協会ニュース

【Health Care】 No.1 医療介護システムの発展に不可欠な視点とは

医療経済学の専門家で東京大学大学院特任教授の田倉智之氏の連載を始める。全6回にわたり、医療介護システムの発展、費用対効果評価や、診療価値と病院経営などをテーマとする。第1回は「医療介護システムの発展に不可欠な視点とは」—。

医療介護分野は、誰もができるだけ低い経済負担で、公平に診療やケアを受けられるようにすべきである。そのため、世界の多くの国では、1978年のアルマ・アタ宣言などにならって、多かれ少なかれ医療介護分野を公的制度として整備してきている。一方で、近年注目を集めるユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の推進には、社会経済的な要因が大きな影響を及ぼすことも明らかとなっている[1]。すなわち、医療介護の環境整備において、臨床と経済の調和が望まれている訳である。また、医療介護分野の進歩に影響をおよぼす各種イノベーションも、社会経済的なメカニズム(バリューチェーン)をとおして、UHCと関係が深いことが示唆されている[2]。以上のように、今後の医療介護システムの発展には、臨床的な議論を中心としつつも、経済的な側面を論じることの重要性が増している。

ではなぜ、近年において医療経済的な要因が顕在化してきたのかを考えると、次のような医療介護分野を取り巻く潮流が挙げられる。一つ目は、言うまでもなく社会保障財源のひっ迫である(図1)。この背景は至極簡単で、医療や介護の需要増加(高齢化の進展)と実体経済の伸び悩み(GDPの停滞)が大きな割合を占める[]。二つ目は、治療技術のイノベーションとその超高額化である。この両者を合わせると、数量増加と単価上昇により、国民医療費等が膨らんでいくことは容易に想像される。一方で、現役世代の人口減少と経済負担の許容水準から、保険財源の収入が追い付いていないようである。結局のところ、受益と負担のバランス低下が根源と考えられる。これらを俯瞰すると、将来の医療介護システムの発展に不可欠な視点は、おのずと明らかになってくる。そのキーワードは、価値評価と健康行動である。

まずは、医療介護システムの価値(存在意義)を、ステークホルダーの間で再認識する必要がある。その価値をUHCの理念も絡めて一言で表すと、「安定供給」となる。享受をしているからこそ認識できる価値(診療)のみならず、失ってみて初めてわかる価値(健康)は、この概念で整理がなされる。このように考えると、医療価値等を評価し関係者で共有することは、国民や患者の負担の議論のみならず未来に向けた医療介護のかじ取り(意思決定)に

おいて、計り知れない意義がある。さらに、価値に見合った行動変容を促える。特に、アドヒアランスの見える化とそのコントロールは、健康寿命や社会経済に大きな恩恵をもたらすと期待される[](図2)。

最近、医療保険制度に導入された効用値をアウトカム指標とする費用対効果評価や、介護保険制度に導入された介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進は、間接的ながらも、上記のようなコンセプトに連なる施策であると想像される。

文 献

1) Tomoyuki Takura, Hiroko Miura. Socioeconomic Determinants of Universal Health Coverage in the Asian Region. Int. J. Environ. Res. Public Health. 2022; 19(4):2376.

2) ユニバーサルヘルスカバレッジと医療革新. 東京大学22世紀医療センターシンポジウム. 2023. http://sympo-ut-22c.umin.jp/2023/pdf/2023-4.pdf (Access: 2023.03.07)

3) 田倉智之. 医療の価値と価格-選択と決定の時代へ. 東京. 医学書院; pp.0-276. 2021

4) Tomoyuki Takura, Keiko Goto, Asao Honda. Development of a predictive model for integrated

medical and long-term care resource consumption based on health behaviour: application of

healthcare big data of patients with circulatory diseases. BMC medicine. 19(1):15. 2021.

 

 

田倉 智之(たくら・ともゆき):博士(医学)、修士(工学)東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授。1992年に北海道大学大学院工学研究科修了。東京大学医学部の研修を経て、2010年より大阪大学大学院医学系研究科 特任教授。2017年より現職。厚生労働省(中医協)費用対効果評価専門組織 委員長、内閣府 客員主任研究官、大阪大学医学部招聘教授、東邦大学医学部客員教授、日本循環器学会 Circulation Reports Associate Editor、日本心臓リハビリテーション学会 評議員など歴任。

 

 

 

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)8月1日

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)8月1日

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【新聞8月号】

【1面】

1.要件緩和を要請 CAD/CAM・ニッケルチタンの加算など
2.2024年度診療報酬改定 中医協で議論始まる
3.物価高騰対策支援 各自治体で支援始まる
4.「探針」
5.ニュースビュー

【2面】

6.オン資「義務化」撤回訴訟 争点は法律の委任
7.指導結果通知の遅れが改善 会員の切実な声が実る
8.第52回保団連夏季セミナー
9.2022年歯科疾患実態調査 8020達成率は51.6%で微増

【3面】

10.社会医療診療行為別統計 検査増 初診・再診減
11.第1回学術研究会 認知症を〝口〟から支えるには
12.新規開業医講習会を開催 新規個別指導を中心に解説
13.第1回これから始める歯科訪問診療講習会~保険請求の基本
14.院内感染防止対策講習会を開催
15.お知らせ/8月1日以降書籍購入時送料が変更

【4面】

16.経税Q&A第407・インボイス制度~よくあるご質問をご紹介します!~
17.IT相談室「マイナンバーカードの不具合 何が起きているのか?」
18.第1回東京都歯科医師認知症対応力向上研修
19.8月会員無料相談

【5面】

20.研究会・行事ご案内

【6面】

21.インタビュー/新井麻衣子氏「能楽師にして三児の母」

【7面】

22.東京歯科保険医協会50周年記念企画

【8面】

23.教えて!会長!!vol.73「電子カルテ 3」
24.通信員便りNo.136
25.暑中見舞い名刺広告

【9面】

26.症例研究「歯科診療特別対応加算」

【10面】

27.連載「歯科界への私的回想録⑪」
28.理事会だより「第6・7・8回理事会」
29.7月協会活動日誌
30.会員優待ご案内
31.デンタルブックご案内
32.保団連情報サービスのご案内

【11面】

33.Health Care⑥完田倉智之氏/訪日外国人の診療対応
34.当選おめでとうございます!! 高級ステーキ肉をゲット
35.共済部だより

【12面】

36.神田川界隈(松島良次/目黒区)
37.第2回メディア懇談会 3年半ぶりリアル開催
38.「よい歯」東京連絡会が夏の市民講演会
39.第23回IPPNW世界大会
40.協会設立50周年を迎え 「回顧」

【談話】次期診療報酬改定に向けて~診療側の視点に立った適切な評価を〜/社保・学術部長

次期診療報酬改定に向けて~診療側の視点に立った適切な評価を〜

7月12日に開催された中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の2024年度診療報酬改定に向けた「歯科医療について(その1)」の議論の中で、支払側より「予防的な部分に保険診療の領域が拡大していくことに強い問題意識を持っている」という発言があった。

確かに、国民健康保険法の第二条には、「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする」とある。そのため、健康保険は疾病等、あくまで診断に至ったものに対して給付されるべきものという考えが根強いのだろう。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則の第一条 療養の給付の担当の範囲に「診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療」とあり、これも疾病を前提にした記載である。

しかし、歯周疾患や口腔機能低下症など、「歯科疾患の重症化予防」が重要視されていることは周知の事実である。これからの歯科医療には、疾病の進行を抑制するためにも「重症化予防」の視点を積極的に取り入れていくことが求められている。

