―休診案内ポスター
ダウンロードのご案内―
年末年始の休診日にご使用いただける『休診案内ポスター』をご用意いたしました。
ご入用の方は、お好みのデザインをダウンロードのうえご使用ください。
郵送をご希望の方は、会員優待ページからお申し込みください。
―休診案内ポスター
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(10月11日(月)現在)
45筆の署名が届きました。もうすぐ50筆です。
<頂いたご意見>
・歯科はクラスターを出すこともほとんどなく、COVID-19をのりきっています。現場の努力も必要ですが、診療報酬の評価が絶対に必要です。10%以上の引き上げを求めます。
・初診料、再診料は医科と歯科で差がある根拠が理解に苦しむ。とりわけ感染防止に関しては、同様な配慮と対策をしているのに。
・特に後期高齢者の窓口負担2割については、満心の怒りをこめて抗議します。さらなる受診抑制を招き、国民の健康増進を後退させることはもちろん、医療機関にも壊滅的なダメージを与えます。
歯科医療は、「感染症の予防」「基礎疾患のある患者の重症化予防」など全身の健康にとっても重要であると指摘されています。しかし、新型コロナ感染への不安などのために歯科医療機関への受診控えが進み、患者・国民の口の中の状況は悪化しています。
歯科医療機関では、以前から感染症防止対策を徹底していますが、現在の感染拡大下ではこれまで以上の対策が求められており、現在の低い診療報酬体系では医院経営はより厳しいものとなっています。窓口負担の引き下げや診療報酬の引き上げなど医療への国の予算を増やすことは、患者と医療従事者みんなの願いです。
協会は、全国の保険医協会と協力し、全国10万人強の医師・歯科医師の会員と共に、よりよい医療を求めるため医師・歯科医師署名、患者署名に取り組みます。また、患者さんに、楽しみながら医療の大切さを学べるクイズ企画も実施しています。ぜひ、ご協力をお願いします。(会員の方には、月間保団連10月号:10月5日(火)頃送付でもお届けしています。)
歯科医師のWEB署名はこちらをクリック |
関連活動
「クイズで考える私たちの医療(WEB申込)」(下記バナーをクリックしてください)
◆東京歯科保険医新聞では、2022年新春の紙面を彩る会員読者の写真の募集をしています
写真のテーマは『希望』です。2020年から新型コロナウイルスが世界的に流行し、私たちは生活様式の変化を余儀なくされました、終息にはまだ時間を要すると思われますが、しかし、その中でも、必ず「希望」はあるはずです。新春の紙面を飾る「希望」を表現した写真作品の投稿を期待しています。皆さまからのご応募をお待ちしております。
▽締め切り 11月30日必着
▽応募方法
E-mail もしくは郵送でご応募ください。
E-mail:info@tokyo-sk.com
郵送先:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-8
宛先:東京歯科保険医協会 広報・ホームページ部
▽作品
写真データは1MB以上。写真プリントの場合、サイズは2L判(白黒またはカラープリント)。必ず作品名を明記してください。写真とともに「作品名」「氏名」「地区」を掲載いたします。
ご応募いただいた写真データ等はご返却いたしません。なお、掲載する写真は、厳正な審査を経て決定いたします。
「#いのちまもる医療・社会保障立て直せ!10・14総行動」が10月14日、日比谷応援内の「野音」で開催された。協会からは、保団連副会長を務める森元主税理事と事務局が参加した。コロナ禍の中、感染対策を施して準備した会場には関係者が約200参加した。
その中で協会の森元理事が発言し、新型コロナ新規感染者数は減少しているものの、医療機関の受診控えや介護の利用控えが続いていること、子どもの健康管理などにも悪い影響を及ぼしていることなどを指摘。さらに、「長年の低医療費政策、医師数抑制策によって脆弱になった医療提供体制の立て直し、診療報酬の大幅な引き上げが必要だ」と締め括った。
なお、昨年に引き続き、新型コロナ対策のため集会動画配信も実施し、協会の坪田有史会長、中川勝洋・橋本健一・半田紀穂子各理事が参加した。集会には、日本医師会の中川俊男会長、日本歯科医師会の堀憲郎会長からのメッセージが紹介された。
Ⅰ.概算医療費は歯科微減もコロナの打撃は小さくない
この数字だけを見れば、歯科へのコロナのダメージは浅いように見えるが、そんなことはない。受診した延患者数(受診延日数)は7%近くも減少していて、1日あたりの診察点数・1件当たりの点数の伸びでカバーしているのが実態だ。歯科診療所の経営は楽でないが、報道の仕方次第では、国民の受け止めも違ってくる。
9月1日の日経新聞の1面記事は、「医療費最大の1.4兆円減」と大きく打った大見出しに加え、「コスト抑制の余地映す」との小見出しがついている。記事本文も識者の声を混じえながら、コロナ受診控えとは別に、医療費の助成が大きな小児科などを例に挙げながら、過剰診療の可能性があることなどを指摘している。不要不急の受診を抑え、医療費抑制の取り組みの必要性を強調する内容になっている。うがった見方をすれば、概算医療費の減少からは、過去に無駄な診療があったことが分かったとも読み取れる記事になっている。 これを完全否定する必要はないが、必要な治療を遅らせてしまっていないかなどの受診控えのマイナス面にも目を向けてほしかった、というのが率直な思いだ。
Ⅱ.コロナ感染の影響実態映す東京歯科保険医協会アンケート
そうした中、たまたまコロナ感染症の影響などを尋ねた東京歯科保険医協会の会員アンケートの集計結果が出ているのを知り、ホームページに載っている詳細な内容を拝見した(概要は9月1日付けの当機関紙にもグラフ付きで報じられている)。
2021年4月の1年前との比較だが、医業総収入が増加したとの回答が43%で、減少したとの34%を少し上回っている。最新の概算医療費のデータは21年3月までの1年間の動きをまとめていて、対象年月の違いから正確な対比はできないが、増加組と減少組がかなり拮抗するとの貴協会の回答は、歯科の概算医療費微減とほぼ足並みを合わせた動きのように推察できる。
貴協会の今回のデータで興味深かったのは、訪問診療の動きだ。1年前と比べて増加したと回答した会員が21%を占め、減少したとの回答割合30%を下回っている。外来患者数は1年前に比べ増加したとの回答が43%、減少したとの回答34%を上回っていて回復の兆しが見えるのと違って、立ち直りが鈍い傾向が見て取れる。居宅にせよ、介護等施設住まいにせよ、訪問診療の主顧客である高齢者や介護業者などが、コロナ感染を恐れる等の理由から歯科での訪問診療を手控えしている様子が、このデータ結果の背後にうかがえる。
もうひとつ、このアンケート実施がよかったのは、新型コロナ感染拡大の患者への影響を会員の歯科医師などに聞いている点だ。
直接診察している歯科医師の目から見た回答は、コロナ禍を知る上で国民にとっても非常に貴重だ。概算医療費の数字上の動きからは決して分からない患者への影響を知る、つまり先述の日経記事に欠けている視点を補う上でも重要なデータといえるからだ。
回答総数586件のうち、回答が多かった順に挙げると、歯周病の悪化が378件、う蝕の進行が303件、義歯の脱離・不適合168件と続いている。
「感染拡大の影響で検診の自粛や受診控えが見られるため、来院時には悪化しているケースが多くなっている」「高齢者の(来院)中断から再開までの期間が長くなり予後不良になるケースが目につく」など、患者の症状悪化につながる悪影響を指摘する会員歯科医師の声の、まさにオンパレードとなっていて、実に興味深かった。
