年別アーカイブ: 2022年

金・パラジウム等の価格が高騰

国内の金の価格が、過去最高値を更新している。田中貴金属工業は2月28日、金小売価格の指標となる1グラム当たりの販売価格(税込み)を前週末より20円値上げして7847円と決めた。

またパラジウムも高騰している。パラジウムは産出量の4割をロシアが占めており、1月には価格が2週間で2割超上がっている。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に絡み、各国がロシアに対し措置を講じることと、それに対抗してロシアが核戦力をちらつかせていることが不安視され、金やパラジウムをはじめ、様々なコモディテー価格が高騰している。

医学部合格率、初めて男女逆転 国公私立大の半数超で

 文部科学省は、2021年度の大学医学部(医学科)入学者選抜における合格率を発表。女性が13.60%、男性が13.51%で、データが残る13年度以降で初めて女性の合格率が男性を上回った。調査対象は、医学部医学科を有する全国81校の国公私立大学。合格率が女性の方が高かったのは、北海道大学、名古屋大学、広島大学、長崎大学など42校で対象校の半数を超えた。

 18年に女性の受験生に対する入試差別が発覚した後、文科省は2012月に医学部の男女別合格率を毎年調査することを決定。19年度は男性12.11%、女性11.37%、20年度は男性12.56%、女性11.42%と推移していた。

東日本大震災から11年~被災者支援の現在地~

 間もなく迎える3月11日、東日本大震災からは11年の時が経とうとしている。依然として復興への道のりは長く、全国の避難者数は3・9万人(復興庁発表、1月28日現在)にのぼり、福島第一原子力発電所の廃炉作業、避難指示が解除された地域への住民の回帰など、課題は山積している。

 昨年3月末、住民税課税世帯に対する医療費免除制度の期限を迎えた。非課税世帯についても同年12月までで制度が終了した。延長されていた国民健康保険や後期高齢者医療保険、協会けんぽ他の加入者のうち、原発事故により現に帰還困難区域に指定されている人などを対象とする免除措置についても、今年2月28日までとしている。

 被災者の生活再建にあたり、経済的負担を軽減させること、十分な医療を受けられる環境を整えることは、決して疎かであってはならない。

談話 大多数の保険医はがっかりしている

中央社会保険医療協議会(中医協)総会は2月9日、2022年度診療報酬改定案について、厚生労働副大臣に答申を行った。改定案の中身を見て多くの保険医は、肩を落とした。

コロナ禍でリスクの高い場所だと敬遠され、赤字収支となった企業はたくさんあり歯科医院も例外ではない。多くの歯科医療機関の収入の中心は保険診療である。保険診療は算定ルールが定められているため、個人の努力では打開策や診療体制の充実も図れない。2年に1度の診療報酬改定だけが是正のチャンスであり、コロナの影響をはねのけるような改定を期待していた。

先般、厚労省に寄せられたパブリックコメント数では、歯科医師からの意見が49.4%と半数を占めた。これをみても保険医の診療報酬に対する不満の大きさが現れている。しかし、改定率がプラス0.29%に留まり前回(プラス0.59%)の約半分となっていることも影響しているが、改定内容に対する工夫が乏しすぎる。

新興感染症に対する対策の研修を行った歯科医療機関に対して初・再診料にプラス3点となったが、歯周基本治療処置10点が廃止になったためトータルでは実質減点となる。 また、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所におけるSPT算定時の加算がプラス120点しかなく大幅なダウンとなる。これでは、施設基準を辞退する歯科医療機関が増える恐れもある。 口腔機能管理の対象範囲の拡大を行ったが、一番必要だと思われる対象年齢での算定率をみても、増える気配は全く感じられない。外来でのフレイル予防が進まなければ、施設や在宅での口腔機能低下は悪化の一途を辿るであろう。口腔機能管理料は、対象年齢の範囲を広げることで推進を図るのではなく、管理料を算定しやすくするべきではないだろうか。

そして、総合医療管理加算に至っては、HIV感染症の患者さんだけを対象患者に追加したが、もっと総合的医療管理が必要な患者はたくさんいる。総合医療管理加算の対象疾患を患者・国民のため、HIV感染症だけでなく広く認めるべきで、この項目が医科歯科連携の突破口のはずなのに周術期の口腔管理とともに算定率は伸び悩むであろう。 ただ、財源が少ない中、根管治療等の基礎的技術料に僅かながら加点して戴いたことは評価したい。

2025年には4人に1人が75歳以上となり、在宅医療のニーズが大幅に上昇するだろうと言われ、その備えとなる地域包括ケアの確立は急務だ。しかし、在宅訪問診療や医科歯科連携の推進も今次改定の内容では期待できない。中医協のメンバーや厚労省の担当者は、もっと現場に降りてきて保険医の苦悩を見てほしい。歯科診療現場の実態、臨床の場に立つ保険医の声に合致した診療報酬にするため、机上の空論ではなく実態に即したより一層の創意工夫を熱望する。

2022年225

東京歯科保険医協会

政策委員長 松島良次

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)2月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)2月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)2月1日 第623号

1面】

    1.歯初診・歯援診・か強診の施設基準 見直し/1.26中医協

    2.中医協公聴会 感染防止対策 麻酔の評価を/1.21中医協

    3.高点数による「個別指導」0件/関東信越厚生局

    4.事業復活支援金案内

    5.ニュースビュー

    6.「探針」

2面】

    7.中医協 P基処廃止 歯初診の要件変更等へ/1.14中医協

    8.厚労省 パブリックコメントを募集/次期診療報酬改定に関する意見

    9.中小法人・個人事業者のための事業復活支援金の概要/中小企業庁・経産省

3面】

    10.中医協 CAD/CAMインレー 口腔バイオフィルム検査 保険収載/1.19中医協

    11.2021年分確定申告のポイント/税理士 櫻木敦子

4面】

    12.経営&税務相談Q&A No.390

    13.教えて!会長!!Vol.55

    14.法律相談

5面】

    15.研究会・行事案内

    16.電子書籍デンタルブック

6・7面】

    17.中央社会保険医療協議会 個別改定項目/2022年診療報酬改定

【8面】

    18.インタビュー 日本歯科医療管理学会・尾﨑哲則さん「『医療安全』と『地域連携』の構築が活動の柱」

9面】

    19.症例研究/睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置

10面】

    20.連載/私の目に映る歯科医療界⑪(東洋経済新報社・大西富士男)24年度が正念場の診療報酬改定

    21.理事会だより

    22.協会活動日誌2022年1月

11面】

    23.75歳以上の窓口負担2割化へ/医療制度改革関連法

    24.次期診療報酬改定に向けて理事部員政策学習会を開催

    25.オミクロン株急拡大/東京都「まん延防止」適用

    26.「歯科衛生士の雇用」歯科衛生学科講師が解説/経営管理研究会を開催

    27.共済部だより

    28.ネガティブな口コミへの対応策No.2/クレセル株式会社

12面】

    29.医療経済実態調査に提言/歯科診療所の感染対策を訴え/第5回メディア懇談会

    30.神田川界隈/何かと難しい今、患者トラブルと主治医の使命(川本弘/足立区)

