協会ニュース

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.5/完

次の新たな感染症に対峙する医療・公衆衛生体制の充実を

2020年1月、国内で初めて新型コロナの感染事例が確認された頃には、「封じ込め」を目指す「戦略」が取られ、感染者の隔離のみならず濃厚接触者にも厳重な措置をとるなどの「戦術」が開始されたが、その時点においてはそれなりの妥当性があった。しかしながら、本連載で既述したように、現在においては、「封じ込め」が不可能であること、ワクチンや診断・治療法が確立し、致死率が着実かつ大幅に減少してきていることから、「戦略」を見直し、「戦術」を改めるときに至っている。

わが国において一刻も早くとるべき戦略

これまでの感染者の全数届出・隔離、濃厚接触者の行動制限という「封じ込め」を目指す戦略から、「重症化・死亡者数の最小化」とともに「恐怖の病原体というイメージの払拭」を目指す戦略へ転換する段階に現在到達している。
重症化や死亡のリスクは、高齢者や高度肥満者、コントロールが良くできていない糖尿病等の基礎疾患を合併している患者という知見が明らかとなっている。小児や若年者は、無症状か軽症者が大多数であり、感染すること自体を問題視するよりも、重症化リスクが高く死に至る人をいかに守るかに保健医療資源を充てていくべきである。
また、「防災」ではなく「減災」というコンセプトがあるように、感染リスクゼロを目指すような感染拡大の「防止戦略」から、感染機会や重症化リスクの「軽減戦略」への発想転換も考慮されるべきではないか。

重症化・死亡者数の最小化に向けて

広くまん延し、封じ込めができないということから、今となっては濃厚接触者の行動制限の意義は低く、即刻止めるべきである。その上で、感染者の重症化予防のための的確な診断、適時適切な治療へのアクセスの確保が重要であり、保健所を絡ませず、診療所等の外来機能による早期発見・早期治療、医療機関連携による患者紹介、転院、救急搬送といった通常の医療システムに戻すことが急務である。そのためにも、新型コロナの全数届出は不要とし、定点医療機関におけるサーベイランス対象感染症といった運用に切り替え、風邪やインフルエンザのごとく、一般の診療所や中小病院における受け入れがなされるようにすることが重要である。また、流行時には、高齢者施設や病院等における会話時のマスク着用など感染リスクの軽減も必要であろう。
なお、重症化予防の事前策としての、高齢者、高度肥満や基礎疾患等を有する者に対する重症化予防の「個人防衛」としての定期的なワクチン追加接種の勧奨も必須である。

もはや「恐怖の感染症」ではない

元々「恐怖の病原体」というものは、社会から隔離・排除すべきという意識と根強い「偏見・差別」意識と連動する。これは、ハンセン病やHIV感染症での経験そのものであり、治療法等の確立によって「恐怖の病原体」「不治の病」では無くなり、その疾病イメージが変わり、偏見・差別問題は改善するという歴史が繰り返されている。
一方、高齢者などでは続発する細菌性肺炎等で死に至ることが多々ある風邪症候群や季節性インフルエンザなどは、仮に罹患しても、偏見・差別を受けることはほぼ無く、それは「恐怖の病原体」というイメージが作られていないからである。このため、新型コロナウイルス感染症に対する疾病イメージを変えて、感染のリスクはすべての人にあり、感染自体を恐れるべきでないという政策を進め、偏見・差別、風評被害を無くしていくことが求められている。

最後に

幸い、4回目のワクチン接種は高齢者および基礎疾患を有する者を対象にしたり、屋外での非会話時のマスク着用は不要としたりなど、私が提言してきた戦略・戦術が徐々に政府でも取り上げられつつある。
新型コロナウイルス感染症問題の収束に期待するとともに、今回の教訓を踏まえた次の新たな危機的な感染症の発生に向けた医療・公衆衛生体制の更なる充実も期待して、本連載を終えたい。


山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

第50回定期総会 記念講演/チタン・CAD/CAM冠の適用拡大求める

定期総会後半の「記念講演」では、協会の坪田有史会長が壇上に上がった。テーマは「臨床の視点で金パラの代替を考える」。昨今の診療報酬改定や基本診療料の点数の変遷、金パラの代替材料についての現状、そして近未来について持論を展開した。司会は阿部菜穂理事が務めた。

―2022年度診療報酬
改定について
坪田会長は、まず2022年度診療報酬改定について触れ、基本認識、基本的視点として、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、QOLに配慮した歯科医療の推進を挙げ、それらを通じて、国民の健康寿命の延伸とQOLの改善に寄与することと説明した。
診療報酬改定率については、全体としてプラス0・43%(財源:300億円)、歯科では、プラス0・29%の87億円と紹介。坪田会長が歯科医師となった1989年には国民医療費における歯科医療費の割合は10%であったが、20年後の2019年では6・8%に減ってしまったとし、国民医療費における歯科医療費の割合が10%で維持できていれば、約1兆円も少ない現状であると指摘した。

―基本診療料の変遷を前に
2022年度改定で、歯科の初診料は261点から264点、再診料は53点から56点へと、各3点ずつアップした。医科の初診料と再診料は、歯科の初診料より24点、再診料は17点高く、会員からは「医科と同じ点数にすべき」との声があがっている。歯科は初診料を1点上げるのに8億円、再診料を1点上げるのに32億円、初診料・再診料を各1点ずつ上げるのに40億円が必要とし、2022年度改定で初診料・再診料を各3点ずつ上げたので、120億円の財源の確保が必要と説明した。その上で、歯科の財源の不足分は、P基処の廃止により充当されたと説明した。P基処の廃止により、110億7000万円の削減となるため、初診料・再診料の点数が上がったメリットを享受できていないと感じる歯科医師が多いと指摘した。
さらに、過去10年間における初診料・再診料の変遷において、点数は引き上げられているものの、消費税率の引き上げに伴う対応分が含まれているため、実質的な基本診療料の評価には繋がっていないことを指摘し、歯科において国民の健康寿命の延伸やQOLの改善だけでなく、歯科に係る諸問題を改善するために歯科医療費の総枠拡大の必要性を強く訴えた。

―金パラの代替材料
保団連が実施した金パラモニター調査のデータを引用し、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況や、パラジウム、金の先物チャート図をもとに、世界情勢の影響を受けやすく、投資家の投機対象となる材料を保険の材料としていることを問題視。また、歯科用貴金属の価格変動が歯科医療機関に与える影響を緩和するため、年4回公定価格の改定を行うなど、対応が行われたが、金パラ告示価格と実勢価格が乖離している状況は改善されないとし、抜本的な対応を国に求めていくと強調した。
さらに、金パラによる歯冠修復の問題点として、審美障害や金属アレルギーが挙げられるが、接着の技術改善により、接着ブリッジやCAD/CAM冠などのメタルフリーの歯冠修復物の適用が拡大していると説明した。金パラの代替材料として、メタル系ではチタン、コバルトクロム合金、合成樹脂としては、コンポジットレジン(HJC、CRインレー)、ハイブリッドレジンブロック(CAD/CAM冠、CAD/CAMインレーなど)、PEEK、無機材料としては、セラミック(ジルコニア)をピックアップした。
ただし、フルジルコニアクラウンの保険収載は財源が大幅に増加しなければ厳しいという見解を示した。今後は、国としても脱メタル化を推し進めているため、メタルフリーの歯冠修復における保険適用の拡大がさらに進むとの見解を示した。
そのほか、各材料の臨床における特徴や問題点を実際の臨床データを用いながら解説。保険適用となったチタンの改善案としては、①CAD/CAM冠用のチタンブロックを用いて、CAD/CAM技術での製作を行う、②ブリッジへの適用拡大―の2点を挙げた。このうち、②のブリッジへの適用拡大については、保団連を通じて働きかけていくとした。
そして、CAD/CAM冠の適用の問題として、第二大臼歯のすべてが残存していなければ第一大臼歯には適用不可となっているが、その条件におけるデータやエビデンスがあまりにも少ないと指摘した。一律的にルールに縛られているため、患者に保険で適切な治療を行うことが難しい状況にあることから、歯科医師の裁量を認めさせる必要があると強調した。

―歯科医療費総枠拡大
坪田会長は改めて金パラの代替材料として、チタンやCAD/CAM冠の適用拡大の必要性を強調し、患者への適切な治療のためには、歯科医師の裁量権の拡大が不可欠とし、歯科業界を取り巻く諸問題の抜本的な解決策として、歯科医療費の総枠拡大の必要性を訴えた。
そして、歯科医療費の総枠拡大が果たせなければ、歯科医師が望む保険適用の拡大や、増点は望めないとし、国会議員や厚生労働省への働きかけを強めていくと強調した。
歯科医師が日々できることは、高点数を理由とする個別指導を恐れた萎縮診療に陥るのではなく、患者、国民の健康維持、健康寿命の延伸のため、エビデンスに基づいた正しい保険請求を行うことであり、それが歯科医療費の総枠拡大に繋がると訴え、結びとした。
講演後の質疑応答では、オーラルスキャナーを用いたCAD/CAMインレーの保険収載の可能性など、フロアーからの質問に、坪田会長が回答した。

【決議】東京歯科保険医協会 第50回定期総会(2022年6月19日)

 厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回る問題に関する改善要求から、今次診療報酬改定において、変動幅に係らず3ヶ月毎に告示価格を改定する仕組みが新設された。しかし、ウクライナ侵攻などから歯科用金銀パラジウム合金の市場流通価格は日々高騰を続けており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

 長期化する新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が慢性化している。今次診療報酬改定で初診料および再診料が僅か各々3点しか引き上げられておらず、そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る評価は十分とは言えず、国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行うべきである。

 なお、感染拡大を受け、厚生労働省は今年度も高点数による個別指導を実施しないこととした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

 国は、一定の収入がある75歳以上の国民の負担割合を、今年10月から1割から2割に引き上げる。健康寿命の延伸や在宅医療の医療提供が喫緊の課題となる中で、その患者の負担割合を引き上げる動きには反対である。

 「経済財政運営と改革の基本方針2022」の原案において、国民皆歯科健診の検討が盛り込まれた。疾病の早期発見および健康寿命の延伸に繋がると期待され、実現に向けてできる限り協力したい。なお、実施の際には患者が負担を気にせず健診が受けられるよう、適切な制度設計が検討されるべきである。

