年別アーカイブ: 2017年

「保険で良い歯科医療」実現求める患者署名にご協力を

「保険で良い歯科医療」実現求める患者署名にご協力を

◆お年寄りが歯科に来られなくなる

国会では社会保障費自然増分を5000億円に圧縮する内容を盛り込んだ2017年度政府予算案の審議が行われている。この中には、①70歳以上の患者負担限度額(高額療養費)の引き上げ、②後期高齢者の保険料の引き上げ-などが含まれている。
これに対し協会は、患者負担増反対とともに「保険でより良い歯科医療」の実現を求める患者署名に取り組んでいる。すでに、先月末に会員各位にお送りしたので、ぜひご協力いただきたい。

署名用紙がご入用な方は協会に直接ご連絡いただくか、以下でもダウンロードできます。ぜひ、ご活用ください。

署名用紙:おもてPDF

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

署名用紙:うらPDF

第1回歯援診・外来環・か強診・医療安全のための講習会

2016年度診療報酬改定では、地域包括ケアシステムに対応した歯科診療所の評価として「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」が導入され、施設基準が新たに設けられました。

また、医療法では年2回程度「医療安全(院内感染対策を含む)」の受講が定められています。

この講習会は、1日で「歯援診」・「外来環」・「か強診」・「医療安全」の4つに対応した修了証を取得できます。この機会にぜひご参加ください。

毎回満席になるほど、多くのお申込みを頂いております。ご希望の方は早めにお申込み下さい。

日 時 5月28日(日)午後1時~6時30分(予定)

講 師 坂下 英明 氏 明海大学歯学部病態診断治療学講座

口腔顎顔面外科学第2分野教授

繁田 雅弘 氏 首都大学東京大学院人間健康科学研究科教授

森元 主税 氏 東京歯科保険医協会理事

内 容 偶発症に対する緊急時の対応、医療事故、感染症対策、高齢者の心身の特性、口腔機能の管理

会 場 エムワイ貸会議室 高田馬場9階F・G会議室

交 通 JR山手線、東京メトロ東西線、西武新宿線高田馬場駅から徒歩5分

参加費 8000円(か強診・外来環・歯援診・医療安全の修了証代込)

定 員 150名

対 象 会員のみ。代理の方の出席はできません。

要予約 TEL03-3205-2999(担当:経営管理部&地域医療部)

※遅れて参加された場合や途中で退席された場合は、修了証の発行はできません。

※次回の開催は11月ごろを予定しています。

会場地図


地域医療部長談話「 お金によって“食べること”まで左右される混合介護には反対する!」

地域医療部長談話「 お金によって“食べること”まで左右される混合介護には反対する!」

現行の介護保険制度では、介護保険のサービスと保険外のサービスを同時に提供することを禁じているが、介護市場の経済成長戦略として「混合介護」解禁への動きが広がっている。
東京都は「国家戦略特区」として、豊島区で混合介護のモデル事業を2018年度から行うとしている。第15回国家戦略特別区域会議(2017年2月10日開催)では、介護保険サービスと保険外サービスの同時提供と、介護保険サービスに付加価値をつけた「指定料」や「上乗せ・割引料金」の提案をしている。
「指定料」は1時間当たり500円程度を追加負担することで、看護師や外国語などの資格や技能を持った介護職員などを指定できるようにし、多様なニーズへ対応するとしている。「上乗せ・割引料金」は、介護職員の需要が集中しがちな食事の時間帯の利用料を上げる一方で、需要が少ない時間帯の利用料を下げるなどし、需給バランスを調整することで、人手不足を補いたいとしている。
しかし、介護利用者の多くは年金に家計を委ねる高齢者であり、わずかな負担増でもサービス利用を控える可能性が高い。また、介護の担い手である介護事業所も収益の上がるところを優先するのは致し方がなく、お金がない利用者との差別化が図られることは自明の理である。
「食べること」は「生きること」である。特に要介護者は、健康状態や治療、投薬、リハビリなどの内容等によって、食事の時間や回数が決まる。金銭の有無によって変更を許せるものではなく、「食べること」に関わる歯科医師としても、看過できない問題である。
このような金銭の有無によって生きていくための根本が左右される仕組みには、到底賛成できない。来年の医療保険と介護保険の同時改定へ向けて、高齢者が誰でも安心して介護が受けられるような制度を目指して、運動を進めていきたい。
2017年3月1日
東京歯科保険医協会
地域医療部長 馬場安彦

政策委員長談話「 か強診改善のための課題」

政策委員長談話「 か強診改善のための課題」


◆「か強診」の強化された「機能」とは
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)には、医科・調剤のかかりつけにはない「機能強化型」という名称が付されている。「平成28年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」の調査票によれば、「か強診」は、安全で安心できる歯科医療の環境をもち、在宅医療と医療連携を行い、継続的な口腔管理を実施できる医療機関と表現している。
機能の肝は、「安全・安心な歯科医療の環境」ではないだろうか。昨今のタービン使いまわし報道など、歯科の感染症対策はたびたびマスコミに取り上げられている。スタンダードプリコーションをはじめとする医療安全対策を行っていることを前提に、さらに地域包括ケアシステムで求められる在宅医療と医療連携に対応し、継続管理を行って歯科疾患の重症化予防を実施できる機能を持つ医療機関を、「機能」の「強化型」としたのだろう。

◆歯科の将来を考えれば
院内感染予防対策、在宅医療、医療連携及び歯科疾患の重症化予防は、歯科の重要なテーマである。特に、B型肝炎などの感染症の患者や訪問診療が必要な患者の受入が歯科医療機関で断られることが現状に起きている。それらに必要な体制を評価することで、多くの歯科医療機関での受け入れや取り組みを推進したいとの趣旨は理解できる。
2016年10月1日付で全国の届出率が平均7.0%に過ぎないなど、施設基準が厳しいが、疾病構造の変化と人口動態の変化による患者の高齢化、ならびに小外科が多く医療安全が求められる歯科の特殊性なども考えると、全ての医療機関で届出が行われることが理想であろう。そのためには施設基準の緩和や医科のかかりつけ診療料のような項目からの選択制など、施設基準のハードルを下げる必要があると考える。

