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【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第6回 医療機関がハッカーに狙われている!
第6回 医療機関がハッカーに狙われている!
今、世界中の医療機関がハッカーに狙われています。
イギリスでは6月に、国民保健サービス(NHS/National Health Service)がランサムウェア攻撃を受け、患者データが乗っ取られただけでなく、血液検査に必要なシステムが利用できなくなり、契約している医療機関や一般開業医の予約や手術ができなくなって大混乱。NHSは税金で運営されている医療サービスで、重篤な救急患者に対する救急医療の提供は、NHSでのみ行われています。
米国では2月に大手ヘルスケア企業のユナイテッドヘルス・グループ子会社のチェンジ・ヘルスケアがランサムウェア攻撃を受け、全米の薬局で障害が発生。米国民の3分の1の個人情報が流出したのではないかと言われ、同社は、犯人に2,200万ドル(約35億円)の身代金を支払ったと言われています。
5月には、米国の大手医療法人アセンションがサイバー攻撃を受けてシステム障害が発生。アセンションは、米国19州で140の病院と40の老人介護施設を運営している非営利法人で、コンピュータをダウンさせて紙の書類をバックアップ手段として使って、なんとか診療を継続しているとのことです。
◆日本でも多発する医療機関へのサイバー攻撃
身代金を狙ったサイバー攻撃は、日本各地でも起きています。
5月、地方独立行政法人岡山県精神科医療センターがランサムウェアの攻撃で、患者情報など最大4万人分が流出したと言われ、電子カルテが閲覧できなくなりました。
3月には、鹿児島の国分生協病院が攻撃を受け、「画像管理サーバー」に障害が発生。ファイルの一部が暗号化されアクセスできなくなり、ネットワークを停止し、システムの再構築をしました。
ここ数年の間に、東京、奈良、福島、徳島、大阪と、システムの脆弱な部分から侵入したウイルスが、次々と医療機関の機能を麻痺させています。
2022年に起きた大阪急性期・総合医療センターへのランサムウェア侵入は、無防備だった給食事業者からのウイルスの侵入が確認されています。
なぜ医療機関が狙われるのかと言えば、患者の命を人質にお金を出させやすいことと、医療機関の個人情報は犯人たちが使う「ダークサイト」などで高値で売れるから。しかも医療機関には、医療の専門家は多いですが、セキュリティーの専門家は思いのほか少ないことがほとんどでしょう。
◆1枚のカードに情報集約する危うさ
世界中にハッキングの嵐が吹き荒れる中で、日本政府は、巨大なネットワーク「医療DX」を展開しようとしています。そして、ネットとは無縁だった小規模な医療機関にもマイナ保険証導入を「義務化」しました。
しかも、そこに保険証だけでなくパスポートや運転免許証、各種証明書なども紐付けし、さらに民間企業にまでアクセスさせて情報を使わせます。
こうした状況に危うさを感じるのは、ひとり私だけでしょうか。
ネット上では、「IPアドレス」に片っ端からアクセスし、無防備なところを見つけて入り込んでウイルスに感染させ、感染したら、そのウイルスをさらによそに拡散させることが、日常茶飯的に起きています。
アクセスするところが多ければ多いほど、ウイルスに侵入される危険性は増える。しかも、政府が対策を万全にしてくれるというならまだしも、「義務化」させながら、個別の医療機関のセキュリティーまでは面倒を見てくれない。
そもそも、マイナンバーカードのような身分証明書代わりになるカードに、保険証をひも付けして、一本化しているなどという国は、先進7カ国の中では日本だけ。多くの国では、セキュリティーを考えて情報の分散化を進めています。
デジタル競争ランキング32位で「デジタル・ガラパゴス」と言われている日本は、まるでこうした世界の流れに逆行しているように見えます。
「東京歯科保険医新聞」2024年9月1日号12面掲載
経済ジャーナリスト 荻原 博子
プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。
【重要なお知らせ】電話受付時間の変更について
【重要なお知らせ】
東京歯科保険医協会では、社会情勢の変化に応じた働き方の改善を進めています。
そのため、2024年9月1日から電話の受付時間を以下の通り、変更することになりました。
会員の皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
<<9月1日以降の電話受付時間>>
午前:10時00分~12時30分
午後:1時30分~5時00分
※お電話がつながるのは平日のみです。
保険証新規発行停止後に混乱生じる懸念
保険証新規発行停止後に混乱生じる懸念
マイナ保険証の利用率は、6月時点で9.90%に留まっていることが明らかになった。国は、医療機関向けの補助金を引き上げるなど利用率向上に躍起になっているが、前月の7.73%から2.17ポイントしか増加しておらず、利用率は依然、低いままである。
◆資格確認方法が2パターンに/混乱はこれから
今年12月2日で健康保険証の新規発行が停止となるが、すでに発行されている健康保険証は、記載された有効期限、または2025年12 月1日まで使用できる(表1参照)。
新規発行停止後は資格確認方法が2つに分かれる。マイナ保険証の登録をしていない患者の場合、現在の健康保険証の有効期限が終了した後は、保険者から送付される「資格確認書」を窓口で提示する。一方、マイナ保険証の登録をしている患者の場合は、現在の健康保険証の有効期限が終了した後は、①マイナ保険証を提示するか、②オンライン資格確認システムを導入していない医療機関に受診する場合は、マイナ保険証に加え、保険者から送付される資格情報が記載された「資格情報のお知らせ」もしくはスマートフォンでマイナポータルの資格情報画面を窓口で提示する(表2参照)。
後期高齢者の場合は25年7月頃、国保の患者の場合は25年9月頃に、現在の健康保険証の多くが有効期限切れとなり、有効期限がない社保の患者の場合も25年12月1日に期限が切れるため、これらの時期に、多くの患者の窓口での資格確認方法が変わるため、大きな混乱が生じることが懸念されている。
◆マイナ保険証登録済も
健康保険証利用する人多数マイナンバーカードの保有者数は今年4月末時点で全人口の73.7%、うちマイナ保険証の登録をしているのは78.5%のため、全人口当たりのマイナ保険証の所有者は57.9%となるが、利用率はたった9.9%である。つまり、マイナ保険証の登録をしている患者の多くが、マイナ保険証を使わずに健康保険証を窓口に提示している。本人が気づかないうちに健康保険証が使えなくなり、受診時にマイナ保険証を忘れ、資格確認ができないということが頻発しかねないのが現状だ。
◆健康保険証を残すことこそ肝要
これまで資格確認は健康保険証でも滞りなく行われてきた。健康保険証を存続し、患者の自主的な判断に委ね、マイナ保険証との併用を認めるべきである。なお、マイナ保険証を登録した患者であっても、今年10月から利用登録を解除すれば「資格確認書」の発行を受けることが可能になる。
国は、このような選択肢があることを患者に広く周知するべきである。
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)8月1日
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)8月1日
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【新聞8月号】
【1面】
1.〝虫歯〟の有無 目立つ「二極化」/学校歯科治療調査懇談会を開催養護教諭8名と意見交換
2.“大詰め”迎えたオン資義務化撤回訴訟/9月結審、11月判決の可能性
3.社会医療診療行為別統計/1件当たり1,279.5点
4.探針
5.ニュースビュー
【2面】
6.提出期限は8月31日まで医療機関等向け総合ポータルサイトで確認を/CD-R等の請求に係る猶予届出の提出を忘れずに
7.9月歯科用貴金属の随時改定/全種類引き上げ
8.「施設基準等の定例報告」7月報告から“8月報告”へ
9.オン資「資格確認限定型」
10.10月に実施 会員の意識と実態調査 ご協力のお願い
11.診療報酬改定情報「歯CAD、歯リハ3に係る疑義解釈示される」
【3面】
12.保団連 武見厚労相に保険証存続求め要請書
13.社会医療診療行為別統計 歯冠修復および欠損補綴減少傾向
14.マイナ保険証利用率9.90%/保険証新規発行停止後に混乱生じる懸念
15.小池都知事3選/さらなる東京都の医療充実を望む
16.【お詫びと訂正】
【4面】
17.経営・税務相談Q&A No.419「夏季休暇~年次有給休暇の計画的付与~」
18.歯科衛生士への医療安全および感染対策アンケート協力のお願い
19.「夏季休診案内」のご紹介
20.デンタルブック会員優待ご案内
21.8月会員無料相談のご案内
【5面】
22.研究会・行事ご案内
【6面】
23.退き際の思考 歯科医師をやめる/(張 紀美さん・後編)「やめることも前進の1つ」土台作りセカンドキャリアへ 医院最後の日まで地域に愛され—
24.共済部だより/共済募集キャンペーン
【7面】
25.”恒例”東京保険医美術展―最後の開催惜しむ声も
26.新規開業医講習会 今後の診療に役立つ知識向上に活用を
27.夏空写真投稿/「天まで届け」(吉田真理氏/武蔵野市)
28.会員寄稿「声」/学童時に体験した日米戦争(埜口五十雄/江戸川区)
【8面】
29.教えて!会長!! Vol.85「4月改定→6月施行後2カ月 新たな診療報酬の現状」
30.保険証の存続を求め社会保障の充実を求める決議を承認 保団連第1回代議員会を開催
31.「情報セキュリティ10大脅威2024」解説②まず「脅威」の内容を理解しましょう
32.通信員便りNo.144
【9面】
33.症例研究「初期の根面う蝕の管理と診療情報等連携共有料1」
【10面】
34.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
35.理事会だより/2024年度第6回・第7回理事会
36.7月協会活動日誌
【11面】
37.神田川界隈「掌蹠膿疱症および掌蹠膿疱症性骨関節炎~患者のQOL向上に求められる医科歯科医療連携~」(理事・高山史年/豊島区)
38.暑中お見舞い名刺広告
【12面】
39.連載「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」提訴からの進捗と展望④完/(佐藤一樹氏)第4回「東京地裁103号大法廷:裁判進捗と展望/ベア評価料やマイナ問題など議論」
40.今次改定施行後初のメディア懇談会/ベア評価料やマイナ問題など議論「閉院の後ろには患者さんがいる」
2023年「社会医療診療行為別統計」調査結果まとまる
2023年「社会医療診療行為別統計」調査結果まとまる
2023年「社会医療診療行為別統計」/歯科1件当たり点数は1,279.5点に
厚生労働省が6月23日に発表した2023年「社会医療診療行為別統計」によると、歯科の1件当たり点数は1,279.5点(22年は1,2783.3点)で、対前年と比べ1.2点増加した。
診療行為別にみると、「歯冠修復及び欠損補綴」は397.5点(前年408.0点)が最も高く、次いで「処置」は254.4点(250.2 点)、「医学管理等」は189.9点(前年185.2点)の順になっている。1件当たりの日数は1.59日で、前年に比べ0.02日減少した。
この統計は、支払基金および国保連合会に提出された23年6月審査分のNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)に蓄積されるものすべてを基に集計されたデータである。
“大詰め”迎えた「オン資義務化撤回訴訟」
“大詰め”迎えた「オン資義務化撤回訴訟」
“大詰め”迎えた「オン資義務化撤回訴訟」/9月結審、 11月判決の可能性
オンライン資格確認を療養担当規則で原則義務化するのは違憲だ―として、全国の医師・歯科医師ら1,415人が、国にオンライン資格確認の義務が無効であることの確認などを求めた訴訟.
