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歯科医療点描⑪ 「か強診」の施設基準に首をひねる/「設置義務」と聞くと違和感が…

「か強診」の施設基準に首をひねる/「設置義務」と聞くと違和感が…

◆「カキョウシン」と「エーイーディー」

最初は先生方が話す「カキョウシン」がよくわからなかった。4月からの診療報酬改定で、新たに「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が登場した。この長い長い呼び名を略したものが「か強診」。なるほど、知恵者がいる、と納得した。

「エーイーディー」もてっきり歯科用の装置だろうと聞き流していたら、何と、救命救急用の除細動器の「AED」のことだった。

X先生によると、「か強診」として認められる歯科診療所には、AEDの設置が義務付けられている。「離れたところにポツンとある歯科診療所ならともかく、メディカルビル内で、同じフロアの医科診療所やビルの廊下にAEDが設置されていても必要だと説明を受けました」。

AEDが出始めの頃、私も何回か新聞記事にした。人工呼吸法を学んだ人でも、近くの人が急に倒れたら、さっと人工呼吸をしてあげる、というのは難しい。いまの時代、うまくいかないと、やり方が悪かったからと責任を押しつけられる可能性もある。その点、手順を指示してくれるAEDがあると便利だし、安心感がある。

しかし、設置義務と聞くと違和感がある。AEDは医師など医療者がいない場所での救命装置ではなかったのかな、という気がしたからだ。医師や歯科医や看護師などがいれば、その人たちが駆けつけるのが一番だろう。AEDのその先の薬だって診療所には備えているはずだ。

いや、人工呼吸法がまったくできない医師や看護師がいるかも知れない。まして歯科医は…、ということだろうか。そういえば大きな病院の廊下でAEDを見たことがある。さては、あそこで倒れたら多忙な医師は来ず、患者同士でAEDをやれ、ということなのか。

▼口腔外バキューム

「口腔外バキュームの設置も義務なのがおかしいんです」とX先生。

歯の治療時は口腔内バキュームを使うが、空中に飛び散る粉や粒子がある。これを吸い込む大型掃除機が口腔外バキュームらしい。音が大きく、設置しても実際はほとんど使わない診療所も多いそうだ。

診療所設備の充実のための基準はわかる。しかし、安全や環境の改善に本当に役立つことが肝心で、X先生が納得していないことは明らかだった。AEDは街中の至る所にあればいい、というものでもあるまい。歯科診療所でAEDが役立つ頻度や、室内空気の清浄度、健康にどう寄与するかといったデータが見たいものだ。

▼特定の装置の普及…

100万円前後を投資して基準を満たせば多少は有利な診療報酬が得られるらしい。ちょっとひねくれた部外者には、厚生労働省なのか、あるいは審議会の先生方かが、加算をエサにして、特定の装置の普及・販売を助けているように見えて仕方がない。

 

医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」201671日号6面掲載

 【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

参院議員選挙と歯系候補者

参院議員選挙での歯系候補者の状況

―今後の動向が注目されるそのほかの医療職種の当選者

7月10日の参院議員選挙の結果が本日7月翌11日、明らかになった。歯科医療界から関心が集まっていた候補者の状況は、関口昌一候補当選89.9万票、山田宏候補当選14.4万票、西村まさみ候補落選3.6万票となり、関口氏は4選を果たし、山田氏は初当選を果たした。

また、今回の選挙で医療関係団体からの推薦を受けて当選を果たした候補者は、自見英子候補(日本医師会推薦)20.4万票、藤井基之候補(日本薬剤師会推薦)13.6万票、高階恵美子候補(日本看護協会推薦)17.4万票、小川活巳候補(日本理学療法士協会推薦)12.5万票、宮島喜文候補(日本臨床検査技師協会推薦)11.8万票となっており、今後の動向が注目されている。

参院議員選挙での歯系候補者の状況/今後の動向が注目されるそのほかの医療職種の当選者

参院議員選挙での歯系候補者の状況

―今後の動向が注目されるそのほかの医療職種の当選者

7月10日(日)の参院議員選挙の結果が本日7月翌11日、明らかになった。歯科医療界から関心が集まっていた候補者の状況は、関口昌一候補当選89.9万票、山田宏候補当選14.4万票となり、関口氏は4選を果たし、山田氏は初当選を果たした。西村まさみ候補は3.6万票で、再選を果たすことができなかった。

◆他の医療関係職種候補者の状況

また、今回の選挙で医療関係団体からの推薦を受けて当選を果たした候補者は、自見英子候補(日本医師会推薦)20.4万票、藤井基之候補(日本薬剤師会推薦)13.6万票、高階恵美子候補(日本看護協会推薦)17.4万票、小川活巳候補(日本理学療法士協会推薦)12.5万票、宮島喜文候補(日本臨床検査技師協会推薦)11.8万票となっており、医科歯科連携、多職種連携の視点を考慮し、今後の動向が注目されている。

試用期間と労働条件通知書/機関紙2016年7月1日号(№556号)より 

試用期間と労働条件通知書/機関紙2016年7月1日号(№556号)より 

質問① 採用に当たり試用期間を設ける予定である。どのような点に注意すればよいか。

回答① 試用期間に関して、歯科診療所の場合、法律の規定はないので、就業規則に定めておくことが必要です。一般的には2週間から3カ月の範囲で決めているところが多いようです。賃金に関しては、最低賃金を守れば本採用になるまでは「採用後の給与の8割を支給する」などと決めることもできます。ただし、1年を超える試用期間は無効とされた判例もあるので、安易に長い試用期間を設定するのは避けましょう。労働保険や社会保険は要件に当てはまれば加入する必要があります。

 