◆医療機関が積極的に取り組むと共に
そのためには、医療機関が積極的に取り組むことが必要である。しかし、同時に後押しする施策も必要だ。そもそも医療安全体制は、機能強化型に限らず一般歯科診療所で行えるようにすべきものである。厚労省は、歯科外来診療環境体制加算(外来環)の点数を引き上げ、体制を持つ医療機関を増やす施策を進めるべきである。
訪問診療も、外来機能を維持しながら行うには人員体制を増やす必要がある。しかし、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(訪問口腔リハ)の「か強診」加算100点で行うのは困難である。さらに訪問診療にインセンティブを与える政策を検討するべきである。また自院で外来から訪問診療までを対応することが望ましいが、地域での診診連携の点から、在宅療養支援歯科診療所(歯援診)に紹介して安全・安心な在宅医療を提供できる場合もその連携に対して評価すべきである。
連携についても、歯科治療総合医療管理料(医管)や歯科医療機関連携加算を評価し、医科歯科連携にインセンティブを与える施策も積極的に行うべきである。
「か強診」には、歯科の今後にとって重要な項目が評価されており、それは希望する医療機関で取り組めるようにすべきである。国民と歯科医療の将来のため,多くの医療機関で行えるよう「か強診」の改善が図られることを望む。
2017年3月1日
東京歯科保険医協会
政策委員長 坪田有史

きき酒いい酒いい酒肴No.24『春色のロゼ~梅や桃や桜のお花見をするように…』(機関紙2017年3月1日号/No.564号)

きき酒いい酒いい酒肴No.24『春色のロゼ~梅や桃や桜のお花見をするように…』(機関紙2017年3月1日号/No.564号)

日差しが少しずつ柔らかく暖かになってくると、春めいてきます。「春告草(はるつげぐさ)」と呼ばれる梅から桃に花の主役がかわってきます。


✿バラ色の…
戸外に目がむかうようになってくるこの季節。春色のロゼワインを楽しむのに良いころです。
ロゼワインとはピンク色のワインで、「ロゼ」というのはフランス語で「バラ色の」という意味です。白ワインのさっぱりした味と、赤ワインの渋みが合わさったような味で、飲みやすく、いろいろな料理に合います。春の花の色合いが豊富であるように、ロゼワインも白に近い淡いピンクから紅色に近いイチゴのような濃いピンクまで、多くの美しい色合いがあります。


✿赤と白のブレンドではない
ロゼワインは赤ワインと白ワインのブレンドではありません。赤ワインと同じような種類のブドウから作られます。しかし、赤ワインほど色素を出さないため、ピンク色になります。大きくわけて、3つの方法で作ります。

✿醸造法は3つ
1つ目はマセレーション法といって、途中まで赤ワインと同じように作る方法。まず、ブドウをつぶして、果実・皮・種をすべて発酵タンクに入れます。この後、赤ワインの場合は発酵を進めるのですが、ロゼを作る際には、発酵が開始し、果汁に色がついた段階で、果実・皮・種をすべてろ過して、そのあとに低温で発酵を進めます。この方法が最も一般的な方法といわれています。
2つ目は直接圧搾法といって、白ワインのように作る方法です。赤ワインで使われるブドウの果汁を絞り、あとは白ワインと同じように低温で発酵させます。
3つ目は混醸法といって、黒ブドウ(赤ワインをつくるブドウ)と白ブドウを混ぜて、白ワインと同じように作ります。
EUの規定によって、赤ワインと白ワインを混ぜてロゼとすることは、一般に禁じられていますが、その中で例外があります。フランスのシャンパーニュ地方に限っては、赤ワインと白ワインを混ぜる方法が許可されており、ロゼのシャンパンが作られています。少数ながら非発泡のロゼワインも生産されています。


✿ほどよいタンニンときれのいい酸味
赤ワインと白ワインのいいところを受け継いでいるロゼワインは、口中でほどよいタンニンと、きれのいい酸味が広がるので、食材の旨みを引き立ててくれます。イチゴやラズベリーなどの赤ベリー系の香り、ブラックベリーやプラムなど黒ベリー系の香りにしっかりとした酸味もあるので、肉料理にも合いますし、醤油ベースの和食にも意外なことに海老チリなどの中華にも合います。春の主役フキノトウなどの山菜のえぐみや香りにも合います。
ブドウの色素による美しい色合いが、桃のピンク、桜のうす紅、梅の移白(うつりじろ)移紅(うつりべに)のように見えるのです。ロゼといえば南フランスのプロヴァンズのイメージが強いようですが、日本の春にもぴったりなのです。
ぜひ、明るい春の日差しのもとで、梅や桃や桜のお花見をするように、美しいロゼワインを楽しんでみてください。
  (協会理事/早坂美都)

歯科医院への受診抑制にもつながる高齢者負担増めぐり議員要請

歯科医院への受診抑制にもつながる高齢者負担増めぐり議員要請

2月23日、協会は「高齢者の負担増反対」「保険でよい歯科医療を実現するためにも医療費の拡大を!」との要請を国会議員に行った。橋本健一理事と山本道枝顧問が参加した。
この日の要請は、自民党の石井みどり参議院議員、民進党の牧山ひろえ参議院議員、共産党の倉林明子、田村智子、宮本徹の各衆議院議員と小池晃参議院議員に対して行った。
役員からは、「負担増により高齢者が歯科医院に来られなくなる」「安心して受診してもらうには3割の自己負担はあまりにも高い」「寝たきりになると食べることは最後の楽しみ。きちんと治療を行いたい」と訴えた。
倉林議員は「お金の心配をして医療を受けられない人がいる。何とかしないといけない」と語り、また、宮本議員は「昨年、歯科の受診抑制の質問を行ったことがある。負担引き上げは大問題」と歯科への関心の高さを示唆する話を伺った。

医団連が国会内集会「誰もが安心の医療を」を開催

医団連が国会内集会「誰もが安心の医療を」を開催

2月23日、医療団体連絡会議(医団連)がスローガンに「誰もが安心の医療を」を掲げる国会内集会が、参院議員会館講堂で開催された。サブテーマを「今こそ、ストップ!患者負担増 診療報酬・介護報酬の大幅引き上げ」とし、全国から約150名が参加。国会議員も10名が参加したほか、マスコミの取材に3社が訪れた。

