協会ニュース

【後援】福岡県歯科保険医協会 市民公開講演会(WEB)のご案内

「みんなで考えて「歯」と「口」 から全身の健康を守りましょう」

昨年、 歯周病菌が体内に侵入すると 認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症 の
原因物質「アミロイドベータ」の脳への蓄積量が通常の10倍となる などのメカニズム を
九州 大 学 などの研究チームが解明し、日本社会 、そして世界中 に 衝撃を与え ました。
研究チーム の リーダーで 、 テレビ番組 などで 研究成果 を わかりやすく 解説されてきた
武洲先生 に、 「歯周病と認知症」、その最新の研究動向 を お話し いただきます。
また、 九大歯学部の皆さんには 、 新型コロナウイルスによる感染と重症化を予防 する
ために「口から免疫 機能 を維持 ・ 向上させる」提案 をしていただきます。
私たち歯科医師にとっても、患者・家族の皆さん、医療・介護の多職種の皆さんと 協力し 、
「歯」「口」 と 全身の健康 との関わりをますます学ぶことが急務となって います。
「歯」と「口」から全身の健康を守る ために 、みんなで 意見交換しましょう。

日時

 9月12日(日)15時~17時

 ウェブ会場

 「ZOOM」ウェビナー

  ※参加方法はお申込み後、開催までにメールでご案内いたします。

 講師

 武洲先生

 (九州大学歯学研究院准教授)

 井上光貴さん 、 今村早希さん 、 小林瑶子さん 、 平原瞭さん

 (九州大学歯学部4年生、5年生)

 久保哲郎さん

 (福岡県歯科保険医協会副会長・地域医療対策部長、

   NPO法人老いを支える北九州家族の会副理事長)

予約

要予約。下記の FAX 番号 または 電話 番号 ・メール アドレス よりお申込ください 。

福岡県歯科保険医協会

FAX :092-473-7182 メール: shichiri@doc-net.or.jp

 

【ウェブ参加のみに変更】案内状

 

私の目に映る歯科医療界⑤アルツハイマー病新薬で巨額出費必至/診療報酬への影響大、歯科は今から備えよ

アルツハイマー病新薬で巨額出費必至/診療報酬への影響大、歯科は今から備えよ

日本のエーザイと米国のバイオジェンが共同開発したアルツハイマー病(Alzheimer’s diseaseAD)治療用の新薬「アデュヘルム」が、6月初旬に米国で承認された。「アリセプト」など既存のAD薬と違い、病気の原因といわれる脳内のたんぱく質を除去し、認知力などの低下を遅らせる効果を謳うAD薬として、世界で初めて臨床現場で使われることになる。

患者や家族には一筋の光明であり、礼賛報道が相次いでいるが、注意を払う必要がある。最終試験の有効性が不確かな中での米国当局の強行承認だったこと、安全性や今後のAD薬開発への悪影響など、懸念も多い。

ここでは、歯科医療界に影響があるポイントに絞って述べたい。

Ⅰ.アルツハイマー新薬は日本でも巨額出費懸念が…

アデュヘルムの米国での薬価は、患者1人、年間投与分で5.6万ドル。日本円にして610万円と、かなりの高額だ。

◆AD薬では支払い抑制に限界が

ただ、日本でも一時話題になった希少疾患の脊髄性筋萎縮症薬「ゾルゲンスマ」の米国薬価は2億円超だ。薬価で上を行く薬はほかにもあるが、この薬の問題は、患者人口が巨大なことだ。米国ではAD〝予備軍〟の軽度認知障害(MCI)を含めれば600万人のAD患者がいて、日本でも500万人を抱えると推定される。アデュヘルムが想定するMCIと軽度AD患者に絞っても100万人は下らない。

このため膨大な薬剤料の負担が発生する。米国では百万人の患者がこの薬を使うと、その支出額が560億ドル(約6.1兆円)に達する。AD患者の大半は六十五歳以上の高齢者だから、米国の公的医療保険(メディケア)に大半の財政のしわ寄せがいく。これをどうするか、と今米国では官民で議論が沸騰している。

◆アデュヘルム承認の可否は年内に判明か

昨年12月に、アデュヘルムの承認申請が提出されている日本も対岸の火事ではない。

承認するかどうかの審議は、早ければ年内にも結論がまとまるとみられる。米国と違う判断、すなわち承認しないとなれば日本の当局にとっての〝英断〟となるが、時に、米国と違う判断をする欧州と違って、日本の場合は過去を見る限りその可能性は極めて小さいだろう。

米国で承認された薬が日本では保険で使えないとなれば、同じ薬に対して日米当局の評価がまったく異なるという問題に発展する。米国同様にADに苦しむ多くの日本の患者、およびその家族に対し、新薬を望む声を無視する結果にもつながる。

◆米国に倣い日本もAD薬を承認か

結局は、米国に倣い日本もこのAD薬を承認する可能性が高いというのが大方の専門家の見方だ。

となると、日本の次の問題は高薬価に伴う財政負担をいかに軽減するかになる。

日本の薬価算定は複雑だが、単純化した机上計算として、先述したゾルゲンスマの例をもとに、国がアデュヘルムの薬価を米国に比べ3割引した場合にはその薬価は427万円になる。対象患者は日本でも100万人程度はいるから総支払額はこの1剤だけで4.2兆円となる。

◆過去にはオプジーボの先例が

実際には保険適用の対象となる患者を絞ったり、がん免疫薬「オプジーボ」であった過去の例のように、価格を何度も引き下げたりの操作を国がする可能性も大きいだろうから、ここまでの巨額にはいかないにしても、国が薬価を決める日本でも、ゾルゲンスマのような希少疾患薬と違って、巨大な患者人口を持つAD薬では、支払い抑制にも限界があるのが現実だ。

Ⅱ.歯科診療報酬にも悪影響予防治療シフト等への準備を

削減続きの薬価とは違って、医科と歯科の医療費はしばらくわずかな引き上げが続いてきたが、ここに影響が出かねない。薬価改定などで浮かせた薬価削減分が消えてしまえば、財務省などの矛先が医科、歯科の診療報酬にも向かわないとの保証はないだろう。

2024年度改定ではアデュヘルムの影響が

これから審議が本格化する2022年度診療報酬改定論議はセーフだろうが、その次の2024年度診療報酬改定の審議では、このアデュヘルム影響がもろにかぶる可能性を想定しておく必要はあるだろう。

歯科医療界としてのこれに対する備えは、相当な難問であるのは確かだ。即効性のある妙案が直ちに浮かぶはずもない。

ただ、少なくともいえることは、歯科診療が患者や利用者にもたらすベネフィットを徹底的に追い求め、その価値に基づく正当な診療報酬を要求する。このようなスタンスで理論武装を磨いていくのは、これまで以上に必須になるはずだ。

◆戦略的に有効な諸対策の検討を

中期的にはう蝕中心の「かかってからの治療」から高齢化・長寿化とともに膨大なアンメットニーズを抱える歯周病など予防分野、高齢介護施設への歯科訪問診療などに歯科医業界がシフトしていくことが、戦略的に有効なのではないか。診療報酬の在り方について、厚生労働省にも発想を変えてもらう必要もあろう。

歯周病はADとも密接な関係性があることを示唆する研究が進展する。こうした研究がもたらすエビデンスを中長期で構築し、理論武装していく姿勢・戦略が望まれるのではないだろうか。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

「東京歯科保険医新聞」202181日号10面掲載

今の時差改定方式は欠陥品/高騰金パラ「逆ザヤ」問題の根本解決は待ったなし【連載】私の目に映る歯科医療界④

歯科医悩ます「銀歯」高 診療報酬 改定追いつかず 貴金属相場、マネー流入で急騰


 こう見出しを打った記事が五月初旬の日本経済新聞に載った。歯の治療に不可欠な「銀歯」、いわゆる金パラなど歯の補填物に使う金属材料高騰のあおりで、「逆ザヤ(赤字)」問題が歯科診療所経営に猛威を振るう現状を的確に伝える良い記事だ。

 

随時改定Ⅰ・Ⅱ導入も真の問題解決には程遠い現実

 確かに、金、銀、パラジウムの価格高騰が続いているが、その補填を一人でかぶらなければならない歯科医師にしてみれば、「たまったもんじゃない」ことだろう。
 保団連をはじめ、歯科関連団体は厚生労働省にこの問題の解決を強く求め続けてきた。2020年度には、金属材料の公示価格(歯科医師にとっては支払われる価格)の改定制度で成果を出している。4月、10月に5%以上の高騰(下落もだが)があった場合に改定する従来の制度(随時改定Ⅰ)に加え、その合間の1月、7月にも15%以上の高騰があった場合にも改定できる随時改定Ⅱを獲得したわけだ。
 理論的には、金属材料の変動リスクをよりタイムリーに避けられるようになったわけだが、危惧した通り、問題の真の解消には程遠い現実も見えてきている。

過去の価格変動で将来の価格高騰埋めるは無理筋

 この問題を引き起こす要因は複数あるが、根本原因を一つ挙げろと言われれば、改定するかどうかの基準となる変動幅(随時改定Ⅱでは15%以上なら公示価格を改定し、15%未満なら元の公示価格のまま据え置く)が下記計算式をもとに計算されることになっている点だ。
 今回でいえば、4月時点での過去9カ月間の値動きで、3カ月後の7月の改定実施時の値段を決めることになる。この算定式に基づき、今年7月の金パラ公示価格値上げはなしと決まった。
 しかし、6月3日開催の「6・3初夏の歯科総行動集会」の時の保団連資料によれば、今年5月の金パラの推定実勢価格は10万577円、現行の公示価格の8万40円だと、実に2万533円、率にして26%もの逆ザヤになっている。実態には、まったく合っていないわけだ。
 さらに、6月以降も金属材料がこのまま値上がりが続けば、次の改定時の10月まで、この逆ザヤが毎月、歯科医師の経営に覆いかぶさる。

