10月29日付けで、当協会を含む全国保険医団体連合会関東ブロック協議会にて、「国民皆保険制度を堅持するため、現行の健康保険証の存続を求める決議」を決定しましたのでお知らせいたします。
詳細は以下のPDFからご確認ください。
10月29日付けで、当協会を含む全国保険医団体連合会関東ブロック協議会にて、「国民皆保険制度を堅持するため、現行の健康保険証の存続を求める決議」を決定しましたのでお知らせいたします。
詳細は以下のPDFからご確認ください。
東京都では物価高騰に直面する医療機関等の負担軽減に向けた緊急対策として、国の臨時交付金を活用し、「東京都医療機関等物価高騰緊急対策支援金」を支給している。
申請締切は10月27日(金)までとなっている。
歯科診療所の給付に関する詳細は以下の通り。
詳細
1 交付対象期間
2023年4月1日から2023年9月30日までの光熱費
2 支援金額
10,000円
※支援金は、都の予算の範囲内において支給する。
3 申請について
申請手続きに必要なもの
1 パソコンやスマートフォン
2 法人の方は法人の印鑑証明書、個人事業主の方は印鑑登録証明書
3 上記の印鑑証明書または印鑑登録証明書に登録した印鑑
4 支援金を受け取る口座(口座名に法人名や医療機関名、代表者名等の記載があるもの)
以上の他に、委任状や使用印鑑届が必要な場合は、別途案内が来る。
2、3については申請時には不要、申請後に提出
申請フォーム
※電子申請が難しい場合は以下の問い合わせ先まで連絡をしてください。
東京都医療機関等・薬局物価高騰緊急対策支援金事務局 (受託事業者 株式会社広済堂ネクスト)
電話番号 0120-551-066 (受付時間 平日午前9時から午後5時まで)
4 手続きフロー
(1)申請フォームから必要事項を入力し、送信。【申請締切】10月27日 厳守
(2)申請後、審査を行い、提出書類を案内。必要書類を提出。(11月頃)
(3)必要書類の審査完了した後、交付決定を通知。(11月頃)
(4)東京都から支援金を支給。(12月頃)
歯科の今後を巡り田口東京歯科大教授と宮原基金歯科専門役が講演
会員数が6000名を超えた東京歯科保険医協会(坪田有史会長)が、9月10日に千代田区平河町の都市センターホテルで設立周年記念企画を開催し、シンポジウム「これからの歯科を考える」を実施した。
このシンポジウムには、東京歯科大学教授で元厚生労働省医政局歯科保健課長の田口円裕氏、社会保険診療報酬支払基金審査統括部歯科専門役で前厚労省保険局歯科医療管理官の宮原勇治氏がシンポジストとして所見を紹介した。
両氏ともその経歴から関心を集めたが、今後の歯科医療の方向や診療報酬改定などに示唆を与える内容が多数あり、参加者からは高い評価を得たようだ。
◆田口円裕氏の講演内容
まず、田口教授は現状認識として、「日本の人口動態」「地域包括ケアシステム」「2040年を展望した社会保障改革の新たな局面と課題」などの経緯・背景を中心に説明。臨床的な視点からも「う蝕有病率とう蝕の処置状況の年次推移」「20歳以上の歯を有する者の割合の推移」「4ミリ以上の歯周ポケットのある者の割合」などについて、具体的な数字を示して展望した。
一方、歯科にとって看過できない「歯科保健医療を取り巻く基本施策」を全体からの観点から逐次説明したが、特に開業医にとって懸念される「診療報酬改定の概要」についてもポイントを指。
最後に、これからの歯科保健医療の在り方として、私見と断りながらも「歯を残す技術の評価」
「地域歯科保健と歯科医療の連携」「予防給付的評価の導入」「口腔機能に着目した評価」「健康格差解消に向けたエビデンスに基づく施策推進(一次予防による歯科疾患予防)」を挙げた。そして歯科医師・研究者には、「患者への適切な歯科医療や歯科保健管理の支援」がポイントとした上で、結論として「個人の歯科疾患予防と口腔機能維向上と公衆衛生的視点を持った対策が不可欠であ、歯科保健医療政策の推進になる」とし、歯科診療も〝診療所完結型”から“地域完結型”に移行していくことを前提にしていくとが基本政策である」とした。
◆宮原勇治氏の講演内容
続いて宮原基金歯科専門役は、コロナ禍の時に厚労省保険局医療課で歯科管理官を務めていた経験あり、厚労省として慌しく対応していた経験を明らかにしながら、政府の資料類のデータの見方や読み方、言葉の解釈などをユーモアを交えつつ、歯科保険診療の視点から解説を進めた。歯科保健医療を取り巻く基本政策を再確認しながら、口腔保健推進に関わる法律概要を基本的事項策定、財政上の措置。特に、診療報酬改定の説明では、中央社会保険医療協議会(中医協)の裏舞台の一部を紹介した。
この中医協で診療側、支払側の議論・意見が対立した場合の微妙な「落としどころ」のヒントも指摘した。支払側の発言・意見が大きいことは事実だと理解しているようで、水面下での議論で意識しておくことは重要であることを示唆。
また、一般には知られていない「診療報酬と補助金」の関係にも言及。特に、補助金の定義・在り方については歯科医療界の議論では、あまり聞かれない内容であり、貴重な情報でもあった。
最後は、「診療側だけの議論では進みません。患者に何がメリットになるのか説明できなくては難しいです。この視点をクリアにしなくてはダメですね」と改めて強調していた。
◆質疑応答の模様
両氏の講演を終えた後、会場から「中医協で支払側から″重症化予防〟という歯科の今後を巡り田口東京歯科大教授と宮原基金歯科専門役が講演東京歯科保険医協会が50周年記念シンポ開催田口円裕氏宮原勇治氏ことを指摘して、疾病対象の保険診療には如何かという趣旨の発言がありましたが、田口先生はどう思われますか」と質問されると田口教授は「以前から釈然としない思いはありまし
た。元々予防の分野の人間ですから、苦心したところです。正々堂々と″予防〟としての評価をすべきではないか」と発言すると、会場から拍手が沸き起こる場面があった。東京歯科保険医協会の活動内容を理解している田口教授ならではの本音でもあった。両氏の講演内容は前記の通りである、「たかが講師、されど講師」であり、ここに同協会の姿勢を窺うことができ、さらに同協会の存在と今後の活動に期待が寄せられそうだ。
✎奥村勝氏プロフィール
おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。
2024年度診療報酬改定
A 本年8月30日に開催された第553回中央社会保険医療協議会総会(以下、中医協)において、本年月から行われてきた2024年度(令和6年度)診療報酬改定の論点や議論などが整理されました。
これらで整理された内容により、2024年度改定に向けた具体的な議論がさらに進み、具体的な改定内容が決まっていきます。
なお、厚生労働省のホームページに資料が掲載されていますので、検索していただければ詳細を確認できます。
多くの項目が取り上げられていますが、本稿では、いくつかの項目をピックアップして改定内容について推測してみます。中医協の資料には、各項目での「現状と課題」のあとに「論点」「主な意見」が記載されています。以下に、例としてかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、か強診)、口腔機能管理料、歯科衛生実地指導料(以下、実地指)についての記載を示します。
【歯科医療提供体制】
1.現状と課題/か強診について
・ライフステージに応じた継続的な口腔の管理や医療安全の取組、連携に係る取組に積極的に取り組む歯科医療機関として、平成28年度診療報酬改定においてか強診を新設し、以降施設基準の見直しなどが行われており、施設基準の届出医療機関数は年々増加している。
・か強診の施設基準には歯科疾患の重症化予防や歯科訪問診療に関する実績要件などが必須とされており、小児の歯科治療に関する要件は設定されていない。
《論点》
・かかりつけ歯科医に求められる機能や病院における歯科医療など、歯科医療機関の機能・役割に応じた評価について、どのように考えるか。
《主な意見》
・ライフコースに応じた歯科疾患の重症化予防や地域包括ケアシステムにおける連携などが重要であり、か強診にはこれらの役割が求められている。一方で患者にとっては、か強診とそれ以外の歯科診療所の違いが分かりにくいという指摘もあり、か強診がどのような役割を担うべきか考える必
要がある。
・歯科医療機関の機能分化や連携を適切にすすめ、地域の状況に応じた歯科医療提供体制を構築すためにも、在宅歯科医療、医療安全や院内感染対策など関連する施設基準を整理・検討すべき。
◆私の推測
厚労省側は政策として、か強診の届出医療機関数を増やしたいのか、抑制したいのかなどの方向性が不明である。
厚労省が示す論点からは、小児の歯科治療の実績について追加されるなど施設基準の変更が行われる可能性があり、歯科医師側からみるとか強診の施設基準は厳しくなる可能性がある。
2.現状と課題/口腔機能管理について
・小児および高齢者に対する口腔機能管理については、2022年度(令和4年度)診療報酬改定において対象患者の見直しを行ったが、算定状況は低調である。
《論点》
・口腔疾患の重症化予防や年齢に応じた口腔機能管理をさらに推進するため、診療報酬のあり方について、どのように考えるか。
《主な意見》
・口腔機能の管理については、口腔機能管理の中で行われる口腔機能獲得や口腔機能向上のための訓練に対する評価について検討すべき。
◆私の推測
厚労省側は小児および高齢者に対する口腔機能管理について、算定数を増やすための方策を提示するものと考えられる。
また、以前からの課題とされていたが、診断して病名をつけた後、口腔機能に対する訓練の評価が新設されるかについて注目される。
3.現状と課題/実地指について
・歯科衛生士による実地指導を評価した実地指は、平成8 年に新設されて以降、平成22年の障がい者に対する実地指導の評価新設を除き、大きな見直しは行われていない。