 2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻は、国連憲章および国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であっても許されるものではない。国民の命と健康を守る団体、そして唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。

 また、政府が推し進めている今後増加する高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

 

 

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

一.国は、患者が負担を気にせずにかかりつけの医療機関で健診が受けられるよう、国民皆歯科健診の適切な制度設計を行うこと。

一.国は、院内感染防止対策の評価を更に引き上げるなど診療報酬の諸問題を改善すること。

一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回ることのないよう、さらなる制度改善を行うこと。

一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

2022年6月19日

東京歯科保険医協会 第50回定期総会

第50回定期総会 「決議」

第50回定期総会「決議」

厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回る問題に関する改善要求から、今次診療報酬改定において、変動幅に係らず3カ月毎に告示価格を改定する仕組みが新設された。しかし、ウクライナ侵攻などから歯科用金銀パラジウム合金の市場流通価格は日々高騰を続けており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

長期化する新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が慢性化している。今次診療報酬改定で初診料および再診料が僅か各々3点しか引き上げられておらず、そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る評価は十分とは言えず、国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行うべきである。

なお、感染拡大を受け、厚生労働省は今年度も高点数による個別指導を実施しないこととした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

国は、一定の収入がある75歳以上の国民の負担割合を、今年10月から1割から2割に引き上げる。健康寿命の延伸や在宅医療の医療提供が喫緊の課題となる中で、その患者の負担割合を引き上げる動きには反対である。

「経済財政運営と改革の基本方針2022」の原案において、国民皆歯科健診の検討が盛り込まれた。疾病の早期発見および健康寿命の延伸に繋がると期待され、実現に向けてできる限り協力したい。なお、実施の際には患者が負担を気にせず健診が受けられるよう、適切な制度設計が検討されるべきである。

2月24日に開始されたロシア軍のウクライナ侵攻は、国連憲章および国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であっても許されるものではない。国民の命と健康を守る団体、そして唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。

また、政府が推し進めている今後増加する高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

一.国は、患者が負担を気にせずにかかりつけの医療機関で健診が受けられるよう、国民皆歯科健診の適切な制度設計を行うこと。

一.国は、院内感染防止対策の評価を更に引き上げるなど診療報酬の諸問題を改善すること。

一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の材料費が診療報酬の告示価格を上回ることのないよう、さらなる制度改善を行うこと。

一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

 

2022619

東京歯科保険医協会

50回定期総会

 

 

 

 

 

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)6月1日 第627号

1面】

     1.診療報酬/オンライン資格確認 原則義務化
     2.第50回定期総会のご案内
     3.定期総会議案書
     4.ニュースビュー
     5.「探針」

2面】

     6.会員寄稿“声”「今後不可欠な『訪問歯科』 現場の視点で見る改定」(葛飾区・池川裕子氏)
     7.会員寄稿“声”「歯科はなぜ疲弊しているのだろうか?」(文京区・太田順子氏)
     8.歯科訪問診療/初電・再電の摘要欄記載不要に
     9.遡及による新規個別指導 4月から対象変更

3面】

     10.経営・税務相談Q&A No.393 賞与・退職金~導入で気を付けることは?~
     11.IT相談室/インターネットに関するプロバイダの選び方/(クレセル株式会社)
     12.診療報酬改定 関連書籍/歯科疾患管理計画書のご案内
     13.法律相談、経営&税務相談

【4面】

     14.インタビュー「歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士 三位一体で活動する場が必要」日本歯科審美学会・大槻昌幸さん

【5面】

     15.研究会・行事のご案内

【8面】

     17.Special Serial No.4 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)
     18.教えて!会長!!Vol.59

【9面】

     19.症例研究/2022年度診療報酬改定 初期の根面う蝕のF局および咬調

【10面】

     20.連載/私の目に映る歯科医療界⑮(東洋経済新報社・大西富士男氏)他人事ではない!英国の歯科保険難民発生
     21.理事会だより
     22.協会活動日誌2022年5月

11面】

     23.金パラ原価割れ解消へ 国会議員に要請/金パラ問題 理解示す
     24.視点/若者の投票率向上へ 政治理解深める教育を
     25.夏季休診案内ポスター
     26.第2休業保障制度(団体所得補償保険)募集キャンペーンのご案内
     27.第33回全国保険医写真展ご案内

12面】

     28.7月金パラ引き上げ/1g3413円→3715円に
     29.第1回メディア懇談会「患者側の意識は?」金パラ価格変動について議論
     30.神田川界隈/今年度改定のご評価は?(西田紘一監事/八王子市)
     31.通信員便り No.122
     32.電子書籍「デンタルブック」ご案内
     33.会員優待サービスご案内

13・14面】

     34.第2休業保証制度(団体所得補償保険)募集キャンペーン

私の目に映る歯科医療界⑮ 他人事ではない!英国の歯科保険難民発生/日本の歯科診療でも公的保険本質論議を

他人事ではない!英国の歯科保険難民発生/日本の歯科診療でも公的保険本質論議を

今回は、まず、最近気になった海外記事を2つ紹介したい。一つ目は、歯科医療専門「デンタルトリビューン」のインターナショナル版の4月13日付オンライン記事である。

Ⅰ.米国で長期進行する歯科医師の個人診療所離れ

冒頭で、米国で歯科診療所を所有・経営する歯科医師の割合が、2005年の847%から21年には73%に下落していることが取り上げられている。16年間のトレンドは今後とも不可逆だと専門家はみている。ここには複数要因が関係している。

◆増える女性歯科医師の診療所経営DSO

まず、診療所経営比率が男性に比べ、元々低い女性歯科医師が増えている。現在、米国の全歯科医師のうち34・5%を占めている女性歯科医師の割合は、2040年には、ほぼ半分にまで増加する見通しだ。

人口の年齢層の中で、診療所経営比率の高いベビーブーマー世代が引退期を迎え、逆に若手世代の歯科医師が大量流入する。

元々、若手の診療所の所有・経営比率は低いうえ、上の世代に比べ単独の診療所経営志向が低いという、この世代の特徴もある。これが先述した傾向にさらに拍車をかけそうだ。

個人所有の歯科診療所に様々な経営サービスなどを提供するDSO(歯科医支援機関)が成長していることも、単独経営の歯科診療所比率を下げる要因になっている。学校を卒業したばかりの歯科医師でDSO参加計画がある人の割合は、15年の12%から20年には30%に上昇している。このことは、単独経営診療所比率をさらに落とすことにつながるはずだ。

Ⅱ.英国では歯科医師が公的保険から大量 Escape

二つ目は、英ガーディアン紙の51日付け記事。

「イングランドに〝歯科医師砂漠〟が出現」の見出し通り、内容も衝撃的だった。

「治療を受けるまで長時間待たされる」として、評判はいま一つのNHS(National Health Service/国民保健サービス)により、国民皆保険を享受できるはずの英国で、こと歯科医療サービスで、この制度破綻の予兆にもなりかねない由々しき事態が生じている様を記事は詳述している。

20年の951人に続き、21年には約2000人の歯科医師が公的保険医を辞めた。歯科医師1人で平均約2000人の患者を抱えているため、公的な歯科医療サービスを利用できず困っている国民が、昨年だけで400万人も生まれたと、記事はいう。

残った歯科医師も、公的保険の上限を使い切った後は患者に自費診療料金を請求する。患者も、公的保険の歯科医師にいくら電話しても無駄なので、結局、自費診療をする羽目になっている。

その結果出現したのが、周囲に公的保険の歯科医師が一人もいなくなってしまった「歯科医師砂漠」。そこでは、公的サービスを提供する人口10万人当たりの歯科医師数が、最小地域ではなんと32人になっているのである。

こうした地域の住民の中には、遠出して公的な歯科医療機関を受診する人まで出現している。問題の本質は、政府の歯科医療費支出の少なさ、抑制からくる公的医療保険の歯科医療サービスの低価格に対し、歯科医師から反乱が起きているということだろう。

国民皆保険を謳いながら、英国ではそこに風穴が開きつつある。もちろん記事中でも識者が指摘するように、最もしわ寄せを受けるのは子どもや体の不自由な人、介護施設で生活する人をはじめとする、いわゆる社会的弱者に他ならない。

Ⅲ.金パラ問題も公的保険の本質巡る観点で論議を

◆米国で注目され始めたDSOへの参加

女性医師の比率上昇や個人経営の小規模診療所への競争圧力の増加は、日本も米国と同じ。米国の個人立歯科診療所では、診療所長を務める歯科医師が経営強化・維持のため、その所有や経営から離れる動きが生まれ、米国特有の動きとしてDSOへの個人立歯科診療所の参加が加速している現状がある。

大方が個人立診療所経営の道を志向してきた日本の歯科医師は、米国と同様の問題に直面した場合、どう解決の道を見出そうとするのだろうか。ここは、歯科医療関連団体を含めて真剣に考えるべきだろう。

英国の例も対岸の火事とはしていられないはずだ。問題の根にある英国政府の医療財政抑制政策は、程度の差こそあれ日本も同じだ。歯科診療価格を抑制し過ぎれば、相対的に高い料金を請求できる自費診療へ歯科医師が逃げ出す形で、国民皆保険制度の実質空洞化を招きかねない。

空洞化が起きれば歯科診療への公的支出は減るかもしれない。だが、これが国民的に望ましいかは英国の例を見るまでもなく、大いに疑問だ。

高い自費診療を受ける経済的な余裕のある人でも歯科診療への出費はさらに増えるうえ、自費診療が受けられない社会的弱者との格差問題は、さらなる国民的分断を促すことになる。

既に東京歯科保険医協会は、歯科医療費の総枠拡大、歯科診療報酬引き上げ、75歳以上の窓口負担引き上げ撤回に加え、本年3月には金銀パラジウム合金の原価割れへの公的資金投入などによる解消を決議している。金パラへの公的資金投入については内部でも様々な議論があったようだが、問題提起の意義は大きい。

本年5月、政府が緊急避難的に金パラ合金の価格アップを決めたのは、地道な改善を求めてきた貴協会を含め、関係者には歓迎すべきことだが、そもそも異常な金パラ価格上昇を患者サイドに負わせることや、価格改定制度の根本的な欠陥が、歯科医師などへの逆ザヤ(損失)負担を強いていることについて、公的医療保険の本質やその維持の観点から適切か否かを国民的に議論する必要がある。

