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症例研究/歯科特定疾患療養管理料について(2016年3月1日/No.552)
歯科医療点描⑨ 「質管理官」か「質相談医」を作ったら/患者側からみれば歯科医師の腕=質が大事
「質管理官」か「質相談医」を作ったら/患者側からみれば歯科医師の腕=質が大事
前回の本欄で、私は「医療の質」を強調した。これは医科に限ったことではなく、歯科も同様だ。これまでの歯科は予防や内科系よりも外科系、技術系の要素が強かった分、一層、重要だといっていい。
病気の治療体験はつい最近までなかった私だが、歯磨きがいい加減だったせいか、虫歯は何本も削って詰めてもらった。歯周病にもなり、結局、3本か4本は抜歯せざるをえなかった。勤務中に受けられる会社の診療所が多かった。当時は会社を信用し、気には留めてもいなかったが、先生方の技術力は果してどうだったのかはわからない。
難しい病気にかかると、患者さんはどこの病院へ行ったらいいか悩む。とはいえ病院は国立、県立、日赤など、ある程度評判が高い病院が地域にはある。医師の腕が一番わかるのは“医師”だが、病院には多くの医師がいる。特に、診療科が同じか近い医師の目はごまかせない。次いで看護師だろうか。評判のいい病院内で「うちは○○科はダメね」などの噂が流れたりする。
ところが歯科はどうか。ほとんどが診療所で、しかも一人歯科医が多い。研修を短かくし、親の診療所に入れば、他の歯科医の目に触れる機会もほとんどない。患者さんが歯科医の腕を知ることは医科以上に難しい。結局、歯科診療所は腕とは無関係に選ばれる。一番いいのは近くて通いやすいところ。地域の古い診療所ではいつの間にか、息子さんや娘さんの代にかわっている。
以前、合わない入れ歯の話がNHKテレビで報道された。お年寄りは「合わない入れ歯をいくつも持っているが、痛いので食事時は外している」という。8020運動のきっかけでもあるが、日本の高齢者の残存歯数は北欧などより少ない。医科以上の歯科の質のバラツキがこれらに関係しているのではないか。
厚生労働省や歯科医師会、歯科関係学会がこの“質の問題”に関心を持たないのは、外側の人間には本当に不思議に思える。学会は専門技術ごとにできている。インプラント治療などの最新技術を習得する機会を提供することは重要だが、医療の目的からすれば、それが患者さんのプラスになることがもっと重要だ。技術の未熟な歯科医の治療が横行すれば、学会や歯科医全体の信用を落とす。講習料を払えば全員合格、といったシステムならば明らかに問題がある。
保険医療は事実上、厚労省が運営しているようなものだ。ズサンな虫歯や歯周病治療に保険医療費を払うのはおかしい。
私は、質の確保はさほど難しいことではない、と思っている。第一歩として、厚労省や学会が一定の専門家を確保し、患者さんからの問い合わせ・相談窓口を設置する。厚労省なら「医療の質管理官」「医療の質相談医」といった役職を作る。
目に余る医療機関があれば、自然に浮かび上がってくるはず、ではなかろうか。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2016年5月1日号6面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
きき酒 いい酒 いい酒肴 ⑲ / “團菊祭”そしてバロナーク
きき酒 いい酒 いい酒肴 ⑲ / “團菊祭”そしてバロナーク
5月といえば、歌舞伎や伝統芸能がお好きな方は團菊祭という言葉を思い浮かべるかもしれません。明治時代の歌舞伎役者九代目市川團十郎(いちかわ・だんじゅうろう)、五代目尾上菊五郎(ごだいめ/おのえ・きくごろう)、初代市川左團次(いちかわ・さだんじ)の三氏が築いたのが「團菊左時代」です。写実的な演出や史実に則した時代考証などで歌舞伎の近代化を図る一方、伝統的な江戸歌舞伎の荒事を整理して今日まで伝わる多くの形を決定。ともに歌舞伎を下世話な町人の娯楽から日本文化を代表する高尚な芸術の域にまで高めることに尽力した方々です。この九代目團十郎、五代目菊五郎の功績を顕彰すべく歌舞伎座が始めたのが「團菊祭」です。
現在では、市川團十郎さん(逝去後、海老蔵さん)と尾上菊五郎さんが出演する五月の歌舞伎を指しています。
故十二代目市川團十郎さんは、2001年日本ソムリエ協会の名誉ソムリエに就任しており、ことのほかワインがお好きでした。中でも、バロナーク(写真下)が好きで、ご子息の市川海老蔵さんの披露宴でもこの銘柄をお出ししたそうです。ボルドーの五大シャトーで有名な「シャトー・ムートン・ロートシルト」を所有するバロン・フィリップ・ロートシルト社が、アメリカの「オーパス・ワン」やチリの「アルマヴィーヴァ」に続き、選んだのがフランスのラングドック・ルーション地方のリムー地区でした。そこで、バロナークが作られるようになったのです。
フィリピーヌ・ドゥ・ロートシルト男爵夫人が歌舞伎に興味があり、故市川團十郎さんと出会い親交を深めてらっしゃったそうで、バロナークといえば團十郎さんのワインというイメージができました。
昨年の夏、ワイン研修のために、一週間ほどボルドーに滞在しました。そこで、ムートン・ロートシルトのシャトーをたずね、素晴らしい醸造設備に驚き、案内してくださるスタッフの方たちのホスピタリティーにも心温まりました。使っているブドウは、大西洋品種80%(メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニオン)地中海品種20%(シラー、マルベック)という比率です。
深みと輝きのある美しいルビー色。ブラックベリーやラズベリー、樽由来のトースト系の香りがします。ムートンは価格的もなかなか買えないのですが、バロナークでしたら、割と気軽に購入できます。醸造過程や樽熟成においても全く同じ方法がとられているので、味わいはムートンに負けないくらい濃くて、バランスがいいワインです。教養と知性にあふれた中世の騎士のイメージです。ワイングラスではなく、銅酒器で豪快に飲むようなそんな力強さも感じられます。