質問② 試用期間中(1カ月)の従業員を業務態度が良くないので解雇しようと考えている。問題ないか。

回答② 労働基準法第21条では、試用期間中の者について解雇予告の必要はないと定めていますが、これは就業規則が定めた試用期間のすべてではなく、試用期間開始から14日以内に限られています。14日を超えてしまった場合の解雇手続きに関しては、通常の労働者と同じく、労働基準法第20条が定める30日前の解雇予告、または30日分の平均賃金の支払いが必要になります。今回は雇用してから1カ月の従業員ということなので、30日後の解雇予告、または30日分の平均賃金の支払いが必要になります。また、試用期間中の解雇であっても、法律上、解雇をするという行為は客観的に合理的な理由や社会通念上相当として認められる場合に限られるとされていますので、安易に決断すべきではないでしょう。

 

質問③ 新しく雇った従業員から「労働契約に関する通知書がほしい」といわれた。今まで、このような文書を従業員に手渡したことがないのだが、どのようなことを記載すればよいのか。

回答③ 労働基準法第15条では、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない、とされています。もし明示しなければ、30万円以下の罰金に処せられる場合もあります。書面の交付により明示しなければならない労働条件は、労働基準法施行規則第5条に、①労働契約の期間、②就業の場所および従事すべき業務、③始業および就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換、⑤賃金、⑥退職―と明記されています。また、就業規則などで別途、賞与や退職金、休職や表彰などの定めがある場合も明示しなければなりません。労働条件通知書や就業規則のたたき台は、保団連発行の「医院経営と雇用管理2013年版」にひな形が掲載されています。当協会では、同書を会員の先生に1冊無料で進呈していますので、ご希望の先生は協会までご連絡ください(TEL  03―3205―2999/担当:経営管理部)。

歯科も視野に入れた在宅医療を議論へ/厚労省が在宅医療検討に本腰

歯科も視野に入れた在宅医療を議論へ/厚労省が在宅医療検討に本腰 厚労省は7月6日、第1回全国在宅医療会議(全国会議)の初会合を開いた。座長には国立長寿医療センターの大島伸一名誉総長、座長代理には日本在宅ケアアライアンスの新田國夫議長を選任した。 議事では、全国会議推進のための「基本的な考え方(案)」が提示され、①在宅医療に係る対策を実効性のあるものとして推進するため必要な協力体制を構築し、関係者が一体となって対策を展開する、②在宅医療の普及の前提となる国民の理解を醸成するため、国民の視点に立った在宅医療の普及啓発を図る、③エビデンスに基づいた在宅医療を推進するため、関係者の連携によるエビデンスの蓄積を推進する―などを確認した。 本年9月に作業班を設置して重点分野を別個に検討、来年3月に第2回目の本会議を開催して重点分野を確認する方向も確認されている。 席上、歯科関連の資料として国立保健医療科学院国際協力研究部の三浦宏子部長の「歯科疾患の疾病構造及び歯科医療需要等の変化に応じた新たな歯科医療の構築に関する研究」(2014年)が紹介されるなど、在宅医療と歯科に関しても話題になっている。 同会議において、在宅療養支援歯科診療所やかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所などがどのように評価され位置付けられるのか、注意が必要だ。

か強診講習会9月25日(日)に開催決定!!

か強診講習会9月25日(日)に開催決定!!

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)のための講習会~外来環・歯援診・医療安全も含めて~ 2016年度改定では、地域包括ケアシステムに対応した歯科医院の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が導入され、施設基準が新たに設けられました。 今回はこの施設基準に定められた研修を1日で受講できます。 また、外来環・歯援診・医療安全にも対応しており、これからの歯科医療に必要な情報をお届けします。 多くのご要望にお応えし、第3回を開催することになりました。定員になり次第締め切りとさせて頂きますので、参加ご希望の先生はお早めにご予約下さい! ◆日 程 2016年9月25日(日) 13:00~18:30 ◆講 師   坂下 英明 氏 明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学第2分野教授 繁田 雅弘 氏  首都大学東京大学院人間健康科学研究科教授 森元 主税 氏  東京歯科保険医協会理事 ◆内 容 偶発症に対する緊急時の対応、医療事故、感染症対策、高齢者の心身の特性、高齢者の口腔機能の管理、在り方(管理計画の立案を含む) ◆会 場  エムワイ貸会議室 高田馬場 9階 (東京歯科保険医協会 隣接ビル) 交通 JR・東京メトロ東西線・西武新宿線 高田馬場駅 下車徒歩5分 ◆参加費 8000円(か強診・外来環・歯援診・医療安全の修了証込) ◆定 員 150名 ◆対 象 会員のみ(当講習会は必ず会員ご本人がご出席下さい。代理人参加は修了証を発行できません。) ◆要予約 TEL 03-3205-2999(担当:経営管理部、地域医療部) ※遅れて参加された場合や途中で退席された場合は、修了証の発行はできません。 ※8月下旬にご案内と参加費の振り込み請求書を送付致します。     〇かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所とは 地域包括ケアシステムにおける地域完結型医療を推進していく、う蝕又は歯周疾患の重症化予防に係る管理、摂食機能障害及び歯科疾患に対する包括的で継続的な管理の評価です。 ○エナメル質初期う蝕管理加算(260点)…エナメル質初期う蝕に罹患している患者を管理・指導した場合 ○歯周病安定期治療(Ⅱ)(歯数により380点~830点)…P治療後、病状安定した患者に歯周組織の状態維持のための継続的な治療を行う場合 ○在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(+100点)…在宅等で療養している患者の摂食機能障害及び歯科疾患に対する管理をした場合 などの算定が可能です。 *すでに外来環・歯援診両方の届出をされている医療機関については、修了証の有効期限は問われません。(すでに受講した講習会で要件を満たす場合は再度の受講は必要ありません) *外来環、又は歯援診のいずれかのみの届出をされている場合、またはどちらも届出されていない場合は、修了証の有効期間が3年となります。   〇歯科外来診療環境体制加算(外来環)とは 患者にとってより安全で安心できる歯科外来診療の環境の整備を図る取組に対しての評価です。 ○外来診療の初・再診料への加算が可能です(初診時+25点、再診時+5点)。   〇在宅療養支援歯科診療所(歯援診)とは 在宅等における療養を歯科医療面から支えることの評価です。 ○歯科訪問診療補助加算(1人+110点、2人以上+45点)・・・DHが同行訪問し、補助を行った場合 ○歯科疾患在宅療養管理料(240点)・・・口腔機能の評価を行い、管理計画書を作成した場合 などの算定が可能です。   〇医療安全に関する職員研修とは 2007年の医療法改正により、「医療安全管理研修」と「院内感染対策研修」に職員ひとりひとりが年最低2回出席することが義務付けられています。今講習会は「医療安全管理」「感染対策」両方に当てはまります。 【会場地図】 エムワイ貸会議室9階

