政策委員長談話「 か強診改善のための課題」

政策委員長談話「 か強診改善のための課題」


◆「か強診」の強化された「機能」とは
かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)には、医科・調剤のかかりつけにはない「機能強化型」という名称が付されている。「平成28年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」の調査票によれば、「か強診」は、安全で安心できる歯科医療の環境をもち、在宅医療と医療連携を行い、継続的な口腔管理を実施できる医療機関と表現している。
機能の肝は、「安全・安心な歯科医療の環境」ではないだろうか。昨今のタービン使いまわし報道など、歯科の感染症対策はたびたびマスコミに取り上げられている。スタンダードプリコーションをはじめとする医療安全対策を行っていることを前提に、さらに地域包括ケアシステムで求められる在宅医療と医療連携に対応し、継続管理を行って歯科疾患の重症化予防を実施できる機能を持つ医療機関を、「機能」の「強化型」としたのだろう。

◆歯科の将来を考えれば
院内感染予防対策、在宅医療、医療連携及び歯科疾患の重症化予防は、歯科の重要なテーマである。特に、B型肝炎などの感染症の患者や訪問診療が必要な患者の受入が歯科医療機関で断られることが現状に起きている。それらに必要な体制を評価することで、多くの歯科医療機関での受け入れや取り組みを推進したいとの趣旨は理解できる。
2016年10月1日付で全国の届出率が平均7.0%に過ぎないなど、施設基準が厳しいが、疾病構造の変化と人口動態の変化による患者の高齢化、ならびに小外科が多く医療安全が求められる歯科の特殊性なども考えると、全ての医療機関で届出が行われることが理想であろう。そのためには施設基準の緩和や医科のかかりつけ診療料のような項目からの選択制など、施設基準のハードルを下げる必要があると考える。

◆医療機関が積極的に取り組むと共に
そのためには、医療機関が積極的に取り組むことが必要である。しかし、同時に後押しする施策も必要だ。そもそも医療安全体制は、機能強化型に限らず一般歯科診療所で行えるようにすべきものである。厚労省は、歯科外来診療環境体制加算(外来環)の点数を引き上げ、体制を持つ医療機関を増やす施策を進めるべきである。
訪問診療も、外来機能を維持しながら行うには人員体制を増やす必要がある。しかし、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(訪問口腔リハ)の「か強診」加算100点で行うのは困難である。さらに訪問診療にインセンティブを与える政策を検討するべきである。また自院で外来から訪問診療までを対応することが望ましいが、地域での診診連携の点から、在宅療養支援歯科診療所(歯援診)に紹介して安全・安心な在宅医療を提供できる場合もその連携に対して評価すべきである。
連携についても、歯科治療総合医療管理料(医管)や歯科医療機関連携加算を評価し、医科歯科連携にインセンティブを与える施策も積極的に行うべきである。
「か強診」には、歯科の今後にとって重要な項目が評価されており、それは希望する医療機関で取り組めるようにすべきである。国民と歯科医療の将来のため,多くの医療機関で行えるよう「か強診」の改善が図られることを望む。
2017年3月1日
東京歯科保険医協会
政策委員長 坪田有史