“五月病”という言葉があるくらい、疲れがでてくる季節です。江戸から伝わる荒事を楽しみながら、力強いワインを楽しむのも、明日の活力につながるかと思います。
(世田谷区/広報・ホームページ部員/早坂美都)
歯科医師への相続税贈与について/機関紙2016年5月1日号(№554号)より
歯科医師への相続税贈与について/機関紙2016年4月1日号(№553号)より
質問① 子どもが2人いる。2人とも歯科医師だが息子は独立している。そこで、小生の歯科診療所を娘(歯科医師)に承継させ、残りの財産を息子と娘に相続させたい。この場合、相続税を娘だけにまとめて負担させることはできるか。
回答① 相続税は相続により財産を取得した者が、その取得に応じた割合で負担する制度となっています。そのため、相続財産と切り離して相続税を一部の相続人に負担させることはできません。なお、死亡後に後日振り込まれる死亡保険金や死亡退職金は相続税の計算に含まれる(一定額非課税)ことになっているのでご注意ください。相続税の納付金については、まず、被相続人から相続される財産・債務の総額を求め、基礎控除を差し引いて、法定相続分により各人の相続税を算定します。その上で、各相続人の実際に引き継ぐ財産・債務金額が相続される財産・債務の総額に占める割合に応じて、相続税の総額を各相続人に振り分けて、税務署に支払う各相続人の相続税が確定します。なお、死亡後10カ月以内にこの相続税の申告と納付を完了する必要があります。相続税は原則、金銭一時納付となっていますが、困難な場合については一定の要件を満たすことにより、分割払いの延納制度や金銭以外の相続財産で納税する物納制度も認められています。
質問② 父親から1500万円の現金を贈与してもらい、歯科診療所を開業することになった。この場合、どのような税がかかるか。
回答② 贈与を受けた者が、1月1日から12月31日の1年間に贈与された現預金、不動産などの贈与財産の合計額から110万円を差し引いた残額に対して贈与税がかかります。年間に受け取った贈与財産の価額の合計額が110万円以下であれば申告の必要はありません。例えば、今回のケースのような歯科診療所の新規開業の場合の資金援助などが贈与税の対象に該当します。将来の相続税のことを考えて、親が生きている間に財産を子に贈与することもあると思いますが、生前の贈与については、相続税よりも高い税率が課され、死亡前3年以内の贈与は相続税の計算に組み戻されるため、贈与税は相続税の補完税とも呼ばれます。なお、贈与を受けた者が、贈与税の申告をする場合、贈与を受けた日の年の翌年2月16日から3月15日までに申告と納付を完了しなければなりません。より詳しい計算方法などを知りたい先生は、当協会で毎月第3木曜日に行われている「会員無料相談デー」にぜひ、お越しください。
※会員無料相談デーのご利用は、事前予約が必要です(経営管理部:03―3205―2999)。
映画紹介№27「グローリー/明日への行進“Selma”」
疑義解釈に伴う新点数説明会の資料訂正
4月25日付の疑義解釈により、同一義歯における補診の再算定が変更になりました。
それを踏まえて、4月26日第5回新点数説明会の資料の
補診の解説を、疑義解釈後の内容に訂正します。
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の問題点を指摘/第5回新点数説明会で注意を喚起
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の問題点を指摘/第5回新点数説明会で注意を喚起
協会は昨日4月26日、なかのZERO大ホールで第5回新点数説明会を開催した。会員、スタッフなど601名が参加した。
冒頭、まずあいさつに立った松島良次会長は、過去にあったP総診の経緯を踏まえ、高点数であるが2年後の診療報酬改定で取扱いが変更となる可能性や、患者の負担が増加するなどの問題点を指摘した。それらの点を踏まえ、届出や算定について慎重な検討を参加者に促した。初診が起こしづらくなり、大量返戻のおそれがあると、などを指摘した。
その後、協会に寄せられた相談から加藤開社保学術部長、本橋昌宏理事が解説を行った。
歯管の文書提供加算については、毎月加算を算定するには毎回文書提供が必要とし、四カ月に一回など定期的な文書提供では毎月の加算は算定できないことへの注意を喚起した。
新設のエナメル質初期う蝕に対するフッ化物歯面塗布処置では、病名はCeとし、算定ごとに病変部位の写真撮影が必要であることを強調した。
疑義解釈(その2)をアップしました
2016年4月25日付「疑義解釈資料の送付について(その2)は下記よりダウンロードしてください
「文藝春秋」が「口腔リハビリテーションの効果」で特集記事
「文藝春秋」が「口腔リハビリテーションの効果」で特集記事
現在、書店やコンビニエンスストアなどで販売されている月刊「文藝春秋」5月号の中で、「最新医療に乗り遅れるな」が大特集として取り上げている。その中で、「口腔リハビリで生命力が蘇る」と題してジャーナリストの塩田芳享氏の記事が掲載されており、話題を呼んでいる。
口腔リハビリや口腔ケアに関し、米山正義氏(静岡県)、辻友里氏(熊本県)、光銭裕二氏(北海道)、宇土仁恵氏(宮崎県)、角町正勝氏(長崎県)らの臨床現場報告事例などを踏まえて、口腔リハビリを紹介し、「口から食べられる喜びから奇跡の回復が起きた」と強調している。
2014年の「文藝春秋」8月号では、医療ジャーナリストの油井香代子氏による「“噛みトレ”で寝たきりはなくせる」を特集で取り上げた経緯がある。
なお、口腔リハビリテーションについては、東京都内では2014年10月、小金井市に開設された日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック(院長:菊谷武日本歯科大教授)などが積極的に取り組んでいる。
歯科に関する在宅医療専門の第4回新点数説明会に630名が参加
