【教えて!会長!! Vol.57】歯科初・再診料の増点

― 2022年度診療報酬改定で初・再診料が増点されましたね

坪田有史会長:歯科初診料の注1(以下「歯初診」)の届出医療機関は、歯初診の施設基準を満たす院内感染防止対策の現行の研修項目に、新興感染症への対応および標準予防策が追加され、基本診療料である初診料が3点、再診料が3点、それぞれ増点され、初診料が264点、再診料が56点となりました。他方、歯初診の未届出医療機関の場合、初診料240点、再診料44点と変更されませんでした。その結果、届出の有無による差は初診料で24点、再診料で12点とさらに点差が広がりました。この扱いは、厚生労働省として院内感染防止対策を推進する観点から、すべての歯科保険医療機関が歯初診の届出を行うことを目指していると理解できます。
初・再診料を1点ずつ上げるには約40億が必要とされていますから、初・再診料を上げるには多くの財源が必要です。なお、今次改定の歯科の改定率は、プラス0.29%で前回改定時の改定率のプラス0.59%と比較すると0.3ポイントも下回った値になりました。なお、プラス0.29%は、概算で約90億円と言われていますのでかなり財源的に厳しい状態です。そこで厚労省は、初・再診料を増点するための財源に、歯周基本治療処置(P基処)10点の廃止・包括分で充てたのです。財源が少ない中、仕方がないという見方もありますが、日常診療の点数を犠牲にしたことには疑問があります。

― そこまでして初・再診料を引き上げる理由は

坪田:長年、歯科側は、医科との基本診療料の格差是正を望んでいます。そこで、院内感染防止対策、および新興感染症への対策を理由として、18年度改定から今次改定まで、初・再診料の増点が行われています。なお、医科は21年から消費増税への対応のみの増点で、実質初・再診料は据え置かれています。しかし、未だ医科歯科格差は解消されていないのが現状です。
歯科初・再診料は、点数だけみると12年の初診料218点、再診料42点から、10年経過した今次改定で初診料264点、再診料56点と各46点、14点増点していますが、その内、初診料30点、再診料6点は、消費税率引き上げへの対応です。したがって、院内感染防止対策および新興感染症への対策のための今次改定までの増点は、初診料16点、再診料8点となります。

― それを聞くと、引き上げ幅が少ないような…

坪田:その通りです。10年間で院内感染防止対策および新興感染症への対策を理由とした増点は、初診料で16点、再診料で8点です。この増点を院内感染防止対策のコストに限ってみると、そのコストについては、2007年の中医協では、268.16円や、19年に中医協で出された意見が約568円ですから、実際にかかっている院内感染防止対策のコストに見合っているとは思えません。
結局、改定財源がなければ、院内感染防止対策のコストを十分に補完することはできません。したがって、「歯科医療費の総枠拡大」が進まなければ、希望は叶わないのです。
国民医療費に占める歯科医療費の割合は、私が歯科医師になった平成元(1989)年では10%ありました。それが30年後の令和元(2019)年では6.8%です。この間、高齢化が進んで国民医療費の全体が増加しましたが、その中で歯科医療費の割合が減少していったのです。もし、10%のまま維持できていたならば、現在の歯科医療費の3兆円は、4兆円になっていたはずです。今更ながら残念なことです。
しかし、過去は変えられません。よりよい未来にするために声をあげていきましょう。声が小さくても、集まれば大声になります。現在全国の協会とともに取り組んでいる署名を含め、協会活動にさらなるご理解、ご協力をお願いします。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年4月号8面掲載)