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【連載】退き際の思考/私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意(松井裕子さん【後編】)

私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意(松井裕子さん【後編】)

私たちの年代が役に立つとしたら…今なお歯科医療に熱意

松井裕子さん―後編
前編はこちら

松井裕子(まつい・ゆうこ)さん/1951年東京都生まれ。1976年東京医科歯科大学歯学部卒業。補綴学教室で1年間の副手・医員を経て、1981年同大大学院修了後同医局に助手として勤務。1990年4月より宮内庁病院へ出向。2017年3月、定年。非常勤歯科医師として同病院勤務。2024年、退職。

 歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生らにお話を伺い、引退を決意した理由や医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
 今回は、宮内庁病院で勤務医として34年にわたる歯科医師キャリアを過ごした松井裕子先生(73歳)の後編。今後も何らかの形で歯科医療に携わり続けたいという松井先生にお話を伺った。前編から読む

―退職してもなお歯科医師を続けたいとのことですが、勤務形態や時間など具体的にどのような形をイメージしていますか。

 模索中ですが、退職直前は週1回勤務のリズムできたので週に1~2回、あるいはもっとフレキシブルな働き方ができればと思います。先進技術は専門の先生に任せ、診断と治療の方針についての相談に応じ、歯周組織や義歯のメインテナンスを中心に関われたらと考えています。体力次第の部分もあるし、歯科医師としての収入はあまり期待できないでしょうが、これまで50年弱培ってきた歯科治療のスキルを無理のない自分のペースで還元していければと思います。

―歯科医療への熱意を持ち続けているのですね。

 そうですね。今や歯科で扱う範囲も拡がり、それぞれの歯科医師が何らかの特徴を打ち出さないといけない時代になってきているかもしれません。一方で、医科のように専門分化が進んだ末に総合診療の必要性が浮上してきている時代変化もあります。もし私たちの年代が役に立つとしたら、総合的な対応ができる点にあると考えています。それをどのような形で実現できるか、同じような意志を持っている方たちと協力して明確にしていければと思うこともあります。

―「今なおスキルを活かしたい」、その原動力はどこから。

 学生時代から歯科医療の世界で生きてきて、折角今まで培ってきたスキルを無駄にせず、人のために役立てたいと感じています。以前、中学生時代の友人に頼まれて口腔状態を診た時の経験がとても印象に残っています。咀嚼も十分にできないほど悪い状態だったので、すぐに治療を開始すると、口腔状態がみるみるうちに改善し、顔色も良くなり若々しく元気になりました。人の役に立っていることが実感でき、そうした姿を見られるのは歯科医師冥利に尽きます。

診療続ける同世代の先生へ

―プライベートはどのような過ごし方を?

 大学時代から硬式テニスを続けていて、年に一度しかラケットを握れない期間もかなりありましたが、今は週に1度、夕方2時間ほどプレーしています。定年近くなってから新しいことに挑戦したいと思ってゴルフを習い始め、月に1~2回、東京近県のコースを仲間たちとラウンドしています。外出しない日は、幅広い分野の本を読んだり、手抜きをしてきた家の修繕などもしたりしながら過ごしていますね。

―ところで、松井先生が協会に入会したきっかけは。

 病院勤務になってからは、常勤の歯科医師が1名だけだったので、歯科の情報が入ってきませんでした。そこで開業している同級生に相談すると、「保険医協会が良いから入りなさい。セミナーをしっかりやってくれるし、役立つ情報も届けてくれるから」と勧められました。入会後は学術研究会などに参加しましたが、内容が勉強になるし面白く、受講するのが楽しみでした。接遇講習会も良い内容だと思ったので受講して、電話対応や患者さんへの話し方などを学び、病院に戻って看護師たちにアドバイスすることもできました。また、機関紙の紙面を切り抜いて事務方に渡して情報共有していましたね。保険医年金など、歯科医療以外の面でもとても助けられました。

―最後に、同年代で診療に従事し続けている先生方にメッセージを。

 頭が下がるばかりです。同年代の友人たちは閉院を検討したり、引退してしまったりするケースが増えています。自ら閉院を決めるのは非常に決断力を必要としますが、診療を続ける判断もまた重いものです。材料や治療法も進化を続けている中、たゆまぬ精進が必要とされる歯科医師という気の張る仕事を続けておられることに敬意を払います。この年代になると思いもかけない不調が出てくることもあるかと思います。体調管理をしっかりとしながら歯科医療に携わっていただけることを願っています。

―本日はありがとうございました。(完)

過去の連載はこちら<退き際の思考 歯科医師をやめる>

#インタビュー #連載 #退き際の思考

「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を/「保険証発行終了は中止を」国会議員から指摘相次ぐ

「残そうよ健康保険証」改めて署名にご協力を/保険証発行終了は中止を」国会議員から指摘相次ぐ

医療、介護、福祉予算の増額を求める「いのちまもる総行動」が926日、千代田区日比谷公園の日比谷野外音楽堂で開催された。参加者は約2,400名を数えたほか、日本歯科医師会と日本医師会からも応援のメッセージが寄せられた。

集会には、立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員、日本共産党の小池晃参議院議員、れいわ新選組の天畠大輔参議院議員らも参加。各議員とも、122日(月)の健康保険証の発行終了は中止すべきと発言した。

◆署名は来年1月末までに通常国会提出へ

10月1日から開かれた臨時国会の会期はわずか9日間しかなく、健康保険証の問題も含め、論戦は深まらなかった。その情勢から、協会は10月に関係各機関に要請書を送付するとともに、10月上旬に「月刊保団連」に同封し、会員に送付した「現行の健康保険証を残してください」請願署名の受付期間を、20251月まで延長することを決めた。

現場の声を行政に届けることこそ、協会の役割である。来年1月の通常国会に向け、会員の先生方には、引き続き署名にご協力をいただき、同131日までに協会へ送付いただくようお願いしたい。

なお、署名用紙や返信用封筒の追加、回収箱、PRポスターなどの注文は協会運動本部(電話03-3205-2999)へご連絡いただきたい。

オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず

オン資猶予でも資格確認限定型を導入可/マイナ保険証機能のスマホ搭載、見切り発車感否めず

9月30日の社会保障審議会医療保険部会(部長:田辺国昭/東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、オンライン資格確認システム(以下、オン資)の猶予届出書を提出した医療機関への対応およびマイナ保険証のスマホ搭載が提起された。

◆オン資猶予中でも限定型が導入可能に

電子レセプト請求医療機関では、オン資導入が義務化されているが、光回線未整備などの事情がある場合は猶予されている。今回は、紙レセプト請求医療機関が導入できる資格確認限定型のオン資の対象を拡大し、①光回線が未整備(類型2)、②改築工事中や臨時施設の医療機関(類型4)、③特に困難な事情がある(類型6)―との猶予届出書を提出した医療機関も導入を可能にする(図参照)。11月より医療機関等向け総合ポータルサイトで利用申請を開始し、補助金(4.1万円を上限に34補助)も来年115日締切で受け付けている。

◆現場がついていけない無償配布求める意見も

注目のマイナ保険証のスマホへの搭載については、来年春に、スマホを読み取る「汎用カードリーダー」を顔認証付きカードリーダーに接続して運用する実証事業を行う。実証後に各医療機関で導入する。

ただ、導入に関する補助金は提起されなかった。検討会メンバーの大杉和司氏(日本歯科医師会常任理事)は、度重なるオン資の改修費用などが発生しており、汎用カードリーダーは無償配布すべきと意見を述べた。オン資には、資格確認限定型および訪問診療時を対象とする居宅同意取得型などもあるが、それらには一切触れていない。スマホ搭載の対象が拡大し、その都度改修費用がかかれば現場がついていけなくなる。少なくとも厚生労働省は、適切なシステム開発計画と十分な支援を提案すべきである。

解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法

解説/健康保険証の発行終了後はどうなるのか?②/トラブルの類型と実際の対応方法

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健康保険証の発行終了まで、約1カ月となった。本号では、10月号から引き続き協会に寄せられるマイナ保険証やオンライン資格確認システム(以下、オン資)のトラブルへの相談内容を踏まえ、その類型と対応方法を解説する(図1)。

本解説は10月中旬時点の資料を基にしており、今後変更となる可能性がある。その際は、機関紙や協会ホームページ、デンタルブック・メールニュースなどでお知らせする。

*「解説①」は「協会ニュース」本年10月7日投稿分をご覧ください。

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◆マイナ保険証が読取不可の場合

全国保険医団体連合会(以下、保団連)が公表した「20245月以降のマイナ保険証トラブル調査」によると、70.1%の医療機関が何らかのトラブルを経験している(教えて!会長!!No.88参照)。マイナ保険証の読取時に起きるトラブルは1・トラブル①である。相談の中には、「職員のマイナ保険証は読み取れるのに、患者のマイナ保険証は読み取れない」というものがある。

この場合は、マイナ保険証およびスマホなどでマイナポータルの資格情報の画面を確認する、または健康保険証で資格確認を行う。なお、通知で明記されていないが、マイナ保険証および「資格情報のお知らせ」の確認でも対応可能と思われる。

