年別アーカイブ: 2021年

医療費国庫補助10兆円超に 2022年度厚労省概算要求案

◆オンライン資格確認システムも推進

 厚生労働省の2022年度(令和4年度)予算概算要求案が8月31日、財務省に提出されたが、そのうち保険局関係の主な要求内容が明らかになった。 

 保険局予算案の柱は、①地域包括ケアシステムの構築等に向けた安心で質の高い医療・介護サービスの提供、②健康で安全な生活の確保、③地域共生社会の実現に向けた地域づくりと暮らしの安全確保、④東日本大震災や熊本地震をはじめとした災害からの復旧・復興への支援―の4本となっている。 

 これらのうち、①の地域包括ケアシステムの構築に向けた安心で質の高い医療等サービスの提供では、各医療保険制度などに関する医療費国庫負担を2022年度予算では10兆1788億円(2021年度予算では9兆8533億円)、 国民健康保険への財政支援3104億円(同3104億円)、被用者保険への財政支援825億円(同820億円)―などを要求している。

 これにより、各医療保険制度などに関する医療費国庫負担に要する経費を確保し、その円滑な実施を図り、保険料の軽減対象となる低所得者数に応じた保険者への財政支援の拡充、保険者努力支援制度等の継続実施に必要な経費を確保し、拠出金負担の重い被用者保険者の負担の軽減と短時間労働者の適用拡大にかかる財政支援に必要な経費を確保する方針。

 また、医療分野等におけるデータ利活用を推進させるため、医療保険のオンライン資格確認等システム等の改修およびオンライン資格確認等システム導入の周知広報等に関する必要経費を確保し、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や介護保険総合データベースなど健康・医療・介護情報を連結・解析する環境を整備・拡充。

 研究者や民間事業者など幅広い主体への提供等を行い、国民健康保険団体連合会が診療報酬の審査支払等を行うための国保総合システムと社会保険診療報酬支払基金との審査基準の統一化や審査システムの整合的、効率的な運用を実現するため、2021年3月に策定した「審査支払機能に関する改革工程表」に基づき、2024年度の次期更改に向け、システム整備の支援を行うとしている。

2022年度予算要請 東京都と意見交換

東京都庁

 協会は、9月2日に東京都第二庁舎10階会議室にて、東京都福祉保健局と2022年度東京都予算に関する意見交換を行った。今回の要請では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言下にあることを踏まえて、東京都側の一部回答者がWEBによるオンラインでの参加となった。
 今回、当会からは、「①緊急事態宣言時の指導」「②高点数による個別指導」、③生活保護の医療要否意見書、④妊産婦への医療費助成制度、④介護保険の自己負担額の軽減策、⑤自治体が行う歯科健診、⑥子ども医療費助成制度、⑦訪問診療の推進、⑧在宅歯科医療実践ガイドブック、⑨緊急時の医療提供体制、⑩医療機関の減収補填、⑪検査費用等の補助、⑫歯科衛生士の再就職、⑬歯科衛生士学校について―など17項目について東京都に対して要請を行った。


――高点数による個別指導は廃止を求める
 厚労省保険局医療課指導監査室から発令された事務連絡「令和3年度における指導監査等について」(2021年1月18日)では、今年度の高点数の保険医療機関等に対する個別指導は実施しないことや今年度の集団的個別指導に選定された医療機関に対しては、2022年度も引き続き、高点数であっても2023年度における高点数を理由とする個別指導は実施しないことが盛り込まれている。情報提供や再指導などによる個別指導に対して、高点数による個別指導を行う必要性が乏しいことを示していると考えられる。当会は東京都福祉保健局に対し、高点数による個別指導廃止の要望があることを報告。関東信越厚生局東京事務所から厚生労働省に向け、意見を上げるよう求めた。
 東京都側は、協会の考えに理解を示した上で、高点数による指導は、指導大綱に基づき実施している点を強調。関東信越厚生局には、要望があったことを伝えると返答した。


――妊産婦に関する医療の在り方を検討
 東京では、2025年以降人口が減少し、少子高齢化がさらに進行することが見込まれている。そのため生産年齢人口の減少、単独世帯や高齢世帯の増加などが懸念されている。2019年に東京都が行った「都政モニターアンケート」調査によれば、少子化に歯止めがかからない背景には、「働きながら子育てができる社会環境が十分でない」(49・1%)が最も高く、「経済的な理由で結婚に踏み切れない人が増えている」(48・0%)、「結婚する必要性を感じない人が増えている」(45・8%)などと続いている。当会は、東京都福祉保健局に対し、現役世代への補助が大切であることを訴え、妊産婦への助成は重要とデータを基に説明し、東京都でも妊産婦に新たな助成制度を設けることを求めた。
 東京都側は、妊産婦への対応は重要であることを述べ、妊産婦に関する医療の在り方について検討していく方針を示した。


――歯科衛生士の復職支援の場は必要
 また、昨年に続いて、歯科衛生士問題に関しても要請を行った。現在、歯科衛生士の有資格者は約27万人いるにも関わらず、実際に就業している人数は約13万人に留まっている。その点について、日本歯科衛生士会が行った「勤務実態調査」によれば、非就業者の47・2%が「自分のスキル」を再就職の障害とし、再就職に結びついていないと考えられている。当会は、新型コロナウイルス禍で就職先を失った有資格者である歯科衛生士の就職の幅を広げるためにも、東京都は復職支援の場を設けることを求めた。


 東京都側は、引き続き東京都歯科衛生士会に支援を行うとした。

コロナ加算は9月末で終了。乳幼児感染予防策加算は10月から28点に。

 歯科外来等感染症対策実施加算5点および介護報酬の0.1%加算は9月末で終了となり、10月以降は算定できません。

 なお、乳幼児感染予防策加算55点は10月以降は28点に減算となり(2022年3月末まで算定ができます)、新型コロナ歯科治療加算298 点は引き続き算定できます。そのほか、9月28日から、レセプトの摘要欄に「コロナ特例」と記載の上で、下記(1)~(5)の算定ができるようになります。

 また、10月からは金パラなどが引き上げになりますが、原価割れが解消するかは不透明です。協会は金パラ原価割れの解消を求める署名を再開しました。ぜひこちらにご協力をお願いします。☞金パラ原価割れの改善を求める署名はコチラをクリック

1)非経口摂取患者口腔粘膜処置(100 点)

 新型コロナウイルス感染症患者であって、呼吸管理を行っている者に対して、口腔衛生状態の改善を目的として、口腔の剥離上皮膜の除去等を行った場合、1日につき1回算定。

2)歯科治療時医療管理料(45点) ・在宅患者歯科治療時医療管理料(45 点)

 新型コロナウイルス感染症患者に対して、患者の脈拍、経皮的動脈血酸素飽和度等を把握して歯科治療を行った場合に算定。

3)歯科特定疾患療養管理料(170点)