その際の論点の一つとして、政府は歯科医師が患者さんに対し、逆ザヤ分だけ不当に安い公的保険サービスを提供させている形になっているため、英国同様に、行き過ぎれば公的保険空洞化の発生リスクが内包されていることを忘れないでほしい。

 

東洋経済新報社 編集局 報道部 記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202261日号10面掲載

理事会声明 オンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する

 マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの運用を開始した医科・歯科医療機関及び保険薬局数は2022年5月22日時点で44,284機関、参加率は19.3%となっている。そのうち、全国の歯科医療機関数は9,263機関、同13.1%、東京の歯科医療機関数は903機関、同8.4%にとどまっている。協会には実際に導入している歯科医療機関からオンライン資格確認システムの利用者は月1~2人の利用者しかいないという声も寄せられている。

 導入した医療機関には毎月のランニングコストの負担や受付の患者対応などの負担がかかる。そのため、診療報酬改定で、電子的保健医療情報活用加算が新設された。

 しかし、政府は患者負担が増えることが報道されると、同加算の廃止を早々と打ち出した。加算が廃止されればオンライン資格確認システムのランニングコストなどは完全に医療機関側が負担することとなる。また、診療報酬の諮問機関である中医協を飛び越えて、政府が方針を打ち出すのはいかがなものだろうか。

 また、患者負担があるため、オンライン資格確認システムの利用者が少ないという声もあるが、そもそもマイナンバーカードの全国普及率は5月1日時点で44.0%であり、東京では47.8%である。健康保険証利用登録が済んでいるのは全人口でわずか7%未満に過ぎない。いったい、マイナンバーカードを健康保険証として持ち歩く国民がどの程度いるだろうか。

 現行システムでは、資格確認以外の薬剤情報や特定健診記録などの医療情報へアクセスするためにはマイナポータルでの登録が必要である。マイナポータルの利用規約にはすべてのトラブルについて「自己責任」での解決をすることが定められており、全ての責任を利用者に押し付ける内容となっている。医療機関にあるオンライン資格確認システムのカードリーダーはその場で健康保険証とマイナンバーカードの紐づけができるため、医療機関で紐づけを行えば、医療機関側がマイナポータルの利用規約への同意を促してしまうことになる。また、一旦紐づけが完了してしまえば取り消すことはできないため、取り消しを希望する患者さんとの間で新たなトラブルともなりかねない。

 さらに、昨今の半導体不足の影響で、オンライン資格確認システムに使用する機器なども不足しており、導入まで半年以上待たされているという医療機関も存在する。半導体の世界的需要の高まりやウクライナ情勢の影響で、物資供給が不安定な中で優先的に導入を進めていくべきものなのかは甚だ疑問である。

 オンライン資格確認システムの最大のメリットは健康保険の資格確認がその場でできることとされてきたが、2021年10月より支払い側で資格喪失後のレセプトの振替などの作業を行っており、返戻は減りつつあるため歯科での導入のメリットは少ない。導入を義務化すれば、必要のない新たな負担を強いられるなどのデメリットが大きくなる。

 コロナ禍で経済的に打撃を受けている医療機関に対し、マイナンバーカードの普及率の低さを解消するため、オンライン資格確認システムの導入を“義務化”し、負担を強いることが今求められていることなのか。マイナンバーカードの普及については、政府が正しく運用するのであれば、新型コロナウイルスに係る給付金などに活用をすることができることなどから、推進をしていく必要性もあると思われるが、現状ではさまざまな点で不安が払しょくできない。そもそも医療をマイナンバーカード普及の出しに使うことについて、国民に理解を得られているとは到底考えられない。

以上よりオンライン資格確認システムの導入“義務化”に反対する。

2022年6月9日

東京歯科保険医協会 第5回理事会

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.4

「2類か」「5類か」ではなく、本質的な議論を

新型コロナウイルス感染症の感染症法上のカテゴリーを2類相当から5類相当へ変更すべきという議論があるが、そもそも、既に同感染症は2類相当という運用はなされていない。
本来2類であれば、感染症指定医療機関へ入院勧告するが、一般病院に入院させるし、ホテルや自宅療養すらしている。
現状の新型コロナ対応が2類相当の運用ではない以上、5類相当の運用にすべきというのは議論の本質ではなく、言葉だけが一人歩きしている状態であり、私が考える5つの論点を紹介したい。

① 隔離が必要か

今となっては、新型コロナで隔離する必要はない。実際、膨大な数の感染者がいることから、隔離は不可能な状態に陥っているが、家のなかで閉じこもっていなくても、外で唾液を飛び散らかせるような行為を行わなければ感染は広がらない。保健所の実施した多くの疫学調査の結果からも、会話時のマスクが徹底されている場合、感染の拡大は起きていないことが圧倒的である。

② 全数届出が必要か

 初期の頃は感染経路等の検証のためにも全数届出が必要であったが、新型コロナに関しては結核などと異なり感染拡大防止対策としての貢献度が低く、医療・公衆衛生の限られた人的・物的資源を有効に使うには、今となっては全数届出を止めるべきである。医療機関及び保健所における全数把握するための労力の多大さに比べ、得られる便益が低すぎる。また、全数届出であるが故に、万一クラスターが待合室や病棟等で起きれば、「バッシング」を受けることを恐れ、受け入れに消極的な医療機関すらあるはずである。一般的に、感染者数の多い感染症は全数届出でなく、定点医療機関からの届出により、地域別の流行状況の把握や変異等に関するモニタリングを行ない、情報提供している。この情報提供により、流行時にはワクチンの追加接種や会話時のマスク着用などの行動を地域住民に促すことが効果的であろう。

③ 保健所による直接の健康管理が妥当か

まず、最も厳しいエボラ出血熱等の1類感染症であっても、一義的に、感染症指定医療機関という医療機関の管理下において治療がなされる。そもそも、画像検査や血液検査、投薬が出来ない保健所が管理するより、医療機関が直接管理するほうが病状にあった迅速な処置や投薬が可能だ。特に、「自宅療養」という名目の「自宅放置」のもと、実際に死者が出たことは最悪の悲劇であり、保健所の健康管理下におかない方が良い。患者の希望により早期に適切な診断・治療が可能な、わが国の抜群のアクセスの通常の医療システムに戻さなければならない。わが国が優れているのは、CTも含む画像診断装置の普及をはじめとする地域医療の質の高さと、機能に応じた医療機関同士の役割分担と連携にあるからである。

④ ワクチン接種をどう考えるか

ワクチンには感染予防と重症化予防という、大きく分けて2つの効果がある。感染予防に期待が集まっているが、今回のコロナワクチンは重症化予防を目的に実施すべきものと私は考えている。新型コロナは封じ込めが不可能な病原体なので、「社会防衛」的に全員が接種することによる封じ込め効果は期待できない。そのためにも、個人の「接種しない」という判断は、得られる利益と副反応のバランスを勘案して許容されるべきで、接種しない者に対する差別は決してあってはならない。なお、高齢者をはじめ重症化リスクが高い人は重症化を防ぎ自らの命を守るためにワクチンを「個人防衛」として接種すべきで、当面の間、追加接種を継続的に実施していくべきであろう。

⑤ 医療費の公費負担をどう考えるか

5類相当になると通常の保険診療で3割自己負担となるから反対という考えもあるようだが、これは本質的な問題ではない。難病の医療費助成制度と同様に、例えば、まだ十分には解明されていない「後遺症」のデータを収集し治療研究を推進するという理屈であれば、当面の間、引き続き公費で助成していくこともありえるからである。
次回は、わが国における今後のあるべき戦略・戦術について、解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

東京歯科保険医協会 第50回定期総会 開催のご案内

東京歯科保険医協会第50回定期総会を下記の通り開催致します。

日時

2022年6月19()午後2時30分~6時00

定期総会 午後2時30分~4時15

記念講演 午後4時30分~6時00

「臨床の視点で金パラの代替について考える」

講師 坪田有史(東京歯科保険医協会会長)

 【抄録】

金銀パラジウム合金(以下、「金パラ」)の価格は、コロナショックによる素材価格の上昇、そして2022年に入ってウクライナショックにより、さらに上昇した。

2022年度診療報酬改定で歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更され、さらに急遽5月に改定が行われたが、素材価格が様々な因子によって上下動するため、根本的な解決とはならない。これらの問題から厚生労働省は、金パラの代替材料の保険適用を積極的に進めてきた。

 2014年度診療報酬改定では、小臼歯限定でCAD/CAM冠が保険収載され、その6年後の2020年には条件付きで上下顎第一大臼歯、そして前歯部までCAD/CAM冠に適用拡大され、またチタン冠が保険収載された。そして今回の2022年度改定では、CAD/CAMインレーが保険収載された。これらの「脱金パラ」の流れは、今後もさらに進むであろう。

今回、臨床例を交えて金パラの代替について考察する。

会場

中野サンプラザ 13階コスモルーム (住所:東京都中野区中野4-1-1

交通 中野駅北口より徒歩5分

 

総会議事

第1号議案  2021年度活動報告の承認を求める件

第2号議案 2021年度決算報告の承認を求める件付・会計監査報告

第3号議案 役員の件(顧問の承認)  

第4号議案 2022年度活動計画案の件

第5号議案 2022年度予算案の件

第6号議案 選挙管理委員承認の件

第7号議案 決議採択の件    

 

新型コロナウイルス感染症の感染防止に関わるお知らせ

以下に該当する方のご参加はご遠慮ください。

37.5℃以上の発熱がある方。

・体調のすぐれない方(味覚、嗅覚などの異常を含む)。

・新型コロナウイルス感染症「陽性」と診断されている方、または同感染症「陽性者」と診断された方と濃厚接触された方。

※昨年同様、感染症防止対策を十分に行います。

※ご出席の際は、マスク着用などご自身および周囲への配慮をお願い致します。

※定期総会後の懇親会は、新型コロナウイルス感染症の影響により昨年同様に開催を中止とさせていただきます。

※今後の感染拡大状況によって、定期総会の開催・運営に関して大きな変化が生じる場合は、当会ホームページもしくはデンタルブック等でお知らせ致します。

【この夏ご利用ください】夏季休診案内のご案内(2024年版)