また、図1・トラブル②のように、それらで解決できずカードリーダーの故障、または通信障害が原因の場合は、オンライン資格確認等コールセンター( 0800―080―4583/営業時間:月〜金曜8時〜18時、土曜8時〜16時)に電話して「システム障害時モード」を使用可能にしてもらい、氏名等を用いて確認を行う。

ただ、「コールセンターは繋がりにくい時もあり、モードの使用開始まで時間もかかるため、利用しにくい」との声が協会に寄せられている。

◆顔や暗証番号で認証不可の場合

図1・トラブル③のように、「顔認証できず、暗証番号もわからないため、認証ができない」という場合もある。その際は、医療機関側で「目視確認モード」を立ち上げ、マイナンバーカードの写真を用いて本人確認を行う。

ただ、患者操作が主である顔認証や暗証番号認証に比べて、業務負担が大きい。

また、マイナンバーカードは、通常のカードおよび暗証番号認証が使用できない顔認証マイナンバーカードに加え、歯科で利用されることに疑問は残るが、今年122日からは1歳未満に発行される顔写真のないカードの3種類になる。新しいカードは顔写真がないため、顔認証および目視確認モードが使えない点に注意が必要である。

◆「無効」等が表示される場合

図1・トラブル④のように、「無効」等が表示される場合がある。その際はマイナポータルでも資格情報を確認できないため、健康保険証で確認する。

なお、過去の受診歴等から資格情報に変更がないことを口頭で確認できた場合、その保険者等番号および被保険者等記号・番号でレセプトを請求できる。また、有効な健康保険証はあるが「資格(無効)」と表示された場合は、表示された過去の資格情報で請求できる(正しい保険者へ自動振替)。いずれの場合もレセプトの摘要欄に「旧資格情報」である旨を記載する。

しかし、図1・トラブル⑤のように「患者が健康保険証を破棄した」等の理由で対応できない場合もある。その際は、システム障害時モードで対応できない場合も同様だが、「被保険者資格申立書」を患者に記載してもらい、該当する13割のいずれかの一部負担金を受領する。ただ、「記載内容は正しいのか、遅滞なく診療報酬が支払われるかという不安がぬぐえない」と消極的な医療機関が少なくない。

なお、5年ごとに更新が必要なマイナ保険証の電子証明書について、更新を忘れても有効期限終了後3カ月間は利用できる。3カ月を経過すると利用できなくなり、「資格確認書」が発行される。

また、資格が有効でも「有効期間終了」欄が空欄で表示される場合があるが、これはオン資の仕様であり、有効期間終了日を確認する必要はない。

◆「」が表示された場合

図1・トラブル⑥の「が出る」は、氏名・住所等に旧字等があると起きる。そのままでもレセプトは請求できるが、カルテや処方箋等の作成時は「」のままでは作成できず、確認が必要となる。その際、患者の同意を得て、マイナンバーカード表面の氏名等の確認、確認を目的とした一時的なカードの受取ならびに表面のコピーおよびコピーの保管は可能である。ただ、カードの受取は紛失等の恐れがあるため、「」を問診票等から確認する場合もあるようである。

◆「マイナ保険証あり」の患者が資格確認書を持つには

マイナ保険証ありの患者が登録解除した場合、または患者が保険者に要配慮者等に当たるとの申請をした場合などは、資格確認書を入手できる(図2)。

ただ、厚生労働省は要配慮者について、一律の基準を設けておらず、保険者により判断が異なる可能性がある。確実に入手したい場合は、マイナ保険証の登録解除をした方がよいと考えられる。

◆健康保険証を残した方が混乱は少ない

オン資は、健康保険証と比べてトラブルおよび対応方法が複雑である。トラブルが起きていない医療機関もあるが、利用率の低さ(9月時で13.87%)に起因している側面はある。前号で解説した通り、マイナ保険証の有無で「資格情報のお知らせ」や「資格確認書」が送られてくるが、それなら一律に健康保険証を送った方が現場の混乱は少ないのではないか。

協会は、今後も健康保険証の存続を求める要求を行っていく。

【教えて! 会長!!  Vol.88】 マイナ保険証トラブル調査結果について

教えて! 会長!! Vol.88/マイナ保険証トラブル調査結果について

Q 12月2日まであと1カ月ですね。

 周知の通り、122日から健康保険証の新規発行が終了します。協会は医療DXに反対していませんが、拙速に進められ1カ月弱に迫ったマイナ保険証への完全移行へのスタートは、患者・国民と医療機関にとって「時期尚早」と考え、当会は現行の保険証との併用を訴えています。

他方で、122日からのご自身の医院での対策などを考える上で、全国や東京都の歯科医療機関の現状を知っておくことが必要です。そこで、当会会員を含めた全国保険医団体連合会(以下、保団連)の調査結果をピックアップして紹介します。

Q どんな調査でしょうか。

 政府は今年4月に「マイナ保険証の登録データを住民基本台帳データと照合し、必要な確認が完了したことから、新規加入者のデータのチェックシステムを57日から稼働する」と説明しました。そして、5月から7月にかけてマイナ保険証の利用促進を進めました。そこで、本当に患者・国民や医療機関が安心してマイナ保険証を利用できる状況になったのか、その現状を知るため、当会も参加して、保団連が全国規模で5月以降のマイナ保険証トラブル調査を実施しました。調査は8月から9月にかけて行い、39都道府県(43保険医協会・医会)12,735医療機関から回答を得ました(歯科診療所2,574、医科診療所8,529、病院754、無回答・その他878)。そのうち、当会の回答数は208でした。

「今年5月以降のマイナ保険証、オンライン資格確認のトラブル・不具合」について示します。「トラブル・不具合があった」との回答は、当会67.3%、全体で70.1%と大きな差はなく約7割でした。なお、前回の調査(2023101日以降のマイナ保険証トラブル調査では59.8%にあたる5,188医療機関)よりも約10%増加していました。この結果、マイナ保険証の利用に多くの問題があり、トラブルが増加していることが分かりました。に「トラブルの類型/『あった』と回答した医療機関」を示します。当会、全国ともに、トラブル内容の上位3位は、「●が出る」「カードリーダーの接続不良・認証エラー」「資格確認が無効」でした。最も多い「●が出る」とは、「髙(はしごだか)」や「濱」など、氏名に常用漢字以外が含まれる場合に起こるエラーです。再診の方なら対応できますが、初診の方で「●」が出た場合、氏名が不明で別の対応が必要となります。

先生方の医院ではいかがでしょうか。今までまったく問題が生じていない医院もあるでしょう。しかし、東京都、さらに全国の医療機関で生じている問題を把握しておくことで、現在、さらに122日以降のマイナ保険証に対する心構えができると思います。

Q 「保険証が12月2日に廃止されること」についての設問の結果は。

 に結果を示します。右側が当会のみ、左側が全体の結果です。保険証の廃止を「延期すべき」「保険証は残すべき」、「延期」と「残す」の両方にチェックした回答を合わせると、当会で88.0%、全国で88.1%と、ほぼ同数であり、9割近くが122日からの健康保険証の新規発行が終了することに否定的といえます。

本稿の執筆時には、まだ衆議院選挙の結果は出ていませんが、選挙前に得た当会独自の調査「衆院選2024政党アンケート」の中で、健康保険証存続についての各党の意見に明確な違いがありました。122日は過ぎてしまいますが、年明けに召集される通常国会で、マイナ保険証関連の議論が活発に行われることに期待します。そのために当会では現在、請願署名「現行の健康保険証を残してください」を行っています。署名は1月の通常国会に提出しますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

(「東京歯科保険医新聞」202410月号掲載)

協会の開示請求により判明/生活保護の指導計画/2024年度は8件を実施予定

協会の開示請求により判明/生活保護の指導計画/2024年度は8件を実施予定

協会が東京都に行った開示請求により、生活保護法による個別指導は、今年度は8件実施する計画であることが分かった。4月、5月、9月、2025年3月を除き、毎月1件ずつ実施される予定である。
対象となる医療機関には、指導日の1カ月前に指導通知、1週間前に患者通知(10名程度が指定される)が郵送される。また、健康保険法の個別指導と同様に、カルテ、歯科技工指示書や納品伝票、X線フィルムなどに加え、対象患者の医療要否意見書および医療券が持参物とされている。

◆昨年度個別指導は3件
昨年度の生活保護法による個別指導は3件実施され、歯周治療や歯内療法などの処置、歯科訪問診療料、歯冠修復および欠損補綴の算定などについて指導が行われた。
算定要件を満たさない場合や請求誤りがあった場合は、自主返還を求められる。また、昨年度は診療報酬の過誤調整額として、79万円を超える返還金があったことも分かった。
健康保険法の個別指導と同様に生活保護法の指導でも、保険診療のルールやカルテへの記載は重要となる。
◆11月の新規開業医講習会にご参加を
請求が不安な先生や再度確認したい先生は、11月10日開催の新規開業医講習会に、ぜひ参加されたい。

今年11月10日に開催された新規開業医講習会会場の模様。今後の開催については、機関紙、F-nexホームページ、デンタルブックのメール・ニュースでお知らせする

 

 