 新型コロナウイルス感染症患者であって、口腔乾燥を訴える者に対して、服薬、栄養等の療養上の指導を行った場合に算定。

4)総合医療管理加算(50 点)・在宅総合医療管理加算(50 点)

 新型コロナウイルス感染症患者に対して、当該疾患の担当医から、歯科治療を行うに当たり当該患者の全身状態や服薬状況等の必要な診療情報の提供を受け、必要な管理及び療養上の指導等を行った場合に、1日につき1回算定。 同一保険医療機関の医科の担当医からの診療情報の提供又は文書以外の方法による診療情報の提供を受けた場合においても算定して差し支えないが、算定に当たっては当該情報提供に関する内容を診療録に記載する。

5)歯科訪問診療料

 自宅・宿泊療養を行っている者又は歯科、小児歯科、矯正歯科若しくは歯科口腔外科を標榜する保険医療機関以外の保険医療機関に入院している新型コロナウイルス感染症患者に対して歯科訪問診療を行った場合、診療時間が20 分未満の場合でも、歯科訪問診療1・1100点を算定できる。

 なお、患者又は現にその看護に当たっている者からの訴えにより、速やかに歯科訪問診療を行った場合には、手術後の急変等が予想される場合に限らず、歯科訪問診療料に緊急歯科訪問診療加算を加算できる。

〇詳細はこちらをクリック:コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて〇

〇参考:「感染防止対策の継続支援」の周知について〇

もうすぐ1000筆に! 金パラ原価割れを招く制度の改善を求める署名にご協力を

 (写真:わずか1週間で、753筆が集まった)

 金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格の高騰による原価割れに対し、協会は9月17日に、全国保険医団体連合会を通じて、改善を求める署名754筆(全国では3,046筆)を厚生労働省など関係各省に提出しました。ご協力を頂きまして、ありがとうございました。

 市場価格は比較的落ち着いている状況になりつつありますが、厚生労働省はこの問題を認識しつつも、明確な改善策を打ち出していません。改善させるためには、今年秋に行われる中央社会保険医療協議会総会での第2ラウンドで適切な対応策を示すように、要求を更に行うことが必要です。

 そのため協会では、9月28日(火)より署名活動を再開することとしました。まだ、署名をされていない方は、下記リンクよりご協力をお願いいたします。

〇署名にご協力を頂ける方は、こちらをクリックしてください〇

★10月8日(金):追加で205筆の署名がありました。合計959筆で、もうすぐ合計1000筆です。★

*対象:会員・非会員を問わず、歯科医師および勤務するスタッフの方であれば参加できます。

*期間:10月29日(金)まで

<署名と共に頂いた主なご意見>

・やると損する診療を押し付ける国、保険の歯科界破綻を狙っているのだろうか?

・逆ザヤだけは解消していただきたいです

・理解できない

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)9月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞 2021年(令和3年)9月1日 第0618号 

1面】

1.金パラ原価割れの解消必要 継続管理のさらなる評価を求める/厚労省要請

2.次期改定「基本方針」の議論開始/社保審医療部会

3.コロナ禍にあっても頼りになる協会を目指して

4.歯科会員アンケート結果

5.ニュースビュー

6.「探針」

2面】

7.改定に向け歯科の議論が始まる 2022年度診療報酬改定/中医協総会

8.金パラ原価割れ 要請署名にご協力を

9.9月から磁性アタッチメントを用いた義歯が保険収載

10.社会保障費抑制方針は「骨太2018」を踏襲 2022年度予算概算要求基準が閣議決定/社保審

11.学校保健統計調査 12歳児むし歯本数0.68本に

3面】

12.新型コロナウイルス感染症 受診抑制で症状悪化が顕著/歯科会員アンケート

13.連載 歯科医療情報観測「歯科情報の利活用および標準化とは何か⑤完」

14.歯科情報をお知らせします/facebook

4面】

15.休憩時間の意義と付与そして留意点/経営・税務相談Q&A No.385

16.導入には慎重な検討を 10月からオンライン資格確認

17.徹底した新型コロナ感染対策で安心・安全に開催 TBI&PMTC・デブライドメントで講習/第1回スタッフ講習会

18.無料相談

5面】

19.研究会・行事案内、電子書籍デンタルブック

67面】

20.インタビュー 小説家 医師 南杏子さん 「患者さんの残された力で最期まで生きることを支える~終末期医療を通じ 改めて命とその尊厳を問う」

8面】

21.会員の声を直接届ける/教えて!会長!!Vol.50

22.支援補助金の迅速な交付を 厚労省に要望書を提出

23.理事会だより

24.協会活動日誌

25.秋の共済キャンペーンが始まりました!/共済制度

9面】

26.症例研究/CAD/CAM冠について(歯科用金属アレルギーのない患者の場合)

10面】

27.連載 私の目に映る歯科医療界⑥  歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在

28.コロナ禍の経営めぐり体験談交え懇談/会員WEB懇談会

11面】

29.福岡県歯科保険医協会 市民公開講演(WEB)のご案内 /武州(九州大学歯学部教授)

30.東京保険医協会 コロナウイルスとイベルメクチン/花木秀明(北里大学教授)

31.歯科医療費が高いほど健康寿命を延ばす 京都大学発表

32.開業医の実態・意識基礎調査のご案内

33.保険でより良い歯科医療を/秋の署名活動

34.人類と地球の未来のために/原水禁2021世界大会

35.サンリオピューロランド/会員優待

 【12面】

36.神田川界隈科学的介護システムの危険性

37.美術文化 亡き父が愛用していた大島紬に新たな命吹き込む

38.通信員便りNo.113

39.未入会の先生をご紹介ください/未入会キャンペーン

 

【お知らせ】募集期間延長!東京都による「在宅歯科医療設備整備事業」について

東京都が行っている「在宅歯科医療設備整備事業」の募集期間が延長されました。

この事業は、主に高齢期・寝たきり者等に対する在宅歯科医療の推進に資するため、在宅歯科医療を実施する医療機関に対し、在宅歯科医療機器等の設備を整備することにより、安全で安心な質の高い歯科医療提供体制の充実を図ることを目的としています。

↓↓↓詳細をご覧になりたい方は、以下のURLをご確認ください。↓↓↓

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/jigyo/h_gaiyou/zaitakusikairyousetubiseibi.html

 

第3回メディア懇談会を開催 ワクチン接種研修や政府補助金などを巡り議論

第3回メディア懇談会を開催/ワクチン接種研修や政府補助金などを巡り議論

協会は9月10日、第3回メディア懇談会を開催した。今回もコロナ禍に配慮し、WEB開催とした。加藤開副会長が説明にあたり、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務めた。

今回の議題は、①「新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射実技研修報告」、②「東京歯科保険医協会 歯科会員アンケート」、③「次期改定に向けて、金パラ『逆ザヤ』の抜本的な解消を求める署名」、④「診療報酬に関する厚労省要請(7月28日)」、⑤「新型コロナウイルス感染防止に関する補助金 厚労大臣要請(8月4日)」、⑥「2022年度東京都予算に関する東京都福祉健康局との意見交換および都議会各党とのヒアリング」―などとした。