診療側より出された意見について、「施設基準の重複」の整理が必要なこと、口腔機能や口腔疾患に大きな影響を与える全身的な疾患等において医・歯・薬のより深い「医療連携を深める」ことができるよう検討すること、また要件の緩和はあったものの、1998年より長期にわたり評価が据え置かれていた「歯科衛生実地指導料」についても、この間の社会情勢の変化や人件費の高騰に対応した適切な評価をすべきである。

前述の「重症化予防」にも繋がるが、口腔機能管理の中で行われる機能の獲得や維持、機能が低下した場合には、回復および向上のための「訓練に対する評価がない」ことに対しても意見が出されている。また、歯科用材料については、支払側も診療側も市場価格に左右されない非金属の新しい材料を積極的に活用すべきと意見が一致しているようである。これらの診療側の意見は、今後の歯科保険医療を充実させるために重要な視点ばかりである。

これからの歯科医療は「重症化予防」を抜きに、国民に対する歯科医療提供体制の構築はできないのではないか。また診療側から出された意見も、国が推進する地域包括ケアを含めたこれからの歯科医療には不可欠な検討課題であり、より歯科保健医療を充実させることを念頭に置いた議論を今後の中医協に期待したい。

2023年7月28

東京歯科保険医協会

社保・学術部長 本橋昌宏

談話「次期診療報酬改定に向けて ~診療側の視点に立った適切な評価を〜」

7月12日に開催された中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の2024年度診療報酬改定に向けた「歯科医療について(その1)」の議論の中で、支払側より「予防的な部分に保険診療の領域が拡大していくことに強い問題意識を持っている」という発言があった。

確かに、国民健康保険法の第二条には、「国民健康保険は、被保険者の疾病、負傷、出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものとする」とある。そのため、健康保険は疾病等、あくまで診断に至ったものに対して給付されるべきものという考えが根強いのだろう。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則の第一条 療養の給付の担当の範囲に「診察、薬剤・治療材料の支給、処置・手術その他の治療」とあり、これも疾病を前提にした記載である。

 しかし、歯周疾患や口腔機能低下症など、「歯科疾患の重症化予防」が重要視されていることは周知の事実である。これからの歯科医療には、疾病の進行を抑制するためにも「重症化予防」の視点を積極的に取り入れていくことが求められている。

 診療側より出された意見について、「施設基準の重複」の整理が必要なこと、口腔機能や口腔疾患に大きな影響を与える全身的な疾患等において医・歯・薬のより深い「医療連携を深める」ことができるよう検討すること、また要件の緩和はあったものの、1998年より長期にわたり評価が据え置かれていた「歯科衛生実地指導料」についても、この間の社会情勢の変化や人件費の高騰に対応した適切な評価をすべきである。

前述の「重症化予防」にも繋がるが、口腔機能管理の中で行われる機能の獲得や維持、機能が低下した場合には、回復および向上のための「訓練に対する評価がない」ことに対しても意見が出されている。また、歯科用材料については、支払側も診療側も市場価格に左右されない非金属の新しい材料を積極的に活用すべきと意見が一致しているようである。これらの診療側の意見は、今後の歯科保険医療を充実させるために重要な視点ばかりである。

 これからの歯科医療は「重症化予防」を抜きに、国民に対する歯科医療提供体制の構築はできないのではないか。また診療側から出された意見も、国が推進する地域包括ケアを含めたこれからの歯科医療には不可欠な検討課題であり、より歯科保健医療を充実させることを念頭に置いた議論を今後の中医協に期待したい。

7月28
東京歯科保険医協会
社保・学術部長
本橋昌宏

<7月30日締切>医療用物資の配布について

東京都保健医療局にて医療用物資の配布の申請を7月30日まで受け付けています。

なお、東京都保健医療局への申請は東京都の医療機関に限ります。

他道府県の医療機関については所轄の保健局へお問い合わせください。

概要は以下の通りです。

【使用用途】
今夏の感染拡大に向けたものではなく、今冬に向けた対応等のためのもの。

【配布する個人防護具】
(1)N95マスク
(2)アイソレーションガウン
(3)フェイスシールド
(4)非滅菌手袋
※100枚単位での申請です。

【配送予定期間】
厚生労働省より9月以降配送を開始し2023年12月中に配送完了予定 

【申請期限】
2023年7月30日(日曜日)23時59分(厳守)

【申請フォーム】
申請はこちらから

【問い合わせ先】
東京都保健医療局感染症対策部医療体制整備第一課 物資管理担当(03-5320-4214)

 

※多く寄せられているご質問について

Q上限はありますか。

A上限はありませんが、一度に受け取れるだけの注文にしてくださいという回答を得ています。周りはどれくらい頼んでいますかという質問もありますが、上限はありませんので、必要な分をご申請ください。

 

Q100単位で頼むというのはどういうことか。

A100単位なので、100、200、300・・・といった形での注文になります。

歯科医院におけるインボイス制度について

2023年10月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まります。

歯科医院におけるインボイス制度について東京歯科保険医新聞2023年4月号折り込みチラシにてお知らせをいたしました。4月号折り込みチラシは以下のリンクよりご確認いただけます。

4月号の折り込みチラシはこちら

インボイス制度とは課税売上に係る消費税の集計額から課税仕入に係る消費税の集計額を差引控除して、消費税として申告納税するシステムです。
課税売上とは、消費税が課税される売上のことです。歯科医療機関では、自費収入、金属買取売上、健診事業団体(歯科医師会,市区町村,企業等)からの報酬などがあげられます。
インボイス制度が始まると、消費税の計算において仕入税額控除できるのは、消費税法に規定するインボイスを保存しているものに限られます。インボイス発行事業者として登録をすると課税事業者に登録する必要があり、免税事業者の場合、納税負担が増える可能性があります。

また、歯科医院の請求書発行先の多くは「患者」になるため、発行先がインボイスを必要としないケースが非常に多いと考えられます。まずはご自身が課税事業者にあたるか、免税事業者にあたるかを確認し、インボイス発行事業者に登録するかをご検討ください。

 

また、2023年8月31日にインボイス制度研究会を行います。詳細は以下の通りです。

テーマ:インボイス制度研究会

講 師:枇杷阪隆貴税理士(税制経営研究所)

日 時:2023年8月31日19:00~21:00

対 象:会員、会員診療所の経理担当者

定 員:25名

参加費:無料

場 所:東京歯科保険医協会会議室

予 約:こちらをクリックしてからご予約ください

都内歯科技工所の皆様へ アンケートにご協力ください

現在、歯科技工所が大変な状況にあることがマスコミなどで度々取り上げられています。低収入・経営難が恒常化し、若手技工士の離職率も高い状態が続いており、歯科技工士養成学校の閉鎖も相次ぐなど、10年後には歯科技工の担い手がいなくなるのではとの指摘もあります。

この様な状況に対し、当協会では歯科医師の最大のパートナーである歯科技工士及び歯科技工所が置かれている問題の解決に向け、2020年に行ったアンケート結果の周知や国や都に歯科技工士及び歯科技工所の待遇改善の要請などを行ってきました。

前回のアンケートから3年が経過し、この間、新型コロナウイルス感染症や物価の高騰等の影響により、歯科医業界全体も苦しい状況が続いております。このような情勢下における問題解決には、歯科技工所の現状を理解・共有することが必要であると考え、この度、都内歯科技工所の皆様にアンケートをお願いし、忌憚のない意見を拝聴したいと考えております。

都内歯科技工所の皆様には9月初旬にアンケートを送付いたしますので、ぜひご協力をお願いいたします。

なお、アンケート結果についてはホームページにて公表するとともに、行政への要請活動や学会発表などに活用する予定です。

また、前回アンケート結果については下記リンクよりアクセスできます。

前回アンケート結果はこちら

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)7月1日

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)7月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)7月1日