Ⅲ.国民向けにいかにうまく伝えられるかが課題に
患者治療に携わる歯科医師からの生の声、医療現場に根差した実際の諸データが、年末に向け本格化する中医協の議論にも、政治家や厚労省などへの陳情・要求する上でも、強力な武器になることは間違いない。
歯科技工士、金パラ逆ザヤ、今回のコロナ感染拡大の影響などタイムリーなアンケートを実施し、公開してきた貴協会の努力には敬意を表するが、さらに一歩進んで、これを国民にどううまく伝えられるかも検討されてはどうか。
中長期での医療費増加の解決は、日本の大きな課題だ。国民の中にも歯科を含めて医療費に過剰診療要素があり、診療報酬の引き下げを漠然と支持する空気があることも事実だ。これには正確な情報不足に起因する部分も少なくない。そのためにも、低く抑えられてきた歯科診療報酬のアップが、歯科医師の利益というだけでなく、国民にとっても歯科治療の質向上の観点から必要なことを、厚労省や政治家、中医協の委員など従来のインナーサークルだけでなく、最終的な費用負担者である国民からも納得してもらうこと、さらにはその前門になるメディアにも理解を深めてもらうことが、どうしても必要になる。
◆困難な課題だが歯科医療界を挙げ…
困難な課題だが、歯科医療界を挙げて、真正面からここにぶつかることからしか道は開けないはずだ。
筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男
2021年(令和3年)10月1日号10面掲載
(写真:わずか1週間で、753筆が集まった)
金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格の高騰による原価割れに対し、協会は9月17日に、全国保険医団体連合会を通じて、改善を求める署名754筆(全国では3,046筆)を厚生労働省など関係各省に提出しました。ご協力を頂きまして、ありがとうございました。
市場価格は比較的落ち着いている状況になりつつありますが、厚生労働省はこの問題を認識しつつも、明確な改善策を打ち出していません。改善させるためには、今年秋に行われる中央社会保険医療協議会総会での第2ラウンドで適切な対応策を示すように、要求を更に行うことが必要です。
そのため協会では、9月28日(火)より署名活動を再開することとしました。まだ、署名をされていない方は、下記リンクよりご協力をお願いいたします。
★10月8日(金):追加で205筆の署名がありました。合計959筆で、もうすぐ合計1000筆です。★
*対象:会員・非会員を問わず、歯科医師および勤務するスタッフの方であれば参加できます。
*期間:10月29日(金)まで
<署名と共に頂いた主なご意見>
・やると損する診療を押し付ける国、保険の歯科界破綻を狙っているのだろうか?
・逆ザヤだけは解消していただきたいです
・理解できない
第3回メディア懇談会を開催/ワクチン接種研修や政府補助金などを巡り議論
協会は9月10日、第3回メディア懇談会を開催した。今回もコロナ禍に配慮し、WEB開催とした。加藤開副会長が説明にあたり、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務めた。
今回の議題は、①「新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射実技研修報告」、②「東京歯科保険医協会 歯科会員アンケート」、③「次期改定に向けて、金パラ『逆ザヤ』の抜本的な解消を求める署名」、④「診療報酬に関する厚労省要請(7月28日)」、⑤「新型コロナウイルス感染防止に関する補助金 厚労大臣要請(8月4日)」、⑥「2022年度東京都予算に関する東京都福祉健康局との意見交換および都議会各党とのヒアリング」―などとした。
①については、参加者から「研修では具体的に何を実施したのか」や「ワクチンの副反応には打ち方や接種箇所に問題があるのか」などの質問が矢継ぎ早に飛んだ。これに対し、研修の様子とともに、注射角度や部位を誤ると副反応に繋がることを解説。「正しく三角筋に打つことで、偶発的な事故を防ぐことができる」と説明した。
また、②および⑤では、会員アンケートの回答をもとに、ひっ迫する歯科診療所の経営状況を報告。感染防止対策の経費や受診控えにより経営が圧迫される上、第3次補正予算案では、厚労省が一括窓口となったため、手続きが混乱している現状を指摘した。参加者からも疑問の声が上がり、議論が交わされた。
前回までは、各診療所、病院における口腔内データをCSV形式で入力し、HL7形式に変換して蓄積させていくことを述べた。
学校健診のデータ収集については、児童、生徒の移動といった特有の事情もあり、うまくいかなかった点もあった。また、手書きであった健診も、電子ペンを導入して健診票を電子化することが始まっている。これにより、紙に書かれている情報のばらつき、表記の揺れが少なくなり、データとしての制度が高まる。
歯科診療記録、健診データを検索閲覧できる仮想環境は、クラウド上に既に作られているので、将来的に各地で展開することが可能な段階になってきている。蓄積されたデータを利活用するためには、データの検索方法、アクセスの権限や管理をどのようにするかが大きな課題となってくる。
身元確認を主な目的として始まったこの流れであるが、データが集積された暁には、悉皆的口腔情報がリアルタイムで参照可能となり、集計作業のオートメーション化につながり、常に最新の情報にアップデートされていくことになる。この段階になると歯科診療情報データを、治療応報、材料ごとの臨床効果の測定、既存の医療ビックデータとの突合により、医科情報などと歯科情報を組み合わせた分析などへの利活用が可能となる。
また、HL7FHIRへ応用することにより、医療界だけではなく他職種でもデータを使うことが可能になってくる。つまり、上記図のような流れが現実的になってくるだろう。
情報の利活用は、良い面もあれば、解決しなければならない側面もある。企業などが利益のために情報を活用することは、これまでも度々起きてきた。機微な個人情報が、本人の知らない間に活用されることは、慎重に検討すべき課題である。これらの面を後回しにしたり、見ぬふりをするようなことがあってはならないと考える。利活用に関しては、良い面とともにこれらの課題に真摯に向き合いながら進めることが大事であろう。
初回より、これまでの記事のまとめであるが、①令和3年3月29日、厚労省による「歯科情報標準化」決定。ここに至るまでの考え方、昔と今の歯科治療について、②東日本大震災をきっかけにして、身元確認には歯科が大切なことが認識された。東北大学によりプログラムが提供されたが、個々のデータに互換性がなく、苦労された話、③身元確認だけではない情報集計により、乳幼児健診から成人健診、介護までデータを蓄積することが目標である。しかし学校健診では、小学校から中学校まで6年間同じフォーマットであるが、途中で転校などがあり、途絶えてしまってうまくいかない、④標準化する際に、大切なことは個々人の最終的な(最新の)口腔状態を一元化したコードで表記できれば便利。標準化コードを用いてCSV形式で個々のクリニックがデータをつくり、それをHL7形式に変換する、これによって医科との連携ができるようになる、⑤最終的には、個人データをHL7FEIR形式にしてクラウドに保存すると、医療機関だけではなく、他職種も使える。しかし、それには法改正も必要なので、今後を注視していく必要がある。
