフィール」の大きなリスク③ 完

管理者権限の確認について

前回までは「Googleビジネスプロフィール」がどのようなものか、どのようなリスクが潜んでいるかを中心にお話ししました。今回は、そのリスクに対してどのように対応すべきかを考えます。

◆管理権限者の確認を

まず、歯科医院におけるGoogleビジネスプロフィールのオーナー権限、管理者権限は「誰が持っているのか」を確認する必要があります。

もしWEBサイトの管理やインターネット全般の支援をしている業者と契約しているなら、その担当者へ現状の確認を依頼するとすぐに教えてくれます。

そのような業者の支援がなく、Googleビジネスプロフィールのことを「初めて聞いた」「よくわからない」という状況でしたら、医院の名前で検索してGoogleビジネスプロフィールを確認してみてください。

◆具体的な確認方法

確認方法としては、まずGoogleビジネスプロフィールのページ(検索ですぐに見つけることができます)にログインします。

ログインIDやパスワードは普段使用している、もしくは医院用のGmailアドレスです。そもそもGoogleビジネスプロフィールを使用していない、Googleのメールアドレスを持っていないという方は、Googleビジネスプロフィールへの登録を医院側では行っていないはずです。

Googleビジネスプロフィールへログイン後に医院の情報が登録されていた形跡があれば、ご自身がオーナーとして登録されています。なければ、誰か別の人間が登録していることになります。その場合は、ご自身の歯科医院名で検索して表示されたGoogleビジネスプロフィールに「このビジネスのオーナーですか?」というリンクがあります。そのリンクをクリックすると、現在オーナーとして登録されている人物に「アクセス権をリクエスト」することができます。

アクセス権のリクエストによりオーナー権限を譲り渡してもらうことで、他者に管理させずにご自身での管理が可能になります。

悪意を持った第三者が、オーナー権限の譲渡を拒む場合もあります。その場合はGoogleのサポートへ連絡してください。

この問題は、医院側がGoogleビジネスプロフィールを積極的に管理・更新することでリスクを軽減し、医院の情報を正しく発信することができ、さらにリスクをベネフィットに変えることができるものですので、確認を強くおすすめします。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞20244月号5面掲載)

【IT相談室】 「Googleビジネスプロフィール」の大きなリスク②

管理者権限が第三者に渡ると…?

前回から「Googleビジネスプロフィール」がどのようなものかお話ししていますが、今回は管理者の権限を第三者(歯科医院関係者、管理委託をしている業者以外)が取得すると、どのようなリスクが生じるのか考えます。

私が今まで受けた相談について、内容をもとに5項目に分類してみました。 

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1)誤った基本情報の表示

第三者である不正使用者が管理者登録を行うと、正確ではない基本情報(住所、電話番号、営業時間など)が表示される可能性があります。これにより、患者さんの正しい情報発見が難しくなります。

2)予約や問い合わせの減少

誤った情報が表示されることで、患者さんが予約や問い合わせを行う際に混乱が生じ、歯科医院へのアクセスが減少する可能性があります。        

3)信頼性の損失

誤った情報や不正確なレビューなどが掲載されることで、患者さんや関係者が歯科医院に対して信頼を失う可能性があります。  

4)競合他社からの攻撃

競合する歯科医院や悪意ある第三者がビジネスプロフィールを不正に変更し、自院に不利益をもたらす可能性があります。    

5)法的な問題

不正使用は、法的な問題につながる可能性があります。商標や著作権の侵害、詐欺行為、悪意ある行為などが含まれる場合、法的手続きが検討される場合があります。

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次回は、以上のような事態に陥らないために、どうすれば良いかを考え、この項を閉じたいと思います。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2024年3月号11面掲載)

【IT相談室】 「Googleビジネスプロフィール」の大きなリスク①

管理機能が第三者の手中に!!

「Googleビジネスプロフィール」は、事業者が自分の事業や店舗をGoogle上で効果的に紹介し、検索結果に表示されるようにするための無料のツールです。今回から3回にわたり、このツールの特徴と注意点などを紹介します。

Googleの検索やGoogleマップで医院名を検索した時、自動的に表示されるプロフィール機能を見たことはないでしょうか。Googleビジネスプロフィールを作成すると事業者の基本情報(営業時間、住所、電話番号など)がGoogleマップや検索結果に表示され、ユーザーが事業者の詳細情報を簡単に見つけ出すことができます。近年、よく誹謗中傷を書かれたり、マイナス評価をつけられたりするなど、歯科医院の運営側にさまざまな問題や不快感を突き付けてくる〝あれ〞です。
基本情報以外にも︑写真や動画の公開やサービス情報の掲載、予約ボタンの設置など、複数の機能を持っています。
ところで、「Googleマップへの口コミ」をご存知でしょうか。実は、「Googleビジネスプロフィール」は、この口コミへの返信を書いたり、削除依頼を出したりする管理機能も持っています。しかし、この「Googleビジネスプロフィール」の管理登録は、誰にでもできてしまうのです。
Googleが自動的に行っているサービスとはいえ、医院の大切な情報や口コミの返信を見ず知らずの業者や第三者が勝手に行っていたとしたら、一体どうなるでしょうか。悪意を持って情報を改ざんされる場合もあります。
次回は、「Googleビジネスプロフィール」には、どのようなリスクが潜んでいるのか、どう対策すれば良いのかを考えます。

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クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2024年2月号3面掲載)

