年別アーカイブ: 2013年

シリーズ「お金の心配をせず歯科治療が受けられるように~“国民会議”にもの申す」③

シリーズ

「お金の心配をせず歯科治療が受けられるように~“国民会議”にもの申す」③

 

2013年参議院選挙の結果は「経済優先」「ねじれ解消」を掲げた自民党の圧倒的勝利に終わった。自民・公明両党は連立し衆参両院で安定多数となる。今後、消費税増税、社会保障制度改革、TPP交渉参加、原発再稼働、憲法「改正」など選挙戦では明確な争点にはならなかった諸課題が大きな焦点として浮かび上がってくる。こうしたなか、日本は7月23日からのTPP交渉会合に正式参加。先行11ヶ国では、既に協定内容の大筋で合意しており、日本が「聖域」を守れるかどうかは極めて微妙だ。

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社会保障制度改革では、社会保障制度改革国民会議(以下、「国民会議」という)が8月21日までに報告書をまとめることになっている。

7月12日の第17回「国民会議」では、最終報告書全体のイメージなどの資料が示されたが、踏み込んだ記述は見られないものの、「長期的なビジョンを持って、給付を抑制していく」「限られた議論のなかで、どこを重視し、どこを抑制するか」「負担の引上げ、給付の削減を議論すべき」「ブランド薬の患者負担の見直し」などと、国民負担の引き上げと給付抑制が議論されていることが記されている。報道によれば、「70~74歳の医療費窓口負担の1割から2割への引き上げや、国民健康保険(国保)の運営主体の市町村から都道府県への移管が盛り込まれる見通し」(「読売」7月13日)という。

国民の所得が増えない中で、消費税が増税されれば、それだけでも医療を受けられない患者が増えるであろうことは容易に想像できる。まして年金暮らしの高齢者の場合、さらに年金が減り、窓口負担が2割に引き上げられれば一層深刻となる。日本歯科医師会の大久保会長が「義歯などは単価が高い。従って高齢者は1割負担を望んでいる」として2割負担に反対を表明したのは当然である。

1割負担を望んでいるのは高齢者ばかりではないであろう。経済的な理由で受診を中断する患者がいることは各種アンケートでも明らかである。「窓口負担の大幅軽減を」の世論を大きく、大きくしていかなければならないのは「今でしょ」。

社会保障国民会議が最終報告書まとめる/官邸で安倍首相に提出

社会保障国民会議が最終報告書まとめる/官邸で安倍首相に提出

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社会保障制度改革国民会議は昨日8月6日、『社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~』をとりまとめた。同会議の清家篤会長は、官邸で安倍晋三首相にこの報告書を提出した。

これを受けて政府は、改革全体を進める手順とスケジュールなどをまとめた「プログラム法案」要綱を今月21日までに閣議決定し、秋の臨時国会に提出する。プログラム法案が秋の臨時国会で成立すると、政府は次のステップとして介護、医療など個別の改革に対する検討を進め、2014年以降、関連法改正案等を逐次国会に提出することが予想される。

今回の最終報告書の中では、改革の前提は明らかに消費税増税となっており、これにより社会保障関連経費の財源を確保することとしている。また、医療や介護サービスを中心に高齢者や高所得者に負担増を求めるという。国民健康保険については、現行の市町村運営を都道府県に移管する。また、現行の介護保険制度の中の要支援者は保険対象外とし、市町村に委ねる。原稿では1割負担になっている70~74歳の医療費窓口負担を新たに70歳になる人から段階的に2割に引き上げるなどとしている。

社会保障国民会議が最終報告書まとめる/官邸で安倍首相に提出

社会保障国民会議が最終報告書まとめる/官邸で安倍首相に提出

 社会保障制度改革国民会議は昨日8月6日、『社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~』をとりまとめた。同会議の清家篤会長は、官邸で安倍晋三首相にこの報告書を提出した。

これを受けて政府は、改革全体を進める手順とスケジュールなどをまとめた「プログラム法案」要綱を今月21日までに閣議決定し、秋の臨時国会に提出する。プログラム法案が秋の臨時国会で成立すると、政府は次のステップとして介護、医療など個別の改革に対する検討を進め、2014年以降、関連法改正案等を逐次国会に提出することが予想される。

今回の最終報告書の中では、改革の前提は明らかに消費税増税となっており、これにより社会保障関連経費の財源を確保することとしている。また、医療や介護サービスを中心に高齢者や高所得者に負担増を求めるという。国民健康保険については、現行の市町村運営を都道府県に移管する。また、現行の介護保険制度の中の要支援者は保険対象外とし、市町村に委ねる。原稿では1割負担になっている70~74歳の医療費窓口負担を新たに70歳になる人から段階的に2割に引き上げるなどとしている。

第5回広報部会を開催/参院選、社会保障会議報告書、歯科医師数問題などの情勢を議論

第5回広報部会を開催/参院選、社会保障会議報告書、歯科医師数問題などの情勢を議論

協会広報部は8月5日、今年度の第5回広報部会を開催しました。担当副会長・部、部員オブザーバーの参加は8名。

議事の中では、この1カ月の政治・経済・社会情勢について議論し、特に明日6日に首相に提出される見込みの「社会保障制度国民会議報告書」が焦点となり、消費税の8%への増税が社会保障関連経費に充てられるようになる可能性が強くなっていることや、消費税・医療・介護への国民負担が軒並み増加され、年金は支給年齢が繰り上げられる可能性が濃厚であること、70歳から74歳までの高齢者の医療機関窓口一部負担金を現行1割から2割へと段階的に引き上げることが打ち出されることなどを取り上げた。この報告書に関しては、すでに先月、自民党の議員有志11名による「国会版社会保障制度国民会議報告書」が取りまとめられており、内容的に酷似している点が注目されます。そのほか、歯科医師養成問題についても議論が行われています。また、先の参議院選挙の結果、歯科医師出身の国会議員が衆参両院合計8名(自民党6名、民主党1名、維新の会1名)となり、医系議員を凌駕していることなども話題となりました。

部会ではそのほか、本年9月の機関紙編集方針と今秋以降の方向性についても議論したほか、ホームページについても議論を重ねています。

消費税率8%化による損税を簡易に計算/保団連がシュミレータ開発

消費税率8%化による損税を簡易に計算/保団連がシュミレータ開発

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東京都内の歯科診療所の場合、現在の消費税率5%による「損税」は、当協会の試算では約50万円となっている。もし、このまま消費税率が8%に引き上げられた場合、診療所の損税はいくらになるのか…。

