年別アーカイブ: 2025年

診療報酬期中改定/4月実施へ

診療報酬期中改定/4月実施へ

1月29日に行われた中央社会保険医療協議会(中医協)総会に「中間年改定の年に行う期中の診療報酬改定」として、歯科に関連して歯科衛生士や歯科技工士のタスクシフト・手間への評価が答申された。その中で歯科関連については、歯科衛生実地指導料の口腔機能指導加算、歯科技工士連携加算がそれぞれ4月から引き上げられる(表参照)。

今回答申されたのは、①入院時の食費の基準の見直し、②歯科衛生士や歯科技工士のタスクシフト、手間への評価の見直し、③長期収載品の選定療養化や医薬品供給不安に伴う服薬指導の評価の見直し―の3項目。特に②では、高齢化の進展などにより歯科診療のニーズが増加している中、歯科診療所などで、より専門的な業務を行う歯科衛生士、歯科技工士を確保し、限られた人材で歯科医療を効率的に提供する観点から、歯科衛生士、歯科技工期中改定表 4月以降の点数引き上げ士の業務に関わる評価の見直しが盛り込まれている。

昨年1225日の大臣折衝を踏まえ、緊急的に対応すべきものとして「地域での希少な医療資源を有効活用する観点から、口腔機能指導や歯科技工士との連携に係る加算について上乗せ加算を講ずる」とされた。

重要懸案/オンライン請求猶予届出を巡り厚労省が再提出方法示す

重要懸案/オンライン請求猶予届出を巡り厚労省が再提出方法示す

会員から「オンライン請求の猶予届出が不受理となった」との問い合わせが多数寄せられている。全国の保険医協会・医会からも同様の状況が報告されているため、全国保険医団体連合会(保団連)は昨年1226日、オンライン請求猶予届出の再提出に関する厚生労働省要請を実施した。以下に、届出の再提出の方法などを紹介するので、参考にしていただきたい。

厚労省はオンライン資格確認の体制整備の機会に乗じて、医療機関の請求方法を「20249月末までに原則オンライン請求に移行」とし、光ディスクなど(以下、電子媒体)で請求する医療機関については「猶予届出書兼オンライン請求への移行計画書(以下、猶予届出書)」の提出が必要としていた。 ところが、電子媒体での請求を続けるための猶予届出書を提出したにもかかわらず、「オンライン請求に移行できない理由」に該当しないとして、支払基金から電話があり、返戻される事案が東京を含む全国で確認されていた。

そこで、保団連が電子媒体で請求する医療機関からの猶予届出書の再提出要請を撤回することなどを求めて、改めて厚労省要請を実施した形だ。

その結果、「移行できない理由」を記載する際は、その具体的な理由を付け加えて記載することが付記された。例えば、「患者減少のため、今後の費用負担など経営上の理由で導入困難」や「高齢のためセキュリティ上の不安から導入困難」などがあげられる。

「レセプト枚数が極端に少ない」や「1年後に廃院を検討中」「高齢のため一人で対応している」など、さらに具体的な理由がある場合は「備考欄」に記入する。

また、猶予届出書の更新期日は2025年9月末まである。様式には、移行の目安時期の記載が必要となる。移行計画は「イ.来年*3月末までの時期」または、「ウ.来年*9月末までの時期」のどちらかを選択することになるが、残りの期間を鑑みると、「ウ」の選択が現実的である(*猶予届出書は2024年内に提出したものであるため、「来年=2025年」を指す)。

東京歯科/歯科開業医会員 年間増加数 2年連続トップ表彰

東京歯科/歯科開業医会員 年間増加数 2年連続トップ表彰

全国保険医団体連合会(以下、保団連)は1月26日、2024〜25年度第2回代議員会を開催した。加盟団体表彰では、歯科開業医会員年間増加数で当協会が全国1位に輝き、保団連の竹田智雄会長から表彰を受けた。2年連続トップでの受賞となり、当協会の坪田有史会長が表彰状を受け取った。

なお、同増加数は当協会以下、岡山県保険医協会、兵庫県保険医協会が上位に続いた。

2024年度会員の意識と実態調査

2024年度会員の意識と実態調査

◆目  的実態調査は5年に一度、会員の経営実態の把握と意識を明らかにし、協会活動の基礎資料とすることを目的として協会が実施。

◆実施方法以下の通り。

①調査対象 東京歯科保険医協会会員(賛助会員除く)6,014  2024930日時点

②調査地区 東京23区・26市・5町・8村の計62地区

③調査方法 調査方法は郵送で調査票を配布し、郵送による返信

④調査期間 202410月1日~ 1031

◆回答状況有効回答数 1,658件、回収率27.57

※前回調査(2019年7~8月) 有効回答数1,002件 回収率17.3

注)数値については小数点第2位以下を非表示にしており、合計しても100%にならない場合があります。

≪調査結果概要≫

1、年代

今回の回答者を年代別に見ると、2019年と比較して「30歳代」(5.4%)は3.3ポイント、「40歳代」(20.2%)は10.7ポイント、「50歳代」(30.7%)は1.2ポイント減少した。その一方で、「60歳代」(30.8%)は9.1ポイント、「70歳代以上」(12.4%)は6.7ポイント増加した。

2、ユニット台数と地域差

ユニットの台数(図1)は、「4台」「5台」「6台以上」を合わせると、23.1%(09年)、24.7%(14年)、29.2%(19年)、31.9%(24年)と、調査の度に増加している。「6台以上」と回答している人の地域を調べると「多摩地区」(13.1%)、「城東地区」(10.2%)、「城北地区」(9.7%)が多かった。また、常勤歯科医師数を見ると、「5人以上」と回答した割合が「多摩地区」(7.9%)、「城東地区」(7.4%)、「城北地区」(5.6%)で多く、1カ月あたりの総点数についても「50万点以上」との回答した割合が「多摩地区」(21.7%)、「城東地区」(15.6%)、「城北地区」(19.0%)で高くなっていた。

3、展望、子どもの将来

歯科医療の将来展望については、19年より「明るい」(26.8%)は9.4ポイント増加したが、同様に「暗い」(46.7%)も7.8ポイント増加した。なお、「明るい」という回答は、09年から調査を行うごとに増加している。

また、子どもを将来歯科医師にしようと思うかについて(図2)は、「思う」(9.5%)よりも「思わない」(22.9%)が多かった。さらに、年代別で見ると、子どもを歯科医師にしたいと「思う」と回答したのは40歳代(15.5%)が最も多く、60歳代(4.7%)が最も少なかった。