※「東京歯科保険医新聞」2024年1月号の「IT相談室」はお休みました。

【IT相談室】 歯科医院の効果的なチャットアプリ活用と労働基準法の遵守 その2

今回は、「歯科医院の効果的なチャットアプリ活用と労働基準法の遵守」の2回目です。まず第1に、歯科医院でどのようにチャットアプリを運用すべきかを考えます。そして第2に、チャットアプリの運用上の注意点をご紹介します。

【チャットアプリの運用方法】

労働基準法や就業規則、労働契約など(以下、労基法等)を遵守しながらチャットアプリを効果的に活用するためには、以下のポイントに留意することが大切です。          

▼明確かつシンプルに:

チャットアプリを利用しての連絡事項は、明確かつシンプルにし、できるだけ具体的な表現にします。チャットでのやり取りは、早く終わるように心がけましょう。

▼就業時間内の活用:

業務連絡は原則として就業時間内に行い、就業時間外の連絡は避けます。就業時間外に使用する可能性がある場合には、あらかじめ使用規則を定めておきます。

▼緊急時の了解取得:

就業時間外の緊急連絡用にチャットを活用する場合についても、あらかじめ規則を定めておきます。

▼ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の尊重:

チャットアプリの使用に関する規則を作成する際には、ワーク・ライフ・バランスにも配慮します。規則を定めれば良いというものではなく、スタッフのプライベートな時間を尊重するように配慮します。

▼定期的な評価と改善:

チャットアプリの使用に関する規則は定期的に再評価し、スタッフの意見を取り入れつつ改善していくことが重要です。 

          

【チャットアプリの運用上の注意点】 

▼労働時間の記録:

操作開始時刻と終了時刻を記録します。就業時間外の操作であれば時間外労働になります。         

▼トレーニングとガイドラインの提供:

新入社員やスタッフに対して、チャットアプリの適切な使用方法とルールをトレーニングやガイドラインを通じて提供します。操作方法が分からないために業務に支障が生じないようにします

▼透明なコミュニケーション:

スタッフとのコミュニケーションを透明かつ開かれた形で行うことが大切です。労働時間や業務連絡に関するポリシーを共有し、スタッフからの意見や質問を歓迎します。   

▼柔軟な対応:

スタッフの個々の状況やライフスタイルに合わせて、柔軟な対応を心がけましょう。  

▼継続的な改善:

チャットアプリの運用方法は変化する状況に合わせて適宜見直し、改善します。スタッフからの意見や要望については適切に対応し、必要に応じて労働環境の向上に活用します。

           

【まとめ/労働法制遵守の理解を】

以上を総括すると、歯科医院の経営者としては、チャットアプリを効果的に活用する前提条件として、労働法制の遵守が必要です。軽い気持ちで導入をしてしまうと、就業規則などに抵触してしまう場合があるので注意します。また、チャットアプリでの会話が原因で、人間関係に傷がついてしまう場合もあり、この点にも注意が必要です。

チャットアプリの導入・活用にあたっては、便利な反面、注意すべき点も多いことをよく理解しておくことが必要です。

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クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年11月号11面掲載)

※「東京歯科保険医新聞」10月号の「IT相談室」はお休みました。

【IT相談室】 歯科医院の効果的なチャットアプリ活用と労働基準法の遵守 その1

近年、SNSやチャットアプリ(以下、SNSなど)がコミュニケーション手段として広く活用されるようになりました。歯科医院においても業務の効率化やスムーズなコミュニケーションの手段として活用するケースが増えています。しかし、SNSなどを活用した業務連絡等については、一斉に連絡ができるなど便利な反面、注意しなければいけない点があります。これらの点について解説し、適切な運用方法について考えてみましょう。

【労働条件とチャットアプリの関係】

労働基準法は、労働者の権利保護と健全な労働環境の確保を目的として制定された法律です。この法律に基づき、就業規則や労働契約などが結ばれ、賃金や労働時間、休憩時間など労働条件が定められます。さて、労働基準法や就業規則、労働契約など(以下、労働基準法等)で定められている就業時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間のことであり、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。休憩時間や終業時刻以後の時間は、労働者は使用者の指揮命令下にはありません。このことを念頭に少し考えてみたいと思います。

【就業時間との関係】

就業時間外にSNSなどを使って業務連絡を行う場合には注意が必要です。仕事に関する連絡は簡単な場合であっても〝仕事〞であり、賃金支払いの対象となります。また、就業時間外に送られたSNSなどの連絡を「見なければいけない」「必要に応じて返信をしなければいけない」など、あらかじめ定めておく必要もあります。これらを事前に定めておくことで、業務連絡としての活用が可能となるでしょう。これらの取り決めがない場合は、見るも見ないも受け手任せになり、業務連絡としての役割を果たすことができません。また、緊急連絡としての機能も果たせなくなります。前提として、就業時間外にSNSなどを利用した業務連絡を行う場合には、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)の締結・届出が必要になります。36協定の締結・届出がない場合には、就業時間後や休日にSNSなどを活用した業務連絡は違反行為になりますので注意が必要です。

【自己判断による労働の回避】

SNSなどで業務連絡を行ったところ、スタッフが気を利かせて、就業時間外に自主的に翌日の準備を行った。仕事への意欲については褒めたいところですが、この場合も時間外労働として賃金が発生する可能性があります。明確な指示はなくとも、SNSなどの連絡が〝指示〞と取られれば、時間外労働と解釈されかねません。