    31.通信員便り No.118

    32.「保険医の経営と税務」発刊

    33.会員優待サービス

【教えて!会長!! Vol.55】パブリックコメントの報告

― 1月14日からパブリックコメントの募集があったそうですが。

坪田有史会長:2年ごとの診療報酬改定が実施される年に、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)からパブリックコメントの募集(意見公募)が行われます。今回も1月14日付で中医協からの募集要項が厚生労働省のホームページに掲載され、電子メールで1月14日〜21日と約1週間の期間に提出するように示されました。これは中医協で2022年度診療報酬改定に向けて議論されてきた改定の基本方針や内容について、医療関係者や患者をはじめとしたすべての国民が、意見できる機会を与えられているのです。国民である我々が正式なルートで、中医協の議論の内容について、自分の意見を中医協や行政側に直接言えるのは、パブリックコメントの提出が唯一の機会といっていいでしょう。しかし、健全な民主主義を掲げる我が国にとっては当然のこととはいえ、周知方法、募集期間・方式など、すべての国民に低いハードルで広く意見を募集しているのかは、少々疑問があります。
協会は、1月14日の募集要項の発表を待って、同日の夜8時過ぎにデンタルブック・メールニュースで会員の先生方にパブリックコメントについての詳細な情報を配信し、意見の提出をお願いしました。メールには、「現場からの声をパブリックコメントとして提出してください。改定への意見をあげることができる最後のチャンスです。1件でも多く意見を出せば、反映される可能性は大いにあります。ぜひパブリックコメントをお出しください」と記載いたしました。
協会では、全国組織の保団連とともに会員の声を国会議員や行政側に伝えるため、署名活動を行っています。活動をご理解のうえ、毎回たくさんのご協力をいただき心から感謝しています。国民や歯科業界にとって、歯科医療の様々な問題に改善要求を行う署名活動も重要なツールです。一方、診療報酬改定時のパブリックコメント提出も非常に重要な位置付けと考えています。すでに提出していただいた会員の先生方に感謝申し上げるとともに、今回は提出できなかった先生方には、2年後の機会にぜひお願いしたいです。

― では会長が提出した内容について教えてください。

坪田:私は、全部で10本のパブリックコメントを提出しました。紙面の都合で、すべては紹介できませんが、参考までに下記にて、いくつか概要をお示しします。

・現在の院内感染防止対策の評価は全く十分ではないため、実際の院内感染防止対策のコストにか
 かる調査を多施設で行った上で、その結果と相当な評価を基本診療料で評価されなければならな
 い。裏付けのない評価には反対する。
・国民の健康ならびに将来の歯科において、歯周病安定期治療および歯周病重症化予防治療は重要
 な項目であるため、歯科保険医療機関が取り組みやすく継続しやすい要件と評価にするととも
 に、同一初診内の1回のみといった算定回数の制限を緩和するべきである。さらに、同項目の重
 要性を広く国民に周知をする必要がある。
・歯周基本治療処置(P基処10点)の廃止により、歯周基本治療処置の所定点数を基本診療料に包
 括するならば、従前の歯周基本治療処置の所定点数に相当する額を基本診療料に加えるべきであ
 る。
・歯科用金銀パラジウム合金の随時改定は、中医協で示された論点に加え、実際には歯科医療機関
 は市場価格で歯科用金銀パラジウム合金を購入している。したがって、素材価格を参考にした随
 時改定を行うことは全く理解できず、市場価格を参考に改定を行うべきである。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年2月号4面掲載)

ネガティブな口コミへの 対応策 No.2

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、
歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
前回に引き続き、ネット上の口コミについて―。

 前回お伝えした通り、ネット上の口コミを削除するためには次のようにいくつかの方法があります。
(1)Googleへ削除依頼を申請し、受理してもらう
    →参照:ネガティブな口コミへの 対応策 No.1
(2)投稿者自身が削除する
(3)法律の専門家からGoogle、もしくは投稿者へ削除要請を行う
 (2)については当然ですが、書き込んだ本人が削除すればその口コミは消えます。しかし、この仕組みを利用して、まず悪評を書き込み、数週間から半年程度の間に「おたくの悪評を削除します」と営業電話やメールを送ってくる悪徳業者が後を絶ちません。一度サービスを利用すると定期的に悪評を書き込み、その都度、料金が請求されることになります。
 実際問題として、口コミを削除するには(1)(2)(3)のどれかしかありません。ネット上には、口コミを削除することを名目に2021年8月の段階で平均価格50万円以上の削除サービスが横行しています。しかし、歯科診療所に降りかかる大きなリスクを隠し、倫理的に問題がある方法で対策を行っている場合がほとんどです。
 口コミを削除するために、まず(1)の削除依頼を行い、削除されない場合(3)の法律の専門サービスの利用という流れが一般的です。それでも削除できない場合は「悪評を逆手にとって、診療所の取り組みをPRする」という手法があるので、次回お話します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年2月号11面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑪ 2024年度が正念場の診療報酬改定/金パラ公的価格改定は抜本改革の旗下すな

2024年度が正念場の診療報酬改定/金パラ公的価格改定は抜本改革の旗下すな

2022年度診療報酬改定は、診療報酬本体がプラス0.43%で決着した。薬価改定等と合わせた合計値はマイナス0.94%となった。

看護師等の処遇改善分0.2%、不妊治療の保険適用0.2%などを除く、いわゆる本体真水で、プラス0.23%を確保できたため、財務省が狙った「真水」のマイナスという最悪の事態は免れた。しかし、その内実は医療機関側には厳しいものだ。

処遇改善分は用途限定だ。不妊治療の保険適応分も、従来の助成事業分が置き換わっただけだ。これらに加え、リフィル処方箋導入等による効率化に伴うマイナス、小児の感染防止対策加算の廃止によるマイナスを除外した部分を「真水」と称しているが、この2つによりすべての医療機関の受け取り分が減ったわけだから、医療機関が純粋に経営改善に使える本体改定は、わずか0.03%(0.43%から処遇改善と不妊治療保険適用分の合計0.4%を差し引いた数値)というのが実態に近い数値である。

Ⅰ.2025年問題直前の圧力増は必至2024年度改定対策は今から開始を

今回の改定は、真水のマイナス改定にはならなったものの、財務省は究極の目標に向け前進した。その一方で、医療機関側は一歩後退したといえる。

今回の結果は、日本医師会の横倉義武前会長時代における本体改定率の平均値0.42%を意識した「岸田文雄首相の高度な政治的落としどころ」という、うがった見方があるが、どうであろうか。

厚生労働省の理論武装力、中川俊男現会長下の日医や厚労族議員の政治力が物を言ったという声は聞かない。推測の域を越えるものではないが、自民党にとっては、今夏に控えている参議院選挙での医療機関側からの協力への期待が、今回の決着の背後にあるというのが、意外に真実なのかもしれない。

自民党が参議院選を乗り切れば、2025年秋の任期満了に伴う衆議院選挙まで選挙なしとなれば、2年後の2024年に予定される次期診療報酬改定がどうなるのか。おり悪く、団塊世代の後期高齢者入り完了が25年に控えており、さらに厳しい環境が待ち構えていることは確実である。

財務省の圧力が増すのも必至。果たして、本体真水を死守できるか。そのための準備を早める必要があることは、言うまでもない。

◆医療機関経営の窮状を国民に伝える活動を

しかし、医療機関経営の厳しさが国民に伝わっているとは言えない。まして、それが国民の生命・健康に直結する良質な医療サービス提供にどう影響するのかについては、肌感覚でさえ理解していないのが実際であろう。

であれば、これを知らしめる有効な活動を展開することが、今まで以上に大事になってくるはずだ。

Ⅱ.事務局案では素材高騰時でも公定価格は僅少な上昇どまりに

中医協で歯科医療界固有の重要懸案事項である歯科材料・金銀パラジウム合金(金パラ)、いわゆる「銀歯」の公定価格改定ルールを巡り、昨年1222日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、事務局(厚労省保険局医療課)から提案があった。

4回の随時改定時について、①公定価格改定をするかどうかの基準となる価格変動幅、②改定の基になる平均素材価格をいつの時点までの数値を使うかの2点に絞り込んで、事務局が実際の公定価格に関する5パターンの試算数値を112日の中医協総会の際、各委員に示し、協議・検討が行われた。