《主な意見》
・歯科衛生士による実地指は重症化予防の観点から非常に重要である。近年は、ブラッシング方法の指導等だけでなく口腔機能や生活習慣などの観点からも歯科保健指導が行われており、実態に応じた評価を検討すべき。
◆私の推測
歯科衛生士の雇用などに関して様々な問題が生じていることに対して実地指を変更するが、影響率が高くなるので実地指の点数を単純に増点することは困難な状況であり、時間要件、あるいは内容によって応じた点数配分が設定されるといった見直しが行われると推測される。
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協会は、今後も2024年度診療報酬改定について検討し、よりよい改定が行われるよう行政側に要望していきますので、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2023年10月号8面掲載)
*たくさんのパブリック・コメントが必要です*
3月23日の社会保障審議会医療保険部会において、「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ案」を厚生労働省(以下、厚労省)が示してから6カ月が経った9月6日、「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令及び介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令の一部を改正する命令案に関する御意見の募集について」(以下、パブリック・コメント)の募集を開始しました。
概要は、光ディスク(CD-RやMO)及び紙媒体によるレセプト請求を続けるためには、いずれの場合も事前に審査支払機関に届け出ることが必要になります。また、光ディスク(CD-RやMO)でレセプト請求を継続する場合に限っては、オンライン請求への移行計画(詳細は不明)を求められ、1年毎の更新制になります。また、2024年4月1日以降に新規で開業した場合、紙媒体によるレセプト請求は選択できなくなります。さらに、電子(オンラインやCD-R等)によるレセプト請求から紙媒体によるレセプト請求に変更することもできなくなる。このように請求方法を限ったり、いずれの請求方法を選択するとしても各種手続きが煩雑になることは明らかです。
直近の東京都における歯科医療機関の各種請求方法(レセプト請求形態別の請求状況 社会保険診療報酬支払基金より)をみると、オンライン請求を行っている割合が31.1%、光ディスク等の電子媒体による請求及び紙媒体によるレセプト請求を行っている割合が68.9%です。
レセプト請求形態別の請求状況(令和5年度6月診療分)社会保険診療報酬支払基金より
東京歯科保険医新聞6月号2面に掲載の社保・学術部長談話では、「診療報酬の請求方法を一つに限定する実質的な義務化の強要は、医療機関に混乱を招き、地域医療の崩壊を加速させ、医療提供に影響を及ぼし、患者・国民にも波及しかねない」と警鐘を鳴らしています。
今回、募集を始めたパブリック・コメントは、厚労省に現場の意見を伝えることのできる唯一の場です。実質的なレセプトのオンライン請求義務化の動きに対するパブリック・コメントを是非数多く投稿しましょう。
——————–「レセプトのオンライン請求の実質的な義務化」の概要————————————-
(1)レセプトの請求媒体の取扱い
フレキシブルディスク(FD)による請求方法を削除し、CD−RやMOのみに限る。。
(2)光ディスク等でレセプト請求をしている医療機関の取扱い
①2024年3月31日以前から光ディスク等を用いてレセプト請求を行っている医療機関は、同年9月30日までは光ディスク等を用いてレセプト請求できる。
②2024年9月30日以降も光ディスク等を用いてレセプト請求を続ける場合は、オンラインによるレセプト請求へ移行するための計画と光ディスク等を用いてレセプト請求を行うことを事前に審査支払機関に届け出ることにより、1年ごとの更新で光ディスクによるレセプト請求を継続できる。
(3)紙媒体でレセプト請求をしている医療機関の取扱い
【レセプトコンピューターを使用していない医療機関の取扱い】
2024年3月31日以前から紙媒体を用いてレセプト請求を行っている医療機関は、レセプトコンピューターを使用していない旨を事前に審査支払機関に届け出ることにより、紙媒体のレセプト請求を継続できる。
【高齢の歯科医師が常勤でいる医療機関の取扱い】
2024年3月31日以前から紙媒体を用いてレセプト請求を行っている医療機関であって、常勤の歯科医師が高齢かつ、レセプトコンピューターを使用している場合、当該歯科医師の生年月日が、1946年4月1日以前(概ね77歳)である旨を事前に審査支払機関に届け出ることにより、紙媒体のレセプト請求を継続できる。
(4)施行日
2024年4月1日
コロナ禍や物価高騰に直面し厳しい状況の中、オンライン資格確認システムやオンライン請求の義務化などにより、医療機関は大きな負担を強いられています。2024年度の診療報酬改定で大幅な診療報酬の引き上げが実現しなければ、さらに医療現場は疲弊します。
そこで、先生方から現場の声をいただき、政府、国会に届けたいと思います。つきましては、下記に賛同いただき、Googleフォームに必要事項をご入力のうえ、「送信」をクリックしてください。
締切:11月29日(水)
▶請願署名注文フォーム(無料/どなたでもご注文いただけます)
春に実施した「健康保険証を廃止しないことを求める請願署名」へのご協力、誠にありがとうございました。残念ながら、現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードに一本化する法案が、23年6月に可決成立してしまいました。
しかしその後、マイナンバーカードと一体化した健康保険証(マイナ保険証)をめぐり、「紐づけミス」や「資格無効」と表示されるなどのトラブルが多発し、秋をめどに総点検、修正を行うとして、現在作業が進められていますが、マイナ保険証をめぐるトラブルの続出は一向に止まりません。全国の協会・医会や保団連の調査結果が連日、新聞やテレビなどのマスメディアに取り上げられ、問題点がより一層浮き彫りになっています。8月17日には、協会けんぽで約36万人のひも付けが未了であることが判明しました。マイナ保険証を持たない人には、一律に資格確認書を交付するとしましたが、それであれば現行の健康保険証を残せば済むことであり、無駄な手間と費用とをかける必要もなく、不安も払拭されます。マイナ保険証を持つ人も、健康保険証を残せば、マイナ保険証でトラブルがあった場合でもすぐに解決できます。
そこで東京歯科保険医協会では、PRポスター「やっぱりキミが必要だ」とともに、「現行の健康保険証を残してください請願署名」に新たに取り組むことといたしました。健康保険証を存続させるためには、今こそ声をあげる必要があります。春に署名にご協力いただいた先生も、今一度、署名へのご協力をお願いいたします。
9月5日頃配達予定の「月刊保団連」9月号に署名用紙とポスター、返信用封筒を同封いたしました。1筆でも結構です。ぜひ、ご協力をお願いいたします!いただいた署名は、随時、国会に届けていきます。
追加で署名用紙や返信用封筒、ポスターをご希望の場合はコチラからお申込いただくか、お電話、FAX、メールでご連絡ください。
署名用紙のご注文はこちら
電話番号:03(3205)2999
FAX:03(3209)9918
Mail: info@tokyo-sk.com
9月11日、東京歯科保険医協会の設立50周年記念企画「これからの歯科を考える~今後もより一層頼りになる存在としてあるために~」を開催しました。
前半は、記念シンポジウム「これからの歯科を考える」が催され、田口円裕氏(東京歯科大学歯科医療政策学教授)、宮原勇治氏(社会保険診療報酬支払基金審査統括部歯科専門役)による講演、その後は当会の坪田有史会長を交えてトークセッションを行いました。
当日の資料はこちらからご覧ください。
また、後半は会場を移して記念レセプションを開催。ミニデンタルショーや豪華景品が当たる大抽選会を実施し、会員の先生、スタッフ、ご家族らで大いににぎわいました。
当日、お寄せいただいた50周年記念企画 メッセージ一覧はこちら
訪日外国人は、政策や景気に関わる議論において、大きな注目を集めている。その理由の一つとして、「収入」が挙げられる。すなわち、訪日外国人は我が国に経済的な恩恵をもたらすと考えられている。実際、COVID―19蔓延前の観光庁の2019年度調査[1]では、訪日外国人の旅行消費額は年間4兆8千億円となっていた。このインパクトについてピントこない読者もいらっしゃると思われるが、同時期の歯科診療医療費(国民医療費)の3兆150億円と比べると、我が国にとって大きな収入源であることを理解されるはずである。
本連載の第1 回において、国民皆保険制度の財政や医療イノベーションの活性は、実体経済の動向と関係が深いことに触れた。つまり、一見、臨床等とは関係がないように見える実体経済は、医療の発展においても重要な訳である。訪日外国人の観光収入も同様で、その一部はまわりまわって公費等として医療分野を支える財源にもなる。また、インバウンドの医療ツーリズム等は、病院経営に直接的な恩恵をもたらすと期待される。
一方で、診療対応を中心にマイナス面も存在する。東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えていた19年頃に、訪日外国人の診療負担や経済負担にまつわる臨床現場のトラブルが話題になっていたのをご記憶の方も多いと思われる。特に、自由診療に比較的なじみの薄い医科診療の請求において、未収金の発生や診療の赤字化が問題となっていた。それらを踏まえ、その対策で実施された政策事業の研究成果[2]から、診療価格と病院経営に関わる学際的な神髄を紹介する。まず診療価格の検討は、コスト(原価)を算定することが必須となり、間接費も含むすべての原価を1患者等へ集約する、原価計算を行うことが望まれる。ただし、このコストの単価は、稼働率(診療数)の影響を受ける点に注意が必要である[3]。
