協会ニュース

政策委員長談話「疾病構造に対応した適切な診療報酬を求めたい」/機関紙2016年9月1日号(№558)2面掲載

政策委員長談話

「疾病構造に対応した適切な診療報酬を求めたい」

 6月15日にレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用した2015年における「社会医療診療行為別統計」が公表された。昨年までの社会医療診療行為別調査と比べ歯科の件数が約23倍と大幅に増えたため、より実態に近い数字になったと言える。統計の結果は、近年の傾向ではあるが、前年に比べ1日当たりの点数は増えたが実日数は減ったため、1件当たりの点数は前年比25.2点減少し1,228点となった。

1件当たりの点数の内訳をみると、例年と同様に補綴の点数の減少が続いている。昨年の中医協で報告された若年者のう蝕の減少や高齢者の残存歯数の増加(欠損の減少)から、補綴が必要な患者数が減った「疾病構造の変化」が大きいのだろう。東京都福祉保健局の「東京都の歯科保険(平成27年11月)」でも、12歳児の1人平均のう蝕の数を示すDMF歯数は平成6年度で3.64本であったが平成26年度は0.88本に激減している。患者の治療時でも、疾病を治療することよりも重症化予防に努めるケースを多く経験するようになった。

 2016年度改定では、重症化予防に対する評価として、エナメル質初期う蝕に対するフッ化物歯面塗布処置、摂食機能障害を有する患者への訪問口腔リハの新設やSPTの要件緩和が行われた。疾病構造の変化への対応であり評価したい。しかし、評価の在り方として、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所を届出しているか否かで点数が変わることなど多くの点で疑問が多い。

 疾病構造に対応した適切な保険医療を提供するためにも、希望した患者に本当の意味での「かかりつけ」として継続管理が行えるように、適切な評価を求めていきたい。

 

2016年8月22

東京歯科保険医協会

政策委員長 坪田有史

歯科医療点描⑫ 歯周病カンジダ菌説の経緯は/患者が治ってももうけになりません

歯周病カンジダ菌説の経緯は/患者が治ってももうけになりません

最近よく「イノベーション」という言葉を耳にする。「技術革新」の意味で、政府は日本発の新規技術に着目し、世界に売り出せるよう支援していく方針のようだ。

ホントかな?と思う。記者時代から私は患者のためになると確信した新しい医療を報道するよう努めてきた。ところが、紙面に載せるのは簡単ではなかった。すばらしい技術と思っても、日本の権威ある学会は無視するか、疑問や否定のコメントに終始する。

一方、お役所は権威者のいうままに研究費の申請を却下し、研究の進展や普及の邪魔をするのが常だった。世の中の空気が一変したのなら、それはとてもいいことだ。

この6月、私は著書『お医者さんも知らない治療法教えます・完結編』(西村書店刊)を出版した。四十余項目のほとんどはイノベーション医療だ。このうち歯科関係は、歯周病のカンジダ説、3Mix-MP法、不定愁訴などのかみあわせ治療、の3項目だ。

歯周病は昔から細菌が原因、といわれてきた。神奈川県の歯科医、河北正さんがかびのカンジダ菌に着目したのは、口内炎患者に抗かび剤で歯磨きさせたところ、歯周病症状も改善したからだ。微生物検査では歯ぐきや歯垢からカンジダ菌が見つかる一方、歯周病菌は検出されなかった。また、抗かび剤歯磨きで何人もの歯周病が治ってしまった。

河北さんは学会や歯科専門誌に論文を投稿したが、すべて却下された。「随筆なら」と歯科雑誌に載ったのが19983月。河北さんからコピーが届いたが、当初は私も信じられなかった。何度か聞くうち、細菌説の科学的根拠も同レベルとわかり、ひょっとしたらと思うようになった。「歯周病、抗かび剤が効く?」の見出しの社会面三段の記事になったのは翌年の996月だった。

カンジダ菌説に賛同する歯科医も今は何百人かに増えているらしい。しかし、どんな不利益があるのか、日本歯周病学会は一貫して論文で「非科学的」と批判しているし、ネットではPg菌などの情報があふれている。比率から見てもおそらく歯科保険医協会の先生方の大部分は歯周病菌説だろうと思う。

病気の原因追究が大事なのは治療のカギになるからだ。患者からいえば、治りさえすれば原因は何でも構わない。歯周病菌説の歯科では手術と歯石除去、歯磨き指導ぐらいで直接の細菌対策はなさず、治る患者は少ない。