歯科医療情報の標準化の検討進める/歯科医療機関の電子カルテ情報を身元確認に活用

歯科医療情報の標準化の検討進める/歯科医療機関の電子カルテ情報を身元確認に活用 厚生労働省は6月22日、「歯科診療情報の標準化に関する検討会」(座長:友雅人日本歯科医学会長)を厚労省内会議室で開催した。 この検討会は、東日本大震災で亡くなった方々の身元確認に、遺体の歯科所見と歯科医療機関がもつ歯科診療情報の照合が有効であったことから、歯科医療機関の電子カルテ情報を身元確認につながるよう標準化を進める目的で設置されたもの。検討項目は、歯の部位情報の標準化等、処置コードの標準化等、個人情報の保護に関する方策など。初会合は2013年8月となっている。 今回は、歯科診療情報標準化の実証事業について議論し、解決すべき課題を分類し、①口腔状態の標準データセット交換規約策定、②標準化した歯科診療情報の保存、③標準化普及の課題:歯科医療従事者と国民の理解、民間企業の幅広い協力、④歯科診療情報標準化達成後の課題:歯科診療情報以外の歯科情報の標準化と保存・管理、⑤大規模災害時時の身元確認方法整備、標準化された歯科情報の利活用―などをあげている。すでに①~③までの議論はかなり進んでおり、今後は④が議論・検討の中心となる。

進む歯科医療情報の標準化で検討行う/歯科医療機関の電子カルテ情報を身元確認に活用

進む歯科医療情報の標準化で検討行う 歯科医療機関の電子カルテ情報を身元確認に活用 厚生労働省は6月22日、「歯科診療情報の標準化に関する検討会」(座長:友雅人日本歯科医学会長)を厚労省内会議室で開催した。 この検討会は、東日本大震災で亡くなった方々の身元確認に、遺体の歯科所見と歯科医療機関がもつ歯科診療情報の照合が有効であったことから、歯科医療機関の電子カルテ情報を身元確認につながるよう標準化を進める目的で設置されたもの。検討項目は、歯の部位情報の標準化等、処置コードの標準化等、個人情報の保護に関する方策など。初会合は2013年8月となっている。 今回は、歯科診療情報標準化の実証事業について議論し、①第1に解決すべき課題:口腔状態の標準データセット交換規約策定、②第2に解決すべき課題:標準化した歯科診療情報の保存、③標準化普及の課題:歯科医療従事者と国民の理解、民間企業の幅広い協力、④歯科診療情報標準化達成後の課題:歯科診療情報以外の歯科情報の標準化と保存・管理、⑤大規模災害時時の身元確認方法整備、標準化された歯科情報の利活用、などをあげている。すでに①~③までの議論はかなり進んでおり、今後は④が議論・検討の中心となる。

2016年度第44回定期総会を開催!

2016年度第44回定期総会を開催! 協会は6月19日、中野サンプラザにおいて2016年度第44回定期総会を開催した。当日は一般会員、役員ら41名が出席した。委任状総数は924枚であった。 冒頭、挨拶に立った松島良次会長は、1年間の取り組みを紹介し、今後もさらに発展させて取り組んでいきたいと語った。 議案は1号議案から7号議案まですべて承認された。7号議案は総会「決議」で、その全文を以下に紹介する また、役員補充の提案があり、早坂美都氏(世田谷区)が新理事として承認された。 対談450pixIMG_2831 次いで行われた特別対談「2016年度改定と“かかりつけ歯科医”~これからの日本の歯科医療を考える~」では、日本歯科医師連盟の高橋英登会長をお呼びし、当協会の松島良次会長とこれからの歯科医療について対談を行った(左写真)。会場は満席で、フロアからも活発な意見が飛び交った。 最後に行われた懇親会も、国会議員多数の参加もあり、大変盛会であった。      

【第44回定期総会決議】

2016年4月14日、熊本県・大分県を震源とするマグニチュード7を超える大きな地震が発生した。発災後2カ月以上経過したが、住み慣れた地域に戻れない被災者もいまだ多い。被災地では日常生活を取り戻すため仮設住宅などの提供・支援、道路・河川施設などの整備が急務であり、復旧・復興に向けた迅速な対応が政府に求められている。 昨年、安全保障関連法が大混乱の中、国会で強行採決された。国民への説明はいまだに十分にされず政府への不信は拭えないままとなっている。医療においては昨年成立した医療保険制度改革関連法により、入院時食事療養費の自己負担額引上げや75歳以上の保険料負担、紹介状なしの大病院受診の定額負担など、新たな患者負担増が続いている。医療費適正化の名のもとに国民にその責任を転嫁していることは看過できない問題である。 また、経済状態の悪化を理由とした消費税の再増税延期は、政府が行ってきた経済政策の失敗の結果であり、そのことを理由に社会保障制度充実の先送りは許されない。今こそ格差・貧困の拡大や雇用の不安定化による生活不安を根底から立て直す政策を行うべきである。 いま、歯科医療機関の経営は厳しい状況にある。今年実施された歯科診療報酬改定では、安心・安全の歯科医療を患者・国民に継続的に提供できる内容とはなっていない。特に、新設された「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」は、歯科医療機関を施設基準で区別し、本来患者が求める「かかりつけ」を無視した評価になっている。改めて、歯科診療報酬の改善を求めるものである。 私たちは、政府が「骨太の方針2016」で示した社会保障削減策を推し進める動きに対し断固反対し、国民の生活と充実した医療の実現に向けた運動を国民とともに力を合わせ、以下の要求を表明する。