自由診療では、コストに相対する(車の両輪的な)要素として、患者の経済力が重要になる。この経済力は、診療介入による成果との関係を論じるため、支払意思額調査(WTP)で整理がなされる場合がある。この支払水準と原価水準のバランスが取れたところは、医療機関における収支均衡も実現し、医療者や患者(保険者)等の関係者全員にとって、納得感のある適正な診療価格となる訳である(下図参照)。利益率に対する関心も高まる病院経営の立場では、医療費原価を下げ、支払意思額を上げる努力が必要になる。そのためには、第3回のテーマでも解説をしたとおり、提供する診療やサービスの価値を伸ばし、それを患者や保険者に認識をさせることも重要になる。価値が大きいと分かれば、患者は自ずと集まり、支払水準も上昇することが期待される。ただし、その基盤となる診療成果の向上には、コストの増加もついてまわる。そこで通常は、診療価格をできるだけ最大化させることが理想になる。ただし、価格上昇に伴い、支払能力から患者数が減ることも予想される。そこで、診療成果を高めつつ診療価格を抑え、患者を多く集めて稼働率を上げる戦略が検討される。この選択肢は、再受診が多い疾患において効果的と言われているが、一見の患者である訪日外国人に対しても、日本のブランド向上の面で一定の意義があると解釈される。
ここまで、訪日外国人に対する自由診療について話題を提供してきたが、医の倫理等に立ち返れば、医療を経済力等で論じることに一定の懸念があるのも事実である。その点から、経済的な不公平性の影響を極力抑えた我が国の皆保険制度が、大変素晴らしいことに改めて気づかされる。ただし、この公的医療保険制度においても、先に挙げた戦略の概念は、DPC制度等へも一部導入されているようである。
田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任
【文献】
[1] 訪日外国人消費動向調査の結果概要. 2020. 観光庁. [ 2 ] Tomoyuki Takura, et al. Int. J. Environ. Res. PublicHealth,18(11), 5837, 2021. [ 3 ] 訪日外国人の診療価格算定方法マニュアル.2020.厚生労働行政推進調査事業.COVID―19については、まだ不明な点が多く臨床的な議論などもあるため、油断は禁物ではあるが、社会的にはある程度落ち着いてきたと推察される。このような新興感染症は、繰り返す感染の波なども視野に入れた長期的な取り組みが必要であるうえ、「社会的距離(social distance)」を始めとする裾野の広い感染症対策が不可欠であり、衛生資材などの健康医療産業のみならず、経済活動全般に大きな影響を及ぼすことは論を待たない。
一般に、感染症対策を含む医療システムにおける活動は、それを支える原資自体が社会全般の経済活動と相互関係にあるため、継続的な対策が必要な場合ほど、臨床的な課題と経済的な側面のバランスを図りながら、社会システムの発展に努める必要がある。
そのため、ハイリスク層である高齢者や基礎疾患を有する国民の健康・生命の確保を最優先にしつつも、経済活動の低下をできるだけ小さくする努力は、各種の防疫活動(行動変容)の推進とともに重要な視点と思慮される。例えば、重症患者の受け皿(ICUなど)を確保することは、臨床成績を担保しながら経済活動の許容範囲を拡げる可能性もあり、結果として、医療を支える経済的な損失は減少するため、感染症対策にかかる費用は相殺され、死亡者数も低く抑えられることが想像される。
そこで次に、この社会経済的な投資と回収のバランスの意義について、関わる概念やデータを整理してみる(コンセプト:図1)。COVID―19のような臨床的な特性および経済(社会)的な影響を有する特異な感染症に適切かつ効率的に相対し、市民の健康・生命のみならず医療制度などの国民福祉を恒常的に支えるためには、従来(平常時)の医療提供体制の強化に加え、感染症蔓延(緊急時)に伴う財政支援などが不可欠と考えられる。特に、ICUとともにHCU(高度治療室)などをも有効活用し、集中治療供給体制の拡充を行うには、平常時の備えとして、人工呼吸器および関連設備などとともに、医師・看護師などのマンパワーの充足も必要になる。これらは、社会保障や医療経営の負担を高める懸念も生じるが、感染慢性時に実体経済へのマイナス影響を抑制し、経済的な成果を生むことも期待される。例えば、ICUも含む急性期病床の人口あたりの密度が高いと、COVID―19による人口あたり死亡者数が低い傾向も認められる(図2, p< 0.01)[1]。
加えて、国内総生産(GDP)の成長率と急性期病床の人口あたりの密度の関係を眺めると、平常時の急性期病床の密度は、COVID―19の蔓延に伴うGDPの成長率のマイナス影響を減じる傾向も示唆される(p<0.05)。以上から、不確実性の高い感染症の特徴に配慮しつつ、感染蔓延時のみならず平常時の備えや終息後の防疫を促進するには、経済活動の継続性も視野に入れて、中長期的な応対や関係者の意識改革を進めることが望まれる。新興感染症への対応策とはつまるところ、医療と経済の両立が理想であるため、臨床対応を優先しつつも、経済復興を早める工夫も不可欠であると考えられる。
これらは、国民のコンセンサスの醸成が前提でもあるため、普段より国民全体で共有すべきテーマと推察される。
田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任
【文献】
[1]田倉智之. 医療のグローバル化とその課題_国際診療の社会経済. 整形・災害外科. Vol.64 No.3, pp.341-347. 2021アドヒアランスは、医療者から患者等への一方通行ではなく協同のもとで、患者が治療の必要性について理解し、自発的、積極的に参加する姿勢を指す概念である。WHOの定義(2003年)を意訳すると、「人間の主体的な健康行動が適切(医療専門家の方針と一致)であること」になる。なお、狭義の生物学面や疾病機序が同様でも、長期予後に差異が生じるケースは散見するが、その背景として、患者固有のアドヒアランスの存在も想像される。以上から、アドヒアランスの見える化とそのコントロールは、健康寿命や社会経済に大きな恩恵をもたらすと期待される[1]。
例えば、服薬コンプライアンスや患者モラルハザードは、臨床成績と密接に関係し、健康行動だけでなく医療費などの社会経済的要因にも大きな影響を与えることが明らかになっている[2、3]。つまり、これらの向上は、患者の慢性疾患の負担だけでなく、経済的負担も軽減するわけである[ 4]。特に、自己管理やヘルスリテラシーを含む広義のアドヒアランスは、疾病予防行動に影響を与える[1]。このような中、限られた共有財の枯渇を避け、医療資源の配分の公平性を管理する必要もある厚生政策では、有害事象につながる可能性のある重複受診に伴う医療費の増加も懸念されている[1、5、6]。
以上を整理すると、アドヒアランス(健康関連行動)の定義は、議論の立場によってやや変わるものと考えられる。つまり、公共市場を背景に集団の健康を論じる場合は、「自主/積極性」に「社会協調性」「モラルハザード」も関係してくるわけである。そこで、ここからは、広義のアドヒアランスの見える化とともに、その長期の臨床経済効果を検証した我が国の研究を紹介する[ 1]。この研究は、定量化されたアドヒアランス(10水準のASHRO*スコア:低いと良い)が長期(48カ月間)の医療・介護費用や生命予後、他の臨床指標に与える影響を48,456人(循環器領域)のコホートで検証しつつ、予測モデルを開発している。
ASHROスコアは、収縮期血圧、LDLコレステロール、HbA1c、eGFR等の因子とも有意な相関関係を担保しつつスコア化されている。危険因子を揃えた予測モデルの全死亡に対する検証の結果、スコアの低い群と高い群の間には、3年以上後の累積死亡率に統計学的有意な差が認められている(2vs.7%、p< 0・001:表)。また、生命予後(全死亡)に対するASHROスコアのオッズ比は、1.860( 95 % CI:1.740- 1・980、p<0・001)である。さらに、48カ月後の医療・介護費用の変位は、アドヒアランスが悪い群(スコア10)は、平均(スコア5)に対して、一定の精度のもとで将来の医療介護の累積費用が140%以上増加することを示している(図)。
ここまでの話しを医療保険財政のひっ迫等を背景にまとめると、やや大げさに聞こえるかもしれないが、アドヒアランスを制することで、将来、医療システムの安定供給を手に入れられると考えられる。すなわち、医療制度において国民のもっとも重要な財産(価値)を安定供給と見なした場合、アドヒアランスの向上が大きな価値を育むことになる。
田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任
*Adherence Score for Healthcare Resource Outcome
【文献】
[1] Takura T, et al. Development of a predictive model for integrated medical and long-term care resource consumption based on health behaviour: application of healthcare big data of patients with circulatory diseases. BMC medicine. 2021;19(1):15.
