協会ニュース

談話 医療経済実態調査の適正な実施と診療報酬の引き上げを求める

20211124日に発出された『第23回医療経済実態調査』はコロナ禍での調査となっており、今回の調査では新型コロナ関連の補助金を除いた医業収益まで調査をしている。

医療経済実態調査に関しては、以前より、恣意的な調査であることが問題となっている。歯科医療機関全体の調査結果では調査施設数が298機関、平均医業収益が約7,300万円となっており、保険診療を中心とした大多数の開業医の経済実態を対象としているとは到底考えられない。また、東京23区に限れば、歯科医療機関数約10,600機関中、調査施設数は27機関(約0.3%)、平均医業収益が約6,000万円となっている。適正な調査を行うためにはサンプル数を増やして実施することを検討すべきではないだろうか。

以上を踏まえたうえで、今回の調査結果では、東京の歯科診療所は新型コロナ関連の補助金を含めても、医業収益の伸び率は-2.2%となっており、医業経費の伸び率が-1.1%となっている。恣意的にも思える調査結果であっても、医業収益はマイナスとなっており、患者の受診抑制による、診療収益の減少をこれまで以上の経費削減をすることで何とか持ちこたえていることがわかる内容である。実際に会員からは「補助金がないと経営が厳しい」「感染対策の経費は増え、補助金で何とかしのいでいる」といった声が寄せられており、一時的な財政支援である補助金も医療機関の存続の一助となっている。しかし、今後も感染防止対策の補助金が交付されるかは不明である。

一部ではコロナの補助金により多くの医療機関が黒字化しているためマイナス改定になるという報道がされているが、以上の調査結果からすれば、東京の歯科医療機関は補助金があっても苦しい状況にあることは明確である。

12月3日に行われた中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の「医療経済実態調査の結果に対する見解」の資料(診療側・2号側委員)では「地域歯科医療を担う約 8 割を占める個人立歯科診療所の経営は、コロナ関連補助金を加味しても依然として厳しい状況が続いている」「既に経営努力や経費削減努力は明らかに限界に達している」と歯科医療機関の置かれている状況の記載がみられる。また、2021年5月に行った協会の会員アンケートでは、コロナ禍以前よりも医業総収入が減少したと答えた会員は約61%であった。会員アンケートの結果と、医療経済実態調査の結果、中医協の資料を踏まえれば、国民の健康を守る歯科医療機関が安定した経営を行うために、診療報酬の引き上げは不可欠である。

以上より、国に対し、医療経済実態調査の適正な実施と診療報酬の引き上げを求める。 

20221213

経営管理部部長
相馬 基逸

私の目に映る歯科医療界⑨ 岸田政権が公的価格引き上げに動く好機/歯科からも歯科衛生士と歯科技工士の処遇改善訴えよ

岸田政権が公的価格引き上げに動く好機/歯科からも歯科衛生士と歯科技工士の処遇改善訴えよ

衆議院選挙が終わった。メディアの大方の事前予測と違って自公が絶対安定多数を維持し、野党内では維新が躍進した。立憲民主党と日本共産党を軸にした選挙協力は不発となり、比例区では立憲民主党は惨敗した。

今回の選挙結果と、今後の岸田内閣の政策は、これからの歯科を含めた医療分野に対し、どのような影響を及ぼすのであろうか。

Ⅰ.2025年まではさらに医療費抑制政策に加速が…

国民からの支持を理由にして、従来の医療費抑制政策を踏襲、場合によっては「2025年問題」、つまり800万人の〝団塊の世代〟全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年度までは、さらに抑制に加速がかかる可能性も高い。

分配重視ではなく経費節減・財政圧縮を強調する維新の勢力増強は、その政策に対し国民の中に相当割合の支持があることを意味する。これも、国の医療費抑制政策を側面から支える役割を果たすかもしれない。

自助、具体的にはすでに医療機関窓口での患者2割負担法案も可決された後期高齢者などについて、一層の窓口負担増の論議などにつながらないとも限らない。

その一方で、岸田文雄首相は、自民党総裁選挙や衆議院選挙で「新しい資本主義」を標榜。成長一辺倒から分配への一定シフトの考えを示している。安倍・菅政権の成長・自助重視路線からの部分的な修正にも見えるが、その内実がどうなのか、キャッチフレーズ通りに政策を実現できるかどうかは、歯科を含む医療界としても十分に注視する必要があるだろう。

Ⅱ.田政権が看護・介護・保育の処遇改善の動き

分配にも目くばせする看板政策「新しい資本主義」の柱の一本として岸田政権が打ち出しているのが、看護・介護・保育を担うエッセンシャルワーカーの処遇改善だ。

岸田首相自身が、その働きぶりや業務の重要性、ほかの職種の給与と比べると処遇が低いという問題意識を示し、看護・介護・保育の公的サービスを担う職種の公的価格を引き上げようという試みは、大いに注目に値する。

11月を挟んで「新しい資本主義実現会議」や「全世代型社会保障会議」、さらにはその傘下でこの重要任務の議論を担う「公的価格評価委員会」を立ち上げ、早々に議論入りしているのは周知のとおりだ。

長時間残業など、過重な勤務実態や環境の割に給与は相対的に低い看護師、介護職員、保育士の処遇改善に乗り出すことは良い方向だ。厚生労働省の最新の統計「賃金構造基本統計」によれば、保育士(女性)は月収換算で30.2万円、介護職員は29.3万円となっていて、全産業の平均給与の35.2万円を下回っている。看護師は39.4万円と、全産業平均を上回ってはいるが、夜勤を含む残業代の要素、割合が大きいことから、働き方の割に高いとは言い難いのが実態だろう。日本看護協会の福井トシ子会長も、今回の政府の処遇改善の構想に絡めて「夜勤・残業代を除く基本給での看護師の給与アップを望む」と発言している。

確かに、そうでなければ看護師資格を持ちながら、看護師の職から多くの人が離れている現実もないはずだ。

もちろん、懐疑的な見方も出ている。第1に、岸田政権が示すような公的価格の引き上げによって、民間分野の給与の引き上げを含む経済成長と分配の好循環につながるのか、という疑問だ。

2に、給与引き上げの原資がどうなるのか。岸田首相が言う消費税引き上げに頼らないとなると、利用者の自己負担アップや保険料引き上げ、国などの公的補助拡大になるが、国民的なコンセンサスが得られるのかという大問題が残る。財源を国債に頼る場合は、後の経済成長の果実で賄うという考え方ではあるが、これまた経済成長が好循環にならなければ、次世代への付け回しになりかねない。

具体的な公的価格引き上げの程度や、どういう形で実現するのかという、制度設定の問題もある。そのまま診療報酬や介護報酬をアップする場合でも、病院や福祉・介護施設の経営者が、従業員に果実をそのまま回すのかという疑念もある。かつて、実際に保育士や介護士などの処遇改善をするために行った公的加算が、当の職員の給与には回っていなかったという、看過し難い現実の声も現場からは出ている。

Ⅲ.今こそ歯科衛生士や歯科技工士の処遇改善の声を上げよ

不思議なのは、歯科医療界にもその土台を下支えするエッセンシャルワーカーたる歯科衛生士や歯科技工士がいるのに、ほとんどその処遇改善議論の対象に上がってこないことだ。

以前、この連載でも取り上げたが、歯科技工士の処遇がひどい惨状にあることは言うまでもない。歯科衛生士にしても、看護職員や介護職員などと比べ、処遇はましか、と言えばさにあらずだ。

Ⅳ.歯科衛生士と歯科技工士は処遇改善の有資格者

先に挙げた厚生労働省のデータを借りれば、いみじくも「プレジデント」2021123日号の特集「歯と眼の大問題一挙解決ノート」でも取り上げられているように、歯科衛生士の時給は1521円、歯科技工士に至っては1168円となっていて、看護師の1776円を大きく下回る。歯科技工士の場合、東京歯科保険医協会のアンケートでも明らかなように、多くが長時間労働を余儀なくされた上で、平均年収は392万円となっていて、看護師の494万円を相当程度下回るのが現実だ。