議員の挨拶の中では、民進党の大島九州男参議院議員が「患者の立場がない。医療のあり方が問われるべき」と指摘し、この集会の趣旨に賛同する意思を伝えた。また、共産党の堀内照文衆議院議員は「ギリギリの生活をしているのに、さらに患者負担が増えるのでは、本当に生活ができなくなる」と強調。続いて民進党の升田世喜男衆議院議員が「身近な問題として実感していることばかり。医療・介護は生活に大きな影響を与える。ここが確保できなくて未来は語れない。真剣な議論が必要」と訴えた。

集会での議論を総括する形で、保団連の住江憲勇会長が挨拶し、司法・行政・立法の三権分立が崩壊し、周囲から意見のないまま総理の意向で物事が進み、マスコミも内容を選択して報道するという状況の危険性を指摘し、「議論が深まらず進展しない非常に危険な社会になっている」と訴えた。

歯科も他人事ではない/「かかりつけ医機能」フリーアクセスの制限に懸念/2.22中医協で議論

歯科も他人事ではない/「かかりつけ医機能」フリーアクセスの制限に懸念/2.22中医協で議論

2月22日の中医協で医科の「かかりつけ医機能」が検討された。検討では、かかりつけ医を介さずに受診した場合に負担増が生じるフランスなどの海外の事例、社保審で議論されているかかりつけ医以外を受診した場合の定額負担などが紹介された。日医の中医協委員からは、ゲートキーパーによる受診抑制に繋がるとして、それらの動きに反対する意見が上げられた。

また、かかりつけ医機能の評価である「地域包括診療料」などの課題として、在宅患者への24時間体制の困難さを指摘する意見が上がった。日医の中医協委員からは、自院ではなく救急医療機関との連携での24時間体制も認めるべきとの意見が出されたが、支払側からは患者を1人の医師ではなく、患者情報を共有化するICTを活用し地域で連携して診るべきとの意見が出された。

「かかりつけ歯科医機能」については今後議論されるが、医科と違い、矯正などを除けばほとんどの疾病を1歯科医師で治療している。今後、どのような議論が展開されるのか、注目される。

◆後発医薬品の使用が増加

また、この日の中医協では、平成28年度改定の特別調査のうち、後発医薬品の使用促進策の調査結果が報告された。診療所の医師ベースで74.6%が一般名処方による処方せんを発行しているなど、促進策が効果を上げているとした。

一方、先発医薬品から後発医薬品に変更しない理由は、患者の希望が最も多かった。希望しないきっかけとしては、効き目が悪くなった経験から後発医薬品に不安があることが最も多かった。

歯科専門委員会を設置/第7回健康日本21(第2次)専門委員会

歯科専門委員会を設置/第7回健康日本21(第2次)専門委員会

厚生労働省の厚生科学審議会地域保健建造増進栄養部会の中に設置されている「健康日本21(第二次)推進専門委員会」の第7回会合が2月17日、同省内会議室で開催された。

今回は、健康日本21の中間評価とその方法について検討が加えられたほか、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の中間評価の進め方」などの報告が行われた。

今後は、健康日本21の中間評価と調整しつつ部会や歯科専門委員会を開催していく。2018年の夏季を目途に中間報告を取りまとめる予定。

歯ブラシ中の転倒事故めぐり注意喚起/消費者庁が発表

歯ブラシ中の転倒事故めぐり注意喚起/消費者庁が発表

消費者庁は2月15日、6歳以下の子どもが歯ブラシを使用時に転倒したり、人とぶつかったりしてけがをした事故が、2010年からの6年間で139件に上っていることを公表した。

それによると、このような事故は、特に1歳児が最も多く、さらに全体のおよそ9割の124件が3歳以下によるものと指摘している。具体的には、歯ブラシをくわえたまま転ぶケースが全体の65.5%、ソファからの転落13.7%、人や物にぶつかっての事故10%などとなっている。

消費者庁は、保護者が近くで見守り、床に座らせて歯磨きをさせたり、喉つき防止カバーなど安全対策が施された歯ブラシを選んだりするよう、注意を喚起している。

クイズチラシ当選者にダイソン届ける!!

クイズチラシ当選者にダイソン届ける!!

クイズチラシ「クイズで考える私たちの医療」の1等「ダイソンファンヒーター」3本のうち1本が、当協会の会員診療所から応募した患者さんが見事に当選しました。応募総数約4万件の中からの当選。

そこで、本日2月15日午後、協会から直接診療所で待つ患者さんにファンヒーターをお届けした。「まさか当たるとは…」と喜びの声をいただきました。

次回クイズチラシキャンペーンの際は、患者さん、先生、スタッフの方…。ぜひとも皆さんでご応募ください。

 

歯科医療点描⑱完 1人の歯科医師では限界の時代/グループ開業制の可能性について

1人の歯科医師では限界の時代/グループ開業制の可能性について

毎月のこのシリーズも今回が最後になりました。最終回らしく、私が常に考えていることで、先生方にとっては抵抗感がありそうな話題に触れたいと思います。

それは個人開業制、自由開業制です。日本では医師や歯科医師は誰でも自由に診療所を開設できます。先生方にとってはそれが日本の長所でしょうが、患者側からいえば問題があります。

それは、「一人の医師、歯科医師の診療には限界がある」ということです。私が医療記事を書き始めたのは一九六八年ですが、この間の医療技術の発展、進歩は想像以上です。自分の専門とする病気の新しい治療法を会得し、実践するのは何とかできそうです。しかし、隣接診療科が新型装置で自分の専門の病気の治療を始めたとしたらどうでしょうか。自分の治療では改善しないが、新治療では改善するタイプの患者がいるかも知れません。

そのうえ、今は診療科を越えた連携が大切です。高齢社会ではいくつもの病気をもった患者が増えてきています。複数の病気治療には最適な順序があるかも知れません。さらに、栄養や看護、リハビリの効果も期待できます。医科歯科連携の重要性からいえば、すべての病院は歯科を併設すべきです。多数の専門家が必要なアドバイスや治療を加えてこそ、質を高めた医療になり、患者にとっても最大の効果をあげることができます。日本を代表する国立がん研究センター中央病院でさえ、他の病気の専門家が少なく、重度の重複患者を受け入れられなくなっています。

そう考えると、医療は病院が原則です。大学病院で十五年も心臓手術だけをやっていて、父親の病気で内科、老人科の診療所を継いだ友人もいました。一人の医師が自由に、しかもほとんどやっていない診療科まで開けるのは、まさに質を無視した制度です。

