2022.03.01 (6-7)正林督章氏(前厚生労働省健康局長)
#コロナ #ダイヤモンドプリンセス号 #公衆衛生 #水際対策 #厚生労働省
新点数説明会の会員向け予約サイトの受付を開始いたしました。
2022年度診療報酬改定では、「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」や「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の見直しなどが検討されています。また、CAD/CAMインレーなどの保険収載も予定されています。
協会では、適切な情報提供を行うべく説明会を開催します。今回は感染対策を目的に「動画配信」も行います。なお、会場席もご用意しています(完全予約制)。
日本教育会館・一ツ橋ホール(住所 千代田区一ツ橋2-6-2)
①ライブ配信:3,000名
②会場:350名(会員証1枚で1名に限ります。)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
なかのZERO大ホール(住所 中野区中野2-9-7)
会場:600名(ライブ配信なし)
お申込みはこちらの「歯科診療報酬改定 2022年特設ページ」内にある申込フォームより行ってください。
政府は昨年6月、年収200万円以上である75歳以上の患者の窓口負担を1割から2割に引き上げる法律を成立させました。これにより、今年10月から条件に該当する75歳以上の患者の負担額が2倍となり、受診抑制による疾病の重症化や医療機関の経営への影響が懸念されます。
そこで協会では、全国の保険医協会の医師・歯科医師とともに、「75歳以上の医療費窓口負担2割化」中止を求める署名に取り組むことにしました。ぜひご協力をお願いいたします。
協会は、今後も会員の先生方の経営・生活と権利を守り、国民の歯科医療と健康の充実向上のために尽力していきます。引き続き、ご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
署名のご注文は下記の「お問い合わせ」より、以下①~④の項目を入力のうえ、送信ください。
①氏名、②送付先住所、③連絡先、④署名の必要部数
文部科学省は、2021年度の大学医学部(医学科)入学者選抜における合格率を発表。女性が13.60%、男性が13.51%で、データが残る13年度以降で初めて女性の合格率が男性を上回った。調査対象は、医学部医学科を有する全国81校の国公私立大学。合格率が女性の方が高かったのは、北海道大学、名古屋大学、広島大学、長崎大学など42校で対象校の半数を超えた。
18年に女性の受験生に対する入試差別が発覚した後、文科省は20年12月に医学部の男女別合格率を毎年調査することを決定。19年度は男性12.11%、女性11.37%、20年度は男性12.56%、女性11.42%と推移していた。
間もなく迎える3月11日、東日本大震災からは11年の時が経とうとしている。依然として復興への道のりは長く、全国の避難者数は3・9万人(復興庁発表、1月28日現在)にのぼり、福島第一原子力発電所の廃炉作業、避難指示が解除された地域への住民の回帰など、課題は山積している。
昨年3月末、住民税課税世帯に対する医療費免除制度の期限を迎えた。非課税世帯についても同年12月までで制度が終了した。延長されていた国民健康保険や後期高齢者医療保険、協会けんぽ他の加入者のうち、原発事故により現に帰還困難区域に指定されている人などを対象とする免除措置についても、今年2月28日までとしている。
被災者の生活再建にあたり、経済的負担を軽減させること、十分な医療を受けられる環境を整えることは、決して疎かであってはならない。
中央社会保険医療協議会(中医協)総会は2月9日、2022年度診療報酬改定案について、厚生労働副大臣に答申を行った。改定案の中身を見て多くの保険医は、肩を落とした。
コロナ禍でリスクの高い場所だと敬遠され、赤字収支となった企業はたくさんあり歯科医院も例外ではない。多くの歯科医療機関の収入の中心は保険診療である。保険診療は算定ルールが定められているため、個人の努力では打開策や診療体制の充実も図れない。2年に1度の診療報酬改定だけが是正のチャンスであり、コロナの影響をはねのけるような改定を期待していた。
先般、厚労省に寄せられたパブリックコメント数では、歯科医師からの意見が49.4%と半数を占めた。これをみても保険医の診療報酬に対する不満の大きさが現れている。しかし、改定率がプラス0.29%に留まり前回(プラス0.59%)の約半分となっていることも影響しているが、改定内容に対する工夫が乏しすぎる。
新興感染症に対する対策の研修を行った歯科医療機関に対して初・再診料にプラス3点となったが、歯周基本治療処置10点が廃止になったためトータルでは実質減点となる。 また、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所におけるSPT算定時の加算がプラス120点しかなく大幅なダウンとなる。これでは、施設基準を辞退する歯科医療機関が増える恐れもある。 口腔機能管理の対象範囲の拡大を行ったが、一番必要だと思われる対象年齢での算定率をみても、増える気配は全く感じられない。外来でのフレイル予防が進まなければ、施設や在宅での口腔機能低下は悪化の一途を辿るであろう。口腔機能管理料は、対象年齢の範囲を広げることで推進を図るのではなく、管理料を算定しやすくするべきではないだろうか。
そして、総合医療管理加算に至っては、HIV感染症の患者さんだけを対象患者に追加したが、もっと総合的医療管理が必要な患者はたくさんいる。総合医療管理加算の対象疾患を患者・国民のため、HIV感染症だけでなく広く認めるべきで、この項目が医科歯科連携の突破口のはずなのに周術期の口腔管理とともに算定率は伸び悩むであろう。 ただ、財源が少ない中、根管治療等の基礎的技術料に僅かながら加点して戴いたことは評価したい。
2025年には4人に1人が75歳以上となり、在宅医療のニーズが大幅に上昇するだろうと言われ、その備えとなる地域包括ケアの確立は急務だ。しかし、在宅訪問診療や医科歯科連携の推進も今次改定の内容では期待できない。中医協のメンバーや厚労省の担当者は、もっと現場に降りてきて保険医の苦悩を見てほしい。歯科診療現場の実態、臨床の場に立つ保険医の声に合致した診療報酬にするため、机上の空論ではなく実態に即したより一層の創意工夫を熱望する。