①については、参加者から「研修では具体的に何を実施したのか」や「ワクチンの副反応には打ち方や接種箇所に問題があるのか」などの質問が矢継ぎ早に飛んだ。これに対し、研修の様子とともに、注射角度や部位を誤ると副反応に繋がることを解説。「正しく三角筋に打つことで、偶発的な事故を防ぐことができる」と説明した。

また、②および⑤では、会員アンケートの回答をもとに、ひっ迫する歯科診療所の経営状況を報告。感染防止対策の経費や受診控えにより経営が圧迫される上、第3次補正予算案では、厚労省が一括窓口となったため、手続きが混乱している現状を指摘した。参加者からも疑問の声が上がり、議論が交わされた。

 

写真左は加藤開副会長、右は早坂美都理事

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か⑤/完

 前回までは、各診療所、病院における口腔内データをCSV形式で入力し、HL7形式に変換して蓄積させていくことを述べた。
 学校健診のデータ収集については、児童、生徒の移動といった特有の事情もあり、うまくいかなかった点もあった。また、手書きであった健診も、電子ペンを導入して健診票を電子化することが始まっている。これにより、紙に書かれている情報のばらつき、表記の揺れが少なくなり、データとしての制度が高まる。
 歯科診療記録、健診データを検索閲覧できる仮想環境は、クラウド上に既に作られているので、将来的に各地で展開することが可能な段階になってきている。蓄積されたデータを利活用するためには、データの検索方法、アクセスの権限や管理をどのようにするかが大きな課題となってくる。
 身元確認を主な目的として始まったこの流れであるが、データが集積された暁には、悉皆的口腔情報がリアルタイムで参照可能となり、集計作業のオートメーション化につながり、常に最新の情報にアップデートされていくことになる。この段階になると歯科診療情報データを、治療応報、材料ごとの臨床効果の測定、既存の医療ビックデータとの突合により、医科情報などと歯科情報を組み合わせた分析などへの利活用が可能となる。
 また、HL7FHIRへ応用することにより、医療界だけではなく他職種でもデータを使うことが可能になってくる。つまり、上記図のような流れが現実的になってくるだろう。
 情報の利活用は、良い面もあれば、解決しなければならない側面もある。企業などが利益のために情報を活用することは、これまでも度々起きてきた。機微な個人情報が、本人の知らない間に活用されることは、慎重に検討すべき課題である。これらの面を後回しにしたり、見ぬふりをするようなことがあってはならないと考える。利活用に関しては、良い面とともにこれらの課題に真摯に向き合いながら進めることが大事であろう。

 初回より、これまでの記事のまとめであるが、①令和3年3月29日、厚労省による「歯科情報標準化」決定。ここに至るまでの考え方、昔と今の歯科治療について、②東日本大震災をきっかけにして、身元確認には歯科が大切なことが認識された。東北大学によりプログラムが提供されたが、個々のデータに互換性がなく、苦労された話、③身元確認だけではない情報集計により、乳幼児健診から成人健診、介護までデータを蓄積することが目標である。しかし学校健診では、小学校から中学校まで6年間同じフォーマットであるが、途中で転校などがあり、途絶えてしまってうまくいかない、④標準化する際に、大切なことは個々人の最終的な(最新の)口腔状態を一元化したコードで表記できれば便利。標準化コードを用いてCSV形式で個々のクリニックがデータをつくり、それをHL7形式に変換する、これによって医科との連携ができるようになる、⑤最終的には、個人データをHL7FEIR形式にしてクラウドに保存すると、医療機関だけではなく、他職種も使える。しかし、それには法改正も必要なので、今後を注視していく必要がある。

 現在、厚労省で行われている「歯科情報標準化」についての背景と経緯について、5回にわたって述べてまいりました。今のところ、標準コードができた段階となっており、まだ実用化には時間がかかると思われます。今後、コンピューターの仕様書に「口腔診査情報標準コードに準拠したデータの入出力ができること」この文言が必要になってくるかも知れません。

 最後までお読みくださり、ありがとうございました。(了)

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年9月号3面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑥歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在/歯科報酬改革含め官民共同での対応急務

歯周病治療など放置の歯科ニーズが存在/歯科報酬改革含め官民共同での対応急務

8020運動」の成果もあって、日本の高齢者、8084歳の平均残存歯数は15本強になっている。20本以上の歯が残るスウェーデン級にはまだ届かないものの、格段に改善が見られる。

Ⅰ.歯周病は全年齢で悪化が続く国民病

ただ、もう一つの歯の国民病、歯周病のほうはまだ成果は見えない。厚生労働省の「歯科疾患実態調査」では、歯周病の指標となる4mm以上の歯周ポケットのある人の割合は3539歳でも40%、85歳以上になると実に70%(対象となる歯がない人を除く)に達するなど、年齢が上がるごとにその割合も上昇している。時系列的にも日本人の歯周病の数値は、前回調査の2011年に比べて2016年には、5歳階層ごとのほぼ全年齢層で悪化傾向にある。

口腔内にいる様々な細菌が引き起こす疾患が歯周病だ。これが口内炎症をもたらし、その結果発生する炎症性物質が血管を通じて全身をかけ巡り、実に多様で厄介な疾患の直接・間接の原因になりうることが、近年の医科・歯科双方の研究成果で明らかになりつつある。

前回の連載記事でも触れたが、米国で新薬承認が出て話題のアルツハイマー病などの認知症もそうだし、心臓疾患(狭心症・心筋梗塞など)、糖尿病、脳梗塞、誤嚥性肺炎などにも、歯周病は何らかの形で関与している可能性が指摘されている。その意味でも、歯周病の予防・治癒は、ただ単に歯の健康をもたらすだけでなく、健康全般につながる国民的な重大事だ。

Ⅱ.歯周病など満たされぬ歯科の高齢者需要は膨大

歯科診療にかかる日本の医療費は65歳~69歳、7074歳、75歳以上で増加している(「国民医療費」、総務省統計局「人口推計」参照)。これは、高齢化の進展が続き、この年齢層の人口がまだ増えているためだ。歯科診療所の経営も、この高齢層への依存は大きい。

高齢者の歯科ニーズは大きい。要介護高齢者の約七割が何らかの歯科治療を必要とし、そのうち早急な対応が必要と判断された人の割合も12%あったとする日本老年歯科医学会の調査研究報告がある。義歯治療ニーズが約55%と最も多いが、歯周病治療でも32%が必要とされていた。

問題はこのニーズがどれだけ満たされているかだ。この調査ではこの点が不明だが、これを埋める別のデータがある。要介護高齢者(調査対象は290人、平均年齢86.9±6.6歳)だ。この調査では歯科治療の必要性がある人の割合は64.3%だったが、実際に歯科治療を受けた人は、たった2.4%しかいなかった(2019年の日本歯科医学会の研究)。歯科では高齢者の膨大なアンメットニーズが放置されたままになっている。