現在、厚労省で行われている「歯科情報標準化」についての背景と経緯について、5回にわたって述べてまいりました。今のところ、標準コードができた段階となっており、まだ実用化には時間がかかると思われます。今後、コンピューターの仕様書に「口腔診査情報標準コードに準拠したデータの入出力ができること」この文言が必要になってくるかも知れません。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。(了)
協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都
(東京歯科保険医新聞2021年9月号3面掲載)
「8020運動」の成果もあって、日本の高齢者、80~84歳の平均残存歯数は15本強になっている。20本以上の歯が残るスウェーデン級にはまだ届かないものの、格段に改善が見られる。
ただ、もう一つの歯の国民病、歯周病のほうはまだ成果は見えない。厚生労働省の「歯科疾患実態調査」では、歯周病の指標となる4mm以上の歯周ポケットのある人の割合は35~39歳でも40%、85歳以上になると実に70%(対象となる歯がない人を除く)に達するなど、年齢が上がるごとにその割合も上昇している。時系列的にも日本人の歯周病の数値は、前回調査の2011年に比べて2016年には、5歳階層ごとのほぼ全年齢層で悪化傾向にある。
口腔内にいる様々な細菌が引き起こす疾患が歯周病だ。これが口内炎症をもたらし、その結果発生する炎症性物質が血管を通じて全身をかけ巡り、実に多様で厄介な疾患の直接・間接の原因になりうることが、近年の医科・歯科双方の研究成果で明らかになりつつある。
前回の連載記事でも触れたが、米国で新薬承認が出て話題のアルツハイマー病などの認知症もそうだし、心臓疾患(狭心症・心筋梗塞など)、糖尿病、脳梗塞、誤嚥性肺炎などにも、歯周病は何らかの形で関与している可能性が指摘されている。その意味でも、歯周病の予防・治癒は、ただ単に歯の健康をもたらすだけでなく、健康全般につながる国民的な重大事だ。
歯科診療にかかる日本の医療費は65歳~69歳、70~74歳、75歳以上で増加している(「国民医療費」、総務省統計局「人口推計」参照)。これは、高齢化の進展が続き、この年齢層の人口がまだ増えているためだ。歯科診療所の経営も、この高齢層への依存は大きい。
高齢者の歯科ニーズは大きい。要介護高齢者の約七割が何らかの歯科治療を必要とし、そのうち早急な対応が必要と判断された人の割合も12%あったとする日本老年歯科医学会の調査研究報告がある。義歯治療ニーズが約55%と最も多いが、歯周病治療でも32%が必要とされていた。
問題はこのニーズがどれだけ満たされているかだ。この調査ではこの点が不明だが、これを埋める別のデータがある。要介護高齢者(調査対象は290人、平均年齢86.9±6.6歳)だ。この調査では歯科治療の必要性がある人の割合は64.3%だったが、実際に歯科治療を受けた人は、たった2.4%しかいなかった(2019年の日本歯科医学会の研究)。歯科では高齢者の膨大なアンメットニーズが放置されたままになっている。
厚生労働省の「患者調査」データによれば、歯周病では70~74歳で歯科外来受診率はピークを迎えその後は落ちていく。高齢者施設に入るなど自力での通院が難しくなっているのかもしれないが、75歳以上の高齢者の潜在ニーズが落ちているわけではない。
それは同じ「患者調査」で、65~74歳と並び、75歳以上の慢性歯周炎の推定患者数が2017年時点で、1996年比で急増していることからも強く推測できる。
そこで疑問。なぜこれだけの潜在ニーズがあるのにも関わらず、歯科市場の成長は鈍いのか。
答えは単純。ニーズに応え切れていないからだ。その原因の一つは、歯科医師などの側の努力不足がある。通院できなくなった自宅住まい、高齢者施設居住、病院で治療中の高齢者ニーズをすくい取れるような歯科訪問診療のあり方の研究と実践、フィードバック。自治体、医科の病院・診療所、介護施設やそこに従事する多種多様な職種の医療・福祉介護従事者との連携(俗にいう「医科歯科連携」はその一つ)を深めた上で、ニーズを掘り起こすこと。外来に比べ手間や効率が下がることをカバーする工夫などが、まだ足りないと思われる。
従来にない知恵を絞り出せるかが、今民間にも問われているわけだ。個別の歯科医師・経営者や歯科診療所で解決できない部分は、業界全体でカバーする手立てがあるのかを、早急に検討する必要もあるだろう。
もう一つ、歯科の大きな潜在ニーズを阻害するものがある。厚生労働省など政府による歯科分野での顕著な低医療費政策だ。先進国に比べ低く抑えられた保険診療単価は、多数の患者獲得でカバーせざるを得ない形で日本の歯科保健診療・経営をゆがめている。一気に解決することは難しくとも、諸外国との比較も交えた本来あるべき価値ベースの技術料・診療単価のアップに厚労省が頭を切り替えないと、肝心要の歯周病など国民の健康全般の予防・治療にも関わる重大課題の成果が上がらず、台無しになりかねない。中医協などの協議の場でも、歯科は医科とタッグを組んでも論理的に主張していく必要がある。
先の国会で承認された75歳以上の患者負担引き上げは、一定以上の所得者に限定はしたが、今でも満たせぬニーズを高齢者にさらに諦めさせる危険があり、現役世代の将来にも影を落とす。これでどうやって矛盾なく歯周病などでの歯科診療拡大の実を上げうるのか、政策当局だけでなく、国民に対しても問題提起し、徹底的に論戦することが、ここでも必須といえよう。
筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男
2021年(令和3年)9月1日No.618/10面掲載
2021.09.01(6~7)南杏子さん(医師 小説家 著書「いのちの停車場」)
出演:吉永小百合
松坂桃李 広瀬すず /石田ゆり子 田中泯 西田敏行 他
監督:成島出
脚本:平松恵美子
原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎文庫)
映画公開日:5月21日(金) 絶賛公開中
公式HP:https://teisha-ba.jp/
©️2021「いのちの停車場」製作委員会
〈ストーリー〉
東京の救命救急センターで働いていた咲和子は、ある事件をきっかけに、故郷の金沢で「まほろば診療所」の在宅医師として再出発をする。様々な事情から在宅医療を選んだ患者と出会い、戸惑いながらも、まほろばのメンバーと共にいのちの一瞬の輝きに寄り添っていく。その時、最愛の父が倒れてしまい…。
協会では新型コロナ感染症拡大による医院経営への影響を把握するため、「歯科会員アンケート」を実施しました。
たくさんの会員の先生方にご協力をいただき、ありがとうございました。
今回の調査では現在の経営状況、今後の経営の見通し、歯科医業経営を改善するために先生ご自身が望む方策などについて調査しています。
実施期間は2021年5月18日~2021年5月31日まで。
調査対象はデンタルブック登録会員とFAX登録のある会員で、FAX送信件数は1536件、メール会員約3200名へはメールニュースでアンケートの案内をしました。
歯科会員アンケートの集計結果については下記リンクよりご確認ください。
↑こちらをクリックしてください↑
また、11月に全国保険医団体連合会が集計した全国のアンケート結果が出るため、結果がわかり次第、全国の結果もお知らせしていきます。
アンケート結果にもある通り、多くの先生方が
「金パラの逆ザヤ解消」
を求めています。
協会では金パラの逆ザヤ解消のために署名を行っていますので、ご協力お願いいたします。