歯科に関する在宅医療専門の第4回新点数説明会に630名が参加
協会は本日4月21日、今月1日から施行された改正診療報酬をめぐり、特に在宅医療とその点数に関する内容専門の「第4回新点数説明会」を開催しました。
講習会は加藤開理事の司会で進められ、地域医療部担当の矢野正明副会長があいさつに立ち、続いた実際の歯科における在宅医療、訪問診療、介護保険制度との関連などを踏まえた解説を地域医療部長の馬場安彦理事が行った。
また、今後の地域医療全体に大きな影響を与える地域包括ケアシステムの概要、および歯科との関連がどうなるのかについて、地域医療部の橋本健一理事が解説を加えた。
さらに、歯科訪問診療では25年のキャリアを持ち、自らもケアマネージャーの資格を持っている地域医療部の森元主税理事が症例を取り上げ、解説を加えた。
各紙による講演、解説の後には参加者との間で質疑応答も盛んに行われ、今次改定に占める在宅医療の重要さを改めて認識する一幕もあった。
◆第5回新点数説明会は26日に開催
なお、協会では今次改定に関する最終開催となる「第5回新点数説明会」は、4月26日(火)午後6時30分から、なかのZERO大ホールで開催する。今月1日の改定診療報酬施行後に行われた通知の内容などを盛り込んだ内容となるため、ぜひ、ご参加いただきたい。詳細は、本ホームページの「研究会・行事のご案内」、あるいは「協会カレンダー」の該当日時、名称をクリックしていただきたい。
そのほか、改正診療報酬に関するもっと詳しい説明、解説を行う「地区懇談会」は4月23日(土)午後6時30分から立川で。5月7日(土)午後6時30分から大井町でそれぞれ開催される。参加できるのは、会場周辺の会員ご本人となっているため、本HPで内容をご確認のうえ、お申し込み、ご参加願いたい。
2016年度歯科診療報酬巡りか強診や歯援診・外来環などに議論が集中/第6回メディア懇談会を開催
2016年度歯科診療報酬巡りか強診や歯援診・外来環などに議論が集中/第6回メディア懇談会を開催
協会は4月8日、第6回メディア懇談会を開催しました(今回は2008年3月の第1回以来通算56回目)。2016年度診療報酬改定後の開催ということもあり、出席したメディアとの間で、今次改定とそのポイント、厚生労働省の意図は何か、このような改定内容や数値になった経緯や背景などについて、盛んに意見交換、議論が行われた。
協会からは、話題説明全般を松島良次会長、司会を広報・ホームページ部長の坪田有史副会長が務めた。話題は、①今次改定に対する3月10日付「理事会声明」、②今次診療報酬改定のポイントと協会の対応状況、③歯科医師国家試験合格発表と歯科医師数―などとしました。
◆か強診への関心強く議論白熱
まず、松島会長が今次改定への「理事会声明」の内容と趣旨、および今次改定の重要項目についての協会の評価を説明。参加メディアから意見や感想を求めると、「か強診を届出できる歯科診療所は全体の1割程度しかなく、患者の視点や希望は無関係でそれが本当のかかりつけと言えるか」「かかりつけという言葉が混同され使われている。厚労省は現場の意見を1万人や2万人規模で聞き取るべきだ」「協会は、1割しか該当しないか強診を反対するのか否か」「か強診の基準に、一見あいまいな部分があるから今の段階でとるほうが良いのではないか」「か強診には歯科衛生雇用などの人件費、新規購入すべき医療機器があり、お金がかかる。資金に余裕のあるなしで診療所に二極化が生じる」「設備や人員のための費用を担保にすべきではなく治療内容に関することを担保にすべきでは」「か強診が実際に進むと、他の診療所も特色を出すなどの努力が必要となる」「歯科医師か歯科衛生士のどちらかの複数配置を求めているが、常勤とは明記していない。これは、地域包括ケアシステムの確立という目的が背後にあるための配慮ではないのか」などの質問や意見、指摘が相次ぎ、議論が白熱。メディア側でも関心が非常に高いことをうかがわせた。
◆文書外しの背景は
次に、松島会長が歯科疾患管理料の文書提供要件緩和について協会の方針を説明すると、メディアから「文書提供外しには官邸サイド、つまり政治的な圧力があったためといわれている。関係三者間で利害関係が一致したのもしれない」「患者本人の健康管理に配慮するだけでなく、患者への説明責任の確認にも関係してくるため、患者トラブル防止のためにも、必要に応じて必ず文書を出す必要はある」「文書を書かないでいると、厚労省はそこを逆手にとって十点よりさらに低い点数に下げてくる可能性が大きい」などの意見が続いた。
歯科医療点描⑧ 質を無視の制度に疑問/誰のため何のために医療は行われるのか
質を無視の制度に疑問/誰のため何のために医療は行われるのか
日本の保険医療制度は世界一、と医療関係者の多くが信じている。本当だろうか。
私は以前、秋田市で開かれた日本臨床内科医学会で疑問を述べたことがある。同じくシンポジストだった日本医師会理事が「日本の平均寿命は世界一。これは国民皆保険制度の成果だ」と胸を張られた。
若気の至りで、冷やかし半分の気持ちもあって余計な発言をした。「国は病院や医師に丸投げして、医療レベルはバラバラ。でも日本人は優秀な遺伝子と食生活のおかげで、先生方の医療で多少削られても何とか耐えて、いまの平均寿命を保っているのではないでしょうか」というような。
すぐにインターネットに名指しで「こんなひどい発言をした記者がいる」と批判記事が出た。しかも、長い間、私の名前を打つと最初に出てくるのがこの記事だった。 今回、正確に表現しようと調べたが、いつの間にか消えて見つからなくなっている。
医療で最も大事なことは何か。私は「医療の質」と確信している。病気を治す医療、症状や苦痛を和らげる医療でなければ、わざわざやる意味がない。
ところが、ご存じのように、保険医療制度の親である厚生労働省は、医療費の請求額ほどには、医療の効果や内容、質に関心を持っていない。病名に対応した検査や治療法は決めてあるが、手順、使う器具や材料、具体的なやり方の多くは病院や医師任せになっている。 その結果、治さない医療も改善しない医療も堂々とまかり通っている。これが世界一の制度とはとても思えない。