[2] Cleemput I, et al. A review of the literature on the economics of noncompliance. Room for methodological improvement. Health Policy. 2002;59:65‒94.
[3] Robertson CT, et al. Distinguishing moral hazard from access for high-cost healthcare under insurance. Plos One. 2020;15:e0231768.
[4] Neiman AB, et al. CDC grand rounds: improving medication adherence for chronic disease management̶innovations and opportunities. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2017;66:1248‒51.
[5] Hassanally K. Overgrazing in general practice: the new tragedy of the commons. Br J Gen Pract. 2015;65:81.
[6] Porco TC, et al. When does overuse of antibiotics become a tragedy of the commons? Plos One. 2012;7:e46505.
【労働条件とチャットアプリの関係】
労働基準法は、労働者の権利保護と健全な労働環境の確保を目的として制定された法律です。この法律に基づき、就業規則や労働契約などが結ばれ、賃金や労働時間、休憩時間など労働条件が定められます。さて、労働基準法や就業規則、労働契約など(以下、労働基準法等)で定められている就業時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間のことであり、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。休憩時間や終業時刻以後の時間は、労働者は使用者の指揮命令下にはありません。このことを念頭に少し考えてみたいと思います。
【就業時間との関係】
就業時間外にSNSなどを使って業務連絡を行う場合には注意が必要です。仕事に関する連絡は簡単な場合であっても〝仕事〞であり、賃金支払いの対象となります。また、就業時間外に送られたSNSなどの連絡を「見なければいけない」「必要に応じて返信をしなければいけない」など、あらかじめ定めておく必要もあります。これらを事前に定めておくことで、業務連絡としての活用が可能となるでしょう。これらの取り決めがない場合は、見るも見ないも受け手任せになり、業務連絡としての役割を果たすことができません。また、緊急連絡としての機能も果たせなくなります。前提として、就業時間外にSNSなどを利用した業務連絡を行う場合には、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)の締結・届出が必要になります。36協定の締結・届出がない場合には、就業時間後や休日にSNSなどを活用した業務連絡は違反行為になりますので注意が必要です。
【自己判断による労働の回避】
SNSなどで業務連絡を行ったところ、スタッフが気を利かせて、就業時間外に自主的に翌日の準備を行った。仕事への意欲については褒めたいところですが、この場合も時間外労働として賃金が発生する可能性があります。明確な指示はなくとも、SNSなどの連絡が〝指示〞と取られれば、時間外労働と解釈されかねません。
【利用の制限】
36協定を締結・届出し、SNSなどの利用について取り決めをしてもそれだけでは不十分です。先輩スタッフが後輩スタッフに、就業時間外にSNSなどを活用して仕事のアドバイスをするなども考えられます。就業時間外にメモのつもりで行ったSNSなどの投稿を見た後輩スタッフが、そのことでやり取りを行うなどした場合には、業務と取られる可能性があります。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2023年9月号11面掲載)
※「東京歯科保険医新聞」7月号の「IT相談室」はお休みました。
最近、一番多いケースが、「他人の情報に紐づけられて間違った情報が表示される」もしくは「誤って紐づいた口座にお金が振り込まれる」などの「個人の誤認」です。
そもそもマイナンバーカードは、当初、住民基本台帳と似たような機能を担うことを想定して設計されていました。主に行政サービスを受ける際の本人であることの証明や、個人データへの参照の鍵とすることが目的でした。
個人に関する情報は、国、都道府県、区市町村などがそれぞれ個別に管理しています。これをマイナンバーカードを鍵として、ばらばらに管理された情報を統合するのではなく、それぞれを「連携」させることで参照できる仕組みとすることが狙いです。
今では銀行口座、健康保険証、今後は運転免許証とも連携します。
この「連携」は国、都道府県、区市町村など別々のデータベースに接続していくので非常に煩雑で「間違い」「誤解」「うっかり」などの人的なミスが多く起こり得ます。このため、連携システム構築作業の中に「徹底したテストと改善」を実施する必要があります。今の問題は、それができていないために起きているのであり、設計段階の問題とも言えます。そしてここまで大規模な情報連携の経験を誰も持っていないことも根本的な問題です。
元々、マイナンバーの設計を行った時点で、ここまで広範囲に連携を行うことが計画されていたなら、もっと準備も上手にできたことでしょう。締切だけ決まっていて計画もなく、とりあえずスタートさせるという流れに、どの自治体の担当者も追い立てられているのではないでしょうか。さまざまな情報との連携を包括的に考え計画を立てなければ、今後もこのような問題の発生は必ず続きます。まさにⅠT系の「あるある」です。
さて、ここからは実際に歯科医院内で似たようなトラブルが起きた場合のお話です。
トラブルが起きた時には、院内の操作や機械に問題があったのか、それともデータベースの情報連携に問題があるのか、現場スタッフは瞬時に判断ができないので一時的な混乱が予想されます。
「他人の情報が表示される。本人の情報が参照できない」という場合はデータベースの情報連携に問題がある場合が多いです。さまざまなトラブルを想定して、現場スタッフは焦らず騒がず対処できるように、日頃から院内でのコミュニケーションを取っておくとよいでしょう。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2023年8月号4面掲載)
※「東京歯科保険医新聞」7月号「IT相談室」はお休みしました。
半世紀を迎えて
A 東京歯科保険医協会は、国民皆保険制度を守るとともに、保険診療の充実を図るため、歯科保険医の要望に応えるべくして50年前にスタートし、50周年を迎えました。過去から現在までのすべての会員の先生方、事務局員、そして協会にご協力、ご支援を賜った方々に対し、協会を代表して心から御礼申し上げます。直前に迫っておりますが、2023年9月10日(日)に都市センターホテル(千代田区平河町)で東京歯科保険医協会設立50周年記念として、記念シンポジウムならびに記念レセプションを開催します。「これからの歯科を考える」と題しての記念シンポジウムに引き続き、記念レセプションでは参加されたすべての方に記念品のプレゼント、また豪華景品が当たる抽選会、ミニデンタルショーなどを企画しました。詳細は、このホームページにも記載しています。スタッフやご家族の方も無料で参加できます。協会が設立以来半世紀を迎えることができたことを多くの方をお迎えし、ともに喜びを分かち合いたいと思います。奮ってご参加のほど、よろしくお願い申し上げます。
A 今から50年前、第1回の総会は1973年4月22日に開かれ、当時の会員数は180名と記録されています。そして、10年前となる40周年に作成した記念誌「『現在過去未来へ』2」に、当時の松島良次会長が挨拶文で「あと数十名で歯科会員5,000名となる予定」と記されています。すなわち、40年間で約28倍の会員数となり、東京都の多くの歯科医師の先生方にとって協会が必要とされてきたことが分かります。
本年6月18日に第1回から数えて51回目の第51回定期総会が開催され、その直前に会員数は6,000名を超え、現在の会員数は、6,024名(2023年8月25日現在)と直近10年間で1,000名以上の先生がご入会されました。この会員増は、さまざまな要因がありますが、その一つには既会員の先生からのご紹介によるものも少なくありません。新たな会員をご紹介いただいた会員の先生に対して、この場をお借りして感謝申し上げます。
現在の協会は、日々の保険診療についての会員の疑問に答えるとともに、開業医の医院経営のサポート・共済保険・税務・学術・スタッフ教育・平和運動まで幅広い活動を行っています。保険請求のサポートのため「電子書籍デンタルブック」を無料提供し、さらに行政などが発する情報を速やかに共有するため、デンタルブックニュースとしてメールで随時会員に配信しています。