保団連が第39回医療研究フォーラムを開催/協会の尾崎哲也会員が「介護施設の口腔衛生管理」で演題発表

保団連が第39回医療研究フォーラムを開催/協会の尾崎哲也会員が「介護施設の口腔衛生管理」で演題発表― 山本鐵雄副会長と橋本健一理事も演題発表 ―

 

9月2223日、愛媛県松山市内のANAクラウンプラザホテル松山で、第39回保団連医療研究フォーラムが開催され、全国から歯科医師・医師・スタッフ・一般市民ら300名超が参加した。

22日は、オープニング企画として、俳人の神野紗希氏による「病と生きる 子規と俳句の『生きる力』」と題した講演、募集俳句入選作の発表、さらに保団連の鵜飼伸理事から、全国共同調査「オンライン資格確認導入、オンライン請求義務化に伴う医療機関への影響調査」の結果報告、朝日新聞編集委員の原真人氏による記念講演「日本の衰退と未来」などが行われた。

 

 

 

 

 

23日の分科会では、当協会から3名がそれぞれ演題を発表した。第1分科会在宅医療・介護では、会員の尾崎哲也氏(写真左)が「介護職員とともにすすめる介護施設の口腔衛生管理強化」をテーマに、第3分科会歯科診療の研究と工夫では副会長の山本鐵雄氏(写真中央)が「歯科技工所アンケートの結果と取り組み」を、理事の橋本健一氏(写真右)が「学校歯科治療調査の結果と取組み」を、それぞれ発表した。

問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?

問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?

10月1日より、先発医薬品(後発品のある長期収載品)を患者の希望で処方した場合に、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として患者から別途受領する制度(下記図参照)が導入された。 協会には問い合わせが多数寄せられているため、前号の概要に続き、処方箋様式の記載方法と下記の疑義解釈を解説する。
協会としては、製薬会社による「限定出荷」「供給停止」などの出荷制限により、医薬品不足が続いている中、先発医薬品を患者が希望した場合に患者から特別の料金を徴収することは、混合診療解禁に等しく、問題のある取り扱いであると考えている。

1.選定療養の対象となる医薬品
対象医薬品リストは、厚生労働省のホームページ「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」から検索できる。長期収載品のすべてが選定療養となるわけではなく、医療上の必要がある場合や後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが難しい場合は、選定療養の対象にはならない。
【対象となる歯科の医薬品の例】
ボルタレン錠25㎎、ロキソニン細粒10%、ロルカム錠2㎎、ロルカム錠4㎎、ジスロマック錠250㎎、クラビット錠500㎎など。
2.特別の料金と患者負担
先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として、患者から別途受領する。「特別の料金」は課税対象であるため、消費税相当分を加えて受領する。長期収載品を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について、厚労省はリストを作成している。リストに示されている額はあくまでイメージであり、実際に窓口で負担する額とは異なる。
3.処方箋の記載方法
(1)選定療養の対象とならない場合(院内処方・院外処方)
医療上の必要があると認められる場合、および後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難で選定療養の対象とならない場合は、下記「(別表1)」のレセプト表示文言より理由に該当するコードを選ぶことで、レセプトの摘要欄に表示させる。

(別表1)

(2)処方箋の記載方法
①選定療養の対象とならない場合
処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」と記載し、「保険医署名」欄に署名または記名、押印する(記載例参照)。
記載がない場合、薬局での患者聴き取りにより患者が「患者希望」と回答すると、選定療養の対象となる可能性がある。
②選定療養の対象となる場合
処方箋の「患者希望」欄に医薬品ごとに「✓」または「×」と記載する。

記載例

4.長期収載品の処方等の取扱いに関する疑義解釈(一部抜粋・一部改編)
【後発医薬品を提供することが困難な場合について】
問1「当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合」について、出荷停止、出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではなく、あくまで、現に、当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断するということでよいか。
 そのとおり。
【公費負担医療について】
問2 医療保険に加入している患者であって、かつ国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者、子ども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
 国の公費負担医療制度の対象となっている患者やこども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療が対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。
なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来どおりの保険給付として差し支えない。
問3 生活保護受給者である患者が長期収載品を希望した場合は、どのように取り扱うことになるのか。
 生活保護受給者については、 長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとしている。このため、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等または調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならないため、生活保護法に基づき、後発医薬品処方等または調剤を行うこととなる。
なお、長期収載品の処方等を行うことに医療上必要があると認められる場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象となる。

衆院選2024 躍進の野党/保険証“併用・残すべき”

衆院選2024/躍進の野党/保険証“併用・残すべき”

◆歯科医師2氏が当選
10月27日、第50回衆議院議員総選挙の投開票が行われ、自民・公明が計215議席となり、過半数(233議席)を割り込んだ。一方で立民など、「紙の保険証を残す」とした野党が議席数を大幅に伸ばし、躍進。フジテレビの報道によれば立民代表の野田佳彦氏は、優先すべき政策として「紙の保険証も使えるようにすること」を挙げた。12月2日以降の健康保険証存続へ、大きく流れが変わる可能性が出てきた。今後、改めて署名活動の重要性が高まっている。
 なお、衆院選の結果、長谷川嘉一氏(立民/再選)、佐原若子氏(れいわ/初当選)の歯科医師2名が当選した。
◆協会は改めて健康保険証の存続を求める請願署名に取り組みます
協会は、10月上旬に主要各政党に対して健康保険証の発行終了に関するアンケートを実施。10月11日よりホームページ上で公開した。健康保険証の今後の取り扱いについて、自民は「資格確認書の活用も図りながら、国民の皆様が安心して保険診療を受けることができるよう取り組む」と従来通りの回答とし、これまでの主張にとどまった。マイナ保険証と健康保険証の併用を選び、衆院選では50議席増となった立民は、「一定の条件が整うまで現在の健康保険証を存続させるべき」としている。

新内閣・政府には、健康保険証廃止の問題に真正面から向き合い国民の不安を払拭し、納得と共感を得られる丁寧な対応をするよう求め、以降の国会で与野党による活発な議論が行われることを望む。また、国会への提出に向け、協会は改めて健康保険証の存続を求める請願署名に取り組む。

↓各党の回答はコチラ(クリックするとPDFをご覧になれます)
衆院選2024政党アンケート結果
◆「保険証の存続を」要請書提出
また、協会は石破茂内閣組閣に伴い、10月4日付で、石破総理大臣、福岡資麿厚生労働大臣、平将明デジタル大臣宛てに要請書を提出した。要請書は、総理就任前の石破氏のコメントに反し、福岡・平両大臣から保険証の新規発行終了の方針を堅持する旨の発言があったことを受け、提出したもの。全国保険医団体連合会の調査で、全国の7割強の医療機関でトラブルが発生していることや、会員から寄せられた現場の窮状を訴え、石破総理らに12月2日以降も健康保険証の発行を存続するよう求めた。
協会は、今後も会員の声を政府や行政に届けていく。

【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第7回 驚愕する日本の医療の“デジタル化” !!

驚愕する日本の医療の“デジタル化”

日本の医療には“デジタル化”が必要と言われています。

私も含めて、これに異議を唱える人はいないと思いますが、問題は「どんな“デジタル化”で、どれだけ世の中が便利になるか」ということです。

厚生労働省は、新型コロナ対応でさまざまなデジタルシステムを立ち上げました。感染症情報としては「ハーシス(HER―SYS)」「ネシッド(NESID)」「ココア(COCOA)」があります。ワクチン情報では「ブイシス(V―SYS)」、ワクチン摂取記録システムでは「VRS」。医療情報では「ジーミス(G―MIS)」「イーミス(EMIS)」。

ところが、役に立たないものが多かった。中でも新型コロナウイルス接触確認アプリの「ココア」は、ダウンロード数約4,000万件なのに、致命的な不具合が発生していたにもかかわらず4カ月も放置されていたというお粗末さ。税金をドブに捨てて終わりました。

◆なぜ「FFHS」でなく「ハーシス」だったのか

「ココア」よりもひどかったのは、医師が患者情報を入力する「ハーシス」。入力項目が120130もあり、入力だけで1人あたり30分もかかります。コロナ診察でヘトヘトになった医師が、診察後にこれを入力すると明け方近くになってしまい、「ハーシス地獄」と呼ばれました。

ところが、もっと驚いたのは、実は厚生労働省は10年もの歳月を費やしてコロナ前から「症例情報迅速集積システム(FFHS)」という、「ハーシス」同様のシステムを既に研究・開発していました。しかも「ハーシス」だと30分かかる入力が、「FFHS」ならわずか1分。

「FFHS」を開発した北見工業大の奥村貴史教授は、「自治体が使いやすいよう意見交換を重ねて設計していたのに、政府は過去の教訓を生かさず、ハーシスを導入した」と言っています。「ハーシス」開発の陣頭指揮をとった当時の橋本岳厚生労働副大臣も、「FFHSに必要な機能が備わっていると担当から説明を受けていれば、採用していたかもしれない」とのこと。

しかも、「ハーシス」では膨大なデータが集められたのに、それがどう活用されたのかもわからない。一方、「FFHS」は北海道が導入し、クラスター(感染者集団)が発生した地域への医師派遣などに役立てていて、道の感染症対策担当者は「ハーシスではなく、最初からFFHSが使われていれば、保健所や自治体の負担は少なくて済んだだろう」と話しています。