協会では消費税増税に反対し、ゼロ税率を求める方針を決め、様々な活動を行っていますが、仮に「消費税率が8%に引き上げられた場合、診療所の損税はいくらになるのか」。この素朴な疑問に答えるシュミレータを保団連が開発し、ホームページに掲載しています(左写真がそのトップページ画面)。

これは、各診療所の、①1ヶ月の外来レセプト枚数、②1ヶ月の保険診療報酬―等の各データを入力するだけで、損税の具体的な金額が計算できるというものです。

協会では秋の会員院長署名として、「保険診療への“ゼロ税率”を求める要望書」を行いますが、先生方の診療所では消費税が8%になることで損税がいくら生じるのか、具体的金額を見て実感されるためにも、一度、このシュミレータにより計算されることをお勧めしたい。

以下のアドレスで保団連ホームページを開き、トップページの最下段付近の「トピックス」コーナーをご覧いただきたい。「損税額はいくら? 消費税シュミレータつくりました」として掲載されている。

◆全国保険医団体連合会:http://hodanren.doc-net.or.jp/

第1回若手歯科医師向け学術ベーシック講座を開催しました

第1回若手歯科医師向け学術ベーシック講座を開催しました

 「根管治療の基礎~より成功率をあげるための根管形成を中心に~」をテーマに若手歯科医師向け学術ベーシック講座を開催し、21名が参加しました。当日は、本橋昌弘東京歯科保険医協会社保学術部部員が講師にたち、自身の臨床経験を踏まえ、開業医の視点から根管治療で大事なポイントを解説しました。また、根管治療で重要なラバーダムや根管形成についてはデモ講演も行われました。

 参加者からは「基本から今さら聞けないような事も聞くことができました」と大変好評でした。次回は、8月24日に「日常の口腔外科 抜歯について ~手際良く安全に抜歯を行うために~」をテーマに開催します。詳しくは「研究会・イベント」のページをご覧下さい。

9月19日(木)に五十嵐順正氏をお呼びして第3回学術研究会を開催します。

9月19日(木)に五十嵐順正氏をお呼びして第3回学術研究会を開催します。

 五十嵐順正氏(日本補綴歯科学会歯科補綴専門医・指導医・名誉会員、東京医科歯科大学歯学部元教授)をお呼びし、「保険の範囲でもパーシャルをここまでやろう」をテーマに、文京シビック小ホールにて第3回学術研究会を開催します。ぜひご参加下さい。(詳しくは研究会イベントページ、もしくは東京歯科保険医新聞をご覧下さい)

在宅歯科医療推進で歯科へ新たな期待集まる/社保審医療部会が1日に開催される

社保審医療保険部会で在宅歯科医療推進で歯科へ新たな期待集まる 

 

社会保障審議会医療保険部会が8月1日開催された。その中では、事務局が準備した資料①基本認識、②次期診療報酬改定の基本的な考え方―などをについて議論したが、②の中では「在宅歯科医療の推進」として、特に医科歯科連携の重要性が強調され、歯科に対するあらたな期待が寄せられた。

2013/8/24 第2回若手歯科医師向け学術ベーシック講座 「日常の口腔外科 抜歯について~手際良く安全に抜歯を行うために~」

第2回若手歯科医師向け学術ベーシック講座

誰しも一度は、抜歯でいわゆる“ハマった”経験をお持ちではないでしょうか。

抜歯は日常臨床における口腔外科手術のなかでもっとも多く行われる手技の1つです。ただ一概に抜歯といっても、鉗子やヘーベルのみで抜去が可能な単純抜歯から、歯肉切開を加えなければいけないもの、場合によっては骨開削を加えなければ抜去できない難抜歯まで、その手技は多種多様です。

今回は、様々なケースを供覧しながら、いわゆる抜歯でハマることのなく、手際良くかつ安全に抜歯ができるように、抜歯の基本的手技からその勘所までをお話しできればと思っております。                 (講師より)

◆テーマ:日常の口腔外科  抜歯について~手際良く安全に抜歯を行うために~

◆日 時: 8月24日(土) 午後7時~9時

◆講 師:濱﨑啓吾 氏(東京歯科保険医協会社保・学術部担当理事)

◆会 場:東京歯科保険医協会・会議室

     住所:新宿区高田馬場1-29-8 新宿東豊ビル6階

     電話:03―3205―2999

◆交 通:JR山手線・西武新宿線高田馬場駅下車戸山口より徒歩5分、

     東京メトロ東西線高田馬場駅下車3番・5番出口より徒歩5分

◆対象者:40歳代までの会員限定

◆参加費・定員:1名につき3,000円・定員30名(定員になり次第締切)

◆要予約:03-3205-2999(担当:社保学術部)

※平成25年度日本歯科医師会生涯研修2単位の登録を予定しています。

2013/9/26&10/31 第2・4回ドクター・スタッフ講習会/内容は両日とも同じです 「シャープニング実習とスケーリング・ルートプレーニング」

第2・4回ドクター・スタッフ講習会

 毎年ご好評を頂いておりますシャープニング実習とスケーリング・ルートプレーニングの講習会です。

 スケーリング・ルートプレーニングとキュレットなどについての講義を行い、分度器やルーペなどを使用しながら実際の研ぎ方を学びます。

 あらためて今、シャープニング、スケーリング・ルートプレーニングを基本から学びたい歯科医師・歯科衛生士の方のご参加をお待ちしております。

 

◆テーマ:シャープニング実習とスケーリング・ルートプレーニング

 

◆日 時:9月26日(木) or  10月31日(木) 午後6時30分~9時

 

◆講 師:小田茂氏(東京医科歯科大学) 他

 

◆会 場:東京歯科保険医協会・会議室

     住所:東京都新宿区高田馬場1-29-8 新宿東豊ビル6F

電話:03―3205―2999

 

◆交 通:JR山手線・西武新宿線高田馬場駅下車戸山口より徒歩5分、メトロ東西線高田馬場駅下車3番・5番出口より徒歩5分

◆対象者:歯科衛生士・歯科医師

 

◆定員・参加費:定員32名・1名につき8,000円

 

◆要予約:TEL 03-3205-2999(スタッフ教育部)

