政策委員長談話「2020年度診療報酬改定/世代毎の口腔管理の評価が不十分」(機関紙2020年7月号<604号>2面掲載)

 

政策委員長談話「2020年度診療報酬改定/世代毎の口腔管理の評価が不十分」(機関紙2020年7月号<604号>2面掲載)

2017年12月6日の中医協総会で示された「歯科治療の需要の将来予想(イメージ)」では、歯科の疾病構造が変化しており、将来さらに進むその変化に対応するために「治療中心型」から「治療・管理・連携型」へと歯科治療の構造変革が必要と示された。

2020年度診療報酬改定では、SPTの対象とならない歯周病患者の管理を評価した「歯周病重症化予防治療」(以下、「P重防」)が新設された。しかし、改定直前の疑義解釈で混合歯列期歯周病検査(以下、「P混検」)により治療を行っている患者を対象外にしたことで、乳歯列期やP混検で治療を行っている混合歯列期の患者がP重防の対象から除かれた。2019年4月10日の中医協総会においては、2018年度の5~17歳の患者の歯肉の炎症は全年齢でそれ以前の2008年度と比較して減少しているものの、炎症がある者の割合は依然として年齢とともに増加傾向であると指摘されている。学童期・思春期における口腔管理を推進するため、P混検の対象の患者であってもP重防を認めるべきである。

一方、高齢期の患者については、口腔機能に関する評価が歯科疾患管理料から独立した評価になったこと、あるいは日本歯科医学会の「基本的な考え方」の改定に伴う変更や診断に必要な舌圧検査の要件緩和に留まり、評価の引き上げや要件緩和は行われなかった。これでは、健康寿命を延ばすための高齢期の口腔機能に関する診療は現場で普及しない。

また、8020の達成者は2016年度で51.2%に達した一方で、う蝕歯の未処置歯・処置歯保有者率が年々増加しており、高齢者に特異的な根面初期う蝕の重症化予防治療の必要性が指摘されてきた。しかし、2020年度改定では何も対応されておらず、問題である。

在宅患者については、口腔機能の維持向上を推進するための対応が論点であった。しかし、実際にその対応として行われたのは非経口摂取患者口腔粘膜処置の新設のみである。6月超の継続管理をした場合の長期管理加算も、歯科疾患在宅療養管理料には加算できず、在宅での口腔機能の取り組みが推進されていない。

国は、全世代型社会保障を掲げているが、2020年度改定の内容は不十分と言わざるを得ない。早期の改善を求める。

2020年7月1日

東京歯科保険医協会

政策委員長 松島良次