【利用の制限】

36協定を締結・届出し、SNSなどの利用について取り決めをしてもそれだけでは不十分です。先輩スタッフが後輩スタッフに、就業時間外にSNSなどを活用して仕事のアドバイスをするなども考えられます。就業時間外にメモのつもりで行ったSNSなどの投稿を見た後輩スタッフが、そのことでやり取りを行うなどした場合には、業務と取られる可能性があります。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞20239月号11面掲載)

※「東京歯科保険医新聞」7月号の「IT相談室」はお休みました。

【IT相談室】 マイナンバーカードの不具合

今年に入ってからマイナンバーカードについてのニュースを聞かない日はありません。今回は一体、何が起きているのかを確認したいと思います。

最近、一番多いケースが、「他人の情報に紐づけられて間違った情報が表示される」もしくは「誤って紐づいた口座にお金が振り込まれる」などの「個人の誤認」です。

そもそもマイナンバーカードは、当初、住民基本台帳と似たような機能を担うことを想定して設計されていました。主に行政サービスを受ける際の本人であることの証明や、個人データへの参照の鍵とすることが目的でした。

個人に関する情報は、国、都道府県、区市町村などがそれぞれ個別に管理しています。これをマイナンバーカードを鍵として、ばらばらに管理された情報を統合するのではなく、それぞれを「連携」させることで参照できる仕組みとすることが狙いです。

今では銀行口座、健康保険証、今後は運転免許証とも連携します。

この「連携」は国、都道府県、区市町村など別々のデータベースに接続していくので非常に煩雑で「間違い」「誤解」「うっかり」などの人的なミスが多く起こり得ます。このため、連携システム構築作業の中に「徹底したテストと改善」を実施する必要があります。今の問題は、それができていないために起きているのであり、設計段階の問題とも言えます。そしてここまで大規模な情報連携の経験を誰も持っていないことも根本的な問題です。

元々、マイナンバーの設計を行った時点で、ここまで広範囲に連携を行うことが計画されていたなら、もっと準備も上手にできたことでしょう。締切だけ決まっていて計画もなく、とりあえずスタートさせるという流れに、どの自治体の担当者も追い立てられているのではないでしょうか。さまざまな情報との連携を包括的に考え計画を立てなければ、今後もこのような問題の発生は必ず続きます。まさにⅠT系の「あるある」です。

さて、ここからは実際に歯科医院内で似たようなトラブルが起きた場合のお話です。

トラブルが起きた時には、院内の操作や機械に問題があったのか、それともデータベースの情報連携に問題があるのか、現場スタッフは瞬時に判断ができないので一時的な混乱が予想されます。

「他人の情報が表示される。本人の情報が参照できない」という場合はデータベースの情報連携に問題がある場合が多いです。さまざまなトラブルを想定して、現場スタッフは焦らず騒がず対処できるように、日頃から院内でのコミュニケーションを取っておくとよいでしょう。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞20238月号4面掲載)

※「東京歯科保険医新聞」7月号「IT相談室」はお休みしました。

【IT相談室】初心者向けIT用語を解説

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回のテーマは、診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?
―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 ここ最近の本連載では、レセコンやオンライン資格確認システムの管理、運用上のポイントや、サイバー攻撃に関する内容を執筆してきました。一方で、会員の先生方から「クラウド、サーバー、何のことやら理解できず…」「初心者もわかるような解説がほしい!」「用語が難しくて大変」というご意見をいただいています。
そこで今回は、インターネットやWEBに関連した基本的な用語を解説してみたいと思います。たくさんの用語があるので、この連載だけでは書ききれませんが、ネット関係の業者との打ち合わせや、自院のネット環境を整える時のためなど…何かのきっかけになればと思います。それではどうぞ。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年6月号11面掲載)

【IT相談室】診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回のテーマは、診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?
―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 診療室のレセコンに限らず、個人で使用しているパソコンからUSBを介して他のパソコンとファイルを共有する場合には、ウイルス感染のリスクが常に存在します。特に、「入れた記憶の無いどこかで見たことのあるアイコン」が入っていた場合には、ウイルス感染が懸念され、USBを媒介とした感染である可能性があります。
 このようなUSBの使用による感染を回避するためには、以下の注意点を守ることが重要です。
まず、ウイルス感染のリスクを軽減するために、USBを使用する前には必ずウイルススキャンを実行し、USBそのものがウイルスに感染していない安全な状態であることを確認する必要があります。また、ファイルを共有する際には、共有先のパソコンがウイルス対策ソフトウェアで保護されていることが大切です。万が一、USBが感染している場合でも、ウイルス対策ソフトウェアがパソコンを感染から守ってくれます。
 ウイルスに感染してしまうと、センシティブな医療情報が含まれるレセコンのデータが漏洩するリスクがあります。漏洩した情報が悪用された場合、患者や社会からの信頼を失いかねません。そのため、パソコン間でファイルを共有する場合には、細心の注意を払うことが必要です。マルウェアと言われる悪意を持ったウイルスに感染した場合、情報漏洩のほか、医療情報を含むデータが改ざんされたり、削除されたりする可能性があります。このようなことになると、患者の医療に影響が出るだけでなく、法的な問題にも発展する可能性があります。
 最後に、共有するファイルが機密情報である場合には、暗号化することでセキュリティを強化することができます。暗号化することで、不正アクセスや盗聴などからファイルを保護することもできます。
 以上の注意点を守ることで、USBを介してファイルを共有する際のウイルス感染やセキュリティリスクを軽減できます。しかし、完全にリスクを排除することは困難であるため、機密情報の入ったPCにはUSBをはじめ外部からのアクセスを一切排除する業務の流れが最高の対策です。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年5月号11面掲載)