透明かつ根本的な毎月改定など制度改定が必要

 実勢価格を毎月タイムリーに公示価格に反映する制度導入が、唯一の根本解決策なのは明らかだ。
 ほかに、公的価格のある商品サービスで同じ逆ザヤ問題が起きているかどうか、私自身は寡聞にして知らないところだが、IT化の進むいま、実勢価格を把握し毎月の公示価格に反映することは、技術的には可能ではないだろうか。
 仮に、毎月の公示価格改定が技術的または費用対効果的に難があるならば、その時は3カ月後に、例えば歯科医師がその間にかぶった逆ザヤ分は、厚生労働省が遡及して返すような仕組みにすべきだろう。
 この場合、変動費用を予算枠で手当てする工夫が必要になるだろうが、個人的思い付きではあるが、予備費などで担保できるのではないか。少なくとも議論、検討するだけの価値はあるのではないかと考える。
 金属材料の値上がりが続く局面では、補綴物に国が支払う額は増えるわけだが、これは歯科医師が懐に入れるものでもなく、国民が負担するものとして捉えるべき筋合いの話だ。
 今年は、2022年度診療報酬改定という絶好の議論の場がある。歯科技工士問題でも厚労省は自身が行う実勢価格調査の結果を非公開にする。この「金パラ」逆ザヤ問題でも、自ら依拠する貴金属の市場実勢価格を明らかにしていないと聞く。行政の透明性では大問題だ。国民の立場からも、関係団体にはこの点も含め、厚労省には強く改善を要求してほしい。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

(東京歯科保険医新聞2021年7月号10面掲載)

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か③

 前回まで述べた生前情報の蓄積と死後情報とのマッチングであるが、レセプトデータやレセコンの電子カルテ、乳児検診、成人歯周病健診によって得られた口腔診査情報を身元確認に利用できるとの法的根拠はなく、オプトアウトによる利活用はできないため、事前に患者さんからの承諾が必要となる。今後この方面での法整備が必要になるが、口腔内情報は極めてセンシティブな情報なので、慎重な対応が求められている。

「口腔診査情報標準コード」について
 レセコンや歯科電子カルテ、歯科健診ソフトなどに入力された口腔診査情報は「口腔診査情報標準コード」に置き換えられ、「口腔状態スナップショット」として出力する。診療や検診の度に「口腔状態スナップショット」は最新の状態に保たれる。口腔の状態を共通の「口腔診査情報標準コード」で保存することにより、入力したプログラムでなくても同じ情報を得ることが可能となる。つまり「口腔状態スナップショット」にアクセスできれば身元確認での活用が可能となる。
 東日本大震災前は、身元不明のご遺体の口腔状態については、紙での手書きフォームに記載されたものを用い、警察経由で各診療所に問い合わせがあった。また、乳幼児・学校健診、節目・高齢者の歯周病健診などの健診事業では、紙で集計された数字が行政に上がっていた。
 震災直後の混乱の中、当時東北大学で開発された「Dental Finder」で、ご遺体の口腔情報を電子情報に置き換えるためのフォーマットを用い、問い合わせを始めた。しかし、各診療所や病院のデータ形式が統一されていなかったため、データ収集に時間がかかり、身元確認作業での活用が困難な状態であった。
 「口腔診査情報標準コード」では歯種、現在歯・欠損歯の有無、現在歯の内容、欠損歯の内容、歯列・咬合の情報等が格納される。カルテ一号用紙の口腔内の状態をイメージすると分かりやすい。この他歯科医師会行動計画(改定版)のデンタルチャート(死後記録)項目と過去災害例からの代表的な表記、インターポールの災害犠牲者身元確認(DVI)フォームで使われる項目も収載している。
 これらの項目は「口腔状態スナップショット」として「CSV形式データ」で保存される。これにより、歯科レセコンベンダが取り組みやすくなり、またHL7形式に変換しやすくなる。HL7形式に変換することにより、医科との共有がしやすくなる。
 次回では、標準化のための段階を初期から順番に述べていきたい。

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年7月号3面掲載)

第2回メディア懇談会を開催/中医協での歯科材料議論の可能性や歯科医師のワクチン接種などに関心集まる

第2回メディア懇談会をWEB方式で開催/中医協での歯科材料議論の可能性や歯科医師のワクチン接種などに関心集まる

協会は79日、第2回(通算83回)メディア懇談会をWEB方式で開催した。WEB開催は前回5月に続き2回連続となり、説明と報告は坪田有史会長が行い、司会は広報・ホームページ部長の早坂美都理事が務めた。

冒頭、613日の第49回定期総会で会長に就任した坪田会長が、総会全体の模様と「決議」について報告を行い、さらに今期スタート当たっての挨拶を行った。続いて、①政策委員長談話「歯科医師によるワクチン接種は適法性があることを法に明記すべき」、②金銀パラジウム合金の問題(逆ザヤシミュレーター)、③2020年学校健診後治療調査、④歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉注射実技研修の紹介―について説明を行い、その後、協会側と参加者による懇談に移った。

その中では、今後の中医協の検討の中で歯科材料が議論の俎上にのる可能性があることが注目されたほか、歯科医師による新型コロナワクチン接種を巡り、日本歯科医師会のeラーニング受講や協会が筋肉内注射の実技研修会の実施を予定していることなどについて関心が集まった。

次回開催は本年9月の予定。

説明・報告に当たる坪田有史会長

司会を務めた広報・ホームページ部長の早坂美都理事

 

東京都中小企業者等月次支援給付金 7月1日より申請開始

7月1日より、東京都中小企業者等月次支援給付金の申請が始まりました。

売上の減少が30%以上の個人事業主に対しては5万円の支援金が給付されます。

国で行っている月次支援金の受給要件は2022年の4・5・6月の売上が2019年または2020年の4・5・6月の売上と比較し50%減少していることとなっていましたが、今回の東京都独自の月次支援給付金は30%減少していることが受給要件となっており、要件が緩和されています。

また、既に国から月次支援金をもらっている場合も追加申請ができます。

詳細は以下の通りです。

 

東京都中小企業者等月次支援給付金

1 申請受付について

(1)申請受付期間

 申請開始:令和3年7月1日(木曜日)

 申請期限:令和3年10月31日(日曜日)(消印有効)

(2)申請方法

  ① オンライン申請:専用ポータルサイトから申請できます。

     https://tokyogetsuji.metro.tokyo.lg.jp/

  ② 郵送申請:簡易書留など郵便物の追跡ができる方法で、以下の宛先にご郵送ください。

    【宛先】〒111-8691 浅草郵便局 私書箱:121

        東京都中小企業者等月次支援給付金 申請受付 宛

 

2 申請要件

(1)都内に本社・本店のある中小企業等及び都内に住所のある個人事業者等であること(業種を問いません)

(2)都内に本社・本店のある酒類販売事業者であること

(3)緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う飲食店の休業・時短営業又は外出自粛等の影響を受けていること

(4)2021年の456月における各月売上額が2019年又は2020年の同月の売上額と比べて30%以上減少していること

(5)今後も事業の継続及び立て直しのための取組を実施する意思があること

※東京都のホームページでは給付対象の具体例として医療・福祉関連の事業者をあげており、コールセンターでは緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う外出自粛等の影響で売上が減少していれば、歯科診療所も対象となり得ると回答しています。

 

3 給付額

  2019年又は2020年の基準月の売上ー2021年の対象月の売上
50%以上減少 30%以上50%未満減少
中小企業等 酒類販売事業者 上限20万円/月 上限10万円/月
その他の事業者 上限5万円/月 上限10万円/月
個人事業者等 酒類販売事業者 上限10万円/月 上限5万円/月
その他の事業者 上限2.5万円/月 上限5万円/月

※ 月ごとに売上高の減少額に応じて給付額を決定(定額給付ではありません)

※ 対象月:2019年又は2020年の同月比で、売上が30%以上減少した2021456

※ 基準月:2019年又は2020年における対象月と同じ月

※50%以上減少の場合は国からの月次支援金に上乗せする金額、申請には国の月次支援金の給付決定通知が必要

 

4 問い合わせ先

東京都中小企業者等月次支援給付金コールセンター

電話 03-6740-5984

900分から1900分まで(土曜日・日曜日・祝日含む))

コロナワクチンを接種した医療従事者・患者の対応について

 本稿ではワクチン接種後の医療従事者の感染対策やワクチン接種を終えた患者さんについての知見をまとめました。

 お引き受けいただきましたのは、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院副病院長で同センター歯科・口腔外科診療科長の丸岡 豊氏。(「東京歯科保険医新聞」2021年7月1日 第616号掲載)

 

ワクチン接種を終えた医療者の「ふるまい」について

  結論から申し上げますと、「ワクチン接種終わった」→「飲み会・会食 即OK」ではありません。ワクチン接種によって「発症」「重症化」を防ぐ効果は確認されておりますが、「感染」「伝播」を防ぐ効果はまだよくわかっておりません。 

 依然として医療機関を受診する患者さんはワクチン未接種の方が大多数です。そのため、ワクチンを接種した医療者が発症しなくても、気づかないうちに患者さんに新型コロナウイルスを感染させ、患者さんが発症してしまうかもしれません。引き続きマスクの常時着用、手指衛生、3密回避をはじめ、今まで徹底してきた感染対策を変わらずに継続することが重要です。

 感染するリスクが極めて高いのが会食です。歓送迎会などを含め同居人以外との会食の自粛が求められます。自宅などに複数人で集まっての食事も会食になりますし、院内での朝食会議・ランチ会議も会食に該当します。

 少なくとも私たちがスプレッダーにならないような自重は引き続き必要と思います。私たち医療従事者がなぜ優先接種の対象になったのかの意味をお考えください。

 