※両日とも同じ内容となっておりますので、どちらか1日お選び下さい。

※1診療所のべ2名まで。必ずお電話にてお申し込みください。

★第4回学術研究会(集中講習)これだけは知りたい! 有病者の歯科治療★

★第4回学術研究会(集中講習)これだけは知りたい! 有病者の歯科治療★

 

社会の急速な高齢化に伴い、全身的な疾患を持ついわゆる有病者が歯科医院を受診する機会が増えています。このような患者さんが歯科治療を安全かつ適切に受けられるように、しっかりした体制を整えておく必要があります。

歯科治療総合医療管理料に規定する疾患として、高血圧性疾患、虚血性心疾患、不整脈、心不全 喘息、慢性気管支炎、糖尿病、甲状腺機能障害、副腎皮質機能不全、脳血管障害、てんかん、甲状腺機能亢進症、自律神経失調症、骨粗鬆症(BP製剤)、慢性腎不全(透析患者)があります。このような疾患を有する患者さんの歯科治療では、医科との連携が必要な場合が少なくありません。また、偶発症発生の危険も高く、その予防や対応の準備も必要です。スムースな診療連携と安全な歯科治療を行うために必要な基本的ポイントを解説します。    (講師より)

◆テーマ:第4回学術研究会(集中講習)これだけは知りたい! 有病者の歯科治療

◆日 時:10月27日(日) 午前10時~午後4時

◆講 師:野口いづみ 氏(鶴見大学歯学部准教授、日本歯科麻酔学会評議員・指導医、日本障害者歯科学会認定医、日本登山医学会理事)

     中川洋一 氏(鶴見大学歯学部講師、日本歯科薬物療法学会編集委員会委員長、日本口腔外科学会認定口腔外科専門医・指導医)

 ◆会 場:明治大学・リバティータワー1011号室

     住所:東京都千代田区神田駿河台1-1

     電話:03―3296―4545

◆交 通:JR総武線・中央線御茶ノ水駅下車「御茶ノ水橋口」より徒歩3分、東京メトロ丸の内線 御茶ノ水駅下車「出口1または出口2」より徒歩3分、東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅下車「B3またはB5出口」より徒歩5分、東京メトロ半蔵門線・都営新宿線・都営三田線神保町駅下車「A5またはA7出口」より徒歩5分

◆定員・参加費:250名(※ご参加は会員、およびそのスタッフに限ります)、1名につき4,000円(昼食代含む)

◆要予約:03-3205-2999(社保学術部)

※平成25年度日本歯科医師会生涯研修の登録を予定しています。

★第3回学術研究会★

★第3回学術研究会★

保険の範囲でもパーシャルをここまでやろう

歯科診療室に来院する欠損歯列患者のほとんどが保険の範囲での欠損補綴

治療を希望して来る。経済的に豊かな人たちにも、そうでない人たちにも学理的に正しい、健康回復に効果のある欠損補綴治療を行うのが我々臨床医のスタンスである。

それでは、学理的に正しい治療とはどのような事項で、どんな点に留意して治療にあたるべきなのだろうか。今回はおもにクラスプ義歯をツールとする治療について最新のスタンダードを提示したい。         (講師より)

◆テーマ:保険の範囲でもパーシャルをここまでやろう

◆日 時:9月19日(木) 午後7時~9時30分

◆講 師:五十嵐順正氏(日本補綴歯科学会歯科補綴専門医・指導医・名誉会員、東京医科歯科大学歯学部元教授)

◆会 場:文京シビック小ホール

     住所:〒 東京都文京区春日1-16-21文京シビックセンター2F

電話:03―5803―1100

◆交 通:東京メトロ丸ノ内線・南北線後楽園駅4b・5番出口徒歩3分、都営地下鉄三田線・大江戸線春日駅(文京シビックセンター前)文京シビックセンター連絡通路徒歩3分、JR中央・総武線水道橋駅徒歩8分

◆参加費:会員無料、同伴者は1名につき1,000円、未入会員8,000円

◆予約不要:当日は会員証を受付にご提示下さい。

 ※平成25年度日本歯科医師会生涯研修3単位の登録を予定しています。

★学術研究会ビデオ上映会★

★学術研究会ビデオ上映会★

「歯内療法を成功に導くために、まず行うべき基本中の基本とは?」

研究会に参加された先生方から「参加できなかった分の研究会のビデオを診たい」というご要望を多くいただきました。そこで2012年度の4回学術研究会の中で、362名と最も多くの参加者を集めた研究会のビデオ上映会を開催します。もう一度聴きたいという方もぜひこの機会にご参加下さい。

◆テーマ:2012年度第4回学術研究会「歯内療法を成功に導くために、まず行うべき基本中の基本とは?」

◆日 時:9月28日(土) 午後7時~9時30分

◆講 師:澤田則宏氏(新宿区開業)

◆会 場:東京歯科保険医協会 会議室

     住所:新宿区高田馬場1-29-8新宿東豊ビル6階

     電話:03―3205―2999

◆交 通:JR山手線・西武新宿線・東京メトロ東西線高田馬場駅より徒歩5分

◆定員・参加費:40名・会員無料、同伴者は1名につき1,000円

     ※未入会員は8,000円(当日までに入会の場合は入会金と初月会費に充当)

◆要予約:TEL 03-3205-2999 担当:組織部

 ※一部、画面が見づらい部分や音声が聞き取りづらい部分がございますがご容赦ください。

シリーズ「お金の心配をせず歯科治療が受けられるように」②

シリーズ「お金の心配をせず歯科治療が受けられるように」②

◆かつて健保本人負担はゼロだった

今では、受診時に1割~3割の窓口負担金を支払うのが常識であるかのようになってしまったが、かつて日本でも健保本人の「窓口負担ゼロ」が当たり前の時代があった。1927年1月に健康保険法が全面施行され、84年8月に「健保本人1割負担」が導入されるまで、実に57年間にわたり健保本人は自己負担なしで医療を受けることができた。

 

◆田中内閣で福祉元年老人医療費無料化

また、老人医療費についても、岩手県の沢内村(当時)が1957年から始めた老人医療費無料化制度が大きな成果をあげ、これが全国の自治体で次々と導入されていくという運動の高まりを背景として、73年10月の老人福祉法改正により、七十歳以上の高齢者の窓口負担を無料とする老人医療費無料化が実現した。田中角栄内閣(当時)はこの年を「福祉元年」として大いにアピールしたものだ。