 

▲卓上型 夏季休診案内

診療所などで使える夏季休診案内をご用意しました。壁に貼って使えるポスタータイプと受付に置いて卓上タイプがございます。

以下のPDFをダウンロード、プリントアウトの上、診療所の夏季休診にあわせてご利用ください。

また、郵送をご希望の方(会員限定)は、フォームからお申し込みください。

 

 夏季休診案内ポスター① →ダウンロードはここをクリック

 

夏季休診案内ポスター② →ダウンロードはここをクリック

 

夏季休診案内(卓上型) →ダウンロードはここをクリック

【ご協力のお願い】「訪問歯科診療」の安定供給に関するアンケート調査について

この度、中久木康一氏(東京医科歯科大学 救急災害医学分野 非常勤講師)より、「訪問歯科診療」の安定供給に関するアンケート調査への協力依頼が届きました。

同氏は、2019年2月に開催した第1回地域医療研究会で「歯科診療所で備えるべき災害対策」と題する講演を頂き、2019年9月から2020年3月の7カ月にわたり、東京歯科保険医新聞の「歯科診療所と開業医に伝えたい災害コラム」と題し、連載して頂きました。

このアンケートは、今後も需要が増して行くと考えられる訪問歯科診療を含む歯科保健医療を人口過疎地においても継続して供給していく方策を検討することを目的とし、集計・分析結果は、政策提言等に活用されるものです。

訪問歯科診療への考え方に対する質問項目もありますので、所在の地域に関わらず、是非Webアンケートへのご協力をお願い申し上げます。

【ご略歴】
中久木 康一 氏
・東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 救急災害医学分野 非常勤講師(客員教授)
・千葉大学大学院 医学研究院 法医学 特任研究員(非常勤)
・日本災害歯科公衆衛生研究会世話人、災害歯科保健医療連絡協議会ワーキンググループ委員など。
・著書
「災害歯科保健標準テキスト」(一世出版)
「災害歯科医学」(医歯薬出版)
「繋-災害歯科保健医療対応への執念-」(クインテッセンス出版)
「災害時の歯科保健医療対策 連携と標準化に向けて」(一世出版)など多数。

【アンケートの詳細】

ご回答に際して、「Web調査質問一覧PDF」を下記URLよりダウンロードして頂き、全体像を把握し、回答フォームにアクセス頂いた方がご負担が少ないかと存じます。

↓↓↓参考資料(Web調査質問一覧PDF)はこちらから↓↓↓

http://jsdphd.umin.jp/research.xhtm

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆回答はこちらから◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)5月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)5月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)5月1日 第626号

1面】

     1.在宅歯科医療の改定内容に限定/第3回新点数説明会を開催)

     2.保険請求時の留意点を指摘/第4回新点数説明会

     3.第50回定期総会案内

     4.講演の模様はオンデマンド配信中

     5.ニュースビュー

     6.「探針」

2面】

    7.レセプト記載要領の主な変更点

    8.22年度改定疑義解釈/咬合調整は改定前の状況に関わらず4月から算定可

    9.東京都知事および都議会各会派へ撤回を求める

    10.高点数による個別指導実施せず2022年度指導計画

3面】

    11.会員が見た診療報酬「私から見た歯科訪問診療の実際と診療報酬改定」(葛飾区・池川裕子)

    12.会員が見た診療報酬「DXの視点から見た診療報酬改定―メリットがあるのは誰?」(町田市・杉島康義)

    13.会員寄稿“声”「米国の人手不足 トヨタの賃上げ そして歯科は?」(練馬区・船木勝介)

    14.2022年診療報酬改定書籍「歯科保険診療の研究」お届けします

【4面】

    15.経営・税務相談Q&A No.392 これってパワハラ?「パワーハラスメント防止措置」の義務化

    16.IT相談室/インターネット取引(歯科材料、感染防止品)の注意点/(クレセル株式会社)

    17.法律相談、経営&税務相談

【5面】

    18.「点数変わらない」6割強/新点数説明会アンケート

    19.5月金パラが引き上げに ―銀合金、メタルコアおよび14Kも改定―

    20.Facebookご案内

【6面】

    21.インタビュー「ホワッと観て ホクっと… そんな映画でありたい」映画監督・平山秀幸さん

【7面】

    22.研究会・行事のご案内

    23.会員優待サービスご案内

    24.デンタルブックご案内

【8面】

    25.Special Serial No.3 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏(社会保険診療報酬支払基金理事)

    26.教えて!会長!!Vol.58

    27.東京歯科保険医協会公式サイト

【9面】

    28.症例研究/2022年診療報酬改定 CAD/CAMインレーの新設

【10面】

    29.連載/私の目に映る歯科医療界⑭(東洋経済新報社・大西富士男)訪問診療や女性医師増が歯科業界に構造転換迫る

    30.理事会だより

    31.協会活動日誌2022年4月

11面】

    32.4・21国会要請行動/渡辺・伊藤両衆議院と懇談実現―金パラ原価割れ解消も強く訴える

    33.電子書籍「デンタルブック」ご案内

    34.「保団情報サービス」ご案内

    35.共済制度ご案内

12面】

    36.現場の声で 5月に緊急改定/7月随時改定を待たずに引き上げを

    37.神田川界隈/今年度改定のご評価は?(本橋昌宏理事/荒川区)

    38.通信員便り No.121

    39.日本歯科評論 別冊「保険診療と歯冠修復」/2022年診療報酬改定関連書籍

私の目に映る歯科医療界⑭ 訪問診療や女性医師増が歯科業界に構造転換迫る/今後の歯科業界が市場として生きる視点で考える

訪問診療や女性医師増が歯科業界に構造転換迫る/今後の歯科業界が市場として生きる視点で考える

今回は、歯科医療界全体を「歯科業界」という括りで捉え、産業的にどう見えるかを考え、論じていきたい。

歯科業界を産業的に見た場合、最大の特徴は、歯科サービスの価格が診療報酬という公定価格で決められている点にあるといえよう。

良いサービスを提供し、価格引き上げと利益増加を狙えないことは悩ましい点だ。それでも、十分な公定価格が付けばこの欠点も埋められるだろうが、現実はほど遠い。欧米先進国に比べ、日本の歯科医療サービスの価格は低水準だ。公定価格を決める診療報酬は、今次改定ではプラス0.29%というわずかな上げ幅にとどまった。人件費やパラジウム価格の高騰などのコスト上昇もあって、歯科診療所の収益と経営は非常に厳しい。

Ⅰ.歯科診療報酬は抑制続き薬価差も享受できず前途多難

今後、診療報酬の大幅なアップを期待したいが、実現的には前途多難だろう。日本は少子高齢化という長期の構造問題を抱えており、医療費増加は今後も加速する。政府は、医療費の増加抑制に血眼だ。その結果が先の診療報酬アップ縮小だ。声高に診療報酬のマイナス改定を叫ぶ財務省の圧力を、いつまでかわせるかは予断を許さない。

医科や調剤薬局は、診療や治療、調剤に使う処方薬などの購入価格を医薬品卸会社との交渉で引き下げ、公的価格(償還価格)との鞘を抜く薬価差という利益をひねり出せる。しかし歯科の場合は、コスト全体に占める医薬品購入額の比率は小さく、医科や調剤薬局のような薬価差も享受できない。

保険点数が頭打ち、薬価差メリットも得られないとなれば、保険診療の外、自費診療に活路を見出す選択肢はある。実際、この動きも続いているが、業界が雪崩を打ってこの市場に向かえば、大げさな言い方になるが、質の良い歯科サービスを手の届く料金であまねく国民に提供する公的医療保険制度の理念に背くことになる。

Ⅱ.中長期で歯科医師需給緩和歯科訪問診療などが構造変革促す

前号(第625号本紙)でも触れたが、歯科医師の需給を巡る見方は、一時あった供給過剰論一色は薄れて、2040年までには供給不足になる(歯科医師が足りなくなる)というデータも提出されている。そこまで行かなくとも、専門家の間では、現在の歯科医師過剰の状態から需給ギャップは縮小に向かうという見方が強まっている。

歯科医師年齢層の最大の山は60歳代にあり、70歳以上の歯科医師も増えている。この年齢層の歯科医師の多くは歯科医師一人で切り盛りする歯科診療所を経営しているが、あと10年もすると高齢等が原因で引退する。10年以上続く事実上の参入規制(歯科医師国家試験合格者を2000人前後に抑える施策)により、新規参入も抑えられてきた。人口減少に伴う需要減があるとしても、供給減も大きくなるため、歯科医師の需給ギャップは縮小するというわけだ。この見通しの通りになれば、現在起きている歯科診療所過多による顧客(患者)の獲得競争が緩和されることにつながる可能性が高い。暗い将来性ばかりが一人歩きする歯科業界にあって、この点は、特にこれから歯科医師になる若い世代には朗報になるのかもしれない。

歯科業界にとっては、長期の日本の人口減少がマイナス要因となる一方で、高齢化は歯科サービスへの潜在ニーズが高い高齢者が増える点ではプラスだ。 

歯科業界全体、歯科診療所経営の観点からも、この膨大で成長する潜在市場をどう取り込むのかは重要課題だ。

70歳代も半ばになると、歯科外来受診が顕著に減る。この人たちの需要がなくなるわけではない。介護施設や自宅で生活する要介護世代になり、在宅での歯科訪問診療を受けたいが、そのニーズを満たしてもらえないのが実態だ。厚労省の資料では、要介護者の9割が歯科治療などを必要とするのに、実際に治療を受けたのは27%だという。要介護者は現在680万人だから、単純計算で446万人の潜在需要が放置されたままだ。

この在宅への歯科訪問診療を担う在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の数は、2020年度に8367施設と、前年度の11361施設から初めて減少に転じた。

歯科訪問診療の市場規模は、潜在ニーズの大きさの割には緩やかだ。問題は供給面にあり、歯科医師が歯科訪問診療に二の足を踏んでいるのが実態だ。厚労省の2018年度調査では、歯科訪問診療を実施しない理由のトップに、人手不足などが挙がる。

ここには、歯科業界が抱える問題が潜んでいるように見える。歯科医師が1人という個人経営の診療所が大半を占める業界の構造問題だ。こうした診療所では、拡大する歯科訪問診療ニーズを取り込もうとしても、現在の医業収益の柱である外来を犠牲にすることはできず、それがジレンマとなっている現実がある。