何のためにデータを集め、集めたデータをどう活用するのかという利用者の視点が抜け落ちた“デジタル化”など、百害あって一利なし。

◆東京の歯科医院に北海道から通う患者はほぼゼロ

同じようなことを、いま政府が進めている医療DXにも感じます。

マイナポータルで見られる医療情報は、ほとんどがレセプト情報。検査をしたことはわかっても、検査の結果はわからない。しかも、13カ月前の古い情報なので、これを見て診療されるのは怖いことです。

そもそも、歯科診療所にやってくる患者さんは近隣の人。東京の歯科診療所に、北海道や九州から歯の治療に通うというケースはほとんど考えられない。それよりも、全国的なネットワークにすることで、脆弱な接続箇所から悪質なコンピュータウイルスが入り込むことのほうが怖い。そうなったら、前回書きましたが、病院は治療もできずにお手上げです。

日本政府は“デジタル”を使いこなす能力が低く、2023年の「世界デジタル競争ランキング」では32位。韓国が6位、台湾が9位、香港が10位、中国も19位なので、メンツにかけても何とか一発逆転したいのでしょう。

ただ、それが「医療DX」で、しかも多くの企業もこれに接続するというのは、あまりにも危険と言わざるを得ません。

失敗続きの日本の“デジタル化”に、私たちはどこまで付き合わされるのでしょうか。

「東京歯科保険医新聞」2024年10月1日号7面掲載

【全文を読む】第7回驚愕する日本の医療の“デジタル化”

経済ジャーナリスト 荻原 博子

プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。

衆院選に向け、2名に推薦状をお渡ししました

若宮健嗣衆議院議員(東京5区)、宮本徹衆議院議員(東京20区)へ、1027()の衆議院議員総選挙に係る推薦状をお渡ししました。

若宮健嗣 議員(東京5区)

宮本徹 議員(東京20区)

 

歯科医療分野には様々な課題がありますが、その改善のためには、業界だけに留まることなく様々な方々に応援していただけるよう、幅広く活動を広げることが必要です。

東京歯科保険医協会として、日頃お世話になっている若宮議員および宮本議員との連携を深めることによって、より良い歯科医療の未来づくりを進めていきます。

衆議院選当日まであと数日ですが、1人でも多く、歯科医療分野にご理解を頂ける先生方が当選されることを願っています。

社保研究会に110人が参加

社保研究会に110人が参加/指導対策の❝要❞は適切な保険請求とカルテ記載

協会は829日、「2024年度の個別指導、集団的個別指導を知る」をテーマとする社保研究会を開催した。これは、2024年度の集団的個別指導が95日および10日に実施されるにあたり、通知が届いた会員を中心に不安の声が寄せられ、これに対応するために開いたもので、会場とZoomを合わせ110人が参加した。

◆個別指導の特徴点などを中心に解説

加藤開副会長が講師を務め、2024年度の開示請求結果をもとに集団的個別指導の選定基準や仕組みを解説し、新規個別指導や個別指導の選定基準にも触れた。今年度は、「高点数」による個別指導が8件計画されているが、個別指導の中心は、スタッフや患者、審査支払機関からの「情報提供」や「再指導」によるものが多いことを示し、「高点数による指導を心配しない・萎縮診療をしないでほしい。適切な保険請求とカルテ記載こそが最善の指導対策」と説明した。

このほか、生活保護指定医療機関を対象にした指導計画とその特徴にも言及した。

▼定例報告やオンライン請求猶予届出の提出を忘れずに

最後に、8月末の提出が求められている歯科診療所の定例報告、光ディスクなどでレセプトを請求している医療機関に向けてオンライン請求の猶予届出についても解説し、必要な報告や申請を忘れずに行うよう呼びかけた。

「会員の意識と実態調査」について

「会員の意識と実態調査」について

2024年10月1日(火曜日)~10月31日(木曜日)まで「会員の意識と実態調査」(以下、実態調査)の実施をしています。実態調査は5年に一度、すべての会員に対して行っているものです。歯科医院の体制や経営状況、診療報酬に関する対応など、多岐にわたる質問で構成されるアンケートで、集約結果は国、行政、自治体などへの要請と、さまざまな協会活動に活用させていただています。

1 調査の目的

実態調査は5年に一度、全会員に対して行っています。調査結果は国、行政、自治体などへの要請や、協会活動に活用いたします。

2 調査の時期

2024年10月1日(火曜日)~10月31日(木曜日)

3 調査の対象

当協会会員で東京都内に就業場所を有する歯科保険医約6,004名

4 調査事項

全59問

5 調査の方法

10月1日以降、郵送にて(1)案内状、(2)調査票(紙)、(3)返信用封筒などを封筒に入れて配布。

6 集計結果

1,648件(回収率27.44%)

※上記件数及び回答率は11月20日時点のもので、今後変動する可能性があります。

7 集計結果の詳細公表

東京歯科保険医新聞、メディア、ホームページに公表予定。

 実態調査に関する問い合わせは政策委員会(☎ 03―3205―2999)まで。 

 

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東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)10月1日

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)10月1日

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2024年(令和6年)101

【お詫びと訂正】
本紙10月号(第655号)にて以下の誤りがありました。お詫びとともに訂正させていただきます。
※ホームページ上で公開している紙面は、訂正済みのものです。
2面「厚労省に要請 診療報酬の改善を求める」の記事およびキャプション
(誤)歯科医療官⇒(正)歯科医療管理官
6面「薬剤長期収載品の選定療養」の記事内【対象となる歯科の医薬品の例】
(誤)セフゾン細粒小児用10%⇒(正)削除

【新聞10月号】

 【1面】

1.都保健医療局・福祉局に要望/東京都歯科保健推進計画など4項目
2.パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%
3.オン資訴訟結審判決は11月28日/「我々の訴え真摯に検討」弁護団明かす
4.探針
5.ニュースビュー

 2面】

6.厚労省に要請/診療報酬の改善を求める
7.東京都議会会派に要請/都要請4項目に理解
8.10月からの変更に注意/医療DX推進体制整備加算
9.マイナ保険証を巡り東京弁護士会が市民集会開く/原則一本化の問題を整理
10.オンライン請求の返戻など/10月から〝紙媒体は廃止〟
11.都が3定議会で決定へ/医療機関等への物価高騰支援金/歯科医療機関15万円、歯科技工所7.5万円

 3面】

12.解説・健康保険証の発行終了後はどうなるのか?会員の相談から見た変更点の勘所と課題

 4面】

13.経営・税務相談Q&ANo.421
14.SASのOA治療のための講習会開催/医科とのこまめな連携などのポイントも説明
15.歯科衛生士へのアンケート協力のお願い
16.10月会員無料相談のご案内

 5面】

17.研究会・行事ご案内

 6面】

18.教えて!会長!!Vol.87「10月から始まる先発医薬品の負担増」
19.薬剤長期収載品の選定療養
20.理事会だより/2024年度第9回理事会
21.9月協会活動日誌

 7面】

22.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第7回「驚愕する日本の医療の“デジタル化”!!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
23.神田川界隈「米国徴兵制の現状と世界情勢―我が国、歯科医師そして協会の真の役割」(監事・藤野健正/渋谷区)
24.共済部だより/休業保障・保険医年金PR

 8面】

25.指導対策の〝要〞は/適切な保険請求とカルテ記載/社保研究会に110人が参加
26.11月2日開催!イイ歯デー/保険でより良い歯科医療のために街頭宣伝にご協力を
27.メディア懇談会/「小規模医院は手が回らない」ベア評価料届出が議題に
28.会員の意識と実態調査ご案内

【9・10面】

29.共済制度折込:秋の共済キャンペーン

第3回メディア懇談会を開催/ベア評価料届出が議題に

第3回メディア懇談会を開催/「小規模医院は手が回らない」ベア評価料届出が議題に

協会は913日、第3回メディア懇談会(通算103回)を開催し、メディア23名が参加。馬場安彦副会長が説明し、早坂美都副会長が進行を務め、施行から3カ月が経過した診療報酬改定のほか、マイナ保険証問題や署名の取り組み、協会が行った来年度東京都予算に関する要請などについて懇談した。

今次改定で新設されたベースアップ評価料について、71日現在の都内の歯科診療所の届出率が12%台に留まっている(※歯外在ベⅠ)ことが話題に上がった。9月に入り、厚生労働省から届出方法の簡素化が公表されたが、馬場氏は「都内にある小規模な歯科医院では届出に手が回らないのではないかと推測する」と、依然として複雑さが残る届出について説明し、「協会としては基本診療料や技術料を引き上げてほしいと思っている」と続けた。参加者からは、ベースアップ評価料に関する医療機関のスタッフの声などが紹介された。

また、オンライン資格確認システム義務化の問題に関連して、〝オン資義務化撤回訴訟〞に触れた馬場氏は「個人の力で国を動かすことが難しい中、協会として取り組むことは良い機会である。一開業医の気持ちを代弁してくれるものだ」とし、参加者に積極的な取材を呼びかけた。