【新聞7月号】

【1面】

1.第51回定期総会を開催 坪田有史会長が信任され4期目に
2.マイナ保険証厚労省調査 「メリット実感なし」56%超
3.「探針」
4.ニュースビュー

【2面】

5.第51回定期総会記念講演 社会保険診療報酬支払基金理事 山本光昭氏「保健医療の中での歯科分野への期待」
6.第51回定期総会「決議」
7.「骨太方針」閣議決定
8.今回選出された役員一覧《任期は第53回定期総会まで》
9.第51回定期総会祝電・メッセージ等一覧

【3面】

10.保険証廃止はありえない!国会内集会「命につながる問題」各団体が訴え
11.「保険でよい歯」を東京連絡会が議員要請
12.今年度は6件実施予定 生活保護の指導計画
13.都が歯科医療機関に1万円支給へ 物価高騰対策支援の要請が実る
14.7月金銀パラジウム合金等の随時改定 金パラは引き下げ14Kは引き上げ
15.会員優待ご案内

【4面】

16.経営・税務相談Q&A No.406 年次有給休暇夏季休暇にあてられる?
17.7月会員無料相談

【5面】

18.研究会・行事ご案内
19.「デンタルスタッフのための歯科保険診療ハンドブック2023年版」のご案内

【6面】

20.インタビュー/堤未果「『何のため』議論なくデジタル化進む日本 ショック ・ ドクトリンに見る保険証廃止問題『立ち止まって』」

【7面】

21.オン資トラブル事例アンケート「保険者情報の反映不備」が最多 メディアから相次ぐ反響
22.オンライン請求「義務化」方針の撤回を求める要請署名316筆を国会議員に
23.全国保険医写真展 2氏が入選
24.協会設立50周年を迎え「回顧」
25.書籍のご案内&読者プレゼント「堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法」

【8面】

26.教えて!会長!! Vol.72「電子カルテ」とは その2
27.施設基準のための講習会を開催認知症や多職種連携等の重要性確認
28.歯科技工士・中川直樹さんに総理表彰 国際アビリンピック金メダリスト
29.接遇講習会に58人が参加 「接遇の5原則」を伝授
30.休業保障制度/開業医・勤務医の先生へ
31.共済部だより

【9面】

32.症例研究「咬合調整と口腔内装置の再製作」

【10面】

33.連載/歯科界への私的回想録⑩(オクネット・奥村勝氏)「口蓋裂診療の〝チーム医療〟から学ぶ…」
34.第3回保団連代議員会 保険証廃止問題で今後の対応討議
35.理事会だより「2023年度第第4・5 回(暫定)理事会」
36.6月協会活動日誌

【11面】

37.Health Care④(田倉智之/東京大学大学院 特任教授)/新興感染症の…
38.不安払拭が大前提 マイナトラブル今秋まで総点検も
39.通信員便り № 135
40.お知らせ 【8月1日以降】書籍購入時の送料が変更となります

【12面】

41.ご協力ありがとうございました<国会議員に署名提出>【要請】健康保険証廃止・・・
42.神田川界隈/歯科技工士がいなくなる前に(森元主税理事/北区)
43.「思い切って患者さんに説明を」署名取り組んだ会員の想い
44.夏季休診ポスターのご案内
45.50周年記念企画

<歯科医療機関が利用できる物価高騰対策>各自治体まとめ(協会把握分)

2023年7月14日時点で協会が把握している23区の歯科医療機関でも利用が可能な物価高騰対策をまとめています。

支援金:青梅市(10万円) 葛飾区(10万円)(受付終了) 

融資:葛飾区、品川区、江東区、荒川区、目黒区、北区

概要は各区のHPにてご確認ください。以下リンクです。(リンク切れ等がございましたらお知らせください)

 

(支援金)

青梅市(申請期限:2024年3月31日まで)

医療機関等に対する物価高騰支援給付金(青梅市の歯科診療所に10万円の支援)

https://www.city.ome.tokyo.jp/soshiki/32/69406.html

 

葛飾区※受付終了

葛飾区福祉施設等経営安定化支援金(葛飾区の歯科診療所に10万円の支援)

https://www.city.katsushika.lg.jp/business/1000011/1000069/1032468.html

 

(融資)

葛飾区

物価・原油価格高騰等対策緊急(借換)融資

https://www.city.katsushika.lg.jp/business/1000011/1030233/1000071/1029777.html

 

品川区

物価高騰等総合支援資金

https://www.mics.city.shinagawa.tokyo.jp/yushi_sodan/yuushi/2339.html

 

江東区

原油価格・物価高騰対策資金(限度額1,000万円)

https://www.city.koto.lg.jp/102010/genyukakakubukkakoutou.html

 

荒川区

経済急変対応融資(原油価格・物価高騰等対応)

https://www.city.arakawa.tokyo.jp/a021/yushi.html

 

目黒区

物価高対応等融資支援金

https://www.city.meguro.tokyo.jp/smph/kurashi/shigoto/enjo/r5yushishienkin.html

 

北区

北区原油価格・物価高騰対策緊急資金

https://www.city.kita.tokyo.jp/sangyoshinko/yushi_josei/bukkakoutou.html

 

 

必要な方は診療所の所在する各自治体へお問い合わせください。

また、各自治体で行われている支援策などをご存じでしたらぜひお寄せください。

【インタビュー】堤未果(ジャーナリスト)「何のため」議論なくデジタル化進む日本/ショック ・ ドクトリンに見る保険証廃止問題 「立ち止まって」

▶堤未果さん(ジャーナリスト)のインタビュー全文を読む

▼書籍プレゼントのご案内(会員限定)/「堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法」

 

 

 

 

過去のインタビューはこちらから

新型コロナウイルス感染症 マスク着用に関する院内掲示ポスター

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の取り扱いが5月8日以降、2類相当から5類に変更されたことで、会員の先生方から患者さんに対するマスク着用に関する対応についての相談が増えております。

厚労省から発出されている資料では、マスク着用は個人または事業主の判断に委ねるとされています。

https://www.tokyo-sk.com/wp/wp-content/uploads/2023/06/1365f09f80d114691ab589872e841324.pdf

協会では、マスク着用について、各歯科医院でご利用いただける院内掲示ポスターを作成しました。

 

マスク着用

マスク着用2

マスク着用3

マスク着用4

マスク着用5-2

マスク着用6

 

用途に応じてご活用ください。

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)6月1日

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)6月1日

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【新聞6月号】

【1面】

1.マイナ保険証にトラブル続出/健康保険証廃止は撤回を!
2.地域医療に悪影響「閉院に追い込まれる医院も」
3.東京歯科保険医協会2023年度第51回定期総会のご案内/記念講演案内
4.「探針」
5.ニュースビュー

【2面】

6.社保・学術部長談話「〜現場の声を反映し、医療機関側に裁量権を与えよ〜」
7.オンライン請求「義務化」方針の撤回を求める署名にご協力を―現場の声を…
8.改定時期は今夏までに決定/診療報酬改定DX対応方針を提示
9.7月歯科用貴金属価格改定/金パラは引き下げ
10.治療薬治療薬「シダキュア」歯科医療機関が注意喚起
11.保団連情報サービスのご案内

【3面】

12.2023年度指導計画/新規個別指導の予定件数 前年比133件増加
13.教えて!会長!!Vol.71「電子カルテ」とはその1
14.会員寄稿 「声」/かかりつけ歯科医」の色~子ども編~(長尾広美氏)
15.50周年記念企画/これからの歯科を考える…