4、診療報酬改定の評価

診療報酬改定の評価(図3)は、19年と比較して満足しているとの回答(「大いに満足」「満足」の合計)は7.1ポイント減少した。同じく不満との回答(「大いに不満」「不満」の合計)も23.6ポイント減少した。満足しているとの回答(3.5%)は09年以降では今回が最も少ない。一方で「どちらでもない」(41.5%)は09年以降では最も多く、診療報酬改定が複雑で難解な内容であったことにより、評価できないとの回答が多くなったと考えられる。

年代別(図4)で見ると、診療報酬改定の評価について2030歳代を中心に「どちらでもない」という回答が多くを占めているが、全年代で評価について「大いに満足」「満足」はわずかで、それよりも「大いに不満」「不満」の割合が多かった。

また、不満と回答した理由を年代別に見ると、「算定しても割に合わない」「内容が複雑すぎる」「収入が増える気がしない」が理由の上位に挙がっており、特に「内容が複雑すぎる」は全年代で高い数値を示した。

5、歯周病安定期治療(SPT

歯周病安定期治療(SPT)を算定しているか否かについて(図5)は、19年と比べて「全レセプト枚数の150%未満」(50.0%)は17.4ポイント、「SPTが何か分からない」(2.1%)は0.6ポイント増加した。一方で、「算定していない」(42.3%)は18.6ポイント減少した。

特に「算定していない」(42.3%)は14年以降で最も少なく、算定しているとの回答(「1 50%未満」「50%以上」の合計)は14年以降では最も多かった。算定要件の緩和などにより、算定する医療機関が増加していることが明らかになった。また、年代別に見ると、50歳代・60歳代・70歳以上は「算定していない」との回答が多い。20歳代・30歳代・40歳代はSPTの算定が多かった。

2/27(木)開催 医療安全講習会「歯科医師と歯科衛生士とで学ぶ臨床歯科麻酔学」

★ご予約受付中★

医療安全講習会

「歯科医師と歯科衛生士とで学ぶ臨床歯科麻酔学-全身疾患やストレスによるリスクを回避する3つのポイント-」

2019年は私が記憶するだけでもアナフィラキシーショック,低血圧症,血管迷走神経反射,過換気症候群を立て続けに経験する年となりました.それまで血管迷走神経反射は1/年の経験があるかどうか,アナフィラキシーショックは過去10年間を通して1例も経験がなかったにもかかわらずです.偶発症や合併症は「いつ」「どんな時」に遭遇するか歯科麻酔科医でもわからないものです.そこで今回,患者さんに「安全で快適な歯科医療」を提供する上で大切なチェアサイドで考えるべき3つのポイントについてお伝えさせていただきます.【講師より】

日時:2/27(木) 19:00~21:00

場所:東京歯科保険医協会会議室ならびにZoomウェビナー

講師:雨宮 啓先生

対象:会員ならびに診療所に勤める歯科衛生士

参加費:無料

予約:こちらより お申込みください。

※当講習会は年2回の実施義務である医療安全管理に関する職員研修に含まれます。

〈略歴〉

1999年 東京歯科大学歯学部卒業

2003年 東京歯科大学大学院(歯科麻酔学)修了

2003年 白鳥歯科インプラントセンター勤務

2009年 藤沢歯科ペリオ・インプラントセンター開設

2017年 CDAC(Clinical Dental Anesthesiologist Club)設立

 

〈学会・スタディーグループ〉

日本歯科麻酔学会認定医

日本臨床歯周病学会認定医・指導医

日本歯周病学会歯周病専門医

日本口腔インプラント学会専門医

東京歯科大学非常勤講師(歯科麻酔学講座)

CDAC(Clinical Dental Anesthesiologist Club)代表

 

歯科用貴金属の随時改定 3月から引き上げへ

歯科用貴金属の随時改定 3月から引き上げへ

歯科用貴金属の随時改定が3月から実施される。
金銀パラジウム合金などの告示価格は1グラムあたり3,010円から3,230円に、30グラムあたりでは90,300円から96,900円に引き上げられる。

解説 :保険証の発行終了で起きる2025年問題とは/保険証の有効期限終了と更新手続きの留意点

解 説 : 保険証の発行終了で起きる2025年問題とは/保険証の有効期限終了と更新手続きの留意点

昨年122日、健康保険証の新規発行が終了となった。マイナ保険証の利用率が11月時点で18.52%しかない中での終了である。

これにより、現行の健康保険証の有効期限は最長25121 日までとなり、マイナ保険証がない患者には、今後「資格確認書」が発行されることとなる。マイナ保険証を持っている場合、基本的に「資格確認書」は発行されないため、「資格確認書」が必要であればマイナ保険証の登録解除が必要になる。

また、マイナンバーカードの電子証明書は5年ごとに更新が必要であり、25年度は更新時期を迎える患者が24年度の約2.6倍に増える。今回は、マイナ保険証の登録者が遭遇する25年の注意点を解説する。

最長1年は保険証使える不安なら解除リーフを現在の健康保険証は、24122日以降も有効期限が切れるまでは利用できる(図1)。よって、マイナ保険証に切り替えたくない場合は、保険者に対して登録解除の申請を行う。

協会は、保険者ごとの健康保険証の有効期限およびマイナ保険証の登録解除方法を解説した患者向けの「マイナ保険証解除リーフレット」を、会員に無料配布している。マイナ保険証に不安がある患者さんには、ぜひ窓口で配布していただきたい(ご注文は電話03―3205―2999まで)。

◆電子証明書の更新案内到着時の注意点

マイナンバーカードの電子証明書には有効期限があり、5年ごと(5回目の誕生日まで)に更新手続きが必要になる。25年度は更新を迎える人が2768万人おり、24年度の176万人の約2.6倍に増えるため、この問題は24年度以上に深刻化する。

更新手続きの流れは、有効期限の23カ月前をめどに対象者に案内が送付され、それに沿って区市町村窓口で手続きする仕組みとなっている。仮に更新手続きを忘れた場合、マイナ保険証は使用できなくなり代わりに資格確認書が発行される。さらに、猶予措置も設けられており、電子証明書の有効期限が切れた後でも、最大で4カ月間は薬剤などの情報取得はできないが、マイナ保険証での資格確認はできる(図2)。