このうち、まず、変動幅⑴では、Ⓐ現状の5%(4月、10月の随時改定)、15%(7月、1月の随時改定)、Ⓑ一律5%、Ⓒ一律0%(平均素材価格が動けばそれを年4回改定時に公定価格に反映させる)の3通りの考え方が提示された。

次に、反映させる価格時点⑵では、Ⓐ現状の3カ月前までの過去3カ月平均価格、Ⓑ2カ月前までの3カ月平均価格―の2通りの考え方が提示された。

2カ月前までの素材の3カ月平均価格を基に、変動幅0%で公定価格を年4回見直すことが中医協での大きな流れの方向のようだ。

ただ、下記グラフを見ていただきたいのだが、令和22020)年度からの2年間の例でいえば、歯科診療所がもらえる総額は、一番多くなる2カ月前までの価格を基に、一律0%基準で年4回公定価格算出パターンでも試算値で64245円。現状公定価格(の総額62649円の2.5%増に過ぎない。

Ⅲ.抜本改革に向け粘り強く公的議論継続を要求すべし

変えないよりはまし、一歩前進という見方もあるだろうが、パラジウムなどの価格急騰期の「逆ザヤ」に苦しんだ歯科医師の現場感覚からは、これでは問題が抜本的に解消するという実感は持てないのではないか。 

今後、直近2年間と同じ貴金属の高騰が起き(起きない保証はない)、事務局提案に基づいた方向でルール改正が行われた場合(この可能性が高いようだ)、現状比2%台半ばの改善しか手にできないのである。

議論の出発点であった制度設計の抜本的再構築から議論は大きく逸れ、後退してきたのが実情だろう。年4回に限定されてきた随時改定の頻度は、結局、現状通りに戻ってしまった。公定価格に反映させる価格時期についても、直近3カ月前までから2カ月前までに1カ月だけ近づけただけだ。

それまでの3カ月間の素材平均価格と、その前3カ月間の平均価格の差額を公定価格の変動幅にする現状の方式を温存したままでは、急激な価格変動を迅速に公的価格に反映させることは不可能だ。抜本的な制度改革を放棄したのも同然だ。

1カ月前の素材の実勢価格を基に公定価格を毎月見直すのが、一番理想的な解決策だろう。それができないというのならば、厚労省はその理由を開示する義務がある。

歯科医師を代表する各団体は、抜本的な解決に向けて、今後も継続して議論する公的な場の設置を要求し続けるべきだろう。

 東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202221日号10面掲載

2022年度診療報酬改定 新点数説明会

 

2022年度診療報酬改定では、「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」や「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の施設基準の見直しなどが検討されています。また、CAD/CAMインレーなどの保険収載も予定されています。協会では、適切な情報提供を行うべく説明会を開催します。今回は感染対策を目的に「動画配信」します。なお、会場席もご用意します(完全予約制)

日 時 

第1回「改定の要点」3月24日(木)午後6時30分~9時00分(予定)

*ライブ配信を行います。なお、328()頃から動画配信(オンデマンド配信)も行います。

第2回「改定の要点」3月29日(火)午後6時30分~9時00(予定)

*第1回と内容は同じであるため、動画配信(オンデマンド配信)は行いません。

第3回「在宅医療」4月20日(水)午後6時30分~9時00(予定)

425()頃から動画配信(オンデマンド配信)を行います。

第4回「保険請求時の留意点」4月26日(火)午後6時30分~9時00(予定)

52()頃から動画配信(オンデマンド配信)を行います。

ライブ配信・会場参加のWEB予約は、31()頃に東京歯科保険医協会ホームページ内「歯科診療報酬 2022年改定特設ページ」でご案内いたします。

公開中(新点数説明会 申し込みフォームは3月1日頃より受付開始)

 

 

日本学術会議が「歯学分野におけるジェンダー・ダイバーシティ」めぐり公開シンポ開催

日本学術会議はこのほど、公開シンポジウム「歯学分野におけるジェンダー・ダイバーシティ~課題と展望について~」をオンライン開催した。

総合司会は日本学術会議連携会員で北海道大学大学院歯学研究院教授の樋田京子氏が務め、開会挨拶は、市川哲雄氏(日本学術会議第二部会員、歯学委員会委員長、徳島大学教授)と住友雅人氏(日本歯科医学会連合理事長、日本歯科大学名誉教授)の2氏が行った。

シンポジウム座長は前述の樋田京子氏と日本歯科医学会連合副理事長で東京医科歯科大学名誉教授の川口陽子氏が務めた。講師は、①熊谷日登美氏:日本学術会議会員二部会員、第二部生命科学ジェンダー・ダイバーシティ分科会委員長、日本大学生物資源科学部教授、②樋田京子氏:前出、③久保庭雅恵氏:大阪大学大学院歯学研究科准教授、④田村文誉氏:日本歯科大学口腔リハビリテーション科教授―の4氏が務めた。

シンポの中では、世界経済フォーラム(WEF)が発表している2021年のジェンダーギャップ指数を見ると、日本は世界156カ国中120位で、主要7カ国(G7)では最下位となっていること。また、科学技術学術分野の男女共同参画についても、大学における女性研究者支援を軸とする政策が開始されてから15年近く経過するにもかかわらず、女性研究者の割合は先進国の中で最低であることなどを問題視する意見が続いた。特に歯学領域については、近年は女子学生の割合が増加し、中には50%に達している大学もあり、博士課程修了者の数も年々増加しているにもかかわらず、依然として女性教員の数、特に教授職など上位職における女性の割合は医学部に比べても顕著に低いこと、学会や歯科医療団体で役員につく数も少ないことなどが指摘された。そして、日本の歯科医療や歯学研究が国際的に高いレベルを維持し、発展するためには、人種性別を問わず優秀な人材を集めて育成し、活躍の場を提供することが重要であることなどの発言があった。

 

◆今後予定されている公開シンポジウム

なお、メディアなどではあまり紹介される機会がないようであるが、日本学術会議では、20222月以降、以下の公開シンポジウムの開催を予定しており、新型コロナウイルス感染症対策も遵守された開催方式となっている。内容などの詳細は、日本学術会議のホームページをご覧いただきたい。

◆テーマ「移植・再生医療の現在の課題」

開催日2022/2/14(月)13:3016:00 ⇒ オンライン開催

◆テーマ「子どもの毒性学:子供の高次脳機能への化学物質曝露影響の把握に関わる、臨床、応用および基礎科学の現状と展望」

開催日2022/2/19(土)13:0017:20 ⇒ オンライン開催

◆テーマ:日本学術会議in福岡/学術講演会「若手研究者が考える地方創生と学術の未来」

開催日2022/2/23(水・祝)14:0017:25 ⇒ オンライン開催

◆テーマ「生活に身近なOne Health:食品から検出される薬剤耐性菌の現状」

開催日2022/2/26(土)13:3015:30 ⇒ オンライン開催

◆テーマ「生物多様性からみたワイルドサイエンス」

開催日2022/2/26(土)13:3017:00 ⇒ オンライン開催

◆テーマ「第7回理論応用力学シンポジウム-力学のさらなる発展に向けて-」

開催日2022/3/11(金)13:0017:00 ⇒ 日本学術会議講堂及びオンライン(ハイブリッド形式)

◆テーマ「世界の高大接続の現状と課題」

開催日2022/3/12(土)14:3017:00 ⇒ オンライン開催

◆テーマ「安全安心技術が支えるディジタル社会 Digital Society Supported by Safety and Security TechnologiesDS4T)

開催日2022/3/14(月)13:0018:00 ⇒ オンライン開催

◆テーマ「複合的アプローチで拓く新規フードサイエンス」

開催日2022/3/18(金)16:0018:30 ⇒ オンライン開催

◆テーマ「生命科学分野におけるジェンダー・ダイバーシティ」第3回「Disability Inclusive Academia:障害のある人々の視点は科学をどう変えるか」