一方、カンジダ菌説では抗かび剤や抗生物質が処方され、河北さんや賛同者によると、治る患者は多い。歯科医ならせめて家族を相手に試みてほしいものだ。

産業界ではいい製品が出れば競争企業は追いかけるが、医療界は学びも真似もしない。「患者が治ってももうけになりませんから」ということらしい。

 医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」201681日号6面掲載

 【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

保険請求できるファイバーポストを更新

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有効回答者数の83%が「後継者なし」/協会歯科技工アンケートで明らかに

有効回答者数の83%が「後継者なし」/協会歯科技工アンケートで明らかに

協会は、昨年10月に行った歯科技工所アンケート結果をとりまとめ、公表した。集計からは、歯科技工所からの問題点が改めて浮上し、今後も議論、検討が必要なことが確認される結果となった。

アンケートを送付したのは、2015年10月1日現在で都内の歯科技工所のうちの576カ所。返信数は132通で回収率は26.5%となり、これをもとに集計した。

まず、主な特徴点をみると、開業形態は個人64%、法人36%で、全体の評価としては、個人立は法人立に比べ保険の技工物を多く扱い、労働時間が長く、可処分所得が低い。一方、法人立は、業務分担や機材の導入など積極的に行いつつ、売り上げを伸ばし、雇用技工士の労働条件が個人に比べ良くなっている。しかしながら、個人・法人も長時間労働が状態し、それには見合わない収入となっている。

日本歯科技工士会への入会については、実に77%が未入会であり、区分では個人立83%、法人立65%が未入会。

技工所で最も懸念されているのは後継者問題で、全体で実に83%が「なし」。ちなみに個人は98%、法人では57%であり、個人立のほうが多くなっている。

技工士数のみると、80%以上の技工所が一人のいわゆるワンマンラボで、これが大勢を占めている結果ともなった。後継者の有無も本人が後継者を必要としていないこともあり、今後もワンマンラボが顕著に消失していく傾向はほぼ確実で、今後の対策を真剣に検討すべき時期に来ていることを再認識する結果となっている。

一方、以前から大きな課題となっている歯科技工物価格の逓減化について、その理由は、個人では「技工士ダンピング」、法人では「低診療報酬」「歯科医院の値下げ圧力」をあげている。

今後に期待・希望する保険制度としては「歯科技工所による直接請求」が群を抜いてトップ。次いで「大臣告示7:3の徹底」であった。今後の歯科技工所経営強化方策に関しては、「技工所間の連携」「技術研鑽によるスキルアップ」「歯科技工所ごとでCAD/CAM等の機械導入」「機材(CAD/CAM等)共同購入」「技工物の集配担当者の共同契約」などとなっている。

臨床的なものとしては、歯科技工物の再生、その際の料金の負担の在り方は、従来からの指摘と大きな違いはなく、個人:歯科技工所55%、ケースバイケース:40%、法人:ケースバイケース52%、歯科技工所41%。

また、協会として新しく歯科技工士に対する評価の導入を検討している。その際、歯科医師の依頼により歯科技工士が歯科医院に赴いた場の行為・行動に対する診療報酬上の評価ついて、「Tecや義歯修理」「シェードや補綴物のガイドなど」「院内に歯科技工士がいること」「訪問診療に同行し在宅等で義歯製作・修理などを行った場合」を提示しての選択で、「シェードや補綴物のガイドなど」がトップ、次いで「Tecや義歯修理」、「訪問診療に同行し在宅等で義歯製作・修理などを行った場合」の順であった。

 

歯科技工所アンケート集計結果

歯科技工所アンケート集計結果

協会では昨年11月30日、都内歯科技工所に対して実態調査アンケートを行いました。
このたび、その結果がまとまりましたので、ホームページに掲載いたします。詳細はダウンロードしてご覧下さい。

歯科技工所アンケート集計結果PDFをご覧になりたい方はここをクリック!!

 

協会の定休日の変更について

協会の定休日の変更について 8月1日から全土曜日を一斉休務と致します。お問い合わせ、ご相談につきましては、平日の9時30分~17時30分にご連絡ください。ご理解、ご協力のほど、よろしくお願いします。
◆協会定休日 <7月31日まで> 日曜日、祝日、年末年始、第2・3土曜日 <8月1日から>  日曜日、祝日、年末年始、土曜日

歯科医療点描⑪ 「か強診」の施設基準に首をひねる/「設置義務」と聞くと違和感が…

「か強診」の施設基準に首をひねる/「設置義務」と聞くと違和感が…

◆「カキョウシン」と「エーイーディー」

最初は先生方が話す「カキョウシン」がよくわからなかった。4月からの診療報酬改定で、新たに「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が登場した。この長い長い呼び名を略したものが「か強診」。なるほど、知恵者がいる、と納得した。