全国民に資格確認書を自動発行すべきこのように、マイナ保険証の問題点の一つに、健康保険証と異なり自ら手続きが必要(申告制)な点があげられる。マイナ保険証で資格確認ができないトラブルの中には、更新手続き忘れが原因とみられるものもある。申告制であることは資格確認書も同様で、現状は「当面の間」申請なしにマイナ保険証がない患者に対して、資格確認書が自動発行されることになっている。申告制が前提であるマイナ保険証を原則とすることが、現場に混乱を生む一因といえる。

協会は、国会議員や行政などへの要請において、資格確認方法の乱立による混乱を軽減する視点も含め、マイナ保険証の有無にかかわらず、全国民に自動的に資格確認書(カード型など)を発行することを求めている。

保険証の存続を求める署名1月末までに協会へ送付を25年には健康保険証の発行終了によるさまざまな問題が発生することが懸念されている。問題の解決には、まずは健康保険証を存続したうえで、生じたさまざまな問題点を一つひとつ解決し、国民の不安を解消することが肝要である。

協会は今年の通常国会で「現行の健康保険証を残してください」請願署名を提出する。お手元にある署名は、ぜひとも1月31日(金)までに協会へ送付していただきたい。

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)1月1日

東京歯科保険医新聞2025年(令和7年)1月1日

こちらをクリック▶「東京歯科保険医新聞」2025年(令和7年)1月1日

【新聞1月号】

【1面】

  1.会長「年頭所感」
  2.巻頭写真「嵐のち青天」
  3.「探針」
  4.ニュースビュー

【2面】
  5.東京都 物価高騰で緊急支援金/歯科診療所に15万円/申請にはGビズIDの取得を
  6.2023年度 高点数による個別指導は4年連続実施なし/萎縮診療せずカルテ記載や請求内容を確実に
  7.講師が実体験交え解説/参加者は歯科訪問診療に意欲
  8.施設基準のみなし期間来年5月31日終了/再届出の場合は十分注意を

【3面】
  9.オン資義務化撤回訴訟 原告控訴「納得していない」/棄却理由“不十分” 弁護団が見解
10.改定評価70%が「悪かった」/速報歯科会員アンケート
11.「オンライン資格確認不存在訴訟」原告団副団長として
12.私が見たオン資訴訟/判決受け、今、私たちがすべきこと(原告団 早坂美都)

【4面】
13.経営・税務相談Q&A No.424「オンライン請求システムと電子帳簿保存法~支払基金からの振込通知書が送付されなくなりました‼」
14.「国民健康保険証廃止に伴う“資格確認書”送付等に関するアンケート」
15.経営管理研究会 定額減税と年末調整・確定申告のポイントを解説
16.歯初診・外安全1・外感染2・歯援診・口管強のための施設基準講習会
17.1月会員無料相談のご案内

【5面】
18.研究会・行事ご案内

【6面】
19.保険証の発行終了受け議員〝緊急要請〞有効期限延長・全国民への資格確認書発行求める
20.解説 保険証の発行終了で起きる2025年問題とは/保険証の有効期限終了と更新手続きの留意点

【7面】
21.オン資訴訟判決後 緊急インタビュー/提訴から2年、棄却も意気軒昂/判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに
22.「よい歯」連絡会が総会記念講演/参加者を交え健康保険証存続の展望を議論

【8面】
23.教えて!会長!!No.90/「会員の意識と実態調査」の報告
24.被団協がノーベル平和賞を受賞/核兵器使用の可能性に危機感
25.理事会だより
26.12月協会活動日誌
27.共済部だより

【9面】
28.症例研究「口腔管理体制強化加算(口管強)の施設基準を届出していない医療機関でのエナメル質初期う蝕管理料(Ce管)の算定」

【10面】
29.「会員の意識と実態調査」の特徴点/52%経営「苦しくなった」/今次改定には53%が「不満」覚える
30.神田川界隈「人口減少社会と迫りくる歯科医師不足時代」(副会長/馬場安彦)
31.新春pick up/目標は「100歳まで診療」/“御年90歳”歯科の知識で地域貢献も

【11面】
32.保険証存続求め国会内で集会/強い反対招いた保険証の発行終了/登録解除や資格確認書発行の周知徹底要求
33.通信員便りNo.146
34.謹賀新年名刺広告

【12面】
35.連載「マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~」/第10回・完:「楽しい」「便利」を置き去りにした日本のデジタル化(荻原博子氏)
36.新春会員投稿「私の一枚」

健康保険証の発行終了受け議員〝緊急要請〞/有効期限延長・全国民への資格確認書発行求める

健康保険証の発行終了受け議員〝緊急要請〞/有効期限延長・全国民への資格確認書発行求める

2024年122日の健康保険証の発行終了を受け、協会の坪田有史会長、早坂美都副会長は1218日、国会議員へ緊急要請を行った。

12月2日以降、健康保険証が使用できないと誤解する患者がいるなど、現場で混乱が生じている。協会は、「これからの窓口対応きほんのマニュアル」を本紙12月号に折り込み会員に配布したほか協会ホームページにも一般公開し、現場が混乱しないように対応してきた。

会員からの相談では、健康保険証以外に複数の資格確認方法が乱立することへの戸惑いが多い。また、マイナ保険証を持つ患者には紙の「資格情報のお知らせ」(一部、マイナ保険証を持たない患者にも送られる場合もあり)が、マイナ保険証が無い患者にはカード型などの「資格確認書」が発行される仕組みとなっており、なぜ二つに分けるのかという点も指摘されている。

そこで本要請においては、トラブルの問題だけではなく、混乱を解消する方法として、①現行の健康保険証を存続させること。少なくとも、健康保険証の有効期限(最長25121日)を延期させること、②患者および窓口業務の混乱解消のため、マイナ保険証がある患者に紙の「資格情報のお知らせ」を、マイナ保険証がない患者に「資格確認書」(カード型等)を送付する取り扱いを改め、マイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」を送付すること、の2点を関係各国会議員に要請した。

◆活発な意見交換を行う

(写真右)武見敬三参議院議員(自民・東京)に要望書を手渡
す(左から)早坂美都副会長、坪田有史会長

懇談では、積極的な意見交換が行われた。協会の提案に対して、「『資格情報のお知らせ』と『資格確認書』を分ける必要性は乏しく、それならば今までのように健康保険証を残したまま、使いたい人がマイナ保険証を使える仕組みの方がよい」「健康保険証の発行停止を機に閉院した医療機関もあると聞いている。医療提供体制への悪影響が心配だ」と、概ね賛同する意見があった。