Ⅲ.女性歯科医師の増加も今後の構造転換への引き金に

女性の歯科医師の増加も、歯科業界に構造変化を促すかもしれない。

歯科医師国試合格者では、すでに女性比率が45%を突破した(下表)。一定期間は出産・子育てに時間を取られる女性歯科医師のライフスタイルを考慮すれば、週5日、1日8時間のフルタイム勤務ではなく、週2日や1日のうちで都合の良い時間帯のシフト勤務などのニーズが高まる。

現在の歯科業界構造は、一人の歯科医師だけに頼る個人歯科診療所が主体となっているため、女性歯科医師の積極的な市場参加には対応できないかもしれない。

同じサービス業の性格を持ち、個人経営が多い点でも歯科業界に類似性を持つ弁護士事務所や保険代理店でも、一人経営から合併・集約・大規模化の動きが出ている。

◆法曹界等での合併・集約・大規模化に注意

たとえ業種が違い、その原因は異なるにしても、市場飽和が進み、それに伴い市場競争が激化し経営合理化が背中を押している点では、歯科業界とも共通点を持っている。

歯科業界にも同じ波が押し寄せてきているのかもしれない。将来をにらみ、今から構造転換への議論を進めておくべきだろう。

 

東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202251日号10面掲載

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.3

PCR検査の意義や限界、目的が理解できていない

封じ込めは不可能であり、検査目的を再検討すべき

新型コロナの特性の把握や対応法も確立していなかった段階では、感染拡大防止のために「封じ込め」の可能性を意識して、無症状者も含めて検査を実施し、陽性者の把握、濃厚接触者の特定・行動制限などを実施することにはそれなりの合理性があった。

しかしながら、この2年にわたる知見の集積の中で、新型コロナに関しては、①人から猫などの動物にも感染し、再び動物から人に感染するという、変異を繰り返しながらの永遠のサイクルになること、②無症状や軽症のことが多いため、感染拡大しやすいこと、③ワクチンの効果が6カ月程度で減弱することなどから、反復してのワクチン接種や早期発見・隔離などを徹底しても「封じ込め」は不可能であること―が明らかとなり、検査の目的を再検討すべき時期に至っている。

PCR検査を絶対視する不可思議

病院における新型コロナ検査では、LAMP法やPCR法を同時に実施することも多い。すると、LAMP陽性、PCR陰性など、異なる結果が出ることがある。検体が正確に採取できていたかどうかによっても、結果が左右されるからである。例えば、インフルエンザ検査キットは、特異度は高く、結果が陽性であればほぼ感染していると言える反面、陰性であっても感染していないとは言い切れない。感染している人を正しく陽性と判定する割合を「感度」というが、インフルエンザ検査の感度は60%程度と言われ、新型コロナの検査も同程度と言われている。すなわち、見落とし(偽陰性)は多く、少数とはいえ〝濡れ衣(偽陽性)〟の可能性もある。その意味で、一つの検査を絶対視するのは不可解としか言いようがない。

さらに、検査の陽性はあくまでも、感染したという「結果」を確認しているにしか過ぎない。本来、感染しないための予防という「行動」こそが「感染拡大防止」につながるわけで、無症状者が検査陰性といって安心し、感染リスクの高い行為を重ねることこそ、感染拡大につながっているともいえる。すなわち、「陰性証明」の検査こそ、感染拡大につながっている可能性すら、ありうるわけである。

それでは、なぜ、今なお日本も含め、世界においても感染拡大防止につながると思い込み、無症状者も含めPCR検査や抗原検査が行われるのか。私は、日本だけなく世界でも、検査の意義や限界、目的が理解できていない人たちが発言し、それがそのまま鵜呑みにされている社会構造にあるのではないかと感じている。

今となっては診療の一環、治療目的と考えるべき

検査は本来、疾病の治療を目的に行うべきである。また、歯科医療も含め、通常の医療においては疾病診断にあたり、必ず複数の検査を実施し、総合的な判断のもと、治療を実施していく。

新型コロナが疑われる場合、まずウイルスのタンパク質をみる抗原検査、遺伝子をみるLAMP法やPCR法などの手法の異なる複数の検査を駆使し、ウイルスの活性状況を判定する。そして、会話時のマスク着用など、他者への感染の配慮の上で通常のように医療機関に通院してもらいながら、患者を的確に医療機関の管理下に置き、鎮痛解熱剤といった症状を和らげる薬なども処方し、症状が深刻であれば、血液検査やCTなどの画像検査を実施する。

一刻も早く通常の医療システムに戻すことが必要

このように様々な検査を駆使しながら、患者の重症化リスクを検討する一方、中和抗体療法や抗ウイルス薬投与などを考慮する。そして、重症化が想定される場合や酸素投与が必要な場合などは入院させ、免疫暴走により急激な悪化が起こった場合は、ステロイド剤を投与するといった治療を行うのである。

新型コロナの予防・診断・治療法が確立した今、一刻も早く、アクセスの良い通常の医療システムに戻すべきである。

次回は、新型コロナウイルス感染症のカテゴリー議論について、解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

インタビュー 平山秀幸 氏(映画「ツユクサ」監督)

2022.05.01 (6)平山秀幸氏(映画「ツユクサ」監督

©2022「ツユクサ」製作委員会 配給:東京テアトル 

4月29日(金・祝)全国公開

<キャスト>

小林聡美

平岩紙 斎藤汰鷹 江口のりこ

桃月庵白酒 水間ロン 鈴木聖奈 瀧川鯉昇

渋川清彦 / 泉谷しげる / ベンガル

松重豊

 

<スタッフ>

監督:平山秀幸  脚本:安部照雄  

音楽:安川午朗  主題歌:中山千夏「あなたの心に」(ビクターエンタテインメント)

過去のインタビューはこちら

#ツユクサ #映画 #歯科治療 #東京テアトル

【署名にご協力ください】「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名

 

協会では、全国保険医団体連合会の会員(合計約10万名)の医師・歯科医師とともに、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名を2022年3月から行っており、すでに多くの先生方からご協力をいただき、1200筆を超える署名が協会に届いた。なお、集まった署名は4月21日に国会議員に提出している。

協会も坪田有史会長を筆頭に、協会全体で署名に取り組んでいる。一人ひとりの声が集まることにより、大きな声・大きな力となるため、より多くの歯科医師、医療従事者、患者の皆さまにご協力いただきたい。

◆署名用紙のご注文は下記の「お問い合わせ」より、以下①~④の項目を入力のうえ、送信ください。

①氏名、②送付先住所、③連絡先、④署名用紙の必要部数

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)4月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)4月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)4月1日 第625号

1面】

    1.新点数説明会開催(3月24日)

    2.過去最大 22年度予算成立/国家予算

    3.設立50年に向け前進を続ける(組織部長・福島崇)

    4.第50回定期総会案内

    5.在宅医療およびレセプト記載要領等の留意点を4月に

    6.ニュースビュー

    7.「探針」

2面】

    6.談話 都内全域への「子ども医療費助成制度」の拡充を求める(地域医療部長・横山靖弘)

    7.理事会声明 プラス改定を感じられない

    9.22年度診療報酬改定の主なポイント

3面】

   10.会員が見た診療報酬「関心を集めるCAD/CAMインレー導入に際して」(足立区・川本弘)

    11.会員が見た診療報酬「算定ハードル 導入コスト…小規模改定も中止が必要」(板橋区・小林顕)

    12.2022年3月31日限りで廃止となる主な経過措置医薬品一覧

    13.会員寄稿“声”「歯科医療に影を落とすウクライナ侵攻 金パラ使用の再考」(杉島康義・町田市)

    14.歯科診療報酬2022年改定特設ページ

【4面】

    15.オンライン資格確認の現状と注意すべき点

    16.法律相談、経営&税務相談

【5面】

    17.研究会・行事案内

    18.会員優待サービス

【6面】

    19.インタビュー「予防歯科の観点から目指す地域貢献」前厚生労働省医政局歯科保健課長・田口円裕さん

【7面】

    20.新型コロナウイルス濃厚接触 対応フローチャート

    21.新型コロナウイルス関連で申請できる助成金・支援金

【8面】

    22.Special Serial No.2 「新型コロナウイルス感染症は転換期を迎えている」山本光昭氏

    23.教えて!会長!!Vol.57

【9面】

    24.症例研究/2022年度診療報酬改定 一本化されたSPT

【10面】

    25.連載/私の目に映る歯科医療界⑬(東洋経済新報社・大西富士男)厳しい診療報酬改定に パラジウム等高騰と多難

    26.理事会だより

    27.協会活動日誌2022年3月

11面】

    28.窓口負担2割化中止求め 国会内集会に100人

    29.今年10月実施「75歳以上の窓口負担2割化」を中止させよう!