腹腔鏡手術による死亡が大きな話題になり、厚労省は昨年、群馬大学病院の特定機能病院資格を取り消した。しかし、保険医療制度上は死亡率が高くても問題がないはずで、おそらくは群馬大病院より成績の悪い病院さえ、あるに違いない。
世界一を目指すなら、何はともあれ、質の確保が不可欠ではないか。医療ごとに必要に応じ、常勤専門医、一定の技術や知識、設備などの条件を付ける。あまりにひどい成績の場合は、保険診療での支払いを認めない、といった対応も必要になるだろう。
誰のため、何のために医療は行われるのか。病める患者さんの苦痛解消や軽減のためである。しかし、いまの制度や実態を見る限りでは、厚労省や医療者がそう考えているとは思いにくい。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2016年4月1日号6面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
歯科関連検討会を相次ぎ開催/厚生労働省
歯科関連検討会を相次ぎ開催/厚生労働省
本年3月、厚生労働省の歯科関連の各種検討機関が活発な動きを呈した。
年度末ということもあり、たとえば「歯科診療情報の標準化に関する検討会」ではワーキング・グループレベルではあるものの、歯科医療の専門性について初めて議論し、今後の行方が注目されるほか、「歯科医国家試験制度改善検討会」では報告書を取りまとめ発表している。
ここでは、最近の歯科関連検討会などの進捗状況をかいつまんで紹介したい。
◆歯科医師国試験改善検討会が報告書/多数回受験者の問題は結論避け別途検討へ
医道審議会歯科医師分科会の中に設置されていた「歯科医国家試験制度改善検討会」(部会長:田上順次・東京医科歯科大学副学長、部会長代理:矢谷博文・大阪大学歯学部大学院教授)が3月29日、厚労省内で開催され、これまでの議論を集約する形で報告書をとりまとめ、発表した。その中では、現行の歯科医師国家試験をめぐり、①出題内容:出題基準、出題内容、②出願方法等:出題数・出題構成、出題形式、③合格基準:必修問題、一般問題と臨床実習問題、禁忌選択肢数、必要最低点、④公募問題―などに触れている。
特に注意が必要なのは、①の「出題基準」と③の「合格基準」。
このうち、まず出題基準をみると、「将来を見据え、社会情勢の変化に合わせて、“高齢化等による疾病構造の変化に伴う歯科診療の変化に関する内容」が重要であると指摘し、さらに「地域包括ケアシステムの推進や多職種連携等に関する内容」における歯科が占める重要性に言及。口腔機能の維持向上や摂食機能障害への歯科診療、さらに、医療安全やショック時の対応、職業倫理などに関する内容充実を図ることが必要と訴えている。次に、出題内容については、「歯科医師臨床研修において、指導歯科医の下で、診療に従事するのに必要な知識及び技術を問う水準とすべき」と指摘している。
さらに合格基準に関しては、①必修問題の得点、②一般問題及び臨床実地問題の出題領域に応じた領域別の得点、③禁忌選択肢数及び必要最低点―の各視点から言及している。一般問題と臨床実地問題に関しては、問題難易度による合格状況の変動を防ぎ、一定の地域や技能を持つ受験者が基準を満たせるよう「平均点と標準偏差値を用いた相対基準で評価を行っている」としている。
一方、禁忌選択肢数に関しては、「禁忌肢を含む問題は出題を行わない」とした上で、安心・安全な歯科医療を提供する上で必要な知識は、今後も内容充実を図り出題を継続する考え方を示している。
他方、多数回受験者への対応については、一定数の多数回受験者の存在を重くみて、これは「緊急性を要する課題である」との認識を示したうえで、引き続き厚生労働科学研究などを活用して別途、検討することとし、早急な結論を控え、課題として先送りとした。
◆歯科診療情報の標準化に関する検討会がワーキンググループを開催
次に、「歯科診療情報の標準化に関する検討会」(座長:住友雅人日本歯科医学会会長)が3月23日に同省内で開催され、「歯科診療情報の標準化に関するデータセット(案)」について議論・検討を加えている。2015年度モデル事業の報告では、新潟県歯科医師会におけるモデル事業が報告され、厚労省、新潟県歯科医師会事務局の瀬賀吉機氏と厚労省関係者の説明、報告が行われた。
その中で厚労省からは、これまでの実証事業の経緯と展望、これまで行ってきたモデル事業を説明。さらに、2016年度モデル事業として、①標準データセットに基づくレセコンプログラムの標準仕様書の策定、②ベンダー各社に標準仕様書を周知し、それをもとにレセコン用プログラムの開発推奨を図る、③レセプトデータの保存方法検討―などを実施し、データの利活用についても全国的に展開したいことを説明した。
論点整理も行っており、①レセコンに搭載するデータセット、②データの保存方法、③レセプトデータ以外のデータ保存、④複数の医療機関を受診する患者の扱い、⑤自由診療の扱いを提示―などを提起。引き続き今後も議論を重ねていくこととした。
一方、瀬賀氏も新潟県歯のモデル事業の進捗状況を説明し、①歯科情報の保存、②診療所以外のメリット、デメリットを明示するなどした。
◆歯科医療の専門性ワーキンググループを開催
また、3月24日には歯科医師の資質向上等に関する検討会内の「歯科医療の専門性ワーキンググループ」(座長:西原達次・九州歯科大学学長)が同省内で開催され、歯科医療の専門性をめぐり議論・検討を行った。
事務局からは、「医師における総合診療医に相当する歯科医師」についての資料をもとに、説明が加えられ、議論を行った。
その中では、歯科医師のイメージに関して、①地域包括ケアの中で活躍できる、②ハイリスク型患者に対応できる、③医療安全、倫理、感染対策を徹底している、④かかりつけ歯科医―など、さまざまになっていることが指摘された。
今後は、歯科は医科とは違う要素が含まれていることを踏まえたうえで、専門性や臨床研修などを議論する必要性が認識された。
満席につき、追加開催決定!!