腕自慢医師による白内障手術の診療所や透析診療所も疑問です。他の病気の専門家がいませんし、1つの技術に特化することに利益優先の傾向を感じるからです。

厚生労働省は日本医師会や歯科医師会、薬剤師会などに弱く、根本的な医療改革をしてきませんでした。しかし、医療の質が重要だと国民が理解していけば、将来は変わる可能性があると思います。

個人でなく、歯科なら3人、医科なら5人とか7人とかのグループ開業制はどうでしょうか。予防・管理、義歯、インプラントの得意な歯科医が揃えばより質の高い治療ができそうです。多数の医師、歯科医師がいれば夜間診療も可能です。家族薬局では毎夜遅くまで営業するのは困難ですが、グループ開業であれば可能です。

いかがでしょうか。

 医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」201721日号6面掲載

【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

機関紙2月号「2016年 税制改正のポイント」のお詫びと訂正

【お詫びと訂正】

東京歯科保険医新聞2017年2月1日号(№563号)第4面の「2016年分 税制改正のポイント」の「図2 定額法償却率0.067」は、正しくは「図2 定率法償却率0.133」です(以下に訂正版を掲載します)。お詫びして訂正させていただきます。

訂正記事のダウンロードは、ここをクリック。

 

 

 

 

歯科診療と歯科医師をめぐる意識調査/6割以上が「かかりつけ歯科医院アリ」

6割以上が「かかりつけ歯科医院アリ」

一般社団法人日本私立歯科大学協会はこのほど、10~70歳代の男女1000名に対する「歯科診療および歯科医師に関する意識調査」を実施し、その概要を明らかにした。前回調査は2012年に実施している。

その中で、「かかりつけの歯科医院がある」と答えた人は、64.3%で満足度は80点となっている。

次に、複数回答可と名ている事項については、「かかりつけ歯科医院を選ぶポイント」については、「人柄」が50.5%、「技術」46.7%、「立地」46.4%となっている。これを裏打ちするかのように、「理想の歯科医師は」との質問には、「丁寧な治療」71.8%、「高い技術」68.7%、「人柄が良い・優しい」67.7%との回答が寄せられている。

一方、回答者自身の健康関連項目をみると、「自身の歯や口腔環境に自信がない」が74.1%、「歯科医院のオーラルケア」については、「必要」が91.2%を占めている。

歯科の役割重視し高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上を調査/厚生労働省公表

歯科の役割重視し高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上を調査/厚生労働省公表

厚生労働省はこのほど、「高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上のための取組に関する調査結果」を公表した。

◆調査の内容と背景は・・・

高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上については、高齢者自身にその重要性と予防効果についての認識が深まっているとは言い切れない状況にあり、全国的に予防講座・教室への積極的な参加や要介護高齢者への口腔ケア指導などの早期導入が取り組まれるような状態には達していない。

他方、在宅や施設で介護サービスを受けている重度の要介護高齢者などの摂食嚥下障害の支援に向け、それぞれ地域で介護サービスの担い手と歯科分野をはじめ、様々な職種の専門職が連携したサポート体制をいかに構築していくかが大きな課題となっている。

今回、このような課題の解決に向け、厚労省は地域の住民を積極的に支援している自治体の中から、東京都大田区、同新宿区、千葉県柏市、富山県南砺市、岡山県鏡野町を選定し、地域特性を踏まえた介護予防の事業展開や専門職によるサポートの仕組みづくりの経緯・特色などを調査し、報告書に取りまとめたもの。

同省では、調査結果概要を、以下の図に取りまとめている。

下記厚労省報告書のダウンロードはここをクリック

映画紹介№32「ルーム~ROOM~」 【2015年カナダ・アイルランド製作/レニー・エイブラハムソン監督・作品】

映画紹介№32「ルーム~ROOM~」

 「ママは17歳の時に学校の帰りに誘拐され」

「7年間、監禁されている」

映画はオーストリアのフリッツル監禁事件を基に描いた小説「部屋」を原作としたヒューマンドラマです。事件は、実の娘が18歳から24年間、父親に地下室に監禁され、肉体的、性的な暴力を受け、7人の子どもを出産。2008年に救出されたというものです。

「ぼく5歳になったよ。もう大きいよ」

映画は、監禁されている部屋で子ども産み、その子どもが五歳の誕生日を迎えたところから始まります。部屋にはトイレ、浴室、調理台、ベッド、クローゼットなど最低限の設備だけが用意されています。

「部屋の外は宇宙空間。TVの惑星と天国があるの」

「外に出ると死んでしまう」

子どもには母親だけがこの世界の住人だと教えてきましたが、もうごまかせない年齢になってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外の世界を知らず、小さな暗い部屋で母親とTVの映像しか知りません。

「ドアの前で待つだけじゃ何も起こらない」

不思議の国のアリスの言葉に触発されて、逃げ出すことを決意します。

「あいつをだますの」

「モンテクリスト伯の脱出を真似するわ」

「死んだふりをするの」

「あいつは捨てる場所を探すわ。その前にトラックから転がって逃げ出す」

「そして最初に見た人に助けて!と叫ぶ」

そして脱出後、母子の世界は一変し、両親の離婚などの現実の変化に困惑し、新たな苦悩と再出発の日々が始まりました。

光に弱い目、弱い肌、雑菌免疫力低下のために、サングラス、日焼け止め、マスクを着用します。初めてのパンケーキ、初めての階段の昇り降りのリハも始まります。しかし、脱出して10日経っても、父親は犯人の産ませた子どもをまともに見ようとしません。押しかけるマスコミ、生活費のことなど想定していなかった問題が噴出してきます。

「ハッピーなはずなのに」

「ママは私の頭の中を知らない」

「ママが他人にはいつも優しくっていうから、あいつの犬を見に行ったのよ」

「どんな目で私を見る の?」

と、老いた母親を責めてしまいます。

マスコミは「子どもが大きくなった時、父親についてどう説明しますか」と質問してきます。

「部屋に帰ろうよ」

子どもが監禁されていた部屋を見たいといいます。

「これがあの部屋なの?」

「さようならイスさン、テーブルさん、ベッドさん」

「ママもお別れしてよ」

切ない心の高まりが流れる音楽でさらに高まります。

監禁ものの映画には、犯人の性格描写を克明に描いた映画「コレクター」などがありますが、この映画は脱出後の被害者の母子の苦悩、葛藤を描き、リハビリ、社会復帰を中心に人間の尊さを暖かく見つめます。