    30.春の募集キャンペーン中!この機会に、ぜひご加入ください!(共済部長・川戸二三江)

    31.診療所ホームページで患者が最も見ているのは?/クレセル株式会社

    32.「2022年改定の要点と解説」正誤表(2022年3月25日)

12面】

    33.第6回メディア懇談会/診療報酬改定 質問多数

    31.神田川界隈/2022年度診療報酬改定に思うこと(阿部菜穂 理事/江東区)

    32.通信員便り No.120

    33.第115回歯科医師国家試験 合格者は1969名

    34.罪なき人々を巻き込む戦禍 一刻も早い終息を願う

    35.理事会声明 ロシアのウクライナ侵略を断固非難する

私の目に映る歯科医療界⑬ 厳しい診療報酬改定にパラジウム等高騰と多難/歯科医療界の将来像を巡り現場から議論を

厳しい診療報酬改定にパラジウム等高騰と多難/歯科医療界の将来像を巡り現場から議論を

オミクロン株による感染爆発は、やっと沈静化の兆しが見え始めたが、新たな変異株の出現の可能性はまだ残っている。そこに、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発した。歯科医療界にとっては、まさに弱り目に祟り目だ。

◆ロシア発パラジウム再高騰の「悪夢」復活

ロシアのウクライナ侵攻による戦争勃発で、世界生産量の4割を占めるロシア発の供給不安から、いわゆる「銀歯」に使われるパラジウム価格は、3月中旬で7カ月半ぶりの最高値を更新、昨年前半に異常高騰のしわ寄せを「逆ザヤ」として受けた悪夢が歯科医療界で復活しそうだ。

歯科用貴金属の随時改定方法は4月から変わる。ただ、この改定によって以前よりは解消されるとはいえ「逆ザヤ」の抜本的な解消には程遠く、特に、急騰時には歯科診療所が高騰分を赤字としてかぶる構図は続く。抜本的な是正策をつかみ取れなかったことに、歯科医療界が早くも臍を噛むことになりそうだ(本紙第623号参照)。

◆歯科診療報酬改定で気になる高額な設備導入が前提の新点数設計

歯科の2022年度診療報酬改定内容も明らかになった。改定のポイント解説は本紙第624号(31日号)に譲るとして、新設された診療報酬項目の算定で、特定機器の導入が前提になっているケースが散見されることが気になる。

一端を挙げれば、口腔バイオフィルム感染症検査で口腔細菌定量分析装置が必要であったり、複雑な解剖学的根管形態を持つ歯の効率的・効果的な根管治療の評価では、ニッケルチタンロータリファイルを装着した能動型機器の使用が算定の前提になっているといった具合だ。

これは問題だ。高い機器を購入して、新点数を獲得しても、果たして採算が取れるのかどうか。これには、歯科診療所を経営する歯科医師各人の経営判断がのしかかってくる。

要求される機器が安くないことを考えれば、大多数を占める歯科医師1人で切り盛りする個人の小規模歯科診療所では、設備導入に二の足を踏むケースが出て来そうだ。資金的余裕もあり、顧客を多く集められ、設備を導入しても収益面でペイする目途が立てやすい法人経営など、比較的大規模な歯科診療所には、逆に有利に働く可能性があるのではないか。

もちろん、有益な新技術に公的保険がつくのは患者にとっては嬉しいことだ。

ただ、厚生労働省が歯科診療所間に優勝劣敗効果を及ぼすことを理解した上で政策誘導しているとしても、歯科診療所の多くが設備導入を渋れば、肝心の新技術普及の狙いは不発に終わり、患者、国民にもそのメリットが享受できない結果になりかねない。

政策当局が歯科医療の現場の実情に照らして、算定点数(収入)と設備導入費用のバランスをどこまで考慮したのか。その点は非常に気になるし、政策効果の事後検証は、税金・健康保険料・窓口負担などを負う国民の目線からも、絶対に必要だ。

◆歯科医療界の中長期像を設定し関連検討会での活発な議論が必要

2022年度は、歯科医療界にとって(日本全体にとってもだが)大きな変曲点だ。団塊の世代が後期高齢者の仲間入りを始めるからだ。団塊の世代の後期高齢者入りは2025年度に完了するが、そうなると歯科市場には縮小圧力が加速し始めるおそれがある。この点は、医科や医薬品の市場が高齢者の増加とともにニーズ拡大を迎えるのと正反対の面がある。

少なくとも現状では、70歳以上になると歯科治療に通うニーズが落ちる傾向は鮮明だ。居宅や高齢者施設で潜在化している歯科訪問診療ニーズの掘り起こしをした上で、なおかつ歯科市場の中長期での縮小に、歯科医療界の関係者がすべからく備える必要があることは、言うまでもない。

その際、歯科医師の需給予測を抜きにして語ることはできないだろう。従来から、人口10万人に対し歯科医師50人を適正とみなし、現状の歯科医師80人は、明らかに過剰との見方が強かった。歯科医師の新規参入抑制、具体的には歯科医師国家試験合格者数の削減が叫ばれ、実際にその方向に向かった経緯があり、本年316日に発表された第115回歯科医師国家試験合格者数を見ると、合格者数は1969名となり、昨年まで4年続いた合格者数2000名超えを下回った。

しかし、中長期的に見れば、違った予測と流れも出ている。2016年に開催された厚労省の「歯科医師の資質向上等に関する検討会」の資料によると、日本の高齢化と人口減少によって縮む歯科市場(患者数)に基づく必要な歯科医師数(需要)と、高齢化する歯科医師のリタイア数や、新規参入する歯科医師(国家試験合格者)の見込み数などから算出した歯科医師数(供給)を重ね合わせると2041年には5000人超の歯科医師不足が訪れるという試算も出ていた(右下グラフ参照)。

昨春以降、厚労省で「歯科医療提供体制等に関する検討会」の議論が進む。6回の会合を終え、今年から「歯科医師、歯科衛生士の需給に関する議論」に入り、2022年度末に報告書を取りまとめる予定だ。

健康に直結する歯科医療サービスを受ける国民の立場からも、中長期的な視点を入れ、将来のあるべき歯科医師像や歯科医療界の姿づくりにつながる本質的な議論が、まさに歯科医療の現場から巻き起こることを、ぜひ期待したい。それがなければ、いかなる提言も空虚に終わることだけは確実なはずだ。

東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」20224110面掲載

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.2

飛沫感染防止のため 会話時のマスク着用の徹底を

保健所の疫学調査で得られた感染経路の知見

新型コロナの発生当初は、感染経路が必ずしも明らかとは言えず、飛沫感染や接触感染、さらには空気感染の可能性も言われた。そのため、感染予防対策として「ソーシャル・ディスタンス」や「三密対応」などが打ち出されたわけである。
しかしながら、保健所における膨大な疫学調査の印象では、圧倒的に多い感染経路は、マスクなしの会話など「唾」の飛沫が飛び交い、吸い込む場面であり、接触感染もありうるかもしれないが、空気感染の可能性はほぼ考えにくいということであった。
ところで、1990年代の前半、HIV感染症は当時確実に死に至るという恐怖の感染症であり、血液媒介のため、外科的処置を伴う歯科医療においては大きな課題となった。
それを乗り越えてきた歯科医療は、感染経路やメカニズムの理解とともに効果的な感染予防対策が徹底されていることから、医科や福祉・介護分野などとは異なり、新型コロナに関しクラスターが発生していない。

効果的な感染予防対策は

日本だけでなく、世界においても、最初の発生国における街中をマスク姿で歩く映像に感化され、追随してしまった。発生初期は、感染経路も明瞭でなかったので、仕方ない側面はあったとしても、現在に至っては、検査検体として使われる「唾」が感染原因であることから、街中を一人黙々と歩いていたり、公園で一人座っていたりして、感染することはありえず、マスクは不要といえよう。

 総花的な感染予防の限界

当初、唾液での検査は信頼性に乏しい、すなわち十分なウイルス量が採取できないとされ、鼻咽頭ぬぐい液にこだわっていたが、2020年6月には同等性ありとした。本来なら、この時点で「唾」が感染経路になることを強調すべきで、会話時におけるマスク着用の徹底に啓発をシフトすべきであった。「三つの密(密閉、密集、密接)」の回避や「人と人との距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」などと十中八九感染予防対策をしているにもかかわらず、感染が拡大する一番の原因は、勤務時間外や休憩時間などの時間にマスクをせず気楽な会話を楽しむなどといった、自粛疲れや自粛慣れから、リスクの最も高い行為をしているためではないか。
現在の感染予防に関する啓発の最大の問題は、感染経路として高リスクと低リスクのものを総花的に同列扱いにしていることである。圧倒的なのは検査検体にも使う「唾」が飛び交い、吸い込むことであり、飲食店でアルコール消毒に検温して、人間心理として、十中八九対策をしているからと、マスクなしで会話を楽しむといった最も感染リスクの高い行為だけをして、感染という話となる。逆に、同一職場で感染者が勤務していても、執務中は会話時のマスクが徹底されるため、感染していないことが多い。
平熱であっても、検査陰性でも、ワクチン接種済みでも感染していることはあり、病原体を含む唾液を飛散させて他者にうつすことが多々あることから、「唾」のコントロールを意識してもらうほうが、はるかに重要である。

 効果的な対策で経済損失を抑える

ところで、「人の流れ(人流)」が「感染拡大」の要因と、一見、科学っぽい「数値解析」のミスリードにより、「唾」の飛沫感染を防ぐという「基本」が忘れ去られ、「風が吹けば桶屋が儲かる」的論理構成で、「飲酒感染」という感染経路が導き出された。本来、飲食店におけるマスク着用での会話の徹底、お店の定員削減や仕切り板の設置などの有効な予防策の推進ではなく、「営業時間短縮」という直接効果の乏しい方法に加えて、「禁酒」というとんでもない感染対策を実施し、休業補償の名のもとに莫大な税金が投入されている。
飲食店における感染予防には、例えば隣のグループの「唾」を吸い込むリスクを減らすためにお店の定員を半減させることなどの方が効果的と考えられ、その代わり、客の回転の倍増と営業時間延長を認め、経済的損失も抑えることが本来のあるべき対策であろう。
次回は、新型コロナウイルス感染症のPCR検査に対する誤解について解説する。

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

理事会声明「プラス改定を感じられない」

全体でみればプラスにならない

 今次改定では、かかりつけ歯科医機能、訪問診療及び医科歯科連携の拡充が行われ、わずかだが基礎的技術料が引き上げられた。しかし、歯科の改定率は+0.29%と近年まれにみる低い改定率となっており、初・再診料を引き上げるために日常診療の点数が犠牲になるなど、点数の付け替えが行われた。

 「一物二価」との批判のあった歯周病安定期治療の() ()が統合されたが、これまで歯周病安定期の治療に真摯に取り組んできた歯科医院の努力を置き去りにした改定の手法には納得がいかない。

 長期化する新型コロナウイルス感染症により、治療の中断あるいは受診を手控える状況が頻繁に起きている。その結果、徐々に患者が減少し、医院経営をあきらめざるを得ない会員も出ている。

 今次改定は、感染対策によりコストがかかる歯科医院経営からみて、不十分と言わざるを得ない改定である。

金銀パラジウム合金の原価割れが解消されていない

 金銀パラジウム合金(以下、金パラ)の原価割れの解消を求めて、協会は改善を求める署名を厚生労働省に提出した。今次改定では乖離幅に係らず3か月ごとに歯科用貴金属価格が改定されるほか、その元となる素材価格の参照時期のタイムラグが改定の3ヶ月前から2ヶ月前までに短縮される。タイムラグの短縮により市場価格との乖離は多少改善されるが、会員が求めていたのは原価割れが生じない仕組みである。