一方で、「過渡期である今、混乱が起きるのは致し方ない部分はある。将来、日本全体で医療従事者を含む働き手不足が懸念されており、医療DXの推進自体は必要ではないか」「期日を決めないと物事は進まない。その判断は難しいが、国民の不安払拭には医療提供側に問題が起きないことが必須である。顔認証付きカードリーダーの導入に時間がかかった要因を踏まえた検討が必要ではないか」という指摘もあった。

協会は、国会議員や行政との意見交換を通じて、現場の声を届けつつ、国民と歯科医療機関に混乱が生じないよう、必要な対策実施を求めていく。引き続き、協会の諸活動へのご理解とご協力をいただきたい。

なお、今回懇談が実現した参議院議員は以下の5氏(順不同。敬称略)

武見敬三参議院議員(自民・東京)、田村まみ参議院議員(国民・比例)、川田龍平参議院議員(立憲・比例)、)吉良よし子参議院議員(共産・東京) 、小池晃参議院議員(共産・比例)。

4つの施設基準のための講習会を開催

4つの施設基準のための講習会を開催

協会は1215日、ワイム貸会議室高田馬場で、改定後に追加された研修内容を含む「施設基準のための講習会」を開催した。講師は、繁田雅弘氏(東京慈恵会医科大学名誉教授)、坂下英明氏(明海大学名誉教授)、馬場安彦氏(当協会副会長) 、森元主税氏(当協会理事)が務めた。

この講習会は、①歯科外来診療医療安全対策加算1(外安全1)、②歯科外来診療感染対策加算2(外感染2)、③口腔管理体制強化加算(口管強)—などの研修要件に対応した講習であり、新規に施設基準の届出を行う会員を想定して開催したもの。

歯初診・外安全1・外感染2に対応したコースに30名、歯初診・外安全1・外感染2、口管強、歯援診に対応したコース53名が参加した。

◆次回講習会開催予定

次回は316日に今年度最後の施設基準のための講習会を開催する。今後新規に施設基準の届出を検討している会員はぜひ参加いただきたい。

なお、本年5月末までに再届出が必要となっている旧か強診の届出医療機関は、改定により追加された研修を受講し、その要件を満たした上で、再届出する必要があるため、130日および219日の「口管強追加研修」を受講していただきたい。

内容詳細・お申し込みは、この協会ホームページ「研究会・行事」をご覧いただきたい。

改定評価 70%が「悪かった」/速報 歯科会員アンケート

改定評価 70%が「悪かった」/速報 歯科会員アンケート

昨年11520日に実施した2024年度診療報酬改定の影響などを調査するための「歯科会員アンケート」に当会会員273名から回答が寄せられた。ここでは、その一部を速報として以下にご紹介する。

この調査は全国で行われ、寄せられた意見や要望は、行政、国会議員への要請やマスコミ発表など、歯科医療改善を求める取り組みに活用される。

今回の改定の評価について、「良かった」「どちらかと言えば良かった」は合計でも26.8%にとどまり、「どちらかと言えば悪かった」「悪かった」を合わせると70.3%と、多くの会員が評価していないことが明らかになった。

その中でも、歯科医院経営への影響の観点からプラスの影響が出ると思う項目(図1)で、もっとも多い回答は「プラスの影響はほとんどない」が50.2%であった。2番目は「初・再診料の引き上げ」が40.3%、3番目は同率で「CAD/CAM冠・インレーの適用拡大」と「ブリッジ支台歯の前装MCが5番まで適用」が27.8%と続いた。

マイナスの影響が出ると思う項目(図2)は、「施設基準の複雑化」が65.6%でもっとも多くなった。外来環が外感染、外安全に再編されたこと、か強診が口管強へ改変されて、研修要件などが変更されるなど、両項目ともみなし期間内(今年5月末まで)に再届出が必要となる。複雑な取り扱いでわかりにくく、今なお混乱を来している。次いで、「補管の対象から金属冠(単冠)が外されたこと」が38.8%となり、補管についての評価は分かれている。3番目は「ブリッジ支台歯の4番、5番の前装MCの形成料の引き下げ」が34.4%と続いた。

医院経営の改善のために、国の制度として必要な方策については、「診療報酬の引き上げ」が89.7%となった。やはり低歯科診療報酬の中での点数の組み換えではなく、診療報酬の総枠を拡大し、歯科診療報酬の大幅な引き上げが必要であることが明らかとなった。

今回の結果は、次期診療報酬改定の改善に向けて重要な結果であり、歯科開業医の意見として厚生労働省に届けていく。

「会員の意識と実態調査」の特徴点 52% 経営「苦しくなった」/今次改定には53%が「不満」覚える

「会員の意識と実態調査」の特徴点 52% 経営「苦しくなった」/今次改定には53%が「不満」覚える

昨年10月に実施した「会員の意識と実態調査」は、1,658人の会員から回答が寄せられた。会員のおよそ4分の1以上が、このアンケートに回答したことになる。その内訳は開業医が1,519人、勤務医が120人、不明が19人だった。2024121日現在、都内の歯科医療機関数は10,416施設であり、都内で開業する歯科医師の約15%が本アンケートに回答している。

本号ではアンケート結果から一部特徴点を紹介する。回答者の属性(性別、年齢、開業地など)によっては傾向に差があるため、より詳細な分析や考察を加えた報告については、本紙2月号に掲載する予定である。

◆医業経営「苦しくなった」52%

世界各地の紛争などにより、21年頃から続いている光熱費・物価の高騰。長引く景気低迷、さらに財務省が主導する増税政策が、国民生活をより厳しいものにしている。

現在の医業経営が以前と比べてどのように感じたのかに関する質問では、「苦しくなった」が52.1%となった。一方で、「楽になった」がわずか5.1%にとどまっている(1参照)。

また、24年7 月は、診療報酬改定後であるにもかかわらず、前年同月比で保険収入は「減少した」が42.4%であった(2参照)。保険収入が減少した理由は「患者の減少」が80.1%であった(3参照)。

さらに、23年度と比較すると、医院における1日あたりの患者数は、「減少した」が45.2%であった。

医業経営については、保険収入が減少したことや患者数の減少などから、厳しい医療機関が多数存在することが判明した。また「ベースアップ評価料Ⅰ」は、ほとんど算定されていない。今後、本調査結果については、より詳細な分析を行っていく。

なお、この「会員の意識と実態調査」における患者数や経営状況の経年変化については、このホームページの「コラム・インタビュー」コーナーと「協会ニュース」コーナー、および機関紙「東京歯科保険医新聞」202511日号8 面の「教えて! 会長!! No.90 」でも触れているので、ぜひご参照いただきたい。