2022年2月25日
東京歯科保険医協会
政策委員長 松島良次
Ⅰ.2025年問題直前の圧力増は必至2024年度改定対策は今から開始を
今回の改定は、真水のマイナス改定にはならなったものの、財務省は究極の目標に向け前進した。その一方で、医療機関側は一歩後退したといえる。
今回の結果は、日本医師会の横倉義武前会長時代における本体改定率の平均値0.42%を意識した「岸田文雄首相の高度な政治的落としどころ」という、うがった見方があるが、どうであろうか。
厚生労働省の理論武装力、中川俊男現会長下の日医や厚労族議員の政治力が物を言ったという声は聞かない。推測の域を越えるものではないが、自民党にとっては、今夏に控えている参議院選挙での医療機関側からの協力への期待が、今回の決着の背後にあるというのが、意外に真実なのかもしれない。
自民党が参議院選を乗り切れば、2025年秋の任期満了に伴う衆議院選挙まで選挙なしとなれば、2年後の2024年に予定される次期診療報酬改定がどうなるのか。おり悪く、団塊世代の後期高齢者入り完了が25年に控えており、さらに厳しい環境が待ち構えていることは確実である。
財務省の圧力が増すのも必至。果たして、本体真水を死守できるか。そのための準備を早める必要があることは、言うまでもない。
◆医療機関経営の窮状を国民に伝える活動を
しかし、医療機関経営の厳しさが国民に伝わっているとは言えない。まして、それが国民の生命・健康に直結する良質な医療サービス提供にどう影響するのかについては、肌感覚でさえ理解していないのが実際であろう。
であれば、これを知らしめる有効な活動を展開することが、今まで以上に大事になってくるはずだ。
Ⅱ.事務局案では素材高騰時でも公定価格は僅少な上昇どまりに
中医協で歯科医療界固有の重要懸案事項である歯科材料・金銀パラジウム合金(金パラ)、いわゆる「銀歯」の公定価格改定ルールを巡り、昨年12月22日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、事務局(厚労省保険局医療課)から提案があった。
年4回の随時改定時について、①公定価格改定をするかどうかの基準となる価格変動幅、②改定の基になる平均素材価格をいつの時点までの数値を使うかの2点に絞り込んで、事務局が実際の公定価格に関する5パターンの試算数値を1月12日の中医協総会の際、各委員に示し、協議・検討が行われた。
このうち、まず、変動幅⑴では、Ⓐ現状の5%(4月、10月の随時改定Ⅰ)、15%(7月、1月の随時改定Ⅱ)、Ⓑ一律5%、Ⓒ一律0%(平均素材価格が動けばそれを年4回改定時に公定価格に反映させる)の3通りの考え方が提示された。
次に、反映させる価格時点⑵では、Ⓐ現状の3カ月前までの過去3カ月平均価格、Ⓑ2カ月前までの3カ月平均価格―の2通りの考え方が提示された。
2カ月前までの素材の3カ月平均価格を基に、変動幅0%で公定価格を年4回見直すことが中医協での大きな流れの方向のようだ。
ただ、下記グラフを見ていただきたいのだが、令和2(2020)年度からの2年間の例でいえば、歯科診療所がもらえる総額は、一番多くなる2カ月前までの価格を基に、一律0%基準で年4回公定価格算出パターンでも試算値で6万4245円。現状公定価格(の総額6万2649円の2.5%増に過ぎない。
Ⅲ.抜本改革に向け粘り強く公的議論継続を要求すべし
変えないよりはまし、一歩前進という見方もあるだろうが、パラジウムなどの価格急騰期の「逆ザヤ」に苦しんだ歯科医師の現場感覚からは、これでは問題が抜本的に解消するという実感は持てないのではないか。
今後、直近2年間と同じ貴金属の高騰が起き(起きない保証はない)、事務局提案に基づいた方向でルール改正が行われた場合(この可能性が高いようだ)、現状比2%台半ばの改善しか手にできないのである。
議論の出発点であった制度設計の抜本的再構築から議論は大きく逸れ、後退してきたのが実情だろう。年4回に限定されてきた随時改定の頻度は、結局、現状通りに戻ってしまった。公定価格に反映させる価格時期についても、直近3カ月前までから2カ月前までに1カ月だけ近づけただけだ。
それまでの3カ月間の素材平均価格と、その前3カ月間の平均価格の差額を公定価格の変動幅にする現状の方式を温存したままでは、急激な価格変動を迅速に公的価格に反映させることは不可能だ。抜本的な制度改革を放棄したのも同然だ。
1カ月前の素材の実勢価格を基に公定価格を毎月見直すのが、一番理想的な解決策だろう。それができないというのならば、厚労省はその理由を開示する義務がある。
歯科医師を代表する各団体は、抜本的な解決に向けて、今後も継続して議論する公的な場の設置を要求し続けるべきだろう。
東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男
「東京歯科保険医新聞」2022年2月1日号10面掲載
2022年度診療報酬改定では、「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」や「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の見直しなどが検討されています。また、CAD/CAMインレーなどの保険収載も予定されています。協会では、適切な情報提供を行うべく説明会を開催します。今回は感染対策を目的に「動画配信」します。なお、会場席もご用意します(完全予約制)。
*ライブ配信を行います。なお、3月28日(月)頃から動画配信(オンデマンド配信)も行います。
*第1回と内容は同じであるため、動画配信(オンデマンド配信)は行いません。
*4月25日(月)頃から動画配信(オンデマンド配信)を行います。
*5月2日(月)頃から動画配信(オンデマンド配信)を行います。
ライブ配信・会場参加のWEB予約は、3月1日(火)頃に東京歯科保険医協会ホームページ内「歯科診療報酬 2022年改定特設ページ」でご案内いたします。
協会は1月14日、第5回(通算87回)メディア懇談会をオンラインにて開催し、メディア各社と意見を交換しました。