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)のための講習会~外来環・歯援診・医療安全も含めて~
2016年度改定では、地域包括ケアシステムに対応した歯科医院の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が導入され、施設基準が新たに設けられました。
今回はこの施設基準に定められた研修を1日で受講できます。 また、外来環・歯援診・医療安全にも対応しており、これからの歯科医療に必要な情報をお届けします。
さらに!今回は特別に、AEDやパルスオキシメーターなど施設基準に必要な機材の展示を行い、会場限定の特別価格でのご案内もします。
この機会にぜひご参加ください。
※5/15(日)の開催分は満席となりました。同内容の講習会を5/28(土)14:00~19:30で開催いたします。
日程 2016年5月15日(日) 10:00~16:00 満席
2016年5月28日(土) 14:00~19:30
※両日とも同じ内容の講習会です
講師 坂下 英明 氏 明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学第2分野教授
繁田 雅弘 氏 首都大学東京大学院人間健康科学研究科教授
森元 主税 氏 東京歯科保険医協会理事
内容 偶発症に対する緊急時の対応、医療事故、感染症対策、高齢者の心身の特性、高齢者の口腔機能の管理、在り方(管理計画の立案を含む)
会場 エムワイ貸会議室 高田馬場(東京歯科保険医協会 隣接ビル)
交通 JR・東京メトロ東西線・西武新宿線 高田馬場駅 下車徒歩5分
参加費 8,000円(か強診・外来環・歯援診・医療安全の修了証込)
定員 200名
対象 会員のみ
要予約 TEL03-3205-2999(担当:経営管理部・地域医療部)
※遅れて参加された場合や途中で退席された場合は、修了証の発行はできません。
〇かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所とは
地域包括ケアシステムにおける地域完結型医療を推進していく、う蝕又は歯周疾患の重症化予防に係る管理、摂食機能障害及び歯科疾患に対する包括的で継続的な管理の評価です。
○エナメル質初期う蝕管理加算(260点)…エナメル質初期う蝕に罹患している患者を管理・指導した場合
○歯周病安定期治療(Ⅱ)(歯数により380点~830点)…P治療後、病状安定した患者に歯周組織の状態維持のための継続的な治療を行う場合
○在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(+100点)…在宅等で療養している患者の摂食機能障害及び歯科疾患に対する管理をした場合
などの算定が可能です。
*すでに外来環・歯援診両方の届出をされている医療機関については、修了証の有効期限は問われません。(すでに受講した講習会で要件を満たす場合は再度の受講は必要ありません)
*外来環、又は歯援診のいずれかのみの届出をされている場合、またはどちらも届出されていない場合は、修了証の有効期間が3年となります。
〇歯科外来診療環境体制加算(外来環)とは
患者にとってより安全で安心できる歯科外来診療の環境の整備を図る取組に対しての評価です。
○外来診療の初・再診料への加算が可能です(初診時+25点、再診時+5点)。
〇在宅療養支援歯科診療所(歯援診)とは
在宅等における療養を歯科医療面から支えることの評価です。
○歯科訪問診療補助加算(1人+110点、2人以上+45点)・・・DHが同行訪問し、補助を行った場合
○歯科疾患在宅療養管理料(240点)・・・口腔機能の評価を行い、管理計画書を作成した場合
などの算定が可能です。
〇医療安全に関する職員研修とは
2007年の医療法改正により、「医療安全管理研修」と「院内感染対策研修」に職員ひとりひとりが年最低2回出席することが義務付けられています。今講習会は「医療安全管理」「感染対策」両方に当てはまります。
2016年度診療報酬改定-新点数早見表をアップしました-
2016年度診療報酬改定-「2016年度改定の要点と解説・正誤表」-
2016年度診療報酬改定-軟質材料(床裏装用)や略称などをアップしました-
-2016年度診療報酬改定・歯科-
4月より算定ができる軟質材料(床裏装用)や略称、
保険請求できるファイバーポストを
「会員向け情報」の「診療報酬改定対策」の「2016年度」にアップしました。
軟質材料・略称・ファイバーポストはコチラ(※ログインにはパスワードが必要です)
2016年度診療報酬改定-疑義解釈・訂正通知をアップしました-
-2016年度診療報酬改定・歯科-
3月31日に発出された疑義解釈・訂正通知のうち、歯科に係る主なものを
「会員向け情報」の「診療報酬改定対策」の「2016年度」にアップしました
疑義解釈・訂正通知はコチラ (※ログインにはパスワードが必要です)
春の共済募集キャンペーンが始まりました!!
春の共済募集キャンペーンが始まりました!!
