【教えて!会長!! Vol.54】2022年度診療報酬改定に向けて

― 中央社会保険医療協議会で歯科医療(その2)について、議論されたとのこと。

坪田有史会長:8月4日の歯科医療(その1)に引き続き、2022年度診療報酬改定に向けて12月10日に歯科医療(その2)が中医協で取り上げられました。そこで協会では、公表された中医協資料を読み解き、現時点での改定の方向性や内容について議論し、問題点を検証するために12月19日にZoomを使用して、ハイブリッド方式で役員・部員・事務局員による政策学習会を開催しました。本政策学習会は、2022年度診療報酬改定が歯科保険医にとって、悪影響を及ぼすことがないか検証し、混乱を招いたり、問題となる可能性がある改定内容があったりする場合、歯科医療の現場の声として、厚労省サイドに改善を求めることを目的としています。

― 歯科医療(その2)の内容について、教えてください。

坪田:12月10日の中医協の資料を紹介します。その内容は、3大項目に分類されています。その3大項目とは、「1.歯科医療を取り巻く状況について」「2.地域包括ケアシステムの推進について」「3.生活の質に配慮した歯科医療の推進など」です。
 「1.歯科医療を取り巻く状況について」は、4年前の改定で用いられた図を使って、歯科治療の需要の将来予想として、治療中心型から、治療・管理・連携型へのシフトの必要性が再度示されています。その上で、「地域包括ケアシステムにおける歯科医療機関などの役割」「あるべき歯科医師像とかかりつけ歯科医の機能・役割」「具体的な医科歯科連携方策と歯科疾患予防策」について詳細な目標などが明示されています。
 「2.地域包括ケアシステムの推進について」は、新型コロナウイルス感染症の発生を受けて、地域における歯科医療機関と施設・行政など関係機関との連携の必要性があることから、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の見直し、特に要件の一つである自治体が実施する歯科保健に係る事業への協力について、介護老人保健施設などにおける歯科疾患に対する取り組みの推進などと関連付けながら明確化するなど、改定を進めようとしていることが窺えます。
 医療機関間の連携の一つとしては、障害者歯科治療を推進するための連携に関係する歯科診療特別対応連携加算の施設基準の見直しなどが行われそうです。
 また、安心・安全で質の高い歯科医療の推進のためにICTの活用として、歯科衛生士が訪問による訪問歯科衛生指導を実施する際に、遠隔の歯科医師が口腔内の状況を確認することで、より詳細な指導ができるとし、オンライン診療の一つとして評価されそうです。
 「3.生活の質に配慮した歯科医療の推進など」は、いくつかの項目があります。一つには歯周病安定期治療(SPT)と歯周病重症化予防治療(P重防)の包括範囲の区別と整理が行われるようです。また、う蝕の重症化予防として、訪問診療の患者に限定されていた根面う蝕に対してフッ化物歯面塗布が外来にも適応拡大が検討されています。
 一方、各ライフステージに応じた口腔機能の評価として、小児口腔機能管理料と口腔機能管理料の対象年齢が見直されそうです。
 歯周基本治療処置(P基処)について、比較的簡単な処置であり、平均所要時間が比較的短いとしており、改定の財源確保のために包括化するのではないでしょうか。
 中医協資料を読み解いた上で、2022年度診療報酬改定の内容について検討しましたが、まだ決定したわけではなく想像の域に過ぎません。しかし、この段階で疑問があれば、現場の声を行政側に伝えることが望まれます。その結果、歯科医療と国民のために、よりよい改定になることを願っています。

             東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2022年1月号4面掲載)