看護師も保育士も歯科衛生士や歯科技工士も、みな国家資格が必要で、健康・生命や保育など、社会的にも不可欠な公的サービスの重責を担う点では、遜色はない。歯科衛生士や歯科技工士の処遇の問題についても、若くして職場離脱する人が多いことは大きな問題だから、岸田政権の公的価格引き上げの対象にならないのは理不尽といえるだろう。

2年に1度の診療報酬の改定作業が最重要課題であるのは当然であるとしても、同じ歯科医療の土台をともに担う仲間の処遇改善に声を上げることは、歯科医師の共助団体としても大事なことと思うが、どうだろうか。

少なくとも、歯科衛生士や歯科技工士の処遇改善の必要性を政治ならず国民に訴える絶好の機会である。これを逃してはいけないはずだ。

 東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」2021121日号10面掲載

田原総一朗氏が歯科の大切さを指摘/自身の自律神経失調症改善をもとに

ジャーナリスト、評論家、ニュースキャスターとして活動している田原総一朗氏が、初めて“老い”をテーマとする著書「堂々と老いる」(毎日新聞出版20211127日発行/新書サイズ/240ページ)が、筆者自身の経験をベースにした健康問題について触れた一節で、歯科医療と健康の関係について触れており、歯科関係者から注目されている。

元々は東京テレビ(現・テレビ東京)の開局準備段階から入社して活躍し、1977年に独立しフリーランスのジャーナリストとなったが、「思いもよらない体の異常」に見舞われたという。

著書の中では、その当時の状況について、「ある朝、目が覚めたら、突然新聞の記事が読めなくなったのだ。一文字ずつは読めるのだが、単語になるとわからない…」症状を呈し、ジャーナリスト引退も考えたという。やっと、大学病院での検査により、自律神経失調症と診断され治療を受けたものの、症状は一向に改善せず、鬱状態にまで陥ってしまう。

そのような時、知り合いの医師の紹介で受診した東洋医学の治療院で、筆者は、「歯の噛み合わせの悪さが体の不調に影響している」のではないかとの指摘を受ける。そこで歯科を受診し、治療を開始したところ、「症状は徐々に快方に向かっていった」という。

さらに、改めて『高齢者ほど歯が大事』との章を設け、以下のような詩論を展開している。

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✔自律神経失調症のひとつとした歯の噛み合わせを指摘されて以来、定期的に歯科医に通いメンテナンスを続けている。医師によれば、人間が丈夫でいる秘訣は歯にあるという。

✔噛み合わせの悪さがストレスを増大させ、精神的に不安定になると自律神経失調症を引き起こしてしまうことがあるというのだ。

✔噛む力が低下すると脳への刺激が失われてしまい認知症のリスクも高くなってしまうのだ。

✔食べ物を噛む際、歯には60キロくらいの圧力がかかるといわれる。噛み合わせがよければ、その力はすべての歯に分散するが、噛み合わせが悪いと圧力が偏ることになり、顎関節症を引き起こすおそれがあるというのだ。

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そして、それらを総じて、「噛み合わせが人間の体にとっていかに大事かがわかるだろう」と締め括っている。1934年(昭和9年)生まれ87歳の筆者が、現在もなお活動し続ける秘訣として、歯の大切さと歯科受診を掲げていることは注目に値する。

談話 地域医療体制を維持するには診療報酬のプラス改定は不可欠

 財政制度等審議会は、「令和4年度予算の編成等に関する建議」の中で、2022年度診療報酬改定について、改めて「診療報酬本体のマイナス改定を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」と強調した。財務省は、「躊躇なくマイナス改定をすべき」との姿勢を崩しておらず、相当な決意がうかがえる。

 しかし、診療報酬(医療費)の伸びは高齢人口の増加や、医療費の高度化等による医療費の自然増を示すものに過ぎず、医療機関の経営実態を示したものではない。また、コロナ禍が経営に与えている影響も大きい。新型コロナウイルス感染症の感染者数は減少傾向にあるが、医療機関においては感染症対策が不要になったわけではなく、引き続き、感染対策にかかる物品の確保や人材確保等の費用の支出が見込まれ、診療報酬のプラス改定は不可欠である。

 厚生労働省が11月24日に公表した病院や医療機関の経営状況を調べた第23回医療経済実態調査の結果でも、医科・歯科ともに新型コロナウイルス感染症関連の補助金を除いた医業収益が悪化している。歯科においては、医業収益が「個人」でマイナス1.2%、「新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く)」を除いた場合はマイナス3.0%で、保険診療収益はマイナス1.9%となった。医療法人を含めた「全体」でも、医業収益がマイナス0.1%、「新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く)」を除いた場合マイナス1.2%で、 保険診療収益はマイナス1.5%と前年度よりも下回っている。さらに歯科材料費は前年度よりも全体で3.9%上昇しており、医療機関の厳しい経営をさらに圧迫している。一時的な補助金や支援金ではなく、診療報酬本体の引き上げなくして、安定した地域医療の維持は困難であることは瞭然たる現実だ。

 遠からずして政府は2022年度診療報酬の改定率を閣議決定する。当協会では、引き続き実態に即した改定と地域医療体制を維持するために、診療報酬のプラス改定を求めていく。

2021年12月7日

東京歯科保険医協会

政策委員長 松島良次

医科歯科の医療現場の窮状と診療報酬改善訴える/12.2保団連国会内集会で

12月2日、保団連は国会内集会「『#医師・歯科医師の声を聞いてください』診療報酬は大幅引き上げを!」を開催した。去る11月8日、財務省が財政制度等審議会(財政審)の中で次期診療報酬改定について、「躊躇なくマイナス改定」すべきとの考えを示したことについて、保団連の住江憲勇会長(下写真中央)が挨拶の中で、「コロナ禍に続いて、オミコロンなる新たなウイルスが確認され、不安ばかりが広がっている。国民が医療を受けられないし、医療提供者も診療報酬の“マイナス”では、さらに適切な良質な医療提供が困難になってくる」と指摘した。

続いて、会場に駆けつけた国会議員から挨拶が続いた。早々に駆けつけていた宮本徹衆院議員(日本共産党)は、「コロナ以前から厳しい低い医療政策が続けられ、昨年の新コロナウイルス感染症の拡大により、医療機関に追い打ちをかけるように厳しい運営を強いられている。医療関係者だけでなく、患者にも負担をかけることになる」と強調した。続いて基調提案として武村義人副会長(医師)から、診療報酬の引き上げを求める理由、臨床現場からの医師・歯科医師の声を紹介。その中で歯科については、「厚労省から受診抑制となるメッセージを出し、歯科は感染リスクの高い診療機関と誤解されるなど、現場での苦労は想像以上といえる」などを訴えた。

一方、会場を訪れた国会議員のうち、立憲民主党の医系議員である米山隆一衆院議員と吉田統彦衆院議員の両氏からも激励の挨拶があった。また、会場から長野県保険医協会会長で歯科医師の宮沢裕夫氏が、同協会が10月の衆議院選挙前に行ったアンケートの中で、現厚生労働大臣の後藤茂之議員(長野4 )は、「診療報酬引き上げに賛成」としていたことを紹介し、後藤氏は岸田内閣で厚生労働大臣に就任しており、今後の対応に注目しているとした。

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)11月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)11月1日 第620号