幸運を祈るお守りに、ママの抜けた歯を子どもが大事にしているのも面白いです。子どもの愛くるしい名演技に涙してしまいます。この作品で、主演女優のブリー・ラーソンは、アカデミー主演女優賞をとりました。

(協会理事/竹田正史)

未収金に関する税務と減価償却資産について/機関紙2017年2月1日号(№563号)より 

未収金に関する税務と減価償却資産について

質問1 自由診療で分割支払いしている患者さんがいる。二月時点でまだ未収金があるのだが、この未収分について、確定申告ではどう申告すればいいか。

回答1 未収金(売掛金)についても売上として計上する必要があります。会計処理は実際の現金収支の時期とは関係なく、診療があった時に売上を計上しなければいけません。そのため、未収金についても、代金回収を見越して売上に計上する必要があります。売上に計上した未収金を回収した場合、会計処理としては未収金の回収として、未収金残高を減らします。

質問2 未収金が回収できないまま、患者さんが遠方に引っ越してしまった。この場合の会計処理はどうすればいいか。

回答2 未収金を回収できないことが明らかになった場合、それが明らかになった事業年度において貸倒金として経費処理をすることができます。ただし、この会計処理を行うためには未収金が売上に計上されている必要があります。一般的には、1年を経過して、まだ回収できない未収金については、貸倒金として取り扱うことが多いようです。また、代金が回収できなかった証拠が必要になります。具体的には、普通郵便で請求書を送り、その後簡易書留や内容証明を利用し、何度も回収に努めたことや、患者さんと音信不通となり、回収不能となったことを説明できる証拠などを取った上で、経費処理をする必要があります。

質問3 診療所開業に伴い、土地や建物、医療機器を購入した。土地、建物、機器などには減価償却できるものとできないものがあると聞いたが、どういう理由か。

回答3 減価償却は価値の減少する資産に限られます。価値の減少しない土地などは減価償却の対象になりません。診療所等の建物や医療機器に関しては、経年劣化や使用による価値の減少があるので、年によって使用期間に応じた必要経費の算入が必要になります(所税法第2条)。10円未満の固定資産についてはその年の必要経費となります(所税法第138条)。10万円以上20万円未満の固定資産については、一括償却資産として、3年間で償却することになり、年ごとに3分の1を必要経費として算入します(所税法第139条)。

質問4 改装時に200万円の医療機器を購入した。減価償却資産にも固定資産税はかかるのか。

回答4 減価償却資産についても固定資産税はかかります。減価償却資産について、その年の1月1日現在の所有者に対して市町村から課税されます。年の途中に譲渡してもその年の1月1日に償却課税台帳に登録されている名義者が納税する義務を負います。税額は土地などと同様、償却資産課税台帳に登録されている価格に1.4%(注)を乗じて算出します。固定資産税には免税点があり、償却資産の課税価額の合計が150万円未満の場合は課税されません。

※注/地方税は市区町村によって税率が異なる場合があります。

厚生労働省が医務技監を新設へ /次官級ポスト

 厚生労働省が医務技監を新設へ /次官級ポスト

厚生労働省は、2017年度の機構改革の一環として「医務技監」の新設を決定した。昨年12月、総務省に対する組織・定員要求により認可された。

医務技監は、医療や保健の技術分野で同省内の関連部局の連携による対応、国際的な保険外交などの重要施策について、専門的な立場、視点から対応していくことが狙いであるという。当然ながら、歯科医療もその範疇に含まれるものと考えられる。関連する問い合わせ窓口は大臣官房厚生科学課となっている。

なお、医務技監はどの省庁でも事務官の最高ポストである「事務次官」と同等の扱いとなる。

歯科医療をめぐる発言多数/保団連第2回代議員会

歯科医療をめぐる発言多数/保団連第2回代議員会

1月29日、都市センターホールで保団連第2回代議員会が開催された。出席した代議員は113名。当協会からは、代議員として呉橋美紀副会長、加藤開・馬場安彦各理事、事務局が参加。また、保団連役員を務める中川勝洋理事も参加した。

議事は、①会務報告案、②役員の辞任と補充選任、③2017年度予算案―などで、すべて承認され成立した。そのほか決議案、特別決議案が提出され、賛成多数で採択された。

口頭発言と文書発言は、①医療運動全般、②政策・歯科技工対策、③診療報酬改善、審査、指導・監査、病院・有床診、地域医療、④災害対策、原発、平和、共済、庶務、組織―の各議題に分けて行われ、合わせて120本が取り上げられ、討議や質疑が行われた。当協会からは、口頭発言1本、文書発言3本を提出している。内容は、かかりつけ歯科医療強化型歯科診療所に関する件、歯科技工問題、訪問診療、映画「いしゃ先生」上映会の普及についてとなっている。

保団連主催「今こそストップ!患者負担増」集会に全国から120名参加

保団連主催「今こそストップ!患者負担増」集会に全国から120名参加

保団連は1月26日、衆議院第2議員会館内で「今こそストップ患者負担増!キックオフ集会」を開催し、全国の保険医協会・医会などから120名余りが参加した。開催中の国会の間隙をぬって国会議員も参加し、大野元裕参院議員(民進党)は「者負担の問題は政策と財源とのバランスが重要になってくる。その基本には負担が少なく安心・安全な医療提供ができるようにすべき」と挨拶し、続いて武田良介参院議員(共産党)が「医療問題は必ず財源が議論されるが、現実には捻出可能なのに動きがない」と指摘。また、川田龍平・参院議員(民進党)が「高額療養費制度改悪は、高齢者にとり非常に大きな問題。これは薬価の問題と絡み黙っていてはダメ。とにかく反対・阻止していきたい」と力強く訴えた。

このあと保団連の住江憲勇会長が挨拶に続き、特別ゲストのNPO法人医療制度研究会の本田宏副理事長から、「定年以後、全国各地で政府の社会保障政策、医療制度の改悪への懸念と阻止を訴えていて、2つわかったことがある」とし、具体的には、①昔からの伝統・文化が厳然としてあり、正しいことを言ってもなかなか変わらないこと、②既存の権力との戦いは厳しいが、しなくてはならない―であるとした。

そのほか、保団連の宇佐美宏副会長(歯科代表)が、「アベノミクスは失敗という人は50%を超えている。国民生活を大事にしていくために活動しているが、こうした集会に出席し新たに意思確認することで前を向いていける」とした。