(2016年4月1日~2016年5月25日まで)
「グループ生命保険」「保険医休業保障共済保険」「保険医年金」は、歯科医師の生活を守るためにつくられた共済制度です。
共済制度は多くの先生からの支持をいただいています。
共済制度について詳しい資料が必要な方は協会・共済部(Tel:03-3205-2999)までお気軽にお問い合せください。
「春の共済募集キャンペーン」対象の共済制度
グループ生命保険
(年金払特約・こども特約付団体定期保険)
死亡・高度障害の保障をお手頃な掛金で得られます。
・剰余金が生じた場合は配当金として還元*
(*)2014年度は年間保険料約8.7ヵ月分(約73%)。
・無理のない負担で大きな保障
・スケールメリットを活かしたお手頃な掛金
・1年更新なので毎年保障の見直しが可能
・生命保険会社4社による安定運営
保険医休業保障共済保険
傷病で休業の際に、治療に専念できる手厚い給付を受けられます。
・入院はもちろん自宅療養も代診をおいても保障
・給付期間は最大730日(2年間)
・1口で休業、入院、死亡・高度障害など6種類の給付金
・掛金は加入時のまま、満期まで上がらない
・所得に関係なく給付(本制度は所得補償保険ではありません)
保険医年金(拠出型企業年金保険)
老後準備を着実に積み立てられ、急な出費に対応もできます。
・予定利率1.259%
・決算実績によっては配当を上乗せ*
(*)2014年度は配当があり、予定利率と合わせて1.603%。
・積立総額1兆1千億円を超える日本有数の私的年金
・制度創立以来、現在に至るまで減額したことがない
・生命保険会社6社による安定運営
各制度の詳細な内容はパンフレット等をご覧ください。
その他の共済制度
第2休業保障制度(団体所得補償保険)
手頃な掛金で業務に従事できない間の所得を補償。
勤務医はもちろん、家族(専従者)・スタッフも加入できます。
・入院・自宅療養を問いません
・国内・外、業務中・外を問わず保障
・団体割引が適用され個人でご契約するよりも割安
・無事故ときは年間保険料の20%還元
・70歳以上の方も加入可
詳細な内容はパンフレット等をご覧ください。
その他、歯科医師賠償責任保険(医療事故等の保険)、火災保険(火災、医療機器の保険)等については、株式会社アサカワ保険事務所(Tel:03-3490-1751)までお気軽にお問合せください。
労働条件の変更と昼休みの電話当番/機関紙2016年4月1日号(№553号)より
労働条件の変更と昼休みの電話当番/機関紙2016年4月1日号(№553号)より
質問① 患者が減ってしまって経営が苦しい。週三日勤務を週一日勤務に変更する提案をしたいのだが、残りの契約期間内のパートの労働時間を減らしても、問題はないか。
回答① 労働契約法第九条より、本人の同意がないと変更はできません。もし、同意が得られない場合は、その変更がないと経営の危機に直面するということであっても、休業手当として給与の六割を保証しなければいけません。今回のケースは、一時的な休業でなく、労働条件の変更という観点から考えると、勤務日数・勤務時間を減らすといった、一度定めた労働条件を変更するためには、従業員の同意が必要になります。特に、賃金の減少を伴う変更を一方的に行うことは、合理性がないと認められません。そのため、契約期間終了後に改めて契約内容を提示して、双方合意の上で契約することが望ましいと思います。また、従業員を解雇して人員を減らすことは、客観的、合理的理由があり、社会通念上妥当と判断されない限りは認められません。従業員の労務トラブルは近年増えてきているため、労働条件通知書の見直しなど、事前に対策を打ちましょう。
質問② 当診療所では昼休み中に歯科衛生士や助手、受付に電話当番をお願いしている。先日、他の診療所の先生から、「昼休み中の電話当番は違法」だという話を聞いた。万が一のために対策は、どうすればいいか。
回答② 昼休みという名目で休憩時間内に電話当番を依頼しているということであれば、労働基準法違反にあたります。休憩時間は自由に利用させなければいけないとされており、実際に労働には従事していないが、いつ使用者から働くように命ぜられるか不明確な時間や、外来患者のいない場合でも受付時間中として電話や来患があれば直ちに対応できるように待機させている時間は、休憩時間に該当しないと労働基準法に定められています。八時間以上の労働時間には少なくとも一時間、六時間を超える労働時間には少なくとも四十五分以上の休憩時間を与える必要があります。しかし、休憩時間は労働時間の途中に与えれば良いもので、一斉に与える必要はありません。どうしても昼休みに電話が多いとのことでしたら、三十分毎に休憩時間をずらして与えるなど、検討されてはいかがでしょうか。ただ、休憩時間をずらしたり、三十分毎に分断したりすることで、従業員が不利益を被るのであれば、それは労働条件の不利益変更にあたりますので、従業員の同意がなければ変更することができません。昨今では「昼休みは一切電話を取らないで留守電に切り替える」といった診療所もあります。従業員の方々とご相談の上、先生の歯科診療所に合った休憩時間制度を確立していくのが良いでしょう。
歯科医技官人事を発令/厚生労働省4月1日付で田口氏が歯科保健課長に
第2・3回新点数説明会を開催
第2・3回新点数説明会を開催
協会は本日3月27日(日)、東京・千代田区有楽町の「よみうりホール」で第2・3回新点数説明会を開催しました。参加した会員の方々は1000名を超えました。新点数説明会を日曜日に開催したのは今回が初めて。また、お子さんがいらっしゃる会員の参加に配慮して、こちらも協会初の試みとして託児サービスも行いました。
午前中は10時から、午後は1時30分から開演し、プログラムは同一。挨拶は松島良次会長が行い、改定のポイントについては本橋昌宏理事が説明。症例解説は濵﨑啓吾理事が行いました。
なお、託児サービスの状況ですが、事前に連絡をいただいた会員のお子さんをおあずかりしました。午前に10名、午後は3名のご利用があり、大変好評でした。
第1回新点数説明会に1300名が参加
第1回新点数説明会に1300名が参加