開催日2022/3/23(水)13:0016:05 ⇒ オンライン開催(※手話通訳と文字通訳あり)

2022年度改定 パブリックコメントの結果が公表

 2022年2月2日の中央社会保険医療協議会で次期改定のパブリックコメントの結果が公表された。

 多い意見として「院内感染防止対策に対する評価を復活・充実すべき。(同旨 155 件)」「同一初診期間中1回のみの算定などを見直し、実態に則した評価として欲しい。(同旨 133)」など歯科の意見が多数を占め、感染防止対策の更なる評価や不合理なルールの改善を求める声が多い。

パブリックコメントの結果はコチラをクリック

当会メディア懇談会が「CareNet(ケアネット)」内のコラムに取り上げられました

協会は1月14日、第5回(通算87回)メディア懇談会をオンラインにて開催し、メディア各社と意見を交換しました。

その際に、厚生労働省が公表(2021年11月)した第23回医療経済実態調査について、調査対象となった医療機関(サンプル数)が少ないという点等の問題を提起し、改定の基礎的な資料として用いられることについて、妥当性を欠くのではないかとして考えを述べ、「CareNet(ケアネット)」内のコラムに取り上げられました。

詳細な内容につきましては、「CareNet(ケアネット)」よりご覧いただけます。ご覧になりたい方は以下よりアクセスください。

CareNet『第93回 公平さ欠いた恣意的な数字が見え隠れする「医療経済実態調査」』

厚生労働省が2022年度改定の「個別改定項目」を提案/1.26中医協総会

厚生労働省は、126日に開催された中医協総会で、2022年度診療報酬改定に関する個別改定項目を提案した。

その中で、「かかりつけ歯科医の機能の充実」については、その評価に関し、地域における連携体制に係る要件と継続的な口腔管理・ 指導に係る要件を見直すとしている。具体的には、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の施設基準において、地域の連携体制に係る要件として、介護施設等における歯科健診への協力を追加。さらに、継続的な口腔管理・指導に係る実績を要件に、歯周病重症化予防治療の実績を算入可能としている。とりわけ、「介護施設等における歯科健診への協力」は注目されよう。

また、質の高い在宅歯科医療の提供の推進に向け、歯科訪問診療や医療機関の実態を踏まえた見直しを行うとした。歯科訪問診療の実態を踏まえ、診療時間が20分未満の歯科訪問診療を行った場合の減算(70/100)、および歯科訪問診療の3分類について、それぞれ所定の点数を算定する。また、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の対象疾患に口腔機能低下症が含まれることを明確にした。小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の対象患者の年齢については、現行の15歳未満から18歳未満に引き上げ、18歳到達後も、継続的な歯科疾患の管理が必要な者を対象患者に追加するとともに、評価を見直すとした。

在宅医療における医科歯科連携の推進では、歯科医療機関連携加算について、医療機関が歯科訪問診療の必要性を認めて歯科医療機関へ情報提供を行った場合に関する要件を見直すこととしている。診療情報提供料における歯科医療機関連携加算について、情報提供を行う医師の所属及び患者の状態に係る要件を廃止し、「医師が歯科訪問診療の必要性を認めた患者」を対象とする。医師が患者に歯科診療を受けさせるインセンティブを付与し、医科歯科連携を促進しようという考えだ。今後、連携症例数がどのような動きを見せるか、注目される。

総合的医療管理に係る医科歯科連携の推進は、 HIV 感染症などのように、症状が口腔に発現する疾患に関連する医科歯科連携を推進する観点から、総合医療管理加算等について対象疾患と対象となる医療機関を見直す。

一方、訪問歯科衛生指導の実施時におけるICTの活用に係る評価が新設される。その概要は、訪問歯科衛生指導時に情報通信機器を活用した場合、新たな評価を行うというものだ。歯科衛生士等による訪問歯科衛生指導の実施時に、歯科医師が情報通信機器を用いて状態を観察した患者に対し、歯科訪問診療を実施し、当該観察の内容を診療に活用した場合の評価を新設する。

新型コロナウイルス感染症の蔓延の観点から注目されていた院内感染防止対策の推進として、歯科外来診療での院内感染防止対策を推進し、新興感染症にも適切に対応できる体制を確保するため、歯科初診料の施設基準である歯科医師等が受講する研修について、飛沫感染防止対策等の新興感染症の対策に係る研修を追加するとともに、 歯周基本治療処置等の廃止に併せて歯科初診料および歯科再診料の評価を見直すとしている。

口腔機能管理料と小児口腔機能管理料に関しては、口腔機能の低下がみられる年齢等の実態を踏まえ、その対象範囲をそれぞれ拡大していく方針を示している。それに伴い、歯科診療特別対応連携加算について、地域での連携状況を踏まえ、評価の在り方を見直すこととしている。

 

歯初診・歯援診・か強診の施設基準 見直し

 126日の中央社会保険医療協議会で、次期改定の個別改定項目が提案された。新型コロナウイルスの感染拡大から、院内感染防止対策を評価した「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」(歯初診)の研修項目が追加され、医療機関に1年の猶予期間を設け、対応を求める。在宅療養支援歯科診療所(歯援診)では、施設基準にある訪問診療の実績要件を変更する。

 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)では、施設基準にある歯周病安定期治療の実績要件に歯周病重症化予防治療を加えることを可能とし、連携体制の要件の選択肢が増えて、施設で行われる定期的な歯科健診への協力が追加される。また、歯周病安定期治療()が、現状の歯周病安定期治療()の加算と毎月算定できる要件に加わる形で統合される。

―初期根面う蝕のフッ素塗布が外来でも可能に

 初期の根面う蝕に対するフッ化物歯面塗布処置が、一定以上の年齢であれば、外来患者でも算定できるようになる。

 また、施設基準を満たせない医療機関でも、糖尿病や血液凝固阻止剤投与中などの患者の主治医から情報提供を受けて管理を行った場合、歯科疾患管理料に総合医療管理加算が加算できるようになる。新しい技術として、CAD/CAMインレー、口腔細菌定量検査および歯科部分パノラマ断層撮影が保険導入される。メタルコア加算および歯周基本治療処置(P基処10点)は廃止される。

―医療技術評価提案

 なお、1月19日の中央社会保険医療協議会で、学会からの提案書などに基づき次期改定で評価すべき医療技術が議論された。歯科では、CAD/CAMインレー修復、NiTiロータリーファイルによる根管形成加算、チタンおよびチタン合金による前歯部レジン前装金属冠など17技術が「優先度が高い技術」となった。

 一方、代替材料である「金属アレルギー患者へのジルコニアによる前歯部CAD/CAMブリッジ」「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)による大臼歯歯冠修復物」は保険収載が見送られた。

歯初診・歯援診・か強診の施設基準 見直し

 126日の中央社会保険医療協議会で、次期改定の個別改定項目が提案された。新型コロナウイルスの感染拡大から、院内感染防止対策を評価した「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」(歯初診)の研修項目が追加され、医療機関に1年の猶予期間を設け、対応を求める。在宅療養支援歯科診療所(歯援診)では、施設基準にある訪問診療の実績要件を変更する。

 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)では、施設基準にある歯周病安定期治療の実績要件に歯周病重症化予防治療を加えることを可能とし、連携体制の要件の選択肢が増えて、施設で行われる定期的な歯科健診への協力が追加される。また、歯周病安定期治療(Ⅱ)が、現状の歯周病安定期治療(Ⅰ)の加算と毎月算定できる要件に加わる形で統合される。