口腔保健推進を社保審医療保険部会で説明/厚労省保険局関係予算関連

口腔保健推進を社保審医療保険部会で説明/厚労省保険局関係予算関連

1月25日、第103回社会保障審議会医療保険部会が厚生労働省内の会議室で開催され、2017年度の同小予算案のうち、保険局関連の主な予算・事業の内容が説明されたほか、今後の医療保険部会の進め方などについて報告、説明が行われ、審議・検討が加えられた。保険局予算の中の新規事業としては、①医療と介護のデータ連結の推進:1.5億円、②新制度の円滑な施行のための財政支援(社会保障の充実):800億円、③革新的な医薬品の最適使用に係る実効性の確保:600万円―などが挙がっているのが注目される。

◆歯科関連予算

それらの中で、特に歯科関連事業の状についてみてみると、健康寿命の延伸に向けた口腔保健の推進のために5億7000万円を計上しており、後期高齢者医療広域連合が実施する高齢者の特性を踏まえた歯科健診の実施支援するほか、政策事業として口腔機能低下や肺炎等の疾病を予防するため、歯・歯肉の状態や口腔清掃状態等をチェックする歯科健診を実施することとし、広域連合に対して国庫補助を行うことになっている。また、健康増進法の観点から、健康診査実施要項に規定されている歯周疾患検診を参考にして、高齢者の特性を踏まえた検査内容を各広域連合で設定する。

また、「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」の中で、摂食等の口腔機能低下に関する相談・指導、外出困難者への訪問歯科健診などが予定されている。

集中コース:有病患者に対する歯科診療上のリスクマネジメント

第4回学術研究会(1日集中コース)

『有病患者に対する歯科診療上のリスクマネジメント』

がん治療中の患者や糖尿病・高血圧症・心臓病など全身疾患を持つ患者の歯科治療を行う機会は少なくありません。全身疾患とその特徴、注意点を把握するなど患者のリスクを適切に判断し安全な治療を行うことが必要です。

協会では、増加する有病者への歯科治療をテーマに石川先生、岡本先生の両講師による1日コースを開催します。周術期口腔管理や医管の対象疾患などを中心にご講演頂きます。ぜひこの機会にご参加下さい

★「医療安全管理」および「周術期の口腔機能管理」の研修を受講した修了書を発行致します

◆日 時:2017年3月5日(日)午前10時~16時

◆講 師:石川  好美氏 (神奈川県・藤沢市民病院歯科口腔外科 診療科主任部長)

    岡本  喜之氏 (神奈川県・横浜市立大学附属病院 顎顔面口腔機能制御学講座 助教)

◆会 場:エムワイ貸会議室 高田馬場9F(新宿区高田馬場1-29-9 TDビル)

◆交 通:JR山手線、東京メトロ東西線、西武新宿線「高田馬場」駅から徒歩3分

◆対象者:会員、会員と同伴のスタッフ

◆参加費:1名につき4,000円(お弁当代を含みます)

◆定 員:150名

要予約:電話03-3205-2999(担当:社保・学術部)

※2016年度日歯生涯研修に登録予定です。

 

★各講師の抄録は以下の通りです。


<石川 好美氏>

テーマ:全身疾患を有する歯科患者のDental Risk Management

超高齢化社会では、複数の合併症を持つ有病歯科患者が増加していることから、歯科医師は日常臨床において患者を全身的視点から治療に当たらなければならない。現在の医療水準に照らして全身管理法の習得は歯科医師にとって必要不可欠なものとなっている。全身的疾患(循環器疾患を中心に)を有する歯科患者に対して、治療上のあらゆるリスク(偶発症、合併症の発症)を未然に防ぐための管理法( Dental Risk Management)について解説する。

 

テーマ:術期口腔機能管理の活用

平成24年度から開始したがん患者等に対する医科歯科連携での周術期口腔機能管理は、医療の質向上と患者中心の医療の展開において大変重要な歯科診療の一部となってきている。しかしながら連携歯科医院においては実施率が低く未だ浸透していないのが現状である。周術期口腔機能管理についての理解を深めることで、自院の患者ががん治療を受けたり全身麻酔手術を受けたりする際に適切に対応できるよう解説する。

 

<岡本 喜之氏>

テーマ:歯科治療総合医療管理における歯科治療の注意点

 高齢社会となり、われわれ歯科医師は健康な患者だけでなく、全身疾患を有する患者を診察する機会が多くなった。安全でかつストレスのない治療を行うためには、それぞれの疾患を理解し、それに対応した治療計画が望ましい。本研究会では歯科治療総合医療管理に指定されている疾患の特徴と歯科治療における注意点について検討する。

 

 

 

 

 

 

 

歯科をはじめ最近の医療めぐる諸情勢を議論/今年度第4回メディア懇談会を開催/通算で60回迎える

歯科をはじめ最近の医療めぐる諸情勢を議論/今年度第4回メディア懇談会を開催/通算で60回迎える

 

協会は本日1月13日、第4回メディア懇談会を開催した。同懇談会は、2008年3月に第1回を開催以来、今回で60回目を迎えた。メディア側参加者は5社・5名で、司会は協会の坪田有史広報部長で、今回は年初ということもあり松島良次会長が参加した。

今回の話題は、2017年の「会長年頭所感」、昨年12月に発表した「政策委員長談話」、およびこの1カ月間の医療・歯科医療をめぐる諸情勢に対する協会の議論、検討、対応状況とした。

特に情勢の関連では、最近の中医協での議論の状況や、経済財政諮問会議での社会保障制度や医療に関する課題が俎上に乗っていること年の議論の方向などについて意見が交わされた。また、政府や関連学会で「高齢者」の年齢定義を65歳ではなく70歳あるいは75歳に変更を示唆する見解が出ていることなども話題となり、「少子高齢化と人口減少問題とも相まって、社会保障では年金制度から影響を受けるのではないか」「医療保険制度も影響を受ける問題だ」などの意見があった。