署名用紙が必要な方は、個別にFAXいたしますので「金パラ署名希望」と記載したうえで、①会員の氏名、②医療機関名、③電話番号、④FAX番号を記入の上、FAX03-3209-9918迄お申し込みください。
署名はWEBフォームでも受け付けております。
↑こちらをクリックしてください↑
金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格が高騰を続け、保険償還価格を上回る原価割れが続いています。全国保険団体連合会(保団連)の調査によれば、今年4~6月の30g当たりの金パラの購入価格は平均98,481円(税込)で、現時点での30gあたりの保険償還価格80,040円に対してマイナス18,441円の大きな原価割れとなっています。今年10月には随時改定Ⅰが実施されて価格が引き上げられますが、1g2,951円(30g当たり88,530円)に留まり、実態には見合わない状況です。
そのため、協会では、保団連とともに、全国の歯科会員約4万2千名に署名への協力を依頼し、厚生労働省へ提出することとしました。署名を頂ける方は、下記リンクよりご協力をお願いいたします。
*9月28日(火)署名を再開しました。まだされていない方は、下記をクリックしてください*
標準化対象を整理するには、キーワードが必要になる。それが「口腔内スナップショット」であることまでは、前号で述べた。初期は、口腔状態を災害時想定してマークシートを用いて入力し、電子データにすることより始まった。これは、東北大学で開発された「Dental Finder」を基礎にしている。それと同時に、診療所から共通形式でデータが出せるようにコード設定が開始された。各診療所において共通形式(CSV形式)で検索できるようにしていく。さらにCSV形式をHL7形式に変換して、地域医療ネットワークを設けることができるよう、プログラムも作成された。
次に、乳幼児・学校健診、節目・高齢者健診といった診療所以外のデータを抜き出し、地域医療ネットワークで使用できないかということが提案された。
これら歯科情報の標準化については、2013年度から実証実験が行われており、課題解決に向けた取り組みが進められている。
具体的なモデル事業が、行われることとなった。既に実証実験が済んだ取り組みについて簡単に説明をしたい。
——医療機関でのデータについて
医療機関内のレセコンのデータを、医療機関ごとに「口腔診査情報標準コード仕様」に基づきCSVデータとして出力する。口腔内の状態を変換できた・できない、の確認を行い具体的な改善を行う。医療機関では倫理審査委員会での申請や患者への説明、オプトアウトについて患者確認などを行う。その後、データを地域医療ネットワーク等へ移動する。可能であればデータ出力した患者さんの口腔状態の画面をコピー出力してもらう。仮想環境である地域医療ネットワーク等にデータをアップすることによって、身元確認等への活用が可能となる。
既に実施された実証実験では、最終的にモデル大学内に構築されたネットワークの仮想環境内へのデータアップまでは技術的に可能であることが確認されている。
——乳幼児・学校、節目 健診のデータについて
節目健診の結果もCSV形式で地域医療ネットワークにアップロードした。モデル事業では、紙で集計されたものをOCR処理をし、エクセルファイルで出力した。このエクセルファイルをデータ分析機関にて集計、分析後さらにCSVに変換して出力したものを、地域医療ネットワークにアップロードした。
※OCR処理(光学的文字認識)とは、手書きや印刷された文字を、イメージスキャナやデジタルカメラによって読み取り、コンピュータが利用できるデジタル文字コードに変換すること。
ここで、うまくデータ化できなかった事例として、学校健診があげられる。健診記号を集計し、結果をテキストファイルにしてCSV形式にすれば良いのだが、学校健診ならではの欠点があった。モデル事業を行った学校健診の用紙は、小中学校九年分の口腔状態を記載するフォーマットになっていた。
途中、転校や学区外の中学に進学したときなど、児童生徒たちをその都度追えないということが、現地の教諭から声があがった。各地に移動してしまった児童生徒たちのデータを、誰がクラウドにあげることを承諾するのか、という問題が生じるのである。
この部分は、これからの課題として残ってしまっている。
次回は、今後の事業計画について述べていきたい。
協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都
(東京歯科保険医新聞2021年8月号3面掲載)
昨年、 歯周病菌が体内に侵入すると 認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症 の
原因物質「アミロイドベータ」の脳への蓄積量が通常の10倍となる などのメカニズム を
九州 大 学 などの研究チームが解明し、日本社会 、そして世界中 に 衝撃を与え ました。
研究チーム の リーダーで 、 テレビ番組 などで 研究成果 を わかりやすく 解説されてきた
武洲先生 に、 「歯周病と認知症」、その最新の研究動向 を お話し いただきます。
また、 九大歯学部の皆さんには 、 新型コロナウイルスによる感染と重症化を予防 する
ために「口から免疫 機能 を維持 ・ 向上させる」提案 をしていただきます。
私たち歯科医師にとっても、患者・家族の皆さん、医療・介護の多職種の皆さんと 協力し 、
「歯」「口」 と 全身の健康 との関わりをますます学ぶことが急務となって います。
「歯」と「口」から全身の健康を守る ために 、みんなで 意見交換しましょう。
9月12日(日)15時~17時
「ZOOM」ウェビナー
※参加方法はお申込み後、開催までにメールでご案内いたします。
武洲先生
(九州大学歯学研究院准教授)
井上光貴さん 、 今村早希さん 、 小林瑶子さん 、 平原瞭さん
(九州大学歯学部4年生、5年生)
久保哲郎さん
(福岡県歯科保険医協会副会長・地域医療対策部長、
NPO法人老いを支える北九州家族の会副理事長)
要予約。下記の FAX 番号 または 電話 番号 ・メール アドレス よりお申込ください 。
福岡県歯科保険医協会
FAX :092-473-7182 メール: shichiri@doc-net.or.jp
アルツハイマー病新薬で巨額出費必至/診療報酬への影響大、歯科は今から備えよ
アデュヘルムの米国での薬価は、患者1人、年間投与分で5.6万ドル。日本円にして610万円と、かなりの高額だ。
◆AD薬では支払い抑制に限界が
ただ、日本でも一時話題になった希少疾患の脊髄性筋萎縮症薬「ゾルゲンスマ」の米国薬価は2億円超だ。薬価で上を行く薬はほかにもあるが、この薬の問題は、患者人口が巨大なことだ。米国ではAD〝予備軍〟の軽度認知障害(MCI)を含めれば600万人のAD患者がいて、日本でも500万人を抱えると推定される。アデュヘルムが想定するMCIと軽度AD患者に絞っても100万人は下らない。
このため膨大な薬剤料の負担が発生する。米国では百万人の患者がこの薬を使うと、その支出額が560億ドル(約6.1兆円)に達する。AD患者の大半は六十五歳以上の高齢者だから、米国の公的医療保険(メディケア)に大半の財政のしわ寄せがいく。これをどうするか、と今米国では官民で議論が沸騰している。
◆アデュヘルム承認の可否は年内に判明か
昨年12月に、アデュヘルムの承認申請が提出されている日本も対岸の火事ではない。
承認するかどうかの審議は、早ければ年内にも結論がまとまるとみられる。米国と違う判断、すなわち承認しないとなれば日本の当局にとっての〝英断〟となるが、時に、米国と違う判断をする欧州と違って、日本の場合は過去を見る限りその可能性は極めて小さいだろう。