ワクチン接種を受けた患者さんの取り扱いについて

  ワクチン接種前に手術を受けた方は術後どれだけの期間を空ければ良いのか、あるいはワクチン接種後にどれほどの期間を空ければ手術を受けられるのか、というお悩みがあると思います。

 一般社団法人日本医学会連合からの423日付の提言では、これについてはエビデンスに基づく明確な基準は現在のところない、としています。術後には身体に加わった侵襲に伴う免疫応答や異化の亢進などの理由でワクチン接種は2週間ほど待機することが一般的であり、適切な接種時期の決定にかかる参考となる事実もないため、この2週間というのが妥当ではないか、ということのようです。同様にワクチン接種後の手術については一過性の副反応の頻度が少なくなる接種後3日目以降であれば手術は可能なのではないかとしています。医学会連合が発出した「COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言(修正第4 2021423日)」をご参照ください。

 ただ注意すべきこととして、この提言には公益社団法人日本麻酔科学会が名を連ねておりません。日本麻酔科学会は「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について」を別に提言しており、微妙な温度差が垣間見えます。「全身麻酔関連についていえばまだまだわからないことはたくさんある」という立場のようですので、麻酔科担当医師との意思疎通が必要と思われます。

 

※注釈※

発症=症状が出ること

重症化=入院や集中治療が必要な状態になること

感染=ウイルスをもらうこと

伝播=ウイルスを他の人にうつすこと

 

 現在、新規感染者数は再び増加の様相を呈し、このままではオリンピックに関連して8月初め頃に第5波襲来との予測もあり、やはり予断を許さないところです。

 私たちは今、未体験の時代を生きています。日本より早くワクチン接種が進んでいる各国では様々な推奨のもと、一部緩和がされ始めております。しかし、それらの推奨をどこまで取り入れていくかについては、ワクチン接種後の対応や行動に関して、今後の流行状況やワクチン接種の状況を踏まえて判断されますので、常に最新情報には注意を払う必要があるでしょう。

 

―一般社団法人医学会連合が提言した「COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言(修正第 4 2021 4 23 日)」PDF

https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/04/20210426063706.pdf

 

―公益社団法人日本麻酔科学会が提言した「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について」PDF

https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2003_35_700_1.pdf

 

 

 【プロフィール】

丸岡 豊 (まるおか・ゆたか)

[現職]

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 副病院長

 同 歯科・口腔外科 診療科長

東京医科歯科大学 歯学部 臨床教授

 

[略歴] 

1990年 東北大学 歯学部 卒業

1994年 東京医科歯科大学大学院 修了(博士・歯学)

1997年 米国Vanderbilt University Medical School, Cell Biology, Research Associate

2004年 東京医科歯科大学大学院 顎口腔外科学分野 講師

2007年 国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科 診療科長

2019年 国立国際医療研究センター病院 副病院長(併任)

現在に至る

非常時の弱さと泥縄対策がコロナ下で露呈/歯科技工士問題など歯科でも平時に本格議論を【連載】私の目に映る歯科医療界③

 緊急事態宣言の期間延長・地域拡大など、この原稿執筆時点でも新型コロナ感染の収束については依然、見えない。そうした中で、いかに非常時への日本の備えがぜい弱であったかが見えてきた。
 感染防止の「頼みの綱」のワクチン接種率は未だ3%台であり、欧米先進国のみならず、お隣の韓国などにも劣る。感染症対策の入り口ともいうべきPCR検査率も人口比10%程度と、後発開発途上国水準だ。欧米などよりコロナ感染者数が少ないにもかかわらず生じている日本の医療逼迫も深刻な問題だ。

 

国産ワクチン開発遅れの根本対策をスルー

 国内メーカーによるワクチンの開発遅れが気になるのだろう。多くの健常人を対象にした最終臨床試験(第3相試験/フェーズ3)をせずに、その前の第2相試験のデータで承認しようという動きが政府・自民党にある。塩野義製薬が開発中のワクチンが念頭にあると思うが、河野太郎ワクチン担当大臣の「年内にも国産ワクチンの実用化もありうる」との発言ともこれは平仄が合う。
 今回のような非常時に、厚生労働省は新薬を素早く認める米国の緊急使用許可制度を導入する計画を進めている。これは、米ファイザー社のワクチン承認が英米などに比べ2カ月遅れになったことが頭にある。少しでも海外製の新薬・ワクチンの日本への導入を早めようと、国内治験データが出揃ってない段階でも、海外で使用されるワクチン・新薬を日本でも使える(保険適用できる)ようにする内容が含まれている。

米国は厳格なデータ収集に基づき審査実施

 米国版は米国内第3相試験までしっかり実施し、厳格なデータを取ったうえで審査を早める承認制度だから、日本で導入しようとするのは米国版とは似て非なるもの。
 有効性・安全性の観点からは、許可時に国内治験をスルーするのは問題のある動きで、泥縄対策だ。
 なぜ新型コロナ用のワクチン・新薬を国内製薬企業が欧米や中国のメーカーのように迅速に、遺伝子情報を活用した新規技術なども駆使して開発できないのかの、根本問題の解決にはつながらないからだ。

製薬企業への国による各種支援が必要

 本当は、製薬企業の開発・生産・海外治験などに、国がもっと支援する必要がある。米国の前トランプ政権は、ワクチン開発加速や生産構築支援に1兆円超を投じた。発生源ながら感染が早く収まった中国は、ワクチンメーカーが早くから中後期治験を海外で実施した。開発支援や海外治験に中国政府の後押しがあったのは確かで、これを考えれば、日本政府の支援の在り方に問題があるのはよくわかる。
 PCR検査体制や医療体制での問題もしかりだ。医療費抑制、保健所人員や医療病床の削減・病院再編ばかりの国の従来の医療政策の欠点が、今回のコロナ感染勃発で見事に露呈したに過ぎないことは明白だ。

泥縄対策は歯科医師駆り出しにも影響

 PCR検査、そしてワクチン接種での歯科医師での駆り出しにも、政府の慌てぶりはよく表れている。
 日本歯科医師会は、厚労省通達で一定条件が得られたということで協力をする「大人の方針」だ。国難だけに国民の生命・安全のために歯科医師の皆さんには大いに頑張っていただきたいが、日本の歯科医師の場合、日常業務で多忙な個人歯科診療所の経営者やそこに勤務する歯科医師が大半なだけに、どれだけワクチン接種に割ける余力があるのか。PCR検査での実績を見ると、心もとないのは私だけだろうか。

▼平時から突き詰めておくことの大事さ
 さらに考えてほしいことは、歯科医療や歯科経営でも、緊急事態があってからでなく、平時から、こういう事態が起きるのではないかと予測し、今からどう備えるかを突き詰めておくことの大事さである。

▼確実に緊急事態となる筆頭は歯科技工士問題
 個人的には、歯科業界全体の観点から確実に歯科技工士不足が到来するという意味では、緊急事態がくるのが見えている歯科技工士問題がその筆頭候補と考える。
 医科に比べ点数が抑えられている歯科の保険点数の在り方、10万人を超し過剰と言われる歯科医師の需給や、個人経営が大半を占める歯科診療所経営も問題が大きく時間がかるだけに、今からしっかり議論する必要がある。その動きにも注目したい。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

(東京歯科保険医新聞2021年6月号10面掲載)

2020年度第3次補正予算による感染拡大防止補助金(25万円)7月末までに交付終了見込

2020年度感染拡大防止補助金25万円(2021年2月28日締切)の入金がいまだにされないという問い合わせが多く寄せられている。

協会は保団連などと連携し、厚労省に交付遅れの実情を伝え、迅速な対応を求めており、参院内閣委員会でも審議された。国会で厚労省は、感染防止対策補助金について、遅くとも7月末までにすべての交付を終える見込みであると回答した。

また、感染防止補助金の概算払い申請について、まずはコールセンターで個別の申請状況を回答する体制を取ると回答している。医療機関からコールセンターに個別の申請状況を紹介する際は、医療機関コードを伝える必要がある。

7月末までに入金がない場合は、コールセンターに確認を取るなどの対応をしていただきたい。

問合せ:厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンター 0120‐336‐933(受付時間は平日9時30分~18時まで)

協会が2021年度第49回定期総会を開催/会長に坪田氏を互選

協会が2021年度第49回定期総会を開催/坪田有史氏を会長に互選

協会は613日、中野区の中野サンプラザにおいて、2021年度第49回定期総会を開催した。今回は昨年と同様、新型コロナ禍での開催となったため、総会記念講演、懇親会は開催せず、総会のみの開催とした。

第49回定期総会会場風景。議案6本全てを了承

総会には、役員と一般会員が41名が出席。委任状は1115名、両者を加えると1156名の参加となり、総会成立要件である会員数の10%を満たし、総会は成立した。予定していた以下の議案6本は、すべて承認された。

・第1号議案:2020年度活動報告の承認を求める件

・第2号議案:2020年度決算報告の承認を求める件/付・会計監査報告

・第3号議案:2021年度活動計画案の件

・第4号議案:2021年度予算案の件

・第5号議案:役員改選の件

・第6号議案:決議採択の件

会長就任後、今後の協会活動を巡り抱負を語る坪田有史氏

また、第5号議案にある通り、今総会は役員改選に当たっていることから、規約に基づき、総会で理事22名と監事2名の合計24名を選出した。さらに、理事の中から会長および5名の副会長を総会後の第6回臨時理事会で互選。会長には坪田有史氏が選出され、今後の協会活動を巡り抱負を述べた(下記①参照)。

なお、第6号議案では「決議(案)」が賛成多数で採択された(下記②参照)。「決議」は以下の通り。

 

 

 

 

 

◆①理事・監事紹介/役職名・氏名(開業地)

・会 長(1名):坪田有史(文京区)