その際に、厚生労働省が公表(2021年11月)した第23回医療経済実態調査について、調査対象となった医療機関(サンプル数)が少ないという点等の問題を提起し、改定の基礎的な資料として用いられることについて、妥当性を欠くのではないかとして考えを述べ、「CareNet(ケアネット)」内のコラムに取り上げられました。
詳細な内容につきましては、「CareNet(ケアネット)」よりご覧いただけます。ご覧になりたい方は以下よりアクセスください。
1月26日の中央社会保険医療協議会で、次期改定の個別改定項目が提案された。新型コロナウイルスの感染拡大から、院内感染防止対策を評価した「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」(歯初診)の研修項目が追加され、医療機関に1年の猶予期間を設け、対応を求める。在宅療養支援歯科診療所(歯援診)では、施設基準にある訪問診療の実績要件を変更する。
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)では、施設基準にある歯周病安定期治療の実績要件に歯周病重症化予防治療を加えることを可能とし、連携体制の要件の選択肢が増えて、施設で行われる定期的な歯科健診への協力が追加される。また、歯周病安定期治療(Ⅱ)が、現状の歯周病安定期治療(Ⅰ)の加算と毎月算定できる要件に加わる形で統合される。
―初期根面う蝕のフッ素塗布が外来でも可能に
初期の根面う蝕に対するフッ化物歯面塗布処置が、一定以上の年齢であれば、外来患者でも算定できるようになる。
また、施設基準を満たせない医療機関でも、糖尿病や血液凝固阻止剤投与中などの患者の主治医から情報提供を受けて管理を行った場合、歯科疾患管理料に総合医療管理加算が加算できるようになる。新しい技術として、CAD/CAMインレー、口腔細菌定量検査および歯科部分パノラマ断層撮影が保険導入される。メタルコア加算および歯周基本治療処置(P基処10点)は廃止される。
―医療技術評価提案
なお、1月19日の中央社会保険医療協議会で、学会からの提案書などに基づき次期改定で評価すべき医療技術が議論された。歯科では、CAD/CAMインレー修復、NiTiロータリーファイルによる根管形成加算、チタンおよびチタン合金による前歯部レジン前装金属冠など17技術が「優先度が高い技術」となった。
一方、代替材料である「金属アレルギー患者へのジルコニアによる前歯部CAD/CAMブリッジ」「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)による大臼歯歯冠修復物」は保険収載が見送られた。
診療報酬改定、医療経済実態調査など議題に
協会は1月14日、第5回(通算87回)メディア懇談会をWEB開催。山本鐵雄副会長が説明、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務め、メディア各社が参加した。今回は①中医協関係、②談話、③要請、④医療経済実態調査、⑤次期診療報酬改定率などを中心に意見交換した。
感染症対策…歯科診療所の窮状訴え
歯科用貴金属材料の提起では、歯科診療所にとって望ましい随時改定の在り方について懇談。逆ザヤ解消に向けた方策に関し、現場の声を届けた。
診療報酬のプラス改定に向けた談話についての話題では、歯科診療所における経営のひっ迫状況に関して、現場の声を交えながら言及。スタンダードプリコーション(標準予防策)の考えに基づく綿密な感染症対策を行っているため、マスクやグローブ、アルコールなどの備品費がかさむ傾向にあること、行政からの補助金等ではまかないきれていない現状を共有した。
また、厚生労働省が公表した第23回医療経済実態調査のテーマでは、調査対象となった医療機関(サンプル数)が少ないという論点で問題を提起。メディア側からは、「調査対象として個人経営の診療所を増やしていくべき」という意見があがり、調査方法の在り方を議論した。
1月21日に、次期改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)の公聴会がオンラインで開催され、12名の意見発表者がそれぞれ意見を出した。歯科に関しては、大杉和司氏(大杉歯科医院理事長、三重県)が意見発表を行い、❶感染防止対策の評価が不十分でなく初・再診料で恒久的に評価すべき、❷麻酔を算定できないことが多く明細書に記載もないため分かりやすく見直すべき、❸かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所や在宅療養支援診療所の訪問診療の実績の要件は応需体制の要件に留めるべき、❹周術期口腔機能管理の連携は伸び悩んでおり、取り組みやすい制度作りが必要、❺金パラは依然として赤字になる現状があり早い解決を求めたい、などの考えを述べた。
中医協委員からは、「医科歯科連携の実例を教えてほしい」などの声があり、大杉氏は地域の歯科医師会と医師会の取り組みなどを紹介した上で、地域での取り組みだけでは不十分であり厚生労働省も働きかけをしてほしいと述べた。
そのほか、秋山実氏(日本航空健康保険組合理事長)、松井道宣氏(京都九条病院理事長)、宿野部武志氏(一般社団法人ピーペック代表理事)、黒瀬巌氏(ケイアイクリニック理事長)、森嶋和宏氏(三重県名張市役所福祉子ども部長)、小林弘祐氏(内科系学会社会保険連合理事長)、田中達也氏(メイトク株式会社代表取締役)、小林妙氏(JAM総務グループ長)、青木浩朗氏(保険調剤薬局つつみ薬剤師)、兒玉和歌子氏(不妊・不育治療の環境改善を目指す当事者の会)、山田佐登美氏(川崎医科大学総合医療センター看護部長付参与)が意見を発した。
医療技術評価提案 評価対象 17項目
1月19日の中央社会保険医療協議会で、学会からの提案書などに基づき、次期改定で評価すべき医療技術が決まった。評価対象となったのは、CAD/CAMインレー修復、チタンおよびチタン合金による前歯部レジン前装金属冠、NiTiロータリーファイルによる根管形成加算、歯科用3次元エックス線断層撮影の撮影要件に根管形態の明記、歯科部分パノラマ断層撮影、口腔バイオフィルム検査、口腔不潔度測定、歯科充填用材料Ⅲの廃止および歯周ポケット掻爬などの17項目となった。
