地域包括ケアシステムと歯科②/「地域包括ケアの落とし穴」
― 超高齢社会に向けての課題と問題点
★前回は、地域包括ケアシステム(以下、「地域包括ケア」)の概要とその背景を解説した。国が掲げるように、要介護状態になっても、住み慣れた地域で可能な限り自立した日常生活を営めるようなシステムが構築されることは、多くの国民が望むことである。しかし、国が考える社会保障の削減を前提とした地域包括ケアには、いくつもの課題と問題点が見え隠れしている。今回は、その主な課題と問題点を解説する★
◆ 「自助」「互助」が基本とされている
地域包括ケアの考え方では、自らが働いて自らの生活を支え、自らの健康は自ら維持するという「自助」と、家族や親族、地域の人々などの助け合いである「互助」を基本とし、それでも対応できない場合のみ、介護保険や医療保険などの「共助」や生活保護などの公的扶助や社会福祉などの「公助」が補完するとされている。
しかし、低所得高齢者が急増する中で、都市部では核家族化により家族・親族による援助や地域でのつながりが希薄となり、地方では過疎化が進む中で、「自助」や「互助」を基本としたシステムが成り立つとは思えない。セーフティーネットとしての「公助」を基本にしつつ、それぞれの状況に応じて、「自助」「互助」「共助」が組み合わされるようなシステムが必要ではないか。
◆介護保険・医療保険の費用削減と負担増が前提
団塊の世代のすべてが後期高齢者(75歳以上)となる2025年には、後期高齢者が約2200万人(全人口の18%)に増え、「後期高齢者2000万人社会」が到来する。それに伴い2025年には、介護保険の費用が8兆円⇒21兆円、医療保険の費用が38兆円⇒60兆円と試算されている。社会保障の負担のために消費税を増税するとしているが、その一方で、すでに介護保険からの要支援外しや、窓口負担2割への負担増、医療保険の70~74歳の窓口負担の2割への負担増などの改悪が行われようとしている。
◆中心となる市町村は対応できるのか
地域特性に応じた地域包括ケアを実現するには、基礎的自治体であり介護保険の保険者でもある市町村が中心的な役割を担うべき立場にある。都市部の人材や財政に余裕のある自治体であれば、2025年までの十数年で対応できるだろうが、地域包括ケアの構築に関する専門知識を有している職員が少なく、財政に余裕がない多くの市町村にとっては、至難の業である。特に平成の大合併を受け、多くの市町村は大幅な人員削減を行っており、現状でも人材面で厳しい状況にある。
◆歯科の位置づけが不明確
厚労省は、「医療計画作成指針」の中の「在宅医療の体制構築に係る指針」の項で、「要介護高齢者の約九割が歯科治療や専門的口腔ケアが必要」とされているものの、実際の受療者は約3割との報告に触れ、「口腔機能の低下や誤嚥性肺炎の予防等のためには、在宅療養者の歯科受療率の向上が課題」と指摘している。しかし、地域包括ケアの中で歯科がどのように関わっていくのかは明記されておらず、歯科の立ち位置は確立されていない。
そこで次回は、歯科と医療・介護の連携について、詳しくみていく。