東京歯科保険医協会会員の歯科診療所に勤務されている歯科衛生士の皆様

東京歯科保険医協会会員の歯科診療所に勤務されている歯科衛生士の皆様

2024年8月1日
国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科
歯科衛生士 近藤順子

「診療所に勤務する歯科衛生士の医療安全・感染対策に関する実態調査」
に関するアンケートのお願い

1.アンケートの目的
歯科診療所(クリニック)に勤務する歯科衛生士の医療安全・感染対策の現状を把握し、より安心・安全に働けるような体制を整えることを目的としています。本調査の趣旨を ご理解いただき、アンケートへのご協力をお願い申し上げます。

2.アンケート対象
東京歯科保険医協会会員の歯科診療所に勤務する歯科衛生士
歯科診療所で勤務する歯科衛生士の方を対象としております。歯科診療所で勤務をしていない方は対象外となります。病院等を含む複数の職場で勤務されている方でも、一週間あたりの労働時間が一番長い勤務先が歯科診療所の方は、歯科診療所に関しての回答をお願いいたします。

3.アンケートの方法
Microsoft Formsを使用した無記名式のWeb質問調査を行います。なお、回答にあたってはメールアドレスなどの個人情報は収集しません。調査の回答には5分程度の時間を要します。下記のQRもしくはURLよりアンケートフォームにアクセスしご回答ください。
URL https://forms.office.com/r/kiBficYTJZ

4.アンケート回答期間(延長しました)
2024年8月1日〜2024年10月31日までにご回答をお願いいたします。

5.倫理的配慮
本調査は国立国際医療研究センターの倫理審査委員会の承認を得て実施しています(承認番号 NCGM-S-004831-00)。本調査へのご協力は自由意志によります。また、回答の有無によって不利益が生じることはありません。アンケートの回答を送信していただいた時点で同意を得たものと判断させていただきます。
無記名式であり個人や所属する医療機関等が特定されることはありません。また、メールアドレス等の個人情報を収集しないため、回答送信後は同意の撤回ができません。本アンケートはMicrosoft社のアンケートツールを使用しています。個人情報に関するポリシーについてはMicrosoft社のホームページをご参照ください。収集した情報は本研究の目的以外には使用しません。また、厳重に管理をし、調査終了後は電子データを消去し確実に破棄いたします。本調査結果は、個人および医療機関が特定されないようにした上で、学会発表や論文等で公表します。
 
本調査では謝金はお渡ししていません。回答やホームページ観覧に関する通信料は自己負担でお願いいたします。本調査において開示すべき利益相反事項はありません。
複数の勤務先でご勤務されている方で、このアンケート依頼を重複して受け取った方は、回答は主な勤務先1回のみでお願いいたします。

[本調査に関するお問い合わせ] 国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科
歯科衛生士 近藤順子
jkondou@hosp.ncgm.go.jp

SASのOA治療のための講習会開催し37名が参加

SASのOA治療のための講習会開催/医科とのこまめな連携などのポイントも説明

協会は91日、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の口腔内装置(OA)治療のための講習会をワイム貸会議室で開催し、37名が参加した。 当日は、「総論」を西田紘一氏(協会監事)、「OSA歯科治療の基礎」を田賀仁氏(JR東京総合病院非常勤歯科医師)、「睡眠時無呼吸診療における医科との連携と歯科医師に必要な知識」を古畑升氏(東京医科歯科大学歯学部附属病院快眠歯科 いびき・無呼吸外来 非常勤講師)、「東京での睡眠時無呼吸症(SAS)のOA治療での医療連携について」を山本鐵雄氏(協会副会長)がそれぞれ解説した。

会場開催のみの開催方式で37名が参加した

西田氏は、歯科医師の視点から視診の進め方の概要に加え、医科とのこまめな連携が重要であることを指摘。田賀氏は、医科との連携で重要となる診療情報提供書の読み方や返書作成時の要点、治療方法の種類と選択方法、および医科との良い連携方法などを説明。古畑氏は、自身の患者の症例などをベースにした豊富な論文などを基に、特徴的な所見や治療効果、治療時の注意点を紹介した。山本氏は、口腔内装置の製作方法について症例写真をもとに説明。歯科開業医が取り組む際のポイントをそれぞれ解説した。

受講者からは「具体的な症例をもとにした解説だったので理解しやすかった」などの声が寄せられた。

東京都議会会派に要請実施/東京都2025年度予算要望の4 項目に理解示す

東京都議会会派に要請実施/東京都2025年度予算要望の4 項目に理解示す

東京都議会会派に要請実施/東京都2025年度予算要望の4 項目に理解示す

協会は、東京都の2025年度予算をテーマに、都議会のミライ会議、日本共産党都議団に対し、要請を行った。

協会からは、東京都への次年度予算要請4項目について説明した。また都民ファーストの会には、書面による要望書を提出した。

協会から要望した「指導」については、「生活保護の個別指導が始まった時期はいつ頃なのか。また、どのような問題が懸念されるのか、具体的に訴えていった方がよい」(日本共産党)、歯科衛生士の復職支援については「募集をかけても雇用ができない実情は、他業種でも起こっている。具体的にどのような支援が必要なのか、いろいろとアイデアを寄せてほしい」(ミライ会議)などの回答を得た。

日本共産党/左から泉なおみ、藤田りょうこ各都議

ミライ会議/左から桐山ひとみ、もり愛、米川大二郎、田の上いくこ各都議

【衆院選2024政党アンケート】マイナ保険証トラブル解決策は?各主要政党が回答<独自調査>

 

2024年10月27日(日)に投開票を迎える「第50回衆議院議員選挙」を前に、協会は各主要政党にアンケートを実施した。
テーマは「健康保険証の廃止」。選択式、記述式を交え次の3つの質問をした。

質問1:健康保険証の新規発行終了後、マイナ保険証やオンライン資格確認で発生するトラブルに対して、具体的な解決策をどのようにお考えですか。

 

質問2:貴党は健康保険証の新規発行終了についてどのようにお考えですか。その理由も教えてください。

▼選択肢
①従来のように健康保険証だけにするべき
②健康保険証を廃止し、マイナ保険証だけにするべき
③患者の状況に合わせ、現在と同じくマイナ保険証と健康保険証を併用できるようにするべき
④その他

質問3:健康保険証の廃止について、貴党は選挙公約にどのように盛り込む予定ですか。

▼選択肢
①健康保険証の廃止期限の見直しの公約を盛り込む
②健康保険証の廃止期限の見直しは行わない公約を盛り込む
③健康保険証の廃止については選挙公約に盛り込まない
④その他

↓各党の回答はコチラ(クリックするとPDFをご覧になれます)
衆院選2024政党アンケート結果

パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%

パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%

パブコメでも保険証発行終了に反対/マイナ保険証利用率は12.43%

厚生労働省は、8月のマイナ保険証の利用率が12.43%であったと発表した。つまり、9割弱の人がマイナ保険証を使っていないことになる。健康保険証の新規発行が終了する122日が迫る中、利用率は低迷したままである。

8月30日には、去る524日〜623日に同省が行った健康保険証の新規発行に関するパブリックコメント募集の集計結果が発表された。合計53,028件の意見が出され、賛否の内訳は明らかになっていないが、反対との意見が大半であったようである。

◆どうなる新規発行終了後現場で広がる疑問や不安

協会に寄せられる相談でも、マイナ保険証に関連するものが増えている。内容は「マイナ保険証を持参する患者の場合、受診の都度提示を求める必要があるのか」といった疑問や「訪問診療の患者の資格確認には健康保険証を使っているが、健康保険証が使えなくなったら対応できるのか」という不安など、さまざまだ。

なお、健康保険証が廃止になった場合の変更点については、機関紙、F-nex、ホームページ、デンタルブックメールニュースで、改めて取り上げさせていただく。

健康保険証の廃止に伴う変更点は多岐にわたる。特に、マイナ保険証で資格確認ができないトラブルが生じた場合や訪問診療時には、スマホなどでマイナポータルの資格確認画面を提示してもらう、または高齢者などの要配慮者の場合は申告して資格確認書を発行してもらうなど、患者の理解と協力が必要な場面もある。であれば、今の健康保険証を残す形の方が良いのではないだろうか。

◆やります!!  健康保険証の存続署名

協会は、改めて健康保険証の存続を求める署名に取り組む。月刊「保団連」10月号に下記署名用紙ほか書式一式を同封してお送りしているので、ぜひ、ご協力をいただきたい。

 解 説 /健康保険証の発行終了後はどうなるのか

解 説 /健康保険証の発行終了後はどうなるのか

 解 説 /健康保険証の発行終了後はどうなるのか 会員の相談から見た変更点の勘所と課題

 健康保険証の発行終了予定まで2カ月。会員からは「顔認証マイナンバーカードとは何か」「訪問診療時の資格確認はどうするのか」「オンライン資格確認システム(以下、オン資)未導入の場合はどうするのか」「子どもが受診する際もマイナンバーカードの持参が必要か」など、さまざまな相談が寄せられている。相談事例を踏まえ、今年122日に健康保険証の新規発行が終了したらどうなるのかを整理したい。