【1面】

1.コロナ加算等廃止に抗議/9月末終了の感染症対策実施加算等について

2. 効率的に提供する体制を検討/在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ

3. コロナ感染拡大防止で継続支援補助金実施

4. 金パラ等歯科用貴金属/1月歯科用貴金属価格随時改定Ⅱ見送り

5. 新春号特別企画

6.ニュースビュー

7.「探針」

【2面】

8.コロナ加算廃止に伴い陽性患者への新たな評価を新設

9.十分なのか…コロナ加算廃止と引き換えの支援金

10.支援補助金の振込遅れに対し保団連が個別照会対応を実施

11.11月から新たな補助金(8万円)の申請開始

12.東京歯科保険医協会ホームページ

【3面】

13.中医協総会/2022年1月 歯科用貴金属随時改定は見送り

14.歯科技工士業務のあり方検討に本腰

15.CAD/CAMクラウン装着の要点を解説

16.ドクター・スタッフ講習会/シャープニング・SRP実習

17.象牙質レジンコーティングを巡り講演

18. 医療広告ガイドラインで最初に気をつけるべきポイント

【4面】

19.経営&税務相談Q&A No.387

20.法律相談、経営&税務相談

5面】

21.研究会・行事案内

67面】

22.インタビュー  日本補綴歯科学会 理事長 馬場一美さん

8面】

23.教えて!会長!!Vol.52

24.歯科保険医協会にぜひご入会ください/組織部

25.歯科情報をお知らせします/Facebook

26.改定情報の早い発信を/第11回レセコンメーカー懇談会

27.共済部だより

9面】

28.症例研究/歯肉剥離掻爬手術(FOp)時にリグロスを併用した症例

10面】

29.連載/私の目に映る歯科医療界⑧

30.理事会だより

31.協会活動日誌 202110

11面】

32.都立・公社病院の独法化/撤回・反対の「要望書」提出

33.秋の署名活動/国の予算を増やし次期改定ではプラス改定を

34.渡辺孝一・島村大氏/両歯系議員が政務官に就任

35.参議院比例 比嘉奈津美氏繰り上げ当選決定

12面】

36.年末年始休診案内ポスター

37.神田川界隈/開院20周年を迎えて(早坂美都・理事)

38.通信員便り No.115

第4回メディア懇談会 金パラ署名など意見交換

(左から)馬場安彦副会長、早坂美都理事

◆金パラ署名・診療報酬改善要求も議題に

協会は1112日、第4回(通算86回)メディア懇談会をWEBで開催。馬場安彦副会長が説明、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務め、報道各社から参加者が集まった。今回は①秋の運動、②中央社会保険医療協議会、③都立・公社病院独立行政法人化、④診療報酬改善要求、⑤感染症対策実施加算等を議題として扱った。

秋の運動では協会の運動や、署名など諸活動の経過を報告。1000筆の目標に達した金銀パラジウム合金の原価割れ改善を求める署名については、メディアから医療機関が抱える苦労や負担に対する鋭い質問が飛んだ。

◆都立・公社病院独法化の影響を議論

また、③都立・公社病院独立行政法人化に関しては、東京保険医協会と連名で独法化反対と撤回の要望書を提出したことで一石を投じることになったと説明。参加者とともに、東京都が都立・公社病院の独法化を進める背景や医療現場、都民に与える影響などを議論した。

最後には協会の活動に対しメディア側から激励の言葉もあり、闊達な意見交換の場となった。

新たな8万円の補助金 申請方法の動画が出来ました。 (11/11更新)

2021年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金の詳細

以下の情報は11月11日現在のものです。

申請方法の動画が出来ました。
デンタルブックにユーザー登録をすると視聴できます。(会員無料)
デンタルブック → ここをクリック
電子書籍デンタルブック

今回はWebからの申請が前提になります。
郵送での申請をご希望の方はコールセンターに直接お電話ください。
厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンター0120-336-933 (受付時間は平日9:30~18:00)
厚生労働省の補助金の解説ページはここをクリック
「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金」について

1. 補助額
無床歯科診療所 8万円
有床歯科診療所 10万円

2.申請期限
2021年11日1日(予定)から2022年1月31日
審査の結果、補助金の交付を決定した医療機関等には「交付決定及び交付額確定通知書」を郵送するとともに、請求書に記載の金融機関へ振込む。
精算交付申請書が到達した日から起算して原則として2か月以内に交付の決定及び交付すべき補助金の額の確定を行う予定。

3.対象期間
2021年10月1日から2021年12月31日までにかかる経費

4.対象経費
今回は確定後(納品済み)に対するの支援補助金です。概算払いはありませんのでご注意ください。
賃金、報酬、謝金、会議費、旅費、需用費(消耗品費、印刷製本費、材料費、光熱水費、燃料費、修繕料、医薬材料費)、役務費(通信運搬費、手数料、保険料)、委託料、使用料及び賃借料、備品購入費
従前から勤務している人、及び通常の医療の提供を行う人に係る人件費は対象外。

経費例
・日常診療に要する材料費(衛生材料、消毒薬など)(直接診療報酬等を請求できるもの以外)
・換気のための軽微な改修(修繕費となるもの)
・休業補償保険等の保険料
・清掃の人材派遣料で従前からの契約に係るもの
・清掃の外部委託費で従前からの契約に係るもの
・感染拡大防止のため購入した施設・設備に係る保守・メンテナンス料
・感染拡大防止のため新たに借りた診療スペースに係る家賃
・院内等での感染拡大を防ぐために購入した空気清浄機(医療用でなくても可)
・紫外線殺菌照射装
・一時的に閉院をした場合の補償を行う保険の保険料

以下の(1)から(3)を全て満たす場合には、2021年10月1日から2021年12月31日までに始期がある契約として支払った保険料の全額を補助対象の経費として算定できます。
(1) 新型コロナウイルス感染症の影響による休業(病棟や外来を閉鎖した場合を含む)について補償する保険であること。
(2)契約期間を任意に設定することができないことにより、保険期間に2022年1月1日以降が含まれること。
(3)2021年10月1日から2021年12月31日までに始期がある契約として保険料の支払いを行っており、その支払った額が12か月以下の最も短い期間を対象とした保険料であること。
※ 補助の対象となる機器・備品1台の購入価格に上限ははありません。
※ 30万円を超える機器等を購入した場合で、減価償却終了前に処分・譲渡などした場合には助成金の返還規定もありますのでご注意ください。

以下のQ&Aから抜粋しています。参考にしてください。
新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金に関するQ&A
令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金に関する
Q&A


5.申請方法
1)インターネットによる電子申請
「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止継続支援補助金」について
2)電子申請以外
厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンターまでご相談ください。
電話:0120-336-933(平日9:30~18:00)


6.仕入控除税額(返還額)報告
※2021年度の消費税及び地方消費税の確定申告により、補助金に係る消費税及び地方消費税にかかる仕入れ控除税額が確定した場合は、2023年6月30日までに上記様式により厚生労働省まで提出してください。
1)提出書類
消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書(第2号様式)(入力用)
消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書(第2号様式)(手書き用)
2)提出先(郵送のみです)
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2 厚生労働省医政局医療経理室 宛

7.問い合わせ先
厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンター
電話:0120-336-933(平日9:30~18:00)

協会へのお問い合わせ
Mail:info@tokyo-sk.com
電話:03(3205)2999 経営管理部

プラス改定等を求める署名にご協力を

 

金パラ原価割れの署名は千筆が集まり、厚労省などに提出した。

 協会は、11月上旬に、金パラの原価割れを求める署名1064筆を厚生労働省などに提出しました。

 しかし、11月8日(月)に、財務省はの財政制度分科会において「診療報酬(本体)のマイナス改定を続けることなくして医療費の適正化は到底図れない」と、マイナス改定を求める姿勢を示しました。感染防止対策を徹底せざるを得ないにもかかわらず、次期改定をマイナス改定とすることは、到底納得できるものではありません。

 そのため、11月下旬に、内閣総理大臣を筆頭にプラス改定などを求めるべく、署名を実施しております。まだ、署名をされていない方は、下記リンクよりご協力をお願いいたします。

〇(署名は終了しました)署名にご協力を頂ける方は、こちらをクリックしてください〇

★署名ができるのは、歯科医師または医師の方です。

 

私の目に映る歯科医療界⑧ 歯科口腔保健法10年の成果と課題/医科と共同戦線組み歯の健康予防前進を

歯科口腔保健法10年の成果と課題/医科と共同戦線組み歯の健康予防前進を

2021年は、国民皆保険制度始動から60年目、「歯科口腔保健の推進に関する法律」(以下、「歯科口腔保健法)」の制定から10年の節目の年であったが、果たしてこの10年の間に、歯科口腔保健法は十分な成果が上がったのだろうか。新型コロナウイルス禍や政治の激変に紛れて、この検証はすっかり忘れ去られてしまっている。

Ⅰ.検診率のアップなど法律の成果は道半ばの状況

歯科口腔保健法は歯科口腔保健の推進に的を絞った法律としては本邦初で、コンセプトも歯科疾患の事前予防を通じて最終的に国民の健康格差の縮小を目指すという、ある意味、歯科医療界だけでなく、国民にとっても画期的な法律の誕生だった。