その第7回口頭弁論が7月9日、東京地方裁判所(岡田幸人裁判長/103号法廷)で開かれ、当協会理事の橋本健一氏を含む原告団17名が参加し、約60人が傍聴した。
◆国側が反論
今回は原告側の準備書面に対し、被告(国)側から「反論させていただきます」と発言があり、被告の意向が確認された。岡田裁判長は被告の準備書面の内容次第で、「可能性としては次回終結(結審)することもあり得る」と明言した。
その後の記者会見兼原告説明会では、原告側の今回の準備書面の詳細が説明された。結審に向け、焦点を①オンライン資格確認に関する事項を委任する健康保険法の規定はないこと、②改正後療養担当規則が健康保険法の委任の範囲を逸脱すること、③オンライン資格確認の義務化が原告の憲法上の権利を侵害すること―の3点に絞り、主張を展開しているという。
国側は前回の準備書面で「オンライン請求を原則義務化しているため、同様にオンライン資格確認システムに対応できる体制整備を義務付けたことで事業者の事業そのものを規制するものには当たらない」という主旨の主張をしていた。しかし、療養担当規則施行によるオンライン資格確認の義務化は2023年4月1日から、一方でオンライン請求に対応する義務は24年4月1日から施行。原告側はこの点について、前後関係の誤りがあることなどを指摘した。
弁護団の喜田村洋一弁護士は「次回、結審することはほぼ間違いない」とし、「終結から2カ月以内の判決が常識となっているので、11 月の下旬に一応の判決が出るだろう」との見通しを説明した。続けて、二関辰郎弁護士は、法廷を「埋め尽くすことができれば裁判所に対してアピールになる」と、傍聴に足を運んでほしいと呼びかけた。
◆次回口頭弁論9月19日に
なお、次回、第8回口頭弁論は9月19日㈭午前11時から東京地裁大法廷(103号)で行われる。
〝虫歯〟の有無 目立つ「二極化」/学校歯科治療調査懇談会を開催
養護教諭8名と意見交換
協会が2月に結果を公表した「学校歯科治療調査」(2023年10月実施)を踏まえ、6月27日、協会会議室で養護教諭との「学校歯科治療調査」懇談会を開催した。調査に協力していただいた小・中・高等学校の養護教諭8名を招き、学校現場の声を聴き取ることや、調査結果の深掘りを目的とした本懇談会。子どもや保護者の様子、歯科受診の実態、歯科保健指導の取り組みなどを巡り、活発な意見交換が行われた。中には、「虫歯になっている子どもが少なくなっている一方で、虫歯が多い子は存在し、二極化している」という意見もあがった。虫歯が多い子どもの理由については、経済的理由や家庭環境、外国籍の子どもで親に治療の必要性が伝わっていないなど、問題は多岐に渡っていることが浮き彫りになった。
参加者からは、「他の学校ではどのように受診勧告をしているか」との質問があり、「受診してくれない時は、担任の先生と保護者との2者面談時に、担任から説明するようお願いする」「クラス対抗で虫歯予防のポスターを作成するなど、学校全体で取り組むことで、歯科への意識付けを行っている」などの意見が出された。その他、「給食後の歯磨きの習慣を取り入れたいが、水道設備の問題があり難航している。学校や部活動、アルバイトで歯科治療に行く時間が割けない子どもに受診してもらうことが難しい」との意見も出された。
また、一部負担金については、東京都では一部を除く多摩地区で、受診1回につき200円の窓口負担があり、歯科受診の妨げになっているとの指摘が以前からある。しかし、高校生等医療費の助成(マル青)の開始以降、東京都に住む高校生は歯科治療費が助成される一方で、隣接する他県に住む生徒には、依然として負担金が発生するため、受診勧告がしづらいという意見があった。住んでいる場所で一部負担金が変わってしまう問題は多摩地区だけでなく、全国的な問題になっていることも分かった。
本懇談会で提起された意見、要望、現場からの切実な声は、今後の行政機関への要請活動などに活かし、子どもの口腔の健康を守る取り組みにつなげていく。
<参加者の声>
【原里実さん/東京家政大学附属女子中学校・高等学校養護教諭】
私立校でしか勤務経験がないため、公立校の状況を知ることができ、とても良かった。公立校では、居住地域と歯科受診の傾向に関連性があるが、私立校は生徒の居住地が公立校よりもさらに広域であるため、生徒や保護者へ統一したアプローチをするのが難しいと感じている。より学校歯科医との関わりを持って取り組んでいく方向性が大切だと思った。歯科講話を保護者会の日に実施するなど、保護者へのアプローチを考えていきたい。また、行政に対して声をあげ、制度自体を変えていくような方法もあることを知ることができて良かった。
【国分寺市立第一小学校養護教諭】
地域や保護者の意見を取り入れながら進めなければならない点が難しい。今日の懇談会を経て、より家庭での虫歯予防の取り組みを推進できる方法を模索してみたい。クラス対抗で虫歯予防のポスターを作成するなど、児童が楽しくなる、みんなが前向きになるような取り組みをやってみたい。
マイナ保険証利用率未だ9.90%
保険証新規発行停止後に混乱生じる懸念
マイナ保険証の利用率は、6月時点で9.90%に留まっていることが明らかになった。国は、医療機関向けの補助金を引き上げるなど利用率向上に躍起になっているが、前月の7.73%から2.17ポイントしか増加しておらず、利用率は依然、低いままである。
◆資格確認方法が2パターンに/混乱はこれから
今年12月2日で健康保険証の新規発行が停止となるが、すでに発行されている健康保険証は、記載された有効期限、または2025年12 月1日まで使用できる。
新規発行停止後は資格確認方法が2つに分かれる。マイナ保険証の登録をしていない患者の場合、現在の健康保険証の有効期限が終了した後は、保険者から送付される「資格確認書」を窓口で提示する。一方、マイナ保険証の登録をしている患者の場合は、現在の健康保険証の有効期限が終了した後は、①マイナ保険証を提示するか、②オンライン資格確認システムを導入していない医療機関に受診する場合は、マイナ保険証に加え、保険者から送付される資格情報が記載された「資格情報のお知らせ」もしくはスマートフォンでマイナポータルの資格情報画面を窓口で提示する。
後期高齢者の場合は25年7月頃、国保の患者の場合は25年9月頃に、現在の健康保険証の多くが有効期限切れとなり、有効期限がない社保の患者の場合も25年12月1日に期限が切れるため、これらの時期に、多くの患者の窓口での資格確認方法が変わるため、大きな混乱が生じることが懸念されている。
◆マイナ保険証登録済も
健康保険証利用する人多数マイナンバーカードの保有者数は今年4月末時点で全人口の73.7%、うちマイナ保険証の登録をしているのは78.5%のため、全人口当たりのマイナ保険証の所有者は57.9%となるが、利用率はたった9.9%である。つまり、マイナ保険証の登録をしている患者の多くが、マイナ保険証を使わずに健康保険証を窓口に提示している。本人が気づかないうちに健康保険証が使えなくなり、受診時にマイナ保険証を忘れ、資格確認ができないということが頻発しかねないのが現状だ。
◆健康保険証を残すことこそ肝要
これまで資格確認は健康保険証でも滞りなく行われてきた。健康保険証を存続し、患者の自主的な判断に委ね、マイナ保険証との併用を認めるべきである。なお、マイナ保険証を登録した患者であっても、今年10月から利用登録を解除すれば「資格確認書」の発行を受けることが可能になる。
国は、このような選択肢があることを患者に広く周知するべきである。
【IT相談室】「情報セキュリティ10大脅威2024」解説 ②
まず「脅威」の内容を理解しましょう
今回は独立行政法人「情報処理推進機構」(以下、IPA)発表の「情報セキュリティ10大脅威2024」の解説の2回目です。「情報セキュリティ10大脅威2024」は「個人」と「組織」の2つに分かれています。本紙は歯科医院向けの媒体ですので、「個人」に触れた後、「組織」を中心に解説します。次回の最終回も引き続き「組織」について解説します。
「個人」の脅威とは「個人」の脅威は、「ネット上の誹謗・中傷・デマ」を除けば、さまざまな手法を使ってID、パスワード、クレジットカード番号などを盗むか、直接的に要求して金銭を騙し取ることから、把握しやすいことが特徴です。いわゆる特殊詐欺の被害が高止まりしていることからも分かる通り大きな脅威であり、ご自身のID、パスワード、出金をこまめにチェックし、問題があれば素早く対処することが必要です。
◆ 「組織」の脅威とは
「組織」の脅威には、前回解説した「ランサムウエア」のように、パッと見ただけでは内容がわからないものがあります。
例えば、「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」は、自院ではなく取引先などを経由して侵入して来る脅威となっています。また、「標的型攻撃による機密情報の窃取」は大きな組織に侵入し、結果的に大きな被害を生むことが脅威となっており、「修正プログラムの公開前を狙う攻撃(ゼロデイ攻撃)」や「脆弱性対策情報の公開に伴う悪用」は、公表されたPCやスマートフォンなどの機器やプログラムの弱点を狙って来ることが脅威となっています。
一読後に順位を見て、分かるものだけ注意するのではなく、分からない内容については検索して調べ、一定の理解をしておくことをお勧めします。 次回は、「情報セキュリティ10大脅威2024」解説の最終回です。
クレセル株式会社
(東京歯科保険医新聞2024年8月号8面掲載)