 

◆中曽根内閣が老人・健保本人負担導入

ところが、「戦後政治の総決算」を掲げて1982年に登場した中曽根康弘内閣(当時)は、「たくましい文化と福祉の国」を実現するとして、「政経費の節減と予算の効率化、補助金や人員の削減、公債依存度の引き下げ、電電、専売、国鉄の民営化、医療や年金の改革等の諸改革」(Wikipediaより)について、国民の願いに逆行する政策を実行し、83年に老人医療費の有料化、84年8月に健保本人1割負担を導入。医療と福祉切り捨てに大きく舵を切っていった。2007年の第1次安倍政権が掲げた「戦後レジームからの脱却」の原点は、ここにあるといえよう。

 

◆健保本人3割負担への経緯

その後、1997年6月に健保本人2割負担、2002年10月に老人定率1割、2割負担、03年4月に3~69歳まで3割負担となり、現在に至っている。

 

◆進む受診抑制/昨年調査でも明白

その結果、患者・国民の受診抑制が進み、症状が重篤化してから受診する傾向が強まっていることが、2012年9月に行った保団連の会員アンケートでも明らかになっている。この中で、この半年間に患者さんの経済的理由で治療を中断した事例が「あった」との回答が歯科64.0%、医科19.6%も寄せられている。重篤化してから受診するため医療費は増大する一方である。

 

◆窓口負担の軽減を

2012年の自殺者が97年以来、15年ぶりに3万人を切ったとはいえ、生きづらい日本になってしまったことに変わりない。せめて窓口負担を軽減して安心して医療を受けられる制度にしてほしいもの。その正否は私たちの運動にかかっている。

東ベルリンから来た女 “Barbara”

東ベルリンから来た女 “Barbara”

     2012年ドイツ/クリスチャン・ベッツオルト監督

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 映画は女が病院前でバスから降りるところから始まります。

「彼女か?」

「絶対早めには来ない」

「そういう女だ」

 2人の男が病院の2階の窓から外のベンチに座り、タバコを吸いながら、定刻まで時間を潰している女を見ています。張り詰めた空気が流れています。

 映画の舞台は1980年の夏、東ドイツ。ベルリンの壁が崩壊する九年前のことです。西ドイツへの脱出を計画する女が、ある選択を決断するまでの日々を描いたドラマです。

 この女は女医で、恋人の住む西ベルリンに行きたい一心で外国旅行許可申請をしました。しかし申請は却下され、東ベルリンの大病院での勤務を外され、逃走のおそれがあると、秘密警察の24四時間の監視が付き、ベルリンを遠く離れたドイツ北部、バルト海沿岸の田舎町に赴任させらます。不審な遠出をすると、秘密警察がこれを嗅ぎつけ家宅捜査はもとより、女性警察官により膣の中まで調べる身体検査を行ないます。

 近くの労働収容所から脱走した少女が担ぎ込まれてきました。

「ダニによる髄膜炎か?」

「真ダニの生息地の草むらに6日間隠れていた」

「髄液の採取をするわ」

 土地の若い青年が失恋から3階からの転落自殺を図り、病院に搬送されてきました。

「膝関節の脱臼、頭部負傷です」

「頭蓋のX線写真では血栓ができた可能性があるわ」

「診断には開頭が必要よ」

 青年に脳障害が発症します。

 女は病院での忙しい日常の診療業務を淡々とこなしています。

 しかし、いつ密告されるかもしれないという猜疑心に固まっているので、誰にも心を許せません。病院の職員にも、優しく接してくれる上司の男性医師にも距離を置き、自分の方から馴染もうとしません。

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 しかし、男性医師は女に心を開くよう辛抱強く何度も話しかけてきます。

「来週  遠心分離器が届く」

「君も、作ってくれないかな?」

「ねえ、あなたはなぜこんな田舎にいるの?」

 男は「保育器では助からない子を助ける未熟児用の機器の操作を自分の助手が間違えて、圧力が異常に上昇し、2人の子どもの網膜が破壊された。その責任を取らされ、ここに回された」と告白します。

 しかし、男はそんな目に合わされても、誠実に東ドイツで生きようとしています。

 

 西ベルリンに住み、豊かで、セクシーな都会的な恋人と、貧しく、凡庸なこの田舎風の男とでは、まるっきりタイプも生き方も違います。2人の男の狭間で激しい性と静かな思いに揺れ動く女。

 この女がどちらの男を選ぶのか、女のサガが流れる緊迫したサスペンス映画です。

 この映画は、表面的には会話の少ないとても静かな仕上がりになっています。

 

 ニーナ・ホス演じるヒロインの女医バルバラが、海鳥が鳴き、強い風でざわめく林の小道を自転車で走り抜ける姿、知的で頑とした美しさは抜群です。

 2012年ベルリン国際映画祭で銀熊賞の監督賞を受賞しました。

                                                        (協会理事/竹田正史)

社保審医療保険部会が開催 /次期改定スケジュール等を提示

社保審医療保険部会が開催 /次期改定スケジュール等を提示

7月25日、社会保障審議会傘下の医療保険部会(部会長:遠藤久夫学習院大学教授)が都内ホテルの会議室で開催され、①産科医療補償制度、②次回診療報酬改定に向けての検討、③社会保障制度改革国民会議の議論の状況報告―の3つの議題について、審議・検討が加えられた。

3つの議題のうち②の次期改定に関しては、委員で日本医師会の鈴木邦彦常任理事が「前回改定は、急性期病院への対応が主な柱。結果、十分とはいわないが改定の影響はあった。次回改定では、大病院の患者の受皿になる中小病院・診療所への対応が必要」と指摘。さらに「かかりつけ医制度の充実が急務」とした。次に、日本歯科医師会の堀憲郎常務理事が生活を支える医療としての歯科が理解されつつある点を指摘し、さらに「歯科も従来の虫歯、歯周病の治療から、口腔疾患と全身との関係を示すエビデンスが出てきている」と説明しつつ、今後は歯科の口腔ケア、周術期、高齢者の管理などへ対応が不可欠であることを指摘。さらに「医科歯科連携が重要となっている」とした。