厚生労働省の「患者調査」データによれば、歯周病では7074歳で歯科外来受診率はピークを迎えその後は落ちていく。高齢者施設に入るなど自力での通院が難しくなっているのかもしれないが、75歳以上の高齢者の潜在ニーズが落ちているわけではない。

それは同じ「患者調査」で、6574歳と並び、75歳以上の慢性歯周炎の推定患者数が2017年時点で、1996年比で急増していることからも強く推測できる。

Ⅲ.歯科が潜在ニーズに応えきれない原因とは何か

そこで疑問。なぜこれだけの潜在ニーズがあるのにも関わらず、歯科市場の成長は鈍いのか。

答えは単純。ニーズに応え切れていないからだ。その原因の一つは、歯科医師などの側の努力不足がある。通院できなくなった自宅住まい、高齢者施設居住、病院で治療中の高齢者ニーズをすくい取れるような歯科訪問診療のあり方の研究と実践、フィードバック。自治体、医科の病院・診療所、介護施設やそこに従事する多種多様な職種の医療・福祉介護従事者との連携(俗にいう「医科歯科連携」はその一つ)を深めた上で、ニーズを掘り起こすこと。外来に比べ手間や効率が下がることをカバーする工夫などが、まだ足りないと思われる。

従来にない知恵を絞り出せるかが、今民間にも問われているわけだ。個別の歯科医師・経営者や歯科診療所で解決できない部分は、業界全体でカバーする手立てがあるのかを、早急に検討する必要もあるだろう。

もう一つ、歯科の大きな潜在ニーズを阻害するものがある。厚生労働省など政府による歯科分野での顕著な低医療費政策だ。先進国に比べ低く抑えられた保険診療単価は、多数の患者獲得でカバーせざるを得ない形で日本の歯科保健診療・経営をゆがめている。一気に解決することは難しくとも、諸外国との比較も交えた本来あるべき価値ベースの技術料・診療単価のアップに厚労省が頭を切り替えないと、肝心要の歯周病など国民の健康全般の予防・治療にも関わる重大課題の成果が上がらず、台無しになりかねない。中医協などの協議の場でも、歯科は医科とタッグを組んでも論理的に主張していく必要がある。

先の国会で承認された75歳以上の患者負担引き上げは、一定以上の所得者に限定はしたが、今でも満たせぬニーズを高齢者にさらに諦めさせる危険があり、現役世代の将来にも影を落とす。これでどうやって矛盾なく歯周病などでの歯科診療拡大の実を上げうるのか、政策当局だけでなく、国民に対しても問題提起し、徹底的に論戦することが、ここでも必須といえよう。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

2021年(令和3年)91No.61810面掲載

社保審医療部会 次期改定「基本方針」の議論開始

社会保障審議会の第80回医療部会が8月5日、オンライン方式で開催され、7月29日に開催された医療保険部会に引き続き、2022年度診療報酬改定の「基本方針」に関する協議・検討が始まった。
 検討にあたっての柱は、「健康寿命の延伸、人生百年時代に向けた『全世代型社会保障』の実現」「患者・国民に身近な医療の実現」「どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進」「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」としている。
 また、改定の基本的視点は、「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」「医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進」「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」とした。

社会保障費抑制方針は「骨太2018」を踏襲

今回の社保審の検討の中で、特に歯科に関する内容を見ると、感染症対策にも関連する口腔健康管理の充実、通院困難者への医療提供の必要性などを踏まえて改定の必要性が指摘されている。さらに、新型コロナウイルス感染症への諸対策を念頭に置いた議論が必要であることなども指摘されている。
 そのほか、「改正医療法等の施行に向けた検討状況について」「データヘルス改革に関する工程表及び今後の検討について」「専門医に関する広告について(医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会における検討状況)」「『経済財政運営と改革の基本方針2021』、『成長戦略(2021年)』および『規制改革実施計画』の概要について」の報告があった。

 今後の動向には十分な注視が必要
 既に、政府の2022年度予算概算要求基準については、去る7月7日に「令和4年度予算概算要求に当たっての基本的な方針」、いわゆる概算要求基準を閣議決定しており、各省庁等では、本年8月末が財務省への提出期限となっている2022年度予算概算要求案の編成作業に入っている。社会保障関連経費については、「骨太方針2018」の中で掲げられた社会保障費抑制方針の路線をそのまま踏襲している。

間隆一郎氏が厚生労働省の「口腔ケア」担当審議官に

厚生労働省が9月7日付で行った幹部の人事異動内示の中で、口腔ケア担当の審議官として間隆一郎氏が就任したことが注目されている。間氏は、正式には「大臣官房審議官 (口腔ケア、医療介護連携、データヘルス改革担当)(医政局、老健局併任)」が肩書となっている。歯科医師資格はないものの、今後の活躍が注目されている。

磁性アタッチメントを用いた義歯の請求

2021年9月1日から磁性アタッチメントの保険請求が認められるようになりました。
以下に請求に関する情報を掲載いたします(2022年2月25日更新)。


1.使用できる磁性アタッチメント
「フィジオマグネット」

「マグフィットM」

2.製作時

(1)キーパー付き根面板(支台歯側)
<略称>
「RCK」

<点数>
・形成:KP60点
・印象採得:連合印象64点(*1)
・キーパー付き根面板(1歯につき)(*2)
金パラ、大臼歯→1,186点
金パラ、小臼歯・前歯→1,010点
銀合金、大臼歯→565点
銀合金、小臼歯・前歯→556点
・装着:45点+装着材料料
*1 印象の点数は連合印象を行った場合の点数。
*2 キーパーを根面板に装着する装着材料料(17点)を含む。

<レセプト>
・「歯冠修復及び欠損補綴」欄の「その他」欄に、大臼歯に金パラを用いた場合は「キ大パ」、小臼歯及び前歯に金パラを用いた場合は「キ前小パ」、大臼歯に銀合金を用いた場合は「キ大銀」、小臼歯及び前歯に銀合金を用いた場合は「キ前小銀」と表示し、点数及び回数を記載する。

(2)義歯に装着する磁石構造体
<略称>
「マグ」

<点数>
・磁石構造体の装着(1個につき):1,029点

<レセプト>
・「歯冠修復及び欠損補綴」欄の「その他」欄に、「マグ」と表示し、点数及び回数を記載する。

<ロット番号等の保存>
・使用したキーパーまたは磁石構造体の製品に付属している使用した材料の名称及びロット番号等を記載した文書(シール等)を保存して管理する(診療録に貼付する等)。

(3)除去
・キーパーまたは磁石構造体の除去(1個につき1回):20点
・キーパー付き根面板の除去
歯根の長さの3分の1以上のポストを有する場合:70点
歯根の長さの3分の1未満のポストを有する場合:42点
・同一歯について、キーパー及び根面板の除去を一連に行った場合は、主たるものの除去に対する点数のみを算定する。