オン資義務化撤回訴訟 原告控訴「納得していない」/棄却理由“不十分” 弁護団が見解

オン資義務化撤回訴訟 原告控訴「納得していない」/棄却理由“不十分” 弁護団が見解

オンライン資格確認の義務化にあたり全国の医師・歯科医師が国を訴えた裁判の判決が昨年1128日、東京地方裁判所で言い渡され岡田幸人裁判長は、原告の訴えを棄却した。原告1415人のうち、1366人は1212日、判決を不服とし、控訴を申し立てた。

判決を言い渡された当日、原告団副団長で当会会長の坪田有史氏ほか、原告で同副会長の早坂美都氏、同理事の橋本健一氏、同会員の扇山隆氏ら原告団から44人が集まり、大法廷を埋めた。開廷からわずか1分ほどで主文が読み上げられると、原告団からはため息が漏れ、その後、原告団は地裁前に詰めかけた報道陣に「不当判決」の四文字を掲げた。

司法記者クラブで行われた会見で、須田昭夫原告団長(東京保険医協会会長)は「納得していない」として控訴の意向を伝え、今後、過疎地などで廃業する医師・歯科医師が増えることへの懸念を示した。また、佐藤一樹原告団事務局長(同理事)は、健康保険証の新規発行が終了する122日以降も健康保険証が使用できることを強調した上で、〝健康保険証廃止〞という誤った認識を広めないよう報道陣に呼びかけた。

また、判決文のうち「裁判所の判断」が記載された部分はわずか12ページのみ。これについて、原告向け説明会で喜田村洋一弁護団長は「お手軽判決」と憤りをあらわにした。さらに、原告の主張が退けられる理由が十分ではないとした上で、「原告の主張を論理立てて、間違いであると言えなかった」と分析。控訴審に向けて、「理論では完全に国を凌駕していると思っていますので、そのことが高裁の裁判官にわかるように、しつこくやっていきたいと思います」と決意を新たにした。原告からは、オン資導入が〝医療活動の自由に重大な制限を課するとまではいえない〞とした判決を疑問視する意見が相次いだ。

なお、訴訟の各種資料は、東京保険医協会ホームページで見ることができる。また、佐藤氏を取材した【<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに】もぜひご覧いただきたい。

2023年度 高点数による個別指導は4年連続実施なし/萎縮診療せずカルテ記載や請求内容を確実に

2023年度 高点数による個別指導は4年連続実施なし/萎縮診療せずカルテ記載や請求内容を確実に

協会は関東信越厚生局東京事務所(以下、東京事務所)に行政文書の開示請求を行い、2023年度の個別指導が96件実施されたことが明らかになった。選定理由の内訳は、情報提供40件、再指導53件などで、高点数による個別指導は4年連続して実施されなかった(1)。

◆「情報提供」による個別指導は計画件数より2倍

個別指導の実施件数は、指導計画では全体で84件が予定されていたが、実際は12件増の96件となり、情報提供による個別指導は指導計画の21件に対し、約2倍となる40件の医療機関に実施されたことが分かった。これについて東京事務所は、「年度途中の情報等により早急に指導が必要と認める保険医療機関について、適宜選定委員会において選定の上、実施する」とした。

◆新規個別指導の再指導26件

個別指導後の結果は、「概ね妥当」1件、「経過観察」48件、「再指導」32件、「中断中」6件「年度内に指導結果の通知が送付されていない」15件であった(2)。

 新規個別指導の結果は、「概ね妥当」90件、「経過観察」258件、「再指導」26件となった(3)。新規個別指導後の再指導は、概ね1年後に個別指導が実施される。

指導を受けて今後が不安な先生は、協会まで連絡いただきたい。

◆正しい知識とカルテ記載こそ重要

東京都で行われる個別指導は、指導医療官4名、東京都福祉保健局指導監査部医療機関担当課長1名のほか、保険指導医31名で行う。指導においては、正しい保険請求の知識とその根拠となる適切なカルテ記載こそが最も重要である。

協会では、カルテ記載や保険点数の算定要件などを解説する新規開業医講習会を本年3月に開催する。これから新規個別指導が予定されている方や個別指導などに不安を感じている方はご参加いただきたい。開催要領は下記をご覧ください。

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【新規開業医講習会】

◆新規個別指導を控える先生、改めて保険診療を学びたい先生へ―

新規個別指導は開業後、概ね半年~8カ月以内の医療機関が選定されています。指導対策は、通知が届く前の早い段階で準備を進めることが最も大切です。講習会では、年間100件を超える相談を基に、指導で指摘されやすい事項を含め、保険診療の基本的なルールやカルテ記載、請求方法、自費と保険の考え方を丁寧に解説します。

 これから開業を検討しておられる先生や勤務医の先生、改めて保険のルールなどについて確認したいという先生にも、ぜひご参加いただきたい講習会です。

★日 時 330日(日)正午~午後530

★講 師 協会講師団

★会 場 ワイム貸会議室高田馬場(4F)

★定 員 50

★対 象 会員・未入会員

★参加費 会員13,000円、未入会員30,000

★予 約 こちらからお申し込みください

★担 当 組織部:TEL 03-3205-2999

<受付終了>3月16日(日) 第7回施設基準のための講習会

本講習会は、以下に掲げる施設基準の「研修要件」を満たす講習会です。

新規に以下の施設基準を届出する会員の先生方向けの講習会です。
  • 歯初診(歯科点数表の初診料の注1に係る施設基準)
  • 外安全1(歯科外来診療医療安全対策加算1)
  • 外感染2(歯科外来診療感染対策加算2)
  • 口管強(小児口腔機能管理料の注3に規定する口腔管理体制強化加算)
  • 歯援診1・2(在宅療養支援歯科診療所1・在宅療養支援歯科診療所2)

◆お申込みの内容を確認後、開催(2月中旬以降)が近くなりましたら、郵送先(すでに協会に登録済みのDM送付先)に案内状と振込用紙(ゆうちょ銀行用)をお送りします。なお、期日までに振込の確認ができない場合、キャンセル扱いとなる場合がございます。
また、当会会員限定の講習会になっておりますので、未入会の先生はお申込み前にご入会が必要になります。

【日 時】
3月 16 日(日)

【内 容】
▼5つコース▼ 参加費:8,000円
13時~1830
~対応している施設基準~
●歯初診、外安全1、外感染2、口管強、歯援診1・2
※お申込みを頂くコースによって、開始時間および参加費用が異なりますのでご注意ください。

▼3つコース▼ 参加費:5,000円
16時~1830
~対応している施設基準~
●歯初診、外安全1、外感染2
※お申込みを頂くコースによって、開始時間および参加費用が異なりますのでご注意ください。

