期待したい「資格確認書」の全員配布
いよいよ、「健康保険証」の新規発行が終了する12月2日が近づいてきました。
新規発行が終了しても、有効期限内であれば最長1年は保険証が使えることを知らない人は多い。中には、「保険証の新規発行が終了するから、急いで『マイナ保険証』を作らなければ」と思っている人もいるようです。
そういう人には、「保険証の新規発行が終了しても、有効期限までは手持ちの保険証が使えるし、有効期限が来ても、その前に資格確認書という保険証代わりになるものが自動的に送られてくるので、大丈夫ですよ」と教えてあげると、マイナ保険証を持っていない患者さんも安心するのではないでしょうか。
以前、元厚生労働大臣で立憲民主党の長妻昭代表代行と話していた時、保険証も資格確認書も同じ内容を記載しているのだから、保険証の上に「資格確認書」というシールを貼ればいいんじゃないか」とおっしゃっておられました。
その時は「まさか」と思ったのですが、先日、手違いで流出した神奈川・川崎市の「資格確認書」を見ると、名前だけは違いますが、保険証とそっくり。たぶん、これを送られた人は、「新しい保険証が来た」としか思わないことでしょう。
◆ 自治体を襲う「マイナ保険証の2025年問題」
国は、マイナ保険証を持たない人には資格確認書を、マイナ保険証を持っている人には資格情報のお知らせを送ることにしています。ただ、マイナ保険証を持っているか否かは、機械的には判断できません。
例えば、マイナ保険証を返納した人は、マイナカードはないけれど登録解除をしていないケースが多い。なぜなら、多くの人が登録解除できるようになったのは10月28日からなので、マイナカードは返納したけれど登録はそのままになっているケースが多いからです。
また、これからはマイナカードの電子証明書の有効期限切れという問題も発生してきます。保団連(全国保険医団体連合会)の調べでは、マイナカードの電子証明書の更新は25年度には、なんと23年度の約12倍、約3,000万人が、更新手続きのために自治体窓口に押し寄せる。
ただ、役所が開いている時間帯に働いている人たちなども多く、実際には更新しないまま無保険状態になる人もかなり出てくるでしょう。
◆「資格確認書」を全員に送れば 多くのトラブルを防げる
介護施設の中には、「マイナ保険証は預からない。資格確認書にしてもらっています」というところもあります。なぜなら、マイナカードだけでなく暗証番号も預からねばならず、人手不足の中では、とてもそんなコストをかけてカードの管理はできないから。介護業界では余裕がある事業者が少ないだけに、今後、そうした施設は増えていくでしょう。
いま、「マイナ保険証 使われない理由はコレ」というYou tube動画がバズっています。先日、これを作って自らも出演している大阪府守口市の北原医院・井上美佐医師にお話を聞きました。井上医師いわく「なんで、こんなに不便なんやろ。医療現場はトラブルだらけ」とおっしゃっておられました。
保険証さえ廃止しなければ、こうしたトラブルの多くは解決します。百歩譲って保険証が廃止されたとしても、すべての人に資格確認書を送ることで多くのトラブルを防ぐことができます。
立憲民主党の野田佳彦代表が、10月27日の衆院選の開票特番「Live 選挙サンデー 超速報SP」(フジテレビ)で、「まずは紙の保険証を使えるようにする」と政策目標を挙げました。その実現を願うとともに、もしダメでも、せめて資格確認書をすべての人に送ってほしいものです。
経済ジャーナリスト 荻原 博子
プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。