事務局サイドが提示した資料では、前回平成24年改定の中でも、特に在宅医療の重要性の観点から「在宅療養支援歯科診療所」について説明が行われ、施設基準についても①歯科訪問診療料を算定、②高齢者の心身の特性、口腔機能管理および緊急時対応に関する研修を修了した常勤の歯科医師の1名以上配置、③歯科衛生士を配置、④必要に応じて、患者または家族、在宅医療を担う医師、介護・福祉関係者等への情報提供体制を整える、⑤在宅歯科医療に関する後方支援機能を有する別の保険医療機関との連携体制確保―が確認された。また、支援診の届け出が全歯科診療所に対して低い率にとどまっている実情を報告している。

そのほか、次期診療報酬改定に向け、次のようにスケジュールが提示された。

 ◆今夏・秋:社会保障制度改革国民会議の議論を受け、平成26年度診療報酬改定の基本方針を社会保障審議会(医療保険部会・医療部会)で議論

 ◆12月下旬:内閣が予算編成過程で診療報酬等の会定率を決定

 ◆2014年1月中旬:厚労大臣は中央社会保険医療協議会に対し、「改定率」「基本方針」に基づき診療報酬点数の改定案の調査・審議を行なうよう諮問

    ◆2月:中医協は厚労大臣に対し診療報酬点数改定について「答申」する

 ◆3月上旬:診療報酬改定に関する官報告示・通知を出す

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第2回未経験スタッフ講習会を開催

第2回未経験スタッフ講習会を開催

7月22日、協会会議室で「未経験スタッフのための基礎講習」が開催された。講師は協会役員が務めた。参加人数は37名。4月22日に続き、今年度2回目の同講習会となっている。歯科業界での勤務経験のないスタッフの方を対象に歯科の基礎を知っていただくための講習会で、毎回人気の講習会となっている。教材は、スライドとデンタルスタッフのための歯科保険診療ハンドブック。また、診療所で覚えておきたい語句・略語というポケットサイズの単語帳も配布している。カルテの種類、保険証の見方、歯と歯周組織の構造や、歯式の読み方、むし歯の段階、むし歯の治療、歯周病の治療、欠損補綴(義歯、インプラント)についての講義。バキュームの操作方法、セメント練和などの動画などわかりやすいと好評をいただいている。

 

歯科医師出身議員は8名に

歯科医師出身議員は8名に

7月21日に行われた参議院選挙の結果、自民党の大幅な議席増となったが、歯科医療界の視点から見ると、今回の選挙で歯科医師出身の議員が新たに2名誕生し、落選した候補者を差し引くと、歯科医師出身議員は衆参両院で8名となった。与野党別では与党自民党6名、野党は2名で民主党1名、維新の会1名という状況だ。

 

【衆議院議員】

◆白須賀貴樹(しらすか  たかき):東京歯科大学卒

 1975年3月16日生まれ38歳/選挙区:千葉13区/政党:自民党/初当選年:2012年/当選回数1回(衆議院1回)

◆新原秀人(しんばら  ひでと):大阪大学歯学部卒

 1962年4月29日生まれ51歳/選挙区:比例近畿ブロック/政党:日本維新の会/初当選年2012年/当選回数:1回(衆議院)

◆比嘉なつみ(ひが  なつみ):福岡歯科大学卒

 1958年10月3日生まれ55歳/選挙区:沖縄3区/政党:自民党/初当選年:2012年/当選回数:1回(衆議院1回)

◆渡辺孝一(わたなべ  こういち):東日本学園大学卒(現:北海道医療大学)

 1957年11月25日生まれ56歳/選挙区:比例北海道ブロック/政党:自民党/初当選年:2012年/当選回数:1回(衆議院)

【参議院】

◆石井みどり(いしい  みどり):鶴見大学歯学部卒

 1949年6月23日生まれ64歳/選挙区:比例区/政党:自民党/初当選年:2007年/当選回数2回(参議院)

◆島村大(しまむら  だい):東京歯科大卒

 1960年8月11日生まれ53歳/選挙区:神奈川選挙区/政党:自民党/初当選年:2013年/当選回数:1回(参議院)

◆関口昌一氏(せきぐち  まさかず):城西歯科大学(現・明海大学)歯学部卒

 1953年6月4日生まれ60歳/選挙区:埼玉県/政党:自民党 /初当選年:2003年/当選回数3回(参議院3回)

◆西村まさみ(にしむら  まさみ):日本歯科大学卒

 1963年10月20日生まれ50歳/選挙区:比例全国区/政党:民主党/初当選年:2010年/当選回数:1回(参議院)

石井みどり氏が再選/島村大氏が初当選

石井みどり氏が再選/島村大氏が初当選

ともに自民党

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昨日7月21日、参議院議員選挙の投票・開票が行われたが、歯科医師出身議員の状況をみると、全国区比例代表で自民党の石井みどり氏が再選を果たした。また、定数4名の神奈川県選挙区の自民党の島村大氏がトップ当選を果たしている。これにより、衆参両院における歯科医師出身議員は6名(参院3名、衆院3名)となった。なお、長崎県選挙区では民主党の大久保潔重氏は、再選を果たすことができなかった。

 内田剛也氏をお呼びし、第2回学術研究会を開催しました

 内田剛也氏をお呼びし、第2回学術研究会を開催しました

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 内田剛也氏(川崎市開業、日本歯周病学会評議員・指導医・専門医)を講師に招き、第2回学術研究会を開催しました。今回は「歯周基本治療で改善しない原因と対応~フラップするとき、しないとき~」をテーマに、日常診療で良く行われる歯周治療について自身の豊富な症例を踏まえ、講演をして頂きました。当日はドクターのほか、スタッフと一緒にご参加された会員も多く、246名が参加しました。

 参加者からは、「素晴らしい臨床例をたくさん見せて頂いてよかったです」「歯周病治療において色々と再確認できてよかったです。」など声が寄せられ、大変好評であった。

 次回、8月には学術ベーシック講座を8月3日(土)・8月24日(土)に、また9月には五十嵐順正氏(日本補綴歯科学会歯科補綴専門医・指導医・名誉会員、東京医科歯科大学歯学部元教授)を講師にお招きし「保険の範囲でもパーシャルをここまでやろう」をテーマに開催する予定です。詳しくは研究会のご案内ページをご覧下さい。