―初期根面う蝕のフッ素塗布が外来でも可能に

 初期の根面う蝕に対するフッ化物歯面塗布処置が、一定以上の年齢であれば、外来患者でも算定できるようになる。

 また、施設基準を満たせない医療機関でも、糖尿病や血液凝固阻止剤投与中などの患者の主治医から情報提供を受けて管理を行った場合、歯科疾患管理料に総合医療管理加算が加算できるようになる。新しい技術として、CAD/CAMインレー、口腔細菌定量検査および歯科部分パノラマ断層撮影が保険導入される。メタルコア加算および歯周基本治療処置(P基処10点)は廃止される。

―医療技術評価提案

 なお、1月19日の中央社会保険医療協議会で、学会からの提案書などに基づき次期改定で評価すべき医療技術が議論された。歯科では、CAD/CAMインレー修復、NiTiロータリーファイルによる根管形成加算、チタンおよびチタン合金による前歯部レジン前装金属冠など17技術が「優先度が高い技術」となった。

 一方、代替材料である「金属アレルギー患者へのジルコニアによる前歯部CAD/CAMブリッジ」「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)による大臼歯歯冠修復物」は保険収載が見送られた。

2月13日(日)開催:「糖尿病?認知症?その原因は口の中にあるかもしれません」

市民公開講座ですので、一般の方も是非ご参加ください!

●講座名

「糖尿病?認知症?その原因は口の中にあるかもしれません~意外と知らない口腔と全身の関係~」

※講座の詳細・参加方法はこちら↓↓↓

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdk81XEMuwqPAshr191UtBakC-Ko56reUkjfM7yT3bJq8n2_g/viewform

●演者

栗林伸一 氏(三咲内科クリニック院長、糖尿病専門医)

三辺正人 氏(文教通り歯科クリニック、歯周病専門医)

山本龍生 氏(神奈川歯科大学歯学部 教授)

●日時

2月13日(日)13時30分~16時30分

●会場

千葉市生涯学習センター2階ホール

※Web併用での開催

●参加費

無料

1月26日(水)開催:「地域の中で保健所が果たす役割、あるべき姿を考える」

●シンポジウム名

「地域の中で保健所が果たす役割、あるべき姿を考える」

※シンポジウムの詳細・参加方法はこちら↓↓↓

https://www.hokeni.org/docs/2021121700011/

●シンポジスト

大澤眞理 氏(東京大学 名誉教授)

白井千香 氏(全国保健所長会 副会長、牧方市保健所 所長)

中村洋一 氏 (中村診療所、東京保険医協会 副会長)

●日時

1月26日(水)19時45分~21時30分

●会場

東京保険医協会セミナールーム(住所:新宿区西新宿3-2-7KDX新宿ビル4階)

※Zoom併用での開催

●参加費

無料

医療経済実態調査に提言 歯科診療所の感染対策を訴え/第5回メディア懇談会

山本鐵雄副会長

診療報酬改定、医療経済実態調査など議題に

 協会は1月14日、第5回(通算87回)メディア懇談会をWEB開催。山本鐵雄副会長が説明、広報・ホームページ部長の早坂美都理事が司会を務め、メディア各社が参加した。今回は①中医協関係、②談話、③要請、④医療経済実態調査、⑤次期診療報酬改定率などを中心に意見交換した。

感染症対策…歯科診療所の窮状訴え

 歯科用貴金属材料の提起では、歯科診療所にとって望ましい随時改定の在り方について懇談。逆ザヤ解消に向けた方策に関し、現場の声を届けた。
 診療報酬のプラス改定に向けた談話についての話題では、歯科診療所における経営のひっ迫状況に関して、現場の声を交えながら言及。スタンダードプリコーション(標準予防策)の考えに基づく綿密な感染症対策を行っているため、マスクやグローブ、アルコールなどの備品費がかさむ傾向にあること、行政からの補助金等ではまかないきれていない現状を共有した。
 また、厚生労働省が公表した第23回医療経済実態調査のテーマでは、調査対象となった医療機関(サンプル数)が少ないという論点で問題を提起。メディア側からは、「調査対象として個人経営の診療所を増やしていくべき」という意見があがり、調査方法の在り方を議論した。

早坂美都理事

中医協公聴会 感染防止対策 麻酔の評価を

 1月21日に、次期改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)の公聴会がオンラインで開催され、12名の意見発表者がそれぞれ意見を出した。歯科に関しては、大杉和司氏(大杉歯科医院理事長、三重県)が意見発表を行い、感染防止対策の評価が不十分でなく初・再診料で恒久的に評価すべき、麻酔を算定できないことが多く明細書に記載もないため分かりやすく見直すべき、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所や在宅療養支援診療所の訪問診療の実績の要件は応需体制の要件に留めるべき、周術期口腔機能管理の連携は伸び悩んでおり、取り組みやすい制度作りが必要、金パラは依然として赤字になる現状があり早い解決を求めたい、などの考えを述べた。

 中医協委員からは、「医科歯科連携の実例を教えてほしい」などの声があり、大杉氏は地域の歯科医師会と医師会の取り組みなどを紹介した上で、地域での取り組みだけでは不十分であり厚生労働省も働きかけをしてほしいと述べた。

 そのほか、秋山実氏(日本航空健康保険組合理事長)、松井道宣氏(京都九条病院理事長)、宿野部武志氏(一般社団法人ピーペック代表理事)、黒瀬巌氏(ケイアイクリニック理事長)、森嶋和宏氏(三重県名張市役所福祉子ども部長)、小林弘祐氏(内科系学会社会保険連合理事長)、田中達也氏(メイトク株式会社代表取締役)、小林妙氏(JAM総務グループ長)、青木浩朗氏(保険調剤薬局つつみ薬剤師)、兒玉和歌子氏(不妊・不育治療の環境改善を目指す当事者の会)、山田佐登美氏(川崎医科大学総合医療センター看護部長付参与)が意見を発した。

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)1月1日

東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)1月1日

こちらをクリック▶東京歯科保険医新聞2022年(令和4年)1月1日 第622号

1面】

    1.夜明けの序曲(新春特別企画・石原正道先生投稿写真)

    2.年頭所感

    3.次期診療報酬改定率 本体0.43%

    4.ニュースビュー

    5.「探針」

2面】

    6.談話 医療提供体制を立て直し、国民へ良質な医療を提供できる社会政策への転換を

    7.中医協 感染対策の評価 支払側が反対意見

    8.事業復活支援金

    9.政策委員長談話 経営管理部長談話を発出

3面】

    10.インタビュー 森八・中宮千里さん「400年の伝統ある老舗の心構え “職人”若女将が考える地域との結びつき」

    11.新春特別企画 会員数投稿写真(谷本幸司先生)

    12.新春特別企画 会員数投稿写真(矢島昇悟先生)

4面】

    13.経営&税務相談Q&A No.389

    14.トラブル回避の問診等のコツ解説/豊福氏が医事相談研究会で

    15.新規開業医講習会を開催/1年ぶりに再開した新規個別指導に対応

    16.踏み出そう!歯科訪問診療!/歯科訪問診療講習会を開催

    17.改正電子帳簿保存法/電子データ保存義務2年間の猶予設ける

    18.施設基準講習会を開催/「開業前に協会から情報得られて良かった」

5面】

    19.研究会・行事案内

    20.会員優待サービス

    21.ネガティブな口コミへの対応策No.1

    22.電子書籍デンタルブック

6面】

    23.インタビュー 日本歯科大学・奈良陽一郎さん「『MID』含め 接着なくして成り得ない」

7面】

    24.謹賀新年名刺広告

    25.新春特別企画 会員数投稿写真(川本弘先生)

    26.新春特別企画 会員数投稿写真(植村元喜先生)