「エーイーディー」もてっきり歯科用の装置だろうと聞き流していたら、何と、救命救急用の除細動器の「AED」のことだった。

X先生によると、「か強診」として認められる歯科診療所には、AEDの設置が義務付けられている。「離れたところにポツンとある歯科診療所ならともかく、メディカルビル内で、同じフロアの医科診療所やビルの廊下にAEDが設置されていても必要だと説明を受けました」。

AEDが出始めの頃、私も何回か新聞記事にした。人工呼吸法を学んだ人でも、近くの人が急に倒れたら、さっと人工呼吸をしてあげる、というのは難しい。いまの時代、うまくいかないと、やり方が悪かったからと責任を押しつけられる可能性もある。その点、手順を指示してくれるAEDがあると便利だし、安心感がある。

しかし、設置義務と聞くと違和感がある。AEDは医師など医療者がいない場所での救命装置ではなかったのかな、という気がしたからだ。医師や歯科医や看護師などがいれば、その人たちが駆けつけるのが一番だろう。AEDのその先の薬だって診療所には備えているはずだ。

いや、人工呼吸法がまったくできない医師や看護師がいるかも知れない。まして歯科医は…、ということだろうか。そういえば大きな病院の廊下でAEDを見たことがある。さては、あそこで倒れたら多忙な医師は来ず、患者同士でAEDをやれ、ということなのか。

▼口腔外バキューム

「口腔外バキュームの設置も義務なのがおかしいんです」とX先生。

歯の治療時は口腔内バキュームを使うが、空中に飛び散る粉や粒子がある。これを吸い込む大型掃除機が口腔外バキュームらしい。音が大きく、設置しても実際はほとんど使わない診療所も多いそうだ。

診療所設備の充実のための基準はわかる。しかし、安全や環境の改善に本当に役立つことが肝心で、X先生が納得していないことは明らかだった。AEDは街中の至る所にあればいい、というものでもあるまい。歯科診療所でAEDが役立つ頻度や、室内空気の清浄度、健康にどう寄与するかといったデータが見たいものだ。

▼特定の装置の普及…

100万円前後を投資して基準を満たせば多少は有利な診療報酬が得られるらしい。ちょっとひねくれた部外者には、厚生労働省なのか、あるいは審議会の先生方かが、加算をエサにして、特定の装置の普及・販売を助けているように見えて仕方がない。

 

医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」201671日号6面掲載

 【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

か強診講習会9月25日(日)に開催決定!!

か強診講習会9月25日(日)に開催決定!!

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)のための講習会~外来環・歯援診・医療安全も含めて~ 2016年度改定では、地域包括ケアシステムに対応した歯科医院の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が導入され、施設基準が新たに設けられました。 今回はこの施設基準に定められた研修を1日で受講できます。 また、外来環・歯援診・医療安全にも対応しており、これからの歯科医療に必要な情報をお届けします。 多くのご要望にお応えし、第3回を開催することになりました。定員になり次第締め切りとさせて頂きますので、参加ご希望の先生はお早めにご予約下さい! ◆日 程 2016年9月25日(日) 13:00~18:30 ◆講 師   坂下 英明 氏 明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学第2分野教授 繁田 雅弘 氏  首都大学東京大学院人間健康科学研究科教授 森元 主税 氏  東京歯科保険医協会理事 ◆内 容 偶発症に対する緊急時の対応、医療事故、感染症対策、高齢者の心身の特性、高齢者の口腔機能の管理、在り方(管理計画の立案を含む) ◆会 場  エムワイ貸会議室 高田馬場 9階 (東京歯科保険医協会 隣接ビル) 交通 JR・東京メトロ東西線・西武新宿線 高田馬場駅 下車徒歩5分 ◆参加費 8000円(か強診・外来環・歯援診・医療安全の修了証込) ◆定 員 150名 ◆対 象 会員のみ(当講習会は必ず会員ご本人がご出席下さい。代理人参加は修了証を発行できません。) ◆要予約 TEL 03-3205-2999(担当:経営管理部、地域医療部) ※遅れて参加された場合や途中で退席された場合は、修了証の発行はできません。 ※8月下旬にご案内と参加費の振り込み請求書を送付致します。     〇かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所とは 地域包括ケアシステムにおける地域完結型医療を推進していく、う蝕又は歯周疾患の重症化予防に係る管理、摂食機能障害及び歯科疾患に対する包括的で継続的な管理の評価です。 ○エナメル質初期う蝕管理加算(260点)…エナメル質初期う蝕に罹患している患者を管理・指導した場合 ○歯周病安定期治療(Ⅱ)(歯数により380点~830点)…P治療後、病状安定した患者に歯周組織の状態維持のための継続的な治療を行う場合 ○在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(+100点)…在宅等で療養している患者の摂食機能障害及び歯科疾患に対する管理をした場合 などの算定が可能です。 *すでに外来環・歯援診両方の届出をされている医療機関については、修了証の有効期限は問われません。(すでに受講した講習会で要件を満たす場合は再度の受講は必要ありません) *外来環、又は歯援診のいずれかのみの届出をされている場合、またはどちらも届出されていない場合は、修了証の有効期間が3年となります。   〇歯科外来診療環境体制加算(外来環)とは 患者にとってより安全で安心できる歯科外来診療の環境の整備を図る取組に対しての評価です。 ○外来診療の初・再診料への加算が可能です(初診時+25点、再診時+5点)。   〇在宅療養支援歯科診療所(歯援診)とは 在宅等における療養を歯科医療面から支えることの評価です。 ○歯科訪問診療補助加算(1人+110点、2人以上+45点)・・・DHが同行訪問し、補助を行った場合 ○歯科疾患在宅療養管理料(240点)・・・口腔機能の評価を行い、管理計画書を作成した場合 などの算定が可能です。   〇医療安全に関する職員研修とは 2007年の医療法改正により、「医療安全管理研修」と「院内感染対策研修」に職員ひとりひとりが年最低2回出席することが義務付けられています。今講習会は「医療安全管理」「感染対策」両方に当てはまります。 【会場地図】 エムワイ貸会議室9階