【IT相談室】レセコンをクラウドで管理する場合のメリットとデメリット

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はレセコンをクラウドで管理する場合のメリットとデメリット
について―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 歯科診療所の心臓部ともいえるレセコンの運用、データをどのように管理するのかは永遠の課題かもしれませんが、近頃はクラウド形式で運用管理される人が増えてきました。そこで今回は、クラウド管理のメリット、デメリットを考えてみます。
 まず、メリットですが、院内のサーバー等がなくなることで設備が簡略化されるため、コストダウンに繋がる可能性があります。クラウド専用のセキュリティが考慮された回線が必要になる場合もありますが、それを差し引いてもコストは下がります。すべてクラウド上で常に最新の状態になっていますので、レセコンメーカーの方が来訪しての作業、電話やメールなどを利用したアップデートなどは必要なくなり、煩わしい作業や時間等の拘束からも解放されることでしょう。
 そして、これまで院内で物理的に保管されていたデータが常にさらされてきた火災、水害、事故などの脅威、盗難などによる紛失という危険性。これらはクラウド化によって払拭されるため、心理的にも大きなメリットではないでしょうか。
 デメリットは、データはクラウドでもそこに接続する回線が通じていなければアクセスできないということです。接続が不安定なケースや、回線の障害が発生した時には、その段階からレセコンには一切アクセスできなくなります。忙しい時間帯に回線の不調でアクセスできなくなった時、レセコン業者と回線業者に対して別々に連絡をするなどの対応を誰がどのように行うか、予め決めておいたほうが良いでしょう。また、クラウドは外部にあるコンピュータですので、操作に若干の遅さを感じることがあります。このちょっとした遅れをものすごく大きなストレス、業務時間のロスと考える方もいらっしゃると思います。導入前に、必ず一度はデモンストレーションを実施すべきです。
 そして何よりも、クラウドという〝保管庫〟に障害が発生して「データがなくなる、漏えいする」というリスクも考えなければなりません。IT業界では有名なエピソードですが、2012年に、あるレンタルサーバー企業がアップデート作業時に誤って顧客データをすべて削除するという事故がありました。データは復旧することができず、顧客は大きな損害を被りました。しかし、月々の使用料が返還されただけで、それ以上の補償がないという状況で、顧客にとって大きなダメージが残る事故となりました。 
 レセコンをクラウドで管理する際には、既に導入している診療所が、万が一の時の備えをどのようにしているのかを、必ず確認してみてください。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年4月号4面掲載)

レセコン&オンライン資格確認システム 1台のPCで運用した場合の メリットとデメリットは?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は「
レセコン」と「オンライン資格確認システム」を1台のPCで運用した場合のメリットとデメリットについて―。

 歯科診療所の床面積と同様に、PCを購入する資金にも限りがあることは言うまでもありません。同じ機密情報を取り扱うなら「レセコンとオンライン資格確認システムのPCを同じものにして運用したい」と思うのが自然ではないでしょうか。今回はこの2つの役割を1台のPCに集約した場合のメリットとデメリットを考えてみます。
 まず前提として、厚労省はレセコンと同一の院内ネットワークを使うことを想定してオンライン資格確認システムの導入を義務化しています。既にIP-VPNに接続されているレセコンを使用している診療所では、既存の院内ネットワークを利用することで新たな院内ネットワークやインターネット回線を増設する必要はありません。
 管理者は、管理すべきPCの設置が1台に限定されるので、気持ちとして負担が軽くなるでしょう。さらに、スペースが限られる診療所では、複数台のPCを置くことが難しい状況もあるでしょう。院内がIT企業のように、多数のPCが並ぶ無機質なレイアウトになりづらいという点もメリットです。メリットについてはある程度容易に想定できると思いますが、問題はデメリットに対する考え方です。
 まず最もネックになるのは、レセコンにも接続されたPCを受付に設置して、常に患者さんの目に触れる場所で運用しなければならないことです。受付は、お昼休みや夕方の混雑する時間帯にたくさんの患者さんが通ります。顔認証端末が繋がったPCが、レセコンにも繋がっているのです。受付のスタッフが目を離すタイミングがあれば、それなりのリスクを伴います。センシティブに扱うべき情報が、患者さんから見えてしまう危険性も排除できないでしょう。
 それだけではありません。盗難、破損ほか、PCに何か不具合が生じると、その瞬間からレセコン、オンライン資格確認のどちらも使用不能になるという危機的な状況に陥ります。これは、診療所運営に大きなダメージになる可能性がありますので、管理の手軽さだけでなく、「めったに起こらない最悪のケース」を〝想定外〟とみなさずに、常に想定してリスクを意識しながらどのように回線を引き、どのようにPCを配置するかを再検討してみてください。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年3月号4面掲載)

“どうしても気になる”検索順位…SEO対策 Vol.2 自院のランク付けとどう向き合う?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はSEO対策について―。