★「情報セキュリティ10大脅威2024」解説①は2024年6月1日号8面に掲載しています。協会ホームページには2024年6月7日(金)にも掲載しており、ホームページ内「IT相談室」で検索していただくと、すぐにご覧になれます。
【連載】退き際の思考/「やめることも前進の1つ」土台作りセカンドキャリアへ 医院最後の日まで地域に愛され―(張紀美さん【後編】)
「やめることも前進の1つ」土台作りセカンドキャリアへ 医院最後の日まで地域に愛され―(張紀美さん【後編】)
「やめることも前進の1つ」土台作りセカンドキャリアへ 医院最後の日まで地域に愛され―
張紀美さん(キミ小児歯科クリニック院長) ― 後編
前編はこちら

張紀美(ちょう・きみ)さん/1965年、長野県松本市生まれ。90年に松本歯科大学卒業後、同年東京歯科大学小児歯科学講座に入局。1997年同大学院修了。2010年キミ小児歯科クリニック開業。2024年5月同クリニック閉院。
歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生にお話を伺い、引退を決意した理由や、 医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
今回は、今年5月をもって閉院したキミ小児歯科クリニックの張紀美先生(59歳/文京区)の後編。小児歯科の専門医として地域の子どもたちの口腔内を守ってきた張先生。医院最後の1日にお話を伺った―。(前編を読む)
―医院の開院から閉院まで振り返っていかがですか。
子育てで忙しかった頃は、まさか自分が開業するとは思っていませんでした。ただ、いろいろな問題が出てくる中で「マイナスにならなければ」と、借り入れなども少なくして医院をスタートし、大きな問題なく閉院することができました。多少なりとも地域医療に貢献できたと思いますし、開院して主体的に収入を得たことは良い経験になりました。
―協会に入会してみていかがでしたか。
常勤の助手が退職した時に労務相談のために入会し、弁護士の先生にお世話になりました。院内感染防止対策講習会も受講しましたし、コロナ禍の支援金申請の際は、デンタルブックの動画が細やかな解説で役立ちました。一人で不安を抱えながら医院経営をする先生にとって、とても良いものだと思います。
日常生活に驚きと喜び
―引退後のセカンドキャリアについて、どのように考えていますか。
60歳から動き始めるために、閉院後の1年間は準備に費やす感覚です。まず6月中にクリニックから自宅に持ち帰った物を片付けるために、独立した2人の息子の部屋を片付けて保管場所を確保しなければなりません。子どもの部屋にはたくさんの本や洋服、部活動関連の物がそのまま置いてあるので、不要な物を整理する必要があります。ある意味、クリニックの片付けよりも大変かもしれません。自分の目標の前に、居心地の良い空間を作るために身の回りを整理することから始めたいと思います。
―まずは新生活の土台作りからということですね。
閉院後は、若い頃から夢見た韓国留学に行きたいと思っていましたが、それは少し先になりそうです。老犬のお世話、高齢な両親との関わり、ここ数年で嫁ぐであろう娘のこと…。人生の自由な時間はわずかだと思います。「何かしよう」と思った時には、それなりの難題に当たります。今後直面するであろう難題の隙間時間を有意義に過ごすため、環境を整えたいです。また、当初は語学堂*で学ぶことが留学の目標でしたが、「今更また勉強するのも疲れてしまうな」と思い、変更しました。新たな夢は、時間を気にしないで韓国の地方に赴き、現地の人たちとその土地の韓国料理とマッコリを交わすことです。ついでに韓国料理と伝統工芸なども学びながら気楽な旅がしたいです。そのため、毎日韓国語を独学で学んでいます。引退後の私のモットーは「疲れることはしない」「無理して頑張らない」です。試験に追われ頭が痛くなるような勉強はやめました。代わりに自分が豊かになる体験がしたいです。この目標が1年後に叶うといいなと思っています。(*=韓国の大学が運営する語学学校)
―日常生活の面では、何かイメージは湧いていますか。
次男が2年前に独立した時、食事の買い出しや掃除の負担が少なくなったこともあり、休診日に「こんなに時間の余裕があるんだ」と感じました。それから月1回、韓国刺繍を習い始めました。院内の片付けの時に少し早く終わった日があり、仕事終わりに初めて1人で映画を観に行きました。有楽町まで足を運び、「平日の映画館ってこんなに人が少ないんだな。夕方5時半からビールを片手に映画が観られるんだ」と、何気ないことに驚きと喜びがありました。そんな些細なことに楽しみを感じながら日常が変化していけばいいかなと思っています。ここに至るまで子育て中の反抗期もたくさん経験したし、いろんな問題に直面してモチベーションの変化もありながら辿り着きました。せっかく得た時間なので、身体が健康なうちに、人に迷惑をかけないで楽しく生きたいというのが一番ですね。
―最後に、今まさに引退を考えている先生にメッセージをお願いします。
そろそろ辞めたいと考えている先生は、自分のことを大切にする選択肢も持ってほしいです。「信頼されるほど背負う責任も多くなる。それがストレスに感じるなら辞めることも前進の1つだ」とは、ある本の一節です。生活費の問題などで続けなければならない状況があると思いますが、それでも辛いと思う方は一時的にマイナスになるかもしれませんが、ひと休みして充電して、また次に進んで欲しいと思います。
―ありがとうございました。
~編集後記~
取材日は5月31日。それは医院を開いて丸14年、キミ小児歯科クリニック閉院の日。「ここでの最後の仕事」と快くインタビューを引き受けてくれた張先生。これまでの歩みを聞いていると、エントランスから「ガチャッ」と扉の音。すでに診療はしておらず、患者の来院はないはずだが、そこには一人の小学生の姿が。「いらっしゃい」―なんとも自然な流れで先生に迎え入れられると、その子は慣れた手つきで宿題をはじめた。聞けば、1歳の頃から診てきた患者さんだという。
地域に根付き、子どもたちに愛されたキミ小児歯科クリニック。14年間、この場所で繰り広げられた“日常”が最後のひと時まで続いた。「お兄ちゃんに、次に学校帰りに寄っても先生はいないって伝えてね」と先生から告げられ、コクリとうなずいた後ろ姿が少し寂しそうに映った。
PROFILE/ちょう・きみ
1965年、長野県松本市生まれ。90年に松本歯科大学卒業後、同年東京歯科大学小児歯科学講座に入局。1997年同大学院修了。2010年キミ小児歯科クリニック開業。2024年5月同クリニック閉院。
引退を決心した瞬間 目標10年“計画閉院”は周囲に支えられ―(張紀美さん【前編】)
#インタビュー #連載 #退き際の思考
集団的個別指導の通知について
集団的個別指導の通知について
2024年9月に実施される集団的個別指導の通知が、対象となる医療機関に簡易書留で届いている。
今年度は、9月5日(木)・10日(火)の2日間に分けて実施される。通知には、「正当な理由なく集団的個別指導を欠席した場合は、個別指導の対象となります」との記載があるため、通知が届いた医療機関は注意いただきたい。
なお、協会では、東京歯科保険医新聞7月号に集団的個別指導の平均点数や基準平均点数など掲載している。また、8月29日(木)社保研究会でも解説する予定であり、会員の先生方にはぜひ参加していただきたい。
日 時 :9月5日(木)16時00分~17時30分まで(予定)
9月10日(火)10時30分~12時00分まで(予定)
場 所 : 日本教育会館 一ツ橋ホール(両日)
出席者 : 管理者
持参物 : 筆記用具、出席票
★東京歯科保険医新聞7月号はこちらから※2面に掲載
【教えて!会長!! Vol.85】4月改定→6月施行後2カ月/新たな診療報酬の現状
4月改定→6月施行後2カ月/新たな診療報酬の現状
Q 2024年度診療報酬改定に関する問い合わせ状況は?
A 「複雑で理解が困難」との評価である24年度診療報酬改定ですが、7月末で施行から2カ月が経過しました。先生方におかれましては日々の診療、保険請求に問題はないでしょうか。今次改定は、新設項目、施設基準の届出、条件付きの項目、医療DXを推進する項目、そしてベースアップ評価料など、新たに「学ぶ」必要がある項目が多い改定と言えます。協会には、改定に関する会員からの問い合わせが多く、特に5、6月は協会の電話は鳴りっぱなしの日々でした。電話がつながりにくかったため、ご迷惑をおかけした先生にはお詫び申し上げます。
ここで、図1に今次改定を含めた過去3回の改定時における、会員からの保険請求相談の電話件数を示します。18・20・22年度改定は当該年3〜5月、今次24年度は、施行が6月ですから5、6月を集計しました(本稿執筆時点で今次改定7月分は未集計)。18〜22年度の計3回の改定では、18年度が比較的多くの電話相談がありました。18年度改定は、初・再診料に院内感染防止対策の施設基準(注1の届出)の新設など施設基準の新設や再編、口腔機能管理料、小児口腔機能管理料の新設、訪問診療の区分再編などがあったことで問い合わせが増加したと思われます。今次改定と前回の22年度改定を比較すると、施行月の前月で1,027件だったものが、今次改定では3倍以上の3,274件と驚くべき件数でした。施行月では、22年度4月が1,186件に対し、今次改定で2,139件と2倍近くの件数でした。電話対応の増加に対し、事務局は残業時間を増やすなどして対応しました。
Q 施行から2カ月近くが経過して会員の疑問は?