この法律は、目標実現のために関連知識等の普及啓発、定期的な歯科検診の推奨、予防措置、調査・研究の推進などの施策を組み込む形になっており、歯科医療界の期待も大きかった。

しかし、現時点では手放しで成功とはいえない。確かにこの法律と同時並行で進む、いわゆる「8020運動」の成果もあって、高齢者における「歯の健康」の改善効果は出ている。8084歳での平均残歯数は2011年の12.2本から16年には15.3本に増えた。しかし、それでも北欧スウエーデンなどの先進国の水準と比べれば、まだ追いついていない。

本紙本年9月号(第618号)本欄でも指摘をしたが、高齢者の歯科治療ニーズは高いが、それに十分に歯科医療界が応え切れていない現実があることも、この法律の成果と関連づけて強調しておきたい。

何よりも、「歯の健康」予防推進に大きな役割を果たすはずの日本の歯科診療受診率は2019年度は16%弱という、厚生労働省のデータを基にした歯科機器メーカーの松風の推計がある。歯の定期的検診を受ける回数では、欧米などの先進国にまだ見劣りする。

乳幼児や児童・生徒世代の歯科健診は義務化されているが、働き盛りの現役世代から74歳までは、40歳、50歳、60歳、70歳の節目に市町村が歯周疾患検診を実施してはいるが、研究者の間からは、2015年度段階のその平均受診率は4%台にとどまっているとの推定が出ている。法律の狙いほどには、日本の歯科検診率は上がっていないのが現実だろう。

Ⅱ.口腔の健康と全身疾患の関係示す研究進む

口腔保健の予防推進によって、健康に過ごすことができる健康寿命を延ばすこと。歯科医療界や厚生労働省などの関係者がこの法律に期待したのは、まさに、このことだったはずだ。死ぬまでの寿命ではなく、いかに長く健康で暮らせるかが、本来、人にとって大事なのは当然のことだ。口腔状態が糖尿病などの様々な疾患と密接な関係があり、人間の身体的健康全般の改善にも影響するという科学的なエビデンスが当時、既に広がっていたことが、歯科口腔保健法制定の背後にあったことは間違いない。

この10年間では医学・歯学両方の研究が進み、この点を裏付ける、あるいは示唆する成果が増えている。

特に、歯周病を引き起こす口腔内の「悪玉」細菌の研究はホットな分野になっている。この細菌は、血管を通じて全身を駆け巡り、人体の各臓器に炎症などの〝悪さ〟を引き起こす。大腸経由で脳血液関門という狭い関所を通過し、脳内の炎症を促し、アルツハイマー型認知症など、中枢神経系の変性疾患に何らかの作用を及ぼしていることを示唆する研究も進んでいる。

米国ではこの仮説に基づき、実用化を目指して人に開発薬を投与し、その有効性や安全性を確認する最終臨床試験(治験)に進んでいるものも出ている。

Ⅲ.歯科健診の組み込みなど医科と予防で共同戦線を

少子高齢化の進展と高額薬剤の増加を背景に、歯科も含めた国民医療費の増加圧力は増す方向にある。

その一方で、国の予算には制約がある。その中で難題ではあるが、先の法律が目指した歯科も含めた予防医療を前進させるためにも、具体的な施策への予算を増やすことは不可避だ。

歯周病と他の疾患との関係を調べる研究や、そこから派生する疾患治療薬の開発などへの国の支援も必要だ。医科と歯科という従来の〝境〟を横断する施策も、この新しい予防分野では増えてくるだろう。

今年度末までに結論を迫られている次期診療報酬改定では、医科と歯科に分かれた従来の予算の枠取りは依然有効だろうが、研究開発や健康予防措置に投じる予防医療への予算では、医科、歯科の両医療界の敷居にこだわるあり方を変える必要があるのではないか。

研究開発もそうだが、予防措置も医科、歯科の境界をまたぐ措置が必要だ。例えば、働き盛り世代の歯周疾患等健診を、会社などで毎年実施する健康診断に組み込むことだ。この構想自体は、既に検討課題に挙がってはいるが、実現はまだ先のことだ。会社の健康診断のメニューには、眼科や耳鼻科領域の項目はあるのに、歯科健診がなくていいという理由は乏しい。人生で働き盛り期間中心の約40年間の国民の健康増進・予防のためにも、先進国として政府が率先して歯科健診受診率の向上を図る必要があるはずだ。

医科と歯科の従来の縄張り・意識の壁が、もしここで邪魔をしているのだとしたら、国民の健康と安全のためにも、大きな損失につながる由々しき問題だ。

歯科医療界から医科と共同戦線を張れるものがないのか、歯科口腔保健法の施行10年の節目の年に当たって、じっくり再考し、積極的に提案してみてはいかがだろうか。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

「東京歯科保険医新聞」2021111日号10面掲載

医薬情報ネットワークの基盤の在り方を検討

 厚生労働省は1110日、「医薬情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」をオンラインで開催した。同ワーキンググループは、健康・医療・介護情報利活用検討会の検討事項のうち、全国的な医療情報ネットワークの基盤に関する議論を行うため設置されたもの。

 データヘルス改革に関する工程表に従って、医療情報ネットワークの基盤の在り方(主体、費用、オンライン資格確認等システムや政府共通基盤との関係、運用開始時期等)や、技術的な要件について、2022年度までに結論を得る。

 同日は医療情報の活用の現状や、電子カルテ情報と交換方式の標準化などをテーマに議論し、医療現場で必要な情報を共有すべきか意見交換が行われた。

 ワーキンググループでは2021年度中に、①電子カルテ情報の標準化と地域医療情報連携ネットワークの現状、②中央に集約して共有する医療情報と施設間などで交換する医療情報の検討、③医療情報の共有・交換に関する手続きと方式の検討、④電子カルテの普及方策と情報化支援基金の要件などの検討―について論点を整理する。

【2021-22年】年末年始休診案内ポスター

―休診案内ポスター ダウンロードのご案内―

年末年始の休診日にご使用いただける『休診案内ポスター』をご用意いたしました。

ご入用の方は、お好みのデザインをダウンロードのうえご使用ください。

郵送をご希望の方は、会員優待ページからお申し込みください。

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【A4 横ver.】◆A4サイズの用紙に印刷してご使用ください。

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【A4 持ち運びver.】◆縮小印刷をご利用のうえ、診療所の受付などでお配りください。

 

待合室キャンペーン「歯科医療の充実・改善の願いを国に届けよう!」

(10月11日(月)現在)

45筆の署名が届きました。もうすぐ50筆です。

<頂いたご意見>

・歯科はクラスターを出すこともほとんどなく、COVID-19をのりきっています。現場の努力も必要ですが、診療報酬の評価が絶対に必要です。10%以上の引き上げを求めます。

・初診料、再診料は医科と歯科で差がある根拠が理解に苦しむ。とりわけ感染防止に関しては、同様な配慮と対策をしているのに。

・特に後期高齢者の窓口負担2割については、満心の怒りをこめて抗議します。さらなる受診抑制を招き、国民の健康増進を後退させることはもちろん、医療機関にも壊滅的なダメージを与えます。

 歯科医療は、「感染症の予防」「基礎疾患のある患者の重症化予防」など全身の健康にとっても重要であると指摘されています。しかし、新型コロナ感染への不安などのために歯科医療機関への受診控えが進み、患者・国民の口の中の状況は悪化しています。
 歯科医療機関では、以前から感染症防止対策を徹底していますが、現在の感染拡大下ではこれまで以上の対策が求められており、現在の低い診療報酬体系では医院経営はより厳しいものとなっています。窓口負担の引き下げや診療報酬の引き上げなど医療への国の予算を増やすことは、患者と医療従事者みんなの願いです。
 協会は、全国の保険医協会と協力し、全国10万人強の医師・歯科医師の会員と共に、よりよい医療を求めるため医師・歯科医師署名、患者署名に取り組みます。また、患者さんに、楽しみながら医療の大切さを学べるクイズ企画も実施しています。ぜひ、ご協力をお願いします。(会員の方には、月間保団連10月号:10月5日(火)頃送付でもお届けしています。)

歯科医師のWEB署名はこちらをクリック

 

 

 

患者さんの署名用紙などの注文をされる

会員の方は、こちらをクリック

 