 内田剛也氏をお呼びし、第2回学術研究会を開催しました

 内田剛也氏をお呼びし、第2回学術研究会を開催しました 

 内田剛也氏(川崎市開業、日本歯周病学会評議員・指導医・専門医)を講師に招き、第2回学術研究会を開催しました。今回は「歯周基本治療で改善しない原因と対応~フラップするとき、しないとき~」をテーマに、日常診療で良く行われる歯周治療について自身の豊富な症例を踏まえ、講演をして頂きました。当日はドクターのほか、スタッフと一緒にご参加された会員も多く、246名が参加しました。

 参加者からは、「素晴らしい臨床例をたくさん見せて頂いてよかったです」「歯周病治療において色々と再確認できてよかったです。」など声が寄せられ、大変好評であった。

 次回、8月には学術ベーシック講座を8月3日(土)・8月24日(土)に、また9月には五十嵐順正氏(日本補綴歯科学会歯科補綴専門医・指導医・名誉会員、東京医科歯科大学歯学部元教授)を講師にお招きし「保険の範囲でもパーシャルをここまでやろう」をテーマに開催する予定です。詳しくは研究会のご案内ページをご覧下さい。

医科歯科連携は順調に進行中/第2回メディア懇談会で松島会長があいさつ

医科歯科連携は順調に進行中/第2回メディア懇談会で松島会長があいさつ

 

メディア懇談会No.2pixCIMG6760本年度2回メディア懇談会が7月12日、協会の会議室で開催した。今回でメディア懇談会の開催は通算40回目を迎えた。協会からは、6月20日の第41回定期総会で信任され就任2期目に入った松島良次会長、副会長で広報部長の藤野健正部長、および事務局が参加、メディアとのやり取りに当たった。

まず、2期目の会長に就任した松島良次会長が抱負を語り、会運営について「会員の利益、患者の利益、満足が得られないと意味がない」としたほか、協会の存在感については「保険診療がメインであり、良い治療が誘導されなければならない」と述べた。さらに医科歯科連携に触れ、その実現に向けてのこれまでの取り組み、さらに地域包括医療の中での歯科の役割に触れ、順調に成果を上げていることを説明した。具体的事例として、日常診療の中で口腔ケアの必要性を訴えながら医科関係者に理解を求めていくことや、睡眠時無呼吸症候群(SAS)については、単なるイビキというではなく、不整脈、多血症、虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病などの動脈硬化性疾患の危険因子であることへの注意を促し、引き続き啓蒙、啓発を進める必要があることを強調した。

奥村氏:メディア懇談会CIMG6750

一方、メディアとの懇談に入ると、患者トラブルが俎上にのり、「患者トラブル多発の背景には、歯科医師から患者側に対し、充分な説明ができていないことが大きな原因ではないか」「患者さんが何を求め、要望しているのかニーズがつかめていない」といった意見のほか、

 

 

山本氏:メディア懇談会CIMG6758

「若くして開業した先生や若いスタッフでは、患者トラブルやクレーマー対策が難しいのではないか」「ロールプレイングを取り入れた講習会も経年的に行うことで、参加する会員とスタッフからの見え方、理解も進むのではないか」といった意見が述べられた。

 

医科歯科連携は順調に進行中/第2回メディア懇談会で松島会長があいさつ

医科歯科連携は順調に進行中/第2回メディア懇談会で松島会長があいさつ

本年度2回メディア懇談会が7月12日、協会の会議室で開催した。今回でメディア懇談会の開催は通算40回目を迎えた。協会からは、6月20日の第41回定期総会で信任され就任2期目に入った松島良次会長、副会長で広報部長の藤野健正部長、および事務局が参加、メディアとのやり取りに当たった。

まず、2期目の会長に就任した松島良次会長が抱負を語り、会運営について「会員の利益、患者の利益、満足が得られないと意味がない」としたほか、協会の存在感については「保険診療がメインであり、良い治療が誘導されなければならない」と述べた。さらに医科歯科連携に触れ、その実現に向けてのこれまでの取り組み、さらに地域包括医療の中での歯科の役割に触れ、順調に成果を上げていることを説明した。具体的事例として、日常診療の中で口腔ケアの必要性を訴えながら医科関係者に理解を求めていくことや、睡眠時無呼吸症候群(SAS)については、単なるイビキというではなく、不整脈、多血症、虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病などの動脈硬化性疾患の危険因子であることへの注意を促し、引き続き啓蒙、啓発を進める必要があることを強調した。

一方、メディアとの懇談に入ると、患者トラブルが俎上にのり、「患者トラブル多発の背景には、歯科医師から患者側に対し、充分な説明ができていないことが大きな原因ではないか」「患者さんが何を求め、要望しているのかニーズがつかめていない」「若くして開業した先生や若いスタッフでは、患者トラブルやクレーマー対策が難しいのではないか」「ロールプレイングを取り入れた講習会も経年的に行うことで、参加する会員とスタッフからの見え方、理解も進むのではないか」といった意見が述べられた。

 

消費税増税で歯科医療はどうなる③ 完

消費税増税で歯科医療はどうなる③ 完

「診療報酬で手当てされている…?~ホントかウソか~」

「社会保障・税一体改革大綱について」の中で、「消費税率の引上げを踏まえ検討すべき事項」として4点があり、医療機関の消費税損税については、「診療報酬等の医療保険制度において手当する」こととされた。これに沿って、中医協の中に「医療機関等における消費税負担に関する分科会」が設置され、昨年6月より開催されている。このうち昨年7月の第2回分科会には、1989年と1997年当時の診療報酬点数と2012年のそれとを比較した興味深い資料が配布された。

◆歯科診療報酬への消費税上乗せ分その後

これを見ると、確かに1989年にも97年にも点数が上乗せされているが、それは十数項目であり、しかもその後の改定で措置されたかはまったく分からなくなってしまった。例えば、印象採得(欠損補綴、連合印象)が、89年改定で165点(プラス5点)とされ、12年改定では228点とされたが、このうち消費税分が何点かは、今となっては分らない。89年のときのプラス5点が消費税分と考えた場合、20年以上前に手当てした点数で十分だと誰がいえるのか。根管充填(単根管)は、97年に68点(プラス1点)となったが、12年改定でも68点のままであり、その他の項目も据え置き、あるいはわずかな引き上げに留まっている。そればかりか、項目自体が削除されたものさえある。