一.わが国の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする社会保障制度を充実させること。 一.高齢者の医療保険や介護保険の負担金を引き下げること。 一.歯科医療機関の経営を抜本的に改善するため歯科診療報酬を引き上げること。 一.医療への消費税非課税制度を、ゼロ税率などに改めること。 一.保険医を萎縮診療に誘導し、患者の受療権を侵害する高点数を理由とした一切の指導を行わないこと。 一.生命と健康を脅かすものを排除し、平和を尊ぶ社会を目指すこと。 2016年6月19日 東京歯科保険医協会 2016年度第44回定期総会

第44回定期総会「決議」/機関紙2016年7月1日号(№556)3面掲載

第44回定期総会「決議」

2016年4月14日、熊本県・大分県を震源とするマグニチュード7を超える大きな地震が発生した。発災後2カ月以上経過したが、住み慣れた地域に戻れない被災者もいまだ多い。被災地では日常生活を取り戻すため仮設住宅などの提供・支援、道路・河川施設などの整備が急務であり、復旧・復興に向けた迅速な対応が政府に求められている。 昨年、安全保障関連法が大混乱の中、国会で強行採決された。国民への説明はいまだに十分にされず政府への不信は拭えないままとなっている。医療においては昨年成立した医療保険制度改革関連法により、入院時食事療養費の自己負担額引上げや75歳以上の保険料負担、紹介状なしの大病院受診の定額負担など、新たな患者負担増が続いている。医療費適正化の名のもとに国民にその責任を転嫁していることは看過できない問題である。 また、経済状態の悪化を理由とした消費税の再増税延期は、政府が行ってきた経済政策の失敗の結果であり、そのことを理由に社会保障制度充実の先送りは許されない。今こそ格差・貧困の拡大や雇用の不安定化による生活不安を根底から立て直す政策を行うべきである。 いま、歯科医療機関の経営は厳しい状況にある。今年実施された歯科診療報酬改定では、安心・安全の歯科医療を患者・国民に継続的に提供できる内容とはなっていない。特に、新設された「かかりつけ歯科医機能強化型診療所」は、歯科医療機関を施設基準で区別し、本来患者が求める「かかりつけ」を無視した評価になっている。改めて、歯科診療報酬の改善を求めるものである。 私たちは、政府が「骨太の方針2016」で示した社会保障削減策を推し進める動きに対し断固反対し、国民の生活と充実した医療の実現に向けた運動を国民とともに力を合わせ、以下の要求を表明する。

一.わが国の社会保障を後退させず、世界の国々が模範とする社会保障制度を充実させること。 一.高齢者の医療保険や介護保険の負担金を引き下げること。 一.歯科医療機関の経営を抜本的に改善するため歯科診療報酬を引き上げること。 一.医療への消費税非課税制度を、ゼロ税率などに改めること。 一.保険医を萎縮診療に誘導し、患者の受療権を侵害する高点数を理由とした一切の指導を行わないこと。 一.生命と健康を脅かすものを排除し、平和を尊ぶ社会を目指すこと。 2016年6月19日 東京歯科保険医協会 第44回定期総会 総会背後IMG_2736          

歯科診療報酬改定内容や談話2件などを話題にメディアと懇談/第1回メディア懇談会を開催

歯科診療報酬改定内容や談話2件などを話題にメディアと懇談/第1回メディア懇談会を開催(通算57回目)

協会は6月10日、2016年度第1回(通算57回)メディア懇談会を開催。メディア側からは4社が参加。協会側は説明、報告に矢野正明副会長が行い、司会は広報部長の坪田有史副会長があたった。

主な話題は、①2016年度診療報酬改定が施行されてから2カ月が経過したことを踏まえての政策委員長談話のほか、協会としての評価や特徴的な事象、協会としての対応状況、②6月10日付け地域医療部長談話、③6月19日(日)開催の第44回定期総会の取材案内、④6~8月に開催予定の関係団体の各種催し物の紹介―などで、①をめぐっては、参加メディアとの間で盛んに意見交換が行われた。

◆「か強診」めぐり議論沸く

今期改定後に関する話題①の中では、新設された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「か強診」)に関する5月23日付けの坪田有史政策委員長談話「本当の“かかりつけ”を評価しない“か強診”に抗議する」を紹介し、さらに、協会が本年5月に開催した2回のか強診講習会の状況について「初回、第2回とも定員200名は満席でキャンセル待ちの会員が出る状況となり、9月に追加講習会を設定した」ことを報告すると、驚きの声が漏れた。

参加メディアからは、「か強診は健康保険法上の診療報酬では点数が決まってはいるものの、医療法上には施設基準、人員配置基準は規定されておらず、医政局不在で保険局独走の形であり、ダブルスタンダードになっていない」「医科ならば、病院の施設基準に触れるような場合は、必ず医療法を改正した対応が必要で、多くの労力や時間が必要。しかし大多数が診療所の歯科に対しては保険局による診療報酬だけで対応し、不都合であればすぐに取り下げるなどで対処していることが多い。実は、この違いに、多くの歯科医師が大きな不満を持っているが、表面化していない」などが指摘されたほか、「か強診の届け出をしている、していない歯科診療所がどのように見られるかについて、充分に注視して行く必要がある」といった問題提起も行われた。