学会の提案書によると、「CAD/CAMインレー修復」は、歯冠形成後に従来通り連合印象採得及び咬合採得を行い、歯科技工所でCAD/CAM装置にてインレー体を製作して歯科用合着用レジンセメントを用いて窩洞内に装着するなどとしている。
また、使用するハイブリッドレジンブロックは現状使用しているものと同様のものが使用できると記載している。「チタンおよびチタン合金による前歯部レジン前装金属冠」は、歯科用金属アレルギーかつチタンアレルギーではない患者で前歯部CAD/CAM冠が適応できない者を対象に、前歯部のレジン前装冠へ対象拡大するものなどとされている。
「NiTiロータリーファイルによる根管形成加算」は、抜髄あるいは感染根管処置の加療が必要な患者に対して、NiTiロータリーファイルならびに専用治療用モーターを使用して根管拡大ならびに根管形成を行うものを評価するものとなっている。
「歯科用3次元エックス線断層撮影の撮影要件に根管形態の明記」は、歯科用CTの算定要件に歯髄炎での要件が明記されていないことの改善を求めるもので、算定要件に「歯髄炎、根尖性歯周炎等、大臼歯等の根管形態」を明記する内容となっている。「歯科部分パノラマ断層撮影」は、腫脹や疼痛の症状が局所にあり、嘔吐反射のため口内法エックス線撮影が困難である患者および飛沫や唾液による感染リスクが高い患者または疑われる患者において、片側または両側臼歯部あるいは前歯部の局所部分へのパノラマ断層撮影を評価するものとなっている。
「口腔バイオフィルム検査」は、身体的要因、精神的障害等などにより口腔衛生管理ができない患者を対象に、簡易検査(TCI:舌苔付着度検査)あるいは精密検査(細菌カウンタによる細菌数測定)のいずれかを行い、口腔バイオフィルム感染症の病名をつけるものとなっている。「口腔不潔度測定」は、要介護高齢者、入院患者または緩和期患者であって、口腔機能低下または口腔衛生管理が不良のために口腔内微生物による汚染が著しく疾患リスクが高まっている状態にある者(症状として舌苔、粘膜炎、口臭または口腔乾燥症)に対して、細菌カウンタで総細菌数を測定するものとなっている。
廃止に係る項目としては「歯科充填用材料Ⅲの廃止」があり、歯科充填用材料Ⅲとして保険収載されている歯科用硅酸セメント、硅隣酸セメントおよび歯科用充填用即時硬化レジンの廃止を求めるものとなっている。同様に、「歯周ポケット掻爬」は、歯周基本治療として評価されている歯周ポケット掻爬(PCur)は歯周外科処置に分類される手術とし、歯周基本治療から歯周ポケット掻爬を削除する内容となっている。
これら項目の点数や具体的な算定要件は、学会の提案内容を踏まえて、3月上旬に発出される大臣告示や通知により明らかになる。
協会では、3月に開催する新点数説明会で詳細を解説する予定であり、会員はぜひともご参加いただきたい。
新型コロナウイルス感染者の急速な増加を受け、東京都は1月7日、「オミクロン株の急速拡大に伴う緊急対応」を公表し、その後、同21日には政府の新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置(以下、まん延防止措置)が適用された。
1月19日時点で、対象は都内全域、期間は1月21日から2月13日まで。歯科(医療施設)は、病院、診療所、薬局と同様に時短要請等の対象外となっている。まん延防止措置では、都民に向けて不要不急の外出、都道府県をまたぐ移動の自粛、会食の人数制限などを要請している。
一方、業種別ガイドラインを提示した事業者向けの協力依頼では、施設ごとに対応を明示。飲食店や商業施設、教育機関のほか、イベント開催に対する要請も含まれている。また、職場への出勤についてはテレワークの推進や、基本的な感染防止策を徹底するよう協力を依頼している。
東京都では1月8日に、昨年9月以来となる1000人超の感染者を確認。その後、1月22日には初めて1万人を上回り、さらに感染拡大する様相を呈している。継続した感染症対策に加え、感染状況の推移、それに伴う行政の対応を注視していく必要がある。
1月14日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、次期改定に関する議論が取りまとめられた。このまとめをもとに、公聴会やパブリックコメントでの意見内容を経て、改定項目が決まる。
示された議論のまとめによると、新型コロナウイルスを含めた感染防止対策に関しては、「歯科初診料における歯科医師及び職員を対象とした研修等に係る要件を見直すとともに、基本診療料の評価を見直す」と記載された。2020年度診療報酬改定において「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」(歯初診)の要件に職員研修が追加されたが、次期改定ではその研修が見直されるとともに初・再診料の点数が変更される。コストを踏まえた評価となるのか、経過措置期間が十分設けられるかなどが注目される。
また、施設基準に関しては、「かかりつけ歯科医の機能の評価について、地域における連携体制に係る要件及び継続的な口腔管理・指導に係る要件を見直す」との記載もあり、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準も見直しがなされる。
歯周治療においては、「歯周基本治療処置について、診療の実態も踏まえて廃止するとともに、基本診療料の評価の見直し等を行う」とまとめられた。P基処10点がなくなるのと同時に、初・再診料が引き上げられるといった変更が考えられる。また、「歯周病の安定期治療及び重症化予防治療について、診療実態を踏まえて評価の在り方を見直す」ともあり、これまでの議論において歯周病安定期治療(Ⅰ)、および(Ⅱ)並びに歯周病重症化予防治療の包括範囲が異なる点が指摘されていることから、包括範囲などの見直しがなされる。
医学管理料においては、「口腔機能管理料および小児口腔機能管理料について、口腔機能の低下がみられる年齢等の実態を踏まえ、対象患者を見直す」と整理された。口腔機能管理料は原則65歳以上、小児口腔機能管理料の開始年齢は15歳未満となっており、年齢制限などの要件が見直される。
また、「HIV感染症等の口腔に症状が発現する疾患に係る医科歯科連携を推進する観点から、総合医療管理加算等について対象疾患および対象となる医療機関を見直す」ともあり、対象患者にHIV患者が含まれるといった総合医療管理加算の見直しが想定される。