もとより、消費税分を売上に上乗せして消費者に転嫁するかは各事業者に任せられている(転嫁するしないにかかわらず課税対象の財・サービスには消費税が含まれているが)。鉄道運賃の場合、消費税導入時に10㎞までの運賃には上乗せされなかった。診療報酬についていえば、その全項目にわたって上乗せする必要はなく、仕入に係る消費税分を補填しうる点数を算定頻度の高い項目に少し多めに上乗せすれば足りる。しかし、上記の通り消費税分が上乗せされた項目はわずかであり、しかも改定の度ごとに消費税分が上乗せされたわけではなく、消費税導入時からも前回の増税時からも相当の年月が経過していることを考えれば、決して十分とはいえない。むしろ損の部分の方が遙かに大きいことは明らかである。

◆診療報酬引き上げの根拠と消費税

そもそも、診療報酬点数に消費税分を上乗せするというのは、「社会保険診療は非課税」の政策目的に反している。しかも、それによって医療機関の損税は解消できなかった。

診療報酬点数に上乗せするというのは不確実なものであり、医療機関にとって何ら期待できるものでないことを最後に強調しておきたい。

国立国際医療研究センター病院にも周術期ポスターを掲示

国立国際医療研究センター病院にも周術期ポスターを掲示

 周術期ポスターpixCIMG6731

7月9日、協会作成の周術期ポスターを新宿区戸山町の独立行政法人国立国際医療研究センター病院歯科・口腔外科外来の入口付近に掲示していただきました。ポスター掲示には協会の濱﨑啓吾理事が赴き、歯科・口腔外科の丸岡豊科長とともにスナップ写真も撮影しました。

国立国際医療研究センター病院にも周術期ポスターを掲示

国立国際医療研究センター病院にも周術期ポスターを掲示

 

7月9日、協会作成の周術期ポスターを新宿区戸山町の独立行政法人国立国際医療研究センター病院歯科・口腔外科外来の入口付近に掲示していただきました。ポスター掲示には協会の濱﨑啓吾理事が赴き、歯科・口腔外科の丸岡豊科長とともにスナップ写真も撮影しました。

定年引き上げにはどのように対応すれば…?

No.285(2013年2月1日号:513号5面)

当医院の定年は60歳としていますが、2013年の4月から法律が変わると聞きました。どのように変わるのですか。

急速な高齢化の進行に対応するため、年金受給開始年齢までは、意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、2013年4月1日から施行されます。そのため定年の年齢を65歳未満に定めている事業主は、次のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を導入する義務があります。①定年の引き上げ、②継続雇用制度の導入、③定年制の廃止―この3つの中からひとつを選んで従業員が65歳まで働けるようにするもので、事業所の規模にかかわらず全ての事業所に適応されるものです。また、当分の間、60歳以上の従業員がいない事業所であっても措置を講じる必要があります。したがいまして、就業規則等の見直しが必要になってきます。事業主からすると①と③の実施は困難であり、②の継続雇用制度の導入が一番現実的な方法と考えられます。継続雇用制度とは、定年こそ60歳を維持しますが、従業員が望んだ場合、その後65歳までは雇用すると言うものです。この制度には、「勤務延長制度」と「再雇用制度」の2種類があり、勤務延長制度は、定年になった従業員を退職させずに、そのまま引き続き雇用する方法です。一方、再雇用制度は、定年になった従業員に、一度退職してもらいその後に改めて、契約を結んで雇用する方法です。なお、継続雇用制度では、再雇用を希望する従業員全員を、雇用するのが原則となっています。

定年を65歳以上に引き上げると奨励金が出ると聞きましたがどのような制度ですか。

「中小企業定年引上げ等報奨金」という制度です。先に説明した「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に対応する措置を講ずる上で、中小企業の事業主においては、その負担が大きいことから65歳以上への定年引上げ、希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度の導入、または定年の定めの廃止を実施した場合に、その実施した措置や事業所の規模に応じて最高で120万円が支給される制度です。申請に関する相談及び申請手続きは各都道府県にある「高齢・障害者雇用支援センター」で受け付けています。ただし、この制度は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」の施行にともない廃止となりますので、2013年3月31日までに定年の引き上げ等を導入しなければなりません。ご利用を検討される場合は、お早めに相談窓口である「高齢・障害者雇用支援センター」にご相談ください。なお、奨励金は、国の助成制度のひとつです。受給事業主は、国の会計検査の対象となります。必要に応じてハローワーク等の機関に照会が行われ申請内容等の調査が行われる場合がございます。【お問い合わせ先 高齢・障害者雇用支援センター 03-5638-2284】

診断書の交付義務について

No.287(2013年5月1日:516号5面)

30歳代の男性患者が「左上1番にインプラントを入れたが、具合が悪いので診てもらいたい。前医には行きたくない」と言って来院した。診ると動揺があり排膿もみられた。患者は診断書を書いてほしいと言うが、どうしたらよいか。前医の批判になるとまずいので安易に書けないと思う。何軒かの歯科医院を廻ったが、どこも診断書を書いてくれなかったらしいので、患者さんのことを思えば何とかしてあげたいと思う。

診断書は、「歯科医師が診察の結果に関する判断を表示して、人の健康上の状態を証明するもの」(「病院・医院経営管理質疑応答集〈第1巻〉第121号」1996年8月25日発行(第一法規))です。また、歯科医師法第19条2項に「診療をなした歯科医師は、診断書の交付の求があつた場合は、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とあります。患者さんは、動揺もあり排膿もあって、大変困っているのでしょう。先生に診断書を書いてもらって、それを持って前医と損害賠償の話をしようと思っているのは明らかであり、それだけに先生の書いた診断書が「前医の批判になるとまずい」と感じられたことは歯科医師として当然のことと思われます。

このような場合に、歯科医師は診断書交付を拒否できるのかという問題です。「正当な事由」があれば拒否できるようですが、どういうことが「正当な事由」に該当するのでしょうか。日本最大級の法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」(http://www.bengo4.com/)に登録する比護望弁護士は、「診断書が詐欺、脅迫等不正目的で使用される疑いが客観的状況から濃厚であると認められる場合、医師の所見と異なる内容等虚偽の内容の記載を求められた場合、患者や第三者などに病名や症状が知られると診療上重大な支障が生ずるおそれが強い場合など特別の理由が存する場合に限って、拒否すべき正当事由が存在するとして交付義務を免れることができる」と東京簡裁判決を紹介しています。また、別のホームページでは、「現在の症状が前医医療行為の過誤を原因とする旨の記載を求められたような場合は拒否できる」ことが紹介されています。