2016年度第44回定期総会を開催!

2016年度第44回定期総会を開催! 協会は6月19日、中野サンプラザにおいて2016年度第44回定期総会を開催した。当日は一般会員、役員ら41名が出席した。委任状総数は924枚であった。 冒頭、挨拶に立った松島良次会長は、1年間の取り組みを紹介し、今後もさらに発展させて取り組んでいきたいと語った。 議案は1号議案から7号議案まですべて承認された。7号議案は総会「決議」で、その全文を以下に紹介する また、役員補充の提案があり、早坂美都氏(世田谷区)が新理事として承認された。 対談450pixIMG_2831 次いで行われた特別対談「2016年度改定と“かかりつけ歯科医”~これからの日本の歯科医療を考える~」では、日本歯科医師連盟の高橋英登会長をお呼びし、当協会の松島良次会長とこれからの歯科医療について対談を行った(左写真)。会場は満席で、フロアからも活発な意見が飛び交った。 最後に行われた懇親会も、国会議員多数の参加もあり、大変盛会であった。      

【第44回定期総会決議】

2016年4月14日、熊本県・大分県を震源とするマグニチュード7を超える大きな地震が発生した。発災後2カ月以上経過したが、住み慣れた地域に戻れない被災者もいまだ多い。被災地では日常生活を取り戻すため仮設住宅などの提供・支援、道路・河川施設などの整備が急務であり、復旧・復興に向けた迅速な対応が政府に求められている。 昨年、安全保障関連法が大混乱の中、国会で強行採決された。国民への説明はいまだに十分にされず政府への不信は拭えないままとなっている。医療においては昨年成立した医療保険制度改革関連法により、入院時食事療養費の自己負担額引上げや75歳以上の保険料負担、紹介状なしの大病院受診の定額負担など、新たな患者負担増が続いている。医療費適正化の名のもとに国民にその責任を転嫁していることは看過できない問題である。 また、経済状態の悪化を理由とした消費税の再増税延期は、政府が行ってきた経済政策の失敗の結果であり、そのことを理由に社会保障制度充実の先送りは許されない。今こそ格差・貧困の拡大や雇用の不安定化による生活不安を根底から立て直す政策を行うべきである。 いま、歯科医療機関の経営は厳しい状況にある。今年実施された歯科診療報酬改定では、安心・安全の歯科医療を患者・国民に継続的に提供できる内容とはなっていない。特に、新設された「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」は、歯科医療機関を施設基準で区別し、本来患者が求める「かかりつけ」を無視した評価になっている。改めて、歯科診療報酬の改善を求めるものである。 私たちは、政府が「骨太の方針2016」で示した社会保障削減策を推し進める動きに対し断固反対し、国民の生活と充実した医療の実現に向けた運動を国民とともに力を合わせ、以下の要求を表明する。

一.わが国の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする社会保障制度を充実させること。 一.高齢者の医療保険や介護保険の負担金を引き下げること。 一.歯科医療機関の経営を抜本的に改善するため歯科診療報酬を引き上げること。 一.医療への消費税非課税制度を、ゼロ税率などに改めること。 一.保険医を萎縮診療に誘導し、患者の受療権を侵害する高点数を理由とした一切の指導を行わないこと。 一.生命と健康を脅かすものを排除し、平和を尊ぶ社会を目指すこと。 2016年6月19日 東京歯科保険医協会 2016年度第44回定期総会