8面】

    27.支援補助金(8万円)申請締め切りは1月31日まで

    28.2022年度診療報酬改定に向けて/教えて!会長!!Vol.54

    29.法律相談、経営&税務相談

    30.共済部だより

9面】

    31.症例研究/周術期等口腔機能管理について

10面】

    32.連載/私の目に映る歯科医療界⑩(東洋経済新報社・大西富士男)

    33.協会活動日誌 2021年12月

    34.理事会だより

11面】

    35.坪田会長が衆院議員3氏と懇談/2022年度診療報酬改定 プラス改定を訴える

    36.2021歯科総行動集会/220会場から500人参加

    37.神田川界隈/一緒に声を挙げませんか?(濱﨑啓吾/練馬区)

    38.新規個別指導 12月から再開/緊急事態宣言による延期で開業から2年後の指導が多発

    39.医療提供体制支援補助金 迅速な交付を求めて要望書提出

    40.通信員便り No.117

12面】

    41.頼りになります 東京歯科保険医協会/組織部

CAD/CAMインレー・口腔バイオフィルム検査 保険収載

医療技術評価提案 評価対象 17項目

 1月19日の中央社会保険医療協議会で、学会からの提案書などに基づき、次期改定で評価すべき医療技術が決まった。評価対象となったのは、CAD/CAMインレー修復、チタンおよびチタン合金による前歯部レジン前装金属冠、NiTiロータリーファイルによる根管形成加算、歯科用3次元エックス線断層撮影の撮影要件に根管形態の明記、歯科部分パノラマ断層撮影、口腔バイオフィルム検査、口腔不潔度測定、歯科充填用材料の廃止および歯周ポケット掻爬などの17項目となった。

 学会の提案書によると、「CAD/CAMインレー修復」は、歯冠形成後に従来通り連合印象採得及び咬合採得を行い、歯科技工所でCAD/CAM装置にてインレー体を製作して歯科用合着用レジンセメントを用いて窩洞内に装着するなどとしている。

 また、使用するハイブリッドレジンブロックは現状使用しているものと同様のものが使用できると記載している。「チタンおよびチタン合金による前歯部レジン前装金属冠」は、歯科用金属アレルギーかつチタンアレルギーではない患者で前歯部CAD/CAM冠が適応できない者を対象に、前歯部のレジン前装冠へ対象拡大するものなどとされている。

 「NiTiロータリーファイルによる根管形成加算」は、抜髄あるいは感染根管処置の加療が必要な患者に対して、NiTiロータリーファイルならびに専用治療用モーターを使用して根管拡大ならびに根管形成を行うものを評価するものとなっている。

 「歯科用3次元エックス線断層撮影の撮影要件に根管形態の明記」は、歯科用CTの算定要件に歯髄炎での要件が明記されていないことの改善を求めるもので、算定要件に「歯髄炎、根尖性歯周炎等、大臼歯等の根管形態」を明記する内容となっている。「歯科部分パノラマ断層撮影」は、腫脹や疼痛の症状が局所にあり、嘔吐反射のため口内法エックス線撮影が困難である患者および飛沫や唾液による感染リスクが高い患者または疑われる患者において、片側または両側臼歯部あるいは前歯部の局所部分へのパノラマ断層撮影を評価するものとなっている。

 「口腔バイオフィルム検査」は、身体的要因、精神的障害等などにより口腔衛生管理ができない患者を対象に、簡易検査(TCI:舌苔付着度検査)あるいは精密検査(細菌カウンタによる細菌数測定)のいずれかを行い、口腔バイオフィルム感染症の病名をつけるものとなっている。「口腔不潔度測定」は、要介護高齢者、入院患者または緩和期患者であって、口腔機能低下または口腔衛生管理が不良のために口腔内微生物による汚染が著しく疾患リスクが高まっている状態にある者(症状として舌苔、粘膜炎、口臭または口腔乾燥症)に対して、細菌カウンタで総細菌数を測定するものとなっている。

 廃止に係る項目としては「歯科充填用材料Ⅲの廃止」があり、歯科充填用材料Ⅲとして保険収載されている歯科用硅酸セメント、硅隣酸セメントおよび歯科用充填用即時硬化レジンの廃止を求めるものとなっている。同様に、「歯周ポケット掻爬」は、歯周基本治療として評価されている歯周ポケット掻爬(PCur)は歯周外科処置に分類される手術とし、歯周基本治療から歯周ポケット掻爬を削除する内容となっている。

 これら項目の点数や具体的な算定要件は、学会の提案内容を踏まえて、3月上旬に発出される大臣告示や通知により明らかになる。

 協会では、3月に開催する新点数説明会で詳細を解説する予定であり、会員はぜひともご参加いただきたい。

オミクロン株急拡大・東京都に「まん延防止」適用/ 歯科は時間要請等の対象外

 新型コロナウイルス感染者の急速な増加を受け、東京都は1月7日、「オミクロン株の急速拡大に伴う緊急対応」を公表し、その後、同21日には政府の新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置(以下、まん延防止措置)が適用された。

 1月19日時点で、対象は都内全域、期間は121日から2月13日まで。歯科(医療施設)は、病院、診療所、薬局と同様に時短要請等の対象外となっている。まん延防止措置では、都民に向けて不要不急の外出、都道府県をまたぐ移動の自粛、会食の人数制限などを要請している。

 一方、業種別ガイドラインを提示した事業者向けの協力依頼では、施設ごとに対応を明示。飲食店や商業施設、教育機関のほか、イベント開催に対する要請も含まれている。また、職場への出勤についてはテレワークの推進や、基本的な感染防止策を徹底するよう協力を依頼している。

 東京都では1月8日に、昨年9月以来となる1000人超の感染者を確認。その後、122日には初めて1万人を上回り、さらに感染拡大する様相を呈している。継続した感染症対策に加え、感染状況の推移、それに伴う行政の対応を注視していく必要がある。

P基処廃止 歯初診の要件変更等へ

 114日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、次期改定に関する議論が取りまとめられた。このまとめをもとに、公聴会やパブリックコメントでの意見内容を経て、改定項目が決まる。

 示された議論のまとめによると、新型コロナウイルスを含めた感染防止対策に関しては、「歯科初診料における歯科医師及び職員を対象とした研修等に係る要件を見直すとともに、基本診療料の評価を見直す」と記載された。2020年度診療報酬改定において「歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準」(歯初診)の要件に職員研修が追加されたが、次期改定ではその研修が見直されるとともに初・再診料の点数が変更される。コストを踏まえた評価となるのか、経過措置期間が十分設けられるかなどが注目される。

 また、施設基準に関しては、「かかりつけ歯科医の機能の評価について、地域における連携体制に係る要件及び継続的な口腔管理・指導に係る要件を見直す」との記載もあり、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準も見直しがなされる。

 歯周治療においては、「歯周基本治療処置について、診療の実態も踏まえて廃止するとともに、基本診療料の評価の見直し等を行う」とまとめられた。P基処10点がなくなるのと同時に、初・再診料が引き上げられるといった変更が考えられる。また、「歯周病の安定期治療及び重症化予防治療について、診療実態を踏まえて評価の在り方を見直す」ともあり、これまでの議論において歯周病安定期治療()、および()並びに歯周病重症化予防治療の包括範囲が異なる点が指摘されていることから、包括範囲などの見直しがなされる。

 医学管理料においては、「口腔機能管理料および小児口腔機能管理料について、口腔機能の低下がみられる年齢等の実態を踏まえ、対象患者を見直す」と整理された。口腔機能管理料は原則65歳以上、小児口腔機能管理料の開始年齢は15歳未満となっており、年齢制限などの要件が見直される。