(4)キーパー除去後に新しいキーパーを装着する場合
磁気共鳴コンピューター断層撮影等に当たってキーパーを除去した後、再度新しいキーパーを根面板に装着する場合

<点数>
・キーパーの装着:323点(*)+セメント料
*内訳:キーパー233点+装着料45点+内面処理加算2・45点の合計

<レセプト>
・「歯冠修復及び欠損補綴」欄の「その他」欄に、「キーパー」と表示し、点数及び回数を記載する。その他の項目については、所定の欄に点数および回数を記載する。

(5)その他
・実施においては、「磁性アタッチメントを支台装置とする有床義歯の診療に対する基本的な考え方」(令和3 年8 月 日本歯科医学会)を参考にする。
・軟質材料を用いて床裏装を行った義歯は対象外。

歯科医師による新型コロナワクチンが72万回を超える/日本歯科医師会が公表

歯科医師による新型コロナワクチンが72万回を超える/日本歯科医師会が公表

 日本歯科医師会は831日、本年5月から7月末までに実施した歯科医師による新型コロナウイルス感染症のワクチン接種状況を公表した。

それによると57月末までに34都道府県、151会場で、延べ12,727人の歯科医師が、累計721,471人の接種を行ったことが明らかになっている。また、8月に入っても、引き続き全国の接種会場で歯科医師によるワクチン接種が行われているため、「接種回数はすでに100万回を超えている」と見込んでおり、集計が終わり次第報告する予定。

本年426日の厚労省通知「新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種のための筋肉内注射の歯科医師による実施について」を受け、日本歯科医師会は都道府県の各歯科医師会に協力を要請した。また、日本歯科医師会が518日から開始したワクチン接種に係る教育研修では、現在、1万9,000人を超える歯科医師が受講を修了し、実技研修も受け、要請に備えて待機している状況だ。

都道府県歯科医師会からの報告では、57月にワクチン接種に協力した歯科医師の延べ数は11,342人、全国の歯科大学・歯学部、病院、学会等からの報告では、1,385人で、累計12,727人。接種回答(対象数)は、都道府県歯科医師会からの報告では629,559回、全国の歯科大学・大学歯学部、病院、学会等からの報告では91,912回で、累計721,471回にのぼるという。

 

インタビュー 南杏子 氏(医師 小説家)

2021.09.01(6~7)南杏子さん(医師 小説家 著書「いのちの停車場」)

過去のインタビューはこちら

 

映画「いのちの停車場」 

出演:吉永小百合

松坂桃李  広瀬すず /石田ゆり子 田中泯 西田敏行 他

監督:成島出
脚本:平松恵美子
原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎文庫)

映画公開日:5月21日(金) 絶賛公開中
公式HPhttps://teisha-ba.jp/

©️2021「いのちの停車場」製作委員会


〈ストーリー〉
東京の救命救急センターで働いていた咲和子は、ある事件をきっかけに、故郷の金沢で「まほろば診療所」の在宅医師として再出発をする。様々な事情から在宅医療を選んだ患者と出会い、戸惑いながらも、まほろばのメンバーと共にいのちの一瞬の輝きに寄り添っていく。その時、最愛の父が倒れてしまい…。

 

 

2020年度概算医療費は42.2兆円で対前年度1.4兆円減/減少額・幅とも過去最大に

2020年度概算医療費は42.2兆円で対前年度1.4兆円減/減少額・幅とも過去最大に

―受診延べ日数は「8.5%減」に 

厚生労働省は831日、2020年度の「医療費の動向」を発表した。それによると、2020年度医の概算医療費は総額42.2兆円で、前年度比約1.4兆円減(対前年度比3.2%減)と、減少額・幅ともに過去最大となっていることがわかった。医療機関を受診した延べ患者数に相当する「受診延べ日数」は8.5%減と大幅に減少した。

◆歯科医療費は0.8%減の3.0兆円に

医療費の内訳を診療種類別にみると、入院17.0 兆円(構成割合 40.4%)、入院外 14.2 兆円(同33.7%)、歯科 3.0 兆円(同7.1%)、調剤 7.5 兆円(同17.9%)となっている。

また、医療費を診療種類別に見ると、入院が3.4%減の17.0兆円、入院外が4.4%減の14.2兆円、歯科が0.8%減の3.0兆円、調剤が2.7%減の7.5兆円だった。受診延べ日数の診療種類別伸び率は、入院が5.8%減、入院外が10.1%減、歯科が6.9%減となっている。医療費全体の減少分1.4兆円のうち、約1.24兆円が医科分に当たる。

◆1日当たり医療費は「5.8%増」に

1日当たり医療費の伸び率は5.8%増となった。診療種類別の内訳は、入院が2.6%増、入院外が6.4%増、歯科が6.6%増、調剤が7.3%増となっている。

※厚生労働省発表2020年度「医療費の動向」資料のダウンロードはここをクリック!!!

2022年度厚生労働省「保険局」予算概算要求案の主な内容

2022年度厚生労働省「保険局」予算概算要求案の主な内容

厚生労働省の2022年度予算概算要求案が831日、財務省に提出されたが、そのうち「保険局」の主な要求内容が明らかになった。

保険局予算案の柱は、①地域包括ケアシステムの構築等に向けた安心で質の高い医療・介護サービスの提供、②健康で安全な生活の確保、③地域共生社会の実現に向けた地域づくりと暮らしの安全確保、④東日本大震災や熊本地震をはじめとした災害からの復旧・復興への支援―の4本となっている。

これらのうち、①の安心で質の高い医療等サービスの提供では、各医療保険制度などに関する医療費国庫負担を2022年度予算では101788億円(2021年度予算では、98533億円)、 国民健康保険への財政支援3104億円(同3104億円)、被用者保険への財政支援825億円(820億円)―などを要求している。

2022年度厚労省予算概算要求案がまとまる/歯科保健課は「歯科口腔保健・歯科保健医療提供体制の推進」などを要求

2022年度厚労省予算概算要求案がまとまる/歯科保健課は「歯科口腔保健・歯科保健医療提供体制の推進」などを要求 

厚生労働省は831日、財務省に対し「2022年度予算概算要求案」を提出した。それによると、その概算要求額は、一般会計は前年度当初予算比8,070億円増の339,450億円となり、過去最大の要求案となっている。その中で、年金・医療等に係る経費が317,791億円となっている。

概算要求案の柱は、①新型コロナの経験を踏まえた柔軟で強靱な保健・医療・介護の構築、②ポストコロナに向けた「成長と雇用の好循環」の実現、③⼦どもを産み育てやすい社会の実現、④安心して暮らせる社会の構築―の4本となっている。

◆主な歯科保健関連政策

概算要求案のうち歯科保健行政をつかさどる医政局の要求額は23622400万円(対前年度当初予算比1227500万円増)となっている。

その中で、歯科保健課関連の要求内容を見ると、「歯科口腔保健・歯科保健医療提供体制の推進」に189800万円を要求しているほか、「歯周病予防に関する実証事業」に9600万円を要求している。ともに継続事業だ。