第44回定期総会「決議」/機関紙2016年7月1日号(№556)3面掲載

第44回定期総会「決議」

2016年4月14日、熊本県・大分県を震源とするマグニチュード7を超える大きな地震が発生した。発災後2カ月以上経過したが、住み慣れた地域に戻れない被災者もいまだ多い。被災地では日常生活を取り戻すため仮設住宅などの提供・支援、道路・河川施設などの整備が急務であり、復旧・復興に向けた迅速な対応が政府に求められている。 昨年、安全保障関連法が大混乱の中、国会で強行採決された。国民への説明はいまだに十分にされず政府への不信は拭えないままとなっている。医療においては昨年成立した医療保険制度改革関連法により、入院時食事療養費の自己負担額引上げや75歳以上の保険料負担、紹介状なしの大病院受診の定額負担など、新たな患者負担増が続いている。医療費適正化の名のもとに国民にその責任を転嫁していることは看過できない問題である。 また、経済状態の悪化を理由とした消費税の再増税延期は、政府が行ってきた経済政策の失敗の結果であり、そのことを理由に社会保障制度充実の先送りは許されない。今こそ格差・貧困の拡大や雇用の不安定化による生活不安を根底から立て直す政策を行うべきである。 いま、歯科医療機関の経営は厳しい状況にある。今年実施された歯科診療報酬改定では、安心・安全の歯科医療を患者・国民に継続的に提供できる内容とはなっていない。特に、新設された「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」は、歯科医療機関を施設基準で区別し、本来患者が求める「かかりつけ」を無視した評価になっている。改めて、歯科診療報酬の改善を求めるものである。 私たちは、政府が「骨太の方針2016」で示した社会保障削減策を推し進める動きに対し断固反対し、国民の生活と充実した医療の実現に向けた運動を国民とともに力を合わせ、以下の要求を表明する。

一.わが国の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする社会保障制度を充実させること。 一.高齢者の医療保険や介護保険の負担金を引き下げること。 一.歯科医療機関の経営を抜本的に改善するため歯科診療報酬を引き上げること。 一.医療への消費税非課税制度を、ゼロ税率などに改めること。 一.保険医を萎縮診療に誘導し、患者の受療権を侵害する高点数を理由とした一切の指導を行わないこと。 一.生命と健康を脅かすものを排除し、平和を尊ぶ社会を目指すこと。 2016年6月19日 東京歯科保険医協会 第44回定期総会 総会背後IMG_2736          

歯科診療報酬改定内容や談話2件などを話題にメディアと懇談/第1回メディア懇談会を開催

歯科診療報酬改定内容や談話2件などを話題にメディアと懇談/第1回メディア懇談会を開催(通算57回目)

協会は6月10日、2016年度第1回(通算57回)メディア懇談会を開催。メディア側からは4社が参加。協会側は説明、報告に矢野正明副会長が行い、司会は広報部長の坪田有史副会長があたった。

主な話題は、①2016年度診療報酬改定が施行されてから2カ月が経過したことを踏まえての政策委員長談話のほか、協会としての評価や特徴的な事象、協会としての対応状況、②6月10日付け地域医療部長談話、③6月19日(日)開催の第44回定期総会の取材案内、④6~8月に開催予定の関係団体の各種催し物の紹介―などで、①をめぐっては、参加メディアとの間で盛んに意見交換が行われた。

◆「か強診」めぐり議論沸く

今期改定後に関する話題①の中では、新設された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「か強診」)に関する5月23日付けの坪田有史政策委員長談話「本当の“かかりつけ”を評価しない“か強診”に抗議する」を紹介し、さらに、協会が本年5月に開催した2回のか強診講習会の状況について「初回、第2回とも定員200名は満席でキャンセル待ちの会員が出る状況となり、9月に追加講習会を設定した」ことを報告すると、驚きの声が漏れた。

参加メディアからは、「か強診は健康保険法上の診療報酬では点数が決まってはいるものの、医療法上には施設基準、人員配置基準は規定されておらず、医政局不在で保険局独走の形であり、ダブルスタンダードになっていない」「医科ならば、病院の施設基準に触れるような場合は、必ず医療法を改正した対応が必要で、多くの労力や時間が必要。しかし大多数が診療所の歯科に対しては保険局による診療報酬だけで対応し、不都合であればすぐに取り下げるなどで対処していることが多い。実は、この違いに、多くの歯科医師が大きな不満を持っているが、表面化していない」などが指摘されたほか、「か強診の届け出をしている、していない歯科診療所がどのように見られるかについて、充分に注視して行く必要がある」といった問題提起も行われた。