なお、紹介する内容は9月中旬時点のものであり、今後、変更があった場合には、本ホームページのほか、機関紙やデンタルブックメールニュースなどでもお知らせする。

◆マイナ保険証は2種類

マイナ保険証は、マイナンバーカードおよび顔認証マイナンバーカードにマイナ保険証の利用登録をすることで利用できるが、通常のマイナンバーカードか、顔認証マイナンバーカードかにより、機能に違いがある(図1)。

顔認証マイナンバーカードには、カード表面に「顔認証」の印字がある。当該カードは暗証番号の入力が必要なサービスは使用できず、医療機関においては暗証番号による資格確認ができない。

また、顔認証マイナンバーカードはマイナポータルも利用できない。そのため、カードリーダーで資格確認できないトラブルが生じた場合は、今後マイナ保険証を有する患者らに交付される「資格情報のお知らせ」を提示してもらうか(様式は図3を参照)、「被保険者資格申立書」を提出してもらうことになる。

オン資導入済の医療機関は、カードの違いやマイナ保険証で資格確認ができないトラブルの対応方法をあらかじめ熟知しておく必要がある。

◆マイナ保険証を持たない患者に資格確認書/切替時期は患者ごとに違う

保険者ごとに対応が異なるが、マイナ保険証がない患者を対象に、健康保険証の有効期限前に「資格確認書」が発行される(2)。様式は健康保険証と同じである。

健康保険証の有効期限後は資格確認書を提示するが、健康保険証の有効期限は①202512月1日まで、またはその前に切れる場合はそれまでであり、患者ごとに切替時期が異なるため注意が必要だ。

◆オン資未導入の場合「資格情報のお知らせ」など提示

マイナ保険証がある患者には、資格情報が記載された「資格情報のお知らせ」が交付される。よって、マイナ保険証がある患者がオン資未導入の医療機関を受診する場合は、マイナ保険証と「資格情報のお知らせ」を提示するか、マイナ保険証とスマホ等でマイナポータルの医療保険被保険者資格情報の画面を提示する(3)。

なお、オン資未導入のうち義務化対象外の医療機関(紙レセプト請求)などの場合は、医療機関の判断で資格確認限定型のオン資を導入して対応することも可能である。また、モバイル端末および汎用カードリーダーの購入費用等を対象に、事業額4.1万円の3/4(最大3.1万円)を補助する助成金がある(申請締切:2025115日)。詳細は、「医療機関等向け総合ポータルサイト」内の「義務化対象外機関(紙レセプト請求等)におけるオンライン資格確認について (マイナ資格確認アプリ)」をご覧いただきたい。

◆在宅はマイナ保険証と資格確認書の2枚持ちも

訪問診療時、マイナ保険証がある患者においては、①マイナ保険証と「資格情報のお知らせ」を提示する、②マイナ保険証とスマホ等でマイナポータルの医療保険被保険者資格情報の画面を提示する方法に加えて、③本人の申請で保険者から要配慮者と判断され、交付される資格確認書を提示する方法で資格確認を行う(4)。訪問診療では施設入所者が多く、大部分の施設はマイナ保険証の管理に消極的である。患者との相談が必要になるが、保険者に申請して資格確認書を発行してもらい、資格確認を行う方法が現実的ではないだろうか。

なお、医療機関の判断で居宅同意取得型のオン資を導入し、それで対応することも可能である。また、レセプトコンピューターの改修等およびモバイル端末や汎用カードリーダーの購入費用等を対象に、歯科診療所に対し、事業額17.1万円の3/4(最大12.8万円)を補助する助成金がある(申請締切:2025115日)。詳細は、「医療機関等向け総合ポータルサイト」内の「訪問診療等について (オンライン資格確認)」をご覧いただきたい。

◆児童の取り扱い

児童においても、マイナ保険証がある場合は、原則としてその持参と提示が必要となる。ただし、修学旅行等の学校行事や部活動の合宿・遠征等において本人が持参することが困難な場合は、①マイナポータルに表示される医療保険被保険者資格情報のPDFファイルをあらかじめダウンロードしたものやその印刷物、②資格情報のお知らせ、またはその写しの提示でもよい。原本の紛失リスク等を考慮すれば、①の印刷物や②の写しを持参する場合が多いと思われる。 

◆健康保険証の存続求める署名にご協力を

健康保険証の新規発行終了により、さまざまなことが変わる。マイナ保険証がある患者はマイナンバーカードに加え、トラブルが生じた場合等に備えて、「資格情報のお知らせ」も持参するか、スマホ等でマイナポータルの医療保険被保険者資格情報画面を受付に示す作業が必要になる。訪問診療が必要な高齢者や要介護者にそれを求めるのは困難であり、患者らと相談して「資格確認書」を発行してもらう場合も多いと推察される。今年122日に発行を終了すべきか、真剣に考えるべきだ。

協会は、健康保険証の存続を求める署名を改めて会員にお送りする(5)。10月上旬に届く「月刊保団連」10月号に同封しているので、以前署名した方もぜひともご協力いただきたい。

図5 健康保険証の存続を求める署名(「月刊保団連」10月号に同封)

 

【教えて!会長!! Vol.87】10月から始まる先発医薬品の負担増

教えて! 会長!! Vol.87 / 10月から始まる先発医薬品の負担増

Q 10月から行われる先発医薬品の選定療養化とは、どのようなものですか?

 101日から、後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある薬で、先発医薬品(長期収載品)の処方を希望された場合、通常の窓口負担(13割)に加えて、特別な料金を徴収します。より具体的には、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を指し、課税対象となるため10%の消費税分を徴収します。このことは先発医薬品の選定療養化といえます。これは、保険診療と保険外診療の混合を例外的に認めている「保険外併用療養費」という制度です。歯科では金属床総義歯、前歯部の金属歯冠修復に使用する金合金などで、患者さんから徴収する特別な料金の内容を厚生局に報告する必要があります。なお、本件の先発医薬品の選定療養は報告の必要はありません。

先発医薬品が医療上必要と判断した場合(別途に記表に示した4項目)は、選定療養の対象外とすることができます。

Q「院外処方」と「院内処方」で説明してください。

「院外処方」として101日から処方箋様式が変更されます。「医療上の必要性」により後発医薬品への変更を不可とする場合、「変更不可(医療上必要)」欄で該当医薬品にチェックします。また、「医療上の必要性」がなく、患者さんの希望により先発医薬品を処方する場合は「患者希望」欄で該当医薬品にチェックします。なお、「変更不可(医療上必要)」欄と「患者希望」欄のいずれもチェックしなければ、薬局で患者さんが先発医薬品か後発医薬品かを選択し、先発医薬品を希望された場合は、選定療養の対象となり、前述の特別な料金が徴収されます。

「院内処方」の医療機関も先発医薬品の選定療養の対象ですが、厚生労働省からの事務連絡(712日付)で、院内で後発医薬品を採用していない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」の特別な事情に該当するため、選定療養の対象にはならず、従来の保険給付になるとしています。ただしこの場合は、その理由をレセプトに記載する必要があります。

なお、院内での注射は選定療養の対象ですが、「院内処方」と同じく院内で後発医薬品を採用していなければ、対象にならないと解釈できます。

国は、高齢者の窓口負担割合の引き上げや、高所得者の年金の削減などを行い、社会保障費の抑制を進めています。その一つに今回の先発医薬品における患者負担増があります。現状、後発医薬品において、先発品より効果が低いとの報告や、添加物アレルギーの発現が認められたなどの報道があり、患者さんが不安に感じることは理解できます。行政には後発医薬品の効果や安全性を示していただきたいところです。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞202410月号掲載)

 

東京都保健医療局・福祉局に2025年度予算を巡り要望書を提出

東京都保健医療局・福祉局に要望/東京都歯科保健推進計画など4項目

協会は828日、東京都第二本庁舎にて東京都保健医療局および福祉局に対し、協会が作成した「2025年度(令和7年度)東京都予算等に関する要望書」を提出。これに基づく意見交換を行った。協会からは坪田有史会長のほか、本橋昌宏副会長、松島良次理事が参加した。

協会が提出した要望は、「医療機関における指導」「歯科衛生士への復職支援」「医療費助成制度」「患者トラブル・ハラスメント」の4項目となっている。

東京都2025年度予算への要請を行う(左から)本橋昌宏副会長、坪田有史会長、松島良次理事

1、医療機関における指導について

協会は、個別指導に関する対象患者の通知について、「1週間前に30名全員分を通知すること」および「作成や保存していない持参物については持参不要である旨を通知に明記すること」を要望。また、電子カルテによる指導については、実施要領の説明を求めた。

東京都側は、指導については各地方厚生局と都道府県で統一の内容で実施しており、当日の対象患者の通知時期、作成していない書類の扱いについては、引き続き関東信越厚生局東京事務所と情報を共有していくとの考えを示した。また、電子カルテについては、適切かつ個別的な方法で実施要領を定めていくとの考えを示した。

2、歯科衛生士への復職支援について

歯科衛生士の復職については、歯科衛生士としての技術や技量の維持などが課題となっていることから、技術的なリスキリングができるような支援や、再就職に向けたフォローなどを要望した。