本日3月23日、協会は文京シビック大ホールで第1回新点数説明会を開催。会員及びスタッフの方々約1300名が参加しました。冒頭では松島良次会長が地域包括ケアシステム構築に向けた今期改定の重要事項について説明を行い、続いて加藤開理事による改定内容の要点解説、坪田有史副会長による症例解説が行われました。また、解説が一通り済んだ後には、フロアから出された質問に丁寧に答える質疑応答も行われ、20問近い質問に加藤理事、坪田副会長、そして本橋昌宏理事が回答、説明を加えました。
次回新点数説明会は3月27日(日)午前10時から、および午後1時30分から、同日に2回開催いたします。
歯科医国家試験制度改善検討会が今年度第2回会合を開催/出題基準と合格基準などをめぐり報告案を作成
歯科医国家試験制度改善検討会が今年度第2回会合を開催
―出題基準と合格基準などをめぐり報告案を作成
厚生労働省の「歯科医師国家試験制度改善検討会」(部会長:田上順次東京医科歯科大学副学長)の平成27年度第2回会合が3月18日に開催された。同部会は昨年10月に設置され、検討を重ねていたもので、今回は、その報告案が了承された。報告案の柱は歯科医師国家試験に関する内容としては、①出題内容:出題基準、出題内容、②出願方法等:出題数・出題構成、出題形式、③合格基準:必修問題、一般問題と臨床実習問題、禁忌選択肢数、必要最低点、④公募問題―などとなっているほか、多数回数受験者に関することやOSCEなどについても付記されている。
第109回歯科医師国家試験合格発表
第109回歯科医師国家試験合格発表
―合格者は1973名のうち新卒者は1436名
厚生労働省は3月18日、第109回歯科医師国家試験の合格発表を行った。厚生労働省2階講堂でも合格発表が行われ、例年通り、この会場に来て自身の合格を確認し、記念撮影を行う学生の姿が散見された。
今回の歯科医師国試は、本年1月30、31日の2日間にわたり実施されている。109回歯科医師国試は、出願者数3706人(うち新卒者2536人)、受験者数3103人(同1969人)で、合格者数1973人(同1436人)、合格率63.6%(同72.9%)となっている。
今回の国試合格者を大学別全体合格率(新卒合格率)で上位5校をみると、①東京歯科大学93.3%(94.5%)、②東京医科歯科大学歯学部91.0%(94.5%)、③九州大学歯学部82.3%(83.7%)、④北海道大学歯学部82.1%(88.9%)、⑤徳島大学歯学部78.7%(96.8%)―などとなっている。
なお、同日、厚生労働省内では平成27年度第2回目の開催となる医道審議会の「歯科医師国家試験制度改善検討部会」を開催しており、近く「報告書(案)」がまとまる予定となっている。
理事会声明 「評価できるが、安心・安全な歯科医療提供には総額拡大が不可欠」/機関紙2016年4月1日号(№553)3面掲載
理事会声明
「評価できるが、安心・安全な歯科医療提供には総額拡大が不可欠」
今次診療報酬改定は、団塊の世代が後期高齢者を迎える2025年に向けて地域包括ケアシステムを構築するため、医科に加え歯科・薬局の「かかりつけ機能」を新たに評価した。
歯科においては、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準を設け、「地域完結型歯科医療」として子供からお年寄りまで生涯にわたる長期管理を担う役割を規定した。う蝕に対してはエナメル質初期う蝕フッ化物歯面塗布、歯周病に対しては対象の拡大と歯周病安定期治療(Ⅱ)、在宅の患者には在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料が新設された。しかし、多くの点数が包括化されたため、見かけ上高点数となった。施設基準は11項目と厳しい内容であるため、届出を行える歯科医療機関は限られたものとなり、十分に機能するかが危ぶまれる。
また、この歯科診療所の機能分化の狙いが進めば、初・再診の問題と患者の囲い込みとしてのヨーロッパ型の登録制導入が危惧される。
改定率は、本体が+0.49%、薬価及び材料価格が-1.33%のなか、歯科は+0.61%とされた。改定率に対し「口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の充実」の項において、日常臨床で行われる基本技術が多くの項目で少ないながらも点数が引き上げられたことや、少なくない項目で臨床の実態に適応した運用に見直しがされたことなどは評価できる。また、関係学会から提出される医療技術評価提案書による保険収載や再評価が進んだことは今後への足掛かりとして重要である。しかし、歯科疾患管理料の文書提供を切り離した10点は影響率0.6%であり、引き上げ幅と同等である。必要に応じた文書提供は、患者の現状認識・治療への理解・行動変容に有用であり財源調整の道具とすべきではない。
訪問歯科診療においては、外来診療以上に機能分化が図られた。歯科訪問診療料3は大幅に引き下げられ、訪問専門の診療所も解禁された。代わりに在宅で行われる歯科訪問診療料1は算定用件が緩和され、外来診療を中心に行いそれに加え訪問診療を行うスタイルの診療所にはインセンティブが働くと思われる。しかし、訪問診療を行う医療機関に「歯科訪問診療を行った患者数の割合」が95%未満であるかの届出を義務付けたのは誠に遺憾である。この施策が現場に混乱をきたし、在宅患者に必要な医療が提供されない事態を招かないようにしなければならない。
2015年改定の消費税引き上げ分を除く+0.12%に比べ+0.61%とされたことは大きいが、この引き上げは、1歯科医療機関あたり月2万円ほどの増加にすぎない。中医協調査で今年度は前回に比べ所得が増えたこととなっているが、その実態は人件費・設備投資・技工料を削減した結果であり、歯科医療が危機的な状態であることには変わりはない。協会は引き続き総額拡大を求める運動を推進してゆくものである。
2016年3月10日
東京歯科保険医協会 第22回理事会
歯科医療点描 ⑦ 予測はずれ?の「8020」/あと20年で8割の高齢者が「8020」に到達!?