 そもそもSEOとは「検索エンジンの最適化(Search Engine Optimization)」の略語ですので「検索結果の順位向上」とは似て非なる言葉でした。検索サイトの上位に位置することが「集患のポイント」もしくは「競合医院を上回って格を上げる」というような業者の印象操作によってSEOの意味が現在では間違った認識になっています。
 本来のSEOは「ユーザーのニーズに合わせた内容にサイトやページを最適化する」だったはずです。まるで広告を出すように、「とにかく上位でたくさんの人を誘導したい」と考えても医療機関のメリットにつながらないということを医院経営の視点で考えなければなりません。
 地域名+歯科、もしくは自費治療名などで検索上位に位置させてたくさんの人を誘導しようとした時に、サイトを訪れる患者予備軍は「何を考えて」いるでしょうか。何かしらの問題か欲求を満たす情報を探していたユーザーが、テクニックによって上位に位置した医院のWEBサイトを見た時に「何を思うか」を患者視点で想像してみることをいつもおススメしています。
 例えば、別の業界の情報を自分がユーザーとして検索した時に、検索上位に来ているサイトを開いた時の「あ、広告か…」という気持ちを思い出してください。つまり、SEOを行うなら最初に「ユーザーが本当に求める情報を掲載してWEBサイトの内容を充実させる」ことが大前提です。そのためにはユーザーが歯科医療、医療機関に何を求めて検索したのか、どのような情報であれば満足するのか、このあたりを想像しながらページを作成する必要があります。
 そしてこのサイトの作り方はGoogleが奨励し、検索順位を上げてくれるといわれている「ユーザー視点のコンテンツ制作の基本」になるのです。順位を恒久的に上げたければ、誰からも必要とされる歯科医院作りを行ってその内容をWEBサイトに掲載することが一番の近道です。
次回は「とは言っても具体的なテクニックを知りたい」という方に、ホームページ作成業者などが行っているテクニックや最低限行わなければならない手法をご紹介します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年11月号8面掲載)

“どうしても気になる”検索順位…SEO対策 Vol.1 自院のランク付けとどう向き合う?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はSEO対策について―。

 9月13日にGoogleの検索結果の順位(例えば、地域名と歯医者などと検索した場合に表示される順番のこと)が大幅に入れ替わる可能性のある改修(アップデートと呼ばれる)が行われました。そこで今回は、「SEO」と呼ばれる「検索サイトの最適化」について考えてみます。
 営業電話等で「おたくのホームページは順位が低いので月額○○万で上位にしますよ」という内容を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。検索サイトの順位向上は、すでに20年以上も前から試行錯誤が繰り返され、専門業者を名乗る企業も雨後の筍のごとく乱立していました。
 近年では、SEO業者に支払う費用をGoogle広告に支払ってほしいという思いなのか、2012年7月頃から人為的に検索順位を操作することが困難になりました。結果としてSEOをサービス事業のメインにしていた業者は、「Googleマップの表示順位を上げます」(このサービスも現在は順位が上がらなくなってきています)となり、その後は「口コミの削除を行います」(簡単に消すことはできません)などと看板を差し替え、手を変え品を変えて勧誘電話をかけてくるようです。検索順位で競合する他院よりも下になると、「自分の診療所が下のランクになった」ように感じる方や、上位の診療所にはさぞたくさんの新患が来院しているのではと思われる方も多く、どうしても気になるようです。しかし、実際には、毎日変わる検索順位が診療所の格付けになることはありませんし、上位にランクインしても診療所には「通院できる距離」というビジネスの縛りがあるので、思ったほど順位が患者数に大きく影響することはありません。
 一番良いのは検索順位など気にすることなく、素敵な診療所づくりに注力することですが、相談内容のトップ3に必ずこのSEOが入ってきますので、次回はもう少し細かくSEOについて考察していきます。

株式会社クレセル

(東京歯科保険医新聞2022年10月号4面掲載)

WEBサイトによる診療所PRのポイント①

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 2022年現在、WEBサイト(医院が運営するサイト)を活用している歯科医院の数は、かなり多いのではないでしょうか。しかし、WEBサイトはどのような効果が出れば「成功」で、一方どのような状況であれば「改善」の必要があるのか、わかりづらいのが現実です。そこで、情報発信の手段としての歯科医院のWEBサイトについて考えていきたいと思います。
 まず、サイトの目的を明確にするところからはじめる必要がありますが、目的は「大勢の新患が希望の治療を受けるために来院する」と思われる方が大半であることは間違いありません。残念ながら、この“大勢”という言葉をもっと具体的に意識できなければ、サイトからの新規患者の来院はそれほど望めないでしょう。
 現在運営されているサイトの成果指標として「1カ月の新規患者数の20%以上がWEBサイトからになっているか」を確認してみてください。20%を下回る場合、サイト上の課題、歯科医院の認知がそもそもないことの問題(開院直後など)、ネット上に競合が多すぎるなどの原因があります。20~40%くらいは正常、もしくは健全な数字ですので、今後は新たなコンテンツを追加するなどの対策を検討してみてください。
 そして、40%以上は「危険な状態」と言えるでしょう。サイトがたくさんの患者を集めている状態が「危険?」と思われる方が多いと思います。仮に80%がサイトからの患者とします。「サイトのサーバーが障害でダウンした」「検索サイトからペナルティを受けてサイトの来訪者が0になった」などのトラブルに見舞われると、患者の8割を失うことになります。すぐに復旧できるものであれば良いですが、4週間も続けば経営に関わる非常事態です。
 インターネットという現実に存在しない世界に、患者の大半を依存することの危険性を経営視点で振り返る必要があります。次回からは、インターネットマーケティングをそのまま歯科医院サイトに持ち込む時の注意点などを考えます。
(※数値等データは自社の分析に基づく)