◆協会初の地域医療部長談話

また、地域医療部長談話「“食べること”を中心とした地域包括ケアシステムを望む」については、協会初の地域医療部長談話であること、今回のメディア懇談会当日付発表との状況も重なり、内容に共感した多数の意見が交差したほか、「歯科医師が今よりも食、食べることに真摯に取り組むことや、地域で顔の見える活動に入っていく必要性がある」なども指摘された。

◆歯科をめぐる情勢で厚労省の指導見直し内容も話題に

そのほか、情勢との関連で厚生労働省が指導を一部見直したことが話題となり、機関紙6月号でも紹介した①指導通知は1カ月前、対象患者は1週間前と前日、②長期療養患者や電子データでの持参、適切な対応を行うことを明記、③「集団的個別指導はおおむね30件未満―などを説明したが、協会としては「これではとても改善したとは言い難い状態。指導問題の改善に向け運動を続ける」ことを改めてメディア側に伝えた。

保険請求できるファイバーポスト・床裏装用軟質材料を更新

5月31日付通知「医療機器の保険適用について(通知)」で、

 

6月以降に使用できる材料が追加され、「会員向け情報」「診療報酬改定対策」「2016年度」

 

に使用できる材料の一覧を更新しました。

 

ダウンロードはコチラをクリック(ログインにはIDとパスワードが必要です)

歯科医療点描⑩ 治療中断・未受診が多いのは問題/保険医療の範囲についても議論を

治療中断・未受診が多いのは問題/保険医療の範囲についても議論を

日本も貧しくなったなあ、と感じることがこのごろ多い。バブル期は威勢がよかった企業も、儲けのために、いまやなりふり構わずごまかす。生活保護、貧困家庭、下流老人といった言葉が日常紙面にあふれ、身内や近所での理解しがたい事件が続発している。

昨年1月、保団連の懇談会で医療や介護現場にも貧困が予想以上に大きな影を落としていると知ってびっくりした。治療中断が増え、大阪では9割の歯科医師が経験しているという。また、宮城、長野、大阪の学校の歯科健診で「要治療」といわれた小学生の5割、中学生の67割は受診しない。

東京歯科保険医協会のその後のメディア懇談会でも、関連の話題がいくつか出た。東日本大震災の歯科医療支援の際、東北には東京で見たことのないほどひどい歯のお年寄りがいた、などの話が印象に残っている。

お金は山ほどあるが、子どもには歯科治療は禁じている親がいるとは思えない。中断や未受診の理由はいろいろ出ているが、結局はお金、貧困に行き着く。2015年の報告では、日本の子どもの貧困率はOECD(経済協力開発機構)34カ国中の11位だった。子どもの貧困の背景には、離婚による母子世帯の増加、元夫の養育費の不払い、派遣労働・低賃金労働の増加などが考えられる。国民皆保険制度でありながら、保険料が払えずに枠外に追いやられている人もいる。

調査だけにとどまらず、保団連が子ども医療費助成制度拡充運動を展開し、成果を上げているのは素晴らしい。また、一方で、「保険で良い歯科医療を」運動も重要だ。必要な治療は保険で受けられるべきだし、高額な窓口負担は受診抑制や治療中断につながる。

先日、『日本歯科新聞』のコラムに書いたことだが、超高額薬の保険適用が大きな話題になっている。分子標的薬と呼ばれる月30万円、60万円といった抗がん剤が次々登場、ついに月290万円、年3500万円のがん免疫薬が一部肺がんに認められた。対象患者5万人が使えば17500億円にもなり、保険制度の崩壊を懸念する声も出ている。

薬価はなぜか原材料費や製造費と関係がなく、同じ目的の従来薬との比較で決まっている。抗がん剤は治す力はないが、企業の開発意欲を刺激するために、もともとかなり高く設定されていた。最近のように効く薬が出てくると、驚くほど高くなる。

高品質材料の義歯など、歯科医療の一部が保険外になったのは、価格が高いとの理由からのはずだ。しかし、薬ならどれだけ高くてもいいというのはやはりおかしい。保険制度全体が危うくなれば、歯科には無関係な薬、とはいっておれない。

保険医療財源の配分をめぐる駆け引きだけでなく、保険医療の範囲など、より根本的な議論が必要な時期が来ている。

 

医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」2016年61日号6面掲載

 

【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

地域包括ケアシステムをめぐり地域医療部長談話を発表/「食べること」を中心とした地域包括ケアシステムを望む

☆ 高齢社会の中で歯科がはたすべき役割 ☆

昨年、当協会が行った「要介護高齢者の口腔内状況調査」では、「う蝕がある」が7割を超え、「歯周病がある」が9割弱、「口腔状況から判断すると義歯の使用が必要」が3割を超えるなど要介護高齢者の口腔状況が、悪いまま放置されていることが浮き彫りになった。

また歯科診療所からは「ケアマネジャーやヘルパーは歯科を理解していない」「介護職は要介護高齢者の口腔を見ていない」などの声がある一方で、介護職からは「もっと歯科が関わってほしい」「歯科は入れ歯を作るが、食べられるようにしてくれない」などの声がある。

これらは、地域の保健・福祉・介護の中に歯科が位置付けられていない状況を如実に示している。歯科が関わることで歯科疾患の早期発見、早期治療だけでなく、誤嚥性肺炎など全身に関わる疾患の予防や「食べること」を改善することもできる。

このような現状、背景を勘案し、国が進めている地域包括ケアシステムの問題点と歯科の関わりについて、当協会の馬場安彦地域医療部長が本日6月10日付で談話を作成したので、以下に紹介する。

