理事会声明「 ハンドピース滅菌問題解決の方策を国に求める」
2017年5月30日に厚生労働科学研究費補助金研究「歯科ユニット給水システム純水化装置の開発に関する研究」が公表された。この研究の中で、「使用済みハンドピースを患者毎に交換、滅菌している医療機関は半数の医療機関に留まっている」旨の報告がされた。
2017年7月5日付の読売新聞はこのことを、「未だに半数の歯科医院が、前の患者さんに使用したハンドピースを何もせずにそのまま使用している」と国民に誤解を招く記事として報道した。協会は本紙八月号で強く抗議をしたところである。
9月4日に厚生労働省は歯科保健課長名により「歯科医療機関における院内感染対策の周知について」を通知した。通知は、「都道府県に、使用したハンドピースは患者毎に交換し、オートクレーブ滅菌処理などの院内感染対策を取り組むよう歯科医療機関に周知すると共に、各保健所には歯科診療所の立入検査の際には、これらの衛生管理を重点検査項目とし、公衆衛生上重大な危害が生ずる恐れがある場合には歯科医療機関および歯科医師に対し指導を徹底すると共に厚労省に報告すること」を求める厳しい内容である。
2009年8月に協会が実施した開業歯科医院を対象とした院内感染予防対策会員アンケートでは、オートクレーブやケミクレーブなどを使用する医療機関は九五%を超えていることや、グルタラールなどの滅菌薬剤を多くの医療機関が使用していることがわかる。歯科診療所では診療報酬上の裏付けがない中、その時点でのふさわしい感染予防対策を行ってきた。
感染予防対策に係る費用としては、オートクレーブ滅菌処理で劣化するハンドピースや各種器具の問題や、滅菌処理を行う人件費など多面的に捉える必要がある。基本診療料でそのすべてを賄うことはきわめて困難で、日本歯科医療管理学会では、「患者1人当たりの院内感染対策費は約1058円」との報告がある。
また、厚労省が「感染予防対策を評価した」と言われる歯科外来診療環境体制加算は、感染対策を純粋に評価したものではなく、偶発症に対する緊急時や医療事故時の対応も課している。さらに、届出医療機関が全国で25.6%(平成29年6月1日時点)でしかない現実は、感染予防対策に役に立っていないと言える。
国は早急に必要な原価計算などを行った上で、診療報酬上で感染予防対策を評価した点数を新設すべきである。また、感染予防対策に必要な器材の購入や人の配置に係る費用を軽減するために、補助金や基金の創設などの手当を早急に検討いただきたい。それと並行して、安価で滅菌処理をしても劣化をしないエアータービンや手狭な歯科診療所でも設置ができるオートクレーブやウォッシャーディスインフェクターなどの開発が必要だと考える。国は産業界や大学などの研究機関と共同で開発を進めるようリーダーシップを発揮すべきである。
協会は、スタンダードプリコーションへの歯科医療機関の理解と実践を促すために尽力する。それと同時に、将来にわたって国民皆保険制度を維持し、安心・安全な歯科医療を提供するための方策を患者と共に国に求める。
2017年9月28日
東京歯科保険医協会
理事会