関連活動

「クイズで考える私たちの医療(WEB申込)」(下記バナーをクリックしてください)

 

 

 

 

 

 

 

新春号特別企画<写真作品の募集>

 

◆東京歯科保険医新聞では、2022年新春の紙面を彩る会員読者の写真の募集をしています

 写真のテーマは『希望』です。2020年から新型コロナウイルスが世界的に流行し、私たちは生活様式の変化を余儀なくされました、終息にはまだ時間を要すると思われますが、しかし、その中でも、必ず「希望」はあるはずです。新春の紙面を飾る「希望」を表現した写真作品の投稿を期待しています。皆さまからのご応募をお待ちしております。

▽締め切り 11月30日必着

▽応募方法 

E-mail もしくは郵送でご応募ください。

E-mail:info@tokyo-sk.com

郵送先:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-8

宛先:東京歯科保険医協会 広報・ホームページ部

▽作品

写真データは1MB以上。写真プリントの場合、サイズは2L判(白黒またはカラープリント)。必ず作品名を明記してください。写真とともに「作品名」「氏名」「地区」を掲載いたします。

ご応募いただいた写真データ等はご返却いたしません。なお、掲載する写真は、厳正な審査を経て決定いたします。

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)10月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)10月1日 第619号

1面】

1.東京都2022年度予算要請

2.2022年度 厚労省概算要求案/医療費国庫補助10兆円超に

3.新春号特別企画/写真投稿募集

4.ニュースビュー

5.「探針」

2面】

6.随時改定Ⅰ/金パラ・銀合金・メタルコア引き上げへ

7.中医協総会/歯科用貴金属 随時改定に改善の意見も

8.生活保護指定医療機関/動画視聴方式による指導を実施

9.人口骨「レボシスIJ」が9月から保険適用に

10.東京都議会各党 要請内容に理解を示す

11.最新の歯科医療情報等を発信/東京歯科保険医協会HP

3面】

12.インボイス発行事業者の登録は10月開始

13.新規開業医講習会に23名が参加

14.根管治療成功の秘訣を紹介

15.通信員便り No.114

4面】

16.経営・税務相談QA No.386

17.9月末で新型コロナ特例加算は終了

18.認知機能と口腔機能/相関関係の解明を目指す

19.法律相談、経営&税務相談

5面】

20.研究会・行事案内

67面】

21.インタビュー 建築家・渡邉義孝さん

8面】

22.教えて!会長!!Vol.51

23.保険医年金 予定利率変更(20227月より)のお知らせ

24.「診療」と「経営」の「二刀流」/共済制度

25.歯科保険医協会にぜひご入会ください/組織部

26.歯科情報をお知らせします/Facebook

9面】

27.症例研究/2021年9月1日より新規保険収載 磁性アタッチメントを用いた有床義歯

10面】

28.連載/私の目に映る歯科医療界

39.理事会だより

30.協会活動日誌 20219

11面】

31.都立病院等独法化の中止求める

32.金パラ原価割れの改善を求める署名 わずか1週間で754

33.歯周病・認知症研究の講演開催

34.国の予算を増やし、次期改定ではプラス改定を

35.会員優待サービス

12面】

36.第3回メディア懇談会を開催

37.神田川界隈/私が考える金パラ逆ザヤ問題解消法

38.「歯科医師によるワクチン接種業務」に従事して

 

 

 

「#いのちまもる医療・社会保障立て直せ!10・14総行動」を開催

「#いのちまもる医療・社会保障立て直せ!1014総行動」が1014日、日比谷応援内の「野音」で開催された。協会からは、保団連副会長を務める森元主税理事と事務局が参加した。コロナ禍の中、感染対策を施して準備した会場には関係者が約200参加した。

その中で協会の森元理事が発言し、新型コロナ新規感染者数は減少しているものの、医療機関の受診控えや介護の利用控えが続いていること、子どもの健康管理などにも悪い影響を及ぼしていることなどを指摘。さらに、「長年の低医療費政策、医師数抑制策によって脆弱になった医療提供体制の立て直し、診療報酬の大幅な引き上げが必要だ」と締め括った。

なお、昨年に引き続き、新型コロナ対策のため集会動画配信も実施し、協会の坪田有史会長、中川勝洋・橋本健一・半田紀穂子各理事が参加した。集会には、日本医師会の中川俊男会長、日本歯科医師会の堀憲郎会長からのメッセージが紹介された。

 

 

私の目に映る歯科医療界⑦ アンケートデータは有効な武器になる/中長期課題は国民を説得できる方策の構築を

アンケートデータは有効な武器になる/中長期課題は国民を説得できる方策の構築を

本年8月末、厚生労働省から2020年度の概算医療費が発表された。その金額は42.2兆円で、前年度比で1.4兆円、率で3.2%の減少となった。16年度以来5年ぶりの減少で、減少幅も大きかったことが特徴だ。

その主因は、新型コロナウイルス感染拡大による患者の受診控えだ。 診療分野別に見ると、外来と入院を合わせた医科は31.3兆円(前年度比3.8%減)、調剤7.5兆円(同2.7%減)に対し、歯科は3.0兆円(同0.8%減)となっている。

Ⅰ.概算医療費は歯科微減もコロナの打撃は小さくない

この数字だけを見れば、歯科へのコロナのダメージは浅いように見えるが、そんなことはない。受診した延患者数(受診延日数)は7%近くも減少していて、1日あたりの診察点数・1件当たりの点数の伸びでカバーしているのが実態だ。歯科診療所の経営は楽でないが、報道の仕方次第では、国民の受け止めも違ってくる。

9月1日の日経新聞の1面記事は、「医療費最大の1.4兆円減」と大きく打った大見出しに加え、「コスト抑制の余地映す」との小見出しがついている。記事本文も識者の声を混じえながら、コロナ受診控えとは別に、医療費の助成が大きな小児科などを例に挙げながら、過剰診療の可能性があることなどを指摘している。不要不急の受診を抑え、医療費抑制の取り組みの必要性を強調する内容になっている。うがった見方をすれば、概算医療費の減少からは、過去に無駄な診療があったことが分かったとも読み取れる記事になっている。 これを完全否定する必要はないが、必要な治療を遅らせてしまっていないかなどの受診控えのマイナス面にも目を向けてほしかった、というのが率直な思いだ。

Ⅱ.コロナ感染の影響実態映す東京歯科保険医協会アンケート

そうした中、たまたまコロナ感染症の影響などを尋ねた東京歯科保険医協会の会員アンケートの集計結果が出ているのを知り、ホームページに載っている詳細な内容を拝見した(概要は91日付けの当機関紙にもグラフ付きで報じられている)。

2021年4月の1年前との比較だが、医業総収入が増加したとの回答が43%で、減少したとの34%を少し上回っている。最新の概算医療費のデータは213月までの1年間の動きをまとめていて、対象年月の違いから正確な対比はできないが、増加組と減少組がかなり拮抗するとの貴協会の回答は、歯科の概算医療費微減とほぼ足並みを合わせた動きのように推察できる。

貴協会の今回のデータで興味深かったのは、訪問診療の動きだ。1年前と比べて増加したと回答した会員が21%を占め、減少したとの回答割合30%を下回っている。外来患者数は1年前に比べ増加したとの回答が43%、減少したとの回答34%を上回っていて回復の兆しが見えるのと違って、立ち直りが鈍い傾向が見て取れる。居宅にせよ、介護等施設住まいにせよ、訪問診療の主顧客である高齢者や介護業者などが、コロナ感染を恐れる等の理由から歯科での訪問診療を手控えしている様子が、このデータ結果の背後にうかがえる。

もうひとつ、このアンケート実施がよかったのは、新型コロナ感染拡大の患者への影響を会員の歯科医師などに聞いている点だ。

直接診察している歯科医師の目から見た回答は、コロナ禍を知る上で国民にとっても非常に貴重だ。概算医療費の数字上の動きからは決して分からない患者への影響を知る、つまり先述の日経記事に欠けている視点を補う上でも重要なデータといえるからだ。