処置においては、「フッ化物洗口指導及びフッ化物歯面塗布処置について、現在の罹患状況等を踏まえ、対象患者を見直す」とまとめられた。これまでの議論で、う蝕多発傾向者の年齢制限や根面う蝕へのフッ素塗布が在宅患者に制限されていることが指摘されており、これらの要件が見直されるとみられる。
在宅歯科医療については、「20分未満の歯科訪問診療の評価を見直す」と記載された。20分未満の場合は100分の70で算定しているが、この減算の内容が変更されるものと見られる。また、「在宅療養支援歯科診療所について、歯科訪問診療や医療機関の実態を踏まえ、評価の在り方を見直す」ともあり、在宅療養支援歯科診療所の評価も変更される。
歯冠修復・欠損補綴については、「歯科用貴金属の基準材料価格について、素材価格の変動状況を踏まえ、随時改定の方法等を見直す」と記載された。中医協では、変動幅に関わらず3月に1回の随時改定を行う提案がされており、そのような変更がなされるとみられる。また、「歯冠形成のメタルコア加算について、診療の実態を踏まえ、廃止する」との記載があり、メタルコア加算が廃止される可能性が示されている。
感染防止の評価に異論
中医協では、院内感染防止対策を診療報酬で評価することについて、支払側委員から反対する意見が相次いでいる。しかし、感染防止対策の評価はそもそもコストに見合っているとは言えない。患者1人1回あたりの院内感染防止対策のコストは、中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会(2007年7月18日)において268・17円、また「医療安全を確保するために・院内感染対策費の検討(日本歯科医療管理学会雑誌第51巻第1号40―45頁(2016)」においても、消耗品費、人件費および医療廃棄処理費の合計だけでも568円と報告されるなど、とても現在の診療報酬の評価は十分とは言えない。
公聴会においても、意見発表者から、標準予防策により歯科治療を介した新型コロナウイルスの感染事例がないものの評価は不十分であるとし、コロナ加算などの時限的な措置が取られているが、恒久的に初・再診料で評価をすべきとの意見も出ている。
経済産業省は1月14日、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業向けの「事業復活支援金」について概要を発表し、1月31日より申請の受付が始りました。
当協会ホームページ内にある『新型コロナ感染症情報』にて「事業復活支援金」をはじめ、「新型コロナの労務対応などについてのQ&A」「助成金申請動画」などポイントをまとめています。
東京歯科保険医新聞 新春号特別企画
東京歯科保険医新聞では、2022年1月号の紙面を彩る写真を先生方から募集しました。
写真のテーマは『希望』。1面には石原正道先生(日野市)の作品『夜明けの序曲』を掲載しました。それぞれの視点で“希望”が表現され、新春への期待を膨らませてくれる写真の数々を、ぜひご覧ください。
この度は多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。
▼以下、1月号の紙面に掲載した作品をご紹介します。※敬称略、順不同
2017年6月の総会の日に会長を拝命し、5回目の年頭所感として、新年のご挨拶をさせていただきます。日頃、会員の先生方には本会会務に対してご理解とご協力をいただき、心から感謝申し上げます。
4年前の年頭所感で本会会員数5277名とご報告し、その後2018年度診療報酬改定での施設基準の要件などを背景として、3年前は前年比431名増の会員数5708名、一昨年は5815名、昨年は5900名、今年は5937名(12月1日付)と、本会会員数は順調に増加しております。この会員増の一因には、既会員の先生方からの多くのご紹介があり、この場をお借りしまして先生方のご協力に厚く御礼申し上げます。
2021年は、2020年初頭から続いた新型コロナウイルス感染症への対応に追われた年といえます。この約2年間、多くの歯科医療機関は新型コロナウイルス感染症に対応しながら、歯科医療に従事されたと存じます。第5波は、9月上旬に新規感染者数の減少があり、その後ピークアウトしたとされました。しかし、本稿執筆時(2021年12月19日)には、海外から入国された方から新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者が複数確認され、水際対策として濃厚接触者とみなされる人が増加し、待機宿泊施設が足りないとのニュースさえ流れています。
日本では、冬場、年末年始の人の移動などを理由に、第6波の発生が心配されています。その対策のため、希望される方への3回目のワクチン接種が進められ、すでに2021年4月に優先接種した医療従事者の3回目のワクチン接種が12月から始まっています。今後、新型コロナウイルスの感染が早期に収束へと向かい、人類にとって脅威とならない感染症になることを心から願っています。
協会の大きな事業の一つとして、2年ごとに実施される診療報酬改定に対する「新点数説明会」があります。2020年度診療報酬改定時には急遽、集合型を中止し、動画配信に切り替え、改定内容の周知に努めました。この対応は、簡単なことではなかったですが、結果的に大きな混乱とならず、会員の先生方に感謝しております。
現在、本年4月の診療報酬改定に向けて、「新点数説明会」の準備を鋭意進めています。可能であれば、4年前のように集合型で「新点数説明会」を開催したいところですが、コロナ禍の状況が読めないため、ハイブリッド開催、動画配信など、全方向で検討を行っています。会員の先生方には、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
東京歯科保険医協会の目的は、「歯科保険医の経営・生活ならびに権利を守り、国民の歯科医療と健康の充実および向上を図ること」です。その目的を達成するために、会員の先生方とともに役員、部員、事務局員は会務を行っています。コロナ禍により、理事会や部会をWEB開催、研究会などもハイブリッド形式などで対応して、ネット環境やデジタル化が急速に進みました。今後も様々な情報を適時、詳細に、デンタルブックメールニュース、協会ホームページ、FAX、機関紙などで発信していきます。特に、スピードが必要な情報発信では、デンタルブック登録者へのメール配信が大変有効なツールです。今後、さらに多くの会員にデンタルブックの登録を済ませ、様々な情報を入手していただくことを望んでいます。