一方、厚生労働省や東京都に対しては一人の歯科医師が個人で意見を届けることは容易ではありません。そこで、特に保険制度や歯科医業にかかわる要望を中心に協会は、多くの歯科医師で構成されている一団体としてさまざまなアプローチを行っています。それらのアプローチをするためには、バックアップするツールが必要です。例えば、会員アンケートの結果、あるいは先生方に署名していただいた紙署名用紙の束を持って、国会議員や行政に会員の声を要望として届けています。今後もご協力よろしくお願い申し上げます。
また、歯科界のあらゆる情報をチョイスして、できるだけ迅速に会員へデンタルブックニュースとしてメール配信、あるいはFAX、協会ホームページなどを通じて発信しています。その際、行政などから発出される少し難解な文章を平易に解説し、さらにその文章の裏、そしてその先を読んだ上で、情報を会員と共有することに努めています。来年は改定年度で「トリプル改定」が行われますので、先生方にとって情報を知ることが特に重要と言えます。
我々は、2020年前半から長期に渡って新型コロナ感染症による影響を受けてきていす。そして、本年になってオンライン資格確認の原則義務化、マイナ保険証への対応、電子処方箋の導入、続けてオンライン請求の義務化、そして電子カルテの導入など、さらに順番にさまざまな項目が強制されることが予定されています。すなわち、歯科保険医の環境は現在から将来に向かって、対応が困難となる可能性がある案件が控えています。協会は会員のため、これらの案件への対策、対応を行う所存です。
未だ会員になられていない先生がいらっしゃいましたら、ぜひ入会をご検討ください。
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これからも東京歯科保険医協会は、歯科医師が保険で安心してきちんとした診療が日々できるよう、そして患者・国民から信頼される歯科診療を提供するためのサポートを行なっていきます。重ねて半世紀と長きに渡って協会を大きく成長させてくださった先輩方や会員の先生方に心より感謝申し上げます。今後も協会のさらなる発展のためご協力をよろしくお願い申し上げます。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2023年9月号8面掲載)
電子カルテについて、これまで639号から2回にわたって取り上げてきました。電子カルテには先月号で解説した「電子保存の三原則」である「真正性」「見読性」「保存性」を備える必要があります。また、「電子保存の三原則」とともに「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」にも対応していなければなりません。電子カルテに詳しい識者の方にお聞きしたところ、歯科において「電子保存の三原則」ならびに「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠し、適切に許容できる市販システムは、現時点では数少ないとのことでした。
厚生労働省が策定した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」とは、個人情報の中でも厳重な保護が必要とされる患者の電子カルテなどの医療情報を適切に管理するために国が定めたガイドラインです。本ガイドラインは、2005年に第1版が公表され、患者の個人情報を守るため、個人情報保護法、e‒文章法、医療法、医師法などを根拠として作成されています。なお、改正個人情報保護法の施行など、法律の改正に合わせて版を重ね、直近のガイドラインは、本年5月に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」として公表されています。本改定は、本年4月から保険医療機関・薬局でオンライン資格確認の導入が原則義務化されたタイミングでネットワーク関連のセキュリティ対策がより多くの医療機関などに求められるため、実施されました。すなわち、保険医療機関としてガイドラインの理解が求められています。ガイドラインの詳細は、下記QRを読み込みご覧ください。
電子カルテに変更を余儀なくされるのはいつ頃ですか?
2030年に普及率90%という数字が示されていますが、未だ不明ですし、歯科では難しいのではないかと思います。歯科医療機関の経済的な問題以外に、理由の一つとして医科に比較してレセプト作成と連動させる必要性がある歯科にとって、標準化した規格を作成することのハードルが高いのではと考えます。したがって、電子カルテは現時点ですぐに対応しなければならない訳ではありませんが、オンライン資格確認の導入から始まった国が考える医療DXの先にある「電子カルテ」について、本会は情報収集、知識向上を今後も図っていきます。「電子カルテ」が現在使用しているレセコンに代わって原則義務化となり、強制的に導入しなければならなくなった時、国に正しい意見、要望ができるよう、さらに会員に明確に説明できるよう今後も準備を進めます。会員の先生方におかれましては、質問あるいはご意見があれば本会までお寄せください。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2023年8月号8面掲載)
「電子カルテ」とは その2
A 前号の電子カルテの普及率には、驚きました。前回の続きで電子カルテについて解説します。今年4月の中医協総会で「医療DX」として全国の医療機関・薬局において、電子カルテ情報の一部の共有、閲覧を可能とする電子カルテ情報交換サービス(仮称)の構築に取り組み、医療機関における標準規格に対応した電子カルテの導入を推進することが示されました。「診療報酬改定DX対応方針取組スケジュール(案)」では、病院、診療所、薬局などが対象であることが示されており、診療所の対象には歯科の表記があり、歯科医療機関にも電子カルテの導入が予定されています。
医療機関に光回線によるオンライン環境を構築させるためのオンライン資格確認システム、マイナ保険証、そして環境構築後にオンライン請求、電子処方箋と、次々に強権的な義務化が予定されています。これらの先に、電子カルテ導入が予定されています。
A 厚労省の医療施設調査の結果を示しました(下記参照)。直近の2020 年(令和2年)の調査(聞き取り調査)では、歯科診療所の電子カルテの普及率は48.7%と示されています。先日、協会会員の新規開業医相談会において、事前アンケートでの「カルテの作成方法は?」との問いに対し、電子カルテを導入していると回答された先生を担当させていただきました。お話しを聞いたところ、電子カルテではなく、レセコンから紙に印刷されていました。なお、その時の相談者全体で事前に電子カルテを導入していると回答された会員は6月13日時点で46%でしたが、すべての会員が電子カルテでなく、レセコンでの対応でした。したがって、多くの方がレセコンと電子カルテを間違えて認識されていることがわかります。恣意的ではないにせよ、行政側が現実とまったく違う数字を利用して電子カルテ導入を推し進めることができないようにすることが必要です。したがって、電子カルテとレセコンを間違えないよう、ご確認をよろしくお願い申し上げます。なお、協会は近々、厚労省に対して、正確な調査を行うように要請する予定です。
従前、紙媒体による管理が義務付けられていた診療録などが、1999年(平成11年)4月の厚生省通知「診療録等の電子媒体の保存について」によって規制緩和され、いわゆる「電子保存」が認められました。この通知では、医療情報システムの安全管理に加えて、診療に供する情報を扱うため、医療固有の要求事項が示されています。これが「電子保存の三原則」と呼ばれ、「真正性」「見読性」「保存性」の3つの要件で構成されています。
「真正性」とは、第三者からみて作成者の責任の所在が明確であり、かつ、書き換え、消去・混同、改ざんを防止していることです。また、記名・押印が必要な文書については、電子署名、タイムスタンプを付すことが必要です。
「見読性」とは、診療に用いるのに支障がないことと、監査などに差し支えないようにすることで、必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること、直ちに書面に表示できることです。
「保存性」とは、記録された情報が法令に定める保存期間内、復元可能な状態で真正性を保ち、見読できる状態で保存されることです。
将来、電子カルテの導入を強いられた時のため、電子カルテを十分に理解した上で、正しいカルテの記載や算定要件に沿った請求を知識として持つ必要があります。そして協会は、導入費用やランニングコストなどの歯科医業に関係するさまざまな問題に対して、現場の意見を行政側に訴えていきます。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2023年7月号8面掲載)
▼設立は6月20日
自民党・公明党の与党による「口唇口蓋裂議員連盟」の設立総会が6月20日に行われ、初会合を開催した。役員として、会長には衆議院の橋本岳議員(自民党)、事務局長に細野豪志議員(自民党)、事務局次長に吉田宣弘議員(公明党)、幹事に山本博司議員(公明党)、顧問には野田聖子議員(自民党)が、それぞれ選任された。
▼7月27日に第2回会合
続いて同議連は7月27日、参議院議員会館内の会議室で第2回会合を開催した。今回は、昭和大学歯科病院長で同大特任教授も務める槇宏太郎氏が講師に招かれ“口唇口蓋裂”について講演を行った。
会合は、吉田事務局次長の司会で進められ、特に口唇口蓋裂の課題として、前回、指摘された内容を集約した。「現在18歳未満は育成医療、18歳以上は更生医療に分類されている。その一方で、顎修正手術並びに手術後の歯科矯正治療は身体の成長がほぼ完了する18歳以降が望ましいとされているが、現在の更生医療制度下での身体障害者手帳の取得が取りづらい」などと指摘。患者側からも「育成医療の年齢期限延長」などを求める声があることを紹介。こうした社会的な課題に対し、臨床的な発症(生誕)からその後の成長過程に伴う口唇口蓋裂症状への対応について説明を行った。