 【場 所】
ワイム貸会議室高田馬場 3階

 【対象者】
会員(東京歯科保険医協会の会員に限ります)
※代理出席は認められません。ご本人の参加が必須です。
※未入会の先生はご入会が必要になります。
※他協会の方はお申込み頂けません。

【定 員】
100名程度(定員になり次第、締め切らせていただきます)。

【講 師】
・繁田雅弘 氏(東京慈恵会医科大学精神医学講座 名誉教授)
・坂下英明 氏(明海大学名誉教授/朝日大学客員教授/我孫子聖仁会病院口腔外科センター長)
・馬場安彦 氏(東京歯科保険医協会 副会長)
・森元主税 氏(東京歯科保険医協会 理事)
 
【内 容】
在宅医療・介護等、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理(エナメル質初期う蝕管理、根面う蝕管理および口腔機能の管理を含む)、高齢者・小児の心身の特性(認知症を含む)、院内感染防止、緊急時対応、医療事故、偶発症等
※施設基準の届出に必要な研修要件を網羅できます。

【問い合わせ先】
社保・学術部:03-3205-2999

 【申し込みはこちら】
https://forms.gle/UKoH3tma8fp5R8SR8
<必ずお読みください>
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の施設基準を3月31日までに届け出ている医療機関であって、かつ当該施設基準の算定実績がある医療機関の場合、2025年5月31日までに口管強(小児口腔機能管理料の注3に規定する口腔管理体制強化加算)の施設基準を厚生局に届け出を行うことで施設基準を維持することができます。そのため、上記に該当する会員においては、「施設基準のための講習会(口管強追加研修)  」を受講いただき、口管強の届出の際にご活用ください。ご不明な点は、協会までお問い合せください。

【教えて!会長!! No.90】「会員の意識と実態調査」の報告

【教えて!会長!! No.90】「会員の意識と実態調査」の報告

機関紙「東京歯科保険医新聞」2025年1月号10面に、協会が5年ごとに行っている「会員の意識と実態調査」の現時点における特徴点をピックアップし、速報として掲載しました。集計の詳細および統計の結果などは本年2月に公表する予定ですが、本稿ではこれに先立って、過去の結果との比較をいくつかご紹介します。

今回の調査は過去の調査(回答率2019年:17.3%、14年:15.9%)と比較して、回答者数および回答率ともにより多くの会員から回答(1,658名、27.6%)を頂戴しました。この場を借りて御礼申し上げます。なお、関東信越厚生局が公表している24121日現在の「保険医療機関・保険薬局の指定一覧 歯科(東京)」では、歯科医療機関数は10,416医療機関となっています。したがって、都内で開業する歯科医師の約15%が本アンケートに回答していることになり、一定程度の信頼性はあると考えられます。

それでは、回答状況を見ていきましょう。

Q この1年で患者数は増えていますか?

A 前回の19年と比較して「増加した」が21.9%から14.9%と7.0ポイント減少し、反して「減少した」が34.9%から45.2%と10.3ポイント増加していました(図1)。

Q 会員は、現在の歯科医院経営は以前と比較してどのように感じているのでしょうか?

 19年と比較して「苦しくなった」が39.7%から52.1%と12.4ポイント増加、反して「楽になった」が8.8%から5.1%と3.7ポイント減少していました(図2)。

以上、患者数および経営の状況から判断すると、5年前と比較して経営が厳しくなっている原因の一つに、患者数の減少があることがうかがえます。「苦しくなった」との回答は定量的な回答ではないものの、歯科医業面で問題があることが推察されます。しかし、83年からの計8回の調査すべてで「苦しくなった」が「楽になった」を上回り、40年間にわたり、歯科保険医療機関は全体として「苦しくなった」と感じながら歯科医業を行っていることになります。

Q 会員は協会に対してどのように感じていますか?

 「大いに頼りにしている」「頼りにしている」は、04年が60.3%、0970.2%、1471.0%、1976.4%、2481.4%と、調査を重ねるごとに増加しており、非常に嬉しい結果となりました(図3)。

今回は結果の紹介はできていませんが、協会活動で評価できた取り組みを伺ったところ、上位の項目(複数回答)は、「診療報酬改定の対応:79.0%」「保険請求の電話相談:49.5%」「施設基準の研究会:43.2%」でした。すなわち、歯科保険医である会員の先生方の要望に沿った活動が行われており、かつ丁寧にアシストできていることなどが評価されているのではないかと思われます。

今回はここまでになります。詳細の公表まで今しばらくお待ちください。

東京歯科保険医協会

会長 坪田 有史

(「東京歯科保険医新聞」20251月号掲載)

新春写真投稿「私の一枚」

新春寄稿「私の一枚」

「東京歯科保険医新聞」20251月号でお写真を募集したところ、複数のご応募をいただきました。ご応募いただき、誠にありがとうございました。以下、各作品をご紹介させていただきます。

「嵐のち青天」(早坂美都先生/世田谷区)

一晩中吹き荒れた嵐の翌日、目が覚めるような青い空が輝いていました。富山県立山室堂平での1枚です。古より「神の山」と信仰されてきた立山連峰を、美しく映し出すみくりが池です。激動の時代、しかし止まない嵐はありません。今年も素晴らしい年になりますように。

 

Sunset in Hilo」(伊藤愛子先生/世田谷区)

10月にハワイ島のヒロで撮影した夕焼けです。丸い木を境に東はピンク色の雲、西はオレンジ色の雲が拡がりその色が海まで染まり、とても美しい景色でした。2025年も素敵な場所に自由に旅ができる年でありますように。

 

「春を待つ」(吉田真理先生/武蔵野市)

新潟旅行の時に撮影しました。雪深い穀倉地帯の厳しい寒さのあとにくる春を人々は待ちわびていることでしょう。

 

「いったんお休み学士会館」(臼井伸行先生/葛飾区)

学会や講習会場として有名な1928年開業で90年以上の歴史を持つ学士会館が、周辺の高層ビルに飲み込まれるようにして、20241229日に閉館(一時休館)することに併せ、撮影記録。

 

「巨大ザメの復元模型」(川本弘先生/足立区)

埼玉県立自然の博物館に展示。サメは何度も歯が生え替わりますが人間はそうはいきません。今年も1本の歯の保存にこだわって診療にあたる所存です。

<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに(佐藤 一樹×早坂 美都)