米国で承認された薬が日本では保険で使えないとなれば、同じ薬に対して日米当局の評価がまったく異なるという問題に発展する。米国同様にADに苦しむ多くの日本の患者、およびその家族に対し、新薬を望む声を無視する結果にもつながる。
◆米国に倣い日本もAD薬を承認か
結局は、米国に倣い日本もこのAD薬を承認する可能性が高いというのが大方の専門家の見方だ。
となると、日本の次の問題は高薬価に伴う財政負担をいかに軽減するかになる。
日本の薬価算定は複雑だが、単純化した机上計算として、先述したゾルゲンスマの例をもとに、国がアデュヘルムの薬価を米国に比べ3割引した場合にはその薬価は427万円になる。対象患者は日本でも100万人程度はいるから総支払額はこの1剤だけで4.2兆円となる。
◆過去にはオプジーボの先例が
実際には保険適用の対象となる患者を絞ったり、がん免疫薬「オプジーボ」であった過去の例のように、価格を何度も引き下げたりの操作を国がする可能性も大きいだろうから、ここまでの巨額にはいかないにしても、国が薬価を決める日本でも、ゾルゲンスマのような希少疾患薬と違って、巨大な患者人口を持つAD薬では、支払い抑制にも限界があるのが現実だ。
削減続きの薬価とは違って、医科と歯科の医療費はしばらくわずかな引き上げが続いてきたが、ここに影響が出かねない。薬価改定などで浮かせた薬価削減分が消えてしまえば、財務省などの矛先が医科、歯科の診療報酬にも向かわないとの保証はないだろう。
◆2024年度改定ではアデュヘルムの影響が
これから審議が本格化する2022年度診療報酬改定論議はセーフだろうが、その次の2024年度診療報酬改定の審議では、このアデュヘルム影響がもろにかぶる可能性を想定しておく必要はあるだろう。
歯科医療界としてのこれに対する備えは、相当な難問であるのは確かだ。即効性のある妙案が直ちに浮かぶはずもない。
ただ、少なくともいえることは、歯科診療が患者や利用者にもたらすベネフィットを徹底的に追い求め、その価値に基づく正当な診療報酬を要求する。このようなスタンスで理論武装を磨いていくのは、これまで以上に必須になるはずだ。
◆戦略的に有効な諸対策の検討を
中期的にはう蝕中心の「かかってからの治療」から高齢化・長寿化とともに膨大なアンメットニーズを抱える歯周病など予防分野、高齢介護施設への歯科訪問診療などに歯科医業界がシフトしていくことが、戦略的に有効なのではないか。診療報酬の在り方について、厚生労働省にも発想を変えてもらう必要もあろう。
歯周病はADとも密接な関係性があることを示唆する研究が進展する。こうした研究がもたらすエビデンスを中長期で構築し、理論武装していく姿勢・戦略が望まれるのではないだろうか。
筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男
「東京歯科保険医新聞」2021年8月1日号10面掲載
歯科医悩ます「銀歯」高 診療報酬 改定追いつかず 貴金属相場、マネー流入で急騰
確かに、金、銀、パラジウムの価格高騰が続いているが、その補填を一人でかぶらなければならない歯科医師にしてみれば、「たまったもんじゃない」ことだろう。
保団連をはじめ、歯科関連団体は厚生労働省にこの問題の解決を強く求め続けてきた。2020年度には、金属材料の公示価格(歯科医師にとっては支払われる価格)の改定制度で成果を出している。4月、10月に5%以上の高騰(下落もだが)があった場合に改定する従来の制度(随時改定Ⅰ)に加え、その合間の1月、7月にも15%以上の高騰があった場合にも改定できる随時改定Ⅱを獲得したわけだ。
理論的には、金属材料の変動リスクをよりタイムリーに避けられるようになったわけだが、危惧した通り、問題の真の解消には程遠い現実も見えてきている。
この問題を引き起こす要因は複数あるが、根本原因を一つ挙げろと言われれば、改定するかどうかの基準となる変動幅(随時改定Ⅱでは15%以上なら公示価格を改定し、15%未満なら元の公示価格のまま据え置く)が下記計算式をもとに計算されることになっている点だ。
今回でいえば、4月時点での過去9カ月間の値動きで、3カ月後の7月の改定実施時の値段を決めることになる。この算定式に基づき、今年7月の金パラ公示価格値上げはなしと決まった。
しかし、6月3日開催の「6・3初夏の歯科総行動集会」の時の保団連資料によれば、今年5月の金パラの推定実勢価格は10万577円、現行の公示価格の8万40円だと、実に2万533円、率にして26%もの逆ザヤになっている。実態には、まったく合っていないわけだ。
さらに、6月以降も金属材料がこのまま値上がりが続けば、次の改定時の10月まで、この逆ザヤが毎月、歯科医師の経営に覆いかぶさる。
実勢価格を毎月タイムリーに公示価格に反映する制度導入が、唯一の根本解決策なのは明らかだ。
ほかに、公的価格のある商品サービスで同じ逆ザヤ問題が起きているかどうか、私自身は寡聞にして知らないところだが、IT化の進むいま、実勢価格を把握し毎月の公示価格に反映することは、技術的には可能ではないだろうか。
仮に、毎月の公示価格改定が技術的または費用対効果的に難があるならば、その時は3カ月後に、例えば歯科医師がその間にかぶった逆ザヤ分は、厚生労働省が遡及して返すような仕組みにすべきだろう。
この場合、変動費用を予算枠で手当てする工夫が必要になるだろうが、個人的思い付きではあるが、予備費などで担保できるのではないか。少なくとも議論、検討するだけの価値はあるのではないかと考える。
金属材料の値上がりが続く局面では、補綴物に国が支払う額は増えるわけだが、これは歯科医師が懐に入れるものでもなく、国民が負担するものとして捉えるべき筋合いの話だ。
今年は、2022年度診療報酬改定という絶好の議論の場がある。歯科技工士問題でも厚労省は自身が行う実勢価格調査の結果を非公開にする。この「金パラ」逆ザヤ問題でも、自ら依拠する貴金属の市場実勢価格を明らかにしていないと聞く。行政の透明性では大問題だ。国民の立場からも、関係団体にはこの点も含め、厚労省には強く改善を要求してほしい。
筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男
(東京歯科保険医新聞2021年7月号10面掲載)
前回まで述べた生前情報の蓄積と死後情報とのマッチングであるが、レセプトデータやレセコンの電子カルテ、乳児検診、成人歯周病健診によって得られた口腔診査情報を身元確認に利用できるとの法的根拠はなく、オプトアウトによる利活用はできないため、事前に患者さんからの承諾が必要となる。今後この方面での法整備が必要になるが、口腔内情報は極めてセンシティブな情報なので、慎重な対応が求められている。
「口腔診査情報標準コード」について
レセコンや歯科電子カルテ、歯科健診ソフトなどに入力された口腔診査情報は「口腔診査情報標準コード」に置き換えられ、「口腔状態スナップショット」として出力する。診療や検診の度に「口腔状態スナップショット」は最新の状態に保たれる。口腔の状態を共通の「口腔診査情報標準コード」で保存することにより、入力したプログラムでなくても同じ情報を得ることが可能となる。つまり「口腔状態スナップショット」にアクセスできれば身元確認での活用が可能となる。
東日本大震災前は、身元不明のご遺体の口腔状態については、紙での手書きフォームに記載されたものを用い、警察経由で各診療所に問い合わせがあった。また、乳幼児・学校健診、節目・高齢者の歯周病健診などの健診事業では、紙で集計された数字が行政に上がっていた。