回答総数586件のうち、回答が多かった順に挙げると、歯周病の悪化が378件、う蝕の進行が303件、義歯の脱離・不適合168件と続いている。

「感染拡大の影響で検診の自粛や受診控えが見られるため、来院時には悪化しているケースが多くなっている」「高齢者の(来院)中断から再開までの期間が長くなり予後不良になるケースが目につく」など、患者の症状悪化につながる悪影響を指摘する会員歯科医師の声の、まさにオンパレードとなっていて、実に興味深かった。

Ⅲ.国民向けにいかにうまく伝えられるかが課題に

患者治療に携わる歯科医師からの生の声、医療現場に根差した実際の諸データが、年末に向け本格化する中医協の議論にも、政治家や厚労省などへの陳情・要求する上でも、強力な武器になることは間違いない。

歯科技工士、金パラ逆ザヤ、今回のコロナ感染拡大の影響などタイムリーなアンケートを実施し、公開してきた貴協会の努力には敬意を表するが、さらに一歩進んで、これを国民にどううまく伝えられるかも検討されてはどうか。

中長期での医療費増加の解決は、日本の大きな課題だ。国民の中にも歯科を含めて医療費に過剰診療要素があり、診療報酬の引き下げを漠然と支持する空気があることも事実だ。これには正確な情報不足に起因する部分も少なくない。そのためにも、低く抑えられてきた歯科診療報酬のアップが、歯科医師の利益というだけでなく、国民にとっても歯科治療の質向上の観点から必要なことを、厚労省や政治家、中医協の委員など従来のインナーサークルだけでなく、最終的な費用負担者である国民からも納得してもらうこと、さらにはその前門になるメディアにも理解を深めてもらうことが、どうしても必要になる。

◆困難な課題だが歯科医療界を挙げ…

困難な課題だが、歯科医療界を挙げて、真正面からここにぶつかることからしか道は開けないはずだ。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

2021年(令和3年)101日号10面掲載

もうすぐ1000筆に! 金パラ原価割れを招く制度の改善を求める署名にご協力を

 (写真:わずか1週間で、753筆が集まった)

 金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格の高騰による原価割れに対し、協会は9月17日に、全国保険医団体連合会を通じて、改善を求める署名754筆(全国では3,046筆)を厚生労働省など関係各省に提出しました。ご協力を頂きまして、ありがとうございました。

 市場価格は比較的落ち着いている状況になりつつありますが、厚生労働省はこの問題を認識しつつも、明確な改善策を打ち出していません。改善させるためには、今年秋に行われる中央社会保険医療協議会総会での第2ラウンドで適切な対応策を示すように、要求を更に行うことが必要です。

 そのため協会では、9月28日(火)より署名活動を再開することとしました。まだ、署名をされていない方は、下記リンクよりご協力をお願いいたします。

〇署名にご協力を頂ける方は、こちらをクリックしてください〇

★10月8日(金):追加で205筆の署名がありました。合計959筆で、もうすぐ合計1000筆です。★

*対象:会員・非会員を問わず、歯科医師および勤務するスタッフの方であれば参加できます。

*期間:10月29日(金)まで

<署名と共に頂いた主なご意見>

・やると損する診療を押し付ける国、保険の歯科界破綻を狙っているのだろうか?

・逆ザヤだけは解消していただきたいです

・理解できない

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)9月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞 2021年(令和3年)9月1日 第0618号 

1面】

1.金パラ原価割れの解消必要 継続管理のさらなる評価を求める/厚労省要請

2.次期改定「基本方針」の議論開始/社保審医療部会

3.コロナ禍にあっても頼りになる協会を目指して

4.歯科会員アンケート結果

5.ニュースビュー

6.「探針」

2面】

7.改定に向け歯科の議論が始まる 2022年度診療報酬改定/中医協総会

8.金パラ原価割れ 要請署名にご協力を

9.9月から磁性アタッチメントを用いた義歯が保険収載

10.社会保障費抑制方針は「骨太2018」を踏襲 2022年度予算概算要求基準が閣議決定/社保審

11.学校保健統計調査 12歳児むし歯本数0.68本に

3面】

12.新型コロナウイルス感染症 受診抑制で症状悪化が顕著/歯科会員アンケート

13.連載 歯科医療情報観測「歯科情報の利活用および標準化とは何か⑤完」

14.歯科情報をお知らせします/facebook

4面】

15.休憩時間の意義と付与そして留意点/経営・税務相談Q&A No.385

16.導入には慎重な検討を 10月からオンライン資格確認

17.徹底した新型コロナ感染対策で安心・安全に開催 TBI&PMTC・デブライドメントで講習/第1回スタッフ講習会

18.無料相談

5面】

19.研究会・行事案内、電子書籍デンタルブック

67面】

20.インタビュー 小説家 医師 南杏子さん 「患者さんの残された力で最期まで生きることを支える~終末期医療を通じ 改めて命とその尊厳を問う」

8面】

21.会員の声を直接届ける/教えて!会長!!Vol.50

22.支援補助金の迅速な交付を 厚労省に要望書を提出

23.理事会だより

24.協会活動日誌

25.秋の共済キャンペーンが始まりました!/共済制度

9面】

26.症例研究/CAD/CAM冠について(歯科用金属アレルギーのない患者の場合)

10面】

27.連載 私の目に映る歯科医療界⑥  歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在

28.コロナ禍の経営めぐり体験談交え懇談/会員WEB懇談会

11面】

29.福岡県歯科保険医協会 市民公開講演(WEB)のご案内 /武州(九州大学歯学部教授)

30.東京保険医協会 コロナウイルスとイベルメクチン/花木秀明(北里大学教授)

31.歯科医療費が高いほど健康寿命を延ばす 京都大学発表

32.開業医の実態・意識基礎調査のご案内

33.保険でより良い歯科医療を/秋の署名活動

34.人類と地球の未来のために/原水禁2021世界大会

35.サンリオピューロランド/会員優待

 【12面】

36.神田川界隈科学的介護システムの危険性

37.美術文化 亡き父が愛用していた大島紬に新たな命吹き込む

38.通信員便りNo.113

39.未入会の先生をご紹介ください/未入会キャンペーン

 

第3回メディア懇談会を開催 ワクチン接種研修や政府補助金などを巡り議論

第3回メディア懇談会を開催/ワクチン接種研修や政府補助金などを巡り議論

協会は9月10日、第3回メディア懇談会を開催した。今回もコロナ禍に配慮し、WEB開催とした。加藤開副会長が説明にあたり、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務めた。

今回の議題は、①「新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射実技研修報告」、②「東京歯科保険医協会 歯科会員アンケート」、③「次期改定に向けて、金パラ『逆ザヤ』の抜本的な解消を求める署名」、④「診療報酬に関する厚労省要請(7月28日)」、⑤「新型コロナウイルス感染防止に関する補助金 厚労大臣要請(8月4日)」、⑥「2022年度東京都予算に関する東京都福祉健康局との意見交換および都議会各党とのヒアリング」―などとした。

①については、参加者から「研修では具体的に何を実施したのか」や「ワクチンの副反応には打ち方や接種箇所に問題があるのか」などの質問が矢継ぎ早に飛んだ。これに対し、研修の様子とともに、注射角度や部位を誤ると副反応に繋がることを解説。「正しく三角筋に打つことで、偶発的な事故を防ぐことができる」と説明した。

また、②および⑤では、会員アンケートの回答をもとに、ひっ迫する歯科診療所の経営状況を報告。感染防止対策の経費や受診控えにより経営が圧迫される上、第3次補正予算案では、厚労省が一括窓口となったため、手続きが混乱している現状を指摘した。参加者からも疑問の声が上がり、議論が交わされた。

 