【4面】

16.経営・税務Q&A第405回「テナントオーナーから家賃の値上げの通知が来た」
17.6月会員無料相談
18.書籍紹介「デンタルスタッフのための歯科保険診療ハンドブック2023年版」

【5面】

19.研究会・行事ご案内

【6面】

20.インタビュー/荻原博子氏「健康保険証廃止、情報の中央集権化/今のやり方は危険」

【7面】

21.第三次オン資「義務化」撤回訴訟/原告団へのご参加を
22.オン資「義務化」撤回訴訟/第二次訴訟で原告団結成集会
23.マイナ保険証・オン資システム/トラブル報道相次ぐ 阿部理事にテレビ取材も
24.心底考えたのは「患者さんの不自由な思いを防ぎたい」/署名525筆を持参
25.協会設立50周年を迎え「回顧」

【8面】

26.Health Care③(田倉智之/東京大学大学院 特任教授)/アドヒアランスを制する…
27.共済部だより/グループ生命保険・保険医休業保障共済保険・保険医年金
28.第2休保2023年度募集キャンペーンのご案内
29.書評:日本歯科評論/別冊「CAD/CAM冠 CAD/CAMインレー」

【9面】

30.症例研究「糖尿病患者の歯清と総医、混合歯列期のP重防」

【10面】

31.連載/歯科界への私的回想録⑨(オクネット・奥村勝氏)「協会の歴史と存在性」
32.世田谷地区は警戒を厳に/歯科診療所狙う窃盗事件多発~身の安全を最優先に
33.理事会だより「2023年度第1・2回(暫定)理事会」
34.5月協会活動日誌

【11面】

35.全国から集めた署名 67万余を国会に提出
36.オンライン請求〝義務化〟をすれば歯科は大変なことに
37.署名へのご協力ありがとうございました
38.IT相談室「初心者向けIT用語を解説」/クレセル・永田氏
39.会員優待ご案内
40.デンタルブックご案内

【12面】

41.2023年度第1回メディア懇談会/健康保険証廃止の問題点を指摘
42.通信員便りNo.134
43.8月1日から書籍購入時の送料が変更となります
44.お詫びと訂正
45.神田川界隈/過渡期(川戸二三江副会長/渋谷区)

【13・14面】

46.共済部折込(第2休業保障制度)

第51回定期総会「決議」

国は、医療DX(Digital Transformation)を進めており、マイナンバーカードの導入を理由に2024年秋に健康保険証を廃止するマイナンバー法等の一部改正法案を成立させた。自動的に交付される健康保険証と異なり、施設に入居している患者などマイナンバーカードによる資格確認を受けることができない方は資格確認書の申請が必要であり、申請漏れによる無保険者を続出させる危険性をはらんでいる。国民皆保険制度の根本をゆるがす問題であり、国民誰しもが保険診療を受けられるように健康保険証の廃止はするべきではない。

また、当協会も実施した全国保険医団体連合会のアンケートでは、「他人の情報が紐づけられていた」ケースが少なくとも37件あるなど、オンライン資格確認システム自体にも深刻なトラブルが発生していることが明らかになった。不完全なシステムであれば検証と修正をするべきであり、改善されないまま導入義務化を継続するべきではない。

さらに、歯科の半数以上が電子媒体で診療報酬を請求している中で、20244月よりオンライン請求の義務化が検討されている。しかし、電子レセプトの提出方法を郵送ではなくオンラインに限定する審査上の必要性はなく、医療機関側には移行に伴うコストが生じる一方で、利点としては審査機関側の事務コスト削減しかない。このように、医療機関側のみに不利益を生じさせる施策は直ちに止めるべきである。

他方、医療機関の経営をみれば、物価高が深刻な影響を及ぼしている。コストを踏まえた診療報酬の引き上げを、次期診療報酬改定で行うことが必須である。

国が推し進めている安心安全な医療の提供を脅かす動き、そして人の命を奪う戦争や核兵器使用で諸国を威嚇するいかなる行動に断固反対し、国民の生活と歯科医療のより一層の充実に向けた運動を国民とともに力を合わせ、推進するために、以下の要求を国民、政府及び歯科保険診療に携わる全ての方に表明する。

一.国は、現行の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする日本の社会保障制度を更に充実させること。

一.国は、健康保険証を存続させ、オンライン請求およびオンライン資格確認システムの導入義務化を撤回すること。

一.国は、物価高騰を踏まえ、診療報酬の引き上げを行うこと。

一.私たち歯科医師は、平和を妨げるすべての動きに反対する。

 

2023年6月18日

東京歯科保険医協会

第51回定期総会

第51回定期総会会場の風景

協会が第51回定期総会を開催/会長に坪田有史氏を互選・4期目に/副会長に早坂・本橋の2氏が新任

協会は2023618日、中野区の中野サンプラザにおいて、第51回定期総会を開催した。今総会を迎えるに当たり会員数は6000名を超え、新たな一歩を踏み出すにふさわしい総会となった。

総会には、役員と一般会員の39名が出席。委任状は1057名、両者を加えると1096名の参加となり、総会成立要件である会員数の10%を満たし、総会は成立した。

総会冒頭で挨拶に立つ坪田有史会長

また、役員改選が行われ、規約に基づき、総会で理事22名と監事2名の合計24名を選出した。さらに、理事の中から会長および5名の副会長を総会後の第6回臨時理事会で互選。会長には坪田有史氏が選出されたほか、副会長には川戸二三江氏と松島良次氏の交代に伴い、早坂美都氏、本橋昌宏氏の2氏が新任され、今後の協会活動への抱負を述べた。

 

 

記念講演で講師を務めた山本光昭氏

総会終了後は、社会保険診療報酬支払基金理事の山本光昭氏による記念講演「保健医療に係る最近の話題と歯科分野への期待」を行った。

 

 

 

なお、昨年と同様、新型コロナ禍での開催となったため、懇親会は開催せず、総会と記念講演のみの開催とした。

第51回定期総会会場の様子

 

 

 

 

 

 

 

予定していた以下の議案6本は、すべて承認された。

【議案】

・第1号議案:2022年度活動報告の承認を求める件

・第2号議案:2022年度決算報告の承認を求める件/付:会計監査報告

・第3号議案:2022年度活動計画案承認の件

・第4号議案:2023年度予算案承認の件

・第5号議案:役員改選の件

・第6号議案:決議採択の件

なお、第6号議案では「決議(案)」は賛成多数で採択された。

【理事・監事・顧問紹介(五十音順・敬称略)/役職名・氏名(開業地)】

◆会 長(1名):坪田有史(文京区)

◆副会長(5名):加藤開(豊島区)、馬場安彦(世田谷区)、早坂美都(世田谷区)

本橋昌宏(荒川区)、山本鐵雄(大田区)

◆理 事(16名): 阿部菜穂(江東区)、池川裕子(葛飾区)、岡田尚彦(世田谷区)、川本  弘(足立区)、川戸二三江(渋谷区)、呉橋美紀(大田区)、相馬基逸(品川区)、高山史年(豊島区)、橋本健一(東村山市)、濱﨑啓吾(練馬区)、半田紀穂子(台東区)、福島崇(大田区)、松島良次(目黒区)、森元主税(北区)、矢野正明(板橋区)、横山靖弘(港区)

◆監 事(2名):西田紘一(八王子市)、藤野健正(渋谷区)

◆顧 問(1名):中川勝洋(港区)