このようにみると、診断書交付を拒否できる「正当な事由」はかなり狭くなると思われます。ただ、何軒かの歯科医院は現に交付していないのですから、先生も同様に交付しないとしても構わないのでは、と言えるかもしれません。

そこで、通常の診断書の書式は特に法律で定められていないので、診療した時点での歯牙破折など、現状の診断名のみ記載した無難な診断書は、問題になることが少ないと思われます。間違えても患者の言いなりの診断書や問診からの推察など、裏づけのない想像を記載すると後々問題になるので慎むべき行為です。

ほかにも診断書交付義務に関する相談が複数寄せられ、単なる法律の解釈に止まらない相談もありました。一緒に悩むことしかできませんが、お困りの際は協会までご相談下さい(TEL 03―3205―2999:経営・税務部)。

短距離通勤・バス通勤の交通費はどうなる

№284(2012年:1月1日号:512号6面)

交通費を全額支給として従業員を募集した。採用したところ通勤手当としてガソリン代を請求された。自宅と当院の距離は約1㎞で、スクーターで通勤したいという。支払うべきなのか。なお、当院には就業規則はなく、通勤手当について明確な規定はない。

ご質問のケースでは、2つの側面で考える必要があります。まずは雇用契約の点です。交通費を全額支給として募集し、かつ、就業規則等で通勤手当に関する制限を定めていなければ、原則的に従業員の申請に基づく交通費を支給する必要が出てくると考えられます。もう1つは税法上の扱いです。所得税法では、マイカーやスクーターなどの交通用具を使って通勤する場合、その距離が2㎞未満については、通勤手当を支給したとしても全額が課税対象となります(所得税法施行令第20条の2)。この趣旨は、足が不自由など特殊な理由がない限り、2㎞未満は通勤費用を要しない。すなわち、徒歩で通勤可能な範囲と考えられています。したがって、支給したとしても、全額が給与所得として課税されることが前提になります。以上の2点を考慮した上で労使双方が支給について話し合われたらいかがでしょうか。

距離2㎞未満の最寄り駅までバスや自転車で行き、電車に乗り換え通勤する場合、通勤手当の税務上の取り扱いで注意することはあるか。また、駐輪場を借りている場合には、通勤手当として支給しても問題はないか。

バスや鉄道といった公共交通機関を使用する場合は、距離に関係なく月額で10万円までが非課税交通費となっています。したがって、最寄り駅までが2㎞未満であったとしてもバスを利用した場合は課税されません。しかし、先の回答と同じく、最寄り駅までスクーターや自転車を利用した場合、その分について通勤手当を支給すると給与所得として課税対象となってしまいます(乗り換えた電車代については非課税)。また、駐輪場代金を支給した場合には、通勤手当とみなされますので、最寄り駅までが距離2㎞未満であれば課税対象となります。

距離2㎞未満の通勤交通費については、バス代は支給しなくて済むようにしたいのだが、どうすればよいか。バスの定期代を通勤手当として請求していながら、実は徒歩で通勤しているなどというケースもあると聞くが。

就業規則などでその旨を記しておく必要があります。また、雇用する上で面接時などに予定される通勤経路の確認や、距離2㎞未満については、徒歩を原則とすることを事前に伝える必要があります。通勤交通費の支給範囲を明確にしていない状態で雇用した後に、バス代の支給をめぐる問題解決の方法として従業員の承諾のないままに就業規則などを追加・変更すると、就業規則の不利益変更と判断される場合がありますのでご注意ください。

消費税増税で歯科医療はどうなる②(全3回)

消費税増税で歯科医療はどうなる②(全3回)

「歯科医院経営への影響と対策」 

◆経営への影響

前回みたように、来院患者数が減少するので、ある程度の収入減は避けられない。特に保険収入の減少が大きい。

一般に、保険医療機関の収入の大部分は保険収入であり、そのうち比較的点数の高い補綴治療の患者が減るため、患者数の減少がそのまま収入減となってしまう。

一方、医療の質にこだわる患者を中心に自費治療の需要はある程度見込めること、そもそも自費収入の比重はそう高くないこと等を考えると、自費収入が減ったとしてもその影響は比較的小さいと思われる。

経費面では、給料賃金・減価償却費は消費税がかからないので増税の影響はないが、歯科材料費・外注技工料・リース料・地代家賃などの経費増が経営を圧迫する。

2006年分確定申告決算書の会員アンケートをもとに個人立歯科診療所の消費税の影響を試算したところ、医業収入3700万円(うち自費収入880万円)、所得金額850万円の場合、消費税率が現行の5%でも51万円もの負担増(損税)になることが分かった(※)。消費税が10%になれば、102万円になる(政府・厚労省が診療報酬点数に消費税分を上乗せしたとしている点については、次回触れる)。

※自費診療で診療代に消費税を転嫁できていない歯科医院も少なくないことから、ここでは50%転嫁したものと仮定し計算した。

◆歯科医療機関4つの経営対策

現在の経済状況で消費税増税を実施すべきでないことは明らかだ。協会は増税中止を求めている。そのことを前提に、ここでは歯科医療機関の対策を考える。ポイントは以下の4点。

第1に、人口減少に伴い中長期的には患者減が予想される。したがって、一人ひとりの患者を長期にわたり定期的に来院するよう啓蒙・教育し、1人でも多くの患者を自院のファンにすることである。そのためのキーワードは、「褒める」「声をかける」「説明する」の3つ。

第2に、疾病構造の変化に対応し、歯周病治療を強化することである。歯周病の怖さを理解していない患者も多いので、歯周病の正しい知識を広げていくことが重要だ。その面で診療現場の努力が必要である。

第3に、高齢患者の増加が明らかなのでその対応を強化すること。これは単に訪問歯科診療の強化を意味しない。高齢者の楽しみは「食」にある。口腔機能の保持により全身の健康とQOLの向上に積極的に関わっていくことがこれからは重要である。

第四に、今こそスタッフを育て、「戦力」にすることである。経営が厳しいからと安易に合理化を考えることは、じり貧を招く。スタッフが安心して誇りをもって仕事ができるよう先生が努力するなら、院内は明るくなり患者は安心して治療が受けられる。