A 毎年開催している地区懇談会があります。24年度は、「複雑すぎる保険改定を学んで、ひとつでも多くの保険算定を目指そう!」と題して、多摩地区、城南地区、城東地区の3地区での開催を企画しました。私が講師を担当した多摩地区は、7月24日に立川市で開催しました。ご参加いただいた先生方に御礼申し上げます。
なお、懇談会は、参加される先生方から「懇談会で聞きたいことはございますか?(3項目まで)」と事前アンケートに回答いただき、ご希望が多い項目について、詳細な解説を行い、疑問があれば直接質問いただく方式です。図2に3地区での事前アンケートの結果を示します。懇談会の題名通り、「増点に繋がりそうな話」が一番多く、次いで「口腔機能管理料」「Ceや根Cに対するフッ化物塗布」に回答が集まりました。そのほかの項目をはじめ、先生方の疑問点はどういったものでしょうか?8月7日の城東地区懇談会は、本ホームページのトップにご案内を掲載しています。ご参加をお待ち申し上げます。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2024年8月号掲載)
「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」提訴からの進捗と展望④完(佐藤一樹氏)
第4回(完) 東京地裁103号大法廷:裁判進捗と展望
オンライン資格確認を療養担当規則で原則義務化するのは違憲だ―。
全国の医師・歯科医師ら1,415人が、義務の無効確認などを国に求めた訴訟が現在も続く。複数号にわたり、訴訟ワーキンググループの原告団事務局長で、東京保険医協会理事の佐藤一樹氏(いつき会ハートクリニック)に、訴訟の現状と今後の行方を展望していただく(最終回)。
10 大法廷(注:見出し番号は前号からつづく)
東京地方裁判所103号大法廷は、民事部が使える最大の法廷で傍聴席が98席ある。原告側は当初からこの大法廷での開廷を裁判書記官に希望していた。しかし、書記官は難色を示し、第3回口頭弁論までは傍聴席が40席程度の一般的な法廷で開廷されていた。ところが、その第3回期日で、岡田幸人裁判長から第4回は大法廷で行われることが告げられた。その後の口頭弁論も全て大法廷での期日を指定している(図1)。
11 裁判長による空中戦阻止
行政訴訟は、行政実定法(本件では健康保険法など)の解釈が問題となり、具体的な争点は比較的明確で、最初からある程度材料が揃っている(本件では第3回連載の「9.四つの考慮要素と授権趣旨の明確性」で解説)。一般の民事裁判の口頭弁論(証人尋問がない場合)では、裁判官は、原告あるいは被告(国)が事前に提出した準備書面などを確認して陳述したことにする。また、相手側に対し、次回の弁論で提出する書類があれば、次回期日1週間前頃までに提出するよう指示し、次回期日の打診を行い、双方に異議がなければ期日を指定して、10 分程度で終了する。
しかし、第3回期日で、岡田裁判長が被告に対し、第2準備書面の書き方について「空中戦をするのではなく」と釘を刺し、以下2点の具体的指示を出すという一幕があった(ここでいう空中戦とは、文書や資料の証拠がなく、発言のみで議論がなされること)。当事者主義である民事訴訟(行政訴訟も民事訴訟の一種)の弁論期日で、裁判長が、準備書面で触れるべき内容に指示を出したことは、注目すべきだ。
(1)健康保険法が「療養の給付」の内容のみならずその「方法」について療養担当規則に委任しているとの被告の主張につき、他法令において同法同規則の定め方と類似の先例等があればその内容を具体的に指摘する
(2)オンライン資格確認をめぐる国会での厚生労働省の答弁(図2)と、この事件での国の主張との整合性について説明する原告第1準備書面では、「厚労省は、現場の実情を見ると一律義務化への理解を得るのは難しいと言いつつ、その答弁から4カ月しか経っていない9月5日に療養担当規則を改正した。国会での議論とどう整合するのか」と主張していた。裁判長もこの点を明らかにするよう求めているのだから、原告と裁判所の関心事は一致し、波長が合っている。
12 裁判進行に関わる原告の要望を通す
国側は、先述の(1)を受けて児童福祉法、生活保護法、感染症予防法、高齢者医療確保法、覚醒剤取締法などを挙げて、縷々論難した。しかし、いずれも状況の異なる例を根拠としているなど、本件で問題となっている委任について、主張を補強する体裁にはなっていない。(2)については、「国会で議論されていなければオンライン資格確認を原則義務化することができないというものではない」と開き直った二重否定の主張に終始した。
第6回期日において、原告代理人の喜田村洋一弁護団長は、本年12月2日の現行の健康保険証廃止前の11月中に判決を言い渡すよう裁判所に要望した。逆算して、9月中旬の結審を目指し、原告側最後の第3準備書面を6月中に提出すると告げた。原告は、これまで準備書面の作成には8〜11週間かけてきたところ、急いで5週間で提出するから、被告も8週ほどで第4準備書面の提出を都合してもらいたいということになる。
民事裁判の口頭弁論期日の指定は訴訟の進行を指揮する裁判官の権限だ。被告に対し冷徹な姿勢で空中戦阻止を命じた岡田裁判長は、どのように対処するのか。私を含め17人の原告席には緊張が走った。しかし、怜悧な一流法律家同士の阿吽の呼吸だろうか。裁判長が原告席の方を向き、優しく微笑んだ。
13 裁判官の心証と展望
第7回期日で、原告は最終準備書面を陳述した。裁判長は、「次回弁論で被告には全てを出し尽くす形で用意してもらう」と指示し、終結(結審)する可能性が高いことも明言した。その上で、原告には、終結後も実務的に書面を出すことも可能であると付言した。判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から2カ月以内にするのが〝常識〞*。つまり、11月だ。
ここまでを振り返ると、岡田裁判長は、争点の整理や裁判進行については被告に厳しく、原告の要望を尊重している。脚注のタイプミスを指摘するほど、原告準備書面を読み込んでいる。
贔屓目を承知であえて言えば、現時点で心証は原告側にあり、原告が勝勢だ。しかし、裁判結果は「石が流れて木の葉が沈む」こともある。判決の言い渡しまでは勝訴を宣言できない。
おわりに
民事裁判、特に行政裁判は、手続であり、仕組みであり、技術である。それだけに、裁判の実情が見えるものでなければならない。東京保険医協会では、原告団だけでなく国民にこの裁判を理解していただくために、ホームページに訴訟の経緯や全資料(プライバシーに係るものを除く)を公開し、第2回口頭弁論期日からは記者会見・原告説明会を開催し続けている(録画動画あり)。東京歯科保険医協会会員にも、ぜひ、活用していただきたい。(了)
*民事訴訟法〔言渡期日〕第251条
1項 判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から二月以内にしなければならない。ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。(解説)これは裁判所に対する訓示規定であるので、これに違背しても言渡しが違法になることはない。ただし、旧190条が2週間の期間を定めていたのが実情に即さないとして、2カ月に延長されたものであるから、通常の事件においては、この期間を遵守することが要請される。したがって、9月19日結審なら、11月19日以前の判決言渡しが〝常識〞である。
1991年3月、国立山梨医科大学医学部卒業。同年4月、東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器小児外科入局。1999年4月同科助手。2009年12月、いつき会ハートクリニック理事長・院長。専門は心臓血管外科、小児心臓外科。学位:医学博士。著書に「医学書院医学大辞典」(第2版)医学書院(2009年)他、多数。
【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!
第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!<
歯科医院の倒産、廃業が増えています。帝国データバンクによれば、今年1月から6月までに負債1,000万円以上の歯科医院の倒産ならびに休廃業、解散は合計85件。2000.年以降で最多だった23年の年間104件を超える勢いです。負債1,000万円以下も含めると、さらに大きな数字になるでしょう。
オーラルケアをする人が増え虫歯が減ってきたことや、自由診療を強化したら高額な治療は増えたけれど逆に患者が減ってしまった、歯科衛生士などの人手不足や歯科医師が高齢になって後継者がいないなど、さまざまな理由で閉院を余儀なくされています。
ただ、原因はそれだけではなく、「マイナ保険証」が導入された影響も少なからずあると推測されます。政府は、今年9月をタイムリミットとして、医療機関に対するオンラインでのレセプト請求への移行を原則義務化しました。
病院、歯科医院などの保険医療機関や保険薬局、審査支払機関や保険者との間で、レセプト電算処理システムで診療報酬等のレセプトデータの受け渡しをオンラインで実施するという方針を出し、紙ベースのレセプト請求は、原則として4月から新規適用を打ち切っています。
◆オンライン対応できない医院も
歯科医院のレセプト請求の状況(2023年3月処理分)を見ると、オンラインが33.5%、レセプト請求用のファイルを作成してフロッピーディスクやCD―ROM(光ディスク)などに書き込み、支払基金や国保連合会へ郵送する電子媒体によるものが58.6%、紙媒体が7.9%でした。
これを最終的にオンラインに統一するのは、多くの歯科医院にとっては大変革です。便利になることは確かですが、導入には費用もかかるし、そもそも2022年時点で歯科医師の12.6%は70歳以上(2022年「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」)。自分の代で閉院を決めている人もいて、使い慣れない新たなシステム導入に意欲が持てるのかは疑問。
全国保険医団体連合会の調べによると、全国の医科診療所のうち診療報酬をCD―ROMや紙レセプトで請求していたところが15,700機関、歯科医院では4,0680 機関。うち約2割が、「義務化されると廃業せざるを得ない」と回答していて、最大で1万件を超える医療機関が廃業に直面するかもしれません。
こうした状況を見ると、オンライン化で便利になるのはわかりますが、拙速に進めていくことには疑問があります。ただ、急がざるをえないのは、政府が今年12月2日に新たな健康保険証の発行をしないと決めてしまったからでしょう。
◆国の都合で負担だけを押しつける
確かに、オンライン化に慣れてくれば、事務作業も早くなり合理化されるかもしれませんが、そこまで行くには問題を多く抱えている医療機関もあります。例えば、「費用」については、全国保険医団体連合会のアンケートへの回答で、「初期導入費用が負担」が26.2%、「ランニングコストが負担」が34.9%。オンライン請求導入については補助金がなく、すべての負担が医療機関にのしかかってくることから、負担感が大きいようです。
しかも、現状の方法に不満を抱いている人も少なく、「コンピュータについては操作方法がわからない」という高齢な医師・歯科医師もいます。厚生労働省のアンケートを見ていて少々驚いたのですが、「パソコンを持っていない」という医師もいました。また、「歯科医師の本業の整備投資にお金がかかるので、これ以上お金はかけたくない」という人もいました。
なぜ、国はこれほどまでにオンライン化を急ぐのでしょうか。その背景には「保険証の廃止」と、国が目指す「医療DX」の構築があります。「医療DX」については別の機会に詳しく書きますが、要は国のご都合主義で医療現場の都合は考えず、振り回し、閉院も破綻もお構いなし。つまり、「現場に、顔が向いていない」ということです。
「東京歯科保険医新聞」2024年8月1日号10面掲載
【全文を読む】第5回「マイナ保険証」で歯科医院も閉院ラッシュ?!
経済ジャーナリスト 荻原 博子
プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。
【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第4回 3年後 病院の窓口に3台のカードリーダーが並ぶ?!
第4回 3年後 病院の窓口に3台のカードリーダーが並ぶ?!
多額の税金を注ぎ込んだのに、便利に使われていない―。そんなマイナンバーシステムの実態に、会計検査院がメスを入れ、去る5月15日に国会と内閣に報告しました。
2022年度は、マイナンバーの1,258ある機能のうち4割が利用ゼロで、しかも多くが利用率1割未満という実態が明らかになりました。自治体では利便性の向上にも行政の効率化にも、それほど役に立っていないということです。
多額の税金を費やしてシステムを作り、さらに2014〜22年度だけで全国的なネットワークの整備・運用、自治体システムの改修に総額約2,100億円も支出。結果、コンビニで住民票が受け取れるにようにはなりましたが、その1枚の住民票に何万円、何十万円もの税金が使われたということになります。だとしたら、自治体の窓口で1枚300円で住民票を交付してもらうほうが費用対効果はずっといいでしょう。
◆マイナンバーカードの普及には約3兆円の血税が使われた
マイナンバーカードの普及でも、同じようなことが起きています。21年3月の衆議院内閣委員会で、カードを含めたマイナンバー制度にいくらかかったのかと問われた当時の菅義偉総理は、過去9年間で8,800億円と答えました。さらに、22年度予算では6月からの最高2万円分のポイントを付与する事業には1兆8千134億円が計上され、それにとどまらず市区町村でのカード交付事業の補助金などとして、約1千億円を計上。普及促進費用や公金受け取り口座登録制度の推進事業などで約350億円を計上しています。そのうえ翌23年には、患者にマイナ保険証利用を積極的に働きかけた医療機関に配る支援金217億円が計上されています。
こうして見ると、今まで国民の税金約3兆円がマイナカード普及のために使われてきたことになります。日本の人口約1億2,000万人で割れば、赤ちゃんからお年寄りまで一人あたり約25,000円の税金負担を強いられたことになります。
◆携帯電話搭載のマイナ保険証は医療機関では使えない
これだけの税金を使うなら、さぞ「便利」で「合理的」な使いやすいものになるはずですが、現実は、不便なので利用率が低迷しっぱなし。病院に「最高で20万円の報奨金」というアメと、「積極的に勧めない病院は通報しろ」というムチで5月には7.73%になりましたが、まだ低空飛行状態。そこで、この報奨金を40万円にアップしました。
「便利だから使いたい」と思うようなシステムにすべきでしょう。けれども、デジタル庁の「保険証をなくせば、みんながマイナカードを作らざるをえない」という目論見で、物事を対処療法で進めているため、日を追うごとに「便利」と「合理的」からは、どんどん遠ざかっています。
「東京歯科保険医新聞」2024年7月1日号10面掲載
【全文を読む】第4回 3年後 病院の窓口に病院の窓口に3台のカードリーダーが並ぶ?!