東京都側は、歯科衛生士の確保策として再就業対策がより重要であるとの認識を示し、現在、国が歯科専門職の業務実態、働き方改革、働き方に関する調査や、業務のやりがいや魅力を伝えるための効果的な普及啓発を検討していることから、これらに則した形で離職した歯科衛生士に向けた複合的なカリキュラムを備えた研修を実施していくとの考えを示した。

3、医療費助成制度について

「通院1回につき最大200円まで」という自己負担金が残っているため、多摩地区などでは、以前から歯科受診の妨げになっているとの指摘がある。そのため、東京都の子育て支援に関する予算から自己負担分を捻出できないか要望した。

東京都側は、子どもの医療費助成制度は、一定の自己負担を前提とする国の医療保険制度のもと、自己負担を設けていると説明。200円の自己負担について、協会側に理解を求めた。

3、患者トラブル・ハラスメントについて

東京都が開設した「専用ハラスメント相談窓口」について、ハラスメント事例の公表を要望した。また、現在の相談窓口は在宅だけに限定されており、外来も含めた対応を求めた。

東京都側は、相談窓口に寄せられた事例を分析し、今後、在宅医療従事者向けの研修で共有していくとの考えを示し、外来診療におけるハラスメント対策については、さまざまな取り組みによりハラスメント対策の充実を図ることで、医療現場の安全を確保し、安心して従事できる環境を整備していくと説明した。

後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について

後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について

10月1日から先発医薬品(長期収載品)の選定療養化が開始されます。 長期収載品の対象医薬品は1095品目、歯科で使用頻度の高い医薬品も含まれます。
ただし、長期収載品のすべてが選定療養となるわけではなく、条件に当てはまる場合は選定療養の対象にはなりません。
処方箋様式は10月から変更ですが、従来の様式を修正して使用することも可能です。
【医療機関・薬局の方向けのチラシ】(厚生労働省)

1.対象となる要件と患者負担
選定療養の対象になる場合
①医師・歯科医師が医療上必要があると認めた場合(院外処方の場合は処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」を記載した場合)
②後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、医療機関や保険薬局で後発医薬品が提供することが困難な場合、のいずれかに該当しない場合
対象になる場合、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を特別な料金(選定療養)として患者から別途受領します。「特別の料金」は課税対象であるため、消費税分を加えて受領してください。

2.対象となる医薬品
以下①または②が対象です。
対象医薬品リストは厚労省HP「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」からご確認できます。
①後発医薬品が初めて薬価基準に収載された日の属する月の翌月の初日から起算して5年を経過している医薬品で後発医薬品置き換え率が1%以上のもの
②後発医薬品の置き換え率が50%以上であるもの
【対象となる歯科の医薬品の例】
・ボルタレン錠25㎎、ロキソニン細粒10%、ジスロマック錠250㎎など。

長期収載品を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について厚労省でリストを作成しています。ご参照ください。
※示されている額はあくまでイメージであり、実際に窓口で負担する額とは異なることにご注意ください

後発医薬品との価格比較リスト[487KB]別ウィンドウで開く

3.レセプト記載
(1)選定療養の対象とならない場合のレセプト・処方箋記載
①院内処方の場合のレセプト記載
医療上の必要があると認められる場合、および後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難で選定療養の対象とならない場合は、別表1の理由より選択して、レセプトの「摘要」欄に記載します。

コード レセプト表示文言
820101320 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異があるため
820101321 患者が後発医薬品を使用した際、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、長期収載品との間で治療効果に差異があったため
820101322 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されているため
820101323 剤形上の違いにより、長期収載品を処方等の必要があるため
820101324 後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが困難なため

②院外処方の場合の処方箋記載
処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」と記載し、「保険医署名」欄に署名または記名、押印します。
記載がない場合、薬局での聴き取りにより「患者希望」が確認できた場合、選定療養の対象となる可能性があります。
(2)選定療養の対象となる場合のレセプト・処方箋記載
①院内処方の場合のレセプト記載
当該医薬品の後に「(選)」と記載し、所定単位につき、選定療養に係る額を除いた薬価を用いて算出した点数を記載します。
【記載例】
ジスロマック錠250㎎(選)3錠 43×3
②院外処方の場合の処方箋記載
処方箋の「患者希望」欄に医薬品ごとに「✓」または「×」と記載する。

4.疑義解釈より抜粋
(問)医療上の必要があると認められるのは、どのような場合が想定されるのか。
(答)保険医療機関の医師又は歯科医師(以下、医師等)において、次のように判断する場合が想定される。
① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合
(※)であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。
(※)効能・効果の差異に関する情報が掲載されているサイトの一例
PMDAの添付文書検索サイト
日本ジェネリック製薬協会が公開する「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」
② 当該患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師等が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。
③ 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師等が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合
④ 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。

(問)院内採用品に後発医薬品がない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付してよいか。
(答)患者が後発医薬品を選択することができないため、従来通りの保険給付として差し支えない。

(問) 医療保険に加入している患者であって、かつ、国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
(答)長期収載品の選定療養の制度趣旨は、医療上必要があると認められる場合等は、従来通りの保険給付としつつ、それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は、選定療養の対象とすることとしたものであることから、今般、対象外の者は設けておらず、国の公費負担医療制度の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来通りの保険給付として差し支えない

(問)生活保護を受給している患者が、単にその好みから長期収載品を希望した場合は、特別の料金を徴収することになりますか。
(答)生活保護受給者である患者には、単にその嗜好から長期収載品を希望した場合であっても、後発医薬品を処方等又は調剤することとなります。そのため、特別の料金を徴収するケースは生じません。

<そのほかの疑義解釈>
長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について
(その1) 
(その2)
(その3)
(その3)の一部訂正について

5.院内掲示について
「後発医薬品のある先発医薬品の処方等又は調剤に係る費用徴収その他必要な事項を当該保険医療機関及び当該保険薬局内の見やすい場所に掲示しなければならないものとする」とされています。掲示する内容については、厚労省HPのポスターを参考してください。

【オンライン請求の医療機関】返戻レセプト等の紙送付の廃止について

【オンライン請求の医療機関】返戻レセプト等の紙送付の廃止について

10月からオンライン請求を行う医療機関に対する返戻レセプトおよび通知の紙での送付が廃止されます。
電子媒体や紙媒体で請求している場合の取扱いには変更はありません。

10月以降は返戻レセプトや各種帳票はダウンロードのみの取り扱いになります。
各医療機関で3カ月以内にダウンロードをしなければなりません。
ダウンロードがされていない場合には注意喚起のポップアップの表示や審査支払機関から確認の電話などがあるようですが、本来、診療報酬の請求権は診療翌月から5年間とされていることから、ダウンロード期間が3カ月という扱いは請求権との関係から問題です。
事情によりダウンロードが期間内に行えなかった場合には審査支払機関に問い合わせください。

<参考>
・ オンライン請求システム操作手順書(運用編)社会保険診療報酬支払基金
・ オンライン請求について(医療保険)東京都国民健康保険団体連合会
・ 返戻再請求のオンライン化についてのご案内(厚生労働省)
・ オンラインによる返戻再請求の実施についてのご案内(厚生労働省)

・ 厚労省HP
・ 支払基金HP
・ 支払基金HP (オンライン請求システムに関する Q&A)

・ 国保中央会HP(オンライン請求)
・ オンライン請求システムサポートサイト

医療DX推進体制整備加算の変更について

医療DX推進体制整備加算の変更について

初診料の加算として新設された「医療DX推進体制整備加算(医DX)」が10月以降、マイナ保険証の利用率に応じて、3つに区分されます。
医DXの施設基準を届け出た医療機関において、9月末までは初診料に6点の加算でしたが、10月1日からは(表1)の通り、算定時期の利用率区分に応じて、加算点数を算定します。
利用率については、支払基金から毎月メールで通知されますのでご確認ください。

※医DXは、施設基準届出医療機関において初診料に加算することができます。

(表1)マイナ保険証の利用率区分と算定時期

今年10月~12月

来年1月~3月

医DX1 (9点)

15%

30%

医DX2(8点)

10%

20%

医DX3(6点)

5%

10%

(表2)参照可能なマイナ保険証利用率の実績

 

レセプト件数ベース

オン資件数ベース

10月

5~7月

6~8月

11月

6~8月

7~9月

12月

7~9月

8~10

1月

8~10

9~11

2月

9~11

(経過措置終了)

マイナ保険証の利用率は、加算を算定する3カ月前から5カ月前のうち最も高い月の「レセプト件数ベース保険証利用率」を用います。ただし経過措置として2025年1月までは2カ月前から4カ月前の「オンライン資格確認ベースマイナ保険証利用率」を用いることもできます。

 

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)9月1日

東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)9月1日

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【新聞9月号】

【1面】
1.新規発行終了まであと3カ月 改めて問う「本当に健康保険証を廃止してよいのか?」
2.<会員拡大月間>会員無料システムや 新規開業医講習会を充実(福島崇組織部長)
3.大切なお知らせ 電話受付時間 変更について
4.探針
5.ニュースビュー

【2面】
6.第53回保団連夏季セミナー開催/差し迫る健康保険証廃止に非難の声
補綴外しへの警戒感も
7.健康保険証廃止でどうなる?資格確認書って?
8.複雑な診療報酬改定めぐり懇談/2024年度会員地区懇談会 多摩・城南・城東 3地区で開催
9.診療報酬改定施行後 初開催/126名が参加/施設基準のための講習会