・副会長(5名):山本鐵雄(大田区)、川戸二三江(渋谷区)、松島良次(目黒区)、馬場安彦(世田谷区)、加藤 開(豊島区)

・理 事(16名):阿部菜穂(江東区)、岡田尚彦(渋谷区)、川本 弘(足立区)、呉橋美紀(大田区)、相馬基逸(品川区)、高山史年(豊島区)、中川勝洋(港区)、橋本健一(東村山市)、濱﨑啓吾(練馬区)、早坂美都(世田谷区)、半田紀穂子(台東区)、福島 崇(大田区)、本橋昌宏(荒川区)、森元主税(北区)、矢野正明(板橋区)、横山靖弘(港区)

・監 事:西田 紘一(八王子市)、藤野 健正(渋谷区)

◆②第49回定期総会「決議」

協会が厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の原価割れに関する改善要求から、昨年7月に歯科用貴金属に関する「随時改定」が新設された。しかし、原価割れは依然続いており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。

昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大や度重なる緊急事態宣言で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が続いている。4月から「歯科外来等感染症対策実施加算」が新設されたが、従来株よりも感染しやすい変異株が蔓延しつつある状況では、診療間隔を空けて密を避けるなどの対策を徹底・強化している。そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る診療報酬の評価は十分とは言えず、さらに当該加算は今年9月診療分までの時限的な対応となっている。国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行い、当該加算の算定期間を延長するべきである。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厚生労働省は、今年度の集団的個別指導に選定した医療機関に対して、高点数による個別指導を実施しないことにした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。

国は、一定の収入がある75歳以上の国民(約370万人)の負担割合を、1割から2割に引き上げる。2025年には団塊の世代が75歳に至り、在宅医療の医療提供や健康寿命の延伸が喫緊の課題となる中で、その負担割合を引き上げる動きには反対である。

世界保健機関(WHO)憲章に掲げられた、人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権の1つであるとの理念を踏まえ、健康と平和を脅かす動きに反対する。

また、政府が推し進めている今後爆発的に増える高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度や自治体が実施する歯科保健に関する事業などを更に充実させること。

一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。

一.国は、院内感染防止対策の評価がコストに見合っていないなど診療報酬の問題を改善すること。

一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の原価割れが生じないよう、制度改善を行うこと。

一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。

一.私たち歯科医師は、命と健康や平和を妨げるすべての動きに反対する。

2021年613

東京歯科保険医協会

49回定期総会

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か ②

 前回は、歯科医療の変革について述べた。では、歯科医療情報標準化のために最初に何を始めたのか。
 2011年3月、東日本大震災が起こり、2013年から厚生労働省で標準化に向けた事業を開始した。口腔状態の表現を標準化し、診療情報の交換様式を視野に入れ、2017年には利活用および標準化普及事業が始まり、2020年に厚生労働省の標準規格が決定した。
 標準化事業の目的の一つである身元の確認のためには、データ交換ができることが必要となる。口腔を過不足なく表現し、歯科医療機関で共有でき、医科(SS-MIX2)との連携が必要となる。
 そのために、標準化仕様の定義に従った口腔状態の電子的記録を「口腔状態のスナップショット」と呼ぶことにして、身元の検索や確認ができるコード体系を作ることとした。標準化仕様である口腔診査情報標準コードに準拠することで、歯科医療機関同士で情報の共有化ができ、「口腔状態のスナップショット」を最新の状態に保つことで大規模災害での身元確認に資するデータが蓄積される。
 ここで先に述べるが、今後重要となるポイントがいくつかある。個人の口腔内の情報はセンシティブな個人情報に該当するため、利活用にかかわる法的側面が重要である。背景としては以下の法律がある。

①個人情報保護法(2003年)生きている個人に関する法律。
②医療情報システムの安全管理ガイドライン(2005年)厚生労働省
 ※死者の情報も対象であり、守秘義務がある。
③改正個人情報保護法(2017年)要配慮個人情報。医療情報はすべて要配慮個人情報であるから、オプトアウト(※)で提供できない。
 ※「オプトイン」は、臨床研究は文書もしくは口頭で説明を行い、患者さんからの同意(インフォームド・コンセント)を得て行われること。
  また、「オプトアウト」は研究の目的や実施についての情報を通知または公開し、研究のため
  に自分のデータが使用されるのを望まない場合は、拒否の機会を保障すること。

 将来的には、「口腔状態のスナップショット」は、生前情報の蓄積と死後情報のマッチングを目指していく。具体的には、乳幼児健診から後期高齢者歯周病健診まで一連の電子記録を蓄積し、管理できることを目指していく。
 次号では、標準化までの具体的な経緯について述べていきたい。

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年6月号3面掲載)

次年度歯科診療報酬改定に向けて「歯科総行動集会」開催/「よい歯」全国連絡会と保団連

2022年度歯科診療報酬改定に向けて「歯科総行動集会」開催/「よい歯」全国連絡会と保団連が開催し宇佐美氏も基調報告行う

「保険で良い歯科医療を」全国連絡会と保団連は本日6月3日、千代田区永田町の衆議院第二議員会館内で「6.3初夏の歯科総行動集会」を開催した。この集会は、この1年半にわたる新型コロナ感染拡大によって、口腔内の健康は感染症予防対策の上でも重要であること、政府の歯科の低診療報酬政策が新型コロナ感染防止対策の必要経費出費により歯科診療所経営を揺るがしていること…、などの現状を克服、改善に向け、2022年度診療報酬改定でその対応を求めるため開催されたもの。

コロナ対策を施した会場には、約100名が集まった

Web開催併用による開催で、全国の250会場と結び、400名以上が参加。会場参加も約100名。衆参両院の国会議員も16名が参加し、激励のメッセージを送った。

特に、自民党衆議院議員の中谷元氏は、まず「政治家は、歯が命」と述べた後、「新型コロナウイルス感染症拡大防止対策が実施されている中、歯科医師にはワクチン接種への協力得ることができたとし、協力への感謝の意を述べた。さらに、「臨床的には受診抑制が働き患者さんが減っている。歯科は全身疾患との関係が指摘されおり、本来の機能、責務が果たせるよう政府はできることはする」と強調。また、歯科技工士の尽力がなければ歯の治療はできないとした上で、「歯科衛生士や歯科技工士の問題には、真剣に対応していくべきと確認した」と所感を述べた。

次に、看護師で自民党衆議院議員の阿部敏子氏は、医師、看護師に加えて歯科医師によるワクチン接種が可能になった点に言及し、「より多くの人への接種は、心強い限り。医師・看護師の負担軽減にもつながる」と述べた後、「歯科の喫緊の課題は歯科技工士の問題であるとの報告を受けています。養成機関、離職、職場環境などの課題を整備する必要がある」と指摘し、その解決を図らなければ「歯科医療の崩壊を招きかねない問題」との認識を明らかにした。

また、歯科医師で立憲民主党衆議院議員の長谷川嘉一氏は、近年の努力もあって「歯科の問題については、与野党を問わず、多くの議員に理解していただいている」とした上で、歯科技工士問題、歯科用貴金属の価格問題の現状を報告。さらに「歯科に理解を示している議員は多い。歯科の処遇は必ず改善される」と強調した。

立憲民主党衆議院議員の村上史好氏は、「“病は気から”という言葉があるが、今は、“病は歯から”。その対応については、一つひとつ解決したい。情報提供を含め宜しくお願いする」と述べた。

続いて、医師で立憲民主党衆議院議員の吉田統彦氏は、「歯科の初・再診料は低すぎる。医科と同じにすべき」とした上で、「歯科医療費への配分を変えないとダメ。政権交代したら、一気に変えます。その判断を有しています」訴えた。さらに、唾液による新型コロナウイルス感染リスクが高いのだから、歯科医師はコロナワクチンの優先接種を受けるべきとの認識を示したほか、歯科技工士・技工物問題や歯科用貴金属の価格問題にも言及し、歯科診療報酬の改善に向け努力することを示唆した。

◆保団連の宇佐美歯科代表が基調講演

この後、保団連歯科代表で「保険で良い歯科医療を」全国連絡会副会長の宇佐美宏氏による基調報告「新型コロナウイルス感染拡大で見えた“歯科医療の危機”と“歯科医療の役割”」が行われた。

その中では、まず「歯科受診控えの結果、患者の口腔内が悪化している。と同時に、口腔は細菌・ウイルスの体内への出入り口でもあり、口腔の健康は感染症予防にも大切だ」とし、さらに、歯科医療の危機として、①コロナ禍以前から、経済的な理由で歯科を受診できない、②コロナ禍拡大で歯科受診抑制の拡大、③生活苦での受診抑制が増加してきたこと。こうした事態への対応が急務である―と指摘した。

また、歯科医療機関が直面している問題点として、受診抑制で経営的な問題がクローズアップされ、歯科技工物を製作する歯科技工士・歯科技工所の継承問題、金パラ逆ザヤ問題、歯科衛生士の雇用促進問題などを挙げ、「地域的な差異はあるが、臨床的には全国的な課題になっている」と指摘した。これらを総じて「歯科医療危機の打開として、基本的には歯科医療総枠拡・患者窓口負担軽減が必要である」と、従前からの主張を強く訴えた。

写真右が宇佐美宏氏

なお、例年は診療報酬改定の前年に歯科診療報酬改善を求めるの集会が1回開催されていたが、2022年度改定を前に、今年は夏と秋の2回開催することになり、今回はその初回に当たる。2回目は秋に開催予定。

◆歯科総行動後に「#医療費窓口負担2倍化とめる」緊急集会を開催

「6.3初夏の歯科総行動集会」終了後、同じ会場で保団連による「#医療費窓口負担2倍化とめる」緊急集会が開催された。こちらもWeb併用で開催され、全国の117会場と結び、会場参加は約100名。衆参両国の会議員も4名が参加し、あいさつした。各協会に寄せられた請願署名は、衆参両院の国会議員へ手渡された。