経済ジャーナリスト 荻原 博子
プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。
【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第3回 急増しそうな「偽造マイナンバーカード」の悪用に気をつけよう!
第3回 急増しそうな「偽造マイナンバーカード」の悪用に気をつけよう!
偽造マイナンバーカードを使った犯罪が増えています。
大阪府八尾市の松田のりゆき市議が、偽造マイナカードで自分のスマホを乗っ取られ、225万円のロレックスの高級時計を不正購入されました。外出中に、突然携帯電話の電波が使えなくなり、おかしいと思って携帯ショップに問い合わせると、「この電話は、名古屋市内の店舗で機種変更されています」と言われたのです。乗っ取られた携帯にはPay Payやクレジットカードが紐づいていたので、すぐさま利用を停止しました。ところが、犯人はすでにPay Payなどで10万円以上を不正利用していたほか、ショッピングサイトのIDやパスワードを悪用し、クレジットカードが不要のローンを組んで、なんと前述のロレックスをすでに買って受け取った後でした。同様の詐欺は、東京でも起きていて、風間ゆたか都議が、偽造マイナカードで携帯電話が機種変更され、10万円以上の被害に遭っています。
◆偽カードで銀行口座を作られ1,400万円を騙し取られる
偽造マイナカードで、自分名義の銀行口座を開設されてしまい、1,400万円を騙し取られた詐欺被害も出てきています。
被害者は北海道に住む70歳の女性。今年1月に、総務省の職員や警察官を名乗る詐欺師から「あなたの口座の個人情報が流出したようなので調査しています」という電話を受け、指示されるままにスマホのビデオ通話でマイナカードを見せました。
その後、詐欺師は、女性を騙して銀行口座に1,400万円を振り込ませました。これまでの詐欺と違うのは、女性がビデオ通話で見せたマイナカードをもとに、偽のカードをつくって女性になりすまして銀行口座を開設した形跡があることです。
いま金融機関では、高齢者のオレオレ詐欺被害などを警戒して、多額の振り込みをチェックしたり、高齢者に警告を発したりしています。ですから、お金を振り込む前に多くの犯罪が阻止されていますが、振込先が本人名義の口座だと、金融機関には単なる資金移動にしか見えない。こうした、マイナカードを悪用した新たな詐欺がまだまだ増えそうです。
◆スマホの盗撮にご用心
実際に、マイナカード偽造の現場も押さえられています。
昨年12月4日、警視庁国際犯罪対策課が、自宅でカードなどを偽造していた中国籍の女を逮捕。情報を印字する前の無地のカード約750枚が押収されました。カードには、本物そっくりのICチップのようなものも埋め込まれていました。逮捕された女は、中国から届いたPCやプリンターを使用し、偽造に必要なデータをWe Chat(ウィーチャット)を通じて受け取っていたということですから、国際的、組織的な犯罪の可能性が高いのではないでしょうか。
携帯電話の新規契約は、マイナカードと月々の料金支払い口座があればできますから、足がつかない偽マイナカードで携帯電話が手に入れば、詐欺はますます横行するでしょう。
国は、「マイナカードは顔写真入りのため、対面での悪用は困難」「なりすましはできない」と大々的に宣伝し、身分証明書として持ち歩くことを奨励しています。
けれど、私は、危ないからやめた方が良いと思います。落としたら再発行に2ヶ月もかかるし、カードを出した時に背後から近づいてきた悪意ある人がこっそりスマホで盗撮したら、簡単に偽のカードを作られ、携帯電話を乗っ取られたり、本人名義の銀行口座を作られてしまう可能性があるからです。
そういう意味では、どうしても必要な時以外は、絶対にカードは持ち歩かないほうが良いと思います。
◆「東京歯科保険医新聞」2024年6月1日号12面掲載
【全文を読む】第3回 急増しそうな「偽造マイナンバーカード」の悪用に気を付けよう!
経済ジャーナリスト 荻原 博子
プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。
“銷夏恒例”の東京保険医美術展を開催/東京保険医協会
「今回で最後」を惜しむ声も
東京保険医協会主催の第40回東京保険医美術展が7月22日(月)から28日(日)まで、銀座の「ギャラリー暁」で開催された。
◆当協会から4名が出展
当協会からは、副会長の早坂美都氏をはじめ4名の作品が展示された。早坂氏は陶芸作品「灰釉線刻へのへの組皿」、小林顕氏は油絵「新緑の街並」「望遠」の2点、渡辺吉明氏は写真「爆弾初雪」「花電車」「春爛漫」の3点を出展。さらに、長尾広美氏はスワロフスキーを使った「原点回帰」を出展し、いずれの作品も見る人をほっとさせる趣があり、来場者の目を惹きつけていた。訪れた人たちはいずれの作品の前にも足を止め、しばしの間見入り、鑑賞していた。
◆今回で最後の開催に・・・
毎年夏、恒例となっているこの美術展では、東京保険医協会の厚意により当協会会員の出展を受け付けていただいていた。長年歴史を刻んできたが、今回が最後の開催となっており、今のところ後継となる催しは予定していないとのこと。
訪れた人たちから閉会を惜しむ声が聞こえつつ、同28日に有終の美を飾った。
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)7月1日
東京歯科保険医新聞2024年(令和6年)7月1日
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※お詫び※11面に掲載しました東京都知事選挙に関する記事内の表現に誤りがございました。詳細はこちらをご覧ください。訂正してお詫び申し上げます。
なお、ホームページ上に公開しているのは訂正版の紙面です。
【新聞7月号】
【1面】
1.第52回定期総会開催 2024年度活動報告など承認
2.定期総会記念講演 2024年度診療報酬改定の考察と今後の歯科医療の展望を説く
3.第52回定期総会「決議」
4.「探針」
5.ニュースビュー
【2面】
6.社保・学術部長談話「6月施行に変更した診療報酬改定の効果・検証を確実に」
7.2024 年度指導計画 協会の開示請求で明らかに 集団的個別指導1,466点以上が対象に
8.診療報酬改定情報
【3面】
9.連載「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」提訴からの進捗と展望③/(佐藤一樹氏)岡田調査官解説:原告優勢の理由
【4面】
10.経営・税務相談Q&A No.418「ウェブサイトの運用にご注意を!~医療広告ガイドライン~」
11.2024年度第1回東京都歯科医師認知症対応力向上研修
12.東京保険医協会:第40回保険医美術展/保団連:第35回全国保険医写真展
13.7月会員無料相談のご案内
【5面】
14.研究会・行事ご案内
【6面】
15.退き際の思考 歯科医師をやめる/(張 紀美さん・前編)「引退を決心した瞬間目標10年“計画閉院”は周囲に支えられ—」
【7面】
16.署名へのご協力誠にありがとうございました
17.全国からの署名17万筆を国会議員に提出/現行健康保険証の存続を求める声/日弁連も意見書を提出するなど運動は多方面に拡大
【8面】
18.教えて!会長!! Vol.84「エナメル質初期う蝕と根面う蝕の管理」
19.定期総会5年ぶり懇親会 会員集う
20.第52回定期総会祝電・メッセージ等一覧
21.懇親会参加来賓一覧
22.共済部だより
【9面】
23.症例研究「抜髄時の麻酔薬剤料とNi−Tiロータリーファイルを用いた加圧根管充填処置」
【10面】
24.新連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第4回「3年後 病院の窓口に3台のカードリーダーが並ぶ?!」(荻原博子さん/経済ジャーナリスト)
25.理事会だより/2024年度第2回(暫定)・第3回(暫定)理事会
26.6月協会活動日誌
【11面】
27.「骨太の方針2024 」を閣議決定/歯科関連事項の記述は一部変更も期待感含む内容
28.神田川界隈「歯科医師として社会と関わる役割を考える」(監事・西田 紘一/八王子市)
29.第1回ドクター・スタッフ講習会「接遇講習会」/クレームを拡大しない極意伝授
【12面】
30.マイナ保険証問題 特別インタビュー/閉院知り涙する患者に「やりきれない」健康保険証廃止…従業員も“良い職場”失い「喪失感」
31.現行の健康保険証の存続を/国会議員と懇談し、署名手渡す/「保険証の存続を求める国会内集会」が開催
ご協力!! ありがとうございました「現行の健康保険証を残してください」請願署名5000筆超に
現行の健康保険証の存続を求める声/日弁連も意見書を提出/運動は多方面に拡大
◆署名は患者、医療機関・介護施設から続々と
協会は、全国の保険医協会・医会とともに健康保険証の存続を求める請願署名に取り組み、5,000筆を超える署名が寄せられ、国会議員に提出した。全国では17万筆超の署名が集まった。
署名は、医療機関だけではなく、患者や介護保険施設などからも続々と集まっており、日本弁護士連合会が健康保険証の存続を求める「マイナ保険証への原則一本化方針を撤回し、現行保険証の発行存続を求める意見書」を総務省などに提出したことをはじめ、多方面に運動が広がった。
◆強引な利用推進で医療現場は混乱
4月のマイナ保険証の利用率は未だ低迷しており、5月時点では7.73%と医療現場ではほとんど使われていない。このような状況について国は、低迷の原因は医療機関の声掛けにあるなどとし、診療所と調剤薬局に最大10万円(6月21日の社会保障審議会医療保険部会で2倍の20万円に引き上げを決定。診療所・調剤薬局20万円、病院40万円に)の「一時金」やマイナ保険証の提示を求める台本を用意し、医療機関に利用推進を押し付けている。この強引な推進策のため、医療現場では混乱が生じており、「保険証の存続を求める国会内集会」では、患者サイドから「『お前たちは10万円ほしさにマイナって言うんだろう』と言われ、受付事務員にマイナ保険証を投げつけられる」というトラブルを経験した医療機関があったことが報告された。
◆厚労省のチラシには資格確認書の案内なし
また、厚労省から示された配付用チラシは、本年12月2日の健康保険証廃止やマイナカードによる受診の呼びかけのみが強調され、マイナカードがない人やマイナカードを持っていてもマイナ保険証の利用登録をしていない人などには、代わりに「資格確認書」が交付されるといった本来患者に伝えるべき情報が十分に記載されていない。そのような中で、既に混乱している医療現場が、さらにその対応に追われることになる。
混乱を解決するには、現行の健康保険証を残すことが重要であり、協会はこれまでも国会議員要請などを通じて広く訴えてきた。
◆現行の健康保険証の廃止はありえない
国は、健康保険証の新規発行を終了させる改正法案作成に向けて、パブリックコメントを募集していたが(6月22日で終了)、協会がホームページなどで広報したところ、会員を問わず存続を求める多くの方々から問い合わせが寄せられた。
協会は、「やっぱりキミが必要だ」を合言葉に、引き続き、健康保険証の存続を求めていく。
【保険証廃止】閉院知り涙する患者に「やりきれない」 従業員も喪失感
【マイナ保険証問題インタビュー】閉院知り涙する患者に「やりきれない」健康保険証廃止…従業員も“良い職場”失い「喪失感」
まもなく、都内で地域医療を守り続けてきた1つの医科診療所が、長きにわたる歴史に幕を下ろそうとしている。
理由は、健康保険証の廃止。
地域住民に根付いた診療所は、瞬く間に世界中を一変させた新型コロナウイルスに対しても、精力的に積極的に取り組み、地域医療の火を灯し続けた。しかし、マイナ保険証への対応ができず、閉院を余儀なくされた。