写真左は加藤開副会長、右は早坂美都理事

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か⑤/完

 前回までは、各診療所、病院における口腔内データをCSV形式で入力し、HL7形式に変換して蓄積させていくことを述べた。
 学校健診のデータ収集については、児童、生徒の移動といった特有の事情もあり、うまくいかなかった点もあった。また、手書きであった健診も、電子ペンを導入して健診票を電子化することが始まっている。これにより、紙に書かれている情報のばらつき、表記の揺れが少なくなり、データとしての制度が高まる。
 歯科診療記録、健診データを検索閲覧できる仮想環境は、クラウド上に既に作られているので、将来的に各地で展開することが可能な段階になってきている。蓄積されたデータを利活用するためには、データの検索方法、アクセスの権限や管理をどのようにするかが大きな課題となってくる。
 身元確認を主な目的として始まったこの流れであるが、データが集積された暁には、悉皆的口腔情報がリアルタイムで参照可能となり、集計作業のオートメーション化につながり、常に最新の情報にアップデートされていくことになる。この段階になると歯科診療情報データを、治療応報、材料ごとの臨床効果の測定、既存の医療ビックデータとの突合により、医科情報などと歯科情報を組み合わせた分析などへの利活用が可能となる。
 また、HL7FHIRへ応用することにより、医療界だけではなく他職種でもデータを使うことが可能になってくる。つまり、上記図のような流れが現実的になってくるだろう。
 情報の利活用は、良い面もあれば、解決しなければならない側面もある。企業などが利益のために情報を活用することは、これまでも度々起きてきた。機微な個人情報が、本人の知らない間に活用されることは、慎重に検討すべき課題である。これらの面を後回しにしたり、見ぬふりをするようなことがあってはならないと考える。利活用に関しては、良い面とともにこれらの課題に真摯に向き合いながら進めることが大事であろう。

 初回より、これまでの記事のまとめであるが、①令和3年3月29日、厚労省による「歯科情報標準化」決定。ここに至るまでの考え方、昔と今の歯科治療について、②東日本大震災をきっかけにして、身元確認には歯科が大切なことが認識された。東北大学によりプログラムが提供されたが、個々のデータに互換性がなく、苦労された話、③身元確認だけではない情報集計により、乳幼児健診から成人健診、介護までデータを蓄積することが目標である。しかし学校健診では、小学校から中学校まで6年間同じフォーマットであるが、途中で転校などがあり、途絶えてしまってうまくいかない、④標準化する際に、大切なことは個々人の最終的な(最新の)口腔状態を一元化したコードで表記できれば便利。標準化コードを用いてCSV形式で個々のクリニックがデータをつくり、それをHL7形式に変換する、これによって医科との連携ができるようになる、⑤最終的には、個人データをHL7FEIR形式にしてクラウドに保存すると、医療機関だけではなく、他職種も使える。しかし、それには法改正も必要なので、今後を注視していく必要がある。

 現在、厚労省で行われている「歯科情報標準化」についての背景と経緯について、5回にわたって述べてまいりました。今のところ、標準コードができた段階となっており、まだ実用化には時間がかかると思われます。今後、コンピューターの仕様書に「口腔診査情報標準コードに準拠したデータの入出力ができること」この文言が必要になってくるかも知れません。

 最後までお読みくださり、ありがとうございました。(了)

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年9月号3面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑥歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在/歯科報酬改革含め官民共同での対応急務

歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在/歯科報酬改革含め官民共同での対応急務

8020運動」の成果もあって、日本の高齢者、8084歳の平均残存歯数は15本強になっている。20本以上の歯が残るスウェーデン級にはまだ届かないものの、格段に改善が見られる。

Ⅰ.歯周病は全年齢で悪化が続く国民病

ただ、もう一つの歯の国民病、歯周病のほうはまだ成果は見えない。厚生労働省の「歯科疾患実態調査」では、歯周病の指標となる4mm以上の歯周ポケットのある人の割合は3539歳でも40%、85歳以上になると実に70%(対象となる歯がない人を除く)に達するなど、年齢が上がるごとにその割合も上昇している。時系列的にも日本人の歯周病の数値は、前回調査の2011年に比べて2016年には、5歳階層ごとのほぼ全年齢層で悪化傾向にある。

口腔内にいる様々な細菌が引き起こす疾患が歯周病だ。これが口内炎症をもたらし、その結果発生する炎症性物質が血管を通じて全身をかけ巡り、実に多様で厄介な疾患の直接・間接の原因になりうることが、近年の医科・歯科双方の研究成果で明らかになりつつある。

前回の連載記事でも触れたが、米国で新薬承認が出て話題のアルツハイマー病などの認知症もそうだし、心臓疾患(狭心症・心筋梗塞など)、糖尿病、脳梗塞、誤嚥性肺炎などにも、歯周病は何らかの形で関与している可能性が指摘されている。その意味でも、歯周病の予防・治癒は、ただ単に歯の健康をもたらすだけでなく、健康全般につながる国民的な重大事だ。

Ⅱ.歯周病など満たされぬ歯科の高齢者需要は膨大

歯科診療にかかる日本の医療費は65歳~69歳、7074歳、75歳以上で増加している(「国民医療費」、総務省統計局「人口推計」参照)。これは、高齢化の進展が続き、この年齢層の人口がまだ増えているためだ。歯科診療所の経営も、この高齢層への依存は大きい。

高齢者の歯科ニーズは大きい。要介護高齢者の約七割が何らかの歯科治療を必要とし、そのうち早急な対応が必要と判断された人の割合も12%あったとする日本老年歯科医学会の調査研究報告がある。義歯治療ニーズが約55%と最も多いが、歯周病治療でも32%が必要とされていた。

問題はこのニーズがどれだけ満たされているかだ。この調査ではこの点が不明だが、これを埋める別のデータがある。要介護高齢者(調査対象は290人、平均年齢86.9±6.6歳)だ。この調査では歯科治療の必要性がある人の割合は64.3%だったが、実際に歯科治療を受けた人は、たった2.4%しかいなかった(2019年の日本歯科医学会の研究)。歯科では高齢者の膨大なアンメットニーズが放置されたままになっている。

厚生労働省の「患者調査」データによれば、歯周病では7074歳で歯科外来受診率はピークを迎えその後は落ちていく。高齢者施設に入るなど自力での通院が難しくなっているのかもしれないが、75歳以上の高齢者の潜在ニーズが落ちているわけではない。

それは同じ「患者調査」で、6574歳と並び、75歳以上の慢性歯周炎の推定患者数が2017年時点で、1996年比で急増していることからも強く推測できる。

Ⅲ.歯科が潜在ニーズに応えきれない原因とは何か

そこで疑問。なぜこれだけの潜在ニーズがあるのにも関わらず、歯科市場の成長は鈍いのか。

答えは単純。ニーズに応え切れていないからだ。その原因の一つは、歯科医師などの側の努力不足がある。通院できなくなった自宅住まい、高齢者施設居住、病院で治療中の高齢者ニーズをすくい取れるような歯科訪問診療のあり方の研究と実践、フィードバック。自治体、医科の病院・診療所、介護施設やそこに従事する多種多様な職種の医療・福祉介護従事者との連携(俗にいう「医科歯科連携」はその一つ)を深めた上で、ニーズを掘り起こすこと。外来に比べ手間や効率が下がることをカバーする工夫などが、まだ足りないと思われる。

従来にない知恵を絞り出せるかが、今民間にも問われているわけだ。個別の歯科医師・経営者や歯科診療所で解決できない部分は、業界全体でカバーする手立てがあるのかを、早急に検討する必要もあるだろう。

もう一つ、歯科の大きな潜在ニーズを阻害するものがある。厚生労働省など政府による歯科分野での顕著な低医療費政策だ。先進国に比べ低く抑えられた保険診療単価は、多数の患者獲得でカバーせざるを得ない形で日本の歯科保健診療・経営をゆがめている。一気に解決することは難しくとも、諸外国との比較も交えた本来あるべき価値ベースの技術料・診療単価のアップに厚労省が頭を切り替えないと、肝心要の歯周病など国民の健康全般の予防・治療にも関わる重大課題の成果が上がらず、台無しになりかねない。中医協などの協議の場でも、歯科は医科とタッグを組んでも論理的に主張していく必要がある。

先の国会で承認された75歳以上の患者負担引き上げは、一定以上の所得者に限定はしたが、今でも満たせぬニーズを高齢者にさらに諦めさせる危険があり、現役世代の将来にも影を落とす。これでどうやって矛盾なく歯周病などでの歯科診療拡大の実を上げうるのか、政策当局だけでなく、国民に対しても問題提起し、徹底的に論戦することが、ここでも必須といえよう。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

2021年(令和3年)91No.61810面掲載

インタビュー 南杏子 氏(医師 小説家)

2021.09.01(6~7)南杏子さん(医師 小説家 著書「いのちの停車場」)