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年9月号4面掲載)

Google の 口コミを気にしなくていい理由

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 「Googleにネガティブな口コミを書かれた」とのご相談が減ることなく寄せられます。
口コミに対する対応策は、以前の本連載でお伝えしましたが、今回はそもそも「Googleの口コミは気にしなくていい」理由を解説します。
 歯科に限らず医療機関の口コミは、概ねネガティブなことを書かれるケースが多い傾向にあります。それは医療サービスを「望み通りに処置してくれて当たり前」という、日本人ならではの先入観があり、“現実との対比”によって発生する不満足が原因です。
経験則ですが、書き込みを行う理由は、①本当に問題と思われる出来事があった、②漠然とした不満足の矛先が抽象的なネガティブ書き込みになっている、③クレームを書きたいだけ―という3つが代表的です。
 ①に対しては、口コミサイト上の返信機能を使うことで、他者が読んだ時に歯科医療機関側の誠意を示すことができ、「本当は過剰表現ではないか」という気持ちにさせることができます。
 ③については、書き込みをしている人のアイコンをタップ(クリック)すると、その人がどのような口コミを書いているか見ることができるので、確認してみてください。様々なところでクレームの書き込みを行い、それを楽しんでいる方です。
 したがって、現在悩みの種になっているのは②と③の書き込みについてです。歯科以外の病院や医療サービスサイトを見ると、概ねほぼ②と③の書き込みか、感謝のポジティブな書き込みしかないことに気がつきます。閲覧者は、「感謝」か、①~③の書き込みくらいにしかGoogleの口コミが使用されないことを肌感覚で知っているので、「歯科医院の選択材料」にGoogleの口コミを重視している方は少ないと言えるでしょう。
 これが過剰にGoogleのネガティブな口コミを気にしなくてよい理由です。ただし、明確な誹謗中傷や具体的過ぎる内容については、法的な対応を検討されることをおススメします。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年8月号11面掲載)

登録した覚えがない医院情報サイトから請求が…どうする?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は医院情報サイトについて―。

 相談件数としては多くありませんが、「医院の基本情報を掲載するサイトからの請求」という身に覚えのない要求にお困りの方が過去にいました。多いのは、まず簡単な情報だけ掲載して、より詳しい情報を有料で掲載しないかという営業電話がかかってくる場合です。
 前提として、勝手に医院情報を掲載して掲載費用を請求することなどはビジネスとして論外で、取り合う必要はありません。事前合意のない請求は無効です。
 どちらかと言えば、最初に医院の基本情報を無料で掲載して、その後に「情報の更新をするなら有料契約が必要」「削除も有料」などと、掲載済みの情報を人質のように扱って、有料契約を迫ってくる場合がありますので注意が必要です。
 以前、そのような相談があった時にこちらから掲載サイトの業者と電話をした時には次のような主張でした。「公開されている医院の基本情報を当サイトに掲載することは、法的に問題ありません。ただ情報の更新や削除などに要する人件費は有料となります」。とんでもない主張だと思いましたが、「法的に」という言葉で泣き寝入りしてしまう方もいらっしゃるようです。以前、飲食情報サイト「食べログ」へ勝手に掲載されてしまい、店側が訴えた結果、敗訴した事例がありました。おそらく、このような事例を盾にしているものと考えられます。
 情報の削除、改訂については対応してもらえることが多いはずです。しかし、登録して自力で改変する、もしくは費用を要求されるなど「確信犯的に」情報を掲載している業者もいるので、その場合は、即座に弁護士を通じてやり取りをすることが望ましいです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年7月号4面掲載)

インターネットに関するプロバイダの選び方

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はインターネット回線について―。

 診療所にインターネット回線を引いている先生は多いと思いますが、「その回線のプロバイダがどこかご存知ですか?」という質問に答えられる方は少ないのではないでしょうか。開業時に業者に一括でお願いをして、それっきりというパターンがほとんどかもしれません。
 ネット回線が高速道路だとしたら、プロバイダは高速の料金所だと考えてみてください。高速道路というインフラを使用するために、世界中のコンピュータを繋ぐ環境整備や付属サービスを一括して行い、利用者から料金を徴収します。厳密には、ネット回線とプロバイダは別業者ですのでインターネットを開通させるには2つの業者と契約することになります。現在では契約を煩雑にしないために、ネット回線業者とプロバイダの請求書が一本化されていることもあります(NTTなど同列会社がどちらも行っている場合など)。
 大切なのは、回線業者とプロバイダは別々に選べるということです。建物によって回線工事が可能な業者が少ない可能性もありますが、プロバイダは個別に選ぶことができるのです。回線業者を変えずにプロバイダだけの変更も可能です。スマートフォンは同じものでも、ドコモ、ソフトバンク、auなどのキャリアを変えられるのと感覚的には近いのではないでしょうか。
 では、プロバイダをどのように選ぶか。ポイントは「回線の安定性」「料金」「速度」の3点です。メールアドレスなどの付加サービスが差別化になることもありますが、インターネットの快適性は以上3点で決まります。回線が不安定でよく切れたり、速度が遅かったりするとストレスが溜まりますし、同様の快適性であれば料金で選んでも良いと思います。
 プロバイダがどういうものかを理解していれば、選定の優先順位はおのずと決まってきます。今契約しているプロバイダをぜひ点検してみてください。