これにより、長らく通院してきた患者はかかりつけ医を失い、院長や従業員は職を失うことになる。職場の閉院を告げられた看護師、医療事務の2人は、健康保険証の存続を求める協会の活動をホームページ上で見つけ、職場で300筆を越える署名を集めた。マイナ保険証一本化政策により閉院する診療所がたくさんあることを知ってほしい―今、まさに健康保険証廃止の影響を受ける2人の医療従事者に話を聞いた。
―まずは診療所について教えてください。
開業して数十年、幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃる診療所です。新型コロナウイルス感染症の流行当初から、発熱外来にも力を入れてきました。三世代で通ってくださる患者さんも多く、街のお医者さんとして定着しています。
―閉院の理由や、閉院までの経緯を教えてください。
当院では開院以来、紙カルテを使用してきました。現行の健康保険証が廃止されマイナ保険証に一本化された場合、保険診療が継続不可能となるため、閉院せざるを得ない状況です。パソコンの買い替えなどが必須となり、初期費用や毎年の経費も莫大です。今後どれくらい診療が続けられるかという院長や従業員の年齢的な問題もあり、助成さえあれば簡単にマイナ保険証に対応できると判断するのは安易だと考えます。
院長は従業員を家族のように
―閉院を聞いた時の率直な気持ちは。
院長や従業員の意思とは関係ない部分が要因となった閉院で、非常に残念です。母校がなくなるような喪失感があります。マイナ保険証一本化の政策がなければ、当院の診療が継続していたことは確実です。健康保険証に問題なく、マイナ保険証の利用率が低迷している中、地域の方々から必要とされている診療所なのに、なぜ閉院しなければならないのかという思いが強いです。このような閉院は病院の少ない地域であれば死活問題です。マイナンバーカードが任意である以上、マイナ保険証と健康保険証が共存することを求めていきます。
―さまざまな葛藤があると思いますが、これまで働いてきた診療所への思いを教えてください。
従業員は全員勤務年数も長く、居心地の良い職場です。院長は家族のように従業員を大切にしてくれますし、従業員にとっても頼りになる大切な存在です。
患者にとって〝衝撃が大きい〟
―閉院を聞いた患者さんの様子はいかがでしたか。
長く通われている患者さんは先生との信頼関係も厚く、非常に残念に思ってくださる方々ばかりです。「最期まで先生に診てほしかった」「閉院後は別の場所で診察なさるんですか?」「これからどこの病院に行けばいいですか」といった声が多く聞かれました。思いがけない理由で突然かかりつけ医が閉院することを知り、涙を流す患者さんも多くいらっしゃり、患者さんにとっても衝撃が大きいことが伺えます。毎日膨大な量の診療情報提供書の作成に追われる院長や、これから他の病院に移り環境の変化に戸惑う患者さん方のことを思うと、私たちもやりきれない気持ちです。
―そうした思いを抱え、協会の署名に取り組んだ理由を聞かせてください。
任意のはずのマイナンバーカードが保険証になり変わるということは、事実上、マイナ保険証の使用を強制されているのと同じです。マイナ保険証の利便性が高ければ、健康保険証を廃止にせずとも自然と普及していくはずです。矛盾を押し通してこのまま健康保険証が廃止となれば、当院の閉院は免れません。納得できないまま、「何もしないまま閉院してもいいのか?」とモヤモヤしていた頃に、健康保険証存続のための署名活動があることを知りました。自分たちにも協力できることだと思い、署名活動に参加することを決めました。
―実際に診療所での署名活動はどのようなものでしたか。
院内にポスターを掲示し、署名用紙や回収ボックスを受付の見やすい場所に設置しました。閉院のお知らせの張り紙とあわせて、署名活動のポスターに興味をもってくださる患者さんが多い印象でした。中には一人で何十人もの署名を集めてくださった患者さんもいらっしゃり、私たち以上に患者さんが積極的に活動してくださっています。
―署名活動を通じて、気づいたことや変化がありましたか。
予想以上の署名が集まったことから、「閉院してほしくない」「健康保険証を残してほしい」という患者さんの気持ちが伝わってきました。おそらく当院の閉院は免れることはできないと思われますが、同じような状況にある他の医院や困っている患者さん方のためにも、最後まで署名活動は継続しようと考えています。
冒頭の2人は、「医院の患者さんの声を伝える最初で最後のチャンス」と、協会の取材に応じた。この診療所が集めた署名用紙には、保険証存続を求める意見もさることながら、「お世話になった診療所」「院長先生、スタッフが親切に対応してくれた」と、医院への思いを綴ったものが目立った。これほど地域に愛された診療所が不本意にも閉院してしまう現実。こうした現場の声を背負い、協会は健康保険証存続に向けて取り組んでいく。
※署名は国会議員に提出しました。
※この記事は、東京歯科保険医新聞2024年7月1日号に掲載されたものです。
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2024年度指導計画/協会の開示請求で明らかに
集団的個別指導は1,466点以上が対象に
2024年度指導計画が関東信越厚生局東京事務所(以下、厚生局)より開示され、集団的個別指導、新規個別指導、個別指導の指導計画が明らかになった(下表参照)。
◆新規個別指導
264件は前年度の半数今年度の新規個別指導は、24年3月までに新規指定された医療機関を対象に、前年度(532件)の半数となる264件に対し、年6回に振り分けて実施される。
◆集団的個別指導の基準平均点数は1,463点
集団的個別指導は、23年度のレセプト1枚当たりの平均点数が東京都の平均点数(1,219点)の1.2倍を超える基準点数1,463点以上の上位8%にあたる医療機関801件に対して、9月に52回に分けて実施される。実際に選定された医療機関の平均点数は1,466点以上となった。集団的個別指導へのカルテ持参は不要で、2時間の講習を受けるのみである。ただし、正当な理由がなく欠席した場合は個別指導の対象となるため、通知が届いた際は、必ず参加いただきたい。
◆高点数による個別指導が計画
個別指導は102件が計画され、5・6・8月を除き、毎月実施される。選定理由の内訳は、「情報提供」15件、「再指導」70件、「高点数」8件、「その他」9件となっている。高点数による個別指導は、コロナ禍に配慮して21年度以降は計画されていなかったが、今年度は計画件数が明記された。ただ、厚生局は「情報提供や再指導を優先して個別指導を実施する」としている。患者トラブルによるカルテ開示や医療費通知と領収証との不一致など、患者からの情報提供により個別指導に選定されることもあるため、日頃から適切な保険請求やカルテ記載を行うことが肝要だ。
◆4月の異動で新たに指導医療官が着任
また、厚生局の開示資料より、東京の指導医療官が明らかになった。東京では2名の指導医療官の異動に伴い、新たに笹井義宣氏と小林隆氏が着任した。なお、前年度に引き続き田原洋氏と山本健氏は留任となった。
◆不安を感じたら
迷わず協会に相談を診療報酬の改定が6月に施行され、新設された点数や改変された点数など多岐にわたる。協会では改定に対応した「歯科保険診療の研究 2024年6月版」を会員にお送りしている。ぜひご一読いただき、保険請求などの際にご活用いただきたい。
また、新規開業医だけでなく、改めて保険のルールやカルテ記載の方法などを確認したい先生は、新規開業医講習会に、ぜひ、ご参加いただきたい。
協会では保険請求の相談のほか、指導に関する相談も行っている。不安を感じている先生は、一人で抱え込まず、協会へ連絡してほしい(TEL 03―3205―2999)。
今次改定施行後初のメディア懇談会/ベア評価料やマイナ問題など議論
第2回メディア懇談会を開催/「閉院の後ろには患者さんがいる」
協会は7月12日、第2回メディア懇談会(通算102回)を開催し、メディア5社5名が参加。坪田有史会長が説明し、早坂美都副会長が進行を務め、①診療報酬改定関連、②マイナ保険証問題、③オン資「義務化」撤回訴訟―などについて懇談した。
まず①では、6月から新たな診療報酬が施行されたことを巡り、会員の意見を取り上げながら改定の問題点に言及。ベースアップ評価料については、手続きの複雑さなどから届出する医療機関の割合が少ない実状を説明。参加メディアからは、「理想は(ベースアップ評価料ではなく)従業員の給与に反映できるほどの診療報酬全体の点数にすることだと思う。(ベースアップ評価料の算定が少なく)予算が残ると、国としても対応を迫られると思うが、協会としてはどう見ているか」との主旨の質問が上がった。
坪田会長は、役員の中にもさまざまな意見があると前置きし、「メリット、デメリットを会員に周知していく。それをどう捉えるかは個人の考え方に一任する。予算が余れば、次回の改定に影響する可能性もあるのではないだろうか」と話した。
さらに、②や③の議題では坪田会長が「マイナ保険証問題で閉院する方の後ろには患者さんがいる。こんな理由で長く医療に携わってきた方が辞めなければならない状況になっていることに、憤りを覚える」と訴えた。参加メディアもマイナ保険証問題を含め「根本的におかしい」とし、協会の活動を後押しする一幕もあった。
小池都知事が3選
小池都知事3選/さらなる東京都の医療充実を望む
東京都知事選挙の投開票が去る7月7日に行われ、小池百合子氏が3選を果たした。新たな任期中に団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」への対応や、少子化対策などへの舵取りが注目される。
協会は、毎年、東京都に次年度予算への要請を行っているが、その要請が実った形で、子ども医療費助成制度は18歳まで拡充され、自己負担相当額を2025年度まで時限的に都が負担する。しかし、その後は各自治体の財源状況により、200円の患者負担が生じることや、所得制限が設けられることが予定されている。自治体による格差の解消に向けて、都としての対応を期待したい。
また、協会は在宅療養に関わる医療従事者向けのハラスメント対策、体制整備のための補助金の新設や迷惑行為の抑止策を求めている。今年度、在宅医療現場での医療関係者の安全を確保するため、都は患者やその家族らからのハラスメント行為で困っている医療関係者を対象にした相談窓口を開設することにした。
引き続き協会は、東京都に社会保障の充実、医療体制の拡充に向け、協会は改善を要求していく。
2018年8月30日、都庁応接間で小池百合子都知事と協会の坪田有史会長の懇談の際のひとコマ【連載】退き際の思考/引退を決心した瞬間 目標10年“計画閉院”は周囲に支えられ―(張紀美さん【前編】)
引退を決心した瞬間 目標10年“計画閉院”は周囲に支えられ―(張紀美さん【前編】)
引退を決心した瞬間 目標10年“計画閉院”は周囲に支えられ―
張紀美さん(キミ小児歯科クリニック院長) ― 前編

張紀美(ちょう・きみ)さん/1965年、長野県松本市生まれ。90年に松本歯科大学卒業後、同年東京歯科大学小児歯科学講座に入局。1997年同大学院修了。2010年キミ小児歯科クリニック開業。2024年5月同クリニック閉院。
歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生にお話を伺い、引退を決意した理由や、 医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
今回は、今年5月をもって閉院したキミ小児歯科クリニックの張紀美先生(59歳/文京区)の前半。開業当初から目標年数を定め、引退後の人生について考えていたというが、その道のりには苦難も。小児歯科の専門医として、長らく地域の子どもたちの口腔内を守ってきた張先生に迫る―。