▼昭和大歯学部病の槇院長の講演内容
一方、槇病院長は、口唇口蓋裂学会理事長を歴任した経験から、改めて口唇口蓋裂の形成外科・口腔外科から矯正歯科診療を臨床的な視点から説明。まず「外科的診療のその技術も発展してきている。日本のレベルはトップクラスであると思われる。矯正歯科も上顎と下顎の成長速度が違うので、下顎が前に出てしまうのです。その問題への対応が重要ですが、そのレベルも良くなっています」としつつ、「障害者総合支援法、自律支援医療(更生医療・育成医療)」についても併せて説明。特に、障害者総合支援法の対象として区市町村が実施主体になる“自立支援医療”にも言及し、「対象は18歳未満で、音声、言語、咀嚼機能障害のある児童であること」などを紹介した。
講演後に行われた質疑応答では役員(議員)の橋本会長から「育成医療・更生医療の適用には規定があるが、口唇口蓋者の治療が終える術後の年齢が23~26歳となるとその差のギャップをどう理解するのか」との質問があり、続いて、自民党参議院の島村大議員が「治療期間のことを考えると、ある程度の期間が必要。具体的には夏休みなどになるが、生徒には大事な教育もあるため、その点への配慮が必要」と指摘した。
そのほかの参加議員からは、「育成医療・更生医療の適用年齢の延期への課題は何か」「日本口蓋裂学会の認定制度が2019年度からスタートしているが認定医は全体のどの程度を占めているのか」などの質問があった。
▼友の会会員からは本音を交えた報告が
さらに、口唇・口蓋裂友の会会員からは、「診療できる病院も限定されているのが現実。都市部と地方では違いがあります。手術後の診療の対応がバラバラです」「まだ、社会に知られていないのも事実。紹介された診療所で『本院では診られない』と、断られることもありました」など、現状からの意見を交えた報告が行われ、その改善項目を役員に訴えた。
▼育成医療と更生医療の課題検討を再確認
なお、今回の会合では、特に行政・法律面からの指摘がクローズアップされたが、育成医療(18歳まで)と更生医療(18歳以上)への理解・課題などが、さらに議論を詰める必要があると各議員から再確認され、衆院法制局からも、「今後のこの年齢規定の件、厚労省と議論すべく申し入れしています」と報告された。内閣提出法案と議員立法の相違と適否などについて、専門の立場からの説明も行われた。
歯科医療界ではあまり話題にならない「口唇口蓋裂」ですが、議連の活躍に期待します。 ただ、私の立場からは、患者関係者には、さらに歯科への理解を願うばかりです。
✎奥村勝氏プロフィール
おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。
◆通算96回目のメディア懇談会
7月14日、東京歯科保険医協会が2023年度第2回メディア懇談会(メディア懇)を開催しました。08年3 月18日の初開催以来、通算96回目とのことでした。今回は参加に当たり、会場における対面形式とオンライン形式(Zoom)の選択を可能としました。コロナ禍による20年3月のオンライン開催以後、実に3年半ぶりとなる会場対面形式によるメディア懇に出席しました。早坂美都副会長の司会、坪田有史会長の報告・解説で進められました。
この日の議題は、①マイナ保険証・オン資トラブル関連( 今後の協会の動向)、国会要請、署名、メディア懇直近の会員からの問い合わせ、②オンライン請求義務化撤回関連(社保・学術部長談話)、③東京都2024年度予算要請関連、④第51回定期総会の開催後報告関連、⑤50周年記念企画―などでした。内容は、協会広報・ホームページ部のまとめ記事に譲ります。
〝対面(会場)〞で参加しますと、毎回熱心な一般紙マスコミの記者諸氏、そして今回、新たな新聞社の記者参加もあり、リアルで新鮮な印象がありました。常連諸氏とは早速、挨拶・雑談を交わしました。そこで、改めて〝対面形式の意義〞を考察してみました。
◆改めて問う対面式の意義
主催者(司会)側からの報告と説明が終わると、質疑応答を開始。マスコミ側から「問題の評価」「事実の確認」「今後の活動」などが質され、主催者側が丁寧に回答。貴会の見解を確認しました。
◆一般紙と専門紙の相違
ここで、懸念される一般マスコミと業界マスコミの違いが確認できましたので指摘しておきます。マイナ保険証・オン資トラブル関連は、本質的には医療機関の共通問題です。ただし「歯科と医科の経済的・診療形態などの背景に相違があることを一般マスコミはもっと理解してほしい」と痛感しました。また、マスコミからの質問に、回答する側の表情・表現・言葉、ニュアンスから、見えない「情報」も得られました。これが「対面形式の意義」の一つです。
また、メディア懇開始前と終了後の雑談からも〝新たな情報〞を得ることができました。本音として、これがマスコミ関係者には非常に重要になります。質問に対する回答によっては、憶測・推測が働き、次の質問や問題意識に影響を与える場合もあります。
◆オンライン形式の効果
諸事情で会場参加できない・しない場合には、確かにオンライン形式の意義があります。まさに進化した文化の恩恵です。同時にネットから配布資料を得られるよう配慮されていますので対面形式と同様になり、経費・時間などの点からは、その効果は明確です。
さて、6月18日に開催された貴会総会の中で、記念講演会を行った社会保険診療報酬支払基金理事の山本光昭氏が興味深い報告をしていました。行政へのアプローチ方法として、①業務関係の手続きからアプローチ、②法人幹部の出身高校や大学の同窓のルートを通じる、③様々な講演会、セミナーなどで、これはと思える行政官の講師がいた場合、すばやく名刺交換―と強調していました。特に大事なのは、③で指摘している〝名刺交換〞です。これは、対面形式のメディア懇談会(記者会見とは様相が違います)でも指摘できます。
◆枠を超える〝縁〞とは
今回のメディア懇では、新たに参加したマスコミ記者諸氏と名刺交換。挨拶を含め意見交換しました。もちろん社交辞令で終わることもありますが、それは承知の上です。今回、来場しなかったマスコミ関係者は新規記者と〝縁〞ができませんでした。やはり、関係当事者と直接、意見交換・雑談することで人間関係ができ、時には、想定外に意味がある話を聞くこともできたりします。そして、年齢、性別、派閥、組織、職階、さらには国境などの枠を超えたタテとヨコのつながり、点と線のつながりが面に拡がり、ネットワーク化し、広い人脈形成へと発展して行くことが多々あります。
現在行われているFacebook、LINE、各種SNSなどによる連絡、情報提供、意見交換、これはまさに世界の潮流です。一方で「効率第一」「無駄の排除」を最優先とする価値観が社会を占めています。だからこそ、人と人との意見交換・雑談の意味が、「忘れてはいけない価値」だと痛感したのが、今回のメディア懇談会でした。
✎奥村勝氏プロフィール
おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。
歯科にある学会の中で特異な学会であるのが一般社団法人日本口蓋裂学会である。その総会・学術集会が5月25、26日の両日、東京・千代田区の一橋講堂(総合学術センター)で開催された。一般臨床家からは、関心の低い臨床分野であるが、疾患は500人当たり1人(0.2%)が罹患する先天性疾患である。そうした疾患を対象に研究する学会であり、三十余名の会員数から構成されている。臨床では、医師、歯科医師、言語聴覚士、心理職など多職種が担い、歯科の分野では、主に口腔外科、矯正歯科、小児歯科、歯科衛生士、歯科技工士が担っている。
また、患者(患児)本人とその家族が集うグループが全国各地にあり、例えば「口友会」(東京)、「たんぽぽ会」(愛知)、「笑みたち会」(大阪)などが地味ながら活動しており、そこでの参加者間の交流が貴重な時間になっており、ここが大きな特徴だ。「同じ立場の人とは話がしやすいし、気が紛れましたので、精神的には落ち着きましたね」(東京・Y氏)、「生を授かった後、不愉快な経験をされた人もいるかも知れません。しかし、当時の関係者に歯科医師等がいらっしゃり、本当にお世話になりました」(大阪府・K氏)は、振り返りながらコメントしていた。基本的には、「臨床・予後を通して歯科医師ほか関係者に感謝」というものであった。
▶口唇口蓋裂診療は〝チーム医療〞が要諦
こうした背景がある学会から、見えて来る姿もあった。今回、講演・示説の演題(70題)から私が確認したのだが、演題を多く発表した順で見ると、阪大11、東医歯大8、昭和大8、東北大7、愛知学院大7、九大5、大阪母子医療センター5であった。当然であるが、研究・臨床の主となる大学は、歴史、地域性、同系病院の存在などの条件もあり、今回の学術大会の演題における研究症例報告数だけで評価は論じられないが、患者視点からすれば、全国のどの地域でも気兼ねなく相談・受診できることが望ましい。その点については、現在はネット社会であり随分改善されてきている。臨床対応で実績・評価を得ているのは、昭和大、愛知学院大、大阪母子医療センターなどである。口唇口蓋裂診療はチーム医療が要諦とされているが、前記の専門職のチーム医療で対応をしている。某教授は「口蓋裂症の診療は、ある意味でチーム医療をしていくのが大前提で、さらに、患児の家族との理解・相互信頼がないと診療ができません」と述べている。
▶何気ない当たり前のことが重要