 また、「HIV感染症等の口腔に症状が発現する疾患に係る医科歯科連携を推進する観点から、総合医療管理加算等について対象疾患および対象となる医療機関を見直す」ともあり、対象患者にHIV患者が含まれるといった総合医療管理加算の見直しが想定される。

 処置においては、「フッ化物洗口指導及びフッ化物歯面塗布処置について、現在の罹患状況等を踏まえ、対象患者を見直す」とまとめられた。これまでの議論で、う蝕多発傾向者の年齢制限や根面う蝕へのフッ素塗布が在宅患者に制限されていることが指摘されており、これらの要件が見直されるとみられる。

 在宅歯科医療については、「20分未満の歯科訪問診療の評価を見直す」と記載された。20分未満の場合は100分の70で算定しているが、この減算の内容が変更されるものと見られる。また、「在宅療養支援歯科診療所について、歯科訪問診療や医療機関の実態を踏まえ、評価の在り方を見直す」ともあり、在宅療養支援歯科診療所の評価も変更される。

 歯冠修復・欠損補綴については、「歯科用貴金属の基準材料価格について、素材価格の変動状況を踏まえ、随時改定の方法等を見直す」と記載された。中医協では、変動幅に関わらず3月に1回の随時改定を行う提案がされており、そのような変更がなされるとみられる。また、「歯冠形成のメタルコア加算について、診療の実態を踏まえ、廃止する」との記載があり、メタルコア加算が廃止される可能性が示されている。

感染防止の評価に異論

 中医協では、院内感染防止対策を診療報酬で評価することについて、支払側委員から反対する意見が相次いでいる。しかし、感染防止対策の評価はそもそもコストに見合っているとは言えない。患者1人1回あたりの院内感染防止対策のコストは、中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会(2007年7月18日)において268・17円、また「医療安全を確保するために・院内感染対策費の検討(日本歯科医療管理学会雑誌第51巻第1号40―45頁(2016)」においても、消耗品費、人件費および医療廃棄処理費の合計だけでも568円と報告されるなど、とても現在の診療報酬の評価は十分とは言えない。

 公聴会においても、意見発表者から、標準予防策により歯科治療を介した新型コロナウイルスの感染事例がないものの評価は不十分であるとし、コロナ加算などの時限的な措置が取られているが、恒久的に初・再診料で評価をすべきとの意見も出ている。

新型コロナウイルス感染症情報更新(事業復活支援金等)

経済産業省は1月14日、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業向けの「事業復活支援金」について概要を発表し、1月31日より申請の受付が始りました。
当協会ホームページ内にある『新型コロナ感染症情報』にて「事業復活支援金」をはじめ、「新型コロナの労務対応などについてのQ&A」「助成金申請動画」などポイントをまとめています。

こちらをクリック(『新型コロナ感染症情報』)

【教えて!会長!! Vol.54】2022年度診療報酬改定に向けて

― 中央社会保険医療協議会で歯科医療(その2)について、議論されたとのこと。

坪田有史会長:8月4日の歯科医療(その1)に引き続き、2022年度診療報酬改定に向けて12月10日に歯科医療(その2)が中医協で取り上げられました。そこで協会では、公表された中医協資料を読み解き、現時点での改定の方向性や内容について議論し、問題点を検証するために12月19日にZoomを使用して、ハイブリッド方式で役員・部員・事務局員による政策学習会を開催しました。本政策学習会は、2022年度診療報酬改定が歯科保険医にとって、悪影響を及ぼすことがないか検証し、混乱を招いたり、問題となる可能性がある改定内容があったりする場合、歯科医療の現場の声として、厚労省サイドに改善を求めることを目的としています。

― 歯科医療(その2)の内容について、教えてください。

坪田:12月10日の中医協の資料を紹介します。その内容は、3大項目に分類されています。その3大項目とは、「1.歯科医療を取り巻く状況について」「2.地域包括ケアシステムの推進について」「3.生活の質に配慮した歯科医療の推進など」です。
 「1.歯科医療を取り巻く状況について」は、4年前の改定で用いられた図を使って、歯科治療の需要の将来予想として、治療中心型から、治療・管理・連携型へのシフトの必要性が再度示されています。その上で、「地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関などの役割」「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」「具体的な医科歯科連携方策と歯科疾患予防策」について詳細な目標などが明示されています。
 「2.地域包括ケアシステムの推進について」は、新型コロナウイルス感染症の発生を受けて、地域における歯科医療機関と施設・行政など関係機関との連携の必要性があることから、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の見直し、特に要件の一つである自治体が実施する歯科保健に係る事業への協力について、介護老人保健施設などにおける歯科疾患に対する取り組みの推進などと関連付けながら明確化するなど、改定を進めようとしていることが窺えます。
 医療機関間の連携の一つとしては、障害者歯科治療を推進するための連携に関係する歯科診療特別対応連携加算の施設基準の見直しなどが行われそうです。
 また、安心・安全で質の高い歯科医療の推進のためにICTの活用として、歯科衛生士が訪問による訪問歯科衛生指導を実施する際に、遠隔の歯科医師が口腔内の状況を確認することで、より詳細な指導ができるとし、オンライン診療の一つとして評価されそうです。
 「3.生活の質に配慮した歯科医療の推進など」は、いくつかの項目があります。一つには歯周病安定期治療(SPT)と歯周病重症化予防治療(P重防)の包括範囲の区別と整理が行われるようです。また、う蝕の重症化予防として、訪問診療の患者に限定されていた根面う蝕に対してフッ化物歯面塗布が外来にも適応拡大が検討されています。
 一方、各ライフステージに応じた口腔機能の評価として、小児口腔機能管理料と口腔機能管理料の対象年齢が見直されそうです。
 歯周基本治療処置(P基処)について、比較的簡単な処置であり、平均所要時間が比較的短いとしており、改定の財源確保のために包括化するのではないでしょうか。
 中医協資料を読み解いた上で、2022年度診療報酬改定の内容について検討しましたが、まだ決定したわけではなく想像の域に過ぎません。しかし、この段階で疑問があれば、現場の声を行政側に伝えることが望まれます。その結果、歯科医療と国民のために、よりよい改定になることを願っています。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年1月号4面掲載)

ネガティブな口コミへの 対応策 No.1

WEBに係る歯科関連の法令やトラブル対応などについて、歯科専門にサイト制作、運用、コンサルディングを手掛ける専門家が解説する本連載。
今回からは、ネット上の口コミへの対処法について―。

 Googleで検索した後に、基本情報や写真と同時に第三者の口コミと星の数で診療所を評価する口コミがあります。ネガティブな口コミが書かれていると、広告的なダメージへの心配以上に心情的な不快感を持たれる方が多いようです。この口コミを削除するためにはいくつかの方法があります。
(1)Googleへ削除依頼を申請し、受理してもらう
(2)投稿者自身が削除する
(3)法律の専門家からGoogle、もしくは投稿者へ削除要請を行う
 もう一つ方法がありますが、倫理的に問題がある手法で、医療機関という社会の公器たる歯科診療所が選ぶべき選択肢ではありません。また、Googleにその手法を察知されると大きなペナルティを受けるリスクが高いほか、手法そのものも悪用される可能性があるのでこの場では割愛します。
(1)Googleへの削除依頼は、一般の閲覧者として申請するやり方と歯科診療所のオーナーとして申請する2種類の方法がありますが、削除されやすいのはオーナーとしての削除依頼です。「Googleマイビジネス」という無料サービスに登録することで削除依頼を申請できます。違法、危険、なりすまし、利害に関係することなどGoogleが定める規定に反するものは削除されます。
 しかし、実際には著作権侵害、危険行為、テロなどの明確な犯罪行為やほかのビジネスの宣伝などの書き込みでない限り削除されないので、実際は削除されないことも多いですが、その理由は「悪評も評価の一つ」というGoogleの考え方が強く反映されているからです。(2)(3)は次回解説します。