「退き際の思考」を紙面で見る(「東京歯科保険医新聞」2024年7月1日号)
―まずは歯科医師を志したきっかけからお聞かせください。
「女性も手に職を」という両親の考えのもと医療分野を勧められ、特に医師の父から「歯科医師の方が家庭と両立しやすい」とアドバイスを受けて歯学部に進学しました。大学院(小児歯科学専攻)在籍時に結婚して4年時に妊娠しました。私が在籍していました講座は4年間での学位取得が厳しいため、教授にご相談したところ「あと少しだから家で論文をまとめてきなさい」とご配慮いただき、なんとか修了することができました。この間、医局の先生方にはご迷惑をおかけしたと思います。その後、専門医を取得して3人の子どもの育児をしながら夫の歯科医院で小児の診療を担当しました。
―ご夫婦で医院を経営したのち、開業したきっかけは。
小児歯科専門医のため非協力児を診療する機会も多く、そのため大人の患者さまと同じ診療室で仕事をしているとやはり気を遣うことも増えてきました。そんな経緯から45歳で開業しました。末娘はまだ5年生になったばかりでした。「せめて中学生になるまでは…」と葛藤がありましたが、借入の返済の年齢を考えて区切りの良い45歳で開業しました。3人の育児と家事との両立は大変でしたが、「仕事を言い訳にして家事ができない」と言わないと心に決めました。将来、留学したいという思いも漠然とあり、まずは10年を目標に歩み始めました。振り返ってみると開業翌年以降は赤字や大きなトラブルもなく、仕事、家事、子育てをよくやり遂げられたと思います。
―開業当初からお一人で医院経営をされていたのですか。
開業当初は優秀な常勤の助手と非常勤の歯科衛生士がいました。しかし9年半勤務してくれていた助手が病気を患い、2019年末に退職してしまいました。ちょうどコロナが始まった頃です。冬休みの多忙な時期でとても困っていましたら、患者さまのお母さまが「良い人がいる」と優秀な方を紹介してくださり、とても助かりました。それ以外にも「受付募集」の案内を見て「私じゃだめかしら?」とお声をかけていただき、お願いしたこともありました。このように、タイミングよく周りの方に助けていただきながらなんとか続けることができました。
閉院を決めた要因「いつのまにかストレスに…」
―最終的に閉院を決めた理由は。
まず専門医として小さなお子さまの口腔管理を長期にわたって担う責任、最終的にはお子様一人ひとりが自分の歯に関心を持ち管理できるよう育成することに対しての責任がとても重くなってきたことです。その責任の重さがいつのまにかストレスになってきました。それから当初目標としていた10年に達したこと、3人の子どもが社会人になったことや、両親の高齢化という要因もあります。腱鞘炎の悪化、老後の生活資金面にも目途が立ったことなどいくつかの理由が重なりましたし、歯科医師として35年、よく頑張ったなという実感もあります。最後にこれらに加えて、マイナ保険証関連の対応もストレスになりました。
―閉院にあたり具体的な準備はどう進めましたか。
夏休みに来院する中高生以上の患者さまには「来年の3月が最後かもしれないから、もう一度来てね」と伝え始めました。また、万が一、次回の検診に来られなかった場合に他院で渡せるように、口腔内の状態を記してお渡ししていました。矯正治療も2019年には新規の受け付けをやめましたが、希望する方のために矯正の先生と連絡を取り、患者さまが困らないようにできることをやりました。
―閉院準備を進めていく中で心境の変化は。
パート従業員も体調不良で退職し、昨年冬頃からは1人ですべてこなしました。疲れ切って帰宅する生活に昨年11月末、とても虚しくなった瞬間がありました。もともと目標の10年は過ぎていたので引退のことも常に頭の片隅にありました。そんなある日の帰宅後、「あれ?家事も減って育児もないのになんでこんなに疲れ切ってるんだろう」「読みたい本も疲れて読めない…」、そうした思いが急に虚しくなって半年後の引退を決心しました。
―その後の動きは。
引退を決心した翌日の12月1日にM&Aの業者に連絡をしたところ、ちょうど物件を探していた女性の先生を紹介してくださり、10日ほどで契約が決まりました。今回は医院の承継ではなく、いったん閉院の形を取りました。私の患者さまは乳幼児も多いですが、永久歯列になった患者さまも多いです。そのため、長いお付き合いのあったお子さんを今後も安心して後任の先生にお任せすることができて良かったと思います。4月末で診療を終えて5月は片付けにあてました。保存するカルテはダンボール15箱ほどになり、M&Aの業者に保管を依頼しました。どうしても引継ぎ事項がある患者さまは、その内容を詳細に記してカルテを残しています。
思い入れある患者、最後の来院
―最後の診療はどのようなものでしたか。
上の子が高校1年生の三兄弟でみんな2歳から来院してくれているとても思い入れのあるお子さんたちが最後になりました。1年ぐらい予約がなく、「どうしているかな」と思っていましたが、最後に診療できて花束と贈り物までいただいて、本当に良かったです。赤ちゃんの頃からの患者さまも多く、引退を決めてからはなんだか私自身が“親戚のおばさん”のような感覚で接していました。保護者の方からは「先生、長い間お疲れ様でした」とお言葉もいただき、無事診療を終えました。5月以降も放課後に訪ねてくる子や、わざわざ挨拶に足を運んでくださる保護者の方、中には「先生、明日缶ビール持って行っていいですか!」なんて方もいて、最後まで交流が続きましたね。
―引退後はアルバイトや勤務医として診療する予定は。
もう診療はしないと思います。アルバイトでも一度仕事を引き受けましたら責任が伴いますから簡単には辞められません。
―冒頭には留学というお話しもありましたが、充実した第二の人生が始まりそうですね。
(後編では、引退後のキャリアについてお聞きします)
PROFILE/ちょう・きみ
1965年、長野県松本市生まれ。90年に松本歯科大学卒業後、同年東京歯科大学小児歯科学講座に入局。1997年同大学院修了。2010年キミ小児歯科クリニック開業。2024年5月同クリニック閉院。
「退き際の思考」を紙面で見る(「東京歯科保険医新聞」2024年7月1日号)
#インタビュー #連載 #退き際の思考
【連載】退き際の思考/“人生の半分は闘病”も悔いなし 「助けられた」共済制度と歩んだ歯科医師生活(石田昌也さん【後編】)
“人生の半分は闘病”も悔いなし 「助けられた」共済制度と歩んだ歯科医師生活(石田昌也さん【後編】)
人生の半分は闘病”も悔いなし 「助けられた」共済制度と歩んだ歯科医師生活(石田昌也さん【後編】)
石田昌也さん(石田歯科医院副院長) ― 後編(前編はこちら)
歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生にお話を伺い、引退を決意した理由や、医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
今号は、杉並区上荻にある石田歯科医院の副院長、石田昌也先生の後編。息子への医院承継や、大切にしてきた親子関係について聞いた前編に続き、協会とのつながり、「悔いがない」という人生について、妻の光子さんとともに振り返ってもらった。
「退き際の思考」を紙面で見る(「東京歯科保険医新聞」2024年6月1日号)
―協会に入会したきっかけは。
昌也先生:医師である妻の父から紹介されて保険医協会を知りました。「保障内容や利率の面で共済制度が良い」と助言を受け、特に休業保障を勧められたので、深く考えずに共済制度に加入するために入会して、はや50年近くになります。
―長らく協会に入会し、共済制度を利用してみていかがですか。
昌也先生:病気になったり、けがをするとやっぱり「どうしよう」と不安に思うものじゃないですか。そうした時、保険医協会に「助けられた」「救われた」という気持ちが今でもあります。数年前に足を骨折した時も協会に連絡すると、事務局の方がすぐに飛んで来て、保障内容などいろいろと説明をしてくれてほっとしたことを覚えています。
光子さん:協会にはいろんな面で助けてもらっていますね。
昌也先生:それから、スタッフの給与計算や年末調整など医院の経営や税務のことは、妻と税理士さんに任せきりだったんですが、その税理士さんを紹介してくれたのも協会です。税理士さんには、保険・自費収入から経費計算まで、毎月きっちりと会計のサポートをしてもらい、とても良かったと思っています。
▼休業のリスクに備える協会の「休業保障」とは?気になる掛金や給付額も…
▼入会案内はこちら
病とともに歩んだ歯科医師人生
ー長い歯科医師人生の中、さまざまな苦難もあったと思います。
光子さん:大変だったことと言えば、夫は働き盛りの40歳頃に網膜剝離を発症し、失明するかもしれないと宣告されました。
昌也先生:私は諦めが早く、その時に「もう続けられないんだな」と思い、歯科医師を辞める覚悟もありました。それでも入院中に「この先をどうしようか」と考え、失明しても患者さんの問診だけならできるんじゃないかと、その後のことに目を向けていましたね。
光子さん:退院後、幸いにも段々と症状が回復しました。入院中の半年間と、退院直後の期間は、知り合いの先生に助けてもらい、その後、運良く治療ができるまでに復帰しました。
ー大変な経験の中でも、石田先生の強さを感じるお話ですね。
光子さん:ただ、翌年に腎臓の病気が分かり、今でも闘病を続けています。
昌也先生:私の人生の半分は病気とともにあります。でも人生78年。地方から東京に出てきて、歯科医師として開業して、たくさん病気はしたけどまったく苦ではありません。「嫌な人生だったな」「歯科医師はつまんなかった」という感情はなく、自分の人生に満足しています。今は身体のこともあり、妻がいないと外にも出られないけれど、何も悔いはありません。それは協会の共済制度の助けがあったからこそで、そんな人生観でここまでくることができました。これから何を楽しみに生きる、ということはないけど、この前は息子夫婦と焼き鳥を食べたり、そんなふうに家族と食事をしたり、孫と将棋をしたり、楽しみながら生活をしています。最初はかわいそうだと思って、孫を勝たせるように将棋を打っていたんですが、段々と上達してきて、先日は、テレビを観ながら片手間で駒を打つ孫に負けてしまいました。
光子さん:主人を近くで見ていると、歯科医師として現役時代から仕事もプライベートも全力で、普通の人ではできないくらい人生を謳歌してきたと感じます。「悔いがない」というのは本心なんだと思います。
ー最後に引退を考える先生にメッセージをお願いします。
昌也先生:歯科医師は定年退職がないので、ある程度長く続けることができる仕事です。これは技術がある歯科医師の特権です。だけど、体力、視力の問題や、何か不安に思っていることがあれば、人生設計を考え直して、どこでリタイアをするか家族できちんと考える必要があります。あとは、患者さんが退き際を教えてくれる部分もあると思います。年齢を重ねれば、若い患者さんは自然と来なくなったり、世間からの見られ方は変化するんじゃないかな。でも長く診てきた高齢の患者さんは、「あの先生は義歯を作ったり、調整するのがうまい」と信頼して来院するかもしれません。そうした棲み分けは世間がするものかなと思っています。
ー本日はありがとうございました。
~編集後記~
庭先で撮影した桜の木です―。協会宛てに届いた1枚の写真を本紙に掲載したご縁で石田先生と初めてお会いした。今回、「私でよければ」と企画にご協力いただき、約1年ぶりに石田先生のもとへ。満開の桜は青々とした新緑に移り変わっていたが、変わらずお話し好きな先生の様子と、仲睦まじいご夫婦のかけ合いに心温まる取材となった。
協会設立初期からの会員である石田先生。病を患いながらも逞しく、家族思いの優しき人柄で、こうした先生方とともにある協会半世紀の歩みを感じるひと時であった。
▼休業、老後、死亡の3大リスクに備える協会の「共済制度」とは?