会場内では2倍化反対のプラカードを掲げてのアピールも行われた

 

安心・安全な歯科医療を目指して、B型肝炎パンフレットのご紹介

<東京歯科保険医協会 院内感染防止対策委員会 委員長 濱﨑啓吾>

東京歯科保険医協会では2017年より全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団主催の「歯科の感染対策を考えるシンポジウム」に参加し、感染症を持つ患者さんの切実な声に触れてきた。

患者さんの中には自らの感染症を正確に申告することで、受診拒否、ユニットや患者さんと「区別」され、傷ついた経験を持つ方が多くいる。他の患者さんと「区別」されることは感染症患者に耐えがたい苦痛を与えるとともに、医療機関で自身の感染症の申告の妨げになっている事実があることを私たちは知らなければいけない。

現在、全世界で未曾有の感染拡大を続ける新型コロナウイルス感染症も多くの無症状感染者が多くいることがわかっているが、これは他の感染症でも同じである。すべての患者さんは何かしらの感染症のおそれがあるものとして、同様に感染防止対策を実施する必要がある。標準予防策(スタンダードプリコーション)は、感染防止対策の基本となると同時に、さらに拡充することで感染症をもつ患者さんが苦痛なく自らの感染症を申告できる環境整備に繋がるのではないだろうか。

今年度の第49回定期総会議案書とともに、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団が作成したパンフレット「安全・安心な歯科医療を目指して」を同封した。ぜひご一読いただき、これからの院内感染防止対策の一助としていただければ幸いである。

最後に、診療報酬での感染対策費は圧倒的に不足しており、標準予防策拡充の大きな障壁となっている。国はこの現状を直視し、歯科院内感染対策費の診療報酬増点など、歯科医療機関の負担の軽減に積極的に取り組むことを強く望みたい。

<全国B型肝炎訴訟原告団 代表 田中義信>

私たち全国B型肝炎訴訟原告団は、幼少期に受けた予防接種の注射器の連続使用でB型肝炎に感染した被害者である。

2006年の最高裁判決後も救済しない国を訴え、私たちは2011年にようやく被害者認定基準と和解金額の枠組み合意を締結した。その際、感染症に伴う偏見・差別をなくすことを含む恒久対策、真相究明・再発防止のために大臣と定期協議をもち、活動を全国の原告の仲間と進めてきた。

2014年5月18日の読売新聞朝刊で、約70%の歯科でハンドピースが患者ごとに交換(滅菌)されていないことが報じられ、原告団は大きな衝撃を受けた。私たちは、医療器具の連続使用で新たな感染被害が生じてほしくないと願って、社会啓発活動を行うこととした。安全・安心な歯科医療を目指した歯科パンフレットの普及や、全国各地で歯科の感染対策を考えるシンポジウムを開催しているのもその活動の一つである。

2017年、東京歯科保険医協会の濱﨑啓吾氏(院内感染防止対策委員会委員長)に「歯科の感染対策を考えるシンポジウム」にて歯科の立場から参加していただいた。シンポジウムでは、受診拒否や診療の最後に回されるなどで他の患者と「区別」されることは苦痛に思う感染症患者がいること。そのことが患者自身の感染症の申告の妨げになること。また、感染症そのものに気がついていない患者もいるので、標準予防策を遵守することが重要であると確認できた。その後、福岡、大阪、富山など各地でシンポジウムが開催され、患者と歯科医師との相互理解が深まってきたと実感している。

感染症を申告することで、ユニットを別にされたり、診療の最後に回されることが、B型肝炎キャリア患者にとって「差別」されていると感じていることをご理解いただきたい。この機会を通じて、貴会会員の中でもこのパンフレットが活用され、標準予防策の更なる推進を期待し、一日も早く、患者と歯科医療機関の相互理解が深まる日が来ることを願っている。

<パンフレット>

介護報酬に係る研修会に講師として登壇

5月26日(水)に立川市歯科医師会様より講師依頼を頂き、『歯科訪問診療研修会~令和3年度介護報酬改定の内容を中心に~』をテーマに当協会の馬場副会長が登壇しました。

 

定期総会のご案内

東京歯科保険医協会

 第49回定期総会

日時

2021年6月13日(日)
午後2時30分~4時15分

場所

中野サンプラザ 13階コスモルーム
東京都中野区中野4-1-1

議事

第1号議案 2020年度活動報告の承認を求める件
第2号議案 2020年度決算報告の承認を求める件 付・会計監査報告
第3号議案 2021年度活動計画案の件
第4号議案 2021年度予算案の件
第5号議案 役員改選の件
第6号議案 決議採択の件

▶以下に該当する方は、本定期総会のご参加はできませんのでご注意ください。
・37.5℃以上の発熱がある方。
・体調のすぐれない方(味覚、嗅覚などの異常を含む)。
・新型コロナウイルス感染症「陽性」と診断されている方、または同感染症「陽性者」と診断された方と2週間以内に濃厚接触された方

※昨年同様、感染症防止対策を十分に行います。
※ご出席の際は、マスク着用などご自身および周囲への感染予防の配慮をお願いいたします。
※定期総会後の記念講演および懇親会は、新型コロナウイルス感染症の影響により、昨年同様に開催を中止とさせていただきます。
※今後の感染拡大状況によって、定期総会の開催・運営に関して大きな変化が生じる場合は、当協会HPもしくはデンタルブックにてお知らせいたします。内容を随時更新いたしますので、ご来場前に必ずご確認いただきますようお願いいたします。

本定期総会における感染予防

会員の先生方へ感染予防に関するお願いと対応のご案内

後発薬不祥事や毎年薬価改定に学ぶ必要/技工物などの安全性と報酬改定に備えよ【連載】私の目に映る歯科医療界②

国民の最大関心事は新型コロナワクチン

 現在の日本国民の最大の関心は、いつ新型コロナウイルスの感染症が収束するのか、自分にいつワクチン接種の順番が回ってくるのかだ。大阪などで、第四波ともいわれる感染拡大の動きが出ているだけになおさらだ。
 ただ、ワクチンへの盲信は禁物だ。どのくらい長くワクチンが効くか、副作用など安全性がどうなのかは、実際に多くの人に接種してみないとわからない部分があるのは確かだ。
 この原稿執筆時点では未確定だが、英アストラゼネカや米J&Jのワクチンで接種後に報告されている血栓の副反応と、ワクチンとの因果関係が疑われている。
 コロナウイルスの常だが、新型コロナでも変異しやすい問題もある。日本でも実際に英国型などの変異株が増えつつある。これが感染拡大やワクチンの有効性などに、どう影響を及ぼすのかも注目していくべきだろう。
 要するに、ワクチンが入ってきました、ハイ解決です…。とはいかないということだ。 
 医科もそうだが、歯科業界にもまだしばらく新型コロナ感染症の悪影響が残ることを前提に、経営や今後の対策を組み立てていく心構えが必要になる。

安全性と薬価が医科と製薬業界で問題化

 隣接する医科や製薬業界では、そうしたコロナ禍に加え、いま大問題になっているのが安全性と薬価の問題だ。
 小林化工に続き後発薬最大手の日医工が、承認された手順に違反した医薬品の製造・出荷を長年してきたことが相次ぎ発覚、業務停止処分を食った。小林化工では、その薬を使った患者から死者まで出ている。
 また、2021年は、薬価改定が2年に1回から毎年となった初年度にあたるが、その改定内容は、「ほとんど全面改定」といわれるほどの広い対象品目、引き下げ幅で決着し、今年四月に実施された。
 医療機関や製薬企業・卸会社にとっては経営への打撃も大きいだけに、敗北感も漂っている。

歯科も「対岸の火事」ではない

 ところで歯科は、後発品の安全性と薬価の問題は「対岸の火事」といいたいところだが、そうともいえない。
 後発薬の製造不正は小林化工など個別企業の体質問題に加え、厚生労働省の監査・監督の欠陥を露呈させた。海外工場にまで査察官が乗り込み、厳しい監査をする米国に比べ、日本の医薬品監査は甘い。査察官の数など陣容体制も貧弱だ。

歯科技工士問題にも関係あり

 歯科で気になる点は、前回も書いた歯科技工士問題だ。インレーやクラウンなど補綴物などは、事実上、大半が歯科技工士の匠の技になるものだが、その劣悪な労働環境や低い技工料、技工士全体人員の減少、歯科医師とのあいまいな契約も側聞する中で、果たして品質を確保できているのか、という点だ。
 思い過ごしならばいいが、厚労省がここでの品質問題にあまり注意を払ってきた気配がないのも気になる。技工物に限ったことではないが、歯科を受診する患者さんたちに、品質への意識向上が起き、問題が浮上することはありうる。
 転ばぬ先の杖、個々の歯科関係者のみならず、歯科業界全体としても注意を払ったほうが良いと、個人的には考えている。
 先述した製薬会社などにとり、厳しい結果に終わった中間年薬価改定は、ひとり厚労省のみならず、日本政府のほぼ総意(ついでにいえば、財界・保険支払側が応援団)だ。医療費抑制にギアを入れる姿勢を鮮明にしたことにほかならない。

歯科診療報酬の「2年に1回改定」の保証はない

 これは、来るべき歯科診療報酬の改定でも出てくると考えるべきだ。薬価が毎年改定される中、医科や歯科の診療報酬だけが従来のまま2年に1回で済む保証は、どこにもないだろう。

最悪な状況を前提とした対策立案が必要

 少なくとも、最悪のシナリオを前提にした対策は怠らないほうが良い。薬価改定での製薬業界の轍を踏まないためにも、与野党の国会議員などへの働きかけは強めるに越したことはないが、それだけでは不十分だ。
 もし、歯科業界が「安すぎる診療報酬」と考えるならば、国民にその根拠と、引き上げた場合のメリットを理解してもらい、支持を得る運動を用意周到に準備しておく必要がある。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