当日の学会では、「言語聴覚士の集い」が企画された。座長の井上直子氏(言語聴覚士/大阪母子医療センター)と佐藤亜希子氏(帝京平成大学講師)から、その意図が説明され、「乳幼児から成人期までの言語管理が環境整備、言語評価・訓練などステージに応じた役割があります。臨床は医療施設だけでなく、福祉・教育施設などさまざまであり、多岐にわたっています」。そこで言語管理を指摘されると、私自身がそうでしたから、2019年の新潟大会で、赤神周子氏(言語聴覚士/鳥取大学医学部歯科口腔外科)が、口蓋裂児の鼻咽腔閉鎖機能の課題に言及したことを思い出す。「口腔機能の増加は、当然ながら食事・会話を支え、社会生活を支える基本です。乳幼児からこの問題に関係する〝発音・構音〞は重要です。まさに、形成外科医・口腔外科医・矯正歯科医・言語聴覚士などの〝チーム医療〞が大切です。出生前診断、手術、構音構築、患児の精神成長など個々のステージでの対応・連携がシームレスに実施されることが重要」と強調していた。さらに、コロナ禍での生活から学んだことと共通するのが、何気ない当たり前のことがいかに重要なのかという点であり、これを再認識してほしいです。
補足となるが、保険適用となる歯科分野の先天性疾患としては、顎変形症、唇顎口蓋裂、6歯以上の先天性部分(性)無歯症、口腔・顔面・指趾症候群、その他顎・口腔の先天異常(顎・口腔の奇形、変形を伴う先天性疾患であり、当該疾患に起因する咬合異常について、歯科矯正の必要性が認められる場合)などがある。
▶関連議員連盟が発足
世間、巷間では〝見た目が一番〞という言葉が躍る時もあり、複雑な気持ちになるのも口唇口蓋裂患児(患者)の本音で悩みは尽きない。
こうした中で、与党の国会議員有志が6月20日、「口唇口蓋裂議員連盟」を設立したニュースが舞い込んできた。今後の活動は詳細には不明だが、患者の視点に立った活動に期待したい。
なお、会長には橋本岳衆院議員(自民)、事務局長には細野豪志衆院議員(自民)が就いたという。
◆奥村勝氏プロフィール
おくむら・まさる オクネット代表、歯科ジャーナリスト。明治大学政治経済学部卒業、東京歯科技工専門学校卒業。日本歯科新聞社記者・雑誌編集長を歴任・退社。さらに医学情報社創刊雑誌の編集長歴任。その後、独立しオクネットを設立。「歯科ニュース」「永田町ニュース」をネット配信。明治大学校友会代議員(兼墨田区地域支部長)、明大マスコミクラブ会員。
やや僭越であるものの、読者である医療関係者の多くは、「医療価値」について深く考える機会は、さほど多くないと拝察する。一方で、医療システムの課題にまつわるニュースを見聞きする時に、その解決策の一つとして、医療価値が語られているのに気が付く場合もあるはずである。つまり、医療制度の綻びや不条理、または医療経営の本質や不満の議論などにおいて、医療価値は述べられることが多い傾向にある。例えば、診療報酬の水準に関わるステークホルダー間の討論は、医療価値に対する相互の認識の差異が背景にあり、それが顕在化したケースとも考えられる。特に最近、高額な医薬品などの薬価収載では、製造販売業者から行政当局者へ不満が述べられる時に、医療価値的なキーワードが挙げられることも増えている。ただし、この医療価値を臨床経済面から具体的かつ科学的に示すことは、一筋縄にはいかず、議論が噛み合わない場合も多い。今後、医療介護の発展や国民福祉の向上のために、さらなる経済投資や資源整備が必要になるが、それを目指すには、ステークホルダー間で合理的な合意形成が重要になると、前回述べた。それに対して重要な役割を果たすと期待されるのが「医療介護の価値評価」である。そこで今回は、この価値評価について、健康や生命を扱う医療介護分野の特性も考慮しつつ、学際的な観点から、その考え方を整理してみる。実体経済(リアルワールド)を標榜した医療価値の議論においては、一般に、費用対効果分析と限界効用理論を応用することで、医療サービスが有する価値の評価が限定的ながらも可能になる。その主な理論を次に概説する。通常、ミクロ経済学では、基礎的な効用理論を背景とした需給均衡に基づいて価格が収斂し、サービス提供の効率が最大化される[1]。また、この需要と供給が均衡した価格は、価値を体現するとみなされる。
一方、公益性の高い医療分野においては、効率性も考慮しつつ衡平性(wellbeingなどのバランス)の視点を取り入れ、患者の診療要望(選好、支払意思)と政府の医療財政(所得再配分、財政収支)の調和を念頭に公益的な価値を論じる必要がある。したがって医療の価値は、厚生経済学なども背景に、個人と社会の関係も織りまぜながら、健康プログラム単位あたりの効用(健康成果)と費用(資源消費)の変位のバランスを検討することになる(図1)[ 2]。その結果、ある予算範囲内で効用を最大化すると、そのパフォーマンスが高いほど集団全体の効用が大きくなり、利害関係者の「価値」が高まることになる。この医療における価値評価のアプローチは、他の概念的な議論に比べて、実体経済や日常生活(国民コンセンサス)の価値観(例:1QALY*当り600万円前後)との整合性も比較的取れるため、公的部門における医療サービスの価値を検討するのに適していると考えられる[3]。
例えば、患者の医療費が年間約500万円で財政負担が1兆6千億円程度の規模の「末期腎不全患者」に対する透析医療について、その価値を評価した本邦の報告がある(図2)[ 4]。その研究の意義を整理すると、救命や健康の社会経済的な価値を定量的に示した(費用対効果:約650万円/QALY)ことが挙げられる。すなわち、年間医療費が高額であり財政負担が大きくても、国民の価値判断の基準から眺めると、診療報酬の水準は適切であると理解される訳である。
田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任
(*注釈)
QALY:質調整生存年(完全な健康水準で1年間の生存を確保する単位/2019年度より公的医療保険制度に導入された概念で、1QALY当り500万円~750万円が評価基準)
【文献】
[1] 田倉智之. 医学書院. 2021.
[2] Tomoyuki Takura.IntechOpen. 2022.
[3] 田倉智之. 日本看護協会出版. 2023.
[4] Tomoyuki Takura, et al. Clinicoecon Outcomes Res. 2019.
医療介護分野は、誰もができるだけ低い経済負担で、公平に診療やケアを受けられるようにすべきである。そのため、世界の多くの国では、1978年のアルマ・アタ宣言などにならって、多かれ少なかれ医療介護分野を公的制度として整備してきている。一方で、近年注目を集めるユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の推進には、社会経済的な要因が大きな影響を及ぼすことも明らかとなっている[1]。すなわち、医療介護の環境整備において、臨床と経済の調和が望まれている訳である。また、医療介護分野の進歩に影響をおよぼす各種イノベーションも、社会経済的なメカニズム(バリューチェーン)をとおして、UHCと関係が深いことが示唆されている[2]。以上のように、今後の医療介護システムの発展には、臨床的な議論を中心としつつも、経済的な側面を論じることの重要性が増している。
ではなぜ、近年において医療経済的な要因が顕在化してきたのかを考えると、次のような医療介護分野を取り巻く潮流が挙げられる。一つ目は、言うまでもなく社会保障財源のひっ迫である(図1)。この背景は至極簡単で、医療や介護の需要増加(高齢化の進展)と実体経済の伸び悩み(GDPの停滞)が大きな割合を占める[3]。二つ目は、治療技術のイノベーションとその超高額化である。この両者を合わせると、数量増加と単価上昇により、国民医療費等が膨らんでいくことは容易に想像される。一方で、現役世代の人口減少と経済負担の許容水準から、保険財源の収入が追い付いていないようである。結局のところ、受益と負担のバランス低下が根源と考えられる。これらを俯瞰すると、将来の医療介護システムの発展に不可欠な視点は、おのずと明らかになってくる。そのキーワードは、価値評価と健康行動である。
まずは、医療介護システムの価値(存在意義)を、ステークホルダーの間で再認識する必要がある。その価値をUHCの理念も絡めて一言で表すと、「安定供給」となる。享受をしているからこそ認識できる価値(診療)のみならず、失ってみて初めてわかる価値(健康)は、この概念で整理がなされる。このように考えると、医療価値等を評価し関係者で共有することは、国民や患者の負担の議論のみならず未来に向けた医療介護のかじ取り(意思決定)に
おいて、計り知れない意義がある。さらに、価値に見合った行動変容を促える。特に、アドヒアランスの見える化とそのコントロールは、健康寿命や社会経済に大きな恩恵をもたらすと期待される[4](図2)。
最近、医療保険制度に導入された効用値をアウトカム指標とする費用対効果評価や、介護保険制度に導入された介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進は、間接的ながらも、上記のようなコンセプトに連なる施策であると想像される。
文 献
1) Tomoyuki Takura, Hiroko Miura. Socioeconomic Determinants of Universal Health Coverage in the Asian Region. Int. J. Environ. Res. Public Health. 2022; 19(4):2376.