新たに互選された新役員の面々

【IT相談室】初心者向けIT用語を解説

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回のテーマは、診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?
―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 ここ最近の本連載では、レセコンやオンライン資格確認システムの管理、運用上のポイントや、サイバー攻撃に関する内容を執筆してきました。一方で、会員の先生方から「クラウド、サーバー、何のことやら理解できず…」「初心者もわかるような解説がほしい!」「用語が難しくて大変」というご意見をいただいています。
そこで今回は、インターネットやWEBに関連した基本的な用語を解説してみたいと思います。たくさんの用語があるので、この連載だけでは書ききれませんが、ネット関係の業者との打ち合わせや、自院のネット環境を整える時のためなど…何かのきっかけになればと思います。それではどうぞ。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年6月号11面掲載)

【IT相談室】診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回のテーマは、診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?
―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 診療室のレセコンに限らず、個人で使用しているパソコンからUSBを介して他のパソコンとファイルを共有する場合には、ウイルス感染のリスクが常に存在します。特に、「入れた記憶の無いどこかで見たことのあるアイコン」が入っていた場合には、ウイルス感染が懸念され、USBを媒介とした感染である可能性があります。
 このようなUSBの使用による感染を回避するためには、以下の注意点を守ることが重要です。
まず、ウイルス感染のリスクを軽減するために、USBを使用する前には必ずウイルススキャンを実行し、USBそのものがウイルスに感染していない安全な状態であることを確認する必要があります。また、ファイルを共有する際には、共有先のパソコンがウイルス対策ソフトウェアで保護されていることが大切です。万が一、USBが感染している場合でも、ウイルス対策ソフトウェアがパソコンを感染から守ってくれます。
 ウイルスに感染してしまうと、センシティブな医療情報が含まれるレセコンのデータが漏洩するリスクがあります。漏洩した情報が悪用された場合、患者や社会からの信頼を失いかねません。そのため、パソコン間でファイルを共有する場合には、細心の注意を払うことが必要です。マルウェアと言われる悪意を持ったウイルスに感染した場合、情報漏洩のほか、医療情報を含むデータが改ざんされたり、削除されたりする可能性があります。このようなことになると、患者の医療に影響が出るだけでなく、法的な問題にも発展する可能性があります。
 最後に、共有するファイルが機密情報である場合には、暗号化することでセキュリティを強化することができます。暗号化することで、不正アクセスや盗聴などからファイルを保護することもできます。
 以上の注意点を守ることで、USBを介してファイルを共有する際のウイルス感染やセキュリティリスクを軽減できます。しかし、完全にリスクを排除することは困難であるため、機密情報の入ったPCにはUSBをはじめ外部からのアクセスを一切排除する業務の流れが最高の対策です。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年5月号11面掲載)

【IT相談室】レセコンをクラウドで管理する場合のメリットとデメリット

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回はレセコンをクラウドで管理する場合のメリットとデメリット
について―。

「IT相談室」過去の連載はこちらから

 歯科診療所の心臓部ともいえるレセコンの運用、データをどのように管理するのかは永遠の課題かもしれませんが、近頃はクラウド形式で運用管理される人が増えてきました。そこで今回は、クラウド管理のメリット、デメリットを考えてみます。
 まず、メリットですが、院内のサーバー等がなくなることで設備が簡略化されるため、コストダウンに繋がる可能性があります。クラウド専用のセキュリティが考慮された回線が必要になる場合もありますが、それを差し引いてもコストは下がります。すべてクラウド上で常に最新の状態になっていますので、レセコンメーカーの方が来訪しての作業、電話やメールなどを利用したアップデートなどは必要なくなり、煩わしい作業や時間等の拘束からも解放されることでしょう。
 そして、これまで院内で物理的に保管されていたデータが常にさらされてきた火災、水害、事故などの脅威、盗難などによる紛失という危険性。これらはクラウド化によって払拭されるため、心理的にも大きなメリットではないでしょうか。
 デメリットは、データはクラウドでもそこに接続する回線が通じていなければアクセスできないということです。接続が不安定なケースや、回線の障害が発生した時には、その段階からレセコンには一切アクセスできなくなります。忙しい時間帯に回線の不調でアクセスできなくなった時、レセコン業者と回線業者に対して別々に連絡をするなどの対応を誰がどのように行うか、予め決めておいたほうが良いでしょう。また、クラウドは外部にあるコンピュータですので、操作に若干の遅さを感じることがあります。このちょっとした遅れをものすごく大きなストレス、業務時間のロスと考える方もいらっしゃると思います。導入前に、必ず一度はデモンストレーションを実施すべきです。
 そして何よりも、クラウドという〝保管庫〟に障害が発生して「データがなくなる、漏えいする」というリスクも考えなければなりません。IT業界では有名なエピソードですが、2012年に、あるレンタルサーバー企業がアップデート作業時に誤って顧客データをすべて削除するという事故がありました。データは復旧することができず、顧客は大きな損害を被りました。しかし、月々の使用料が返還されただけで、それ以上の補償がないという状況で、顧客にとって大きなダメージが残る事故となりました。 
 レセコンをクラウドで管理する際には、既に導入している診療所が、万が一の時の備えをどのようにしているのかを、必ず確認してみてください。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2023年4月号4面掲載)

【教えて!会長!! Vol.71】 「電子カルテ」とは その1

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 「医療DX令和ビジョン2030」をさらに教えてください。

 前号で、自由民主党の政務調査会が昨年5月に発表した「医療DX令和ビジョン2030」の提言の概要を紹介しました。その中で「電子カルテ」に触れましたが、詳細を知りたいとの会員の声が多数ありました。そこで今回は、「電子カルテ」の現状を取り上げます。
「医療DX令和ビジョン2030」では、日本の医療分野の情報の問題点や課題を根本から解決するため、
①「全国医療情報プラットフォーム」の創設
②電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)
③「診療報酬改定DX」
以上3つの取り組みを同時並行で進めるとしています。

電子カルテ情報の標準化とは。

 当然ですが、まずは医科がターゲットです。しかし、歯科も電子カルテを推進することになっています。電子カルテ情報の標準化とは、国際基準になりつつある標準規格準拠(HL7 FHIR規格でのデータ・情報ができる)を活用して、共有すべき項目の標準コードや交換手順を厚労省が定めます。すなわち、一般診療現場での必要な情報の標準化(統一)を行政側が明確に示すことを指しています。
 表に、厚労省の医療施設調査から電子カルテの普及率を示しました。直近の2020年では、歯科診療所における電子カルテの普及率は48・7%となっています。驚きませんか?データでは半数近くがすでに電子カルテを導入していることになっています。行政の調査結果です。本当なのでしょうか。
 レセコンと電子カルテを間違えて回答しているのでは?と思ってしまいます。そうでないと、私の周囲の状況と整合性が取れません。レセコンと電子カルテは違うのです。これらのデータは厚労省からのもので、データ通りに歯科の半数近くが電子カルテを導入しているならば、あと半分だから高いハードルではないと、厚労省が都合よく考えて義務化するのではと懸念しています。

レセコンと電子カルテの違いは。

 紙面の都合上、このご質問は次号で詳細に回答しますが、レセコンはレセプトを作成することを主目的にしています。これに対し電子カルテとは、患者さんの情報を電子データとして保存するもので、すべての情報が一元管理されます。特に、電子カルテには「タイムスタンプ」があります。「タイムスタンプ」とは、入力された時間が記録されることを指します。したがって、カルテ入力を行った後に、整備のための入力を行うと、治療の流れとは違う不自然なタイムスタンプが刻印され、不正請求が疑われる危険性があります。この機能がレセコンにはないことが、もっとも大きな違いです。
 5月17日の参議院地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会(本紙1面参照)などを契機にして、その後のテレビや新聞などのメディアが、「マイナ保険証」「オンライン資格確認システム(以下、オン資)」などを取り上げ、その問題点を指摘しています。東京保険医協会(須田昭夫会長)が中心となって起こした「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」は、1千名を超える原告団となりました。そして、現在第3次訴訟の原告団への参加を呼びかけています(本紙7面)。オン資により回線ネットワークを構築させた上で、オンライン請求の義務化、そして標準化した電子カルテで情報を瞬時に集めることを目標としていることが示されています。そうです。すべての入り口はオン資義務化なのです…。