そのうち、歯科口腔保健・歯科保健医療提供体制の推進」は、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」中間評価報告書(平成30年9月)を踏まえ、地域の実情に応じた歯科口腔保健施策をさらに推進するため、自治体における歯科疾患の予防及び歯科口腔保健の推進体制の強化等の取組を支援するとともに、今後の歯科口腔保健施策の検討に必要な歯科保健状況を把握するための調査を実施することとしている。

また、「歯科保健医療ビジョン」や新型コロナウイルス感染症への対応等も踏まえた各地域での施策が実効的に進められるよう、これまで収集・分析をして蓄積してきた好事例を各地域で展開することにより、歯科保健医療提供体制の構築に向けて取り組む。あわせて、歯科専門職間の連携を進め、より質の高い歯科医療を提供する観点から、歯科衛生士・歯科技工士を確保するため、離職防止・復職支援のために必要な経費を支援するというもの。

それら推進のため、8020運動・口腔保健推進事業、歯科疾患実態調査、歯科医療提供体制構築推進事業、OSCEの在り方・評価者養成に係る調査・実証事業、歯科衛生士の人材確保推進事業、歯科技工士の人材確保対策事業、歯科医療関係者感染症予防講習会―2021年度に引き続き継続実施する計画だ。

唾液PCR検査 無症候性の新型コロナウイルス感度60%未満/米国の医学雑誌JAMAにて発表

米国の医学雑誌JAMAの2021年8月13日号にZion Congrave-Wilson氏の‶Change in Saliva RT-PCR Sensitivity Over the Course of SARS-CoV-2 Infection”という論文が発表された。

内容は、唾液を用いたPCR法と鼻咽頭によるPCR法を3〜7日ごとに最大4週間にわたり検査を行い、それぞれの感度の割合を調査したものだ。

結果として、唾液を用いたPCR法は感染初期の数週間に有症状の人の新型コロナウイルスを検出するには感度が高かった。しかし、無症候性の新型コロナウイルスキャリアの感度は、すべての時点で60%未満だったという。

唾液を用いたPCR法は、自費検査を提供する検査機関においても実施されており、陰性の場合は、希望があれば海外渡航用の陰性証明書も発行される。

今後、唾液を用いたPCR法の感度について、さらなる研究結果について注目される。

論文URL:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2783249

歯科会員アンケート集計結果について

協会では新型コロナ感染症拡大による医院経営への影響を把握するため、「歯科会員アンケート」を実施しました。

たくさんの会員の先生方にご協力をいただき、ありがとうございました。

今回の調査では現在の経営状況、今後の経営の見通し、歯科医業経営を改善するために先生ご自身が望む方策などについて調査しています。

実施期間は2021年5月18日~2021年5月31日まで。

調査対象はデンタルブック登録会員とFAX登録のある会員で、FAX送信件数は1536件、メール会員約3200名へはメールニュースでアンケートの案内をしました。

歯科会員アンケートの集計結果については下記リンクよりご確認ください。

 

歯科会員アンケート集計結果

こちらをクリックしてください↑

 

また、11月に全国保険医団体連合会が集計した全国のアンケート結果が出るため、結果がわかり次第、全国の結果もお知らせしていきます。

 

アンケート結果にもある通り、多くの先生方が

「金パラの逆ザヤ解消」

を求めています。

協会では金パラの逆ザヤ解消のために署名を行っていますので、ご協力お願いいたします。

署名用紙が必要な方は、個別にFAXいたしますので「金パラ署名希望」と記載したうえで、①会員の氏名、②医療機関名、③電話番号、④FAX番号を記入の上、FAX03-3209-9918迄お申し込みください。

署名はWEBフォームでも受け付けております。

「金パラ逆ザヤ解消のための署名」

こちらをクリックしてください↑

 

金パラ原価割れ 改善を求める署名にご協力を

 金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格が高騰を続け、保険償還価格を上回る原価割れが続いています。全国保険団体連合会(保団連)の調査によれば、今年4~6月の30g当たりの金パラの購入価格は平均98,481円(税込)で、現時点での30gあたりの保険償還価格80,040円に対してマイナス18,441円の大きな原価割れとなっています。今年10月には随時改定が実施されて価格が引き上げられますが、1g2,951円(30g当たり88,530円)に留まり、実態には見合わない状況です。

 そのため、協会では、保団連とともに、全国の歯科会員約4万2千名に署名への協力を依頼し、厚生労働省へ提出することとしました。署名を頂ける方は、下記リンクよりご協力をお願いいたします。

*9月28日(火)署名を再開しました。まだされていない方は、下記をクリックしてください*

〇署名にご協力を頂ける方は、コチラをクリックしてください〇

 

東京歯科保険医新聞2021年(令和3年)8月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞 2021年(令和3年)8月1日 第617号

1面】

1.懇切・丁寧に手技を実習/新型コロナワクチン接種のための筋肉内注射実技研修

2.1日当たり757.6点/2020年社会医療行為別統計

3.ニュースビュー

4.「探針」

2面】

5.価格改定の仕組みを議論/中医協総会

6.随時改定Ⅰ 金銀パラジウム合金引き上げへ

7.「東京歯科保険医新聞」 をホームページに公開

8.9月分から、枝番の記録もれにご注意ください/健康保険被保険者証

9.未入会の先生をご紹介ください

3面】

10.歯科情報の利活用および標準化とは何か④/連載 歯科医療情報観察

11.従業員を募集・雇用する際の注意点について/経営・税務相談 Q&A(No.384)

12.法律相談、経営&税務相談

4面】

13.暑中御見舞い名刺広告

5面】

14.研究会・行事案内

67面】

15.インタビュー 国際自然・森林医学会会長 医師 今井通子さん 「洞察力、観察力から出てきた想像力が大切」

8面】

16.期中収載される磁性アタッチメント/教えて!会長!!No.49

17.周術期 口腔機能管理が重要/第1回学術研究会

18.共済部だより

19.歯科医師6名に行政処分を答申/医道審

20.秋の共済募集キャンペーン予約受付中

9面】

21.症例研究/歯周治療用装置

10面】

22.私の目に映る歯科医療界⑤ アルツハイマー病新薬で巨額出費必至/東洋経済新報社 大西富士男氏

23.理事会だより

11面】

24.75歳以上2割化法 廃止に向けて/第2回保団連代議員会

25.全会一致 子どもへの歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願

26.衆議院選挙に向けて 医療保険制度改革を振り返る

27.第1回か強診等の講習会開催

28.安全な筋肉内注射について解説/医科歯科連携研究会2021

29.協会活動日誌2021年7月

 【12面】

30.神田川界隈「神田川その流れに」川戸二三江副会長

31.政策委員長談話や金パラ問題に注目/第2回メディア懇談会を開催

32.12歳以上小児ワクチン接種/日本小児科学会

33.通信員便りNo.112

【受付終了】9/30(木):第2回学術研究会

<テーマ>
象牙質レジンコーティングのツボ

<概要>
象牙質レジンコーティングは、2019年に新規保険収載されたため、比較的新しい歯科技術であるという認識をお持ちの方も多いかもしれません。しかし、30年程前から存在する技法であり、高性能を有しているレジン接着システムの応用によって、露出した象牙質すべてを保護できるという特色がございます。今回は、明日からのチェアサイドで有益になるであろう「ツボ」を、今までの研究成果を踏まえて御紹介させていただきます。