【3面】
10.インタビュー 東京新聞・長久保宏美さん/マイナ保険証問題担当記者が語る“今後の懸念”「いま医療現場が取るべきアクション」はひとつ

【4面】
11.経営・税務相談Q&A No.420「エックス線装置を買い替えたらやってくる?!保健所の『立入検査』とは?」
12.東京都(歯科)の施設基準届け出状況― 2024年7月1日現在―「歯外在ベⅠ」12.57%〝低調〟な届出状況
13.9月会員無料相談のご案内

【5面】
14.研究会・行事ご案内
15.デンタルブックのご案内
16.会員優待のご案内

【6面】
17.自院のトラブル経て保険証署名に協力 同世代の先生へ「一歩踏み出して」/ドクターチェリー歯科室・吉牟田友惟院長
18.引き続きご協力ください/現行の健康保険証を残してください請願署名<私のひとこと>

【7面】
19.健康保険証廃止問題(1面からつづく)/資格確認方法が複数に本当に利便性が上がるのか?
20.会員の意識と実態調査ご案内

【8面】
21.教えて!会長!! Vol.86「保険証を残そう!署名にご協力を!!」
22.「よい歯」東京連絡会が記念講演開催/スウェーデン式予防歯科のノウハウを熱く語る
23.「情報セキュリティ10大脅威2024」解説③最終的には「人」の問題 重要なのは情報リテラシー
24.理事会だより/2024年度第8回理事会
25.8月協会活動日誌

【9面】
26.症例研究「歯科矯正相談料と小児の口腔機能管理」

【10面】
27.退き際の思考 歯科医師をやめる(松井裕子さん・前編)「最善の治療を目指し」勤務医として34年 退職後も歯科と関わる人生を模索中
28.共済部だより/共済募集キャンペーン

【11面】
29.2024年9月 歯科用貴金属の随時改定情報
30.神田川界隈「気まぐれな エアータービン」(理事・半田 紀穂子/台東区)
31.会員寄稿「声」 随筆「DXの光と影」小林顕(板橋区)
32.通信員便りNo.145

【12面】
33.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
34.いのちまもる9・26総行動 ご案内
35.原水爆禁止2024年世界大会in広島

【13・14面】
36.共済制度折込:秋の共済キャンペーン

2024年度会員地区懇談会/多摩・城南・城東の3地区で開催

2024年度会員地区懇談会/多摩・城南・城東の3地区で開催

複雑な診療報酬改定めぐり懇談

協会は、「複雑すぎる保険改定を学んで、ひとつでも多くの保険算定を目指そう!」とのテーマで、多摩(724日)、城南(8月1日)、城東(同7日)の3地区で会員地区懇談会を開催し、合わせて60名が参加した。

3地区で講演した協会役員3名から成る講師陣は、事前質問で参加者から寄せられた内容から関心が高かった口腔機能管理料やCe・根CなどのF局、施設基準の届出などを中心に解説した。さらに、増点に繋がる項目や今後需要が高まりそうな算定項目にも触れた。

講演後は、参加者からの質問や診療報酬改定に対する意見などを発言してもらい、全体での懇談を行った。終了後には「今回の診療報酬改定は複雑で分かりづらいことが多く、協会に何度も電話をした。この懇談会で講師から改定のポイントの解説と具体的な算定事例を聞けて、ありがたかった」「ベースアップ評価料や施設基準など、多岐にわたって改定されたのでよく分からなかった。講師の先生や周りの先生方がどのように届出をしているかなど、具体的な話が聞けて良かった」など、率直な意見や感想が寄せられた。

今後も、会員の関心度が高いテーマで懇談会を行うので、ぜひ参加してほしい。

施設基準のための講習会を開催/126名が参加

施設基準のための講習会を開催/126名が参加

施設基準のための講習会を開催

改定診療報酬6月施行後の初開催に126名が参加

協会は728日、ワイム貸会議室高田馬場で、6月の診療報酬改定施行後初めて「施設基準のための講習会」を開催した。講師は、繁田雅弘氏(東京慈恵会医科大学名誉教授他)、坂下英明氏(明海大学名誉教授他)、馬場安彦氏(当協会副会長)、森元主税氏(当協会理事)が務めた。

本講習会は、歯科外来診療医療安全対策加算1(外安全1)、歯科外来診療感染対策加算2(外感染2)、口腔管理体制強化加算(口管強)の新基準要件にも対応している。歯初診・外安全1・外感染2に対応したコースに20名、歯初診・外安全1・外感染2・口管強・歯援診に対応したコースに106名と、計126名が参加した。なお、次回は1215日(日)を予定している(下記案内参照)。

 

【教えて!会長!! Vol.86】保険証を残そう! /署名にご協力を!!

保険証を残そう! /署名にご協力を!!

Q 12月2日まであと3カ月ですね。

 本年122日から健康保険証の新規発行が終了となります。患者さんの中には、現在お持ちの健康保険証が122日から使えなくなると勘違いされている方もいらっしゃるなど、既に混乱が起きていることが多数報告されています。なお、発行済みの健康保険証は最長1年間有効となる経過措置があります。現在の公的医療保険は、居住地や勤務先が変わった場合、自治体や健康保険組合などが新規の健康保険証を発行しています。しかし、122日以降は、加入する保険者が変更された時点で経過措置は終了してしまいます。一方、75歳になって後期高齢者医療制度の対象になった場合も同じです。現在、後期高齢者医療制度に該当されている方は、継続される257月頃に経過措置が終了します。したがって、1年間の猶予がない方が必ず出てきます。これも、混乱を引き起こす原因の一つとなっています。

他方、健康保険証の新規発行が終了すると、マイナンバーカードを持っていない人、持っていても健康保険証とひも付けしていない人、介護が必要な高齢者や子どもなど、カード取得が難しい方が保険診療が受けられるように、保険者が保険証の代わりに「資格確認書」を無料で発行します。この「資格確認書」が発行されるタイミングは各自治体などに任されていますが、いまのところ不明です。地域によって差が出ることが想定されますから、この件も混乱に繋がりかねません。

これらの患者さん側の混乱に直接対応する可能性が高いのは、現場の医療機関です。既に、患者さんがマイナ保険証で受診された場合、別人の情報がひも付けられていたり、読み取りが不具合となったりするトラブルの報告が協会に届いています。

国は、マイナカードには顔認証システムがあって、他人がなりすますことを防止できると言っています。しかし、暗証番号を入力すれば顔認証をしなくても資格確認ができてしまいます。したがって、なりすまし防止には無効ですからマイナ保険証のメリットにはなりません。

さらに、122日以降に窓口で患者さんの保険者番号を確認する方法が、現行の健康保険証を提示する、カードリーダーでマイナ保険証を読み取る、「資格確認書」を提示する、という3つのパターンに加え、さらに6種類あり、合計9種類になります。受付の際、これらの方法を把握しておかなければユニットに通して保険診療を開始できませんし、対応が滞れば現在のようなスムーズな診療ができなくなる可能性も否定できません。そもそも、122日以降は、現在より受付窓口の業務負担が増えることが想定されます。

Q 政府が強硬な姿勢で、現行の保険証を廃止してマイナ保険証を推進する方向なのはどうしてですか。

 マイナ保険証の利用率を上げるため、国や行政側は多額の予算をつぎ込むなど、躍起になっている姿勢を感じます。ご存じの通り、マイナカード取得・マイナ保険証利用を強要するマイナ保険証利用促進キャンペーンが行われています。頼んでもいないのに先生方に「総合ポータルサイト」からマイナ保険証の利用率などが勝手に送られてくることをどう思われているでしょうか。

この健康保険証の廃止の動きの裏には、さまざまなビジネスや多くの利権が繋がっていることが囁かれています。医療DXにメリットがないとは断言できませんし、推測で記すことは止めておきます。しかし、個人情報を利活用すると言われても、個人としては「気味が悪い」の一言に尽きます。

また、今次診療報酬改定でマイナ保険証の利用促進を主目的として「医療情報取得加算」「医療DX推進体制整備加算」などが新設され、技術料などに使うべき診療報酬の財源が少なくなりました。マイナ保険証の推進のために改定財源を使われたことは、歯科医療が軽視されたと言えます。

協会は、歯科保険医の経営を守ることを目的の一つに挙げています。したがって、反対意見だけを声高に訴えるだけでなく、状況に応じて、また個々の先生方の事情を踏まえながら、対応しています。しかし、健康保険証の廃止だけは日常の歯科医業を妨げる原因になる可能性が少なからずあります。したがって、引き続き「健康保険証の存続を求める」請願署名と、今後実施予定の「オン資トラブル調査(第4弾)」へのご協力をお願いします。

なお、協会は、将来に向けて「医療のデジタル化」に反対しているわけではありません。とにかく現行の健康保険証で困っていないのですから、患者・国民の皆さんと医療機関のために現行の健康保険証が使えるように残してほしい、そのことを強く訴えているのです。

東京歯科保険医協会

会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞2024年9月号掲載)