今年も会員の先生方の訴えや要望などを各方面に届け、改善を図ることを協会活動の大きな柱と考えて積極的に行っていきます。会員の皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、何卒、よろしくお願い申し上げまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。
2022年1月1日
東京歯科保険医協会会長
坪田 有史
協会は、2021年12月16日、「歯科衛生士の『応募が増える』『辞めない』医院づくりを考える」と題し、経営管理研究会を開催した。当日は感染対策として、事前に撮影した講演をWEB配信し、39名が視聴した。
講師は、日本歯科大学東京短期大学歯科衛生学科講師の鈴木恵氏。前半は、歯科衛生士教育課程の講師の視点から、学校教育で重要視していることや、歯科医院の教育システムの重要性、歯科衛生士の専門性の評価の重要性などを解説し、後半は、相馬基逸経営管理部長と座談会形式で、事前に募集した歯科衛生士雇用に関する悩みについて質疑応答を行った。
参加者からは、「離職する理由や、それを踏まえた求人のあり方を勉強でき、参考になりました」「教育システムを構築することが大切だと改めて感じました」などの声が寄せられ、雇用上の悩み解消へのヒントを得た参加者が多かったようだ。
2022年度診療報酬の改定率が、診療報酬本体はプラス0.43%(国費約300億円)とされた。前回の2020年度診療報酬の改定率はプラス0.55%で、前回より低い水準の引き上げとなっている。わずかな引き上げに加え、政策的配分が行われてきた結果、医療従事者の処遇改善、およびコロナ対応で疲弊した医療提供体制を立て直すには程遠い診療報酬改定となった。
―歯科は0.29%
歯科においては、わずか0.29%のプラス改定に止まった。このような改定率は歯科の現状を見ていないばかりか、歯科軽視の結果である。第23回医療経済実態調査では、歯科診療所(個人)の損益率は、前年度に比べマイナス1.2%で、コロナ補助金を加えても、医業収益の落ち込みは明らかである。歯科材料費は前年度より6.8%増加し、衛生材料をはじめ院内感染防止対策に関わる資材、金銀パラジウム合金などの高騰が医院経営の重荷となっている。
コロナに対して歯科は、標準予防策を遂行し、感染拡大を抑えるなど国民の健康に貢献してきた。しかし、飛沫による感染リスクが高い職種だと言われ、医療従事者の離職や患者離れが発生した。患者減は未だに改善できず、閉院に追い込まれた歯科医療機関も出るなど、深刻な状況が続いている。
―社会保障費の自然増を定量的に抑制
財務省は、国のコロナ補助金投入の影響で「経営実態は近年になく好調」と主張してきた。だが、実態は経費が増加し医業収益が減少したため、経営状況は厳しい。これは医療経済実態調査に現れている。にもかかわらず、補助金投入で「好調」だとする財務省は、医療に対する意識が乏しいだけでなく、実態に目を背けていると言わざるを得ない。
また、社会保障費については、精緻化・適正化のもとに、定量的に抑制をしてきた。今回改定においても、国費を約1300億円削減し、概算要求で示された社会保障費の自然増約6600億円を約4400億円程度に抑えようとしている。国民の福祉を忘れた財源ありきの政策により、国民のいのちが危機にさらされている。
―「国家の福祉」とは国民の生活の安定を図ること
国家が目指すべき福祉とは、社会保障制度の整備を通じて国民の生活の安定を図ることだ。このまま社会保障費の抑制政策と削減が続けば、医療提供体制はおろか、地域医療体制、国民のいのちと健康は守れない。
歯科はこれまで8020達成や、高齢者への口腔ケアを重視してきた。その結果、高齢者の入院リスクを減少させるなど、総医療費の削減にも貢献をしてきた。今後、高齢者の増加に従い健康寿命の延伸が重要となるが、歯科はこの点において大きな役割を担うことが明らかになっている。歯科が重視される医療提供体制を構築するためには、まずは実態に即した診療報酬の引き上げが必要不可欠である。
今後、議論は財源の配分に移っていく。今回の改定率では、歯科の窮状は改善を望めないが、医療技術評価分科会で日本歯科医学会から提案された76項目の新規技術導入と、重症化予防の推進について、適切に評価されることを強く望みたい。医療提供体制を立て直し、国民へ良質な医療を提供できる社会政策への転換を改めて強く求める。
2021年12月23日
東京歯科保険医協会
政策委員長 松島良次
こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)12月1日 第621号
1.プラス改定は不可欠 医業収益減
2.次期診療報酬改定/周術期、重症化予防などの改善を要望
3.国民医療費44兆円 2019年度
4.医療情報ネットワーク/基盤の在り方を検討
5.ニュースビュー
6.「探針」
7.マイナンバーカードの保険証利用 本格運用が開始
8.医療広告ガイドラインで最初に気をつけるべきポイント No.2
9.ワクチン3回目接種/死亡・入院リスク低減に高い有効性
10.情勢に合わせた感染対策を詳説/院内感染防止対策講習会
11.地域の医療システム構築・まちづくり/地域医療研究会
12.「注意すれば普通の生活ができる」ことがウィズコロナ/医療安全管理講習会
13.パーシャルデンチャー/第3回学術研究会
14.超音波スケーラー編開催/少人数で丁寧な指導に好評
15.オンライン資格確認システムに関する学習会
16.中医協総会/訪問診療の評価と在宅移行時の連携
17.歯科用金属の代替材料/5技術が評価対象に
18.経営&税務相談Q&A No.388
19.補助金8万円 1月末申請期限
20.法律相談、経営&税務相談
21.研究会・行事案内
22.年末年始休診案内ポスター
23.電子書籍デンタルブック
24.インタビュー 武蔵野市長・松下玲子さん
25.PEEKによる大臼歯歯冠修復物/教えて!会長!!Vol.53
26.歯科保険医協会にぜひご入会ください/組織部
27.保険医休業保障共済保険 申込み締め切り間近!