歯科と医科歯科連携の必要性を改めて認識/厚労省が第1回全国在宅医療会ワーキンググループを開催/座長に新田國夫氏を選任

歯科と医科歯科連携の必要性を改めて認識/厚労省が第1回全国在宅医療会ワーキンググループを開催/座長に新田國夫氏を選任

厚生労働省の全国在宅医療会議ワーキンググループの第1回会合が1月12日、千代田区六番町の主婦会館プラザエフで開催された。

席上では、まずこのWGの座長選出が行われ、新田國夫構成員(国立市開業、日本在宅ケアアライアンス議長)を座長に選任した。次に、今回特に参考人として招かれた名古屋大学大学院の葛谷雅文教授が「在宅医療に関するエビデンス・在宅医療診療ガイドライン(GL)作成」について説明を加えた。その目的は、「今後の在宅医療の指針」「今後求められる在宅医療の臨床研究課題を浮き彫りにすること」であると指摘。さらに、そのポイントとして「在宅医療の中で行われる治療並びに様々な地域で展開されるサービスの効果について明らかにすること」にある点を明確に打ち出した。

そのほか歯科関連については、地域包括ケア推進における歯科の必要性と医科歯科連携の必要性への理解を求めた上で、在宅療養支援歯科診療所の届出は全国で増加傾向にあるものの約6500施設(全歯科医療機関の約9%)に留まっていることが報告され、その拡充の必要性が報告されている。

歯科医療点描⑰ いろいろ感じました医科歯科連携研究会/歯科医師は医師の依頼で初めて…

いろいろ感じました医科歯科連携研究会/歯科医師は医師の依頼で初めて…

先月初め、四ツ谷駅前の会場で開かれた「医科歯科連携研究会2016」に参加、というか見学させてもらいました。11月のメディア懇談会で副会長の山本鐡雄先生から案内があり、テーマの「睡眠時無呼吸症候群」 (無呼吸症)には関心があったからです。

かなり昔、新聞記事としてCPAP(シーパップ=持続陽圧呼吸)療法を紹介したことがあります。ところが今は、歯科医が製作するマウスピースで十分対応できるという話です。正直なところ、口腔内装置 (OA)治療は知りませんでした。

連携研究会は東京歯科保険医協会と、東京保険医協会と千葉県保険医協会の三つの保険医協会主催でした。山本先生から協会の取り組みを軸に連携治療の総説的な紹介があった後、虎の門病院睡眠センター長の成井浩司氏が専門医の立場から、古畑いびき睡眠呼吸障害研究所長の古畑升氏が歯科医の立場から、無呼吸症の原因や症状、連携の具体的な方法、問題点などの詳しい解説がありました。

へえーと思ったのは、欧米人の無呼吸症は肥満が多いのが、アジア人、日本人は骨格からなりやすく、面長で平ら顔、小さなあごの人が要注意との人種差でした。身近かで無呼吸症の何人かを思い浮かべて、なるほどと納得しました。

◆OAの有効率は80

成井先生、古畑先生ともOAの効果がCPAPと大きく変わらないとのデータを出されたのにもびっくりでした。虎の門病院のOAの有効率は80%でした。

もっと驚いたのは、OAには把握できないほど多くの種類があることです。素人ですから写真だけでは違いがよくわかりませんでしたが、効果の違いはあるのでしょうか。

◆一番驚いたのは…

そして一番驚いたのは、医師と歯科医の差でした。患者の様子、いびきが大きい、といった話から意外と簡単に無呼吸症が疑えるのですが、歯科医は診断や治療ができない。     

病気の診断はあくまで医師の仕事で、歯科医は医師の依頼で初めてOAを作ることができるとの決まりです。歯科医は作ったOAがうまく機能するかどうかも医師に依頼して検査してもらう。自分で簡易検査をしても保険で請求できない、ということでした。

OA製作後の検査は歯科医がするほうが患者は助かります。問題があればすぐ直せますし、わざわざ医師を受診するのも面倒です。医師主導だと、OAをよく知らない医師、知っていても自分でやれるCPAPしか患者に説明しない医師もいそうです。待たされ一方の歯科医に同情します。

ところで、インターネットで無呼吸症を調べると、睡眠中に挿入する鼻チューブの情報が出てきました。おそらくは有効性のデータがまだなく、治療法の選択肢には入っていないのでしょう。しかし、素人にはOAよりさらに簡便で、魅力的に見えます。

どんどん進歩する技術を習得したり、理解するのも本当に大変と実感しました。

医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」201711日号5面掲載

  【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。

有期契約での雇用について/機関紙2017年1月1日号(№562号)より 

≪有期契約での雇用について≫

質問1 長年勤めていた歯科衛生士が辞めたため、新しく有期契約による雇用を検討している。雇用するにあたり、どのような点に注意したらよいか。

回答1 歯科衛生士の場合、契約期間の上限は3年間になります(労働基準法第14条)。歯科助手や受付なども同様です。期間の定めがある労働契約については、やむをえない事由がある場合でなければ契約期間が終了するまで労働契約の解除はできません。ちなみに、歯科医師を有期雇用したい場合、特例として5年まで認められています。1回の契約が1年を超える有期雇用契約を締結した従業員は、労働契約の期間の初日から1年を経過した日以降は、使用者に申し出ることでいつでも退職することができます。また、契約時には必ず労働条件を明示しなければなりません。労働条件通知書を渡しましょう。

質問2 有期労働契約について、最近、報道で無期契約への転換というものを見たが、どういうものか。

回答2 同1の使用者との間で5年を超えて繰り返し更新される有期雇用契約について、従業員の申込みにより、無期雇用契約に転換されるというものです。2012年8月に公布(労働契約法第18条)され、2013年4月1日以降の契約が対象です。よって、2018年以降で、通算期間が5年を超える有期雇用契約の従業員(または5年を超えることが確定している有期雇用契約の従業員)について、その契約期間の初日から末日の間に無期転換の申込みが可能になります。この申込みについては、従業員の権利になり、申し込みするかどうかは従業員の自由で、口頭での申込も法律上有効となります。しかし、使用者としては、口頭での契約はトラブルになりかねないため、書面で契約を交わしましょう。無期に転換されるタイミングは有期雇用契約終了の翌日になります。なお、無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、申込権の放棄を契約に盛り込むことはできません。

質問3 無期雇用契約に転換した従業員の労働条件は正社員と同様なのか。

回答3 労働条件は就業規則などに定めがない限り、直前の有期雇用契約と同一になります。無期転換後の労働条件は、あらかじめ有期雇用契約時に使用者・従業員ともによく確認し、無期転換前と異なる労働条件とする場合、就業規則や労働協約などに定める必要があります。注意したいのは、有期雇用の従業員に適用されない定年などの労働条件項目です。別段規定しておきしょう。