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(東京歯科保険医新聞2022年6月号3面掲載)

インターネット取引(歯科材料、感染防止品)の注意点

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はインターネット取引について―。

 近年は、消耗品(歯科材料や感染防止品など)を院内からネットで購入するケースが増えてまいりました。自宅で行う個人的な注文と同じ感覚でできてしまいますが、簡単だからこそ医療機関としての注意が必要です。
 まず、ネットで購入決済をするPCはインターネットに接続しますが、院内の他のPCにも接続されていないでしょうか?
 ネット購入用のPCは、購入時の自動返信メールも受信することになりますので、セキュリティに懸念があります。そのPCが患者の個人情報(極端な例ではレセコンやデジタルレントゲンなどの情報、治療予約の情報など)にネットワーク上で接続されていると、それだけで大きなリスクになります。診療用のネットワークと外部との接続可能なネットワークは、今すぐにでも切り離すべきです。
 ネット購入は、院長ではなく受付などの院内スタッフが定期的な業務として行う場合も多いですが、購入時の報告や在庫管理など徐々に面倒になり、スタッフに「丸投げ」になる事も注意が必要です。
 院内スタッフですから決済機能を悪用することは少ないと思いますが、丸投げゆえに「スタッフ個人の判断で購入を行った」などどちらが悪いとも言えないような医院運営上の問題が発生しかねません。
 誤操作による発注ミスや決算時に問題にならないため、在庫管理を徹底するための台帳の作成、情報の共有など後々のことを考えて管理体制を整えておくほうがより安全と言えます。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年5月号4面掲載)

診療所ホームページで患者が最も見ているのは?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は診療所のホームページについて―。

 歯科診療所の運営にインターネットを活用することは、今や「当たり前」と感じる方も多いのではないでしょうか。そして、その「常識」に本心ではついて行けない方から、よくこんな質問をいただきます。「診療所のホームページって、どこに力を入れれば効果があるの?」。ITの専門家ではない歯科医療従事者の方々は、煌びやかな競合医療機関のホームページを見て、頭を悩ませている方が多いようです。
 弊社の管理しているサイトのアクセス集計(アクセス数、ページごとのアクセス状況、サイト訪問時に検索したワードなど)を分析すると、ほとんどのサイトに同じ傾向がありました。トップページを除く歯科診療所ホームページで、最も見られているページに共通点があり、仮説を元にこのページを強化することで、効率よく患者さんへのメッセージを届けられます。
 最も見られているページとは、「診療所内装(設備も含めて)」「スタッフ」の2種類です。サイトに訪れた患者予備軍の方々は、必ずこの2ページを最初に開きます。これから通院する診療所が、「どんな場所」で「誰が」治療してくれるのか、この2点をほぼすべての人が最重要視していることがわかります。
 したがって、院内、スタッフの写真をできるだけ多く使用し(スマホでも綺麗に撮影できます)、自己紹介や患者へのメッセージを丁寧に掲載することで、「相手に寄り添ったメッセージ」を伝えることが可能です。ちなみに、自費治療のページは相対的に閲覧者が少ないことが一般的です。
 まず「どんな場所」で「誰が」治療するのかわかりやすく発信し、患者側の最初の審査を通過する必要がありそうです。

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(東京歯科保険医新聞2022年4月号11面掲載)

ネガティブな口コミへの 対応策 No.3

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回は「ネット上の口コミについて」の3回目―。

 Googleの口コミに書かれた悪評に、どう抗うかが今回のポイントです。
 一番良い方法は「気にしないこと」です。悪い口コミが多い歯科医院で盛況なところはいくらでもあります。口コミを見ないで医院を選ぶ方がとても多く、匿名の口コミを信用しないネットリテラシーを持った人も増えてきました。したがって、医院経営に一番メリットの多い対応方法は「気にしないこと」です。
 しかしながら、悪評口コミは医院運営者の精神を蝕みます。そこで、簡単にできる対応方法を解説いたします。Googleの口コミは「Googleマイビジネス」という店舗情報の管理画面から「返信」が可能です。悪評は情緒的で誇大表現をしている場合が多く、院内でそのようなことが行われていない旨を理路整然と説明し、その口コミを「ただのクレーマー」にすることができます。
 返信の最後には「誤解があるようでしたら一度医院へお越しください。納得いくまでご説明させていただきます」と書けば、その後のリアクションはなくなるどころか、その返信を見た第三者は診療所の真摯な姿勢を評価するのではないでしょうか。
 事実として、返信をこまめに誠実に書いている医院の口コミは概ね良い評価ばかりになっていきます。これは悪評対策でもあり、良い評価を集める表裏一体の方法と言えます。Googleの口コミは、慌てず気にせず、もし評価が気になるようであれば返信機能の活用がおすすめです。

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(東京歯科保険医新聞2022年3月号11面掲載)