◆協会初の地域医療部長談話

また、地域医療部長談話「“食べること”を中心とした地域包括ケアシステムを望む」については、協会初の地域医療部長談話であること、今回のメディア懇談会当日付発表との状況も重なり、内容に共感した多数の意見が交差したほか、「歯科医師が今よりも食、食べることに真摯に取り組むことや、地域で顔の見える活動に入っていく必要性がある」なども指摘された。

◆歯科をめぐる情勢で厚労省の指導見直し内容も話題に

そのほか、情勢との関連で厚生労働省が指導を一部見直したことが話題となり、機関紙6月号でも紹介した①指導通知は1カ月前、対象患者は1週間前と前日、②長期療養患者や電子データでの持参、適切な対応を行うことを明記、③「集団的個別指導はおおむね30件未満―などを説明したが、協会としては「これではとても改善したとは言い難い状態。指導問題の改善に向け運動を続ける」ことを改めてメディア側に伝えた。

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5月31日付通知「医療機器の保険適用について(通知)」で、

 

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歯科医療点描⑩ 治療中断・未受診が多いのは問題/保険医療の範囲についても議論を

治療中断・未受診が多いのは問題/保険医療の範囲についても議論を

日本も貧しくなったなあ、と感じることがこのごろ多い。バブル期は威勢がよかった企業も、儲けのために、いまやなりふり構わずごまかす。生活保護、貧困家庭、下流老人といった言葉が日常紙面にあふれ、身内や近所での理解しがたい事件が続発している。

昨年1月、保団連の懇談会で医療や介護現場にも貧困が予想以上に大きな影を落としていると知ってびっくりした。治療中断が増え、大阪では9割の歯科医師が経験しているという。また、宮城、長野、大阪の学校の歯科健診で「要治療」といわれた小学生の5割、中学生の67割は受診しない。

東京歯科保険医協会のその後のメディア懇談会でも、関連の話題がいくつか出た。東日本大震災の歯科医療支援の際、東北には東京で見たことのないほどひどい歯のお年寄りがいた、などの話が印象に残っている。

お金は山ほどあるが、子どもには歯科治療は禁じている親がいるとは思えない。中断や未受診の理由はいろいろ出ているが、結局はお金、貧困に行き着く。2015年の報告では、日本の子どもの貧困率はOECD(経済協力開発機構)34カ国中の11位だった。子どもの貧困の背景には、離婚による母子世帯の増加、元夫の養育費の不払い、派遣労働・低賃金労働の増加などが考えられる。国民皆保険制度でありながら、保険料が払えずに枠外に追いやられている人もいる。

調査だけにとどまらず、保団連が子ども医療費助成制度拡充運動を展開し、成果を上げているのは素晴らしい。また、一方で、「保険で良い歯科医療を」運動も重要だ。必要な治療は保険で受けられるべきだし、高額な窓口負担は受診抑制や治療中断につながる。

先日、『日本歯科新聞』のコラムに書いたことだが、超高額薬の保険適用が大きな話題になっている。分子標的薬と呼ばれる月30万円、60万円といった抗がん剤が次々登場、ついに月290万円、年3500万円のがん免疫薬が一部肺がんに認められた。対象患者5万人が使えば17500億円にもなり、保険制度の崩壊を懸念する声も出ている。

薬価はなぜか原材料費や製造費と関係がなく、同じ目的の従来薬との比較で決まっている。抗がん剤は治す力はないが、企業の開発意欲を刺激するために、もともとかなり高く設定されていた。最近のように効く薬が出てくると、驚くほど高くなる。

高品質材料の義歯など、歯科医療の一部が保険外になったのは、価格が高いとの理由からのはずだ。しかし、薬ならどれだけ高くてもいいというのはやはりおかしい。保険制度全体が危うくなれば、歯科には無関係な薬、とはいっておれない。

保険医療財源の配分をめぐる駆け引きだけでなく、保険医療の範囲など、より根本的な議論が必要な時期が来ている。

 

医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」2016年61日号6面掲載

 

【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

地域医療部長談話「食べること」を中心とした地域包括ケアシステムを望

「食べること」を中心とした地域包括ケアシステムを望

◆食べることは生きること

人は食べなくては生きていけない。食べるためには、摂食・咀嚼・嚥下をする必要がある。しっかり食べることは、障害や病気の方、高齢者だけでなく全ての国民にとって生きていくうえで重要なことである。
この重要なことに、一番関わるのが歯科である。現在は、医療としての関わりが中心となっているが、保健・福祉・介護の面からも、歯科が関わることで、元気な高齢者を増やすことになり、患者・国民からの信頼を得られることになる。