 今次改定で償還価格が1g当たり3,149円に引き上げられるが、ロシアによるウクライナ侵攻などによって特にパラジウムが高騰し、医療機関での金パラの購入額はこれを超えて赤字のままである。改定があっても赤字が解消されない異常事態だ。

 厚生労働省は、今次改定の附帯意見の中に、随時改定の見直し後の影響を検討することを盛り込まなかった。消極的である。まずは、7月の随時改定を待つことなく、早急な対応を図る必要がある。

 金パラの高騰で患者負担も増えるため、国が責任をもって金パラの配給を行うなどの対策を講ずるべきである。今次改定でレジン前装チタン冠が導入されたが、製作は鋳造に限られているため、鋳造欠陥が発生しやすい。粗悪な補綴物を提供できないため歯科技工士を悩ませている。また、チタンによるブリッジは保険適用外であり、レアメタルを含む金パラを使用することは、心も懐にも痛みを感じる。

 CAD/CAMインレーの導入も金パラの代替としての評価はするものの、金パラに比べ耐久性が劣る。再製作となればその分医療費が増えることや患者の信頼を損なうことに繋がる。

医科歯科連携や訪問診療の推進が小幅

 医科歯科連携では、総合医療管理加算の施設基準の廃止及び対象疾病にHIVを追加、ならびに医科が歯科に訪問診療を依頼する際の診療情報提供料()の加算の対象拡大などが行われた。しかしながら、総合医療管理加算の対象疾病の追加は1疾病のみ、さらに周術期等口腔機能管理料に関する推進策がないなど、改善は小幅である。

 訪問診療では、在宅療養支援歯科診療所2の施設基準の要件が引き下げられたが、訪問診療に取り組む医療機関を推進する策は示されていない。

総枠拡大をしなければ、歯科の展望は開けない

 今次改定で歯科改定率が0.29%と低値であったが、重要項目に十分な評価がされなかった。歯科が国民に果たす役割を発揮させるためには、相応の財源を確保した上で、評価の充実を行う必要がある。

 本声明は、歯科の低い改定率で不十分な評価がされていない問題を指摘し、根本的な問題である歯科医療費の総枠拡大を求めるものである。

 

2022年310

22回理事会

決議

 2022年度歯科診療報酬の歯科改定率は、僅か0.29%の引き上げに留まった。改定財源の確保のため、歯周基本治療処置、SPTⅡなどの点数の廃止ならびに点数の付け替えが行われた。今次改定では、院内感染防止対策をさらに推進するための初・再診料及び抜髄などの基礎的技術料の引き上げなど、個々では改善が図られているが、全体でみればとてもプラスを実感できる内容ではない。

 また、金銀パラジウム合金(金パラ)の原価割れの解消を目指し、歯科用貴金属価格の随時改定の仕組みが変更されるが、市場価格と保険償還価格の差額が発生するという根本的な問題は全く解消されていない。この不十分な対策をあざ笑うかのように、ロシアのウクライナ侵攻を起因としたパラジウムの著しい高騰を受け、既に多くの医療機関で原価割れに陥っている。適切な医療を提供するために公的資金を導入してでも価格の安定を図るべきである。

 一方、患者の受診状況は、コロナ禍も加わり、経済的な理由による治療の中断あるいは受診を手控える状況が多数起こっている。こうした状況の中、政府は今年10月から「75歳以上の医療費窓口負担2割化」を実施しようとしている。

 私たちは、診療報酬の引き上げとともに、患者負担増の中止及び患者窓口負担の軽減を求め、以下の事項を要望する。

一、歯科医療費の総枠拡大を行い、安心安全な医療を提供できるよう診療報酬を改善すること

① 歯科保険医の診療対価としての基礎的技術料を更に引き上げること

② 診療報酬の複雑すぎるルールを是正すること

 

一、金銀パラジウム合金の原価割れを公的資金導入により解消すること

 

一、「75歳以上の窓口負担2割化」の方針を撤回し、患者窓口負担を軽減すること

2022年3月 東京歯科保険医協会 新点数説明会

参加者一同

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)3月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)3月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)3月1日 第624号

1面】

    1.初・再診料3点引き上げ/中医協 診療報酬改定答申(2月9日)

    2.パブリックコメント688件/半数が歯科医師/厚労省

    3.高点数個別指導開催求める/厚生局

    4.ニュースビュー

    5.「探針」

2・3面】

    6.2022年改定特集/歯科診療報酬改定のポイント

    7.歯科診療報酬2022年改定特設ページ/バナー

    8.談話「大多数の保険医はがっかりしている」/松島良次

【4面】

    9.経営&税務相談Q&A No.391

    10.マイナポータル「利用規約」を読み解く~3つの点に着目~

    11.春の共済募集キャンペーン(休保制度・グループ生命保険・保険医年金)

【5面】

    12.研究会・行事案内(2022年度診療報酬改定新点数説明会)

    13.電子書籍デンタルブック

    14.ご紹介ください!/組織部ご案内

    15.会員優待ご案内

【6・7面】

    16.インタビュー「ダイヤモンド・プリンセス号から学ぶ教訓」前厚生労働省健康局長・正林督章さん

【8面】

    17.中央社会保険医療協議会 個別改定項目/2022年診療報酬改定

    18.教えて!会長!!Vol.56「CAD/CAMインレー」

【9面】

    19.症例研究/大臼歯のチタン冠

【10面】

    20.連載/私の目に映る歯科医療界⑫(東洋経済新報社・大西富士男)過去に類なき異例事態が医療界で勃発

    21.理事会だより

    22.協会活動日誌2022年2月

11面】

    23.第50回保団連大会/総勢343名集う 文書・口頭発言は151件

    24.ネガティブな口コミへの対応策No.3/クレセル株式会社

    25.東京反核医師の会 総会開催

    26.高齢者の窓口負担 2割化中止を求め国会内集会開催

    27.乳腺外科医の裁判/最高裁が有罪判決破棄

    28.75歳以上窓口負担2割化の中止を/署名にご協力を

    29.法律相談、経営&税務相談

12面】

    30.通信員便り No.119

    31.神田川界隈/DXは何だろう?(岡田尚彦/世田谷区)

    32.濃厚接触者に抗原検査キット無料配布

    33.確定申告・個別相談会を開催

    34.保険医年金予定利率変更に伴う年金受給のご注意/保険医休業保障共済保険制度 改善のお知らせ

2021年10月20日よりマイナンバーカードの保険証利用の本格運用が始まりました。

患者さんから「マイナンバーカードしか持ってきていないのだが、これだけで受診ができると聞いた」と言われ、対応をどうしたらいいかなどといった相談が寄せられています。オンライン資格確認システムを導入していない場合はマイナンバーカードの保険証利用はできません。

また、従来通り健康保険証のみでの保険診療は今後も可能です。オンライン資格確認システムの導入は義務ではありませんので、導入していない場合は「導入していないため使えません」と伝えていただいて問題ありません。

オンライン資格確認システムについては、初期費用の補助は出ますが、ランニングコストは歯科医療機関が負担することになります。ほかにマイナンバーカードの保険証への紐づけなどを患者さんに説明する手間や場所の確保なども発生する上に、メリットがあまりないため、協会では「導入はよく検討し、慎重にしてほしい」を呼びかけています。

以下は患者さんに向けた「これまで通り健康保険証を持参してください」という内容の院内掲示ポスターです。ぜひご活用ください。

 

 

 

私の目に映る歯科医療界⑫ 過去に類なき異例事態が医療界で勃発/次期2024年度診療報酬改定も新事態に備えを

過去に類なき異例事態が医療界で勃発/次期2024年度診療報酬改定も新事態に備えを

◆界初認知症薬が大混迷米国でも保険適用がピンチに

最近、気になるニュースが2つある。一つは、アルツハイマー病(AD)治療薬「アデュヘルム」を巡る動きだ。ADの根本原因に働きかけ、症状の進行を遅らせると謳う薬剤としては、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration/略称「FDA」)から世界初の承認をもらった。昨年6月のことだ。

アデュヘルムは、「ブロックバスター(大型薬)間違いなし」との華々しい船出であったが、その後の混迷ぶりがすさまじい。

まず、欧州や日本では承認が否決、保留された。さらに米国でも、AD患者の大半を占める高齢者向け連邦政府保険の当局が、今年1月に保険適用に厳しい条件を付ける案を出した。臨床試験(治験)参加の患者に限るというものだ。

4月に予定される最終決定もこの通りになれば、年間320万円の高額薬(これでも当価格から異例の半額値下げの結果だが)のため、まず売れないことになる。「事実上、この薬は死んだ」という声さえ市場では出ている。 

米国の連邦政府内で、薬の承認当局と保険償還を決める役所で判断が真逆の方向になる異例の事態が生じているわけだ。

この混乱の原因は、承認申請に使ったこの薬の臨床試験(治験)での有効性データが不確かだったことにあるのだが、その背後には、①膨大な患者とその家族の窮状を救うこと、②薬事承認・保険償還での科学的エビデンスの確保、③保険財政への巨大インパクトとの折り合いをどうするのか―など、極めて現代的かつ社会的課題が存在している。

◆保険適用除外も検討課題?製薬団体トップが異例の発言

「おやっ」と思ったのはもう一つ。今年1月の日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長の「公的保険給付範囲の見直しに関する国民的議論が必要」との発言だ。医薬品の保険償還対象を狭めることも検討に値する、というものだ。

1個社ではなく、製薬団体のトップが、自らの権益縮小につながりかねないことに踏み込むのは、これまでは一種の〝タブー〟だった。超異例発言である。

その背後には、少子高齢化が山場を迎え、構造的に膨らむ日本の医療保険財政問題がある。診療報酬改定で、医科・歯科・薬局に比べさらにきつい寒風にさらされるのが製薬業界の定位置だ。すでに、薬価改定の毎年実施も始まっており、最近は、後発薬や特許切れ先発薬(長期収載品)の引き下げはある程度甘受しても、利益柱の特許新薬の薬価だけは死守しようという姿勢が製薬業界トップには見え隠れしていた。

しかし、ここからさらに踏み込んで来たため、追い込まれている業界事情をさらに強く感じさせる出来事となった形だ。

中医協の2022年度診療報酬改定の答申の付帯意見にも「保険給付範囲の在り方等への議論」の検討が盛り込まれた。製薬団体のトップの発言も背景にして、次回の2024年度改定に向け本格論議に発展するとの声も出始めている。