震災直後の混乱の中、当時東北大学で開発された「Dental Finder」で、ご遺体の口腔情報を電子情報に置き換えるためのフォーマットを用い、問い合わせを始めた。しかし、各診療所や病院のデータ形式が統一されていなかったため、データ収集に時間がかかり、身元確認作業での活用が困難な状態であった。
「口腔診査情報標準コード」では歯種、現在歯・欠損歯の有無、現在歯の内容、欠損歯の内容、歯列・咬合の情報等が格納される。カルテ一号用紙の口腔内の状態をイメージすると分かりやすい。この他歯科医師会行動計画(改定版)のデンタルチャート(死後記録)項目と過去災害例からの代表的な表記、インターポールの災害犠牲者身元確認(DVI)フォームで使われる項目も収載している。
これらの項目は「口腔状態スナップショット」として「CSV形式データ」で保存される。これにより、歯科レセコンベンダが取り組みやすくなり、またHL7形式に変換しやすくなる。HL7形式に変換することにより、医科との共有がしやすくなる。
次回では、標準化のための段階を初期から順番に述べていきたい。
協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都
(東京歯科保険医新聞2021年7月号3面掲載)
第2回メディア懇談会をWEB方式で開催/中医協での歯科材料議論の可能性や歯科医師のワクチン接種などに関心集まる
協会は7月9日、第2回(通算83回)メディア懇談会をWEB方式で開催した。WEB開催は前回5月に続き2回連続となり、説明と報告は坪田有史会長が行い、司会は広報・ホームページ部長の早坂美都理事が務めた。
冒頭、6月13日の第49回定期総会で会長に就任した坪田会長が、総会全体の模様と「決議」について報告を行い、さらに今期スタート当たっての挨拶を行った。続いて、①政策委員長談話「歯科医師によるワクチン接種は適法性があることを法に明記すべき」、②金銀パラジウム合金の問題(逆ザヤシミュレーター)、③2020年学校健診後治療調査、④歯科医師による新型コロナワクチン接種のための筋肉注射実技研修の紹介―について説明を行い、その後、協会側と参加者による懇談に移った。
その中では、今後の中医協の検討の中で歯科材料が議論の俎上にのる可能性があることが注目されたほか、歯科医師による新型コロナワクチン接種を巡り、日本歯科医師会のeラーニング受講や協会が筋肉内注射の実技研修会の実施を予定していることなどについて関心が集まった。
次回開催は本年9月の予定。
7月1日より、東京都中小企業者等月次支援給付金の申請が始まりました。
売上の減少が30%以上の個人事業主に対しては5万円の支援金が給付されます。
国で行っている月次支援金の受給要件は2022年の4・5・6月の売上が2019年または2020年の4・5・6月の売上と比較し50%減少していることとなっていましたが、今回の東京都独自の月次支援給付金は30%減少していることが受給要件となっており、要件が緩和されています。
また、既に国から月次支援金をもらっている場合も追加申請ができます。
詳細は以下の通りです。
東京都中小企業者等月次支援給付金
1 申請受付について
(1)申請受付期間
申請開始:令和3年7月1日(木曜日)
申請期限:令和3年10月31日(日曜日)(消印有効)
(2)申請方法
① オンライン申請:専用ポータルサイトから申請できます。
https://tokyogetsuji.metro.tokyo.lg.jp/
② 郵送申請:簡易書留など郵便物の追跡ができる方法で、以下の宛先にご郵送ください。
【宛先】〒111-8691 浅草郵便局 私書箱:121号
東京都中小企業者等月次支援給付金 申請受付 宛
2 申請要件
(1)都内に本社・本店のある中小企業等及び都内に住所のある個人事業者等であること(業種を問いません)
(2)都内に本社・本店のある酒類販売事業者であること
(3)緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う飲食店の休業・時短営業又は外出自粛等の影響を受けていること
(4)2021年の4・5・6月における各月売上額が2019年又は2020年の同月の売上額と比べて30%以上減少していること
(5)今後も事業の継続及び立て直しのための取組を実施する意思があること
※東京都のホームページでは給付対象の具体例として医療・福祉関連の事業者をあげており、コールセンターでは緊急事態措置又はまん延防止等重点措置に伴う外出自粛等の影響で売上が減少していれば、歯科診療所も対象となり得ると回答しています。
3 給付額
2019年又は2020年の基準月の売上ー2021年の対象月の売上 | |||
---|---|---|---|
50%以上減少 | 30%以上50%未満減少 | ||
中小企業等 | 酒類販売事業者 | 上限20万円/月 | 上限10万円/月 |
その他の事業者 | 上限5万円/月 | 上限10万円/月 | |
個人事業者等 | 酒類販売事業者 | 上限10万円/月 | 上限5万円/月 |
その他の事業者 | 上限2.5万円/月 | 上限5万円/月 |
※ 月ごとに売上高の減少額に応じて給付額を決定(定額給付ではありません)
※ 対象月:2019年又は2020年の同月比で、売上が30%以上減少した2021年4・5・6月
※ 基準月:2019年又は2020年における対象月と同じ月
※50%以上減少の場合は国からの月次支援金に上乗せする金額、申請には国の月次支援金の給付決定通知が必要
4 問い合わせ先
東京都中小企業者等月次支援給付金コールセンター
電話 03-6740-5984
(9時00分から19時00分まで(土曜日・日曜日・祝日含む))
本稿ではワクチン接種後の医療従事者の感染対策やワクチン接種を終えた患者さんについての知見をまとめました。
お引き受けいただきましたのは、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院副病院長で同センター歯科・口腔外科診療科長の丸岡 豊氏。(「東京歯科保険医新聞」2021年7月1日 第616号掲載)
結論から申し上げますと、「ワクチン接種終わった」→「飲み会・会食 即OK」ではありません。ワクチン接種によって「発症」「重症化」を防ぐ効果は確認されておりますが、「感染」「伝播」を防ぐ効果はまだよくわかっておりません。
依然として医療機関を受診する患者さんはワクチン未接種の方が大多数です。そのため、ワクチンを接種した医療者が発症しなくても、気づかないうちに患者さんに新型コロナウイルスを感染させ、患者さんが発症してしまうかもしれません。引き続きマスクの常時着用、手指衛生、3密回避をはじめ、今まで徹底してきた感染対策を変わらずに継続することが重要です。
感染するリスクが極めて高いのが会食です。歓送迎会などを含め同居人以外との会食の自粛が求められます。自宅などに複数人で集まっての食事も会食になりますし、院内での朝食会議・ランチ会議も会食に該当します。
少なくとも私たちがスプレッダーにならないような自重は引き続き必要と思います。私たち医療従事者がなぜ優先接種の対象になったのかの意味をお考えください。
ワクチン接種前に手術を受けた方は術後どれだけの期間を空ければ良いのか、あるいはワクチン接種後にどれほどの期間を空ければ手術を受けられるのか、というお悩みがあると思います。