「退き際の思考」を紙面で見る(「東京歯科保険医新聞」2024年6月1日号)
#インタビュー #連載 #退き際の思考
【重要:提出期限が近づいています!】毎年の施設基準の定例報告について
定例報告の提出時期が今年度から以下のように変更になっています。
【~2023年度】 【2024年度~】
7月報告 → 8月報告
※施設基準等を届け出た保険医療機関は、各種通知等に基づき、毎年8月1日現在の状況を地方厚生局長へ報告する必要があります。なお、すべての様式を提出する必要はございません。貴医院における施設基準の届出状況により、提出する様式が異なりますので、ご注意ください。
7月報告 → 8月報告
※施設基準等を届け出た保険医療機関は、各種通知等に基づき、毎年8月1日現在の状況を地方厚生局長へ報告する必要があります。なお、すべての様式を提出する必要はございません。貴医院における施設基準の届出状況により、提出する様式が異なりますので、ご注意ください。
まずは、ご自身で自院の施設基準の届出状況を確認することが必要です。
ここをクリック→各医院の施設基準等の届出状況の確認はこちらから(保険医療機関・保険薬局の施設基準の届出受理状況及び保険外併用療養費医療機関一覧)
※PDFの画面で、「Ctrl+F」を押し、自院の電話番号(03-●●●●-●●●●)を入力します。
<主な定例報告>
※以下の様式以外にも報告・届出状況により、厚生局へ提出が必要になる場合があります。不明点は協会までお問い合せください。(TEL:03-3205-2999 社保・学術部)
2023年8月1日から2024年7月31日までの間に歯科衛生実地指導料(実地指)または訪問歯科衛生指導料(訪衛指)のいずれかを算定した実績がある場合には提出が必要。
➡【別紙様式5】選定療養及び歯科衛生実地指導等の実施状況報告書(歯科)
歯科点数表の初診料の注1(歯初診)の施設基準を届け出ている場合。(フローチャート参照)
➡【別紙様式27】歯科点数表の初診料の注1の施設基準に係る報告書※記入見本は下にスクロール
<フローチャート>

<提出様式のダウンロード>
ここをクリック→歯科診療所に係る定例報告等について
※関東信越厚生局のホームページに移行します。
<提出様式の記入見本>
※歯科点数表の初診料の注1の施設基準に係る報告書

<提出先>
関東信越厚生局 東京事務所 審査課
〒163-1111
東京都新宿区西新宿6-22-1 新宿スクエアタワー11階
TEL:03-6692-5119
<提出期限>
8月30日(金)
※提出期限に遅れることのないようにお気を付けください。
【お詫びと訂正】「東京歯科保険医新聞」7月1日号(第652号)掲載記事について
「東京歯科保険医新聞」7月1日号(第652号)11面に掲載しました記事「東京都知事選挙 無歯顎者の増加・病院歯科の減少などが課題」内の表現に誤りがございました。以下の通り、訂正してお詫び申し上げます。
<見出し>
誤:東京都知事選挙 無歯顎者の増加・病院歯科の減少などが課題
↓
正:東京都知事選挙 病院歯科の減少などが課題
<本文中>
誤: 一方、無歯顎者数は増加傾向で、16年と22年を比べると、55~59歳で8千558人が1万2千539人に、60~64歳で9千729人が1万6千86人に増えている。その他の年代でも概ね増加傾向にあり、無歯顎者数は増えている。
↓
正:一方、無歯顎者数は減少傾向で、16年と22年を比べると、55~59歳で6人が2人に、60~64歳で10人が8人に減っている。その他の年代でも概ね減少傾向であるが、80~84歳、90歳以上は増加している。
以上
【教えて!会長!! Vol.84】エナメル質初期う蝕と根面う蝕の管理
エナメル質初期う蝕と根面う蝕の管理
Q 今次改定でエナメル質初期う蝕と根面う蝕の管理料が新設されました。
A エナメル質初期う蝕ですが、口管強(改定前:か強診)以外の歯科医療機関において、改定前は、歯管または特疾管の算定があってCe病名で3月ごとに1回、フッ化物歯面塗布処置(F局130点)の評価でした。6月の今次改定の施行後は、同じ条件でCe病名で3月ごとに1回、F局100点の評価と減算されました。その30点の減算分は、エナメル質初期う蝕管理料(Ce管)の新設(30点)で補填されています。このCe管は、月1回算定できることになり、う蝕に対する重症化予防の位置付けとなっています。なお、口管強の歯科医療機関は、この30点に48点の加算(口腔管理体制強化加算)があり、さらにF局を月1回算定することが可能です。F局には当該部位の口腔内カラー写真撮影が必要です。
Q Ce管の具体的な臨床の対応とカルテ記載は?
A 具体的な対応などは、通知文に「エナメル質初期う蝕に関する基本的な考え方」(平成28年3月:日本歯科医学会)を参考にすることと明記されていますので、詳細はそちらで確認する必要があります(全文は下記参照)。抜粋すると、Ceの病態はエナメル質表面に限局したう窩を形成しない脱灰病変(エナメル質形成不全症は除く)で患者に疼痛などの自覚症状はなく、視診にて、エナメル質表面に粗造感のある白斑が認められた場合で、年齢は問いません。
全文は「エナメル質初期う蝕に関する基本的な考え方」(平成28年3月:日本歯科医学会)全文はここをクリック
Ce管は、当該部位にフッ化物を応用することにより、その進行を停止させ、さらには再石灰化により病変を改善させることが目的です。う蝕を再石灰化させるためには、できるだけ早期にCeを検出することが重要です。また、患者個人のう蝕リスクをコントロールするためには、歯科側と患者が互いに協働することが重要です。
したがって、カルテ記載は、Ceの病態、ならびにフッ化物による効果を患者に説明し、ホームケアの重要性の理解を促し、Ceの管理を行うなど、具体的な記載が必要となります。
Q 根面う蝕の管理料(根C管)は?
A 根C管は、口管強(改定前:か強診)以外の歯科医療機関において、改定前は、歯管または特疾管を算定している65歳以上の患者や歯科訪問診療料を算定した患者に対して、根C病名で1月に1回、F局(110点)の評価でした。6月の今次改定の施行後は、同じ条件で根C病名で3月に1回F局80点と減算され、30点の減算分は、根C管の新設(30
点)で補填されています。この根C管は、月1回算定できることになり、Ceと同じくう蝕に対する重症化予防の位置付けとなっています。なお、口管強の歯科医療機関は、この30点に48点の加算(口腔管理体制強化加算)がありますが、Ceとは違いF局は3月ごとに1回の算定です。根CのF局には写真撮影が不要です。
Q 根C管の具体的な臨床の対応とカルテ記載は?
A 具体的な対応などは、通知文に「初期根面う蝕の管理に関する基本的な考え方」(令和6年3月/日本歯科医学会)を参考にすることと明記されていますので、詳細はそちらで確認する必要があります。抜粋すると、診断は視診と触診で行い、実質欠損深さ0.5㎜未満の歯根に生じた色調が淡黄色、淡褐色、暗褐色、黒色のう蝕を根Cと診断します。なお、実質欠損の深さが0.5㎜以上のケースは、修復治療の適応となるため、切削の適否の判断基準となり、また活動性か、非活動性かにより診断します。根Cと鑑別しなければならない病態は、くさび状欠損、アブフラクションによる実質欠損、酸蝕症です。
根C管の目標は、初期根面う蝕の再石灰化を促してその進行を抑制することにより、非活動性で周囲健全歯質と同程度の硬さを呈する状態を維持し、非切削で管理することです。したがって、根C管は、個人のう蝕リスクに応じた管理計画を策定する必要があり、う蝕リスクとして、生活状況・飲食習慣、口腔衛生習慣などを聴き取り、根面う蝕のリスク因子(歯肉退縮、部分床義歯の使用、プラークの蓄積。唾液分泌量の減少など)から総合的に判定します。
したがって、カルテ記載は根Cの病態、ならびにフッ化物による効果を患者に説明し、ホームケアの重要性の理解を促し、根Cの管理を行うことなど、具体的な記載が必要となります。
【東京歯科保険医協会】診療報酬改定 特設ページ
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2024年7月号掲載)
【重要】CD-R等の請求に係る猶予届出兼オンライン請求への移行計画書の提出について
CD-R等の請求に係る猶予届出兼オンライン請求への移行計画書の提出について
<概要説明>
- 光ディスク(CD-RやMO)でレセプト請求している場合の取り扱い
①2023年4月以降、オンライン資格確認システムの導入の原則義務化に伴い、レセプトのオンライン請求も可能な回線が整備された状況にあると解釈され、2024年9月末までにオンライン請求に原則として移行しなければならない。
②特段の届出を行うことなく、2024年4月~9月までは従来の方法でレセプトの請求ができる。
③2024年10月以降も従来の方法でレセプト請求をするためには、審査支払機関(社保・国保)に対して、届出とオンライン請求への移行計画書を提出しなければならない。
※2024年8月31日までに医療機関向け総合ポータルサイトから提出することが必要。
④移行計画書は、最大で1年以内の計画を記載する必要があり、記載した期間に限り、従来の方法でレセプト請求ができる。
➄1年間の更新制であり、従来の方法を継続していくためには、改めて届出と移行計画書の提出が必要である。
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