(東京歯科保険医新聞2021年5月号10面掲載)

第1回メディア懇談会を開催/歯科技工士問題や金銀パラジウム問題に注目

第1回メディア懇談会を開催/歯科技工士問題や金銀パラジウム問題に注目

協会は5月14日、2021年度第1回(通算第83回)メディア懇談会を開催した。前回に引き続き、コロナ禍に配慮しWEB開催とした。松島良次副会長もWEBで参加して説明に当たり、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が協会で司会を務めた。

メディアの参加は計5社・6名。今回の主なテーマは、①歯科技工士問題、②ワクチン接種に関する問題、③金銀パラジウム合金問題、④個別指導延期でおこる問題、⑤第49回定期総会の案内―などで、メディアから意見や発言を求め、懇談に移った。

その中で①の歯科技工士問題では、「技工士自体がなぜもっと声をあげないのか。組織的に動かすことができないのか」との発言があった。これについては、過去の歯科技工士団体の動向や、本年四月に開催された「歯科技工問題を考える国会内集会」での報告、協議・検討内容を紹介した。

次に、②のワクチン接種問題では、「なぜ、医療従事者が接種できないのか」、「高齢者と触れる機会が多い医療従事者こそ、優先してワクチン接種をするべきではないのか」といった意見、発言もあった。

これに対し協会は、今の医療従事者のワクチン接種予約システムの状況や、協会から東京都へのどのような要請をしているかなどを説明した。

また、③の金パラ合金問題では、過去の金パラ価格推移をグラフで紹介した後、「逆ザヤが強い時には、歯科医師はどう対処していたのか」、「国の対応はどのようなものだったか」などが質された。

そのほか、④の個別指導延期問題については、関東信越厚生局東京事務所に個別指導延期の要望書を提出したことなども、併せて紹介し、参加メディアからも「要望書提出は重要な意義を持つものだ」などの指摘を受けた。

厚生労働省が歯周病の効果的な対策検討に本腰/ワーキンググループ設置

厚生労働省が歯周病の効果的な対策検討に本腰/ワーキンググループ設置

―今後の対策の指標や目標値、歯科健診の在り方などを検討

厚生労働省は514日、「歯科口腔保健の推進に係る歯周病対策ワーキンググループ」(以下、「WG」)を設置し、その初会合を開催した。会合は港区内の会場でオンライン併用の形で行われた。歯周病に関しては、成人の約7割が罹患しており、平成 28 年歯科疾患実態調査によると、歯肉に所 見のある者の割合は減少しているが、進行した歯周病のある者の割合は改善していない。また、糖尿病や循環器疾患など、全身疾患との関連が指摘、注目されて久しいが、このWGは歯周病への効果的な対策を検討することが狙いで、今後は、対策の指標や目標値、歯科健診などの在り方に関し、その方向性が議論されることになっている。座長には、国立保健医療科学院統括研究官の福田英輝氏が就任した。

◆検討課題

WGの検討課題は、①歯周病に関する現状:疾患の現状、対策の現状など、②効果的な予防対策、③歯周病対策に係る指標・目標値、④歯周病に係る健康格差、⑤歯科健診等のあり方、⑥全身疾患と歯周病の関係に―などとなっている。なお、WGのメンバーは以下の通り。

【歯科口腔保健の推進に係る歯周病対策ワーキンググループ構成員】

福田 英輝/座長:国立保健医療科学院統括研究官

神村 裕子/公益社団法人日本医師会常任理事

山本 秀樹/公益社団法人日本歯科医師会常務理事

茂木 美保/公益社団法人日本歯科衛生士会副会長

成瀬 桂子/一般社団法人日本糖尿病学会学術評議員

小方 賴昌/特定非営利活動法人日本歯周病学会理事長

森田  学/一般社団法人日本口腔衛生学会副理事長

家守己恵子/岡山県倉敷市保健所健康づくり課主幹

馬場 順子/全国保健師長会常任理事

平田 佳永/石川県健康福祉部健康推進課健康づくり推進グループ主幹

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用 および標準化とは何か①/口腔診査情報標準コード仕様 厚労省標準規格に採用

―はじめに
 「標準化」とは「いつ誰が行っても同じ手順で無駄なく作業を行えるか」を示すことである。口腔状態の表現を標準化することにより、診療情報の交換ができるようにするのが目的である。
 東日本大震災(2011年3月)を契機に、歯科所見による身元確認が注目されるようになった。当時は、参照先の電子情報が不統一のために、現場での確認作業がなかなか進まなかった。大規模災害時において身元確認を正確かつ迅速に行うためには、歯科所見と情報技術の連携が必要となる。
 厚生労働省医政局歯科保健課事業の一つとして、かねてより歯科所見の標準化について議論されてきた。2021年3月26日に、厚生労働省が保健医療分野の適切な情報化を進めることを目的に制定している「口腔診査情報標準コード仕様」が「厚生労働省標準規格」に採用された。
 「口腔診査情報コード仕様」とは何なのか。その背景と経過には何かあるのか。それでは「医療情報」「標準化」の視点で今までの歯科治療を振りかえってみよう。

①オーダリングシステム(※1)の必要性が低かった。口頭指示で十分な施設規模および指示内容である。
②自己完結型の診療が多かった。自院内でほとんどの症例に対応できていた。
③診療録、レセプトは診療報酬請求のためだけで、情報の二次利用は行われていなかった。
④問診、インフォームドコンセントは口頭で済んでいた。

 これらに対し、現代の歯科医療は、以下の視点が重視される。

①他職種連携が一般的になり、確実で正確な情報連携、指示伝達が求められる。
②地域医療連携。介護や行政など他の機関と協働する地域医療連携が求められる。
③同意書、交付文書。患者自身が情報に触れて自己決定する時代。
④エビデンスに基づいた治療。EBM(※2)が求められる。

 今後、カルテ・レセプトの利活用に関する動きなどを見ると、医療界で共通言語を構築しなければならない時代となっていく可能性もある。
 このような歯科医療の変革の中で、「標準化」という概念が生まれた。次号では、標準化のために最初に行われたことについて述べていきたい。

※1 オーダリングシステム
 医師や看護師が行う検査や処方などの指示(オーダー)を電子的に管理する医療情報システム
※2 イービーエム(EBM)
 「Evidence-Based Medicine」の頭文字をとったもので、「(科学的)根拠に基づいた医療」と訳されている。ここでいう(科学的)根拠(=エビデンス)とは、これまでに行われてきた医療に対する研究成果を指す。

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年5月号3面掲載)

技工問題で国会内集会/17団体等が参加

歯科技工士・歯科技工士養成校めぐる諸問題で国会内集会/歯科技工士会含む関係17団体等が参加

保団連と「保険で良い歯科医療を」全国連絡会主催による第6回「歯科技工問題を考える国会内集会」が422日、衆議院第二議員会館を会場とし、WEB開催された。当会からは、中川勝洋・矢野・森元各理事と西田紘一監事、事務局が参加し、東京都歯科技工士会の石川功和会長も参加した。全体ではこれまでにない多数の参加があった。全国連絡会会長の雨松真希人氏が挨拶と基調超報告を行い、歯科技工士に関する経済的問題、73問題、中医協での協議内容の問題、歯科技工学校の入学者減少問題などを提起し、参加者からの報告、フロアとの議論が行われた。なお、国会議員17名の参加があり、当協会の森元理事と都技の石川会長、自民党衆議院の三林裕巳議員、立憲民主党衆議院の長谷川嘉一議員がしばし歓談する光景もあった。なお、今回は、歯科技工士会等12団体、歯科技工士養成校3校、歯科技工所2社の参加があり、過去最多の参加となった。

この集会に先立ち、「歯科技工士会・養成機関関係者との懇談会」が開催されたが、WEB参加した歯科技工専門学校長から歯科技工士養成校から見た現実、問題点、強く改善が求められる内容などが報告された。その中では、「医学部を卒業しても看護師国家試験受験資格はない。歯学部を卒業しても歯科衛生士国家試験受験資格はない。しかし、歯学部を卒業すれば、歯科技工士国家試験受験資格はある」と、国家資格としての歯科技工士のあり方に言及した。さらに、新型コロナウイルス感染症関連の問題恬として慰労金、福祉医療機構による融資、ワクチン接種などの申請について、「歯科技工士は対象外になる場合がある。これらは、現実の生活において重要であるが、切実な課題」と指摘した。

この後、同じ議員会館内で良い歯全国連絡会主催による「歯科技工問題の改善を求める厚労省要請」が実施され、厚労省に要望した、①新型コロナ感染拡大への対応、②歯科技工士の養成・確保、③委託技工取引の改善、④歯科技工物の保険点数決定―の4点(5項目)の要請への回答の説明を受け、質疑応答形式でさらに要請を行った。

なお、今回の集会では、「#医療費2倍化止める署名提出集会」が急きょ組み込まれ、署名129913筆が衆参両院の国会議員を紹介議員として国会に提出した。これにより合計署名数は1003697筆となり、保団連の当初目標であった100万筆を上回った。

◆なお、この日、よい歯全国連絡会が厚労省に提出した質問への厚労省側の回答は以下の通り。 

【1】Q コロナ禍における歯科技工所への必要な支援策を要望します。歯科技工所を医療機関と同様な位置づけを求めます。(新型コロナ感染拡大への対応)

A厚労省 歯科診療所の従業員はコロナ感染症拡大防止に尽力しているとみなされ、行政(都道府県)に申請すれば、コロナワクチン接種を受けられる。そこで、歯科診療所に出入りする歯科技工士でも、“感染症に罹患される可能性がある”と診療所院長が判断・申請すれば接種が可能とされます。あくまで、その判断は院長に委ねられます。医療機関の医療従事者や職員には、医療機関での集団感染の発生状況から相当程度心身に負担がかかる中、強い使命感を持って業務に従事していることに対し、慰労金を給付する新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業が行われております。医療従事者等の慰労金については、原則として、医療機関等が医療従事者等から委任を受けて代理申請・受領を行い、医療機関等から医療従事者等に給付いただくこととされています。