【地域医療部長談話】

「食べること」を中心とした地域包括ケアシステムを望む / 食べることは生きること

人は食べなくては生きていけない。食べるためには、摂食・咀嚼・嚥下をする必要がある。しっかり食べることは、障害や病気の方、高齢者だけでなく全ての国民にとって生きていくうえで重要なことである。この重要なことに、一番関わるのが歯科である。現在は、医療としての関わりが中心となっているが、保健・福祉・介護の面からも、歯科が関わることで、元気な高齢者を増やすことになり、患者・国民からの信頼を得られることになる。

◆医療費削減ありきの地域包括ケアシステムに反対

 国は「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制」として地域包括ケアシステムを位置付けている。理念的には賛成できるが、実際には「自助・互助」を中心として、国の負担を減らし、代わりに患者・国民の負担を増やそうとしている。医療費削減を目的とするような地域包括ケアシステムには医療人として反対する。

◆歯科から創る「食べること」を中心とした地域でのネットワーク

「食べること」を中心とした地域でのネットワークは、歯科医師が中心となって作っていくべきである。地域で包括的なネットワークを構築していくためには、医療だけでなく、保健・福祉・介護の分野にも関わっていく必要がある。しかしながら、現状では保健・福祉・介護の分野では口腔状況の把握はほとんどされておらず、食べる能力のある患者や高齢者が食べられない状況に置かれていることも見受けられる。

協会では、国会内学習会、東京都への予算要望などを通じて、「介護認定の口腔状況チェックを強化し、必要に応じて歯科主治医への紹介を義務付ける」など、歯科が様々な分野に関わっていけるよう要望をしている。しかしながら、「歯科がもっと関わってほしい」との患者・国民からの声がなければ、現状を変えていくことは難しい。変えるためには、歯科医師一人ひとりが、国民に「歯科ができること」をもっと伝えていく必要がある。

まずは診療所がある地域の保健・福祉・介護の職種、医療関係職種、そして、来院してくれる患者に対して、歯科医師・歯科医院として何ができるのか自ら伝えていくことから始め、どの歯科医院でも口腔内の治療を行うだけでなく、「食べること」を診られるようにしていかないといけない。患者・国民に喜ばれる「食べること」を中心とした地域でのネットワークが地域包括ケアシステムの中に位置付けられるよう歯科から働きかけていこう。

 

2016年6月10日

東京歯科保険医協会

地域医療部長  馬場安彦

地域医療部長談話イメージ写真

 

地域医療部長談話「食べること」を中心とした地域包括ケアシステムを望

「食べること」を中心とした地域包括ケアシステムを望

◆食べることは生きること

人は食べなくては生きていけない。食べるためには、摂食・咀嚼・嚥下をする必要がある。しっかり食べることは、障害や病気の方、高齢者だけでなく全ての国民にとって生きていくうえで重要なことである。
この重要なことに、一番関わるのが歯科である。現在は、医療としての関わりが中心となっているが、保健・福祉・介護の面からも、歯科が関わることで、元気な高齢者を増やすことになり、患者・国民からの信頼を得られることになる。

◆医療費削減ありきの地域包括ケアシステムに反対

国は「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制」として地域包括ケアシステムを位置付けている。理念的には賛成できるが、実際には「自助・互助」を中心として、国の負担を減らし、代わりに患者・国民の負担を増やそうとしている。医療費削減を目的とするような地域包括ケアシステムには医療人として反対する。

◆歯科から創る「食べること」を中心とした地域でのネットワーク

「食べること」を中心とした地域でのネットワークは、歯科医師が中心となって作っていくべきである。
地域で包括的なネットワークを構築していくためには、医療だけでなく、保健・福祉・介護の分野にも関わっていく必要がある。しかしながら、現状では保健・福祉・介護の分野では口腔状況の把握はほとんどされておらず、食べる能力のある患者や高齢者が食べられない状況に置かれていることも見受けられる。
協会では、国会内学習会、東京都への予算要望などを通じて、「介護認定の口腔状況チェックを強化し、必要に応じて歯科主治医への紹介を義務付ける」など、歯科が様々な分野に関わっていけるよう要望をしている。しかしながら、「歯科がもっと関わってほしい」との患者・国民からの声がなければ、現状を変えていくことは難しい。変えるためには、歯科医師一人ひとりが、国民に「歯科ができること」をもっと伝えていく必要がある。
まずは診療所がある地域の保健・福祉・介護の職種、医療関係職種、そして、来院してくれる患者に対して、歯科医師・歯科医院として何ができるのか自ら伝えていくことから始め、どの歯科医院でも口腔内の治療を行うだけでなく、「食べること」を診られるようにしていかないといけない。患者・国民に喜ばれる「食べること」を中心とした地域でのネットワークが地域包括ケアシステムの中に位置付けられるよう歯科から働きかけていこう。
2016年6月10日 
東京歯科保険医協会
地域医療部長 馬場安彦

「税務調査」その実際と対応/機関紙2016年6月1日号(№555号)より 

「税務調査」その実際と対応/機関紙2016年6月1日号(№555号)より 

質問① 開業して間もないのだが、税務調査とはどのようなものか。

回答① 税務調査は確定申告の内容に間違いがないか、税務署の職員が書類等を調査することです。税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類があります。強制調査とは、国税局査察部が脱税疑いのある納税者に対して強制的に調査を行うものです。令状を持って強制的に調査が行われることから、事前に脱税の証拠を固めてから行われます。税金に関してあらゆるものを押収できるため、ほぼ抵抗はできません。しかし、強制調査の対象は脱税額が偽り不正により多額である時、または悪質なものであるといわれているので、税務調査の大半は任意調査になります。任意調査は、納税者の同意、協力を得て行われています。ただし、税務署には質問検査権という権利があり、質問については正当な理由がない限り拒否してはならないということになっています。正当な理由がないにもかかわらず断った場合には、所定の罰則が科せられます。このように、任意調査は間接的に強制力のある税務調査といえます。3~5年ごとに定期的に税務調査があるといわれていますが、そのようなケースでは、ある程度の売上高や規模がある、または会計処理や税務処理に問題がある場合が多く、実際には開業してから10年以上も税務調査がないケースもあります。