28.歯科情報をお知らせします/Facebook
29.共済部だより
30.症例研究/外傷時の歯の再植術と口腔内の縫合
31.連載/私の目に映る歯科医療界⑨(東洋経済新報社・大西富士男)
32.理事会だより
33.協会活動日誌 2021年11月
34.電子帳簿保存法の改定について
35.金パラ合金/原価割れ解消署名 1064筆を提出
36.健康保険でより良い歯科医療の実現を/イイ歯デー宣伝行動in巣鴨
37.反核医師のつどいin千葉が開催
38.年末年始 協会事務局休務のお知らせ
39.金パラ署名、都立・公社病院独法化が課題/第4回メディア懇談会
40.神田川界隈/「健康」こそが国民の不安解消への第1歩(福島崇)
41.通信員便り No.116
42.2021年度 第2回臨床セミナー・専門医認定研修会/日本接着歯学会
協会は昨年12月19日、次期診療報酬改定に向けて理事部員政策学習会を開催した。本学習会では、中医協(中央社会保険医療協議会)総会で議論されている「在宅その4」「歯科医療その2」について、討議した。
「在宅への訪問診療の推進するために必要なことについて」「歯科訪問診療料」「歯援診の施設基準」「(小児)訪問口腔リハ」「医療連携」「ICTと訪問歯科衛生指導」について検討。在宅への訪問診療を推進するために必要なことに関しては、「多様化する患者の病態への対応」「要支援者や要介護者を診る機会の増加」など今後の見通しを展望。地域での各医療機関の役割を定め連携する、機能分化を進めていく必要性を解説した。
「歯初診の基本診療料(再診3点)を廃止、減点について」「か強診の施設基準の変更について」「SPTのⅠとⅡとP重防の包括化について」「歯周基本治療処置(P基処)10点について」「HIV患者について」「初期の根面齲蝕に対するフッ素塗布について」「口腔機能低下症の対象年齢(65歳)引き下げについて」「口腔機能発達不全症の対象年齢引き上げについて」「メタルコア加算等」―を検討。か強診の施設基準について、講師より現時点での要件等を解説。また小児歯科学会のアンケートを示し、小児専門医の訪問が進まない理由などに関し、意見を交わした。
2021年11月24日に発出された『第23回医療経済実態調査』はコロナ禍での調査となっており、今回の調査では新型コロナ関連の補助金を除いた医業収益まで調査をしている。
医療経済実態調査に関しては、以前より、恣意的な調査であることが問題となっている。歯科医療機関全体の調査結果では調査施設数が298機関、平均医業収益が約7,300万円となっており、保険診療を中心とした大多数の開業医の経済実態を対象としているとは到底考えられない。また、東京23区に限れば、歯科医療機関数約10,600機関中、調査施設数は27機関(約0.3%)、平均医業収益が約6,000万円となっている。適正な調査を行うためにはサンプル数を増やして実施することを検討すべきではないだろうか。
以上を踏まえたうえで、今回の調査結果では、東京の歯科診療所は新型コロナ関連の補助金を含めても、医業収益の伸び率は-2.2%となっており、医業経費の伸び率が-1.1%となっている。恣意的にも思える調査結果であっても、医業収益はマイナスとなっており、患者の受診抑制による、診療収益の減少をこれまで以上の経費削減をすることで何とか持ちこたえていることがわかる内容である。実際に会員からは「補助金がないと経営が厳しい」「感染対策の経費は増え、補助金で何とかしのいでいる」といった声が寄せられており、一時的な財政支援である補助金も医療機関の存続の一助となっている。しかし、今後も感染防止対策の補助金が交付されるかは不明である。
一部ではコロナの補助金により多くの医療機関が黒字化しているためマイナス改定になるという報道がされているが、以上の調査結果からすれば、東京の歯科医療機関は補助金があっても苦しい状況にあることは明確である。
12月3日に行われた中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の「医療経済実態調査の結果に対する見解」の資料(診療側・2号側委員)では「地域歯科医療を担う約 8 割を占める個人立歯科診療所の経営は、コロナ関連補助金を加味しても依然として厳しい状況が続いている」「既に経営努力や経費削減努力は明らかに限界に達している」と歯科医療機関の置かれている状況の記載がみられる。また、2021年5月に行った協会の会員アンケートでは、コロナ禍以前よりも医業総収入が減少したと答えた会員は約61%であった。会員アンケートの結果と、医療経済実態調査の結果、中医協の資料を踏まえれば、国民の健康を守る歯科医療機関が安定した経営を行うために、診療報酬の引き上げは不可欠である。
以上より、国に対し、医療経済実態調査の適正な実施と診療報酬の引き上げを求める。
2022年12月13日
経営管理部部長
相馬 基逸
岸田政権が公的価格引き上げに動く好機/歯科からも歯科衛生士と歯科技工士の処遇改善訴えよ
国民からの支持を理由にして、従来の医療費抑制政策を踏襲、場合によっては「2025年問題」、つまり800万人の〝団塊の世代〟全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年度までは、さらに抑制に加速がかかる可能性も高い。