◆医療費削減ありきの地域包括ケアシステムに反対

国は「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制」として地域包括ケアシステムを位置付けている。理念的には賛成できるが、実際には「自助・互助」を中心として、国の負担を減らし、代わりに患者・国民の負担を増やそうとしている。医療費削減を目的とするような地域包括ケアシステムには医療人として反対する。

◆歯科から創る「食べること」を中心とした地域でのネットワーク

「食べること」を中心とした地域でのネットワークは、歯科医師が中心となって作っていくべきである。
地域で包括的なネットワークを構築していくためには、医療だけでなく、保健・福祉・介護の分野にも関わっていく必要がある。しかしながら、現状では保健・福祉・介護の分野では口腔状況の把握はほとんどされておらず、食べる能力のある患者や高齢者が食べられない状況に置かれていることも見受けられる。
協会では、国会内学習会、東京都への予算要望などを通じて、「介護認定の口腔状況チェックを強化し、必要に応じて歯科主治医への紹介を義務付ける」など、歯科が様々な分野に関わっていけるよう要望をしている。しかしながら、「歯科がもっと関わってほしい」との患者・国民からの声がなければ、現状を変えていくことは難しい。変えるためには、歯科医師一人ひとりが、国民に「歯科ができること」をもっと伝えていく必要がある。
まずは診療所がある地域の保健・福祉・介護の職種、医療関係職種、そして、来院してくれる患者に対して、歯科医師・歯科医院として何ができるのか自ら伝えていくことから始め、どの歯科医院でも口腔内の治療を行うだけでなく、「食べること」を診られるようにしていかないといけない。患者・国民に喜ばれる「食べること」を中心とした地域でのネットワークが地域包括ケアシステムの中に位置付けられるよう歯科から働きかけていこう。
2016年6月10日 
東京歯科保険医協会
地域医療部長 馬場安彦

募集キャンペーン第二弾!第2休業保障制度の募集が始まりました!!

共済募集キャンペーン第二弾!第2休業保障制度の募集が始まりました!!

(2016年6月1日~2016年6月30日まで)

「第2休業保障制度(団体所得補償保険)」は、医院で働く歯科医師・歯科助手・歯科衛生士・歯科技工士・専従者の休業をサポートするためにつくられた制度です。

本制度について詳しい資料が必要な方は協会・共済部(Tel:03-3205-2999)または株式会社アサカワ保険事務所(Tel:03-3490-1751)までお気軽にお問い合せください。

第2休業保障制度のチラシはこちら

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政策委員長談話/本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する/機関紙2016年6月1日号(№555)3面掲載

政策委員長談話

本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する

施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

今改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)」が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる。

しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け1物2価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来,患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

患者が望む医療機関をかかりつけとし、

通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

今改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状の無い場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯にわたり診てほしいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。

また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か、否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。

協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めるとともに、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

 

2016年5月23日 

東京歯科保険医協会政策委員長

坪田有史

政策委員長談話/本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する

 2016年度診療報酬改定において、地域包括ケアシステムの構築を目的に、歯科におけるかかりつけを評価した「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)が新設されました。協会では、届出に必要な研究会を開催するなど「か強診」への対応をしつつ、昨年の中医協で議論されている頃より「か強診」に関する議論を重ねてきました。

 この度、現時点までの議論を踏まえ、政策委員長が5月23日に談話を発表しましたので、下記に示します。

 

本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する

 

施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

 今改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)」が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる

 しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け1物2価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来,患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

 

患者が望む医療機関をかかりつけとし、

通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

 今改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状の無い場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯に渡り診て欲しいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。

 また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か、否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。

 協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めると共に、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

 

2016年5月23日 

政策委員長 坪田 有史

「歯科保険診療の研究」正誤表をアップしました

5月上旬に会員の先生方に送付しました「歯科保険診療の研究(2016年4月版)」は

他県で編集しているため、東京の解釈と異なる部分があります。

正誤表を作成しましたので、ご参照の上、座右の友としてご活用ください。

 

ダウンロードはコチラをクリック(ログインにはIDとパスワードが必要です)

政策委員長談話「本当の“かかりつけ”を評価しない“か強診”に抗議する」

政策委員長談話「本当の“かかりつけ”を評価しない“か強診”に抗議する」

◆施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

今次改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる。
しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け一物二価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来、患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

◆患者が望む医療機関をかかりつけとし通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

今次改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状のない場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯に渡り診てほしいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。
また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。
協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めるとともに、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

2016年5月23日
東京歯科保険医協会
政策委員長 坪田有史

 