一般社団法人日本医学会連合からの4月23日付の提言では、これについてはエビデンスに基づく明確な基準は現在のところない、としています。術後には身体に加わった侵襲に伴う免疫応答や異化の亢進などの理由でワクチン接種は2週間ほど待機することが一般的であり、適切な接種時期の決定にかかる参考となる事実もないため、この2週間というのが妥当ではないか、ということのようです。同様にワクチン接種後の手術については一過性の副反応の頻度が少なくなる接種後3日目以降であれば手術は可能なのではないかとしています。医学会連合が発出した「COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言(修正第4版 2021年4月23日)」をご参照ください。
ただ注意すべきこととして、この提言には公益社団法人日本麻酔科学会が名を連ねておりません。日本麻酔科学会は「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について」を別に提言しており、微妙な温度差が垣間見えます。「全身麻酔関連についていえばまだまだわからないことはたくさんある」という立場のようですので、麻酔科担当医師との意思疎通が必要と思われます。
※注釈※
発症=症状が出ること
重症化=入院や集中治療が必要な状態になること
感染=ウイルスをもらうこと
伝播=ウイルスを他の人にうつすこと
現在、新規感染者数は再び増加の様相を呈し、このままではオリンピックに関連して8月初め頃に第5波襲来との予測もあり、やはり予断を許さないところです。
私たちは今、未体験の時代を生きています。日本より早くワクチン接種が進んでいる各国では様々な推奨のもと、一部緩和がされ始めております。しかし、それらの推奨をどこまで取り入れていくかについては、ワクチン接種後の対応や行動に関して、今後の流行状況やワクチン接種の状況を踏まえて判断されますので、常に最新情報には注意を払う必要があるでしょう。
―一般社団法人医学会連合が提言した「COVID-19 ワクチンの普及と開発に関する提言(修正第 4 版 2021 年 4 月 23 日)」PDF
https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/04/20210426063706.pdf
―公益社団法人日本麻酔科学会が提言した「mRNA COVID-19 ワクチン接種と手術時期について」PDF
https://anesth.or.jp/img/upload/ckeditor/files/2003_35_700_1.pdf
【プロフィール】
丸岡 豊 (まるおか・ゆたか)
[現職]
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 副病院長
同 歯科・口腔外科 診療科長
東京医科歯科大学 歯学部 臨床教授
[略歴]
1990年 東北大学 歯学部 卒業
1994年 東京医科歯科大学大学院 修了(博士・歯学)
1997年 米国Vanderbilt University Medical School, Cell Biology, Research Associate
2004年 東京医科歯科大学大学院 顎口腔外科学分野 講師
2007年 国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科 診療科長
2019年 国立国際医療研究センター病院 副病院長(併任)
現在に至る
国内メーカーによるワクチンの開発遅れが気になるのだろう。多くの健常人を対象にした最終臨床試験(第3相試験/フェーズ3)をせずに、その前の第2相試験のデータで承認しようという動きが政府・自民党にある。塩野義製薬が開発中のワクチンが念頭にあると思うが、河野太郎ワクチン担当大臣の「年内にも国産ワクチンの実用化もありうる」との発言ともこれは平仄が合う。
今回のような非常時に、厚生労働省は新薬を素早く認める米国の緊急使用許可制度を導入する計画を進めている。これは、米ファイザー社のワクチン承認が英米などに比べ2カ月遅れになったことが頭にある。少しでも海外製の新薬・ワクチンの日本への導入を早めようと、国内治験データが出揃ってない段階でも、海外で使用されるワクチン・新薬を日本でも使える(保険適用できる)ようにする内容が含まれている。
米国版は米国内第3相試験までしっかり実施し、厳格なデータを取ったうえで審査を早める承認制度だから、日本で導入しようとするのは米国版とは似て非なるもの。
有効性・安全性の観点からは、許可時に国内治験をスルーするのは問題のある動きで、泥縄対策だ。
なぜ新型コロナ用のワクチン・新薬を国内製薬企業が欧米や中国のメーカーのように迅速に、遺伝子情報を活用した新規技術なども駆使して開発できないのかの、根本問題の解決にはつながらないからだ。
本当は、製薬企業の開発・生産・海外治験などに、国がもっと支援する必要がある。米国の前トランプ政権は、ワクチン開発加速や生産構築支援に1兆円超を投じた。発生源ながら感染が早く収まった中国は、ワクチンメーカーが早くから中後期治験を海外で実施した。開発支援や海外治験に中国政府の後押しがあったのは確かで、これを考えれば、日本政府の支援の在り方に問題があるのはよくわかる。
PCR検査体制や医療体制での問題もしかりだ。医療費抑制、保健所人員や医療病床の削減・病院再編ばかりの国の従来の医療政策の欠点が、今回のコロナ感染勃発で見事に露呈したに過ぎないことは明白だ。
PCR検査、そしてワクチン接種での歯科医師での駆り出しにも、政府の慌てぶりはよく表れている。
日本歯科医師会は、厚労省通達で一定条件が得られたということで協力をする「大人の方針」だ。国難だけに国民の生命・安全のために歯科医師の皆さんには大いに頑張っていただきたいが、日本の歯科医師の場合、日常業務で多忙な個人歯科診療所の経営者やそこに勤務する歯科医師が大半なだけに、どれだけワクチン接種に割ける余力があるのか。PCR検査での実績を見ると、心もとないのは私だけだろうか。
▼平時から突き詰めておくことの大事さ
さらに考えてほしいことは、歯科医療や歯科経営でも、緊急事態があってからでなく、平時から、こういう事態が起きるのではないかと予測し、今からどう備えるかを突き詰めておくことの大事さである。
▼確実に緊急事態となる筆頭は歯科技工士問題
個人的には、歯科業界全体の観点から確実に歯科技工士不足が到来するという意味では、緊急事態がくるのが見えている歯科技工士問題がその筆頭候補と考える。
医科に比べ点数が抑えられている歯科の保険点数の在り方、10万人を超し過剰と言われる歯科医師の需給や、個人経営が大半を占める歯科診療所経営も問題が大きく時間がかるだけに、今からしっかり議論する必要がある。その動きにも注目したい。
筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男
(東京歯科保険医新聞2021年6月号10面掲載)
2020年度感染拡大防止補助金25万円(2021年2月28日締切)の入金がいまだにされないという問い合わせが多く寄せられている。
協会は保団連などと連携し、厚労省に交付遅れの実情を伝え、迅速な対応を求めており、参院内閣委員会でも審議された。国会で厚労省は、感染防止対策補助金について、遅くとも7月末までにすべての交付を終える見込みであると回答した。
また、感染防止補助金の概算払い申請について、まずはコールセンターで個別の申請状況を回答する体制を取ると回答している。医療機関からコールセンターに個別の申請状況を紹介する際は、医療機関コードを伝える必要がある。
7月末までに入金がない場合は、コールセンターに確認を取るなどの対応をしていただきたい。
問合せ:厚生労働省医療提供体制支援補助金コールセンター 0120‐336‐933(受付時間は平日9時30分~18時まで)