過去のインタビューはこちら

 

映画「いのちの停車場」 

出演:吉永小百合

松坂桃李  広瀬すず /石田ゆり子 田中泯 西田敏行 他

監督:成島出
脚本:平松恵美子
原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎文庫)

映画公開日:5月21日(金) 絶賛公開中
公式HPhttps://teisha-ba.jp/

©️2021「いのちの停車場」製作委員会


〈ストーリー〉
東京の救命救急センターで働いていた咲和子は、ある事件をきっかけに、故郷の金沢で「まほろば診療所」の在宅医師として再出発をする。様々な事情から在宅医療を選んだ患者と出会い、戸惑いながらも、まほろばのメンバーと共にいのちの一瞬の輝きに寄り添っていく。その時、最愛の父が倒れてしまい…。

 

 

歯科会員アンケート集計結果について

協会では新型コロナ感染症拡大による医院経営への影響を把握するため、「歯科会員アンケート」を実施しました。

たくさんの会員の先生方にご協力をいただき、ありがとうございました。

今回の調査では現在の経営状況、今後の経営の見通し、歯科医業経営を改善するために先生ご自身が望む方策などについて調査しています。

実施期間は2021年5月18日~2021年5月31日まで。

調査対象はデンタルブック登録会員とFAX登録のある会員で、FAX送信件数は1536件、メール会員約3200名へはメールニュースでアンケートの案内をしました。

歯科会員アンケートの集計結果については下記リンクよりご確認ください。

 

歯科会員アンケート集計結果

こちらをクリックしてください↑

 

また、11月に全国保険医団体連合会が集計した全国のアンケート結果が出るため、結果がわかり次第、全国の結果もお知らせしていきます。

 

アンケート結果にもある通り、多くの先生方が

「金パラの逆ザヤ解消」

を求めています。

協会では金パラの逆ザヤ解消のために署名を行っていますので、ご協力お願いいたします。

署名用紙が必要な方は、個別にFAXいたしますので「金パラ署名希望」と記載したうえで、①会員の氏名、②医療機関名、③電話番号、④FAX番号を記入の上、FAX03-3209-9918迄お申し込みください。

署名はWEBフォームでも受け付けております。

「金パラ逆ザヤ解消のための署名」

こちらをクリックしてください↑

 

金パラ原価割れ 改善を求める署名にご協力を

 金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格が高騰を続け、保険償還価格を上回る原価割れが続いています。全国保険団体連合会(保団連)の調査によれば、今年4~6月の30g当たりの金パラの購入価格は平均98,481円(税込)で、現時点での30gあたりの保険償還価格80,040円に対してマイナス18,441円の大きな原価割れとなっています。今年10月には随時改定が実施されて価格が引き上げられますが、1g2,951円(30g当たり88,530円)に留まり、実態には見合わない状況です。

 そのため、協会では、保団連とともに、全国の歯科会員約4万2千名に署名への協力を依頼し、厚生労働省へ提出することとしました。署名を頂ける方は、下記リンクよりご協力をお願いいたします。

*9月28日(火)署名を再開しました。まだされていない方は、下記をクリックしてください*

〇署名にご協力を頂ける方は、コチラをクリックしてください〇

 

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)8月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞 2021年(令和3年)8月1日 第617号

1面】

1.懇切・丁寧に手技を実習/新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射実技研修

2.1日当たり757.6点/2020年社会医療行為別統計

3.ニュースビュー

4.「探針」

2面】

5.価格改定の仕組みを議論/中医協総会

6.随時改定Ⅰ 金銀パラジウム合金引き上げへ

7.「東京歯科保険医新聞」 をホームページに公開

8.9月分から、枝番の記録もれにご注意ください/健康保険被保険者証

9.未入会の先生をご紹介ください

3面】

10.歯科情報の利活用および標準化とは何か④/連載 歯科医療情報観察

11.従業員を募集・雇用する際の注意点について/経営・税務相談 Q&A(No.384)

12.法律相談、経営&税務相談

4面】

13.暑中御見舞い名刺広告

5面】

14.研究会・行事案内

67面】

15.インタビュー 国際自然・森林医学会会長 医師 今井通子さん 「洞察力、観察力から出てきた想像力が大切」

8面】

16.期中収載される磁性アタッチメント/教えて!会長!!No.49

17.周術期 口腔機能管理が重要/第1回学術研究会

18.共済部だより

19.歯科医師6名に行政処分を答申/医道審

20.秋の共済募集キャンペーン予約受付中

9面】

21.症例研究/歯周治療用装置

10面】

22.私の目に映る歯科医療界⑤ アルツハイマー病新薬で巨額出費必至/東洋経済新報社 大西富士男氏

23.理事会だより

11面】

24.75歳以上2割化法 廃止に向けて/第2回保団連代議員会

25.全会一致 子どもへの歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願

26.衆議院選挙に向けて 医療保険制度改革を振り返る

27.第1回か強診等の講習会開催

28.安全な筋肉内注射について解説/医科歯科連携研究会2021

29.協会活動日誌2021年7月

 【12面】

30.神田川界隈「神田川その流れに」川戸二三江副会長

31.政策委員長談話や金パラ問題に注目/第2回メディア懇談会を開催

32.12歳以上小児ワクチン接種/日本小児科学会

33.通信員便りNo.112

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か④

 標準化対象を整理するには、キーワードが必要になる。それが「口腔内スナップショット」であることまでは、前号で述べた。初期は、口腔状態を災害時想定してマークシートを用いて入力し、電子データにすることより始まった。これは、東北大学で開発された「Dental Finder」を基礎にしている。それと同時に、診療所から共通形式でデータが出せるようにコード設定が開始された。各診療所において共通形式(CSV形式)で検索できるようにしていく。さらにCSV形式をHL7形式に変換して、地域医療ネットワークを設けることができるよう、プログラムも作成された。
 次に、乳幼児・学校健診、節目・高齢者健診といった診療所以外のデータを抜き出し、地域医療ネットワークで使用できないかということが提案された。
 これら歯科情報の標準化については、2013年度から実証実験が行われており、課題解決に向けた取り組みが進められている。
 具体的なモデル事業が、行われることとなった。既に実証実験が済んだ取り組みについて簡単に説明をしたい。

——医療機関でのデータについて
 医療機関内のレセコンのデータを、医療機関ごとに「口腔診査情報標準コード仕様」に基づきCSVデータとして出力する。口腔内の状態を変換できた・できない、の確認を行い具体的な改善を行う。医療機関では倫理審査委員会での申請や患者への説明、オプトアウトについて患者確認などを行う。その後、データを地域医療ネットワーク等へ移動する。可能であればデータ出力した患者さんの口腔状態の画面をコピー出力してもらう。仮想環境である地域医療ネットワーク等にデータをアップすることによって、身元確認等への活用が可能となる。
 既に実施された実証実験では、最終的にモデル大学内に構築されたネットワークの仮想環境内へのデータアップまでは技術的に可能であることが確認されている。

——乳幼児・学校、節目 健診のデータについて
 節目健診の結果もCSV形式で地域医療ネットワークにアップロードした。モデル事業では、紙で集計されたものをOCR処理をし、エクセルファイルで出力した。このエクセルファイルをデータ分析機関にて集計、分析後さらにCSVに変換して出力したものを、地域医療ネットワークにアップロードした。
※OCR処理(光学的文字認識)とは、手書きや印刷された文字を、イメージスキャナやデジタルカメラによって読み取り、コンピュータが利用できるデジタル文字コードに変換すること。

 ここで、うまくデータ化できなかった事例として、学校健診があげられる。健診記号を集計し、結果をテキストファイルにしてCSV形式にすれば良いのだが、学校健診ならではの欠点があった。モデル事業を行った学校健診の用紙は、小中学校九年分の口腔状態を記載するフォーマットになっていた。
 途中、転校や学区外の中学に進学したときなど、児童生徒たちをその都度追えないということが、現地の教諭から声があがった。各地に移動してしまった児童生徒たちのデータを、誰がクラウドにあげることを承諾するのか、という問題が生じるのである。
 この部分は、これからの課題として残ってしまっている。
 次回は、今後の事業計画について述べていきたい。

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年8月号3面掲載)