政策委員長談話/本当の「かかりつけ」を 評価しない「か強診」に抗議する

本当の「かかりつけ」を 評価しない「か強診」に抗議する

◆施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

今次改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる。
しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け一物二価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来,患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

◆患者が望む医療機関をかかりつけとし通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

今次改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状のない場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯に渡り診てほしいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。
また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。
協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めるとともに、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

2016年5月23日
東京歯科保険医協会
政策委員長  坪田有史

 

歯科医療点描⑨ 「質管理官」か「質相談医」を作ったら/患者側からみれば歯科医師の腕=質が大事

「質管理官」か「質相談医」を作ったら/患者側からみれば歯科医師の腕=質が大事

前回の本欄で、私は「医療の質」を強調した。これは医科に限ったことではなく、歯科も同様だ。これまでの歯科は予防や内科系よりも外科系、技術系の要素が強かった分、一層、重要だといっていい。

病気の治療体験はつい最近までなかった私だが、歯磨きがいい加減だったせいか、虫歯は何本も削って詰めてもらった。歯周病にもなり、結局、3本か4本は抜歯せざるをえなかった。勤務中に受けられる会社の診療所が多かった。当時は会社を信用し、気には留めてもいなかったが、先生方の技術力は果してどうだったのかはわからない。

難しい病気にかかると、患者さんはどこの病院へ行ったらいいか悩む。とはいえ病院は国立、県立、日赤など、ある程度評判が高い病院が地域にはある。医師の腕が一番わかるのは“医師”だが、病院には多くの医師がいる。特に、診療科が同じか近い医師の目はごまかせない。次いで看護師だろうか。評判のいい病院内で「うちは○○科はダメね」などの噂が流れたりする。

ところが歯科はどうか。ほとんどが診療所で、しかも一人歯科医が多い。研修を短かくし、親の診療所に入れば、他の歯科医の目に触れる機会もほとんどない。患者さんが歯科医の腕を知ることは医科以上に難しい。結局、歯科診療所は腕とは無関係に選ばれる。一番いいのは近くて通いやすいところ。地域の古い診療所ではいつの間にか、息子さんや娘さんの代にかわっている。

以前、合わない入れ歯の話がNHKテレビで報道された。お年寄りは「合わない入れ歯をいくつも持っているが、痛いので食事時は外している」という。8020運動のきっかけでもあるが、日本の高齢者の残存歯数は北欧などより少ない。医科以上の歯科の質のバラツキがこれらに関係しているのではないか。

厚生労働省や歯科医師会、歯科関係学会がこの“質の問題”に関心を持たないのは、外側の人間には本当に不思議に思える。学会は専門技術ごとにできている。インプラント治療などの最新技術を習得する機会を提供することは重要だが、医療の目的からすれば、それが患者さんのプラスになることがもっと重要だ。技術の未熟な歯科医の治療が横行すれば、学会や歯科医全体の信用を落とす。講習料を払えば全員合格、といったシステムならば明らかに問題がある。

保険医療は事実上、厚労省が運営しているようなものだ。ズサンな虫歯や歯周病治療に保険医療費を払うのはおかしい。

私は、質の確保はさほど難しいことではない、と思っている。第一歩として、厚労省や学会が一定の専門家を確保し、患者さんからの問い合わせ・相談窓口を設置する。厚労省なら「医療の質管理官」「医療の質相談医」といった役職を作る。

目に余る医療機関があれば、自然に浮かび上がってくるはず、ではなかろうか。

 医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」201651日号6面掲載

 【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の問題点を指摘/第5回新点数説明会で注意を喚起

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の問題点を指摘/第5回新点数説明会で注意を喚起

協会は昨日4月26日、なかのZERO大ホールで第5回新点数説明会を開催した。会員、スタッフなど601名が参加した。
冒頭、まずあいさつに立った松島良次会長は、過去にあったP総診の経緯を踏まえ、高点数であるが2年後の診療報酬改定で取扱いが変更となる可能性や、患者の負担が増加するなどの問題点を指摘した。それらの点を踏まえ、届出や算定について慎重な検討を参加者に促した。初診が起こしづらくなり、大量返戻のおそれがあると、などを指摘した。
その後、協会に寄せられた相談から加藤開社保学術部長、本橋昌宏理事が解説を行った。
歯管の文書提供加算については、毎月加算を算定するには毎回文書提供が必要とし、四カ月に一回など定期的な文書提供では毎月の加算は算定できないことへの注意を喚起した。
新設のエナメル質初期う蝕に対するフッ化物歯面塗布処置では、病名はCeとし、算定ごとに病変部位の写真撮影が必要であることを強調した。