◆財務省が垣間見せる診療報酬改定の基礎資料変更

この2つの例を持ち出したのはほかでもない、医療界、それも先進国に共通して現在進行している事情、すなわち、高齢化に伴う公的医療財政の膨張という難題を背景に、過去の延長戦にとどまらない事態が生じている、ということを知ってほしかったからだ。これは歯科医療界においても(医科も薬局もだが)他人事でない。

2022年度診療報酬(本体)は昨年末に決着した。その結果も厳しかったが、その結果以上に、さらに将来の厳しさを感じさせたのが、決定に至るまでの過程だ。

公的医療財政膨張阻止に向け、財務省は「本体報酬のマイナス改定」に猛攻勢をかけて来た。

個人的に気になったのは、「医療経済実態調査」(以下、「実調」)に財務省が矛先を向けて来たことだ。実調は2年に1回、厚生労働省がこの診療報酬改定に合わせて全国の病院と一般診療所、歯科診療所、保険調剤を行っている保険薬局についてサンプル調査を実施。その集計結果に基づいてまとめるもので、現時点では医療機関の経営状況を示す唯一の総合的なデータだ。

厚生労働省や医療機関は、診療報酬本体の引き上げ要求にあたり、この実調データを使っている。

今回、この実調について財務省は、①サンプル調査数の乏しさ、②サンプル先が入れ替わることによる経年的把握の困難さ、③サンプルのバイアス・統計的な有意性―など、様々な問題点を指摘し、診療報酬改定に向けた基礎資料としての適格性に疑問を提起している。データとして痛いところを突いているとともに、過去に類のない異例の事態だ。

財務省資料が挙げる一例では、実調の診療所のサンプル数は診療所全体の20分の1、有効回答率56.2%を掛け合わせると診療所全体の2.8%のデータしか捕捉していない。歯科診療所も同様に全数の1.1%の捕捉率だ(ともに平成29年調査)。医療機関全体の状況を正確に示しているとはいえず、実態と乖離がある、というのが財務省の主張だ。

代わりに財務省が推すのが「医療法人事業報告書等」というデータだ。医療法人全数を対象に、毎年届け出義務のあるデータを基にまとめた資料だ。これなら確かにサンプルバイアスはなし、経年比較もでき、診療報酬改定などの病院等経営への影響も、より正確に捕捉しうる。厚労省はこのデータの届け出や公開(閲覧)でのデジタル化を進めている。財務省はこのデジタル化を間に合わせた上で、医療法人事業報告書等を次期2024年度診療報酬改定の基礎資料にしようという狙いを垣間見せている。

歯科医療界はこれにどう対処するのか。どう診療報酬改定にこれが影響するかの見通しを持っているのか。今から考えておく必要があるのではないだろうか。

東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202231日号10面掲載

 

談話 都内全域への「子ども医療費助成制度」の拡充を求める

 この度、東京都が「子ども医療費助成制度」の対象を所得制限付きで中学3年生から高校3年生までに拡大すると発表した。協会はこれまで保険で安心してきちんとした診療を受けられるようにという目的と、急速に超高齢社会が進む日本において、将来を担う子ども達を健全に成長させることは社会が果たすべき責任であるという理由から10年以上にわたり東京都へ子ども医療費助成制度の拡大を要望し続けてきた。この度我々の想いがついに実った。

 全国保険医団体連合会が2020年に全国的に実施した「学校健診後治療調査」でも、健診後に「要受診」と判断された生徒の未受診率が全診療科で特に高校生において顕著に表れた。大半の市区町村が、15歳の年度末までを医療費助成の対象としており、対象外である高校生において、受診抑制が生じていることがこの結果からうかがえる。

 この対象年齢の拡大は、「高校生の未受診率」の減少や「高校生になると一部負担金が3割になることから、中学生のうちに治療を終わらせるように案内を出しているという」現場の意見の解消にも繋がり、大いに評価できるものである。

 そのような前進がある一方で、多摩地区の多くの市・町では、子どもの一部負担金が1回の外来受診について200円を負担しなければならない問題は、いまだに解決されていない。

 2017年に当協会が実施した「学校歯科治療調査」では、学校歯科健診で「要受診」と診断された後の歯科医院の受診率は、一部負担金の有無により、大きな差が表れている。また、一部負担金が課せられている地域の養護教諭からは、「要受診」と学校で診断されても、「一部負担金があることで受診勧奨をしにくい」等の声も多く挙がっていた。

 協会は、居住地によって子どもが必要な医療を受けられないような医療費助成制度ではなく、すべての子どもたちがいつでも安心して必要な医療を受けられるよう、今後も一部負担金の廃止を求めていく。

2022年3月10日

東京歯科保険医協会

地域医療部長 横山靖弘

【追加注文はこちら】75歳以上の窓口負担について/署名にご協力をお願いします

現在、協会が取り組んでいる「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名について、本日3月8日あたりから、署名・ポスターが会員の先生方のお手元に届きはじめました。署名の詳細は下記をご覧ください。

「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名

政府は昨年6月、年収200万円以上である75歳以上の患者の窓口負担を1割から2割に引き上げる法律を成立させました。これにより、今年10月から条件に該当する75歳以上の患者の負担額が2倍となり、受診抑制による疾病の重症化や医療機関の経営への影響が懸念されます。

そこで協会では、全国の保険医協会の医師・歯科医師とともに、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名に取り組むことにしました。ぜひご協力をお願いいたします。

協会は、今後も会員の先生方の経営・生活と権利を守り、国民の歯科医療と健康の充実向上のために尽力していきます。引き続き、ご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

署名のご注文は下記の「お問い合わせ」より、以下①~④の項目を入力のうえ、送信ください。

①氏名、②送付先住所、③連絡先、④署名の必要部数

お問い合わせ

新型コロナウイルス感染症は 転換期を迎えている Special Serial No.1

当たり前と思っていた「日常」を「昨日の世界」に変えてしまった新型コロナウイルス感染症(COVID―19)は、私たちの「明日」と「未来」をも奪うのであろうか・・・。岐路に立たされている「現在」において、このウイルスの特性や感染力、各種の検査、日本の感染状況、そして出口戦略などの様々な側面について、医師で保健所長として豊富な経験と知見を持ち、現在は社会保険診療報酬支払基金理事を務める山本光昭氏にご寄稿いただく。

日本国内の初感染事例は2020年1月

新型コロナの日本国内での初感染事例は2020年1月に確認された中国からの観光客を乗せたバスの運転手で、同年2月には国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるとして感染症法の指定感染症とされた。中国の武漢で発生した当時、感染者の約5%が亡くなると言われ、空気感染もあるのではと感染経路も必ずしも明らかではなく、致死率の高い恐怖の感染症と考えられたためである。

当時と現時点における「致死率」の比較

上記の表は、公表データより各時点における累計者数を確認し、ある期間の新規死亡者数を同期間の新規感染者数で割るということで、筆者が独自に算出してみた東京都における致死率の推移である。個々の症例の転帰から算出したものではないが、2020年4月に東京都で初めての緊急事態宣言が出された期間の致死率は約6・5%とほぼ武漢なみとなっているが、その後の緊急事態宣言以降は、新規感染者数に対する新規死亡者数の割合(致死率)は激減し、オミクロン株の流行が始まった2022年1月以降では、約0・06%である。
このように致死率が下がってきた要因は、検査体制の拡充により陽性者の把握がかなり実数に近づいてきたことと、ワクチンの開発とともに治療法が確立し重症化や死亡者を減らすことが可能となってきたためと考えられる。

恐れることなかれ ただし侮ることなかれ

この2年近くの保健所における疫学調査により、感染の主たる経路も、会話などで唾液が飛び散り、それを吸い込むことによる感染が圧倒的に多いことがわかり、接触に関しては感染経路でありうるが、空気感染に至ってはかなり可能性が低い。また、診療や研究開発の知見の膨大な蓄積により、ワクチンや抗ウイルス薬の開発、重症化へのリスク評価法やステロイド薬の投与など重症化予防や治療法も確立してきた。
すなわち、致死率が高く、予防法も治療法もよくわからないという発生当初の状況からは大きく変わってきている。新型コロナウイルス感染症は、もはや「恐怖の感染症」ではなく、社会経済活動を正常化しながら、「恐れることなかれ、ただし侮ることなかれ」という転換期を迎えているといえよう。
次回以降、日本をはじめ世界も含めて、新型コロナウイルス感染症の感染予防対策やPCR検査などに対する誤解、わが国における今後のあるべき戦略などについて、解説していく。

 

 

感染拡大抑制のための社会的介入 新規感染者数 新規死亡者数 致死率
第1回 緊急事態宣言期間
(2020年4月7日~5月25日) 3,941人 257人 約 6.5%
第2回 緊急事態宣言期間
(2021年1月8日~3月21日) 45,918人 962人 約 2.1%
第3回 緊急事態宣言期間
(2021年4月25日~6月20日) 33,903人 321人 約 0.9%
第4回 緊急事態宣言期間
(2021年7月12日~9月30日) 193,276人 664人 約 0.3%
今回 オミクロン株による感染拡大
(2022年1月1日~2月23日) 558,222人 352人 約 0.06%

山本光昭(やまもと・みつあき)
前 東京都中央区保健所長 / 現 社会保険診療報酬支払基金 理事

1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。

声明 ロシアのウクライナ侵略を断固非難する

 ロシアのプーチン大統領は、2月24日、ウクライナ各地へロシア軍を侵入させて攻撃を開始した。主権国家に対する武力による侵略は国連憲章、国際法を踏みにじる行為であり、いかなる理由であれ許されるものではない。

私たちは、罪もなき一般市民を殺傷し、いわれの無い理屈で一方的に戦争を仕掛けたプーチン大統領を断固非難する。ロシア軍は即刻、軍事行動を中止し、ウクライナから撤退すべきである。

私たちは、国民の命と健康を守る団体、唯一の被爆国として、人の命を奪う戦争や核兵器使用で世界の諸国を威嚇するいかなる行動にも断固として反対する。

2022 年 3 月 4 日

東京歯科保険医協会 理事会

 

声明「ロシアのウクライナ侵略を非難する」PDF