 

質問② 税務調査(任意調査)の通知を受ける際、どのようなことに注意すればよいか。

回答② 国税通則法第74条の9では、税務調査(任意調査)を行う際に、税務職員は一定事項について予め納税者等に通知することが定められています。具体的には、「調査を行う場所」「調査の目的」「調査の対象となる税目」「調査の対象となる期間」「調査の対処となる帳簿書類その他の物件」などであり、これらをすべて通知しなければいけません。そもそも「任意調査」は、「される」のではなく「させる」のが基本です。「なぜ調査をするのか」「何を調べたいのか」その説明を求め、調査の範囲を限定させることが大事です。つまり、予め通知した事項に反する調査はできません。例えば、「過去三年分の調査」と通知を受けたのであれば、調査中に税務署職員が「過去五年分について調査したい」ということは原則的にできません。したがって、口頭で行われる通知内容は納税者側できちんと把握する必要があります。協会では事前通知チェックシートも用意していますので、お気軽にご相談ください。

 

質問③ 事前に、どのようなことを準備すればよいのか。

回答③ 税務調査において、税務署の勝手な見解で税金を課すことはできません。法律に規定があるかないかが非常に重要になります。法的に対処するには証拠が重要ですので、例えば、領収証に一緒に食事した相手の名前・目的を控えるなど、日頃からこまめに証拠の保存を心がけましょう。歯科診療所の税務調査で特に指摘されやすいのは「自費治療」「金属売却益」「専従者給与」「交際費」などです。税務調査の中ではアポイント帳と日計表を突き合せ、アポイント帳に記載のある患者の収入が日計表に記載がない場合、「自費治療の計上漏れ」と指摘することが多いそうです。義歯の無償修理の場合でも、あたかも自費治療の計上漏れのように指摘されるケースもあるので、日計表で無償修理と分かるように記載しておきましょう。近年、「金属売却益」の計上漏れを指摘されるケースが目立っています。これは「雑収入」に該当するので、会計処理の際にご注意ください。そのほか、専従者給与の妥当性を指摘されるケースも目立ちます。専従者については業務日誌を作成し、労務に従事した期間や労務提供の程度などを税務署側に説明できるように準備してください。税務調査の中では帳簿の持ち帰りを求められるケースが非常に多くあります。国税通則法第七十四条の七では、帳簿書類について、必要があれば留め置き(帳簿の持ち帰り)を認めていますが、事務運営方針の中では納税者に必要性を説明した上で「その理解と協力の下、承諾を得て実施する」としています。したがって、業務に支障があると判断したような場合は留め置きを断ることができます。税務署から調査を行いたい旨の連絡があった場合は帳簿の留め置き、カルテの閲覧要請、どう対応すべきかなど、準備事項はたくさんあるので、ぜひ協会へご相談ください。

映画紹介№28「セッション / WHIPLASH 」

映画紹介№28「セッション / WHIPLASH 」

【2014年米国/デミアン・チャゼル監督作品】

「テンポを合わせる気があるのか?」
「わざとバンドの邪魔をすると」
「ブチのめすぞ」
舞台はニューヨーク、秀才の集まるシェイファー音楽院大学。
映画は将来、偉大な音楽家になることを夢見て入学し、日夜、練習に励んでいる優秀な学生が、常軌を逸した教授の指導の餌食にされ生徒の能力を引き出すと称して、潰されてしまった生徒のリベンジドラマです。
トップシーンはシェイファー音楽院の秋期から始まります。スロー・テンポのドラムが次第にテンポを上げ、暗い部屋の中でドラムの練習に励む十九歳の青年が映し出されます。

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「名前は?」
「ニコールです」
「何年生?」
これがこの青年と教師の最初の出会いでした。
「フレッチャー教授が僕の演奏をみてた」
と青年は誇らしげに父親に報告します。
「ビリーゼインを頭からやる」
「ドラム、スウィング、テンポ!倍速で!」
指揮者であり教官である教授は常軌を逸した恫喝と暴力で生徒を指導します。
「音程がズレている奴がいる」
「115小節から」
「まだズレてる奴がいる」
「犯人はお前だ」
「わざと音程をズラしてバンドの邪魔をしたいのか」
「お菓子は落ちてない。なぜ下を見る?」
「自分で音程がズレていると思うか?」
「はい…」
すると大声で怒鳴りあげ、
「足手まといも限界だ。 デ ブ野郎!」
「音程よりメシが大事か」
「なぜ座っている。出ていけ!」
「自覚のなさが命取りだ」
レッスンは熱を帯び、狂気に満ち、常に完璧を求め、生徒ができないと容赦ない罵声を浴びせます。
「おまえはクズでオカマ唇のクソ野郎だ!」
「女の子みたいに泣いて。 私のドラムがヨダレまみれだ」
「もっと、もっと練習しろ」
来る日も来る日も、スティックで指は擦りむけ、血だらけになります。演奏家の宿命は練習です。
「君と会う余裕がない」
恋人とも別れ、異常な、切迫した世界にのめり込んでしいます。
3人の競争者の中で主演奏者に選ばれるが、不運にも会場に向かうバスが衝突事故を起こし、遅刻してしまいます。それを理由に、一方的に主奏者から降ろされてしまいます。
「クソ野郎、殺してやる、死ね」と、教授に殴りかかりコンサートのステージは滅茶苦茶になってしまいます。その後青年は退学となり、教授は精神的苦痛を与え、極端に行き過ぎた指導があったと密告され、大学を追い出されてしまいます。そして数カ月後の夏、二人に運命的な再会が訪れます。
「密告者は お前だな」
「私をナメルなよ」
いったんは退場するが、引き返し「キャラバン」の序奏を叩き始めます。2000人の会場は「キャラバン」の演奏に包まれ、盛り上がって行き、ドラマのソロが延々と続きます。
音楽業界に留まらず、あらゆる組織、業界に潜む無能な権力者や指導者による歪んだ情景を切り取った秀作です。第87回アカデミー賞五部門でノミネートされ、教授を演じたJ・K・シモンズの助演男優賞を含む3部門で受賞しました。
(協会理事/竹田正史)

募集キャンペーン第二弾!第2休業保障制度の募集が始まりました!!