歯科技工所の医療機関との同様な位置づけ要望がありましたが、そもそも論として医療機関とは、医療法で定められた医療提供施設のことを指しますが、この理解が前提・必要かと思われます。 

【2】厳しい運営を強いられている歯科技工士養成機関への助成制度・学生支援の奨学金制度創設を求めます。(歯科技工士の養成・確保について)

A厚労省 歯科診療提供にあたって、歯科診療所との一連の存在であり、その重要性を理解しています。まさに不可欠の存在であります。政府として消費税増収分を活用して新たに財政支援制度(地域医療介護総合確保基金)が設置されていますし、歯科技工所も歯科技工士の確保、あるいは施設の設備に活用できます。また、歯科技工士の教育内容の充実、質の高い医療を提供できる人材育成の施設にも活用できます。

【3】73に準じた委託技工取引を実現するために、歯冠修復・欠損補綴を中心とし基礎的技術料の抜本的引き上げを求めます。(委託技工取引の改善について)

A厚労省 歯科技術料の評価等は基本的には、中央社会保険医療協議会(支払側7名・診療側7名・公益側6名の三者構成20名)で議論を重ね決定されます(歯冠修復・欠損補綴の分野も包含)。歯科領域では、歯科の立場からの委員(歯科医師)が主張して理解を得る努力していますし、そこに歯科側の意見反映と認められ了解されています。

【4】73に準じた取引を実現するための実効的なルールの策定を求めます。(委託技工取引の改善について)

A厚労省 73に準じたという意味では、“大臣告示73”が確認・了承されています。そこで、“概ね”の文言で、厳格・絶対に73ということではなく、歯科医院・歯科技工所の個別の話し合いで価格決定するルールで、了解され今日に至っています。

【5】実働実態を反映した原価計算によう歯科技工物の点数の決定プロセスの確立を要望。市場実勢価格の調査は非公開ですが、公開を求めます。(歯科技工物の保険点数決定について)

A厚労省 歯冠修復及び欠損補綴に際して用いられる各種歯科技工物の歯科技工を調査し、歯科保険医療について検討 。医療材料の使用状況及び実勢価格を把握し,診療報酬改定及び材料価格改定の基礎資料を得て、中央社会保険医療協議会で論議し決定しています。政府からの諮問に対してこの決定内容を答申して、これが保険点数の決定になります。 

◆保団連が4月22 日の集会内で「75 歳以上医療費窓口負担2割化撤回を求める」請願署名1万7945 筆を引き受けた国会議員(署名紹介議員)の一覧は以下の通り。

<署名紹介議員>(順不同)

池田真紀衆議院議員(立憲・比例北海道)

山本和嘉子衆議院議員(立憲・比例北陸信越)

日吉雄太衆議院議員(立憲・比例東海)

村上史好衆議院議員(立憲・比例近畿)

武内則男衆議院議員(立憲・比例四国)

山内康一衆議院議員(立憲・比例九州)

吉川 元衆議院議員(立憲・比例九州)

川内博史衆議院議員(立憲・鹿児島1区)

徳永エリ参議院議員(立憲・北海道)

田名部匡代参議院議員(立憲・青森)

川田龍平参議院議員(立憲・比例)

清水忠史衆議院議員(共産・比例近畿)

田村貴昭衆議院議員(共産・比例九州)

赤嶺政賢衆議院議員(共産・沖縄1区)

武田良介参議院議員(共産・比例)

嘉田由紀子参議院議員(碧水会・滋賀)

伊波洋一参議院議員(沖縄の風・沖縄)

根深くとも歯科技工士問題の本質は明白だ/求められる「正攻法」による解決策の提起【新規連載】私の目に映る歯科医療界①

 “仲間”の劣悪環境をこれ以上放置すべきでない。
 歯科医師と歯科技工士の積年にわたる状況、東京歯科保険医協会会員の歯科医師の「生傷」をひっかくことになるはずだが、それでも協会が今回も「歯科技工所アンケート」を行ったことは、解決への第一歩だと高く評価したい。
 「あまりに歯科技工士の生活や環境を無視して、また犠牲の上で成立しているとしか思えません」。アンケートでの歯科技工士の声は生々しい。東京歯科保険医協会も機関紙2021年1月号でそのサマリーを紹介しているが、私なりに気になった歯科技工士の窮状をまとめるとこうなる。
▼総労働時間 1週間60時間超過の技工所の割合48%、いわゆる過労死ライン80時間超も21%で5人に1人がそのゾーンに存在する。
▼可処分所得 400万円以下が59%。国税庁民間給与実態調査による民間人の平均年収は436万円。

歯科医師にも「我が事」

 歯科技工士が歯科診療所に欠くことができない仲間なのはいうまでもない。協会理事の森元主税氏もこの問題に関する連載の中で指摘するように、歯科保険診療の40%を占める歯科修復、欠損補綴は、歯科技工士の存在なしには成立しない。
 この状態の放置は寝覚めが悪いばかりか、業界全体の自殺行為になりかねない。5年以内に新既卒歯科技工士の七割が業界を離れる(離職でなく”離業”)、60歳代以上が歯科技工士の5割弱を占めることを重ね合わせると、歯科技工士不足が早晩深刻化し、歯科業界の足元が崩壊するのも明らかだ。
 歯科技工士の待遇・環境改善はいまや他人事でなく、歯科医師自身の存続に跳ね返る「我が事」に他ならない。

7:3問題は解消可能

 歯科修復や欠損補綴などの低い保険点数が、この問題の根元にある。
 保険点数を上げる手立てはある。保険報酬の算出のもとを歯科技工士が実際に受け取っている技工料調査ではなく、歯科技工士の適切な労務コスト・歯科技工士原価による積算に切り替えることだ。同じ公定価格の国発注の建設価格では、下請け労働者の労務単価積算をする。おかしなことではない。
 医薬品では、卸と病院などの交渉による市場実勢価格をもとに薬価算定が行われている、という反論はあるかもしれないが、卸は再編で巨大化している。製薬メーカーもその背後にいて、値引きはしても死活ラインを突破する構図にはない。
 医薬品の場合、新薬が最初に保険収載される際の薬価(公定価格)算定では原価積み上げ方式も入っている。厚労省は卸の無分別な値引き抑制に流通改善ガイドラインを設定、大企業の卸を病院・薬局からの過剰な値引き圧力から守ろうとしている。
 その一方で、一人親方が多い弱い立場にある歯科技工士の窮状を知りながら、歯科診療報酬の抑制につながるとばかりに、市場原理・自由競争の建前のもと”過剰”値引きされた技工料金を算出根拠にするのは、先の医薬品の実例とはダブルスタンダードであるばかりか、歯科技工士の過酷な環境を放置、むしろ劣悪化させる点で先進国の行政の名に値しない。
 歯科技工士と歯科医師の取り分(7:3が適切かは検討すべきだが)をルール化、違反行為は厳格に取り締まることも同時にすべきだ。ゼネコンと下請け間では、公正取引を担保することが行政のルールになっている。
 保険点数が上がれば歯科診療所にも多少の余裕はでき、ゼロサムゲームをしなければならない圧力は、少なくとも弱まるのではないか。
 もちろん、財政ひっ迫の政府に要求をのますのは至難の業だ。最終コストを負担する国民の理解も必要だ。
 マスコミも巻き込み、真正面からこの問題のおかしさを国民に訴えて、行政を動かすべきだ。国民も同胞である歯科技工士の過剰労働・過少報酬の上にもたらされる、「不当に」安価な歯科診療を望んではいないはずだ。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者  大西 富士男

(東京歯科保険医新聞2021年4月号10面掲載)

保団連が田村大臣要望/コロナ補助金改善で  

保団連が田村厚生労働大臣に新型コロナ補助金の交付改善で要望書を提出 

保団連は4月13日、住江憲勇会長、 太田志朗経営税務部長の連記名により、新型コロナ関連の補助金交付改善に関する要望書を田村憲久厚労大臣に要望書を送付した。内容は、以下の通り。 

厚生労働大臣 田村憲久 殿

『感染防止「補助金」について、医療機関への丁寧な対応を求める』

2021 年4月 13

全国保険医団体連合会 会長 住江憲勇

経営税務部長 太田志朗

政府が医療機関支援として措置した「令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防 止・医療提供体制確保支援補助金」(以下、令和2年度「補助金」)の交付遅れが続いている。 当会には、相変わらず申請自体が受け付けられているのか不安に感じている会員からの問い合わせが殺到している。その背景には、厚労省の設置したコールセンターに問い合わせてもつながらないことや、個別の処理の進捗に関しては回答できないとしていることなどがある。

厚労省の事務手続きの遅れにより生じている事態に対し、交付決定通知書の送付を迅速に行うとともに、個々の医療機関への丁寧な対応を行うことを求める。例えば、コールセンターに医療機関コードなどを伝えれば、自院の「補助金」申請状況を教えてもらえるなどの対応をお願いしたい。

加えて、厚労省より「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」(以下、令和3年度「補助金」)が提示された。この間、第2次補正予算から続く医療機関への支援としての「補助金」制度は、医療機関に負担を強いるものとなっている。煩雑な申請方法や実績報告での膨大な事務手続きは医療機関の日常診療に支障を及ぼしている。コールセンターに連絡しても、担当者によって回答が違うなどの事例も多く、当会にも苦情が寄せられている。

医療機関は、新型コロナウイルス感染の第4波に直面し、さらに緊迫している。今回のような混乱した事態を解決するためにも、すべての医療機関に減収補填を行うことこそが必要 である。 以上をふまえ、「補助金」の交付について下記事項の改善を求める。