東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2023年6月号3面掲載)

【教えて!会長!! Vol.70】 自民党の提言 「医療DX令和ビジョン2030」

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自民党の提言「医療DX令和ビジョン2030」がニュースになっていましたが。

 政権与党である自由民主党の政務調査会は、昨年2022年5月に「医療DX令和ビジョン2030」の提言(以下、「提言」)を発表しています。そしてさらに本年4月13日付けで、同提言の実現に向けた新たな提言「(同提言の)実現に向けて〜保健医療情報のデジタル活用により、すべての国民が最適な医療を受けられる国へ〜」をまとめました。
 自民党の提言は、政府に対して強い影響力があり、また政策を進めるために発出されますので、医療機関にとっての今後の方向性を見据えるうえで注目すべきと思います。

提言、そのほかについて教えてください。

 現在、「マイナンバーカード普及」「マイナンバーカードの健康保険証利用」「オンライン資格確認義務化(以下、「オン資」)」「マイナポータル活用」「オンライン請求義務化」「電子処方箋導入」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」「医療DX」の推進などは、具体的な政策として進められています。これらは実際、日々の歯科臨床に直接関係がないため、拒否感を持っている先生が少なくないと思います。
 この中で「医療DX」を厚労省は、「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療、薬剤処方、診断書などの作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義できる」としています。そこで自民党の「提言」の概要を示します(表参照)。


 政府では昨年10月に総理を本部長とする「医療DX推進本部」を設置しました。この政府の動きを踏まえ、自民党政務調査会などは医療DXの取組みを力強くかつ速やかに進めるべく、本年4月に「実現に向けて」の提言を発表したのです。
その主な内容は、以下の4項目となっています。

(1)グランドデザイン:医療DXを通じたより効果的かつ効率的で質の高い医 療の提供の実現など
(2)ガバナンスの強化:厚労省の司令塔機能を有する部署の確保など
(3)全国医療情報プラットフォーム:オンライン資格確認などシステムの拡充など
(4)電子カルテ情報の標準化など:標準化に関する集中的な取組みの実施など

 要は、すべて前述した進行中などの案件は既に仕組まれていて「力強くかつ速やかに進める」の文言により速いスピードが求められているのです。その結果、拙速感が強く、説明不足などにより、我々医療機関、そして国民の多くがついていけないのが現状ではないでしょうか。
 今後、歯科においても「オンライン請求」「電子カルテ」などの「義務化」が要求される可能性が高いと考えています。現在、協会は「義務化反対」の立場で様々な活動を行っていますが、提言などからさらに医療機関に押し付けてくることが推測されます。現在、「オン資」を導入されている会員へ「報告フォーム」により、トラブル事例を募っています。さらに多くの先生の回答結果を受けて、問題点をまとめ、よりよい改善に向けて行政などに訴えます。
 この「報告フォーム」は、すでにデンタルブックメールニュースでお知らせしています。また、協会ホームページからも回答できます。ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2023年5月号8面掲載)

談話「オンライン請求義務化の撤回を求める ~現場の声を反映し、医療機関側に裁量権を与えよ~」

3月の社会保障審議会医療保険部会において、厚労省は「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ案」を提示した。

その内容は、2024年4月以降は光ディスク等の電子媒体による請求の新規適用を認めず、現行の電子媒体でレセプト請求をしている医療機関に対して、2024年9月末までにオンライン請求への移行を原則「義務化」するものである。10月以降も電子媒体で請求(自院でレセコンを未所有で外部委託により電子媒体で請求している場合など)を継続する場合は、オンライン請求への移行計画の提出を求めて1年単位の経過措置にするとされている。また、紙レセプト請求については、レセコン未使用時の新規適用を20244月で打ち切り、4月以降も紙レセプトで請求するには要件を満たす旨の届出を改めて求めるとされている。加えて、「義務化」を強行するために2023年度中に診療報酬に関する請求省令を改正することも示している。

東京都において、オンラインで請求をしている歯科医療機関は26%に過ぎない。このような状況でありながら、昨年5月にはオンライン請求システムの不具合により、レセプト請求が一時的にできない状況が生じた。オンライン請求が一斉に施行されることになれば、システムのオーバーフローが危惧される。

このような懸念があり、現行の運用に何ら問題がないにも関わらず、診療報酬の請求方法を限定する実質的な義務化の強要は、医療機関に混乱を招くだけである。診療報酬の請求ができないとなれば、地域医療の崩壊を加速させ、医療提供に影響を及ぼす可能性があり、最終的に患者・国民へ波及しかねない。

当協会の会員からも「裁量権のない強制的な義務化は閉院を意味する」、「一方的な押し付けには断固反対する」など、義務化の撤回を求める声や裁量の自由を求める声が多く寄せられている。

国や国保連合会、支払基金などの審査等の業務効率化やレセプトデータの利活用などばかりを強調し、現場をあずかる医療機関側には全く裁量権を与えない強制的な義務化方針の撤回を強く求める。

2023年5月26
東京歯科保険医協会
社保・学術部長
本橋 昌宏

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)5月1日

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)5月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)5月1日

【新聞5月号】

【1面】

1.オンライン請求 実質的義務化の動き/「ロードマップ」と「基本的考え方」が示される
2.東京歯科保険医協会2023年度第51回定期総会のご案内
3.本会役員の任期満了に伴う役員選挙の公示について
4.「探針」
5.ニュースビュー

【2面】

6.理事会声明「政府は健康保険証廃止法案を撤回し、健康保険証の継続を」
7.政策委員長談話「診療報酬のオンライン請求義務化撤回を求める」
8.オン資の指導は猶予届出をしていない場合のみ/集団指導(eラーニング形式)で
9.オン資導入 現場はトラブル多発/実態調査アンケートにご協力を

【3面】

10.物価高騰が経営に打撃、自治体へ支援を要望/「電力料金等の高騰に関する医療機関緊急調査」を実施
11.累計参加者2千人超/院内感染防止対策講習会
12.5月8日以降のコロナ特例の取り扱い/電話等による処方は7月末で終了
13.会員寄稿「声」/強引なオン資義務化<<保険証廃止/扇山隆/江戸川区
14.会員寄稿「声」/人材難は歯科業界の共通課題/船木勝介/練馬区
15.50周年記念企画/これからの歯科を考える~今後もより一層頼りになる存在としてあるために

【4面】

16.経営・税務相談Q&A No.404/試用期間中の労務の注意点
17.「保険でよい歯を」東京連絡会2023講演会「口から見た子育て」
18.第38回 保団連医療研究フォーラム 演題発表者募集中
19.デンタルブックご案内
20.会員無料相談

【5面】

21.研究会・行事ご案内

【6・7面】

22.インタビュー/大乗寺副住職・山岨眞應氏「感性により絵の見え方は違ってくる~仏門と応挙と『頑張らずに一生懸命』」
23.グループ生命保険PR
24.会員優待PR
25.石田昌也先生投稿「経済的な心配なく生活できた」
26.「学校歯科治療調査報告書」/橋本理事が大学院生の取材を受ける

【8面】

27.教えて会長 Vol.70「自民党の提言『医療DX令和ビジョン2030』」
28.厚労省、歯科医師によるコロナワクチン接種等は終了に/通知で「特例的な取扱いを要する状況は脱した」と判断示す
29.共済春の募集キャンペーン締切迫る!
30.日本接着歯学会2023年度 学術セミナー・専門医認定研修会

【9面】

31.症例研究/歯根分割後のCAD/CAM冠

【10面】

32.連載/歯科界への私的回想録⑧(オクネット代表・奥村勝氏)「男女格差解消の示唆なるか」
33.協会設立50周年を迎え「回顧」
34.理事会だより<2022年度第21回・2023年度(暫定)第1回理事会>
35.4月:協会活動日誌

【11面】

36.Health Care②(田倉智之/東京大学大学院 特任教授)/医療価値評価は必要か、論じるのは難しいのか
37.IT相談室「診療所のPCでUSBメモリを使用すると危険なの?」
38.保険証廃止の中止に向け署名にご協力を!