2) ユニバーサルヘルスカバレッジと医療革新. 東京大学22世紀医療センターシンポジウム. 2023. http://sympo-ut-22c.umin.jp/2023/pdf/2023-4.pdf (Access: 2023.03.07)
3) 田倉智之. 医療の価値と価格-選択と決定の時代へ. 東京. 医学書院; pp.0-276. 2021
4) Tomoyuki Takura, Keiko Goto, Asao Honda. Development of a predictive model for integrated
medical and long-term care resource consumption based on health behaviour: application of
healthcare big data of patients with circulatory diseases. BMC medicine. 19(1):15. 2021.
田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任。
次期診療報酬改定に向けて~診療側の視点に立った適切な評価を〜
7月12日に開催された中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の2024年度診療報酬改定に向けた「歯科医療について(その1)」の議論の中で、支払側より「予防的な部分に保険診療の領域が拡大していくことに強い問題意識を持っている」という発言があった。
確かに、国民健康保険法の第二条には、「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする」とある。そのため、健康保険は疾病等、あくまで診断に至ったものに対して給付されるべきものという考えが根強いのだろう。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則の第一条 療養の給付の担当の範囲に「診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療」とあり、これも疾病を前提にした記載である。
しかし、歯周疾患や口腔機能低下症など、「歯科疾患の重症化予防」が重要視されていることは周知の事実である。これからの歯科医療には、疾病の進行を抑制するためにも「重症化予防」の視点を積極的に取り入れていくことが求められている。
診療側より出された意見について、「施設基準の重複」の整理が必要なこと、口腔機能や口腔疾患に大きな影響を与える全身的な疾患等において医・歯・薬のより深い「医療連携を深める」ことができるよう検討すること、また要件の緩和はあったものの、1998年より長期にわたり評価が据え置かれていた「歯科衛生実地指導料」についても、この間の社会情勢の変化や人件費の高騰に対応した適切な評価をすべきである。
前述の「重症化予防」にも繋がるが、口腔機能管理の中で行われる機能の獲得や維持、機能が低下した場合には、回復および向上のための「訓練に対する評価がない」ことに対しても意見が出されている。また、歯科用材料については、支払側も診療側も市場価格に左右されない非金属の新しい材料を積極的に活用すべきと意見が一致しているようである。これらの診療側の意見は、今後の歯科保険医療を充実させるために重要な視点ばかりである。
これからの歯科医療は「重症化予防」を抜きに、国民に対する歯科医療提供体制の構築はできないのではないか。また診療側から出された意見も、国が推進する地域包括ケアを含めたこれからの歯科医療には不可欠な検討課題であり、より歯科保健医療を充実させることを念頭に置いた議論を今後の中医協に期待したい。
2023年7月28日
東京歯科保険医協会
社保・学術部長 本橋昌宏
7月12日に開催された中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の2024年度診療報酬改定に向けた「歯科医療について(その1)」の議論の中で、支払側より「予防的な部分に保険診療の領域が拡大していくことに強い問題意識を持っている」という発言があった。
確かに、国民健康保険法の第二条には、「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする」とある。そのため、健康保険は疾病等、あくまで診断に至ったものに対して給付されるべきものという考えが根強いのだろう。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則の第一条 療養の給付の担当の範囲に「診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療」とあり、これも疾病を前提にした記載である。
しかし、歯周疾患や口腔機能低下症など、「歯科疾患の重症化予防」が重要視されていることは周知の事実である。これからの歯科医療には、疾病の進行を抑制するためにも「重症化予防」の視点を積極的に取り入れていくことが求められている。
診療側より出された意見について、「施設基準の重複」の整理が必要なこと、口腔機能や口腔疾患に大きな影響を与える全身的な疾患等において医・歯・薬のより深い「医療連携を深める」ことができるよう検討すること、また要件の緩和はあったものの、1998年より長期にわたり評価が据え置かれていた「歯科衛生実地指導料」についても、この間の社会情勢の変化や人件費の高騰に対応した適切な評価をすべきである。
前述の「重症化予防」にも繋がるが、口腔機能管理の中で行われる機能の獲得や維持、機能が低下した場合には、回復および向上のための「訓練に対する評価がない」ことに対しても意見が出されている。また、歯科用材料については、支払側も診療側も市場価格に左右されない非金属の新しい材料を積極的に活用すべきと意見が一致しているようである。これらの診療側の意見は、今後の歯科保険医療を充実させるために重要な視点ばかりである。
これからの歯科医療は「重症化予防」を抜きに、国民に対する歯科医療提供体制の構築はできないのではないか。また診療側から出された意見も、国が推進する地域包括ケアを含めたこれからの歯科医療には不可欠な検討課題であり、より歯科保健医療を充実させることを念頭に置いた議論を今後の中医協に期待したい。
7月28日
東京歯科保険医協会
社保・学術部長
本橋昌宏
東京都保健医療局にて医療用物資の配布の申請を7月30日まで受け付けています。
なお、東京都保健医療局への申請は東京都の医療機関に限ります。
他道府県の医療機関については所轄の保健局へお問い合わせください。
概要は以下の通りです。
【使用用途】
今夏の感染拡大に向けたものではなく、今冬に向けた対応等のためのもの。
【配布する個人防護具】
(1)N95マスク
(2)アイソレーションガウン
(3)フェイスシールド
(4)非滅菌手袋
※100枚単位での申請です。
【配送予定期間】
厚生労働省より9月以降配送を開始し2023年12月中に配送完了予定
【申請期限】
2023年7月30日(日曜日)23時59分(厳守)
【申請フォーム】
申請はこちらから
【問い合わせ先】
東京都保健医療局感染症対策部医療体制整備第一課 物資管理担当(03-5320-4214)
※多く寄せられているご質問について
Q上限はありますか。
A上限はありませんが、一度に受け取れるだけの注文にしてくださいという回答を得ています。周りはどれくらい頼んでいますかという質問もありますが、上限はありませんので、必要な分をご申請ください。
Q100単位で頼むというのはどういうことか。
A100単位なので、100、200、300・・・といった形での注文になります。
2023年10月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まります。
歯科医院におけるインボイス制度について東京歯科保険医新聞2023年4月号折り込みチラシにてお知らせをいたしました。4月号折り込みチラシは以下のリンクよりご確認いただけます。
インボイス制度とは課税売上に係る消費税の集計額から課税仕入に係る消費税の集計額を差引控除して、消費税として申告納税するシステムです。
課税売上とは、消費税が課税される売上のことです。歯科医療機関では、自費収入、金属買取売上、健診事業団体(歯科医師会,市区町村,企業等)からの報酬などがあげられます。
インボイス制度が始まると、消費税の計算において仕入税額控除できるのは、消費税法に規定するインボイスを保存しているものに限られます。インボイス発行事業者として登録をすると課税事業者に登録する必要があり、免税事業者の場合、納税負担が増える可能性があります。
また、歯科医院の請求書発行先の多くは「患者」になるため、発行先がインボイスを必要としないケースが非常に多いと考えられます。まずはご自身が課税事業者にあたるか、免税事業者にあたるかを確認し、インボイス発行事業者に登録するかをご検討ください。
また、2023年8月31日にインボイス制度研究会を行います。詳細は以下の通りです。
テーマ:インボイス制度研究会
講 師:枇杷阪隆貴税理士(税制経営研究所)
日 時:2023年8月31日19:00~21:00
対 象:会員、会員診療所の経理担当者
定 員:25名
参加費:無料
場 所:東京歯科保険医協会会議室
現在、歯科技工所が大変な状況にあることがマスコミなどで度々取り上げられています。低収入・経営難が恒常化し、若手技工士の離職率も高い状態が続いており、歯科技工士養成学校の閉鎖も相次ぐなど、10年後には歯科技工の担い手がいなくなるのではとの指摘もあります。
この様な状況に対し、当協会では歯科医師の最大のパートナーである歯科技工士及び歯科技工所が置かれている問題の解決に向け、2020年に行ったアンケート結果の周知や国や都に歯科技工士及び歯科技工所の待遇改善の要請などを行ってきました。
前回のアンケートから3年が経過し、この間、新型コロナウイルス感染症や物価の高騰等の影響により、歯科医業界全体も苦しい状況が続いております。このような情勢下における問題解決には、歯科技工所の現状を理解・共有することが必要であると考え、この度、都内歯科技工所の皆様にアンケートをお願いし、忌憚のない意見を拝聴したいと考えております。
都内歯科技工所の皆様には9月初旬にアンケートを送付いたしますので、ぜひご協力をお願いいたします。
なお、アンケート結果についてはホームページにて公表するとともに、行政への要請活動や学会発表などに活用する予定です。
また、前回アンケート結果については下記リンクよりアクセスできます。