きき酒いい酒いい酒肴No.23『二十四節気に響くブレンダ―の気概』(機関紙2017年12月1日号/No.562号)

きき酒いい酒いい酒肴No.23『二十四節気に響くブレンダ―の気概』(機関紙2017年1月1日号/No.562号)

年末年始は、いかが過ごされましたでしょうか。慌ただしい時間の合間に、ゆっくりと自分のためにくつろぎたい。そんな時に、ぴったりなのがジャパニーズウィスキーです。日本人の繊細な味覚より生み出されたウイスキーは、世界的に人気となり、手に入りにくくなってきています。


◆注目集めるジャパニーズウイスキー
ジャパニーズウィスキーは、1918年よりスコットランドに留学した竹鶴政孝によってスコッチ・ウイスキーの伝統的製法が持ち帰られたことが端緒です。竹鶴は壽屋(現サントリー)に在籍し、1923年開設の山崎蒸溜所の初代所長となり、後に「ニッカウヰスキー」を創業した方です。


◆冴えるブレンダ―の腕
中でも、「響」シリーズは海外で大変な人気です。響は、モルト原酒を何種類もブレンドしたものです。これこそ、日本人の味覚の鋭さ、ブレンダーの腕が冴えるものです。
モルト原酒は、大麦の麦汁を糖化・発酵させた発酵液を蒸溜し、熟成させることでつくられ、その味わいは、材料となる水や大麦の個性や気候条件、ポットスチル(蒸溜釜)や貯蔵樽の材質などによって変わってきます。たとえば、ポットスチルにはストレート型、ランタン型、バルジ型(ひょうたん型)といった形状の違いがあり、ストレート型は重厚な酒質を、ランタン型やバルジ型は軽快な味わいの酒質を生み出すとされています。
できたてのウイスキーの原酒は無色透明ですが、樽に貯蔵することによって熟成を重ねていきます。樽に使われるオーク材からリグニンやタンニンが原酒に溶け出します。リグニンはバニラの主成分であるバニリンなどの芳香物質となり、これが樽由来の甘い香りとなります。
響のボトルは、24面カットのデキャンタボトルです。24という数字は、1日24時間、1年二十四節気の意味がこめられているそうです。立春より、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑、立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降、立冬、小雪、大雪、冬至、小寒、大寒、という日本古来の季節を24四に分ける美しいならわしを表しています。
響を作ったブレンダーは、ブラームスの交響曲をイメージしたといいます。
美しい日本の二十四節気を何巡りもして醸し出されたウイスキー。その琥珀色を眺めながら、「今年1年をどんな年にしていこうか…」と、思いを巡らすのも大切な時間になることでしょう。
 (協会理事/早坂美都)

会長年頭所感 「保険でよい医療は可能か?」

会長年頭所感

「保険でよい医療は可能か?」

 

謹賀新年
昨年は、トランプ氏とドゥテルテ氏の二人の暴言王が注目を浴びました。
二人とも口が悪いのに、なぜ多くの人から支持をされたのでしょうか。
私が思うには、理想ばかり語る人間を信じられなくなってしまったからではないでしょうか。しかし、すべての人を満足させられる人物も神でない限り不可能でしょう。多くの人は、幸福の袋は大きく、不満の袋は小さいものです。つまり、皆が少しの幸福を得るためには、大きな不満に耐える必要があります。日本の国民皆保険制度も、世界ではトップクラスだとWHOは認めていますが、身近で運用している私たちは多くの問題点を知っています。その課題をクリアするためには、利害関係にある者同士が、我意を通すだけでなく共助の姿勢で臨む必要があります。つまり、保険医と患者と行政の三者が、多くの妥協点を抱えながらも、少しの福を得る方法を見つけ出すことが必要なのかもしれません。
私も、若い頃は理不尽な保険制度に見切りをつけて、自由診療だけで歯科医業を生業にしたいと考えた時期がありました。そのためには、誰よりも高いスキルを身につけなければ、患者さんに納得してもらえないと考えました。しかし、口腔という狭い範囲でも、エンド、ペリオ、抜歯、クラウンブリッジ、デンチャーなど覚えることがたくさんあり、そこには得手不得手が起こってしまいます。そもそも、自費だけで生計を立てるという発想は、限られた高所得者だけを相手にする差別的な医療の考え方だと思うようになりました。より多くの患者さんの口腔管理を行うためには、治療ではなく予防医学を発展させなければなりません。予防が保険に導入され、それだけで生計が立てられるほうが、患者も歯科医も幸せだし、医療費も増えすぎず行政も納得できるはずです。ただ、疾病保険に予防を入れるのは難しく、もし入ったとしても、低い評価でしかないと考えていました。しかし、昨年の改定で導入された「か強診」は、施設基準の問題はあるものの、各ライフステージにおいて重症化予防を行うという方向性は好感がもてるし、評価も悪くないと思います。
 「予防は歯科衛生士の仕事だ」と指摘される先生もおられますが、疾病予防管理は歯科医の1番の業務だと思います。それにより、「抜いて、削って、被せる」という歯科医の3大悪イメージは払拭でき、内科医が薬で高血圧のコントロールをするのと同じように、スキルの差を減らし、より多くの患者に高い効果を生み出すことができます。歯科医師へのバッシングは減り、地位向上にも繋がります。
これは、まさしく「保険で良い医療」そのものだと思いませんか?
ただ、病気がなくなっていくと、歯科医師不要論が巻き起こるかもしれませんので、歯科医の需給問題が大事になってきます。2030年頃までは、在宅診療の需要も多く、外来との両立が求められてくることでしょう。在宅での診療は容易ではありませんが、患者のニーズに応えていくことこそが、医療人の使命ではないでしょうか。
こんな綺麗ごとを二人の暴言王が提案するとしたら、どんな発表となるでしょうか?
 「全国民はかかりつけ歯科医をひとり選び、その医院に毎月の保険料を支払う代わりに最後まで口腔管理を委ねられる権利を取得できる。治療にかかる費用はすべて毎月の保険料で賄う」こんな考え方が、かかりつけ歯科医機能の根底にあるかもしれないということに、注意しながら先を見据えて検討しなければなりません。

 

 

 

 

 

 

2017年1月1日

東京歯科保険医協会会長

松島良次