【12面】

39.オン資義務化撤回訴訟/国が請求棄却求める原告団は1千人超え
40.5月8日から新型コロナ5類引き下げに
41.保険証廃止とマイナカードで質疑/不信感を強め国民皆保険制度を揺るがす
42.歯科医師2氏が再選果たす/4・23区議会議員選挙で
43.65%の歯科診療所が訪問診療
44.通信員便り №133
45.神田川界隈/次、会うときは枕元かもしれない(矢野正明理事/板橋区)

【13・14面】

46.共済部チラシ

オンライン資格確認システム 紙レセプト、経過措置期間中、トラブル防止のための院内掲示について

オンライン資格確認システム導入の義務化を免除されている紙レセプトの先生および、経過措置期間中の先生のために院内掲示ポスターを作成いたしました。

ぜひご活用ください。

 

①院内掲示ポスター(現在の健康保険証でもご受診いただけます)

 

②院内掲示ポスター(当院ではマイナ保険証の取り扱いをしておりません)

 

③院内掲示ポスター(現在システム整備中のため、マイナカードの使用はできません)

 

④院内掲示ポスター(マイナンバーカードで受診される場合は健康保険証もあわせてご持参ください)

 

過去にもマイナ保険証に対応したポスターを作成しておりますので、そちらもぜひご活用ください。

↓過去の記事はこちらから↓

マイナンバーカード保険証利用、健康保険証だけでも保険診療は可能(ポスター画像をぜひご活用ください) | 東京歯科保険医協会 (tokyo-sk.com)

保険証廃止の中止に向け 署名にご協力を!

 

▼署名用紙注文フォーム

 「現行の健康保険証」(以下「健康保険証」)の廃止などを盛り込んだマイナンバー法など関連法改正案が4月25日に衆議院特別委員会でわずか13時間の審議時間で採決された。
健康保険証が廃止されれば、マイナンバーカードを持たない患者さんやマイナンバーカードと保険証を一体化することに抵抗がある患者さんは、「資格確認書」を申請する必要がある。「資格確認書」の有効期限は最長1年間で、申請や更新を忘れてしまうと無保険状態となり、患者さんは、受診をためらってしまう危険性がある。また、更新がいつまで可能かは示されていない。
 医療機関では、マイナンバーカードの読み取り不具合やオンライン資格確認での確認内容と実際の資格に相違があるなど、トラブルが多発している(オンライン資格確認トラブル事例は2面参照)。現状であれば、トラブルが起こった場合でも健康保険証で資格を確認することができるが、廃止されてしまえば資格確認ができず、窓口で一時的に10割の負担を患者さんに求めざるを得なくなる。
 これまで問題なく使用できている健康保険証をわざわざ廃止する必要はあるのだろうか。
 健康保険証を存続させるため『健康保険証を廃止しないことを求める請願署名』を「月刊保団連」4月号に同封して送付しています。保険証廃止法案を撤回させるため、より一層のご協力をお願いいたします。1筆でも結構です。ぜひ、5月24日(水)までにご返送ください!(署名用紙注文フォーム
 

『負担増ストップ!国民の医療と介護を守る緊急請願署名』も同時に取り組んでいます!

 全国保険医団体連合会が行ったアンケートでは、75歳以上で2割負担の患者さんの16.8%が「経済的な理由による受診控えがある」と回答しています。必要な時に、必要な医療が受けられる制度を守れるよう、併せてご協力をお願いいたします。
 いただいた署名は、5月下旬に坪田有史会長より国会議員を通じて国会に提出する予定です。

 

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)4月1日

東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)4月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2023年(令和5年)4月1日

【新聞4月号】

【1面】

1.マイナンバー法改正法案/十分な論議が必要
2.第51回定期総会のご案内
3.50周年を迎え、さらなる歯科保険診療の充実へ
4.50周年記念企画/これからの歯科を考える~今後もより一層頼りになる存在としてあるために
5.「探針」
6.ニュースビュー

【2面】

7.レセプトの返戻オンライン化/変更はオンライン請求の医療機関のみ
8.中医協/診療報酬改定に向けて始動
9.2023年4月金銀パラジウム合金等の随時改定/金パラは引き下げ 銀合金などは引き上げ
10.4月薬価改定/麻酔薬等は変更なし
11.院内掲示ポスター作成

【3面】

12.Health Care①/医療介護システムの発展に不可欠な視点とは(東京大学大学院・田倉智之氏)
13.歯科衛生士養成校54.3%で定員割れの実態
14.回顧:協会設立50周年を迎え
15.HIS:会員特別優待広告

【4面】

16. 経営・税務相談Q&A第403回/インボイス制度~取引相手から登録の有無を聞かれた!~
17.IT相談室/レセコンをクラウドで管理する場合のメリットとデメリット(クレセル)
18.地域医療研究会/治療方針の提示は「リスク」と「ベネフィット」の考慮を
19.4月法律相談・経営&税務相談

【5面】

20.研修会・行事のご案内
21.会員優待のご案内
22.デンタルブックご案内

【6面】

23.支払基金理事・山本光昭氏インタビュー「審査業務の高度化目指す “AI活用”」

【7面】

24.Opinion/日経新聞編集委員・大林尚氏「『少産多死社会』への政策と対策を」

【8面】

25.「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」再診時も算定可能に
26.教えて会長No.69「オン資運用時イレギュラーへの対応」
27.オンライン資格確認システム導入後のトラブル事例報告フォーム

【9面】

28.症例研究/医療情報・システム基盤整備体制充実加算

【10面】

29.連載/歯科界への私的回想録⑦(オクネット代表・奥村勝氏)「有権者が問われる統一地方選挙&投票行動が道を拓く」
30.会員寄稿「声」/「雑感~歯科医師の冥利」(小林顕氏/板橋区)
31.理事会だより
32.協会活動日誌/2023年3月

【11面】

33.歯科医療の充実求める署名を提出
34.オン資義務化現場の状況伝える/第6回メディア懇談会
35.第116回歯科医師国家試験結果発表
36.健康保険証廃止と患者負担増共に撤回へ
37.通信員便り№132
38.春の共済募集キャンペーン

【12面】

39.新規指導控える開業医が多数受講/勤務医も参加の検討を―新規開業医講習会協会
40.神田川界隈/深刻な歯科技工所の現状/山本鐵雄(副会長/大田区)
41.医事相談研究会/法的責任と応召義務事例を交えて解説
42.医科歯科連携研究会/医科歯科連携のさらなる推進を
43.会員地区懇談会/「不安が解消できた」オン資歯科医療のデジタル化について懇談
44.第3回学術研究会/「専門医としてのプライド持ち診療に」

【教えて!会長!! Vol.69】オン資運用時 イレギュラーへの対応

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オンライン資格確認システム(以下、オン資システム)の導入が進んでいますが、トラブルが気になります。