<日時>
9月30日(木)18時30分~20時30分(予定)

<講師>
柵木 寿男 氏(日本歯科大学生命歯学部接着歯科学講座 准教授)

<会場>
Zoomウェビナーを用いたライブ配信
または
ワイム貸会議室高田馬場4F(https://waim-group.co.jp/space/takadanobaba/access.html)

<定員>
Zoomウェビナー→500名
ワイム貸会議室高田馬場→52名

<参加費>
無料

<対象者>
会員※未入会の場合は、ご入会が必須です。また、他協会の先生は、所属協会にご連絡ください。

<要予約>

ご予約はこちら(Googleフォーム)から↓↓↓

https://forms.gle/5RNGzHzquQs8YcXe7

【歯科医療情報観測】歯科情報の利活用および標準化とは何か④

 標準化対象を整理するには、キーワードが必要になる。それが「口腔内スナップショット」であることまでは、前号で述べた。初期は、口腔状態を災害時想定してマークシートを用いて入力し、電子データにすることより始まった。これは、東北大学で開発された「Dental Finder」を基礎にしている。それと同時に、診療所から共通形式でデータが出せるようにコード設定が開始された。各診療所において共通形式(CSV形式)で検索できるようにしていく。さらにCSV形式をHL7形式に変換して、地域医療ネットワークを設けることができるよう、プログラムも作成された。
 次に、乳幼児・学校健診、節目・高齢者健診といった診療所以外のデータを抜き出し、地域医療ネットワークで使用できないかということが提案された。
 これら歯科情報の標準化については、2013年度から実証実験が行われており、課題解決に向けた取り組みが進められている。
 具体的なモデル事業が、行われることとなった。既に実証実験が済んだ取り組みについて簡単に説明をしたい。

——医療機関でのデータについて
 医療機関内のレセコンのデータを、医療機関ごとに「口腔診査情報標準コード仕様」に基づきCSVデータとして出力する。口腔内の状態を変換できた・できない、の確認を行い具体的な改善を行う。医療機関では倫理審査委員会での申請や患者への説明、オプトアウトについて患者確認などを行う。その後、データを地域医療ネットワーク等へ移動する。可能であればデータ出力した患者さんの口腔状態の画面をコピー出力してもらう。仮想環境である地域医療ネットワーク等にデータをアップすることによって、身元確認等への活用が可能となる。
 既に実施された実証実験では、最終的にモデル大学内に構築されたネットワークの仮想環境内へのデータアップまでは技術的に可能であることが確認されている。

——乳幼児・学校、節目 健診のデータについて
 節目健診の結果もCSV形式で地域医療ネットワークにアップロードした。モデル事業では、紙で集計されたものをOCR処理をし、エクセルファイルで出力した。このエクセルファイルをデータ分析機関にて集計、分析後さらにCSVに変換して出力したものを、地域医療ネットワークにアップロードした。
※OCR処理(光学的文字認識)とは、手書きや印刷された文字を、イメージスキャナやデジタルカメラによって読み取り、コンピュータが利用できるデジタル文字コードに変換すること。

 ここで、うまくデータ化できなかった事例として、学校健診があげられる。健診記号を集計し、結果をテキストファイルにしてCSV形式にすれば良いのだが、学校健診ならではの欠点があった。モデル事業を行った学校健診の用紙は、小中学校九年分の口腔状態を記載するフォーマットになっていた。
 途中、転校や学区外の中学に進学したときなど、児童生徒たちをその都度追えないということが、現地の教諭から声があがった。各地に移動してしまった児童生徒たちのデータを、誰がクラウドにあげることを承諾するのか、という問題が生じるのである。
 この部分は、これからの課題として残ってしまっている。
 次回は、今後の事業計画について述べていきたい。

協会理事/広報・ホームページ部長 早坂 美都

(東京歯科保険医新聞2021年8月号3面掲載)

【後援】福岡県歯科保険医協会 市民公開講演会(WEB)のご案内

「みんなで考えて「歯」と「口」 から全身の健康を守りましょう」

昨年、 歯周病菌が体内に侵入すると 認知症の7割を占めるアルツハイマー型認知症 の
原因物質「アミロイドベータ」の脳への蓄積量が通常の10倍となる などのメカニズム を
九州 大 学 などの研究チームが解明し、日本社会 、そして世界中 に 衝撃を与え ました。
研究チーム の リーダーで 、 テレビ番組 などで 研究成果 を わかりやすく 解説されてきた
武洲先生 に、 「歯周病と認知症」、その最新の研究動向 を お話し いただきます。
また、 九大歯学部の皆さんには 、 新型コロナウイルスによる感染と重症化を予防 する
ために「口から免疫 機能 を維持 ・ 向上させる」提案 をしていただきます。
私たち歯科医師にとっても、患者・家族の皆さん、医療・介護の多職種の皆さんと 協力し 、
「歯」「口」 と 全身の健康 との関わりをますます学ぶことが急務となって います。
「歯」と「口」から全身の健康を守る ために 、みんなで 意見交換しましょう。

日時

 9月12日(日)15時~17時

 ウェブ会場

 「ZOOM」ウェビナー

  ※参加方法はお申込み後、開催までにメールでご案内いたします。

 講師

 武洲先生

 (九州大学歯学研究院准教授)

 井上光貴さん 、 今村早希さん 、 小林瑶子さん 、 平原瞭さん

 (九州大学歯学部4年生、5年生)

 久保哲郎さん

 (福岡県歯科保険医協会副会長・地域医療対策部長、

   NPO法人老いを支える北九州家族の会副理事長)

予約

要予約。下記の FAX 番号 または 電話 番号 ・メール アドレス よりお申込ください 。

福岡県歯科保険医協会

FAX :092-473-7182 メール: shichiri@doc-net.or.jp

 

【ウェブ参加のみに変更】案内状

 

私の目に映る歯科医療界⑤アルツハイマー病新薬で巨額出費必至/診療報酬への影響大、歯科は今から備えよ

アルツハイマー病新薬で巨額出費必至/診療報酬への影響大、歯科は今から備えよ

日本のエーザイと米国のバイオジェンが共同開発したアルツハイマー病(Alzheimer’s diseaseAD)治療用の新薬「アデュヘルム」が、6月初旬に米国で承認された。「アリセプト」など既存のAD薬と違い、病気の原因といわれる脳内のたんぱく質を除去し、認知力などの低下を遅らせる効果を謳うAD薬として、世界で初めて臨床現場で使われることになる。

