理事会声明
「現場の声は一定反映されたが、安心安全な歯科医療の推進には不十分 」
◆本会会員の要求が一定反映された
3月5日、今次改定の通知が発出され、2020年診療報酬改定の全容が明らかになった。今次改定の特徴は、「歯科治療の需要の将来予想(イメージ)」(中医協総会2017年12月6日)に沿って、今後需要が高まる口腔機能管理や有病者などのリスクの高い患者への対応に、重点的な評価がされた。
それに伴い、新たに歯周病安定期治療の対象にならない若年者である歯周疾患の患者を対象とした歯周病重症化予防治療の新設や、1回目の歯管を初診月の翌月まで算定するとした不合理な算定期間の制限が撤廃された。これら歯周疾患に関する重症化予防の評価や不合理な要件の是正は、これまで会員と共に厚生労働省へ要求を行ってきた成果である。
◆院内感染防止対策、医科歯科連携などの評価は不十分
しかし、それら以外では目立った評価がない。協会は、コストに見合った院内感染防止対策の評価、診療情報連携共有料においてメールでの連携を認めるなどの医科歯科連携の推進、口腔機能低下症などにおけるすべての検査の評価と管理料の引き上げ、永久歯代行歯に対しCAD/CAM冠が算定できないなどの不合理な点の改善を繰り返し求めてきた。
改定では院内感染防止対策の評価として初・再診料は引き上げられたがコストに見合った評価とは言えず、口腔機能管理の評価は、診療報酬上では歯管の加算から独立しただけで点数は変わらない。一方、周術期等口腔機能管理料などが医科歯科連携の項目として評価されているが、内容は手術を行う医療機関が歯科紹介時に行う予約の評価などにとどまり、現場から見て医科歯科連携が進むとは言えない内容である。これでは、安心安全な歯科医療は進まない。
歯科材料の価格改定も行われたが、懸案であった金パラ価格は最近の価格高騰に全く追い付いていない。現行のルールでの改定では対応できないのは明らかである。3月25日の中医協に随時改定Ⅱが提案されたが、さらに3ヶ月後となる。また、価格情報の収集は現行どおりとすれば、後追いは変わらず上昇時は赤字のままである。赤字とならないためには抜本的改善が必要である。
◆総枠拡大をしなければ、歯科の展望は開けない
今次改定にあたり、歯科改定率が0.59%と低値であったことが重要項目に十分な評価をされなかったことの原因である。基礎的技術料の引き上げは微増ながら行われたが、厳しい歯科医院経営を改善できる内容ではない。
口腔機能低下などの口腔機能管理や歯科訪問診療など、歯科が国民に果たす役割を発揮させるためには、財源を確保した上で、評価の充実を行う必要がある。
本声明は、歯科の低い改定率で十分な評価がされていない問題を指摘し、歯科医療費の総枠拡大を求めるものである。
2020年3月27日
東京歯科保険医協会
第22回理事会