ネガティブな口コミへの 対応策 No.2

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
前回に引き続き、ネット上の口コミについて―。

 前回お伝えした通り、ネット上の口コミを削除するためには次のようにいくつかの方法があります。
(1)Googleへ削除依頼を申請し、受理してもらう
    →参照:ネガティブな口コミへの 対応策 No.1
(2)投稿者自身が削除する
(3)法律の専門家からGoogle、もしくは投稿者へ削除要請を行う
 (2)については当然ですが、書き込んだ本人が削除すればその口コミは消えます。しかし、この仕組みを利用して、まず悪評を書き込み、数週間から半年程度の間に「おたくの悪評を削除します」と営業電話やメールを送ってくる悪徳業者が後を絶ちません。一度サービスを利用すると定期的に悪評を書き込み、その都度、料金が請求されることになります。
 実際問題として、口コミを削除するには(1)(2)(3)のどれかしかありません。ネット上には、口コミを削除することを名目に2021年8月の段階で平均価格50万円以上の削除サービスが横行しています。しかし、歯科診療所に降りかかる大きなリスクを隠し、倫理的に問題がある方法で対策を行っている場合がほとんどです。
 口コミを削除するために、まず(1)の削除依頼を行い、削除されない場合(3)の法律の専門サービスの利用という流れが一般的です。それでも削除できない場合は「悪評を逆手にとって、診療所の取り組みをPRする」という手法があるので、次回お話します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年2月号11面掲載)

ネガティブな口コミへの 対応策 No.1

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回からは、ネット上の口コミへの対処法について―。

 Googleで検索した後に、基本情報や写真と同時に第三者の口コミと星の数で診療所を評価する口コミがあります。ネガティブな口コミが書かれていると、広告的なダメージへの心配以上に心情的な不快感を持たれる方が多いようです。この口コミを削除するためにはいくつかの方法があります。
(1)Googleへ削除依頼を申請し、受理してもらう
(2)投稿者自身が削除する
(3)法律の専門家からGoogle、もしくは投稿者へ削除要請を行う
 もう一つ方法がありますが、倫理的に問題がある手法で、医療機関という社会の公器たる歯科診療所が選ぶべき選択肢ではありません。また、Googleにその手法を察知されると大きなペナルティを受けるリスクが高いほか、手法そのものも悪用される可能性があるのでこの場では割愛します。
(1)Googleへの削除依頼は、一般の閲覧者として申請するやり方と歯科診療所のオーナーとして申請する2種類の方法がありますが、削除されやすいのはオーナーとしての削除依頼です。「Googleマイビジネス」という無料サービスに登録することで削除依頼を申請できます。違法、危険、なりすまし、利害に関係することなどGoogleが定める規定に反するものは削除されます。
 しかし、実際には著作権侵害、危険行為、テロなどの明確な犯罪行為やほかのビジネスの宣伝などの書き込みでない限り削除されないので、実際は削除されないことも多いですが、その理由は「悪評も評価の一つ」というGoogleの考え方が強く反映されているからです。(2)(3)は次回解説します。

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(東京歯科保険医新聞2022年1月号5面掲載)

医療広告ガイドラインで最初に 気をつけるべきポイント No.2

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルティングを手掛ける専門家が解説する本連載。
2回目は、医療広告の注意点について―。

 厚生労働省(以下、「厚労省」)が公表している2021年3月31日時点の違反事例を見ますと、自費の治療内容ページに違反があった場合が圧倒的に多いようです。
 厚労省は業者に業務委託し、ネットパトロールと称して違反しているページがないか、常に監視をしています。
 さらに、匿名で違反サイトを密告できる委託窓口を設けているうえに、「競合する診療所からの告発では?」という事例もありますので、対岸の火事ではないことを最初に認識すべきでしょう。
 厚労省が発表している違反事例を見ますと、まずインプラント、審美、矯正といった高額になりがちな自費の解説ページで、症例の写真を掲載(詳しい治療内容も併記しなければ不可)、料金表がない(料金表の公表は必須)…。これらの違反がチェックされていることがわかります。
 加えて、「年間○○本のインプラント実績」や「地域で最も安全安心」「芸能人の○○さんも通っている」などの誇大広告的な文言や写真などもよくチェックされています。
 まとめますと、歯科診療所のWEBサイト内容の見直しを行う際には、歯科広告ガイドラインの内容を考慮するほか、ネットパトロールによる監視や密告の可能性にも留意することが必要です。
 そして、特に自費の治療内容や、主にトップページにありがちな誇大広告や誘導的な言い回しに違反がないか今一度、自院のホームページをチェックし、もし上記の例に該当する場合はガイドラインに沿ってできるだけ早く訂正すべきです。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2021年12月号2面掲載)

医療広告ガイドラインで最初に 気をつけるべきポイント No.1

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルティングを手掛ける専門家が解説する連載。
初回は、医療広告について―。

 2018年6月1日に改定された厚生労働省の「医療広告ガイドライン」によって、対象物が「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変更され、WEBサイトによる情報提供も規制の対象となりました(医療法等改正法)。
 変更点のポイントは、今までは閲覧者が自主的に開くWEBサイトは「広告」としての機能を持ち合わせていないという視点でしたが、これが患者の誘導として広告的に使用されているという考えに変更され、テレビCMのように規制を受けるということです。この規制に反した歯科診療所のWEBサイト、SNS、ブログ、ポータルサイトなどは、自治体(主に保健所)から指導が入ります。
 具体的には、文章による通知、もしくは電話連絡があります。そこから、1カ月以内に問題箇所を訂正して、訂正完了の申請を行えばペナルティなどはありません。しかしながら、放置すると「行政指導」「報告命令」「立入検査」「中止命令」「是正命令」と、段階ごとにペナルティを受ける可能性があります。次回No.2ではなぜ広告に気をつけるのか、どこに気をつければ良いのかを解説します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2021年11月号3面掲載)