クレセル株式会社

(東京歯科保険医新聞2022年1月号5面掲載)

私の目に映る歯科医療界⑩ 大詰め迎えた診療報酬の本体改定/望まれる国民視点からの適正水準などの本質論議

大詰め迎えた診療報酬の本体改定/望まれる国民視点からの適正水準などの本質論議

2年に1度の診療報酬改定の論議が終盤を迎えている。今回の焦点は、看護職員の賃上げ分と不妊治療の保険適用分の合計で最大見込まれる0.5%分を除く診療報酬本体部分(実質分)でマイナスがあるかどうかだ。前回の2020年度改定では、医師の働き方改革相当分0.08%以外の実質分でも0.47%のプラス改定だったが、今回の改定も実質プラス改定が続くかどうか。財務省VS厚生労働省、外野の自民党厚労族議員、医師会など関係団体の動きが、激しさを増していくはずだ。

Ⅰ.財務省と中医協支払側メンバーは診療報酬本体のマイナス改定要求

財務省や中医協の1号側(支払側)による、本体のマイナス改定要求は前回改定議論の時と同じだが、今回は財務省の姿勢がこれまでになく強硬だ。「『マイナス改定』を続けることなくして医療費の適正化は到底図られない」。123日に公表された財政制度等審議会の「建議」はこう言い切っている。

財務省は同審議会に出した資料で、①過去20年間の本体改定にあたって2年に1度の本体改定率がマイナス3.2%より上ならば医療機関等の収入(市場規模)は増加した。また改定率がマイナス0.8%でも年平均1.2%市場は成長した。それなのに実際は過去2回を例外に長期間の「本体プラス改定」が続いてきた、改定前の本体の伸びが高止まりしているならば、躊躇なくマイナス改定すべき、薬価改定による引き下げ分を財源とみなし、これを本体部分改定の上積みの原資とする、診療側が長年主張してきた考えを「フィクションにフィクションを重ねたもの」である―といったことが強調されている。

Ⅱ.財務省は本体のマイナス改定に一段と「強硬」姿勢に

仮に2000年度以来、本体部分の改定がなし(プラスマイナスゼロの据え置き)だった場合でも、医療機関の収入となる本体総額(国民医療費ベース)は高齢化等による押上要因があって年1.6%成長し、2000年度の本体総額を100とすると2018年度は134に拡大する。医療機関は十分潤ったはず。

ところが、実際には本体でのプラス改定を続けて来たため、年平均で0.2%分がさらに成長に上乗せされた。この間の日本の名目GDPの伸びは、年平均プラス0.2%だから、これと比べても「本体改定率について医療費の適正化とは程遠い対応を繰り返してきた」と言える。だから今後は、「本体のマイナス改定を続けることなくして、医療費の適正化は到底図れない」ことになる。

2年に1度の本体改定が平均マイナス3.2%(1年あたり1.6%のマイナスに相当)を下回らない限り、高齢化等による市場拡大効果(年平均1.6%)のほうが上回るので、市場拡大は維持できた。つまり、医療機関が受け取る収入はプラスになったはず。改定率がマイナス0.8%だった場合でも、人口減少分も加味した高齢化要因による市場拡大(年平均1.2%)の恩恵を享受できたはずだ。これが財務当局の理屈だ。

本体改定率が、マイナス0.83.2%なら、医療機関が受け取る本体報酬はプラス成長だったという説明からは、財務省がこの水準を「医療費の適正化の水準」として意識していることが窺える。2022年度予算、本体改定率でもこれをベースに強く望むのは間違いない。実際に、看護師賃金アップ分などを含めた本体総額改定マイナスの可能性をみる報道まで出ている。

Ⅲ.「医療費の適正化」を巡る財務省の論理はやや乱暴に映る

歯科を含めた2号側(診療側)も反論する。厚労省の最新の第23回医療経済実態調査を基に、病院、診療所などの経営実態は、コロナ禍もあって悪化が続く。診療報酬本体のプラス改定が不可欠だという。

見逃せないのは、高齢化等に伴う診療費の伸び(国民医療費)と名目GDPの伸びを比較して、前者が後者を大きく上回ることをもって「医療費の適正化」から逸脱すると財務省が見ていると受け取れる点だ。本体部分の収入が名目GDPの伸びを上回るのは、いうまでもなく高齢化によって医療需要が拡大していることが大きい。適正化に反するとの見方は一方的過ぎる。無駄な受診などを削り、医療供給側の効率化を進め、国民医療費の節減を図ることは、国民的にも望ましいが、「外部要因による市場増加分を名目GDP成長率に足並みをそろえるべし」とも受けとれる財務省の論理は、やや乱暴に映る。

本体改定率の決定に当たっては、医療機関の経営状況の正確な把握が不可欠だ。コロナ禍で経営が悪化しているという診療側と、2021年度に入り状況は改善しているという財務省や支払側の主張は真っ向対立するが、これもサンプル数などに限界はありながら、現状、依拠にできる唯一の最新データ(第23回医療経済実態調査)を基に、関係者間で国民の利益を最終の拠り所に、短期・中長期の視点も交えて冷静な議論を進めるしかない。

その上で、財務省の言う通りに、医療機関が受け取る収入が20年にわたり長期で増加しているならば、なぜ診療側が主張するように今も看護師(歯科でいえば歯科衛生士や歯科技工士)の待遇改善や病院・診療所の経営改善のために、診療報酬の本体アップを必要とするのか、国民の目には根本的な疑問は残る。その理由を政府や関係医療機関が基礎データを含めてわかりやすく解明・提示し、冷静で正確な議論をすることを、国民は強く望んでいるはずだ。

東洋経済新報社編集局報道部記者 大西富士男

「東京歯科保険医新聞」202211日号10面掲載

東京歯科保険医新聞 新春号特別企画

東京歯科保険医新聞 新春号特別企画

東京歯科保険医新聞では、2022年1月号の紙面を彩る写真を先生方から募集しました。

写真のテーマは『希望』。1面には石原正道先生(日野市)の作品『夜明けの序曲』を掲載しました。それぞれの視点で“希望”が表現され、新春への期待を膨らませてくれる写真の数々を、ぜひご覧ください。

この度は多数のご応募をいただき、誠にありがとうございました。


▼以下、1月号の紙面に掲載した作品をご紹介します。※敬称略、順不同

【夜明けの序曲】 沸き立つ霧が、朝焼けで炎のように染まる。多摩川が八王子と昭島の間を流れる中流域に、放射冷却現象が起きる初冬、原始的で荒々しく神秘的な光景が出現する。診療前の一時、心が無になる大切な場所である。(石原 正道/日野市)

本栖湖畔にある洪庵キャンプ場から臨む早朝の霊峰富士。還暦を迎えた記念に、大自然の中で密を避け、気持ちを新たに始めたソロキャンプ。空気は冷たく透き通り、明るい未来が感じられる美しい風景だった。(谷本 幸司/中央区)

長い長い参道を色とりどりの人々に揉まれて何時間も歩く。酷く疲れる年初の恒例行事だが、それがないならないで今度は少々寂しくなる。新しい年が皆様にとってより良い年になりますよう。(矢島 昇悟/港区)

所在地は、神奈川県相模原市緑区青根です。設置施設は地元の墓地で、名称不明です。画像を拡大すると「歯」の文字の中にある4つの点が下顎の大臼歯の絵文字になっています。(川本 弘/足立区)

希望とは目に見える美しい景色にあるのではなく、心の中に存在するものだ、ということに思い至りました。日々ひたむきに医療と向き合う若者の眼差し、そして、覚悟が僕の抱いた希望です。(植村 元喜/板橋区)