<オン資訴訟判決後緊急インタビュー>提訴から2年、棄却も意気軒昂 判決がマイナ問題“再議論”のきっかけに(佐藤 一樹×早坂 美都)

― まずは提訴に至った経緯を教えてください。

骨太方針2022に、翌年4月からオン資義務化、保険証廃止の方針が明記され、電子カルテの標準化により行政と医療界、医学会、産業界が医療情報を利活用する旨が記載されたので注意していたところ、同年8月、厚労省と三師会合同のオンライン説明会で、保険局担当課長が、「療養担当規則が改正され、23年4月1日からオン資が義務化される。導入しない場合、保険医療機関の指定取消し事由になる」旨を発言したことで提訴を決意しました。

― 訴訟の中心を担った東京保険医協会は、当初、訴訟をどう受け止めていましたか。

最高裁判例を研究したところ、本件類似判例で原告が国(担当官庁も厚労省)に勝訴した「医薬品ネット販売権利確認訴訟」があり、訴状の段階からこの判例法理に沿って主張しました。この訴訟の最高裁調査官が偶然、今回の裁判長である岡田幸人判事でした。訴訟の進行も、原告の希望が通ったり、裁判長が被告である国に対して準備書面を書くにあたり、テーマを出したりしていたので、弁護団も原告団も原告有利と考えていました。

― 訴訟の争点は?

(1)健康保険法上、給付の「内容」は保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)に委任しているが、資格確認の「方法」については、条文に委任していると書かれていない。これは、法律(健康保険法)の委任がなければ、省令(療担規則)に罰則を設け、義務を課したり、国民の権利を制限する規定を設けることを禁じた国家行政組織法に違反するか否か。
(2)仮に健康保険法上、委任がされているとしてもオン資確認義務化は、委任の範囲を逸脱しているか否か。

最高裁“逆転勝訴”経験した喜田村弁護士

― 弁護団の弁護士はどのような方たちですか。

自由人権協会の主要メンバーで行政訴訟や人権関連訴訟のスペシャリスト。喜田村洋一弁護士と二関辰郎弁護士は、憲法訴訟・行政訴訟の歴史上に燦然と輝く「在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件」(以下、在外日本人選挙権訴訟)の弁護団長と団員で、最高裁大法廷で逆転勝訴しました。喜田村弁護士は、日本の名誉毀損裁判の基準を創った実力者で、レペタ裁判、ロス疑惑事件、エイズ帝京大事件、ジャニーズ事件、松本人志事件などを担当した日本有数の弁護士です。

― 勝訴した場合、①医療機関、②患者さんにはどのようなメリットが。

①マイナ保険証のためのカードリーダを準備しなくてもよいし、マイナ保険証による資格確認を行わなくてもよいことになります。

②マイナ保険証の義務化で廃業を余儀なくされる医療機関が継続され、患者も安心して従来のかかりつけ医に通院できます。

― 改めて療担規則や、それを違反するとどうなるか教えてください。

療養担当規則は省令(厚生労働省令)なので法令です。各省大臣が担当する行政事務について,法律(健康保険法等)の特別の委任に基づいて定めるルールです。療養担当規則に違反した場合(主に診療報酬に関連した不正など)、最終的には、保険医療機関の取消しの可能性があります。通常は唐突に「取消」ということはありませんが、個別指導から監査を経て、「注意」「戒告」「取消」のどれかの評価を受けることになります。

― 膨大な原告の準備書面は、どのように作られたのでしょうか。

弁護団と原告(主に東京保険医協会理事と事務局や保団連事務局員等)で創設した「訴訟ワーキンググループ」のメーリングリストで、常時さまざまな情報交換をし、弁護団に書面案を作成していただき、医療側で実務関連のチェックをしました。毎月第2月曜日に、東京保険医協会で対面とウェブを併用して会議を開催し、決定しました。二関弁護士は、私の高校2年時のクラスメイトで、カフェで草案の素案を2人だけで練ったこともありました。

― 佐藤先生は医師として診療にあたりながら、原告団の事務局長も担っています。苦労する点も多いのではないでしょうか。

苦労もありますが、医療と法律のはざまで起こるさまざまな課題への対応 は、ライフワークなので積極的に取り組んでいます。日常的に、医療刑事事件、冤罪事件、医療民事事件の意見書を書いたり、法廷に立ったり、個別指導に立ち会って厚生局を監視したり、医療事故調査制度に関係する厚労省の担当者に面会したり、厚労族議員を訪問したり、一緒に医療安全学会の活動をしたりしていますので、この訴訟もその一部です。

― 提訴から判決まで約2年を費やしました。これほど長い期間を要する理由は何だと思われますか。

民事訴訟に輪をかけて行政訴訟の進行は遅いのが一般的で、審理期間は平均15カ月と言われています。今回は、原告が1,415人で、しかも医師と歯科医師、被告が国という大裁判なので、21カ月かかりましたが、それは想定内でした。

― 一審は残念ながら請求棄却となりました。判決を言い渡された時の様子や受け止めを。

弁護団も原告も勝勢と思っていましたので、シーンとした感じでした。岡田裁判長はこれまで、国に対して厳しい指導をして、裁判進行は原告の希望に添って行っていたので、期待していました。裏切られたというか、将来の出世を見越した公務員気質なのか…という残念な気持ちになりました。岡田裁判長は、安倍晋三国葬差止事件、神宮外苑再開発事業認可取消事件、性風俗関連特殊営業持続化給付金支払事件でも国を勝たせていました。

報道陣へ強く呼びかけ…その真意

― 判決後の会見で報道陣に対して“保険証廃止報道”を避けるよう強く呼びかける姿が印象的でしたが、その真意は?