1. 「令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」 (以下、令和2年度「補助金」)について、

(1)交付決定通知、入金が大幅に遅れていることについて、実務作業のペースを抜本的に 早め迅速な交付を行うこと。

(2)コールセンターなどで、医療機関からの申請が受け付けられているかどうかなど、個別の申請に対する処理の進捗をアナウンスする対応を取ること。

(3)実績報告は購入経費の一覧表などで足りることし、領収書の添付など医療機関に膨大な事務負担を強いる方法を改善すること。

2.「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」 (以下、令和3年度「補助金」)について、

(1)すべての医療機関へ上限額を一律に給付を実施した上で、簡便に精算する仕組みを 講じること。

(2)令和2年度「補助金」を申請していない医療機関に制度の周知をすること。

(3)令和2年度「補助金」と同様に、入金される時期を公開すること。

(4)実績報告は購入経費の一覧表などで足りることとし、領収書の添付など医療機関に膨大な事務負担を強いる方法を改善すること。

(5)コールセンターについて、制度をよく理解した職員を増員し、懇切丁寧な対応を行うこと。

令和3年度感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金が公表されました

令和3年度感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金が公表されました。

今回の補助金の申請は

令和2年度の支援補助金(2月に行われた上限25万円の支援金)を申請した方は対象外

となります。

詳細は以下の通りです。

1.申請期限

2021年9月30日(木)当日消印有効

2.対象期間

2021年4月1日~2021年9月30日までにかかる経費

3.対象経費

「従前から勤務している者及び通常の医療の提供を行う者に係る人件費」を除き、感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用が対象
 感染拡大防止対策に要する費用に限られず、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供するための診療体制確保等に要する費用ついて、幅広く対象となる


経費例
・日常業務に要する消耗品費(固定資産に計上しないもの)
・日常診療に要する材料費(衛生材料、消毒薬など)
※直接診療報酬等を請求できるもの以外
・換気のための軽微な改修(修繕費となるもの)
・水道光熱費、燃料費
・電話料、インターネット接続等の通信費
・休業補償保険等の保険料
・受付事務や清掃の人材派遣料で従前からの契約に係るもの
・受付事務や清掃の外部委託費で従前からの契約に係るもの
・日常診療に要する検査外注費
※直接診療報酬等を請求できるもの以外
・既存の施設・設備に係る保守・メンテナンス料
・既存の診療スペースに係る家賃
・既存の医療機器・事務機器のリース料

以下のQ&Aから抜粋しています。ご参考にしてください。

令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金に関するQ&A

4.申請方法(郵送により行います)

1)申請書類(精算申請と概算申請により提出する書類が異なります)

⑴[ 申請する 経費の支出が 全て 終わっている場合 ]
➀交付申請書(第 5 号様式)
➁申請書の 別紙
③厚生労働省への 請求書
④申請する経費に係る 領収書等の支出額が分かるもの (写し)

⑵[申請する 経費の支出が終わっていない場合 ]
①交付申請書(第3 号様式)
②申請書の 別紙
③厚生労働省への 請求書
※事後に事業 実績報告が必要となりますので、領収書等の証拠書類は保管しておいてください 。

↓申請書は以下からダウンロードしてください↓

(リンク切れしている場合は厚労省HPからダウンロードしてください)

2)提出方法
以下へ郵送してください。
住所:〒 119-0397 銀座 郵便局 留
宛先:厚生労働省新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金 担当 宛

 

3)事業実績報告の提出

提出期限

申請時に「申請する 経費の支出が終わっていない場合 」は 、事業(支出)が終わった日から1 か月以内又は令和 4 年4月 10日のいずれか早い日 までに事業実績報告書を提出してください。

提出方法

以下へ郵送してくだ さい。
住所:〒119-0397 銀座郵便局留
宛先:厚生労働省新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金 担当 宛
交付決定通知と同封されている案内状 の通知番号 (左上記載) を封筒に記載して送付ください

提出書類

①事業実績報告書(第4 号様 式)
②実績報告書の 別紙
③領収書等の支出額が分かるもの(写し)

↓実績報告書は以下からダウンロードしてください↓

(リンク切れしている場合は厚労省HPからダウンロードしてください)

※書類の印刷等がうまくいかないなど、手書きの書類が必要な場合は、厚生労働省コールセンター(0120-336-933)までお問い合わせください。

また、東京歯科保険医協会の会員以外の先生は所属の保険医協会までお問い合わせください。

4)その他

消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書(第2号様式)
※令和3年度の消費税及び地方消費税の確定申告により、補助金に係る消費税及び地方消費税にかかる仕入れ控除  税額が確定した場合は、令和5年6月30日までに上記様式により厚生労働省まで提出してください。
提出先:〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2 厚生労働省医政局医療経理室 宛

提出先:以下へ郵送

〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2厚生労働省医政局医療経理室 宛

5.問い合わせ先

厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンター
電話:0120-336-933(平日9:30~18:00)

厚生労働省HP

協会へのお問い合わせ

Mail:info@tokyo-sk.com
電話:03(3205)2999 経営管理部

理事会声明「今こそ歯科界全体として歯科技工士問題に取り組むべきである」(機関紙2021年4月号<613号>2面掲載)

理事会声明

「今こそ歯科界全体として歯科技工士問題に取り組むべきである」

歯科技工士を取り巻く環境は、長時間労働・低賃金などの諸問題が長らく放置され、養成学校への入学志願者も減少している状況である。そこで、東京歯科保険医協会は、改めて実態を把握するとともに、問題解決に向けた方策を検討すべく、歯科技工士問題検討委員会を立ち上げた。

20209月に東京都23区に所在する歯科技工所に対し実施した「歯科技工所アンケート」では、長時間労働、低賃金の過酷な状況が改めて示された。週の労働時間が、過労死ラインといわれる60時間を超えているとの回答が48%あり、60%が週1日以下の休日と回答した。また、可処分所得は200万円以内が22%と最も多く、特に個人開業では54%が300万円以内であると回答している。歯科技工物の価格が安くなる原因と思われるものでは、「歯科技工所間のダンピング競争」「補綴関連の低診療報酬」「歯科医療機関による値下げ圧力」「歯科医療機関の経営悪化」全ての項目で半数以上が「そう思う」と回答しており、歯科技工所の置かれている状況の厳しさが浮き彫りになった。また、保険診療制度に対して今後望む方向として、「保険請求の技工所直接請求」が65%と最も多く、特に 二十代~五十代で技工所が保険請求を直接行うことを求める声が多かった。

歯科技工所、歯科技工士が抱えている問題点については、長時間労働、低賃金だけでなく、歯科技工士の社会的評価の低さや、歯科技工士の業務範囲の狭さ、歯科技工物の低診療報酬、歯科技工士のなり手の少なさや離職率の高さなど多岐に渡っている。

現状のままでは、個人開業の歯科技工士がいなくなる未来もありえる。そうなれば、地域に根差した歯科医療の提供が難しくなる。歯科保険診療の中で歯冠修復、欠損補綴に関わる治療は40%前後を占めており、歯科技工なくしての歯科治療は存在しない。歯科技工所、歯科技工士を取り巻く環境改善には、業務範囲の拡大、保険請求の技工所直接請求や73問題の改善などの診療報酬の仕組みの見直し、教育機関の充実などが考えられる。

 根本的な問題は、約20年間ほとんど増点されず消費税増税分を考慮すると逆に減点されている歯科補綴関連の診療報酬の低さにある。新規技術が保険導入されたとしても、低い点数での導入であり、小規模ラボでは機材購入に踏み切れず技工物の製作が不可能である。そもそも、日本の歯科保険診療報酬は低く抑えられており、世界と比較しても5分の110分の1程度しかないことが問題である。

東京歯科保険医協会は、以前より要求しているように次期診療報酬改定でも、歯科補綴関連の技術料の引き上げを中心とした診療報酬総枠拡大を引き続き求めていく。また、歯科医師のパートナーである歯科技工士、歯科技工所とより一層の対話を深めながら、チェアサイドや訪問診療などでの業務範囲の拡大、診療報酬の仕組みの見直しなどに取り組んでいく。

今こそ歯科界全体が一丸となり、歯科技工士問題に取り組むことこそが解決の一歩になると確信している。

2021年3月26日

東京歯科保険医協会

第21回理事会

マイナンバーカードによるオンライン資格確認システム 導入は慎重に。

 

2021年3月から開始予定のマイナンバーカードを利用した健康保険証のオンライン資格確認システムについて、導入意向調査に関する協力のお願いが各医療機関に届いている。

 

 

オンライン資格確認システムの導入については、費用補助があり、42.9万円を上限として、10割補助することととなっている。

全額補助を受けるには2021年3月末までにオンライン資格確認システムの顔認証付きカードリーダーを申し込む必要がある。

ただし、2023年3月末までに申し込みをすれば42.9万円を上限として、3/4の費用補助が受けられる。

現在、カードリーダーの申込率(2月28日時点)は全国の歯科診療所で28.6%、東京では31.4%に留まっている。

健康保険証の資格確認がその場でできるシステムではあるが、患者がマイナンバーカードへの健康保険証の「紐づけ」をしていない場合には、窓口での対応が増えることや、通信機器やカードリーダーの保守料、毎月の費用負担が増えるなど、医療機関にとってデメリットもある。また、継続的な使用がされない場合は、補助金の返還が必要になる。

導入に際しては、継続的に使用できるか、費用負担、患者への対応なども踏まえ、慎重な検討をしていただきたい。

 

なお、従来通り、健康保険証での受診はもちろん可能である。

全国保険医団体連合会では、患者さんに向けたポスターを作成しているので、ぜひご活用いただきたい。

 

 

 

       ↓全国保険医団体連合会HP↓

https://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/mynum/index.html