 本年3月31日までに原則導入とされてきたオン資システムですが、経過措置の猶予届出書を出された本会会員は少なくないようです。しかし、一定期間猶予されるだけのため、オン資システムを運用している医療機関のほか、これから運用を開始する医療機関は、時間経過とともにオン資対応の機会が増加していくでしょう。
 運用開始後のトラブルについては、全国保険医団体連合会(以下、保団連)が行った調査結果を2022年11月に公表しています。この調査結果は同年12月の本紙で紹介しましたが、運用されている医療機関が増加していますので、厚労省が昨秋に示した「イレギュラーなケースへの対応」とともにお伝えします。
 また、調査結果によると、運用開始済みの医療機関のうち「トラブルがあった」と回答した中で、最も多かったのは、「被保険者情報が迅速に反映されない(有効な保険証でも『無効』と表示された)」が62%。次に多かったのは、「カードリーダーの不具合」の41%と報告されました(N=855)。どちらのトラブルも診療ができない、確認に時間がかかるなどの影響があり、患者さんの待ち時間が長くなる、治療が滞る、治療時間が短くなるなど、オン資運用前には起こらなかったトラブルが発生しています。

イレギュラーなケースへの対応方法を教えてください。

22年10月に「イレギュラーなケースへの対応の整理について」として5つのケースが厚労省から示されています。ここでは発生する可能性が高い3つのケースを取り上げます。


ケース①…マイナンバーカードまたは被保険者証、両方を不持参の場合
現行の被保険者証を忘れた場合と同じ対応で、一時的に患者が10割分を医療機関に支払い、後日、資格確認を医療機関で確認した上で自己負担割合に応じた額を患者に返金する。


ケース②…カードリーダーが故障などした場合
患者に被保険者証を提示してもらい、資格情報を確認し、負担割合に応じて手続きをする。被保険者証が提示されない場合、コールセンターに連絡し、資格確認(システム障害・大規模災害時)機能を起動することにより、検索が可能となり、患者情報により検索し、資格確認を行う。


ケース③…転職などにより保険者を異動した直後の場合
マイナンバーカードを持参した場合、資格確認を行うと「無効」と表示される。患者が新保険者発行の被保険者証を持っている場合は、被保険者証に基づき自己負担分を請求する。被保険者証を持っていない場合は10割を請求し、後日、資格情報を確認した上で自己負担割合に応じた額を患者に返金する。


 以上、3つのケースが示されていますが、コールセンターについて既に以下が示されています。
・オンライン資格確認等コールセンター(0800―080―4583・通話無料)月〜金 8時~18時、土 8時~16時(いずれも祝日を除く)
・「緊急時医療情報・資格確認機能」開放までおよそ30分間程度かかる

 多くの医療機関は、18時以降も診療をしていますが、時間外は対応してくれません。また、対応に時間がかかることが示されていますので、その間患者さんを待たせるのでしょうか。さらに既にトラブルがあって電話された会員に聞くと、「全く電話がつながらなかった」とのことでした。
現在、医科の団体である東京保険医協会が国を相手に「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」を起こしています。本会会員、さらに全国の医師、歯科医師が原告団に加わっております。詳細は本紙3月号、デンタルブックメールニュースにて既にお知らせしていますが、「内容を詳しく知りたい」などのお問い合わせは協会までご連絡ください。
 また、既にオン資を導入されている先生から、様々なトラブル事例が協会まで寄せられています。国会議員や厚労省に対して、義務化撤回、改善要望・要求を行うにあたり、トラブル事例を多く集める必要があります。4月初旬を目指して、発生したトラブル、困ったことなどを協会に報告できるシステムを構築する準備を進めています。詳細は、デンタルブックメールニュース、協会ホームページでお知らせしますので、生じたトラブルやお困りの事例などをぜひ、協会までお知らせください。

東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2023年4月号8面掲載)

声明 政府は健康保険証廃止法案を撤回し、健康保険証の継続を

政府は健康保険証廃止法案を撤回し、健康保険証の継続を

政府は3月7日、健康保険証を廃止して、マイナンバーカードと健康保険証を一体化(以下、マイナ保険証)するとしたマイナンバー法など関連法改正案を閣議決定し、本日、4月14日の第211回通常国会に提出した。2023年4月から医療機関にオンライン資格確認システムの導入を義務化し、2024年秋には健康保険証を廃止するとしている。デジタル改革の推進のもとに行われているマイナンバー法やオンライン資格確認システム導入の義務化、現行の健康保険証の廃止は、取得が任意であるはずのマイナンバーカードを事実上義務化させることになり、選択の自由と国民皆保険制度を壊しかねない問題である。

そもそも、国民皆保険制度は、「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」、日本国内で等しく医療が受けられるものである。健康保険証を廃止し、マイナ保険証を取得しない国民は、「資格確認書」を申請しなければ、公的医療が受けられなくなる。さらにマイナ保険証で資格確認ができない場合に患者の窓口負担金が増加することも公的医療の平等性から問題である。

昨年11月に全国保険医団体連合会が実施したオンライン資格確認システムに対する調査(回答:8,707件)では、「有効な保険証でも『無効』と表示された(62%)」、「カードリーダーの不具合があった『41%』」など、システムトラブルが多く発生している。システムトラブルにより資格確認ができない場合に、健康保険証の提示がないと、患者には窓口負担金を一時的に10割で支払いをしてもらうことになるなど、患者も不利益を被っている。また、全国世論調査(読売新聞社2022年11月4日~6日)では、2024年秋に健康保険証を原則としてマイナンバーカードに一本化する政府の方針について、「賛成」44%、「反対」49%と意見が分かれている。

国民、医療現場での理解が十分に得られないまま、健康保険証を廃止することはやめるべきだ。国の責務として国民の声を受け止め、健康保険証廃止法案の撤回を求める。

 

2023年4月14

東京歯科保険医協会 理事会

 

20230414理事会声明(健康保険証廃止法案を撤回し、健康保険証の継続を)

東京歯科保険医協会 第51回(2023年)定期総会記念講演

当協会第51回定期総会を下記の通り開催いたします 。ご多用中のことと存じますが、当協会会員につきましてはぜひご出席くださいますようお願い申し上げます。なお定期総会にご欠席の場合は、ご登録の住所にお送りします「第51回定期総会・記念講演出欠票兼委任状」に必要事項を記入の上、ご返送ください。

また、記念講演には社会保険診療報酬支払基金理事の山本光昭氏が登壇し、「保健医療に係る最近の課題と歯科分野への期待」をテーマにご講演いただきますので、ぜひお越しください。

 

開催日時 2023年6月18日(日曜日)午後2時30分~6時

 

開催場所 中野サンプラザ 13階コスモルーム (住所:東京都中野区中野4-1-1)

 

総会議事 午後2時30分~午後4時15分

 

記念講演 午後4時30分~午後6時

 

 テーマ  「保健医療に係る最近の話題と歯科分野への期待」
 講 師 山本 光昭 氏(社会保険診療報酬支払基金 理事)

 

 人口構造の変化、情報化や国際化の進展など、我が国の保健医療を取り巻く環境の変化により、医療・介護に係る頻繁な制度改正が行われています。本講演会では、2025年問題・2040年問題、地域医療構想・地域包括ケアシステム、感染症対応、医療DXなどの保健医療に係る最近の話題の解説とともに、私の行政官としての歯科分野との関りから歯科分野への期待を述べたいと思います。また、今後の医療経営においては、国の政策の動向を「先取り」していくこと、そして、地元自治体の「意向を把握」していくことが非常に重要な時代になってきており、行政とのコミュニケーションの持ち方の秘訣も紹介させていただきます。