協会が2021年度第49回定期総会を開催/坪田有史氏を会長に互選
協会は6月13日、中野区の中野サンプラザにおいて、2021年度第49回定期総会を開催した。今回は昨年と同様、新型コロナ禍での開催となったため、総会記念講演、懇親会は開催せず、総会のみの開催とした。
総会には、役員と一般会員が41名が出席。委任状は1115名、両者を加えると1156名の参加となり、総会成立要件である会員数の10%を満たし、総会は成立した。予定していた以下の議案6本は、すべて承認された。
・第1号議案:2020年度活動報告の承認を求める件
・第2号議案:2020年度決算報告の承認を求める件/付・会計監査報告
・第3号議案:2021年度活動計画案の件
・第4号議案:2021年度予算案の件
・第5号議案:役員改選の件
・第6号議案:決議採択の件
また、第5号議案にある通り、今総会は役員改選に当たっていることから、規約に基づき、総会で理事22名と監事2名の合計24名を選出した。さらに、理事の中から会長および5名の副会長を総会後の第6回臨時理事会で互選。会長には坪田有史氏が選出され、今後の協会活動を巡り抱負を述べた(下記①参照)。
なお、第6号議案では「決議(案)」が賛成多数で採択された(下記②参照)。「決議」は以下の通り。
◆①理事・監事紹介/役職名・氏名(開業地)
・会 長(1名):坪田有史(文京区)
・副会長(5名):山本鐵雄(大田区)、川戸二三江(渋谷区)、松島良次(目黒区)、馬場安彦(世田谷区)、加藤 開(豊島区)
・理 事(16名):阿部菜穂(江東区)、岡田尚彦(渋谷区)、川本 弘(足立区)、呉橋美紀(大田区)、相馬基逸(品川区)、高山史年(豊島区)、中川勝洋(港区)、橋本健一(東村山市)、濱﨑啓吾(練馬区)、早坂美都(世田谷区)、半田紀穂子(台東区)、福島 崇(大田区)、本橋昌宏(荒川区)、森元主税(北区)、矢野正明(板橋区)、横山靖弘(港区)
・監 事:西田 紘一(八王子市)、藤野 健正(渋谷区)
◆②第49回定期総会「決議」
協会が厚生労働省に行った歯科用金銀パラジウム合金の原価割れに関する改善要求から、昨年7月に歯科用貴金属に関する「随時改定Ⅱ」が新設された。しかし、原価割れは依然続いており、問題は一向に解決していない。医療機関の経営は更に厳しさを増しており、歯科医療に従事する人材を維持・確保できなくなる恐れがあるなど、医療提供体制の崩壊が懸念される。
昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大や度重なる緊急事態宣言で、医療用物資の高騰や患者の受診抑制が続いている。4月から「歯科外来等感染症対策実施加算」が新設されたが、従来株よりも感染しやすい変異株が蔓延しつつある状況では、診療間隔を空けて密を避けるなどの対策を徹底・強化している。そもそもコロナ禍以前より院内感染防止対策に係る診療報酬の評価は十分とは言えず、さらに当該加算は今年9月診療分までの時限的な対応となっている。国は速やかに院内感染防止対策の適切な評価を行い、当該加算の算定期間を延長するべきである。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厚生労働省は、今年度の集団的個別指導に選定した医療機関に対して、高点数による個別指導を実施しないことにした。これは、協会が廃止を求めてきた成果の1つであり、必要性が乏しいことを厚生労働省は認めたと言える。萎縮診療にもつながる当該指導は、速やかに廃止すべきである。
国は、一定の収入がある75歳以上の国民(約370万人)の負担割合を、1割から2割に引き上げる。2025年には団塊の世代が75歳に至り、在宅医療の医療提供や健康寿命の延伸が喫緊の課題となる中で、その負担割合を引き上げる動きには反対である。
世界保健機関(WHO)憲章に掲げられた、人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権の1つであるとの理念を踏まえ、健康と平和を脅かす動きに反対する。
また、政府が推し進めている今後爆発的に増える高齢者のために一人当たりの社会保障費を削減する動きや、患者への安心安全な医療の実現を妨げる動きに断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。
記
一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度や自治体が実施する歯科保健に関する事業などを更に充実させること。
一.国は、これ以上の患者負担増計画は中止し、医療保険や介護保険の自己負担率を引き下げること、または公費助成を充実させることにより、国民負担を軽減すること。
一.国は、院内感染防止対策の評価がコストに見合っていないなど診療報酬の問題を改善すること。
一.国は、歯科用金銀パラジウム合金の原価割れが生じないよう、制度改善を行うこと。
一.国は、高点数の保険医療機関を対象とした指導を廃止すること。
一.私たち歯科医師は、命と健康や平和を妨げるすべての動きに反対する。
2021年6月13日
東京歯科保険医協会
第49回定期総会
前回は、歯科医療の変革について述べた。では、歯科医療情報標準化のために最初に何を始めたのか。
2011年3月、東日本大震災が起こり、2013年から厚生労働省で標準化に向けた事業を開始した。口腔状態の表現を標準化し、診療情報の交換様式を視野に入れ、2017年には利活用および標準化普及事業が始まり、2020年に厚生労働省の標準規格が決定した。
標準化事業の目的の一つである身元の確認のためには、データ交換ができることが必要となる。口腔を過不足なく表現し、歯科医療機関で共有でき、医科(SS-MIX2)との連携が必要となる。
そのために、標準化仕様の定義に従った口腔状態の電子的記録を「口腔状態のスナップショット」と呼ぶことにして、身元の検索や確認ができるコード体系を作ることとした。標準化仕様である口腔診査情報標準コードに準拠することで、歯科医療機関同士で情報の共有化ができ、「口腔状態のスナップショット」を最新の状態に保つことで大規模災害での身元確認に資するデータが蓄積される。
ここで先に述べるが、今後重要となるポイントがいくつかある。個人の口腔内の情報はセンシティブな個人情報に該当するため、利活用にかかわる法的側面が重要である。背景としては以下の法律がある。
①個人情報保護法(2003年)生きている個人に関する法律。
②医療情報システムの安全管理ガイドライン(2005年)厚生労働省
※死者の情報も対象であり、守秘義務がある。
③改正個人情報保護法(2017年)要配慮個人情報。医療情報はすべて要配慮個人情報であるから、オプトアウト(※)で提供できない。
※「オプトイン」は、臨床研究は文書もしくは口頭で説明を行い、患者さんからの同意(インフォームド・コンセント)を得て行われること。
また、「オプトアウト」は研究の目的や実施についての情報を通知または公開し、研究のため
に自分のデータが使用されるのを望まない場合は、拒否の機会を保障すること。
将来的には、「口腔状態のスナップショット」は、生前情報の蓄積と死後情報のマッチングを目指していく。具体的には、乳幼児健診から後期高齢者歯周病健診まで一連の電子記録を蓄積し、管理できることを目指していく。
次号では、標準化までの具体的な経緯について述べていきたい。
協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都
(東京歯科保険医新聞2021年6月号3面掲載)