歯科にも重要な消費税課税について協議・検討などを要望/厚生労働省2016年度税制改正要望
厚生労働省が財務省に提出した「平成28年度税制改正要望事項」の内容が明らかになった。毎年重ねて要望されている診療報酬への事業税非課税措置の存続は今回も継続して盛り込まれている。要望全体の柱は、①健康・医療、②医療保険、③介護・社会福祉、④生活衛生―など8本で構成されている。
これらのうち、まず①の中で注目されるのは、「医療に係る消費税の課税のあり方の検討」だ。これは、医療に関する消費税などの税制のあり方について、消費税率10%引き上げが予定されている中、抜本的な解決に向けた措置を行えるよう、個々の診療報酬項目に含まれる仕入税額項目相当分を「見える化」するなどにより、実態の正確な把握を行いつつ、医療保険制度での手当のあり方の検討なども合わせ、医療関係者、保険者など意見を踏まえた総合的な検討を行い、結論を得ることを求めている。
これは、昨年暮れの12月30日に決まった「自民党・公明党平成27年度税制改正大綱」の中で検討事項として盛り込まれていたもの。
◆厚労省が対財務省説明で「損税」を明言
ところで、この要望が行われた背景について、厚労省が財務省に説明した内容は、まず「社会保険診療は国民に必要な医療を提供するという極めて高い公共性を有していることを踏まえ、社会保険診療に係る消費税は現在非課税とされている」との現状を説明。次に、「医療機関等の医療機器等の仕入れにかかる消費税については課税扱いであるため、社会保険診療報酬において消費税分を上乗せすることで医療機関等に負担の内容措置してきた」と、保険診療の消費税対応の現状を説明。さらに、「しかしながら、一部の医療機関等からは、社会保険診療報酬の消費税分の上乗せ幅は十分ではなく、仕入れに要した分の消費税の一部が還付されていない(いわゆる損税)状態になっている」と明言し、「損税」との用語を対財務省説明で用い、保険診療の中で「損税」が発生していることを認めている。そして、消費税法の中で「医療に係る消費税課税の在り方については、引き続き検討する」との一節を用いて、今後の議論を行う必要性を訴えている。
通常、税制改正要望では、特定の項目の非課税や減税を要求するスタイルをとるが、議論・検討を行うことを要望するのは異例なこと。
また、厚労省が「損税」という表現を使い始めた点については、協会では社会保険診療に関する消費税については、3年前から損税解消のために「ゼロ税率課税」を求め、会員署名活動も実施し、他の医療関係団体も「ゼロ税率課税」を要求しているが、それら一連の動きにより、厚労省も損税解消という視点から動き始めたとも受け取れよう。
◆患者申出療養への消費税非課税を要望
そのほか、混合診療推進につながるとみられる「患者申出療養」については、厚労省は財務省に対し、消費税非課税を要望している。その理由として厚労省は、「将来的な保険収載に向けて評価を行うことを前提に、社会保険診療と併用して行われる医療サービスの提供であり、高い公共性を有する」ことを理由に、「下支えが必要」なため「消費税を課さない」と説明している。