12月2日の法令施行では、「被保険者証」が「資格確認書」に代わりますが、保険証は期限が来るまで使用できます。その後は、資格確認書が保険証の役割を果たしますので、マイナ保険証は不要です。法令では、「廃止」「停止」といった文言はないのに、「保険証廃止」と報道すると、焦ってマイナンバーの取得やマイナ保険証の登録が義務になったと勘違いして申請してしまう人が増えるかもしれません。それを阻止するためです。

― 判決後、周囲の反応はどうでしたか。

患者さんにも、周囲の医師や弁護士にも、当然、控訴するものだと思われていて、励まされています。判決前 に、テレビ局2社、通信社2社、新聞社4社、週刊誌1社からの個別取材を受けましたが、判決後にも改めて取材申し込みがありました。改めてマイナ保険証の問題点を論議するきっかけにもなっています。

― 控訴した際、原告の主張や書類等は一審から変更、修正が加えられるのでしょうか。

まだ主張は検討中ですが、おそらく変更はなく、新証拠や既存の証拠などから角度を変えた主張を追加して修正することになると思います。

― 控訴する際の原告団メンバーは、これまでと同じでしょうか。

一審原告団のうち、亡くなった方や、アンケートで控訴に参加しないと明確な姿勢を示した方を除いた1,366名です。

― 控訴後、勝訴した場合、国は上告することが予想されますが、どのような想定をされていますか。

事実審は二審までなので、上告審は専ら法律論になります。一般に上告が受理されるためには、上告提起(憲法違反または法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由が存在する場合)、上告受理申立(最高裁判例違反や法令の解釈に関する違反)を行います。実質上、上告理由は、憲法違反か最高裁判例違反のみとされています。こればかりは、二審判決がでない限り予想は困難です。

― 控訴審に向けた意気込みを教えてください。

喜田村弁護士は、「『在外日本人選挙権訴訟』では、一審も二審も敗訴したのに、最後、大法廷で逆転勝訴した。一審の判決は、「国の主張をそのまま入れた『お手軽判決』と言うしかない。我々の主張がなぜ通らないのかについては、触れていない」とおっしゃっています。また、判決を法廷で聞いた原告44人は、その直後から控訴を決意していますので、意気軒昂です。

― 多くの保険医が訴訟を注目しています。そうした先生方にメッセージを。

一般に行政訴訟の原告勝訴率は一桁と言われています。以前も貴紙に「弁論終結段階で、弁護団も、原告勝勢とみている。しかし、裁判結果は『石が流れて木の葉が沈む』こともある」と書きましたが、現実となりました。これは、二審でも言えることですが、弁護団は法律論争では負けていないと考えています。
東京歯科保険医協会の会員の先生方におかれましては、応援のほど引き続きよろしくお願いいたします。

― 本日はありがとうございました。

※「東京歯科保険医新聞」2025年1月1日号(7面)掲載

【関連記事】
原告の訴え「棄却」/オン資訴訟控訴は今後検討
「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」提訴からの進捗と展望

【2025・年頭所感】変化の一年経て協会のさらなる発展へ

2017年6月の総会で会長を拝命し、8回目の年頭所感として新年のご挨拶をさせていただきます。

一昨年の年頭所感で本会会員数5,951名、昨年は6,030名と6,000名を超え、順調に会員数が増加していることをご報告しました。さらに24年12月1日時点では6,036名の会員数となりました。東京都内の歯科保険医の任意団体として、既会員の先生方からのご紹介を含め、多くの先生が本会の会員になっていただいたことにこの場をお借りして心から御礼申し上げます。また、未入会の先生におかれましては、歯科医業を行ううえで本会入会によって多くのメリットがあると自負しております。ぜひ、ご入会のご検討をよろしくお願いいたします。
会員数は増加していますが、微増という状況です。その内容を見ると多数のご入会がありましたが、その反面、ご退会が多かったことが24年の特徴でした。ご退会された方々に聞き取りをした結果、「高齢」を理由とするものが最多でしたが、「オンライン資格確認システム」「マイナ保険証」「レセプトのオンライン請求」がその背景にあると推察されました。そのうち、すべての前提となる「オンライン資格確認システム」に関しては、義務化撤回を求める訴訟の判決が昨年11月28日に出されました。残念ながら判決の結果は「棄却」でしたが、判決文に多くの疑問が残り、12月12日に控訴の手続きが行われました。なお、「東京歯科保険医新聞」2025年1月1日号(3・7面)に関連記事を掲載していますので、ご一読いただければ幸いです。
昨年は2年ごとの診療報酬改定だけでなく、3年に一度の介護報酬改定、および障害福祉サービス等報酬改定が重なる6年に一度の〝トリプル改定〟でした。そして従来、診療報酬改定は4月1日施行でしたが、今次改定は4月1日に改定、施行は2カ月後の6月1日と、大きな変更がありました。改定は、 65歳以上の高齢者の割合が全人口の約35%に達すると推測されている「2040年問題」を背景に医療費の抑制が意識された改定といえるものです。さらに今般の物価高騰の対策として「賃上げ」、すなわちベースアップ評価料が診療報酬上に設定されたことが特徴といえます。
ベースアップ評価料を始め、新たな項目、算定要件、加算、施設基準や届出などが多数あり、複雑で理解が難しいものでした。会員からの保険請求関連の質問や疑問の電話による問い合わせは、一昨年、昨年と比較して2倍近い数と非常に多く、協会の電話は絶えず鳴り続ける状態でした。これらの対応は、本会の重要な会員サポートの一つですから全事務局員には、丁寧に行うようお願いしました。一方で人員不足、および労働環境整備のため会員に対しては断腸の思いでしたが、昨年9月1日より電話受付時間を、短縮させていただきました。この変更は、会員の先生方にご不便をおかけすることとなり、大変申し訳なく思っております。
そもそも今次改定について行政側は、改定から施行までに2カ月間の時間的な余裕が生じるため、医療機関サイドはさまざまな準備、内容の周知が進むことが期待できると説明していましたが、それに反した結果になったといえます。したがって、歯科保険医療機関の混乱、そして多大な影響が今だに続いている責任は行政側にあること、その対応を本会が少なからず担っていることに対し、遺憾である旨は厚生労働省側に既に伝えております。
政府は昨年12月2日に新たな保険証の発行を終了し、マイナンバーカードの普及のためマイナ保険証を取得させ利用させることに邁進しています。しかし、保険医療機関におけるトラブルは全く解消されていませんし、9種類もの資格確認方法があるため、受付業務が混乱しているとの報告も受けています。これらを受けて本会は、現時点で以下の要望を国会議員に要請しています。

・現行の健康保険証は存続をさせること。少なくとも、健康保険証の有効期限(最長25年12月1日)を延期させること
・患者および窓口業務の混乱解消のため、マイナ保険証ありの患者に紙の「資格情報のお知らせ」を、マイナ保険証なしの患者に「資格確認書」を送付する取り扱いを改め、マイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」を送付すること

本会設立から51年、多くの会員、事務局員、関係各位に支えていただきました。これからも一層、会員が患者、国民に良質な歯科保険医療を提供するためのお手伝いを心がけ、さらなる発展を目指します。
なお、会長を拝命して以来長きにわたりご理解、ご協力を賜ったことに心から感謝申し上げます。今後も本会に倍旧のご支援をよろしくお願い申し上げます。

東京歯科保険医協会会長 坪田 有史(2025年 年頭所感)