患者や家族には一筋の光明であり、礼賛報道が相次いでいるが、注意を払う必要がある。最終試験の有効性が不確かな中での米国当局の強行承認だったこと、安全性や今後のAD薬開発への悪影響など、懸念も多い。

ここでは、歯科医療界に影響があるポイントに絞って述べたい。

Ⅰ.アルツハイマー新薬は日本でも巨額出費懸念が…

アデュヘルムの米国での薬価は、患者1人、年間投与分で5.6万ドル。日本円にして610万円と、かなりの高額だ。

◆AD薬では支払い抑制に限界が

ただ、日本でも一時話題になった希少疾患の脊髄性筋萎縮症薬「ゾルゲンスマ」の米国薬価は2億円超だ。薬価で上を行く薬はほかにもあるが、この薬の問題は、患者人口が巨大なことだ。米国ではAD〝予備軍〟の軽度認知障害(MCI)を含めれば600万人のAD患者がいて、日本でも500万人を抱えると推定される。アデュヘルムが想定するMCIと軽度AD患者に絞っても100万人は下らない。

このため膨大な薬剤料の負担が発生する。米国では百万人の患者がこの薬を使うと、その支出額が560億ドル(約6.1兆円)に達する。AD患者の大半は六十五歳以上の高齢者だから、米国の公的医療保険(メディケア)に大半の財政のしわ寄せがいく。これをどうするか、と今米国では官民で議論が沸騰している。

◆アデュヘルム承認の可否は年内に判明か

昨年12月に、アデュヘルムの承認申請が提出されている日本も対岸の火事ではない。

承認するかどうかの審議は、早ければ年内にも結論がまとまるとみられる。米国と違う判断、すなわち承認しないとなれば日本の当局にとっての〝英断〟となるが、時に、米国と違う判断をする欧州と違って、日本の場合は過去を見る限りその可能性は極めて小さいだろう。

米国で承認された薬が日本では保険で使えないとなれば、同じ薬に対して日米当局の評価がまったく異なるという問題に発展する。米国同様にADに苦しむ多くの日本の患者、およびその家族に対し、新薬を望む声を無視する結果にもつながる。

◆米国に倣い日本もAD薬を承認か

結局は、米国に倣い日本もこのAD薬を承認する可能性が高いというのが大方の専門家の見方だ。

となると、日本の次の問題は高薬価に伴う財政負担をいかに軽減するかになる。

日本の薬価算定は複雑だが、単純化した机上計算として、先述したゾルゲンスマの例をもとに、国がアデュヘルムの薬価を米国に比べ3割引した場合にはその薬価は427万円になる。対象患者は日本でも100万人程度はいるから総支払額はこの1剤だけで4.2兆円となる。

◆過去にはオプジーボの先例が

実際には保険適用の対象となる患者を絞ったり、がん免疫薬「オプジーボ」であった過去の例のように、価格を何度も引き下げたりの操作を国がする可能性も大きいだろうから、ここまでの巨額にはいかないにしても、国が薬価を決める日本でも、ゾルゲンスマのような希少疾患薬と違って、巨大な患者人口を持つAD薬では、支払い抑制にも限界があるのが現実だ。

Ⅱ.歯科診療報酬にも悪影響予防治療シフト等への準備を

削減続きの薬価とは違って、医科と歯科の医療費はしばらくわずかな引き上げが続いてきたが、ここに影響が出かねない。薬価改定などで浮かせた薬価削減分が消えてしまえば、財務省などの矛先が医科、歯科の診療報酬にも向かわないとの保証はないだろう。

2024年度改定ではアデュヘルムの影響が

これから審議が本格化する2022年度診療報酬改定論議はセーフだろうが、その次の2024年度診療報酬改定の審議では、このアデュヘルム影響がもろにかぶる可能性を想定しておく必要はあるだろう。

歯科医療界としてのこれに対する備えは、相当な難問であるのは確かだ。即効性のある妙案が直ちに浮かぶはずもない。

ただ、少なくともいえることは、歯科診療が患者や利用者にもたらすベネフィットを徹底的に追い求め、その価値に基づく正当な診療報酬を要求する。このようなスタンスで理論武装を磨いていくのは、これまで以上に必須になるはずだ。

◆戦略的に有効な諸対策の検討を

中期的にはう蝕中心の「かかってからの治療」から高齢化・長寿化とともに膨大なアンメットニーズを抱える歯周病など予防分野、高齢介護施設への歯科訪問診療などに歯科医業界がシフトしていくことが、戦略的に有効なのではないか。診療報酬の在り方について、厚生労働省にも発想を変えてもらう必要もあろう。

歯周病はADとも密接な関係性があることを示唆する研究が進展する。こうした研究がもたらすエビデンスを中長期で構築し、理論武装していく姿勢・戦略が望まれるのではないだろうか。

筆者:東洋経済新報社 編集局報道部記者 大西 富士男

「東京歯科保険医新聞」202181日号10面掲載

社保審医療部会が次期改定の「基本方針」の議論開始

社保審医療部会が次期改定の「基本方針」の議論開始/概算要求基準は7月7日に閣議決定済み

8月5日、社会保障審議会の第80回医療部会がオンライン方式で開催され、729日に開催された医療保険部会に引き続き、2022年度診療報酬改定の「基本方針」に関する協議・検討が始まった。

今回の検討の中で、特に歯科に関する内容を見ると、感染症対策にも関連する口腔健康管理の充実、通院困難者への医療提供の必要性などを踏まえて改訂の必要性が指摘されている。そのほか、新型コロナウイルス感染症への諸対策を念頭に置いた議論が必要であることなども指摘されている。

◆概算要求基準は77日に閣議決定済み

既に、政府の2022年度予算概算要求基準については、去る77日に「令和4年度予算概算要求に当たっての基本的な方針」、いわゆる概算要求基準を閣議決定しており、各省庁等では、今月末が財務省への提出期限となっている2022年度予算概算要求案の編成作業に入っている。社会保障関連経費については、「骨太方針2018」の中で掲げられた社会保障費抑制方針の路線をそのまま踏襲している。

東京オリンピック110メートル障害ハードルの金井選手:アスリートから「歯科医師」目指す

東京オリンピック110メートル障害ハードルの金井選手:アスリートから「歯科医師」目指す

東京オリンピックの男子110メートル障害ハードルに出場した金井大旺選手(25)は、一昨日の84日、準決勝に進出したが、結果は転倒に終わった。

金井選手は、本年1月14日時点では、NHKのテレビニュースの取材に対し、オリンピック終了後には、歯科医師を目指すことを表明しており、今後が注目されている。金井選手の実家は北海道函館市内の「金井歯科医院」で、現在は父の金井敏行氏が診療を行い、地域の歯科医療を担っている。