共済募集キャンペーン第二弾!第2休業保障制度の募集が始まりました!!

(2016年6月1日~2016年6月30日まで)

「第2休業保障制度(団体所得補償保険)」は、医院で働く歯科医師・歯科助手・歯科衛生士・歯科技工士・専従者の休業をサポートするためにつくられた制度です。

本制度について詳しい資料が必要な方は協会・共済部(Tel:03-3205-2999)または株式会社アサカワ保険事務所(Tel:03-3490-1751)までお気軽にお問い合せください。

第2休業保障制度のチラシはこちら

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政策委員長談話/本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する/機関紙2016年6月1日号(№555)3面掲載

政策委員長談話

本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する

施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

今改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)」が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる。

しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け1物2価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来,患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

患者が望む医療機関をかかりつけとし、

通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

今改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状の無い場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯にわたり診てほしいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。

また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か、否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。

協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めるとともに、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

 

2016年5月23日 

東京歯科保険医協会政策委員長

坪田有史

政策委員長談話/本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する

 2016年度診療報酬改定において、地域包括ケアシステムの構築を目的に、歯科におけるかかりつけを評価した「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)が新設されました。協会では、届出に必要な研究会を開催するなど「か強診」への対応をしつつ、昨年の中医協で議論されている頃より「か強診」に関する議論を重ねてきました。

 この度、現時点までの議論を踏まえ、政策委員長が5月23日に談話を発表しましたので、下記に示します。

 

本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する

 

施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

 今改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)」が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる

 しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け1物2価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来,患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

 

患者が望む医療機関をかかりつけとし、

通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

 今改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状の無い場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯に渡り診て欲しいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。

 また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か、否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。

 協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めると共に、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

 

2016年5月23日 

政策委員長 坪田 有史

「歯科保険診療の研究」正誤表をアップしました

5月上旬に会員の先生方に送付しました「歯科保険診療の研究(2016年4月版)」は

他県で編集しているため、東京の解釈と異なる部分があります。

正誤表を作成しましたので、ご参照の上、座右の友としてご活用ください。

 

ダウンロードはコチラをクリック(ログインにはIDとパスワードが必要です)

政策委員長談話「本当の“かかりつけ”を評価しない“か強診”に抗議する」

政策委員長談話「本当の“かかりつけ”を評価しない“か強診”に抗議する」

◆施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

今次改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる。
しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け一物二価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来、患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

◆患者が望む医療機関をかかりつけとし通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

今次改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状のない場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯に渡り診てほしいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。
また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。
協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めるとともに、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

2016年5月23日
東京歯科保険医協会
政策委員長 坪田有史

 

政策委員長談話/本当の「かかりつけ」を 評価しない「か強診」に抗議する

本当の「かかりつけ」を 評価しない「か強診」に抗議する

◆施設基準で「かかりつけ」を評価して良いのか

今次改定で、地域包括ケアを背景とした「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(以下、「か強診」)が新設された。届出をした場合に算定できる点数としてエナメル質初期う蝕管理加算、SPT(Ⅱ)、訪問口腔リハへの加算が新設された。また「か強診」の役割として、団塊世代が75歳以上になる2025年に向け、改定では患者の口腔機能の維持と回復に焦点をあて、う蝕や歯周病の重症化予防、摂食機能障害を有する患者に対する包括的な管理を評価すること、ゲートキーパーを盛り込まなかったことは一定理解できる。
しかし、これらは「か強診」以外の医療機関で算定できるエナメル質初期う蝕に対するF局・SPT(Ⅰ)・訪問口腔リハと治療内容は本質的に同じであり、施設基準の有無で診療報酬に差を付け一物二価としたことは容認できない。また、在宅にいる患者を地域でみるという地域包括ケアシステムの本質で言えば、訪問口腔リハを介護保険との給付調整の対象とし、事実上、在宅の要介護・要支援者を対象外としたことは問題である。本来,患者と歯科医療機関との信頼関係で成り立つ「かかりつけ」を施設基準で評価することには反対である。

◆患者が望む医療機関をかかりつけとし通院・在宅を問わず治療が受けられる仕組みを

今次改定では、地域包括ケアの構築に向けた機能分化が進められ、紹介状のない場合の大病院の受診に一部負担金以外の負担を設けた。その上で、偶発症や感染症対策・訪問診療を実施する地域の歯科医療機関をかかりつけ歯科医機能を持つ「か強診」と評価した。しかし、「かかりつけ」とは、患者自身が一歯科診療所に通院していく中で、当該診療所で生涯に渡り診てほしいと考え、選択するものであり、医療機関側が決めるものではない。
また、患者が通院している歯科診療所が「か強診」か否かで内容と保険点数および負担金が変わることは、患者の理解を得やすいものではなく、現場に混乱を生じる危険性がある。
協会は、「かかりつけ」を適切に評価することを求めるとともに、本当の「かかりつけ」を評価しない「か強診」に抗議する。

2016年5月23日
東京歯科保険医協会
政策委員長  坪田有史