予測はずれ?の「8020」/あと20年で8割の高齢者が「8020」に到達!?
今の新聞社では、なかなか考えられないことだが、私は好きなことを書いてしゃべって卒業できた。ほとんどは正しかったと確信しているが、まずかったかも…、と反省気味のことがいくつかある。その一つが歯科関係研究会全国大会での「8020」発言だ。
「80歳で失う歯を10本以下にしよう」と提唱されたのが1985年で、逆計算で「80歳で20本の歯を残す」という8020運動になったのは1989年らしい。大会はおそらくその2、3年後ではなかったか。
◆8004時代
手書きのスライドには雲がかかった高山の横に「8848」「8020」「8004」の数字がある。8848は世界の最高峰エベレスト(チョモランマ)の標高を指す。8004は、当時、80歳の平均残存歯数の4本の意味だ。8020はそれを一挙に5倍にしようとの目標だった。
◆つい口をすべらし
この大会に講師で招かれた私は「いくら何でも無理でしょうね。ヒマラヤ登山並みの難しさ。80歳までに20億円貯めようというのと同じです」と、つい口をすべらせてしまった。
私はずっと「日本の医療は科学的でない」と感じてきた。特に歯科はひどい。虫歯や歯周病は細菌による感染症だと解説しながら、治療は細菌に無力な外科的なものだった。虫歯部分を削った後、詰め物と歯の隙間は100ミクロンもあった。これでは、1ミクロン幅の細菌は自由に虫歯部分に到達する。再治療のくり返しで、やがて抜歯になる。
歯学教育にも責任がある。入れ歯を作る補綴講座が3つも4つもありながら、虫歯を防ぐ予防歯科、感染症に対応の公衆衛生学科がない大学が多かった。
虫歯や歯周病は人生の必然で、仕事は入れ歯作りだと、歯科医は学生時代から教え込まれてきたのではなかろうか。だから、「8004は歯科医療の成果であり、絶対に8020は実現しないだろう」と、私は確信していた。
ところが、である。厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、残存歯数がジワジワと増えてきている。2013年は80歳で平均残存歯数13.9本で、20本超を達成した人は38.3%と推定されている。20年前とくらべると2.4倍だ。歯科医療はこの30年の間に予想以上に改善したといえるだろう。
この調子があと20年続けば、8割の人は8020になれるかも知れない。「80歳で20億円」は「80歳で2000万円」くらいに値下げしたほうがよさそうだ。
医療ジャーナリスト 田辺功
「東京歯科保険医新聞」2016年3月1日号6面掲載
【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。
きき酒 いい酒 いい酒肴⑱ / 白酒と桃花酒
2016年度改定の目指す方向は/政策委員長談話
政策委員長談話「2016年度改定の目指す方向は」
2月10日、中医協は厚生労働大臣に次期診療報酬改定の内容を「答申」した。歯科の改定率は引き上げられたものの、0.61%とわずかであり、歯科保険診療の充実に繋がるかは疑問である。
改定の特徴の1つ目は、医療機関の機能分化である。長期管理機能を持つ診療所の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(以下、「かかりつけ強化型」)を新設し、算定できる点数に差をつけるなど差別化を図った。特に在宅医療では、在宅医療専門、一般の診療所、歯援診、かかりつけ強化型の順で評価を上げ、医療機関の機能分化を強く推進した。在宅医療専門の場合、訪問診療料を外来の初再診料と同程度に設定され、施設基準の複雑さと併せて届出の要件は高い。在宅のみを行う医療機関は、一般の診療所の補完的な位置づけとした。
特徴の2つ目は、地域包括ケアシステムの構築のために、患者の一生涯をかかりつけとして長期管理するための点数の新設と要件緩和が行われた。エナメル質初期う蝕、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の新設、およびSPTの要件緩和である。また、「かかりつけ強化型」で算定できるSPT(Ⅱ)などの点数に高い点数を貼り付けた。
しかし前提として、「かかりつけ強化型」の施設基準には、訪問診療や複数体制など多くの要件があり、届出を行うにはハードルが高い。また、「かかりつけ強化型」で算定できる点数には多くの点数が包括されており、「かかりつけ強化型」を選択せずに包括されている項目を別に算定してもその差は大きいとはいえない。
特徴の3つ目は、歯管の算定要件から文書提供が外れ、文書提供した場合は10点の加算をする取り扱いに変わったことである。これまで協会は、管理と文書を分けて評価すべき、と繰り返し行政側に要望してきたがそれが反映されたといえる。しかし、歯管の点数が十点引き下げられたこと、文書提供の評価がわずか十点であることは誠に遺憾である。他方、文書提供しない場合のカルテ記載の内容の強化が見込まれる。通知を待って慎重な対応が必要だろう。
特徴の4つ目は、臨床に即した改定が行われた点である。学会ルートである医療技術評価提案書からP混検の点数引き上げや根面う蝕に対する充填の取り扱いなどが改められ、舌圧検査などの新たな技術も保険導入された。協会は、舌圧検査など必要な検査の保険導入や、現場で問題となっていたTeCの算定時期を実態に即して装着時に請求できるようにするなどの不合理の是正を要望し、今改定で反映された。まだ解決すべき課題は多く残されているが、この点については評価をしたい。
今改定だけではなく、今後も歯科の諸問題の解決が進むことを望むとともに、運動に対する会員の協力をいただきたい。
2016年2月24日
東京歯科保険医協会
政策委員長 中川勝洋