分配重視ではなく経費節減・財政圧縮を強調する維新の勢力増強は、その政策に対し国民の中に相当割合の支持があることを意味する。これも、国の医療費抑制政策を側面から支える役割を果たすかもしれない。
自助、具体的にはすでに医療機関窓口での患者2割負担法案も可決された後期高齢者などについて、一層の窓口負担増の論議などにつながらないとも限らない。
その一方で、岸田文雄首相は、自民党総裁選挙や衆議院選挙で「新しい資本主義」を標榜。成長一辺倒から分配への一定シフトの考えを示している。安倍・菅政権の成長・自助重視路線からの部分的な修正にも見えるが、その内実がどうなのか、キャッチフレーズ通りに政策を実現できるかどうかは、歯科を含む医療界としても十分に注視する必要があるだろう。
分配にも目くばせする看板政策「新しい資本主義」の柱の一本として岸田政権が打ち出しているのが、看護・介護・保育を担うエッセンシャルワーカーの処遇改善だ。
岸田首相自身が、その働きぶりや業務の重要性、ほかの職種の給与と比べると処遇が低いという問題意識を示し、看護・介護・保育の公的サービスを担う職種の公的価格を引き上げようという試みは、大いに注目に値する。
11月を挟んで「新しい資本主義実現会議」や「全世代型社会保障会議」、さらにはその傘下でこの重要任務の議論を担う「公的価格評価委員会」を立ち上げ、早々に議論入りしているのは周知のとおりだ。
長時間残業など、過重な勤務実態や環境の割に給与は相対的に低い看護師、介護職員、保育士の処遇改善に乗り出すことは良い方向だ。厚生労働省の最新の統計「賃金構造基本統計」によれば、保育士(女性)は月収換算で30.2万円、介護職員は29.3万円となっていて、全産業の平均給与の35.2万円を下回っている。看護師は39.4万円と、全産業平均を上回ってはいるが、夜勤を含む残業代の要素、割合が大きいことから、働き方の割に高いとは言い難いのが実態だろう。日本看護協会の福井トシ子会長も、今回の政府の処遇改善の構想に絡めて「夜勤・残業代を除く基本給での看護師の給与アップを望む」と発言している。
確かに、そうでなければ看護師資格を持ちながら、看護師の職から多くの人が離れている現実もないはずだ。
もちろん、懐疑的な見方も出ている。第1に、岸田政権が示すような公的価格の引き上げによって、民間分野の給与の引き上げを含む経済成長と分配の好循環につながるのか、という疑問だ。
第2に、給与引き上げの原資がどうなるのか。岸田首相が言う消費税引き上げに頼らないとなると、利用者の自己負担アップや保険料引き上げ、国などの公的補助拡大になるが、国民的なコンセンサスが得られるのかという大問題が残る。財源を国債に頼る場合は、後の経済成長の果実で賄うという考え方ではあるが、これまた経済成長が好循環にならなければ、次世代への付け回しになりかねない。
具体的な公的価格引き上げの程度や、どういう形で実現するのかという、制度設定の問題もある。そのまま診療報酬や介護報酬をアップする場合でも、病院や福祉・介護施設の経営者が、従業員に果実をそのまま回すのかという疑念もある。かつて、実際に保育士や介護士などの処遇改善をするために行った公的加算が、当の職員の給与には回っていなかったという、看過し難い現実の声も現場からは出ている。
不思議なのは、歯科医療界にもその土台を下支えするエッセンシャルワーカーたる歯科衛生士や歯科技工士がいるのに、ほとんどその処遇改善議論の対象に上がってこないことだ。
以前、この連載でも取り上げたが、歯科技工士の処遇がひどい惨状にあることは言うまでもない。歯科衛生士にしても、看護職員や介護職員などと比べ、処遇はましか、と言えばさにあらずだ。
先に挙げた厚生労働省のデータを借りれば、いみじくも「プレジデント」2021年12月3日号の特集「歯と眼の大問題一挙解決ノート」でも取り上げられているように、歯科衛生士の時給は1521円、歯科技工士に至っては1168円となっていて、看護師の1776円を大きく下回る。歯科技工士の場合、東京歯科保険医協会のアンケートでも明らかなように、多くが長時間労働を余儀なくされた上で、平均年収は392万円となっていて、看護師の494万円を相当程度下回るのが現実だ。
看護師も保育士も歯科衛生士や歯科技工士も、みな国家資格が必要で、健康・生命や保育など、社会的にも不可欠な公的サービスの重責を担う点では、遜色はない。歯科衛生士や歯科技工士の処遇の問題についても、若くして職場離脱する人が多いことは大きな問題だから、岸田政権の公的価格引き上げの対象にならないのは理不尽といえるだろう。
2年に1度の診療報酬の改定作業が最重要課題であるのは当然であるとしても、同じ歯科医療の土台をともに担う仲間の処遇改善に声を上げることは、歯科医師の共助団体としても大事なことと思うが、どうだろうか。
少なくとも、歯科衛生士や歯科技工士の処遇改善の必要性を政治ならず国民に訴える絶好の機会である。これを逃してはいけないはずだ。
東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男
「東京歯科保険医新聞」2021年12月1日号10面掲載